特許第6520968号(P6520968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6520968ゴム押出装置およびゴム押出物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520968
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ゴム押出装置およびゴム押出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20190520BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20190520BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20190520BHJP
【FI】
   B29C47/16
   B29C47/92
   B29K21:00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-26510(P2017-26510)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-130894(P2018-130894A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】古林 由輝
(72)【発明者】
【氏名】西尾 悟
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−172250(JP,A)
【文献】 特開平03−143609(JP,A)
【文献】 特公昭50−020593(JP,B1)
【文献】 特開2002−103421(JP,A)
【文献】 特開2011−194854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダと、このシリンダの内部空間に配置されるスクリューと、このシリンダの前端に設置されて前記内部空間と連通する押出流路を有するヘッドと、前記押出流路の前端位置で前記ヘッドに取り付けられる口金と、前記押出流路と連通して前記口金を前後に貫通する押出口とを備えて、前記スクリューにより前方に押し出された未加硫ゴムが、前記押出口から押出し方向に連続して延在する芯材冶具を用いることなく、前記押出口からゴム押出物として押し出されるゴム押出装置において、
前記押出流路の前端開口が前記押出口の後端開口よりも大きく設定されていて、前記押出口の後端開口の全範囲が前記押出流路の前端開口の内側に配置されている状態を維持しながら、前記ヘッドの前端面に沿って前記口金を前記ヘッドに対して相対的に少なくとも一軸方向に移動させる移動手段を有し、前記口金と前記ヘッドとを所望の相対位置で固定できる構成にして、前記ゴム押出物の押出し方向に対する湾曲量を抑制することを特徴とするゴム押出装置。
【請求項2】
前記一軸方向が前記押出口の延在方向に設定されている請求項1に記載のゴム押出装置。
【請求項3】
前記移動手段により、前記ヘッドの前端面に沿って前記口金を前記ヘッドに対して相対的に任意の方向に移動可能な構成にした請求項1に記載のゴム押出装置。
【請求項4】
前記移動手段の作動を制御することにより、前記口金と前記ヘッドとを所望の相対位置に移動させる制御部を有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム押出装置。
【請求項5】
前記押出口から押し出されたゴム押出物の押出し方向に対する湾曲量を検知するセンサを有し、このセンサの検知データに基づいて前記制御部により前記口金と前記ヘッドとを所望の相対位置に移動させる構成にした請求項1〜4のいずれかに記載のゴム押出装置。
【請求項6】
筒状のシリンダの内部空間にゴム材料を投入し、この内部空間に配置されたスクリューにより、前記ゴム材料を前方に押し出しつつ混合および混練した未加硫ゴムを、前記シリンダの前端に設置されたヘッドに形成されている押出流路に送り込み、前記押出流路の前端で前記ヘッドに取り付けられた口金に前後に貫通して形成されている押出口から前記未加硫ゴムを、前記押出口から押出し方向に連続して延在する芯材冶具を用いることなく、ゴム押出物として押し出すゴム押出物の製造方法において、
前記押出流路の前端開口が前記押出口の後端開口よりも大きく設定されていて、前記押出口の後端開口の全範囲が前記押出流路の前端開口の内側に配置されている状態を維持しながら、前記口金を前記ヘッドの前端面に沿って前記ヘッドに対して相対的に少なくとも一軸方向に移動させて前記口金と前記ヘッドとを所望の相対位置にして、前記未加硫ゴムを前記押出流路を通過させて前記押出口から押し出すことにより、前記ゴム押出物の押出し方向に対する湾曲量を小さくすることを特徴とするゴム押出物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出装置およびゴム押出物の製造方法に関し、さらに詳しくは、ゴム押出物の意図しない湾曲を抑制することができるゴム押出装置およびゴム押出物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する際には、ゴム押出装置によって未加硫ゴムを押出す押出し工程がある。ゴム押出装置では、内設されたスクリューによって未加硫ゴムを可塑化し、前端のヘッドに形成されている押出流路に送り込む。ヘッドの前端には所望の形状の押出口を有する口金が設置されていて、この押出口を未加硫ゴムが通過することにより所望の形状に型付けされたゴム押出物が製造される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ゴム種が異なるとゴム物性も異なり、同じゴム種であってロット毎にゴム物性には多少のばらつきがある。また、ロット毎に押出条件等にもばらつきがある。これらばらつきに起因して、同じ口金を使用して未加硫ゴムを押出しても、ゴム押出物は押出し方向に対して意図しない方向に湾曲し、所望の形状のゴム押出物を得られないことがある。このような場合、その都度、口金の裏側形状を修正加工したり、押出条件等を調整するために余分な作業工数が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−126560号公報
【特許文献2】特開2013−216069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ゴム押出物の意図しない湾曲を抑制することができるゴム押出装置およびゴム押出物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のゴム押出装置は、筒状のシリンダと、このシリンダの内部空間に配置されるスクリューと、このシリンダの前端に設置されて前記内部空間と連通する押出流路を有するヘッドと、前記押出流路の前端位置で前記ヘッドに取り付けられる口金と、前記押出流路と連通して前記口金を前後に貫通する押出口とを備えて、前記スクリューにより前方に押し出された未加硫ゴムが、前記押出口から押出し方向に連続して延在する芯材冶具を用いることなく、前記押出口からゴム押出物として押し出されるゴム押出装置において、前記押出流路の前端開口が前記押出口の後端開口よりも大きく設定されていて、前記押出口の後端開口の全範囲が前記押出流路の前端開口の内側に配置されている状態を維持しながら、前記ヘッドの前端面に沿って前記口金を前記ヘッドに対して相対的に少なくとも一軸方向に移動させる移動手段を有し、前記口金と前記ヘッドとを所望の相対位置で固定できる構成にして、前記ゴム押出物の押出し方向に対する湾曲量を抑制することを特徴とする。
【0007】
本発明のゴム押出物の製造方法は、筒状のシリンダの内部空間にゴム材料を投入し、この内部空間に配置されたスクリューにより、前記ゴム材料を前方に押し出しつつ混合および混練した未加硫ゴムを、前記シリンダの前端に設置されたヘッドに形成されている押出流路に送り込み、前記押出流路の前端で前記ヘッドに取り付けられた口金に前後に貫通して形成されている押出口から前記未加硫ゴムを、前記押出口から押出し方向に連続して延在する芯材冶具を用いることなく、ゴム押出物として押し出すゴム押出物の製造方法において、前記押出流路の前端開口が前記押出口の後端開口よりも大きく設定されていて、前記押出口の後端開口の全範囲が前記押出流路の前端開口の内側に配置されている状態を維持しながら、前記口金を前記ヘッドの前端面に沿って前記ヘッドに対して相対的に少なくとも一軸方向に移動させて前記口金と前記ヘッドとを所望の相対位置にして、前記未加硫ゴムを前記押出流路を通過させて前記押出口から押し出すことにより、前記ゴム押出物の押出し方向に対する湾曲量を小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッドの前端面に沿って口金をヘッドに対して相対的に少なくとも一軸方向に移動させることができる。押出口を押出流路に対して押出し方向と直交する方向に相対移動させると、押出流路から押出口を通過する際に未加硫ゴムの圧力分布(流量分布)に変化が生じてゴム押出物の湾曲具合を調整することができる。それ故、ゴム押出物の意図しない湾曲と反対方向に湾曲させるように、ヘッドの前端面に沿って口金をヘッドに対して相対移動させることで、ゴム押出物の意図しない湾曲を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のゴム押出装置の概要を平面視で例示する説明図である。
図2図1のヘッドの周辺を正面視で例示する説明図である。
図3図1のヘッドの周辺を平面視で例示する説明図である。
図4図2のA−A断面視でヘッド周辺の内部を例示する説明図である。
図5図3の口金をヘッドの左右方向中央に配置してゴム押出物を押し出している状態を例示する説明図である。
図6図5の口金をヘッドに対して左側に移動させた位置でゴム押出物を押し出している状態を例示する説明図である。
図7図6の口金をヘッドに対してさらに左側に移動させた位置でゴム押出物を押し出している状態を例示する説明図である。
図8】ゴム押出装置の別の実施形態を正面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のゴム押出装置およびゴム押出物の製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図4に例示する本発明のゴム押出装置1は、筒状のシリンダ2と、シリンダ2の内部に配置されるスクリュー3と、シリンダ2の前端に配置されるヘッド4とを備えている。ヘッド4には押出口6を有する口金5が取り付けられている。このゴム押出装置1は、口金5をヘッド4の前端面に沿って、ヘッド4に対して相対的に少なくとも一軸方向に移動させる移動手段7を有している。尚、図1では、移動手段7等を省略して図示していない。
【0012】
この実施形態ではゴム押出装置1はさらに、センサ9と、センサ9による検知データが入力される制御部10とを備えている。口金5の前方には押出口6から押し出されたゴム押出物R2を次工程に搬送するコンベヤ装置11が配置されている。
【0013】
図面では、ヘッド4の前端面に沿った一軸方向として、X矢印方向およびY矢印方向が記載されている。X矢印方向はヘッド4の左右方向(幅方向)であり、Y矢印方向はヘッド4の上下方向(高さ方向)であり、X矢印方向とY矢印方向とは直交する方向である。この一軸方向は、ヘッド4の前端面に沿った方向であればよいので、X矢印方向やY矢印方向に限らず、ヘッド4の前端面に沿った斜めの方向の場合もある。
【0014】
図4に例示するように、シリンダ2の前端部では内部空間が前方に向かって狭くなっている。ヘッド4は、前後方向に貫通する押出流路4aを有していて、この押出流路4aはシリンダ2の内部空間と連通している。
【0015】
口金5はヘッド4の押出流路4aの前端位置に取り付けられている。この実施形態では、口金5を前後に貫通する押出口6は、図2に例示するように正面視でヘッド4の左右方向に延在する台形状であり、左右非対称の形状になっている。押出流路4aと押出口6とは連通しているので、シリンダ2の内部空間から押出流路4aに押し込まれて通過した未加硫ゴムR1が、押出口6からゴム押出物R2として押し出される。押出口6はこの形状に限らず、円形状、楕円形状、半円形状、正方形状、長方形状等、所望の形状が採用される。
【0016】
ヘッド4には左右方向に間隔をあけて2つの保持部材7aが、保持部材7aを前後に貫通する固定ボルト7bによって固定されている。口金5は保持部材7aによってヘッド4に対して左右方向に移動可能に保持されている。
【0017】
ヘッド4の左側面には固定プレート8が外側に張り出して取り付けられていて、固定プレート8には移動手段7が設置されている。この実施形態では移動手段7として、サーボモータと、サーボモータにより回転して軸方向に移動するボールねじとを有する構成が採用されて、ボールねじの先端が口金5の左側面に接続されている。
【0018】
移動手段7はその他に例えば、油圧シリンダなどを採用することができる。移動手段7の設置場所はヘッド4の左側に限らず、例えば、ヘッド4の右側にすることもできる。尚、口金5と移動手段7とを直接接続する構造ではなく、例えば、口金5を枠体に取り付けて、この枠体と移動手段7とを接続した構造にすることもできる。
【0019】
移動手段7の作動によって、ボールねじが左右に進退するので口金5はヘッド4に対して左右方向に移動する。これに伴い、正面視で押出流路4aの前端開口に対する押出口6の位置が変化する。口金5は、所望の移動位置で固定できるので、口金5とヘッド4とを、ヘッド4の前端面に沿った所望の相対位置で固定できる構成になっている。移動手段7の作動はセンサ9による検知データに基づいて制御部10により制御される。そのため、制御部10の制御によって口金5がヘッド4に対して所望の相対位置に移動して固定される。
【0020】
以下、本発明のゴム押出物の製造方法の手順を説明する。
【0021】
ゴム押出装置1によってゴム押出物R2を製造する際には、原料ゴムおよび配合剤などの所定量のゴム材料Rを、シリンダ2の内部空間に投入する。ゴム材料Rは回転するスクリュー3により混合、混練される。スクリュー3により前方に押し出された未加硫ゴムR1は、ある程度柔らかくなって(可塑化されて)、押出流路4aに送り込まれて押出流路4aを通過する。
【0022】
押出流路4aの前端開口面積は、口金5によって一部が覆われていて、所望の形状の押出口6から未加硫ゴムR1が押し出されることにより所望の断面形状に型付けされたゴム押出物R2が製造される。例えば、所定形状に形成されたストリップ状のタイヤ部材などのゴム押出物R2が、本発明より製造される。ゴム押出物R2は押し出されつつ、搬送コンベヤ装置11によって次工程に搬送される。
【0023】
未加硫ゴムR1のゴム物性のばらつきや押出条件等によるばらつきがあると、同じ形状の押出口6で押出しても図5に例示するように、ゴム押出物R2が意図しない方向(左右方向や上下方向)に湾曲することがある。尚、図5図7では、押出口6の左右方向(幅方向)中心位置を一点鎖線CLで示していて、ゴム押出物R2の左右方向(幅方向)中心位置を一点鎖線Mで示している。図5では、口金5から前方に距離Lの位置で、ゴム押出物R2の左右方向中心位置Mが、押出口6の左右方向中心位置CLに対して右側にずれ量dだけ偏っていて、ゴム押出物R2が右側に湾曲している(湾曲量dになっている)。
【0024】
ゴム押出物R2が真っ直ぐに押し出されず、図5に例示するように特定の方向に湾曲する原因は、未加硫ゴムR1のゴム物性のばらつきや押出条件(圧力、温度、流速など)、シリンダ2とスクリュー3とのマッチング等、多岐に渡り複合的なものだと考えられる。本発明者は、正面視での押出流路4aと押出口6との相対位置を異ならせることで、ゴム押出物R2の湾曲具合(湾曲量や湾曲方向)が変化することを知得し、この知得に基づいて本発明を創作している。
【0025】
そこで本発明では、図5の位置にある口金5を図6に例示するように、ヘッド4に対して左側に移動させる。このように正面視での押出流路4aと口金5と相対位置を変化させると、押出流路4aから押出口6を通過する際に未加硫ゴムR1の圧力分布(流量分布)に変化が生じる。これに伴い、ゴム押出物R2には左側に湾曲させる力が作用してゴム押出物R2の湾曲具合を調整することができる。
【0026】
仮に、図7に例示するように、口金5をヘッド4に対して一段と左側に移動させると、ゴム押出物R2に作用する左側に湾曲させる力が過大になるため、ゴム押出物R2は左側に湾曲することになる。そこで、本発明では、正面視での押出流路4aと押出口6との相対位置を適切に調整して、図6に例示するように固定した状態にしてゴム押出物R2を押出す。このように、ゴム押出物R2の意図しない湾曲と反対方向に湾曲させるようにヘッド4の前端面に沿って口金5をヘッド4に対して相対移動させることで、ゴム押出物R2の意図しない湾曲を抑制することができる。その結果、右側に湾曲していたゴム押出物R2の湾曲が是正され、押出口6の形状に型付けされた所望形状の真っ直ぐなゴム押出物R2を得ることが可能になる。
【0027】
したがって本発明によれば、ゴム物性や押出条件等によるばらつきが生じても、ヘッド4の前端面に沿った口金5とヘッド4との相対位置を制御することで、意図しない湾曲を抑制した所望の形状のゴム押出物R2を安定して製造することができる。また、ゴム物性や押出条件等によるばらつきに応じて、その都度、口金5の形状を修正加工したり、押出条件等を調整するために従来行っていた余分な作業が不要、或いは、余分な作業が最小限になる。そのため、ゴム押出物R2の生産性を向上させるには有利になる。しかも、本発明は押出流路4aの前端位置に口金5を移動させる移動手段7を設ければよいので、既存のゴム押出機に対しても本発明を容易に適用することができる。
【0028】
この実施形態では、口金5から前方に距離Lの位置における押出口6の左右方向中心位置CLに対するゴム押出物R2の左右方向中心位置Mの左右方向のずれ量dをセンサ9により逐次検知する。制御部10では、ずれ量dがゼロに近づくように口金5の位置(ヘッド4の前端面に沿った口金5とヘッド4との相対位置)を逐次制御する(フィードバック制御をする)。ゴム押出物Rのずれ量dは、距離Lが500mm程度の位置で最も大きくなるので、センサ9によってずれ量dを検知するのは、例えば距離Lが400mm〜600mmの位置にする。
【0029】
ゴム物性や押出条件等の変動パラメータと、ヘッド4の前端面に沿った口金5とヘッド4との相対位置と、その相対位置で押出した場合のゴム押出物R2の湾曲具合との相関データがある程度蓄積されている場合は、この相関データを制御部10に入力しておく。そして、ゴム押出物R2の押出しを開始する際には、実際の変動パラメータを制御部10に入力して、これらのデータと、予め入力されている上述した相関データに基づいて、口金5をヘッド4に対して所定位置に配置した状態でプリセットし、ゴム押出物R2が意図しない湾曲が生じない所望の形状になるように押出をする。その後は、上述したフィードバック制御をする
【0030】
本発明を用いて、例えばタイヤ構成部材となるゴム押出物R2を製造すると、意図しない湾曲が抑制された所望の形状にすることができる。そのため、このゴム押出物R2を用いてタイヤを製造すると、タイヤのユニフォミティを向上させるには有利になる。
【0031】
この実施形態のように、口金5をヘッド4に対して相対移動させる一軸方向が、押出口6の延在方向(押出口6が正面視で最も長く延在している方向)に設定すると、押出流路4aから押出口6を通過する際の未加硫ゴムR1の圧力分布(流量分布)を大きく変化させ易い。そのため、ゴム押出物R2の意図しない湾曲を抑制し易くなる。
【0032】
図8に例示するゴム押出装置1の他の実施形態では、口金5がヘッド4の前端面に沿って、ヘッド4に対して左右方向だけでなく上下方向にも相対移動できる構成になっている。具体的には、ヘッド4の上方に移動手段7が配置されている。この移動手段7にはサーボモータと、サーボモータにより回転して軸方向に移動するボールねじとを有する構成が採用されて、ボールねじの先端が口金5の上面に接続されている。この移動手段7は、ヘッド4の左側に配置された別の移動手段7と連結アーム7cによって連結されている。口金5は保持部材7aによってヘッド4に対して左右方向および上下方向に移動可能に保持されている。
【0033】
口金5の左側に配置された移動手段7は、連結アーム7cを介して口金5の上方に配置された移動手段7および口金5を、ヘッド4の前端面に沿ってヘッド4に対して左右方向に相対移動させる。したがって、この実施形態では口金5はヘッド4の前端面に沿ってヘッド4に対して相対的に任意の方向に移動可能になっている。
【0034】
この実施形態では、押出流路4aから押出口6を通過する際に未加硫ゴムR1の圧力分布(流量分布)をより詳細に変化させることができるので、ゴム押出物R2の湾曲具合をより詳細に調整できる。それ故、ゴム押出物R2の意図しない湾曲をより精度よく確実に抑制することが可能になる。
【0035】
この実施形態においても、先の実施形態で説明した様々な仕様を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ゴム押出装置
2 シリンダ
3 スクリュー
4 ヘッド
4a 押出流路
5 口金
6 押出口
7 移動手段
7a 保持部材
7b 固定ボルト
7c 連結アーム
8 固定プレート
9 センサ
10 制御部
11 コンベヤ装置
R ゴム材料
R1 未加硫ゴム
R2 ゴム押出物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8