【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させる方法であって、以下の工程を備えている。
【0011】
第1工程:第1ガラス基板をワークテーブル上に載置する。
【0012】
第2工程:第1ガラス基板に波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を照射して第1ガラス基板の表面に所定高さの凸部を形成する。
【0013】
第3工程:第1ガラス基板の凸部をスペーサとして第1ガラス基板上に第2ガラス基板を重ね合わせる。
【0014】
第4工程:凸部以外の領域にレーザ光を照射して第1ガラス基板と第2ガラス基板とを融着する。
【0015】
この方法では、まず、ワークテーブルに載置された第1ガラス基板に波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光が照射され、これにより第1ガラス基板の内部が加熱され、レーザ光が照射された部分が溶融して膨張し、第1ガラス基板表面に凸部が形成される。次に、この凸部が形成された第1ガラス基板上に、凸部をスペーサとして第2ガラス基板が重ね合わされる。そして、凸部以外の領域に、先のレーザ光と同じレーザ光が照射される。これにより、第1ガラス基板及び第2ガラス基板においてレーザ光が照射された部分が溶融し、両ガラス基板は、ほぼ凸部の高さに相当する隙間を介して接合される。
【0016】
ここでは、スペーサ材やフリットを用いることなく、かつ凸部を形成する工程及び2つのガラス基板を融着する工程において同じレーザ光を用いて、2つのガラス基板の間に隙間をあけて両ガラス基板を接合することができる。このため工程が簡単になる。また、多光子吸収現象を用いることなく2つのガラス基板を融着させるので、集光位置を高精度に制御する必要がなく、装置構成が簡単になる。
【0017】
本発明の第2側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1側面の方法において、第2工程及び第4工程では、波長が2.7μm以上5.0μm以下のレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0018】
ここでは、ガラスに対する透過率が比較的高い中赤外のレーザ光が用いられるので、レーザ光が照射される一方のガラス基板の厚さが比較的厚い場合でも、他方のガラス基板までレーザ光が届き、安定してガラス基板を融着させることができる。
【0019】
本発明の第3側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1又は第2側面の方法において、第2工程及び第4工程では、レーザ光を照射しながら融着予定ラインに沿って走査する。
【0020】
ここでは、2つのガラス基板を、連続した融着予定ラインに沿って融着することができる。したがって、2つのガラス基板の間に形成された空間を封止できる。
【0021】
本発明の第4側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第3側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4工程では、連続発振のレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0022】
ここでは、連続発振のレーザ光が用いられるので、融着予定ラインに沿って均一な連続する溶融部を形成でき、2つのガラス基板を簡単にかつ強固に融着することができる。
【0023】
本発明の第5側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第3側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4では、繰り返し周波数が1MHz以上の擬似連続発振のレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0024】
ここでは、擬似連続発振のレーザ光が用いられるので、連続発振のレーザ光と同様にほぼ均一な連続する溶融部を簡単に形成することができる。
【0025】
本発明の第6側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第3側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4工程では、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0026】
ここでは、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光が用いられるので、パルスレーザの1パルスごとに形成された各溶融部を互いに重ねて連続させた溶融部を形成できる。
【0027】
本発明の第7側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第6側面のいずれかの方法において、第3工程では、第2ガラス基板を第1ガラス基板に対して押圧することなく重ね合わせる。
【0028】
ここでは、2枚のガラス基板を互いに圧接する必要がなく、装置構成が簡単になる。
【0029】
本発明の第8側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第7側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4工程では、Er:Y
2O
3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたいずれかのレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0030】
本発明の第9側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第8側面のいずれかの方法において、ガラス基板はレーザ光の内部吸収率が5%以上95%以下である。
【0031】
本発明の第10側面に係るレーザ光によるガラス基板加工装置は、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させる装置である。この装置は、ガラス基板が載置されるワークテーブルと、レーザ発振器と、レーザ光照射機構と、を備えている。レーザ発振器は波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を発振する。レーザ光照射機構は、ワークテーブルに載置された第1ガラス基板の表面にレーザ発振器からのレーザ光を照射して、第1ガラス基板の表面に所定高さの凸部を形成する。また、このレーザ光照射機構は、第1ガラス基板の凸部をスペーサとして第1ガラス基板上に第2ガラス基板が重ね合わされた状態において凸部以外の領域にレーザ光を照射して第1ガラス基板と第2ガラス基板とを融着する。
【0032】
本発明の第11側面に係るレーザ加工装置は、第10側面の装置において、レーザ発振器は波長が2.7以上5.0μm以下の中赤外光のレーザ光を発振する。
【0033】
本発明の第12側面に係るレーザ加工装置は、第10又は第11側面の装置において、レーザ光照射機構からのレーザ光をガラス基板に対して相対的に移動させて、レーザ光を融着予定ラインに沿って走査する走査機構をさらに備えている。
【0034】
本発明の第13側面に係るレーザ加工装置は、第10から第12側面のいずれかの装置において、レーザ発振器はレーザ光を連続発振する。
【0035】
本発明の第14側面に係るレーザ加工装置は、第10から第12側面のいずれかの装置において、レーザ発振器は繰り返し周波数が1MHz以上のレーザ光を擬似連続発振する。
【0036】
本発明の第15側面に係るレーザ加工装置は、第10から第12側面のいずれかの装置において、レーザ発振器は繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光を発振する。
【0037】
本発明の第16側面に係るレーザ加工装置は、第10から第15側面のいずれかの装置において、レーザ発振器は、Er:Y
2O
3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたいずれかのレーザ光をガラス基板に対して照射する。