特許第6521117号(P6521117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6521117表面保護シート用粘着剤、表面保護シート、および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6521117
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】表面保護シート用粘着剤、表面保護シート、および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20190520BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20190520BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190520BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190520BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190520BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C09J175/08
   C09J175/06
   C09J7/38
   C09J11/06
   B32B27/00 M
   B32B27/40
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-16747(P2018-16747)
(22)【出願日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年5月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田邉 慎吾
【審査官】 佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/207938(WO,A1)
【文献】 特開2016−176068(JP,A)
【文献】 特開2006−182795(JP,A)
【文献】 特開2014−162821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、芳香族イソシアネート(b)との反応物であるポリウレタンポリオール(A)、およびイソシアネート硬化剤(B)を含み、
前記ポリオール100質量%中、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を、80質量%を超えて含有し、
前記ポリオール(a)は水酸基を3つ以上有するポリオールを含有し、かつ該水酸基を3つ以上有するポリオール100質量部に対し、水酸基を2つ有するポリオールが50質量部以下であり、
前記芳香族イソシアネート(b)は、ジフェニルメタンジイソシアネートであり、
前記イソシアネート硬化剤(B)の含有量は、前記ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して2.0質量部以上である、
表面保護シート用粘着剤(但し、有機酸(B−1)、酸性リン酸エステル系化合物(B−2)、および有機酸無水物(B−3)からなる群から選択される少なくとも一つを含有する場合を除く)

有機酸(B−1) 酸性リン酸エステル系化合物(B−2)以外の有機酸
有機酸(B−2) 下記化学式(I)、(II)、(III)で表される酸性リン酸エステル系化合物からなる群から選択される少なくとも一つ

前記化学式(I)中、
およびRは、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基であり、
およびRは同一であっても異なっていてもよく、
およびRの少なくとも一方は、炭化水素基またはアリール基である。

前記化学式(II)および(III)中、
およびRは、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基であり、
およびRは同一であっても異なっていてもよく、
およびRの少なくとも一方は、炭化水素基またはアリール基であり、
AOはアルキレンオキシド基であり、各AOは同一でも異なっていてもよく、
nは1以上の整数を表し、各nは同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
前記ポリウレタンポリオール(A)の重量平均分子量が10万〜50万である、請求項1記載の表面保護シート用粘着剤。
【請求項3】
前記イソシアネート硬化剤(B)が芳香族イソシアネートである、請求項1または2記載の表面保護シート用粘着剤。
【請求項4】
前記ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対し、前記イソシアネート硬化剤(B)を1〜20質量部含む、請求項1〜3いずれか1項記載の表面保護シート用粘着剤。
【請求項5】
さらに、帯電防止剤を含む、請求項1〜4いずれか1項記載の表面保護シート用粘着剤。
【請求項6】
基材、および請求項1〜5いずれか1項記載の表面保護シート用粘着剤の硬化物である粘着層を備える、表面保護シート。
【請求項7】
光学部材、および請求項6に記載の表面保護シートを備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面保護シート用粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネセンス(OLED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、フラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイ(TSP)等の表示装置は、テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯情報端末等に広く使用されている。
【0003】
従来から、これらの表示装置に使用される光学部材を、傷や埃の付着等から保護するために表面保護シートが広く用いられている。
【0004】
表面保護シートに用いられる粘着層を形成する粘着剤として、ウレタン樹脂を含む粘着剤(以下、ウレタン粘着剤という)が各種被着体(光学部材等)に対して、濡れ性と非汚染性に優れていることから使用されている。加えて表面保護シートは、アニール処理(150℃等の高温処理)時に表面保護シートが被着体から浮いたり、ひどいときには剥がれたりする問題があった。またアニール処理後に表面保護シートを被着体から剥離する際、特に冬場では粘着力が上昇してしまい保護対象である被着体を破損させてしまう問題があった。
【0005】
特許文献1には、水酸基を有するウレタン樹脂(A)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B)、有機溶剤(C)を含有することを特徴とする粘着剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献2には、末端に第1級の水酸基を有する水酸基価規定のポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、ポリアルキレングリコール系化合物、エポキシ系化合物およびリン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種(C)を含有する再剥離型ウレタン粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−193609号公報
【特許文献2】特開2015−007226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の粘着剤は、ITO(酸化インジウム錫)フィルムを保護対象としたときには、高温となるアニール処理時に粘着剤層がITO面に濡れ広がり強固な分子結合を形成させ、その後常温もしくは低温下で剥離をする際、粘着力が処理前よりもはるかに大きくなり、保護対象である光学部材を破損させたり、また粘着剤成分の移行により光学部材を汚染してしまう場合があった。
【0009】
本発明は、高温時の密着性、高温経時後の低温再剥離性、および濡れ性に優れる粘着層を形成できる表面保護用粘着剤、粘着シートおよび積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリウレタンポリオールを構成するための、ポリオール、およびイソシアネート硬化剤として、それぞれ特定の構造を有する化合物を用いることにより、上記課題を解決することが可能であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。
【0011】
すなわち本発明の表面保護シート用粘着剤は、ポリオールと、芳香族イソシアネート(b)との反応物であるポリウレタンポリオール(A)、およびイソシアネート硬化剤(B)を含み、前記ポリオール100質量%中、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を50質量%以上含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の本発明によれば、高温時の密着性、高温経時後の低温再剥離性、および濡れ性に優れる粘着層を形成できる表面保護シート用粘着剤、表面保護シートおよび積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明の前に用語を定義する。本明細書で被着体とは、表面保護シートを貼り付ける相手をいう。
本明細書で「テープ」、「フィルム」、および「シート」は同義語である。
【0014】
本明細書において、特に明記しない限り、「分子量」は、数平均分子量(Mn)を意味するものとする。なお、「Mn」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0015】
《表面保護シート用粘着剤》
本明細書の表面保護シート用粘着剤は、ポリオールと、芳香族イソシアネート(b)との反応物であるポリウレタンポリオール(A)、およびイソシアネート硬化剤(B)を含み、前記ポリオール100重量%中、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を50重量%以上含有する。
【0016】
本明細書の粘着剤は、芳香族イソシアネート部位を有するポリウレタンポリオール(A)を表面保護シート用粘着剤として使用することで、アニール処理等の高温処理中の浮き・はがれを抑制し、その後低温環境下で剥離する際にも、容易に剥がすことができる。
【0017】
本明細書の表面保護シート用粘着剤は、例えば、平坦部や曲面部を有する液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネセンス(OLED)等のディスプレイ、係るディスプレイを使用したタッチパネル等に使用できる。また、このようなディスプレイないしタッチパネルを搭載した、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末の携帯端末、コンピューター等の電子機器の表面保護用途に幅広く使用できる。
また、被着体の素材は、ガラスに限らず、例えば、ポリオレフィン、金、銀、銅、ITO等の傷つきやすい素材の保護にも使用できる。
【0018】
また、ディスプレイ以外に、例えば窓ガラス、LED、車両、配線等あらゆる部材、積層体に使用できる。また、部材の製造工程中の保護、ならびに製造後の製品にも使用できる。
【0019】
(ポリウレタンポリオール(A))
ポリウレタンポリオール(A)は、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を50重量%以上含有するポリオールと、1種以上の芳香族ポリイソシアネート(b)とをウレタン化反応させた反応生成物である。
反応時に、芳香族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基(イソシアナト基)は、ポリオールの水酸基よりも少なくなるようなモル比(NCO/OH比)で使用する。これにより、ポリウレタンポリオールが得られる。
芳香族ポリイソシアネート(b)は、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネー(ジイソシアネートともいう)であることが好ましい。また、ポリオール(a)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有するポリオール(a1)が好ましい。

ポリウレタンポリオールの製造には、反応促進のため触媒を使用することが好ましく、必要に応じて、溶媒を用いることができる。
ポリウレタンポリオール(A)は、単独または2種以上を併用できる。
【0020】
ポリウレタンポリオール(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜50万が好ましく、10万〜40万がより好ましく、15万〜40万がさらに好ましく、特に好ましくは15万〜30万である。重量平均分子量(Mw)を上記範囲に調整することで、耐熱性や生産性を向上できる。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0021】
<ポリオール>
ポリオールは、水酸基を2つ以上有する化合物であり、本発明の表面保護シート用粘着剤は、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を50質量%以上含有する。
【0022】
ポリオール100質量%中におけるポリオール(a)の含有量は、50質量%以上100質量%以下であり、好ましくは、60質量%以上95質量%以下、より好ましくは、70質量%以上90質量%以下である。
ポリオール(a)の含有量が50質量%以上であることにより、濡れ性に優れ、100質量%以下であることにより、高温粘着力も優れた接着剤とすることができる。
すなわち、全ポリオール中において、ポリオール(a)が主成分であることで、芳香族イソシアネート(b)との反応物であるポリウレタンポリオールとした場合に、得られた粘着剤が、高温時の密着性、高温経時後の低温再剥離性、および濡れ性に優れるものとすることができる。
【0023】
また、ポリオール(a)として、ポリエーテルポリオール、およびポリエステルポリオールを2種以上含有する場合は、これらの合計含有量が、50質量%以上であればよい。
【0024】
ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールは、それぞれ単独で用いてもよいが、これらをともに用いることで、粘着層の凝集力および粘着力を調整し易くなるために、好ましい。
ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを併用する場合には、粘着層の凝集力および粘着力のバランスの観点から、ポリエーテルポリオールが100質量部に対し、ポリエステルポリオールが、5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは、10〜50質量部である。
【0025】
[ポリオール(a)]
ポリオール(a)は、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであり、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを併用して用いてもよい。
より好ましくは、ポリエーテルポリオールである。
【0026】
ポリオール(a)は、粘着層の凝集力および粘着力のバランスの観点から、1種類のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを使用する場合、水酸基を3つ以上有するポリオールであることが好ましい。2種類以上のポリオールを使用する場合は、水酸基を2つ有するポリオールと、水酸基を3つ以上有するポリオールを併用することが好ましい。水酸基を2つ有するポリオールと、3つ以上有するポリオールを併用する場合には、水酸基を3つ以上有するポリオールが100質量部に対し、2つ有するポリオールが、20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは、20〜50質量部である。
また、水酸基を3つ以上有するポリオールを併用する場合、ポリイソシアネート(b)とポリオールは、NCO/OH比(モル比)が0.80以下に設定することが好ましい。NCO/OH比(モル比)を0.80より大きくすると、特に水酸基を3つ有するポリオールを使用した場合、併用するポリオールや触媒によっては局所的にゲル化が起こり塗工面の異物として検出され歩留まりが低下する場合がある。またNCO/OH比(モル比)は0.40以上であれば、ウレタンポリオール(A)の重量平均分子量を大きくさせ易く、耐熱性を付与できる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、1分子中に2つ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させた反応物が挙げられる。
【0028】
活性水素含有化合物は、水酸基含有化合物およびアミン等が好ましい。
水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール等の2官能活性水素含有化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能活性水素含有化合物;ペンタエリスリトール等の4官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
アミンとしては、例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の2官能活性水素含有化合物;トリエタノールアミン等の3官能活性水素含有化合物;エチレンジアミン、芳香族ジアミン等の4官能活性水素含有化合物;ジエチレントリアミン等の5官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
【0029】
オキシラン化合物としては、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0030】
ポリエーテルポリオールは、分子内に活性水素含有化合物に由来するアルキレンオキシ基を有することが好ましい(このポリオールを「ポリオキシアルキレンポリオール」ともいう)。ポリオキシアルキレンポリオールを構成する水酸基含有化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが好ましく、特に結晶性が低く柔軟性が発現し易いポリプロピレングリコールが好ましい。
【0031】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、透明性や柔軟性が発現し易いことから、200〜10,000が好ましく、400〜8,000がより好ましく、600〜6,000がさらに好ましい。Mnを200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、Mnを10,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0032】
ポリエステルポリオールは、例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とをエステル化反応させ化合物(エステル化物)、またはラクトンを開環重合して合成した化合物(開環重合物)等が好ましい。
【0033】
ラクトンは、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、およびポリバレロラクトン等が挙げられる。
【0034】
ポリオール成分は、例えば、上記の活性水素含有化合物の他に、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0035】
酸成分は、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、および4,4’−ビフェエルジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、200〜6,000が好ましく、500〜6,000がより好ましく、500〜4,000がさらに好ましく、500〜3,000が特に好ましい。Mnを200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、Mnを6,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0037】
なお、ポリオール(a)は、カルボキシル基、スルホ基等の酸性官能基を含有すると、ITO等の被着体を腐食させる場合があるため、酸性官能基を有しないポリオールを使用することが好ましい。
【0038】
[その他のポリオール]
ポリオール(a)以外のその他のポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ブタジエン系ポリオール、ひまし油ポリオール、ポリアミドポリオール、ポリイミドポリオールまたはアクリルポリオール等を用いることができる。
【0039】
<芳香族ポリイソシアネート(b)>
芳香族ポリイソシアネート(b)は、1分子中に、芳香環と、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、制限されない。中でも、芳香族ポリイソシアネート(b)として、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート(ジイソシアネートともいう)であることが好ましい。
芳香族ポリイソシアネート(b)としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。
【0040】
また、ジイソシアネートを変性したトリイソシアネートであってもよい。トリイソシアネートは、例えば、上記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0041】
芳香族ポリイソシアネート(b)は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0042】
芳香族ポリイソシアネート(b)は、単独または2種以上を使用できる。
【0043】
<触媒>
触媒は、例えば、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が好ましい。
【0044】
3級アミン系化合物は、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0045】
有機金属系化合物は、錫系化合物および非錫系化合物等が好ましい。
錫系化合物は、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物は、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系化合物;オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系化合物;2−エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物;安息香酸コバルトおよび2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物;ナフテン酸亜鉛および2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系化合物が挙げられる。
【0046】
触媒は、単独または2種以上を使用できる。
【0047】
触媒は、錫系化合物が反応速度向上や着色が少ないという点で特に好ましい。
【0048】
触媒は、芳香族ポリイソシアネート(b)とポリオール(a)との合計100質量部に対して、0.01〜1.0質量部を使用することが好ましい。
【0049】
<溶剤>
ウレタンポリオール(A)の製造には、必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの中でも芳香族ポリイソシアネート(b)の溶解性の点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等が好ましく、また溶剤の沸点等の点から、炭化水素系溶剤等を併用することが好ましい。
【0050】
<ウレタンポリオール(A)の製造方法>
ウレタンポリオール(A)の製造方法は、特に制限されず、塊状重合法および溶液重合法等の公知の重合方法により製造することができる。
製造方法の手順は、例えば、
(手順1)1種以上のポリオール(a)、1種以上の芳香族ポリイソシアネート(b)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
(手順2)1種以上のポリオール(a)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上の芳香族ポリイソシアネート(b)を滴下添加する手順;が挙げられる。
(手順3)1種以上のポリオール(a)のうち最終滴下分を余らせた残り、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上の芳香族ポリイソシアネート(b)を滴下添加し、その後余らせておいた分の1種以上のポリオール(a)を追って滴下する手順;が挙げられる。
これらの中でも反応熱の制御が容易な(手順2)(手順3)が好ましい。
【0051】
反応温度は、触媒を使用する場合、100℃未満が好ましく、70〜95℃がより好ましい。反応温度を100℃未満にするとウレタン反応以外の副反応を抑制できるため所望のウレタンポリオール(A)を得易い。反応温度は、触媒を使用しない場合、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。
【0052】
ウレタンポリオール(A)を製造する際の芳香族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基(NCO)およびポリオール(y)の水酸基(OH)は、NCO/OHのモル比でいうと0.4〜0.95が好ましく、0.4〜0.90がより好ましく、0.5〜0.80がさらに好ましい。NCO/OH比が上記の範囲内にあることで適度な分子鎖を有するウレタンポリオールが形成できるため、濡れ性および耐熱性がより向上する。
【0053】
合成する際に触媒を用いる場合、上記触媒を不活性化させることが好ましい。反応停止剤は、例えばアセチルアセトン等を配合すればよい。
【0054】
反応停止剤は、単独または2種類以上を使用できる。
【0055】
(イソシアネート硬化剤(B))
イソシアネート硬化剤(B)は、イソシアネート基を複数有する公知の化合物である。
イソシアネート硬化剤(B)は、前述の芳香族ポリイソシアネート(b)を用いてもよく、芳香族ポリイソシアネート(b)以外のイソシアネート化合物、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート、ならびにこれらのトリメチロールプロパンアダクト体、これらのビュウレット体、またはこれら3量体である3官能イソシアネート等であってもよい。
特に、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、なかでも分子内にイソシアネート基を3つ以上有する芳香族ポリイソシアネートを用いると低温再剥離性に優れるために好ましい。また、イソシアネート基を3つ以上有する脂肪族ポリイソシアネートを用いると、濡れに優れるため好ましい。
【0056】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0058】
イソシアネート硬化剤(B)は、単独または2種以上を使用できる。
【0059】
イソシアネート硬化剤(B)の配合量は、ウレタンポリオール(A)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1.5〜10質量部がさらに好ましく、2.0〜5質量部が特に好ましい。イソシアネート硬化剤(B)の含有量がこの範囲であることにより、濡れ性、および高温粘着力が良好となり、適度な粘着力、凝集力が得られ易い。
【0060】
(可塑剤(C))
本発明の粘着剤は、さらに可塑剤(C)を含むことができる。可塑剤(C)を含むことにより、被着体に対する粘着層の濡れ性がより向上する。可塑剤(C)は、他の成分との相溶性等の観点から、炭素数4〜18の脂肪酸のエステル化合物、またはリン酸エステル等が好ましい。
【0061】
炭素数4〜18の脂肪酸のエステル化合物は、例えば、炭素数4〜18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステル、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸と4価以下のアルコールとのエステル、炭素数4〜18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル、不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0062】
炭素数4〜18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリット酸トリオレイル、およびトリメリット酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0063】
炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸と4価以下のアルコールとのエステルを構成する炭素数14〜18の不飽和脂肪酸および分岐酸と4価以下のアルコール以下の通りである。炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸は、例えば、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。4価以下のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0064】
炭素数4〜18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ−2−エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0065】
不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステルは、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油等のエポキシ化油脂や炭素数8〜18の不飽和脂肪酸をエポキシ化した化合物と、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物等が挙げられる。
【0066】
リン酸エステルは、例えば、亜リン酸またはリン酸と炭素数2〜18の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0067】
可塑剤(C)は、単独または2種以上を使用できる。
【0068】
可塑剤(C)の数平均分子量(Mn)は、濡れ速度向上等の観点から、300〜1000が好ましく、300〜900がより好ましく、350〜850がさらに好ましい。
【0069】
可塑剤(C)の配合量は、ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して0.1〜100質量部が好ましく、1〜80質量部がより好ましく、5〜60質量部がさらに好ましい。可塑剤(C)を適量配合すると濡れ性がより向上する。
【0070】
(酸化防止剤(D))
本発明の粘着剤は、さらに酸化防止剤(D)を含むことができる。酸化防止剤(D)を含むとポリウレタンポリオール(A)とイソシアネート硬化剤(B)との架橋ネットワークの熱分解を抑制できることで、高温経時後に再剥離性が低下し難い粘着層が得られる。
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤、ならびに硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤等が好ましい。フェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0071】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、およびステアリン−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、および3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、および1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0072】
硫黄系酸化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0073】
リン系酸化防止剤は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0074】
酸化防止剤(D)は、単独または2種以上を使用できる。
【0075】
酸化防止剤(D)の配合量は、ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が更に好ましい。
【0076】
(帯電防止剤(E))
本発明の粘着剤は、さらに帯電防止剤(E)を含むことができる。帯電防止剤(E)を含むと粘着シートを剥離する際の静電気放電を抑制し、例えば、ディスプレイ等に組み込まれた電子部品等の破損を防止し易い。
本発明は、ポリオールと、芳香族イソシアネート(b)との反応物であるポリウレタンポリオール(A)、およびイソシアネート硬化剤(B)を含み、前記ポリオール100質量%中、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を50質量%以上含有する粘着剤と、さらに帯電防止剤とを組み合わせて用いることで、帯電性防止性だけでなく、濡れ性もより向上することで、表面保護用シートに用いるうえで、より優れた粘着剤とすることができる。
【0077】
帯電防止剤は、例えば、無機塩、イオン液体、イオン固体、界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン性液体が好ましい。なお、「イオン性液体」は、常温溶融塩ともいい、25℃で液体の性状を示す。
【0078】
無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0079】
イオン性液体は、カチオンとアニオンの塩であり、カチオンは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0080】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0081】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、および1−メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0082】
アンモニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびトリ−n−ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0083】
その他、カチオンがピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびスルホニウム塩等である公知のイオン液体を適宜使用できる。
【0084】
イオン固体は、イオン液体同様、カチオンとアニオンの塩であるが、常圧下25℃において固体のものを指す。カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0085】
アルカリ金属イオンを含むイオン固体は、例えば、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、リチウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ナトリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ナトリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、ナトリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、カリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、カリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、カリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0086】
ホスホニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、テトラブチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0087】
ピリジニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0088】
アンモニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、トリブチルメチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルメチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、オクチルトリブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラブチルビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0089】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン固体を適宜使用できる。
【0090】
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性のタイプに分類できる。
【0091】
非イオン性のタイプは、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、肪酸ジエタノールアミド、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
アニオン性のタイプは、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、およびポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。
カチオン性のタイプは、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、および第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型等が挙げられる。
両性のタイプは、例えば、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、および高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0092】
帯電防止剤(E)は、25℃において液体である場合、固体のときと比較し、表面配向性に優れるため、より良好な帯電防止性を発現しやすい。
【0093】
帯電防止剤(E)は、25℃において固体である場合、液体のときと比較し、その一部が凝集体として粘着層に存在し応力緩和部位として作用するため、良好な基材密着性を発現しやすい。
【0094】
これらの中でも帯電防止剤(E)は、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはテトラブチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルニルイミド)が好ましい。
【0095】
帯電防止剤(E)は、単独または2種以上を使用できる。
【0096】
帯電防止剤(E)の配合量は、ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01〜3質量部が好ましく、0.03〜2質量部がより好ましく、0.06〜1質量部が更に好ましい。0.01質量部以上では帯電防止性能が発現でき、3質量部以下であれば、被着体汚染を低減できる。
【0097】
(溶剤)
溶剤としては、前述のポリウレタンポリオール(A)の製造に際して使用できる溶剤を使用することができるが、沸点が120℃以下のエステル系、ケトン系、炭化水素系溶剤等が好ましい。溶剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0098】
(任意成分)
本明細書の粘着剤は、課題を解決できる範囲内であれば必要に応じて、任意成分を含むことができる。任意成分は、例えば、樹脂、充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、消泡剤、および滑剤等が挙げられる。
【0099】
充填剤は、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0100】
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0101】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、およびビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0102】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’,−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、および[2(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0103】
サリチル酸系紫外線吸収剤は、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、およびp−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0104】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤は、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、およびエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0105】
紫外線吸収剤は、保護対象によっては紫外線硬化膜を形成させるべく紫外線を透過させた方が良い場合がある。そういった状況の際には、本発明に紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。
【0106】
光安定剤は、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線安定剤等が挙げられる。
【0107】
ヒンダードアミン系光安定剤は、例えば、[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート]、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、およびメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0108】
紫外線安定剤は、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケル−ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、およびニッケル−ジブチルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0109】
レベリング剤は、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、シリコン系レベリング剤等が挙げられる。レベリング剤の市販品を挙げるとアクリル系レベリング剤は、例えば、ポリフローNo.36、ポリフローNo.56、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.99C(いすれも共栄社化学社製)等が挙げられる。フッ素系レベリング剤は、例えば、メガファックF470N、メガファックF556(いずれもDIC社製)等が挙げられる。シリコン系レベリング剤は、例えば、グランディックPC4100(DIC社製)等が挙げられる。
【0110】
《表面保護シート》
本発明の表面保護シートは、表示装置に使用される光学部材を、傷や埃の付着等から保護するために用いられる粘着シートであって、基材、および表面保護シート用粘着剤の硬化物である粘着層を備える。粘着層は、基材の片面または両面に形成することができる。なお、粘着層の基材と接していない面は、異物の付着を防止するため、通常、使用する直前まで剥離シートで保護している。
【0111】
基材は、柔軟なシート、および板材が制限なく使用できる。基材は、例えば、プラスチック、紙、および金属箔、ならびにこれらの積層体等が挙げられる。
基材の粘着層と接する面には密着性向上のため、例えば、コロナ放電処理等の乾式処理やアンカーコート剤塗布等の湿式処理といった易接着処理を予め行うことができる。
【0112】
基材のプラスチックは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびシクロオレフィンポリマー(COP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む);等が挙げられる。
【0113】
基材の厚みは、通常10〜300μm程度である。また、基材にポリウレタンシート(発泡体を含む)を使用する場合の厚みは、通常20〜50,000μm程度である。紙は、例えば、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。金属箔は、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
【0114】
表面保護シートは、プラスチックまたは紙等の表面にシリコーン系剥離剤等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを使用できる。
【0115】
表面保護シートの製造方法は、例えば、基材の表面に表面保護シート用粘着剤を塗工して、塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して、粘着層を形成する方法が挙げられる。加熱および乾燥温度は、通常60〜150℃程度である。粘着層の厚みは、通常0.1〜200μm程度である。
【0116】
塗布方法は、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等公知の方法が挙げられる。
【0117】
また、上記方法とは逆に、剥離シートの表面に粘着剤を塗工して塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して本明細書の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成し、最後に粘着層の露出面に基材を貼り合わる方法が挙げられる。上記方法で基材の代わりに剥離シートを貼り合わせると剥離シート/粘着層/剥離シートのキャスト粘着シートが得られる。
【0118】
《積層体》
本発明の積層体は、透明導電フィルム、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板およびオレフィン板からなる群より選択される層を備える光学部材、および粘着シートを備える。透明導電フィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明フィルムの表面に、ITO等の導電層を0.1〜0.3μm程度に薄膜蒸着したフィルムを指す。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の実施態様について実施例によって説明する。なお、本発明の実施態様が実施例に限定されないことはいうまでもない。以下、「部」は「質量部」を意味する。また、「%」は「質量%」を意味する。
【0120】
なお、ポリオール、およびポリウレタンポリオール等の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定方法は以下の通りである。
【0121】
[重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
装置:SHIMADZU Prominence(島津製作所社製)、
カラム:SHODEX LF−804(昭和電工社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.5mL/分
溶媒温度:40℃
試料濃度:0.1%
試料注入量:100μL
【0122】
[ポリウレタンポリオール(A)の合成例]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにアデカポリエーテルG−1500(3官能ポリエーテルポリオール、ADEKA社製)1000部、ジフェニルメタンジイソシアネート160部、MEK233部、トルエン540部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.3部および2−エチルヘキサン酸錫0.1部を加えて、80℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm−1)が消失していることを確認して反応を終了した。このポリウレタンポリオール(A1)の重量平均分子量(Mw)は178,000であった。
【0123】
(合成例2〜17)
合成例1の原料・配合量(質量部)を、表1に示した通りに変更した以外は、合成例1と同様に製造することで、それぞれ合成例2〜14により、ポリウレタンポリオール(A2〜A14)、およびポリウレタンポリオール(A’1〜A’3)を得た。
【0124】
[材料]
表1、2で使用した材料は、以下の通りである。
【0125】
<ポリオール(a)>
G1500(「アデカポリエーテル G−1500」、ポリエーテルポリオール、Mn1500、水酸基数3、二級水酸基、ADEKA社製)
GP3000(「サンニックス GP−3000」、ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、二級水酸基、三洋化成工業社製)
GL3000(「サンニックス GL−3000」、ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、一級水酸基、三洋化成工業社製)
エクセ5030(「エクセノール 5030」、ポリエーテルポリオール、Mn5100、水酸基数3、二級水酸基、旭硝子社製)
F3010(「クラレポリオール F−3010」、ポリエステルポリオール、Mn3000、水酸基数3、一級水酸基、クラレ社製)
PP1000(「サンニックス PP−1000」、ポリオキシプロピレングリコール、Mn1000、水酸基数2、二級水酸基、三洋化成工業社製)
P1010(「クラレポリオール P−1010」、ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数2、一級水酸基、クラレ社製)
【0126】
<ポリオール(a’);ポリオール(a)以外のポリオール>
T5652(「デュラノール T5652」、ポリカーボネートジオール、Mn2000、水酸基数2、一級水酸基、旭化成社製)
EG(「エチレングリコール」、エチレングリコール、Mn62.1、水酸基数2、一級水酸基、三菱ケミカル社製)
BG(「14BG」、1,4−ブタンジオール、Mn90.1、水酸基数2、一級水酸基、三菱ケミカル社製)
【0127】
<芳香族ポリイソシアネート(b)>
MDI(「ミリオネートMT」、ジフェニルメタンジイソシアネート、Mn250、東ソー社製)、
TDI(「コロネートT−80」、トリレンジイソシアネート、Mn174、東ソー社製)、
<ポリイソシアネート(b’);
芳香族ポリイソシアネート(b)以外のポリイソシアネート>
HDI(「デスモジュールH」、ヘキサメチレンジイソシアネート、Mn169、住化コベストロウレタン社製)、
【0128】
<イソシアネート硬化剤(B)>
(B1):TDIアダクト(「デスモジュールL75」、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、住化コベストロウレタン社製)
(B2):HDIアダクト(「スミジュールHT」、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、住化コベストロウレタン社製)
【0129】
<酸化防止剤(D)>
(D1):Irg1010(「イルガノックス1010」、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル-4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、フェノール系酸化防止剤、BASF社製)
【0130】
<帯電防止剤(E)>
(E1):TFSI・アンモニウム塩(トリ−n−ブチルメチルアンモニウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミド)
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
なお、表1、表2におけるポリオール(a)含有量[%]は、全ポリオール100質量%中の、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)の含有量[%]である。
【0134】
(実施例1)
合成例1で得られたウレタンポリオール(A1)100部、イソシアネート硬化剤(B1)2部、酸化防止剤(D1)0.5部、および溶剤の酢酸エチル60部を配合し、ディスパーで攪拌して、粘着剤を得た。なお、溶剤を除く各材料の使用量は、不揮発分換算値[部]を示す。
【0135】
基材に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)(「ルミラーT−60」、東レ社製)を準備した。コンマコーター(登録商標)を用いて、上記基材上に、得られた粘着剤を塗工速度3m/分、幅30cmで乾燥後厚みが12μmになるように塗工し、塗工層を形成した。
次に、形成された塗工層を乾燥オーブンを使用して100℃1分間の条件で乾燥して、粘着層を形成した。この粘着層の上に、厚さ38μmの市販剥離シートを貼り合わせ、さらに23℃−50%RHの条件下で1週間養生を行うことで表面保護用シートを得た。
【0136】
(実施例2〜23、比較例1〜3)
実施例1の材料および配合比(質量部)を表3〜6に示す通りに変更した以外は実施例
1と同様に行うことで、それぞれ実施例2〜23、比較例1〜3の粘着剤および表面保護
用シートを得た。
ただし、実施例1、2、8、12、14、16、20、21、22、および23は参考例である。
【0137】
[評価項目および評価方法]
得られた粘着剤および表面保護用シートの評価項目および評価方法は、以下の通りである。結果を表3〜6に記す。
【0138】
(濡れ性)
得られた表面保護用シートを幅50mm・長さ100mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃−50%RH雰囲気下で30分間放置した後、測定試料から剥離シートを剥離した。表面保護用シートの両端を両手で持ちながら露出した粘着剤層の中心部をガラス板に接触させた後、両手を離した。測定試料の自重で粘着層全体がITOフィルム(「テトライトTCF」、尾池工業社製)に密着するまでの時間を測定することで、粘着層の濡れ性を評価した。評価基準は以下の通りである。
ITOフィルムと密着するまでの時間が短いほどITOに対する濡れ性(親和性)が良好であるため、ITOフィルムを使用した製造工程でITOフィルムを良好に保護することができる。

◎:密着まで3秒未満、優良。
○:密着まで3秒以上、4秒未満、良好。
△:密着まで4秒以上、5秒未満、実用可。
×:密着まで5秒以上、実用不可。
【0139】
(高温粘着力)
得られた表面保護用シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃−50%RHの雰囲気下で、測定試料から剥離シートを剥離し、露出した粘着層をITOフィルムに貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、150℃条件下で1時間放置した。次いで引張試験機(テスター産業社製)を用いて、80℃環境下、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。評価基準は以下の通りである。
高温粘着力が高いほど、アニール処理時の浮きや剥がれを抑制できるといえる。

◎:100mN/25mm以上、優良。
○:50mN/25mm以上、100mN/25mm未満、良好。
△:20mN/25mm以上、50mN/25mm未満、実用可。
×:20mN/25mm未満、実用不可。
【0140】
(低温再剥離)
得られた表面保護用シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃−50%RHの雰囲気下で、測定試料から剥離シートを剥離し、露出した粘着層をITOフィルムに貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、150℃条件下で1時間放置した。次いで23℃−50%RHの雰囲気にて30分空冷した後、引張試験機を用いて、10℃環境下、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。評価基準は以下の通りである。
粘着力が低い方が再剥離しやすいことを示す。

◎:100mN/25mm未満、優良。
○:100mN/25mm以上、200mN/25mm未満、良好。
△:200mN/25mm以上、300mN/25mm未満、実用可。
×:300mN/25mm以上、実用不可。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
表3〜6の結果から、本発明の表面保護シート用粘着剤を用いて形成した表面保護シートは、高温時の密着性、高温経時後の低温再剥離性、および濡れ性に優れていることが確認できた。
中でも、ポリウレタンポリオール(A)の重量平均分子量が10万以上であることにより、高温粘着力と低温再剥離性の両立できていた。
また、ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対し、イソシアネート硬化剤(B)を1〜20質量部含む場合、濡れ性と高温粘着力の両立ができていた。
【0146】
また、これにより、本発明の表面保護シートと光学部材とを備える積層体は、季節変動の影響を受けず、歩留まりに優れることが確認できた。
【要約】
【課題】高温時の密着性、高温経時後の低温再剥離性、濡れ性に優れる粘着層を形成できる表面保護用粘着剤、粘着シートおよび積層体を提供すること。
【解決手段】ポリオールと、芳香族イソシアネート(b)との反応物であるポリウレタンポリオール(A)、およびイソシアネート硬化剤(B)を含み、前記ポリオール100質量%中、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの少なくともいずれかであるポリオール(a)を50質量%以上含有する、表面保護シート用粘着剤により解決される。
【選択図】 なし