特許第6521070号(P6521070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521070
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20190520BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190520BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   H02J7/00 A
   H01M10/48 301
   H01M2/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-529520(P2017-529520)
(86)(22)【出願日】2016年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2016068987
(87)【国際公開番号】WO2017014007
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-143078(P2015-143078)
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒舘 卓央
【審査官】 原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−026712(JP,A)
【文献】 特開2014−072945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00−19/32
31/36
H01M 2/10
10/42−10/48
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の温度を監視する温度検出素子と、
前記電池の種類を判別する電池種判別素子と、
前記温度検出素子が接続されるとともに外部機器の機器側第1端子へ接続される第1端子と、
前記電池種判別素子が接続されるとともに前記外部機器の機器側第2端子へ接続される第2端子と、
を有し、前記外部機器に接続可能な電池パックであって、
接続された前記外部機器に応じて、前記第1端子及び前記第2端子の少なくとも一つから出力される情報を、前記温度検出素子からの温度情報及び前記電池種判別素子からの電池種判別情報の少なくとも一つとするか、又は、前記情報とは別のデジタル信号とするか、を切り替え可能に構成したことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記温度検出素子及び前記電池種判別素子の中で少なくとも一つからの情報を前記外部機器へ伝達することを遮断する遮断手段を有し、
前記遮断手段で前記情報を遮断することにより、前記デジタル信号を出力するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記外部機器からの所定の信号によって起動する制御部と、
前記所定の信号を検出するための信号検出手段と、を有し、
前記信号検出手段により前記所定の信号を検出した場合において、前記遮断手段は前記温度検出素子及び前記電池種判別素子からの情報を前記外部機器へ伝達することを遮断し、
前記制御部は、前記第1端子及び前記第2端子の中で少なくとも一つを介して前記外部機器と前記デジタル信号を送信又は受信するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記外部機器が前記電池パックを充電するための充電装置の場合には、前記温度検出素子の情報及び前記電池種判別素子の情報を前記第1端子及び前記第2端子を介して前記充電装置に伝達し、
前記外部機器が前記充電装置以外の場合には、前記デジタル信号を前記外部機器に伝達することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電池パック。
【請求項5】
電池の温度を監視する温度検出素子と、
前記電池の種類を判別する電池種判別素子と、
前記温度検出素子が接続されるとともに外部機器の機器側第1端子へ接続される第1端子と、
前記電池種判別素子が接続されるとともに前記外部機器の機器側第2端子へ接続される第2端子と、
を有する電池パックであって、
前記温度検出素子及び前記電池種判別素子の少なくとも一方からの情報を前記外部機器へ伝達することを遮断する遮断手段を有し、
前記外部機器が前記電池パックを充電するための充電装置の場合には、前記温度検出素子の情報及び前記電池種判別素子の情報を前記第1端子及び前記第2端子を介して前記充電装置に伝達し、前記外部機器が前記充電装置以外の場合には、前記遮断手段により前記情報の伝達を遮断することを特徴とする電池パック。
【請求項6】
前記外部機器からの所定の信号によって起動する制御部と、
前記所定の信号を検出するための信号検出手段と、を有し、
前記信号検出手段により前記所定の信号を検出した場合において、前記遮断手段は前記温度検出素子及び前記電池種判別素子からの情報を前記外部機器へ伝達することを遮断し、
前記制御部は、前記第1端子及び前記第2端子の少なくとも一方を介して前記外部機器とデジタル信号を送信又は受信するように構成したことを特徴とする請求項5に記載の電池パック。
【請求項7】
前記信号検出手段により検出される前記所定の信号がパルス信号であることを特徴とする請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記電池パックの使用履歴を前記外部機器とデジタル信号によって通信可能に構成したことを特徴とする請求項6又は7に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具やアクセサリ機器等の電源として用いられる電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、小型、軽量をメリットとしてコ−ドレス電動工具の電源としてリチウムイオン電池を備えた電池パックの普及が進んでいる。また、電動工具用の電池パックは電動工具だけではなく、電池パックに対応したラジオやライト等の様々なアクセサリ機器にも用いられ、その用途が広がっている。このような様々な使用方法が想定される中、例えば電池パックの使用履歴を情報として得て、その情報に基づき制御を行うことができれば、より最適な制御を実現することができる。また、顧客から寿命になって返却された電池パックであれば、その使用履歴を解析すること等により、今後の開発に活かすことができる。特許文献1には、このような履歴情報に基づく制御を行う電池パックが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−072945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動工具用の電池パックは、様々な電動工具やアクセサリ機器に使用することができるよう互換性を有することが一般的である。電池パックは充電装置や電動工具等に対して所定の接続端子を介して接続され制御が行われるが、端子の役割を変更することは、上述した互換性を損なうことになる。例えば、既存の電池パックの端子が温度情報や電池種情報を伝達する役割を果たしている場合、それとは別の役割、例えば、電池パックの履歴情報を取り出す送受信の役割を持たせようとすると、従来の温度情報や電池種情報に基づく制御が行えなくなってしまう可能性がある。また、履歴情報を取り出すための送受信の役割を果たす端子を新たに設けることは、端子の設置スペ−ス等の問題があり困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、電池の温度を監視する温度検出素子と、前記電池の種類を判別する電池種判別素子と、前記温度検出素子が接続されるとともに外部機器の機器側第1端子へ接続される第1端子と、前記電池種判別素子が接続されるとともに前記外部機器の機器側第2端子へ接続される第2端子と、を有し、前記外部機器に接続可能な電池パックであって、接続された前記外部機器に応じて、前記第1端子及び前記第2端子の少なくとも一つから出力される情報を、前記温度検出素子からの温度情報及び前記電池種判別素子からの電池種判別情報の少なくとも一つとするか、又は、前記情報とは別のデジタル信号とするか、を切り替え可能に構成したことを特徴とする。また、上記目的を達成するため、本発明は、電池の温度を監視する温度検出素子と、前記電池の種類を判別する電池種判別素子と、前記温度検出素子が接続されるとともに外部機器の機器側第1端子へ接続される第1端子と、前記電池種判別素子が接続されるとともに前記外部機器の機器側第2端子へ接続される第2端子と、を有する電池パックであって、前記温度検出素子及び前記電池種判別素子の少なくとも一方からの情報を前記外部機器へ伝達することを遮断する遮断手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新たに専用の端子を設けることなく、電池パック内の情報を外部機器へ送信又は受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明となる電池パックと外部機器である充電装置とを接続した状態を示す回路図の一例である。
図2図1において温度情報を検出するための回路構成の一例である。
図3図1において電池種判別情報を検出するための回路構成の一例である。
図4】本発明となる電池パックと外部機器である情報送受信装置とを接続した状態を示す回路図の一例である。
図5】本発明となる電池パックの制御フローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明となる電池パックと充電装置とを接続した状態の一実施形態を示す回路図である。図1において、1は電池パック20を充電する充電装置であり、以下にその構成を説明する。なお、充電装置1は外部機器の一例である。2は充電装置1の電源となる交流電源である。3は交流電源の電圧を整流平滑するための第一整流平滑回路である。4は電池パック20に電力を供給するために交流電源から供給される電力を変換するための高周波トランスである。5はFET等のスイッチング素子から構成されるスイッチング回路である。6はスイッチング制御回路であり、スイッチングIC等から構成される。スイッチング制御回路6は、高周波トランス4の二次側からの電圧、電流のフィ−ドバック情報に基づきスイッチング回路5の制御を行い、所望の電圧、電流を2次側の回路に供給できるよう制御が行われる。7は高周波トランス4において変換された電圧を整流平滑するための第二整流平滑回路である。8は表示回路であり、例えばLED等で構成され、現在の充電状態(充電前、充電中、充電終了等)を表示する。9は補助電源回路であり、高周波トランス、スイッチング回路、スイッチング制御回路等から構成され、制御部となるマイクロコンピュータ(以下マイコンと称す)14等の制御系の電源となる電圧Vccを供給する。
【0009】
10は電池電圧検出回路、11は充電電流検出回路であり、電池パック20の電池電圧及び充電電流をそれぞれ検出する。12は電圧電流制御回路であり、電圧電流設定回路13で設定される充電電圧及び充電電流の設定値と電池電圧検出回路10及び充電電流検出回路11において検出された電圧情報及び電流情報(検出値)とを比較するための比較器、及び、その比較情報を一次側のスイッチング制御回路6に伝達するためのフォトカプ等から構成される。電圧電流制御回路12を介して伝達されたフィ−ドバック情報に基づき、スイッチング制御回路6は所望の充電電圧及び充電電流を二次側の充電回路(接続端子a及びb)に供給できるよう制御が行われる。
【0010】
4はマイコンであり、電池電圧検出回路10で検出された電池電圧、充電電流検出回路11で検出された充電電流、温度検出回路15で検出された電池パック20の温度情報、電池種検出回路16で検出された電池パック20の電池種判別情報を、A/Dポ−トに入力することにより、各種情報を取り込む構成となっている。また、マイコン14の出力ポ−トからの信号に対応して、電圧電流設定回路13において充電電圧及び充電電圧を複数の設定値に設定できる構成になっている。例えば、出力ポ−トからの設定に対応して充電電流を2A、3A、5A、8A、10A等に複数設定できる。充電電圧も同様に、16.8V(4セルのリチウムイオン電池を充電するための電圧の相当)、21.0V(5セルのリチウムイオン電池を充電するための電圧の相当)等、複数設定できる。なお、これら設定値はこれに限るものではない。
【0011】
また、マイコン14は、出力ポ−トの出力に対応して表示回路8の制御を行う。例えば、表示回路8がLEDで構成されている場合、充電状態に応じて出力ポ−トから所定の信号を出力することによりLEDの発色の制御を行う。また、マイコン14は、フォトカプラ等の絶縁素子を介して信号を出力することにより、スイッチング制御回路6のオン・オフを制御することができるものとする。例えば、出力信号に対応して、充電前及び充電終了後はスイッチング制御回路6をオフし、電池パック20への電力供給を停止し、充電中はスイッチング制御回路6をオンし、電池パック20への電力供給を開始するような構成になっている。これにより充電中以外の電力消費を抑制することができる。
【0012】
17はスイッチング素子であるFET(Pチャネル)であり、18は制限抵抗である。FET17は、マイコン14によりオン及びオフが制御され、電池パック20に所定の接続端子fを介して電圧Vccを供給するものとする。
【0013】
20は電池パックであり、以下にその構成を説明する。21は電池セルであり、複数の電池セルが直列の接続された構成である。本実施の形態では4つの電池セル21が直列に接続され公称電圧14.4Vである。22はセル電圧検出回路であり、各電池セル21のセル電圧を検出するIC等である。23は電池セル21を電源とした電源回路であり、電池パック20側の制御部となるマイクロコンピュータ24(以下マイコンと称す)に電源を供給する。25は電池電圧検出回路であり、電池セル21の全体電圧を検出する。
【0014】
26は過充電検出回路である。セル電圧検出回路22は複数の電池セル21の中の一つでも所定の電圧以上(過充電閾値以上)に達したことを検出すると、過充電であると判別し、所定の信号(異常信号)を出力し、マイコン24は過充電検出回路26を介して当該信号を受信し、過充電状態であることを判別する。また、過充電時にセル電圧検出回路22から出力される信号(異常信号)は、過充電信号出力回路30、及び充電装置1に電池パック20が接続された場合に接続される所定の接続端子d(第1端子)を介して充電装置1側に伝達される。充電装置1はこの信号に基づき充電を停止する構成になっている。
【0015】
27は過放電検出回路である。セル電圧検出回路22は複数の電池セル21の中の一つでも所定の電圧以下(過放電閾値以下)に達したことを検出すると、過放電であると判別し、所定の信号(異常信号)を出力し、マイコン24は過放電検出回路27を介して当該信号を受信し、過放電状態であることを判別する。また、過放電時にセル電圧検出回路22から出力される信号(異常信号)は、過放電信号出力回路29、及び電池パック20が接続された図示しない電動工具等の電気機器の所定の接続端子c(第4端子)を介して機器側に伝達される。電気機器はこの信号に基づき放電を停止する構成になっている。また、過充電検出回路26又は過放電検出回路27を介して受信した異常信号に基づき、マイコン24は、その受信回数をその内部のメモリ等の記憶部24aに記憶する。
【0016】
31はダイオ−ド、32はスイッチング素子であるFETである。電池パック20が充電装置1に接続されると、充電装置1のFET17、互いの所定の接続端子f、及び電池パック20のダイオ−ド31を介して、電池パック20のFET32のゲ−トに電圧Vccが供給され、FET32はオンする。本実施の形態では、FET32がオンすることにより電源回路23が動作し、マイコン24に電源が供給される。また、ダイオ−ド31は、マイコン24の出力ポ−トにも接続されており、マイコン24が起動した後は、当該出力ポ−トから所定の信号が出力されることにより、FET32をオン状態に維持することができる。すなわち、マイコン24が一度起動した後は、充電装置1側からの電圧Vccの供給がなくても、マイコン24の出力ポ−トから信号を出力することにより、電源回路23の動作状態を維持し、マイコン24の動作状態を維持することができる。また、充電装置1に接続することによって電池パック20に供給される電圧Vccは、信号検出手段である接続検出回路28を介してマイコン24によって検出可能に構成されている。マイコン24は、電池パック20を充電装置1に接続した接続回数を、その内部のメモリ24aに記憶する構成となっている。
【0017】
33は電池セル21に近接して設けられた温度検出素子となるサ−ミスタである。サ−ミスタ33の温度情報は、所定の接続端子dを介して充電装置1の温度検出回路15で検出され、検出された温度検出値に基づいて充電制御が行われる。34は電池種判別抵抗(電池種判別素子)であり、例えば、4つの電池セル(直列接続)で構成された電池パックと5つの電池セル(直列接続)で構成された電池パック等を判別するために設けられている。すなわち、電池種判別抵抗34は電池パック20の情報(電池セルの直列数、電池セルの並列数等)を有しており電池パック毎に異なる抵抗値となっている。電池判別抵抗の情報は、所定の接続端子e(第2端子)を介して充電装置1の電池種検出回路16で検出され、検出された電池種判別抵抗の情報に基づいて充電制御が行われる。
【0018】
35及び36はスイッチング素子であるFETであり、後述するように遮断手段として機能する。FET35及び36はマイコン24の所定の出力ポ−トによってオン及びオフが制御される。FET35及び36がオン状態である場合は、充電装置1において温度情報と電池種判別情報が検出できる状態にある。ここで図2図3を用いて、温度情報及び電池種判別情報の検出方法について説明する。
【0019】
図2は温度情報の検出方法の一例である。充電装置1の温度検出回路15は、電圧Vccを抵抗R1、R2で分圧する構成である。電池パック20のサ−ミスタ33の一方側の端子は、所定の接続端子dを介して抵抗R1及びR2の接続点に接続される。この時、FET35がオン状態である場合、サ−ミスタ33の他方側の端子がグランドレベルにあり、充電装置1のマイコン14には、電圧Vccを抵抗R1及びR2とサ−ミスタの合成抵抗で分圧された値が入力される。マイコン14はこの分圧値に基づいて温度情報を判別する。一方、FET35がオフ状態である場合、サ−ミスタ33の他方側の端子は、グランドレベルではないため(オ−プン状態)、マイコン14は温度情報を検出することはできない。すなわち、充電装置1側のマイコン14にはサ−ミスタ33が接続されていない状態になっている。
【0020】
図3は電池種判別情報の検出方法の一例である。充電装置1の電池種検出回路16は、抵抗R3が電圧Vccでプルアップされている構成である。電池パック20の電池種判別抵抗34の一方側の端子は、所定の接続端子eを介して抵抗R3に接続される。この時、FET36がオン状態である場合、電池種判別抵抗34の他方側の端子がグランドレベルにあり、充電装置1のマイコン14には、電圧Vccを抵抗R3及び電池種判別抵抗34で分圧された値が入力される。マイコン14はこの分圧値に基づいて電池種判別情報を判別する。一方、FET36がオフ状態である場合、電池種判別抵抗34の他方側の端子は、グランドレベルではないため(オ−プン状態)、マイコン14は電池種判別情報を検出することはできない。すなわち、充電装置1側のマイコン14には電池種判別抵抗34が接続されていない状態になっている。
【0021】
37はスイッチング素子であるFETであり、後述するようにデジタル情報の送信のために設けられている。FET37のゲ−トはマイコン24の出力ポ−トに接続されており、FET37のオン及びオフを制御できる構成になっている。電池パック20が充電装置1に接続されている場合、FET37はオフ状態になるようにマイコン24に制御されている。
【0022】
38、39、40はスイッチング素子であり、それぞれPチャネル、Nチャネル、NチャネルのFETである。41は抵抗である。これらの素子は、後述するように、デジタル情報の受信のために設けられている。FET39のゲ−トはマイコン24の出力ポ−トに接続されており、FET39のオン及びオフを制御できる構成になっている。充電装置1に接続されている場合、FET39はオフ状態になるようにマイコン24に制御されている。
【0023】
図4は本発明となる電池パックと情報送受信装置(外部機器)とを接続した状態を示す回路図の一例である。電池パック20内のメモリ等の記憶部24aに記憶されている電池情報を、新たに接続端子を設けることなく外部機器とデジタル通信にて送受信するための一例について図4を用いて説明する。
【0024】
電池パック20は図1と同じ構成であるため説明を省略する。60は電池パック20内のメモリ等の記憶部24aに記憶されている情報を送受信するための外部機器である情報送受信装置であり、以下にその構成を説明する。以下のように構成される。50、52、54及び56は抵抗(制限抵抗)、51、53、55及び57はスイッチング素子であるFET、58は通信用ICである。また情報送受信装置60はパソコン(PC)70とも送受信可能に構成され、PC70側から操作することができる構成になっている。
【0025】
電池情報の通信動作を説明する。電池パック20が情報送受信装置60と接続された場合の動作を以下に説明する。電池パック20が情報送受信装置60と接続端子a〜fで接続された後、使用者がPC70の対応ソフトを操作することにより通信IC58が動作する。まず、通信IC58はTX端子から所定のデジタル信号を出力する。デジタル信号は基本的にはハイ及びロウの信号がパルス的(パルス信号)に出力されるものである。TX端子は、FET55のゲ−トに接続されており、パルス信号がハイの時にオンする。FET55がオンするとPチャネルのFET53もオンする。FET53がオンすると、制限抵抗54を介して電圧Vccが所定の接続端子f(第3端子)を介して、電池パック20のFET32のゲ−トに印加される。これにより上述したように電池パック20側のマイコン24が起動する。なお、上述したように、マイコン24は一度起動すると、ダイオ−ド31に接続されている出力ポ−トから信号を出力し、FET32のオン又はオフに関わらず、動作を継続することができる。
【0026】
また、接続検出回路28において電圧Vccの信号を検出することができる。本実施の形態においては、接続検出回路28において所定のパルス信号を検出した場合、電池パック20は、図1で示した充電装置1ではなく、情報送受信装置60に接続されたものと認識する。情報送受信装置60が接続されたものと認識した場合、電池パック20と情報送受信装置60との間でデジタル通信を行うべく、マイコン24はFET35及び36をオフする。先述したように、FET35及び36をオフすることにより、サ−ミスタ33及び電池種判別抵抗34は電気的に接続されていない状態になる。そして、マイコン24はFET39のゲ−トに接続されている出力ポ−トから所定の出力信号を出力し、FET39をオンさせる。FET39がオンするとPチャネルのFET38もオン状態となる。
【0027】
その状態で情報送受信装置60の通信IC58のTX端子からデジタル信号を出力すると、FET57はデジタル信号に対応してオン及びオフが制御される。TX端子からハイ信号が出力されている場合にはFET57はオン状態であり、FET57のドレインはグランド電位となる。このグランド電位は所定の接続端子eを介して電池パック20に伝達される。FET57のドレインがグランド電位である場合は、FET38及び40もオフ状態であるため、電池パック20のマイコン24のRX端子には、抵抗41を介して電圧VDが入力される。
【0028】
一方、TX端子からロウ信号が出力されている場合にはFET57はオフ状態であり、電池パック20には抵抗56及び所定の接続端子eを介して電圧Vccが伝達される。更に、電池パック20においては、この電圧VccによってFET38及びFET40がオン状態になる。このため、電池パック20のマイコン24のRX端子には、グランドレベルの電圧が入力される。
【0029】
すなわち、情報送受信装置60の通信IC58のTX端子からハイ信号を出力した場合には、電池パック20のマイコン24のRX端子はハイ信号を受信し、逆に通信IC58のTX端子からロウ信号を出力した場合は、マイコン24のRX端子はロウ信号を受信する。更に、これらの信号の伝達は、デジタル信号伝達のための専用の端子ではなく、図1で説明した充電装置1に接続された場合に電池種判別情報を伝達する端子eによって行われる。従って、デジタル信号伝達用の専用の端子を新たに設ける必要がないため、端子の設置スペースを確保する必要がなく大型化を抑えることができ、互換性を維持することができる。
【0030】
電池パック20のマイコン24のTX端子からデジタル信号を出力すると、FET37はデジタル信号に対応してオン及びオフの制御が行われる。TX端子からハイ信号が出力されている場合、FET37はオン状態であり、FET37のドレインはグランド電位となる。このグランド電位は所定の接続端子dを介して情報送受信装置60に伝達される。グランド電位である場合、FET51はオフ状態であるため、情報送受信装置60の通信IC58のRX端子には抵抗50を介して電圧Vccが入力される。
【0031】
一方、マイコン24のTX端子からロウ信号が出力されている場合にはFET37はオフ状態であり、情報送受信装置60には、所定の接続端子dを介して電位は伝達されない。更に、情報送受信装置60においては、抵抗52を介してFET51のゲートに電圧Vccが印加され、FET51がオン状態になる。このため、情報送受信装置60の通信IC58のRX端子には、グランドレベルの電圧が入力される。
【0032】
すなわち、電池パック20のマイコン24のTX端子からハイ信号を出力した場合は、情報送受信装置60の通信IC58のRX端子はハイ信号を受信し、逆にマイコン24のTX端子からロウ信号を出力した場合は、通信IC58のRX端子はロウ信号を受信する。更に、これらの信号の伝達は、デジタル信号伝達のための専用の端子ではなく、図1で説明した充電装置1に接続された場合に温度情報を伝達する端子dによって行われる。従って、デジタル信号伝達用の専用の端子を新たに設ける必要がない。
【0033】
以上から、本実施の形態によれば、充電装置を接続した際に利用する温度情報及び電池種判別情報を伝達する端子を用いて、電池パック内に設けられたメモリ等の記憶部に記憶された電池情報を外部機器に伝達するこができる。すなわち所定の端子(既存の端子)を利用して複数の情報を伝達することができる。そのため、新たな端子の設置スペースを確保する必要がなく大型化を抑えることができると共に、既存の充電機能を維持し互換性を維持することができる。
【0034】
また、本実施の形態においては、情報送受信装置60はPC70とも接続されており、デジタル通信により得た情報をPC70上に表示することも可能である。また、情報送受信装置60は、電池情報をPC70上に表示できるような機器に限定するものではなく、例えば、デジタル通信により得た電池情報に基づき充電制御を行う充電装置、或いは、デジタル通信により得た電池情報に基づき放電制御を行う電動工具又はアクセサリ機器であってもよい。
【0035】
次に、図5の制御フローチャートを用いて電池パック20と外部機器との通信動作を説明する。まず、電池パック20が外部機器に接続されたか否かを判別する(ステップ101)。外部機器に接続された場合は、電圧Vccが所定の接続端子fを介して供給され(ステップ102)、電圧Vccにより電池パック20内のFET32がオンする。これにより、電源回路23が動作して電池パック20のマイコン24が起動する(ステップ103)。ステップ103において起動したマイコン24は、出力ポートから所定の出力信号を出力し、ダイオード31を介してFET32をオンする(ステップ104)。
【0036】
その後、接続検出回路28において所定のパルス信号を検出したか否かを判別する(ステップ105)。ステップ105において所定のパルス信号を検出した場合には、情報送受信装置60に接続されたと判別する(ステップ117)。ステップ105において所定のパルス信号が検出できなかった場合は、充電装置1に接続されたと判別する(ステップ106)。
【0037】
ステップ106において充電装置1に接続されたと判別した場合は、サ−ミスタ33、電池種判別抵抗34をアクティブ状態にするために、FET35及び36をオンするため、マイコン24は所定の信号を出力ポートから出力する(ステップ107及び108)。充電装置1に接続された場合にはデジタル通信は行わないので、FET39をオフすべくマイコン24は所定の信号を出力ポートから出力する(ステップ109)。
【0038】
充電装置1は、所定の接続端子d及びeを介して伝達されるサ−ミスタ33及び電池種判別抵抗34の情報に基づき、電圧電流設定回路13にて充電電圧及び充電電流を設定し、充電を開始する(ステップ110)。充電開始後は、例えば、過充電検出回路26の検出情報や、接続検出回路28の検出情報(充電装置への接続回数)等の充電状態の情報をマイコン24のメモリ24a内に記憶する(ステップ111)。その後、充電装置1は満充電に達したか否かを判別する(ステップ112)。例えば、リチウムイオン電池セルを充電する場合の一般的な充電方法である定電流定電圧充電方法における定電圧区間において充電電流がある所定値以下に達したら満充電であると判別し、充電を終了する(ステップ113)。なお、満充電の判別方法はこれに限るものではない。
【0039】
その後、接続検出回路28にてパルス信号を検出できない状態であるか否かを判別する(ステップ114)。ステップ114において、信号が検出できない状態であるということは、外部機器側からの電圧Vccの供給が無くなったことを意味し、電池パック20が外部機器から外された(非接続状態)ことになる(ステップ115)。外部機器から外された後は、マイコン24の動作を停止するため、ダイオード31を介してFET32をオフすべくマイコン24は出力ポートから所定の信号を出力し(ステップ116)、ステップ101に戻る。
【0040】
一方、ステップ117において、情報送受信装置60に接続されたと判別した場合には、サ−ミスタ33、電池種判別抵抗34を電気的に開放状態にするため、FET35及び36をオフすべくマイコン24は出力ポートから所定の信号を出力する(ステップ118及び119)。また、電池パック20と情報送受信装置60との間でデジタル通信を行うために、FET39をオンにすべくマイコン24は出力ポートから所定の信号を出力する(ステップ120)。このような状態にした後、電池パック20のマイコン24及び情報送受信装置60の通信IC58は、所定の接続端子を介して、双方のRX端子及びTX端子を介して情報の通信を行う(ステップ121)。その後、ステップ114と同様に、接続検出回路28にて信号が検出できるか否かを判別し(ステップ122)、検出できない不検出状態である場合には、電池パック20が情報送受信装置60から外されたものと判別し(ステップ115)、外部機器から外された後は、マイコン24の動作を停止するため、ダイオード31を介してFET32をオフすべくマイコン24は出力ポートから所定の信号を出力し(ステップ116)、ステップ101に戻る。
【0041】
このように、本発明となる電池パック20は、充電装置1と接続時には所定の接続端子d、eを介してサ−ミスタ情報、電池種判別情報の伝達を行いことができる。一方、情報送受信装置60と接続時には充電装置1への接続時に使用する既存の接続端子d、eを介して電池情報の通信を行う。そのため通信用に新たな専用端子を設けることがないため、新たな接続端子の設置スペースを確保する必要がなく大型化を抑えつつ、既存の接続端子を介してデジタル情報の送受信を行うことができ、互換性を維持することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、電池パック20が情報送受信装置60に接続された際に遮断手段(FET35及び36)を遮断するように構成した。しかしながら、充電装置1が情報送受信装置60の機能(履歴管理機能)を備えている場合には、充電装置1から所定のタイミング、例えば充電開始前や充電完了後に、パルス信号を出力するように構成すれば、情報送受信装置60を別途設けなくても充電装置1のみで電池パック20の充電と履歴管理を行うことが可能である。また、電池パック20の放電時、すなわち電動工具やアクセサリ機器等に接続した場合にも、それら機器からパルス信号を出力するように構成すれば、放電状態の履歴管理も可能である。この場合、パルス信号の出力端子として接続端子cを利用すれば新たな端子を設ける必要はない。
【符号の説明】
【0043】
1は充電装置(外部機器)、2は交流電源、3は第一整流平滑回路、4は高周波トランス、5はスイッチング回路、6はスイッチング制御回路、7は第二整流平滑回路、8は表示回路、9は補助電源回路、10は電池電圧検出回路、11は充電電流検出回路、12は電圧電流制御回路、13は電圧電流設定回路、14はマイコン、15は温度検出回路、16は電池種検出回路、17はFET(スイッチング素子)、18は抵抗、20は電池パック、21は電池セル、22はセル電圧検出回路、23は電源回路、24はマイコン、24aは記憶部、25は電池電圧検出回路、26は過充電検出回路、27は過放電検出回路、28は接続検出回路、29は過放電信号出力回路、30は過充電信号出力回路、31はダイオ−ド、32はFET(スイッチング素子)、33はサ−ミスタ(温度検出素子)、34は電池種判別抵抗、36〜40はFET(スイッチング素子)、41は抵抗、60は情報送受信装置(外部機器)である。
図1
図2
図3
図4
図5