(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部材は、前記開口部の径方向および周方向の位置と一致し、前記開口部に向かって開口する有底円筒形状である複数の収容部を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、モータの中心軸に沿う方向を上下方向とする。ステータコアに対して回路基板側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、あくまで説明の便宜のために上下方向を定義したものであって、本発明に係るモータの使用時の姿勢を限定するものではない。
【0012】
<1.モータの全体構成>
本実施形態のモータは、例えば、エアコンや空気清浄機、冷蔵庫等の家電製品に搭載され、ファンやポンプの駆動源として、使用される。また、ソータ等の産業機器の駆動源として、使用される。ただし、本発明のモータは、他の用途に使用されるモータであってもよい。例えば、本発明のモータは、OA(Office Automation)機器、医療機器、自動車等に搭載され、各種の駆動力を発生させるものであってもよい。以下では、モータ1が搭載される機器を「駆動装置」と称する。
【0013】
図1および
図2は、本実施形態に係るモータ1の外観斜視図である。
図3は、モータ1の断面図である。
図1、
図2、
図3に示すように、モータ1は、静止部2と回転部3とを、備えている。静止部2は、駆動装置(不図示)の枠体に、固定されている。回転部3は、静止部2に対して回転可能に支持される。
【0014】
本実施形態の静止部2は、上ブラケット21、下ブラケット22、ステータコア23、コイル24、上インシュレータ25、下インシュレータ26、回路基板27、および軸受部28を、有している。
【0015】
上ブラケット21は、ステータコア23および軸受部28(上軸受281)を保持する。上ブラケット21は、有蓋略円筒形状である。上ブラケット21は、金属製の部材である。上ブラケット21は、鋼鈑を打ち抜いて成型する、いわゆるプレス法により、得られたものである。なお、製造方法はプレス法ではなく、ダイカスト法等他の加工方法により加工されてもよい。上ブラケット21は、金属製ではなく、樹脂製でも良い。
【0016】
下ブラケット22は、ステータコア23および軸受部28(下軸受282)を保持する。下ブラケット22は、有底略円筒形状である。下ブラケット22は金属製の部材である。
【0017】
下ブラケット22は、鋼鈑を打ち抜いて成型する、いわゆるプレス法により、得られたものである。なお、製造方法はプレス法ではなく、ダイカスト法等他の加工方法により加工されてもよい。下ブラケット22は、金属製ではなく、樹脂製でも良い。また、本実施形態では、ステータコア23と軸受部28(下軸受282)とを、単一の部材である下ブラケット22で保持している。このため、ステータコア23と後述するシャフト31とを、互いに精度良く位置決めできる。
【0018】
ステータコア23およびコイル24は、モータ1の電機子として機能する部位である。ステータコア23は、ケイ素鋼板等の電磁鋼板を軸方向(中心軸J1に沿う方向。以下同じ)に積層した積層鋼板からなる。ステータコア23は、円環状のコアバック231と、コアバック231から径方向内側へ向けて突出した複数本の磁極歯232と、を有している。コアバック231は、上ブラケット21と下ブラケット22とに挟み込まれることにより、保持されている。コアバック231の外周面は、軸方向上部と軸方向下部とを除き、モータ1の外周面となる。ステータコア23の各磁極歯232のコイル24が巻かれる部位の周方向の幅は、コアバック231の径方向の幅の倍以下である。また、本実施形態においては、磁極歯232の数は6本である。
【0019】
ここで、ステータコア23の外周面は、上端近傍および下端近傍を除き、下ブラケット22および上ブラケット21に覆われておらず、下ブラケット22および上ブラケット21から露出している。すなわち、ステータコア23の外周面の全体を下ブラケット22および上ブラケット21で覆う場合と比べて、本実施形態では、ステータコア23の外周面と下ブラケット22および上ブラケット21との径方向の対向面積が小さい。このため、下ブラケット22および上ブラケット21が磁性体であったとしても、ステータコア23の外周面から下ブラケット22および上ブラケット21への磁束の漏れが、発生しにくい。したがって、下ブラケット22および上ブラケット21による鉄損を低減し、モータ1のエネルギー効率を向上させることができる。
【0020】
ステータコア23のいくつかのコアバック231と磁極歯232の境界には、貫通孔233が形成される。本実施形態においては、貫通孔233の数は3である。貫通孔233は中心軸を中心に周方向に等間隔で配置されることが望ましい。本実施形態においては、貫通孔233は、中心軸から見て120度の間隔をあけて配置されている。貫通孔233はこれに限定されるものではなく、径方向内側に窪む溝であってもよい。
【0021】
ステータコア23の外周面には、軸方向に伸びる縦溝が形成される。縦溝には、上ブラケット21の突起部および、下ブラケット22の突起部が挿入、または嵌合する。これにより、上ブラケット21および下ブラケット22の径方向及び周方向の位置決めがなされる。
【0022】
コイル24は、磁極歯232の周囲に巻かれた導線により、構成されている。コイル24は、インシュレータを介して磁極歯232に巻かれる。本実施形態においては、導線はいわゆるスター結線により結線される。したがって、コイル24からはU相、V相、W相、およびコモンの4つの端部が引き出される。引き出された各端部は、それぞれ回路基板27に半田付けされる。回路基板27を介してコイル24に駆動電流を与えると、磁芯である磁極歯232に、径方向の磁束が発生する。そして、磁極歯232と回転部3側のロータマグネット33との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸J1を中心として回転する。
【0023】
インシュレータは、上インシュレータ25と下インシュレータ26とを含む。上インシュレータ25および下インシュレータ26は、ステータコア23とコイル24とを電気的に絶縁する、樹脂製の部材である。上インシュレータ25は、ステータコア23の上側に配置されている。下インシュレータ26は、ステータコア23の下側に配置されている。換言すれば、上インシュレータ25と下インシュレータ26との間に、ステータコア23が挟まれている。上インシュレータ25は、磁極歯232の上面を覆う。下インシュレータ26は、磁極歯232の下面を覆う。また、上インシュレータ25および下インシュレータ26は磁極歯232の側面を覆う。上インシュレータ25と下インシュレータ26とで、インシュレータを構成する。本実施形態においては、コイル24が上インシュレータ25および下インシュレータ26の上から磁極歯232に巻かれることにより、インシュレータがステータコア23に固定される。
【0024】
上インシュレータ25および下インシュレータ26は、磁極歯232とコイル24との間に介在して、磁極歯232とコイル24とを電気的に絶縁する部分を有している。また、上インシュレータ25は、コイル24の径方向外側において、周方向に連続する環状のコアバック絶縁部252を有している。コアバック絶縁部252は、コイル24の径方向外側に配置されている。コアバック絶縁部252はコイル24が巻き崩れたときに他の部材との絶縁を行う部位である。ステータコア23、コイル24、上インシュレータ25、下インシュレータ26の組立体を、電機子29と定義する。上インシュレータ25、下インシュレータ26の詳細については、後述する。
【0025】
図4は、本実施形態に係るモータ1から上ブラケット21を外した状態の平面図である。
図4を参照して、回路基板27は、外部電源からコイル24に駆動電流を与えるための配線を有する基板である。回路基板27は、平面視において略円板形状である。回路基板27の外形は、後述する上インシュレータ25の外形と略一致する。回路基板27は、上インシュレータ25の上面となる座面上に、固定される。また、回路基板27の下面には、回転部3の回転数を検知するための磁気センサ271が、設けられている。磁気センサ271には、例えば、ホール素子が使用される。
【0026】
図3を参照して、軸受部28は、回転部3のシャフト31を回転自在に支持する部材である。軸受部28は、上軸受281と下軸受282と、からなる。上軸受281は、上ブラケット21の保持部212の内周面2121に保持されている。下軸受282は、下ブラケット22に、保持されている。軸受部28には、例えば、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させる玉軸受が、使用される。ただし、軸受部28に、すべり軸受や流体軸受等の他の方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0027】
本実施形態の回転部3は、シャフト31、ロータホルダ32、およびロータマグネット33を、有している。シャフト31は、中心軸J1に沿って上下方向に延びる略円柱状の部材である。シャフト31は、上述した軸受部28に支持されつつ、中心軸J1を中心として回転する。シャフト31の下端部は、下ブラケット22の下方へ突出している。また、シャフト31の上端部は、回路基板27の上方へ突出している。シャフト31の下端部または上端部は、ギア等の動力伝達機構を介して、駆動装置の駆動部に連結される。ただし、駆動装置の駆動部は、シャフト31により直接駆動されてもよい。
【0028】
ロータホルダ32は、ステータコア23およびコイル24の径方向内側において、シャフト31とともに回転する部材である。本実施形態のロータホルダ32は、有底円筒形状の上ロータホルダ部材323と下ロータホルダ部材324とを背合せに配置して、構成される。すなわち、上ロータホルダ部材323の底面と下ロータホルダ部材324の底面とが微小な間隙を介して対向して配置される。上ロータホルダ部材323および下ロータホルダ部材324は、それぞれ鋼鈑を打ち抜いて成型する、いわゆるプレス法により得られたものである。
【0029】
本実施形態では、ロータホルダ32を上ロータホルダ部材323および下ロータホルダ部材324とを背合せに配置したが、これに限られるものではない。ロータホルダ32を単一部材により構成してもよい。また、快削鋼を切削して得てもよい。また、ロータホルダ32を、磁性鋼板を積層することにより得てもよい。また、ロータホルダ32を焼結により得てもよい。また、ロータホルダ32を磁性鋼板を積層した部材と、有蓋略円筒状としプレス加工により得られた部材とを組み合わせることにより、得てもよい。また、ロータホルダ32を樹脂モールドにより得てもよい。また、本実施形態ではいわゆるSPM型(Surface−permanent magnet、表面磁石型)のロータであるが、これに限られるものではない。いわゆるIPM型(Interior permanent−magnet、埋め込み磁石型)のロータであってもよい。IPM型のロータである場合、ロータホルダ32は磁性鋼板を積層することにより得ることが望ましい。
【0030】
ロータマグネット33は、円筒形状であり、ロータホルダ32の外周面に、固定されている。ロータマグネット33の径方向外側の面は、ステータコア23およびコイル24と径方向において対向する磁極面となっている。ロータマグネット33は、N極の磁極面とS極の磁極面とが周方向に交互に並ぶように、着磁されている。なお、ロータマグネット33について、円筒形状の磁石に代えて、N極とS極とが周方向に交互並ぶように複数の磁石を配置してもよい。また、前述のように、IPM型のロータとし、ロータマグネット33をロータホルダ32に埋め込んでもよい。
【0031】
<2.回路基板について>
図5は、本実施形態に係る上インシュレータ25の外観斜視図である。
図4および
図5を参照して、回路基板27は、平面視において略円板形状である。回路基板27の外周面には外周から径方向内側に窪む切り欠きが設けられている。この切り欠きは位置決め部272である。位置決め部272には、後述する上インシュレータ25の位置決め凸部254が挿入される。これにより、回路基板27が上インシュレータ25に対して相対的に移動しようとした際に、凸部254が、位置決め部272に接触し、移動が制限される。結果として、上インシュレータ25と、回路基板27との周方向および径方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0032】
また、回路基板27の上面には、コネクタ273が設けられている。モータ1は、コネクタ273を介して、駆動電流を得る。
【0033】
また、回路基板27の外周面には外周から径方向内側に窪む切り欠きが設けられている。この切り欠きは、鉤部挿入部274である。鉤部挿入部274は、透過部の一部を構成する。回路基板27の上面の鉤部挿入部274に隣接する領域にはランドが配置される。鉤部挿入部274には、後述する上インシュレータ25の鉤部255が挿入される。鉤部挿入部274は、切り欠きの径方向の幅が短い鉤部挿入幅狭部2741と、鉤部挿入幅狭部2741に隣接して位置し、鉤部挿入幅狭部2741よりも径方向の幅が広い鉤部挿入幅広部2742と、を有する。より詳細には、鉤部255は、鉤部挿入幅狭部2741に挿入される。
【0034】
回路基板27の外周面には、外周から径方向内側に窪む切り欠きが設けられている。この切り欠きは、巻き線引き出し部277である。巻き線引き出し部277は、透過部の一部を構成する。回路基板の上面の巻き線引き出し部277に隣接する領域には、ランドが配置される。
【0035】
回路基板27の中央には、軸方向に開口する中心開口部276が位置する。中心開口部の径方向内側には、シャフト31が位置する。
【0036】
なお、回路基板27の縁から、配線パターンを一定の距離だけ離して配置する必要がある。したがって、回路基板27に設ける孔や切欠きが少ないほうが、より回路基板27の配線面積を広くすることができる。本実施形態においては、鉤部挿入部274といった凸部が挿入される部位(透過部)を拡大することで、導線引き出し用の切り欠きとしている。これにより、回路基板27の配線面積を広くすることができる。
【0037】
特に、制御IC、AC-DCコンバータ、エンコーダ、コネクタ等大きな電子部品を回路基板に実装する場合や、基板に大電流を流すために配線パターンの幅を広くする場合、回路基板自体の面積を狭くする必要がある場合に、本技術は有用である。
【0038】
<3.上ブラケットと上インシュレータについて>
まず、上ブラケット21について詳述する。上ブラケット21は、蓋部211と、保持部212と、上突出部213と、貫通孔214と、開口215と、を有する。蓋部211は、平板状であり、回路基板27の軸方向上側に位置する。保持部212は、蓋部211の径方向内側に位置し、軸方向上側に向かって開口する凹部である。保持部212は、円筒状の内周面2121と、円環状の天面2122と、を有する。内周面2121は上軸受281の外輪の外周面と接触する。天面2122は上軸受281の外輪の上端面と接触する。これにより、保持部212は上軸受281を保持する。また、上軸受281の外周面は、回路基板27の中心開口部276の径よりも小さい。これにより、回路基板27に対する上軸受281の干渉を防ぐことができ、モータ1を薄型化することができる。
【0039】
上突出部213は、蓋部211の径方向外側から軸方向下方に向かって突出する。突出部213は、略環状である。また、上突出部213は略円筒形状である。上突出部213の内周面は、ステータコア23の上側の外周面と接触する。これにより、中心軸J1と上軸受281との同軸精度を向上させることができる。また、上ブラケット21の剛性を向上させることができる。本実施形態においては、ステータコア23は、上突出部213に圧入されることにより、上ブラケット21と固定される。ただし、圧入に限らず、挿入接着により固定されてもよい。上ブラケット21と、ステータコア23とを挿入接着により固定するときには、突出部213の内周面は、回路基板27の外周面や上インシュレータ25の外周面と接触していてもよい。突出部213の内周面が回路基板27や上インシュレータ25と接することにより、上ブラケット21の剛性を向上させることができる。
【0040】
貫通孔214は、蓋部211上の径方向外側部に周方向に複数配置される。本実施形態において、貫通孔214の数は6である。
【0041】
また、回路基板27上に発熱量の大きい電子部品が実装される場合には、該電子部品と対向するように配置することが好ましい。これにより、電子部品と上ブラケット21との距離を近接させることができる。その結果、電子部品より発生した熱は、上ブラケット21から放熱することができる。また、シリコン等の導熱材を電子部品と蓋部211との間に介在させてもよい。これにより、電子部品からの放熱がさらに促進される。なお、発熱量の大きい電子部品の例として、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。
【0042】
開口215は、蓋部211に配置される貫通孔である。回路基板27上に実装されたコネクタ273は開口215から露出する。開口215を通じてコネクタ273と接続されることにより、モータ1に電力が供給される。
【0043】
図5を参照して、上インシュレータ25の形状について詳述する。上インシュレータ25は、磁極歯絶縁部251と、コアバック絶縁部252と、を有する。磁極歯絶縁部251は、各磁極歯232の上面および側面を覆う。コアバック絶縁部252は環状であり、各磁極歯絶縁部251を連結する。各磁極歯絶縁部251の径方向内端には、軸方向上側に向かって突出する板部2511が設けられる。コアバック絶縁部252は、コイル24の径方向外側において、軸方向上方に伸びる。コアバック絶縁部252の上端面はコイル24よりも軸方向上側に位置する。これにより、コイル24と回路基板27や上ブラケット21等その他の部材との干渉を防ぐことができる。
【0044】
コアバック絶縁部252は、環状壁部253と、位置決め凸部254と、鉤部255と、を有する。環状壁部253は、コアバック絶縁部252の径方向外端から軸方向に突出する略環状の壁である。環状壁部253の上面は座面2531であり、中心軸に略垂直な平面である。座面2531は、回路基板27の下面と接する。より具体的には、座面2531は、回路基板27の外縁近傍の下面と接する。環状壁部253の外端はステータコア23の外端よりも径方向内側に位置する。したがって、ステータコア23の環状壁部253よりも径方向外側に位置する部位は軸方向上側に向かって露出する上コアバック露出部41である。
【0045】
位置決め凸部254は、環状壁部253と径方向に略同じ位置に位置し、座面2531よりも軸方向上側に向かって突出する。また、位置決め凸部254は、回路基板27の上面よりも軸方向下側に位置する。したがって、位置決め凸部254は、回路基板27の位置決め部272に収容される。これにより、後述するように上ブラケット21の突出部213の下面が回路基板27の上面に接触した際であっても、位置決め凸部254は上ブラケット21に接触しない。したがって、回路基板27が強固に固定される。
【0046】
また、本実施形態において、位置決め凸部254は、周方向に間隔を置いて1箇所に設けられる。本実施形態では位置決め凸部254は3箇所としたが、これに限られるものではなく、2箇所以上でもよい。
【0047】
位置決め凸部254の平面視における形状は、位置決め部272と略同一、すなわち、位置決め凸部254は、位置決め部272の輪郭と沿う形状となっている。これにより、上インシュレータ25に対して、回路基板27を精度よく位置決めすることができる。
【0048】
また、より好ましくは、位置決め凸部254の周方向両端面は、位置決め部272の周方向の端面と接触する。また、位置決め凸部254の径方向端面は、位置決め部272の径方向の端面と接触する。これにより、上インシュレータ25に対して、回路基板27を精度よく位置決めすることができる。ただし、位置決め凸部254の一部の端面が位置決め部272の端面と接触していれば、精度よく位置決めすることができる。上インシュレータ25に対して、回路基板27を精度よく位置決めすることができれば、後述する導線を半田付けする工程において、導線を上インシュレータ25と回路基板27との間に挟むことなく半田付けすることができる。
【0049】
位置決め凸部254の周方向に隣接して、軸方向下側に向かって切り欠かれる第1の窓部2541が位置する。第1の窓部2541の下端の軸方向の位置は、磁極歯絶縁部251の板部2511の上端よりも下側に位置する。
【0050】
鉤部255は、環状壁部253と径方向に重なる位置に位置し、コアバック絶縁部252から軸方向に突出する部位である。鉤部255は、磁極歯絶縁部251と周方向に異なる位置に位置する。鉤部255の軸方向上端は、回路基板27の上面よりも上側に位置し、座面2531および位置決め凸部254よりも軸方向上側に突出する。鉤部255はその上側に鉤状の部位2551を有する。鉤状の部位2551は、径方向内側に向かって突出する。鉤状の部位2551の下面は、回路基板27の上面と接触、または間隙を介して対向する。
【0051】
鉤部255の周方向に隣接した位置に、鉤部255および環状壁部253が軸方向下側に向かって切りかかれる第2の窓部2552が位置する。第2の窓部2552の下端の軸方向の位置は、磁極歯絶縁部251の板部2511の上端よりも下側に位置する。
【0052】
なお、位置決め凸部254および鉤部255は、凸部である。
【0053】
また、上インシュレータ25の環状壁部253には、軸方向下側に向かって切りかかれる第3の窓部2531が位置する。第3の窓部2531の下端の軸方向の位置は、磁極歯絶縁部251の板部2511の上端よりも下側に位置する。
【0054】
なお、本実施形態において、窓部2531、2552は、60度おきに4箇所、120度おきに3箇所(そのうちの2箇所は60度おきに配置したものと重複)の合計5箇所に配置されている。これにより、スター結線にて結線する場合と、デルタ結線にて結線する場合のいずれの場合であっても導線を引き出すことができる。したがって、結線方法を変更する場合であっても、共通の上インシュレータ25を用いることができる。ただし、スター結線のみで結線するのであれば、窓部2531、2552は周方向に4箇所配置されていればよい。
【0055】
<4.下ブラケットと下インシュレータについて>
まず、下ブラケット22について詳述する。下ブラケット22は、下蓋部221と、下保持部222と、下突出部223と、を有する。下ブラケット22は、有蓋円筒形状である。下蓋部221は、略円環平板状である。下保持部222は、下蓋部221の径方向内側に位置し、軸方向下側に向かって開口する凹部である。下保持部222は、円筒状の内周面2221と、円環状の天面2222と、を有する。内周面2221は下軸受282の外輪の外周面と接触する。天面2222は下軸受281の外輪の下端面とばねを介して接触する。これにより、下保持部222は下軸受282を保持する。
【0056】
下突出部223は、下蓋部221の径方向外側から軸方向上方に向かって突出する。下突出部223は、略環状である。また、下突出部223は略円筒形状である。下突出部223の上端は、ステータコア23の外周面と接触する。これにより、中心軸J1と下軸受282との同軸精度を向上させることができる。また、下ブラケット22とステータコア23を強固に固定することができる。本実施形態においては、ステータコア23は、下突出部223に圧入されることにより、下ブラケット22と固定される。ただし、圧入に限らず、挿入接着により固定されてもよい。また、下突出部223は、内径が小さくなる位置決め段部2231を有する。位置決め段部2231の上面は、ステータコア23のコアバック231と直接接触している。これにより、ステータコア23に対して下ブラケット22の軸方向位置決めによる精度の低減を抑制している。
【0057】
下蓋部221には、開口部228が設けられる。開口部228は、下蓋部221を軸方向に貫通する複数の孔である。開口部228の内周面にはねじ溝が形成される。モータを装置本体に取り付ける際、ねじを開口部228内にねじ込むことにより、固定される。
【0058】
ここで、開口部228と、電機子29との間には、環状のカバー部材71が配置される。本実施形態においては、カバー部材71はゴムなどの弾性体にて形成され、その外周面が下突出部223の内周面に圧入され、固定される。ただし、カバー部材71は、少なくとも開口部228と対向する位置に配置されていればよい。カバー部材71が下蓋部221と電機子29との間に介在することにより、モータ内部への異物の侵入を防止することができる。特に、モータを装置本体に取り付ける際、ねじと開口部228とがこすれることにより発生する金属粉の進入を防止することができる。したがって、モータの信頼性を向上させることができる。また、本実施形態においては、カバー部材71の上面は、電機子29のコイル24と接触している。カバー部材71は弾性を有している。したがって、カバー部材71がコイル24と接触していることにより、電機子29から発生する振動・騒音を低減することができる。
【0059】
また、本実施形態において、カバー部材71は、開口部228の径方向内側において軸方向下側に伸びる襟部711と、開口部228の径方向外側において軸方向の肉厚が厚い肉厚部712と、肉厚部712の径方向外側に位置し肉厚部712よりも軸方向の肉厚の薄い裾部713とを有する。襟部711は、下ブラケット22の下蓋部221と接する。これにより、下軸受282やロータホルダ32側への塵埃の侵入を防止することができる。襟部711の内周面の一部は径方向内側に向かうに従い軸方向高さが低くなる傾斜部を有している。これにより、カバー部材71と回転部3との接触を回避している。また、カバー部材71は、裾部713において下突出部223の内周面に挿入されている。すなわち、カバー部材71は、肉厚の厚い肉厚部712ではなく、肉厚の薄い裾部713において挿入されている。これにより、カバー部材71の挿入をスムースに行うことができる。また、裾部713の内側に肉厚部712が設けられており、カバー部材71全体の変形を抑制することができる。したがって、効果的にモータ内部への塵埃の進入を防止することができる。なお、カバー部材71は、ゴムではなく、プラスチックその他の材料にて形成されていてもよい。また、カバー部材71を挿入するとしたが、圧入でもよい。また、カバー部材71は、下ブラケット22側ではなく、上ブラケット21側に配置してもよく、上ブラケット21側と下ブラケット22側の両方に配置してもよい。
以上述べたように、従来のインナーロータ型モータにおいて、上ブラケット21や下ブラケット22をプレス法によって得ようとすると、開口部228を貫通孔とする必要があった。その結果、モータ内部に塵埃が侵入する懸念があった。しかし、上述のカバー部材71を用いることにより、塵埃等の異物の進入を防止することができる。
【0060】
図6は下インシュレータ26の平面図である。
図7は、下インシュレータ26の斜視図である。
図6および
図7を参照して、下インシュレータ26の形状について詳述する。下インシュレータ26は、下磁極歯絶縁部261と、下コアバック絶縁部262と、を有する。下磁極歯絶縁部261は、各磁極歯232の下面および側面を覆う。下コアバック絶縁部262は環状であり、各下磁極歯絶縁部261を連結する。下磁極歯絶縁部261は、その径方向内端において、軸方向に突出する板部2611を有する。板部2611は、周方向に伸びる板状の壁である。板部2611は、コイル24の内端と径方向に対向する。下コアバック絶縁部262は、コアバック231を覆う面から軸方向において離れる方向に突出するコアバック絶縁突出部2621を有する。下コアバック絶縁突出部2621は、周方向に壁となるよう設けられる。
【0061】
下コアバック絶縁突出部2621は、切欠部2622と、コイル案内壁2623と、渡り線案内壁2624と、連続壁2625と、渡り線保持部2626とを有する。切欠部2622は、下コアバック絶縁突出部2621が周方向に連続して壁となる一部を切り欠いた箇所をさす。下コアバック絶縁突出部2621が周方向に連続して壁となる部分は、本実施形態においては、コイル案内壁2623、渡り線案内壁2624、および連続壁2625である。切欠部2622は、下コアバック絶縁突出部2621のうち、下磁極歯絶縁部と径方向に対向する箇所に設けられる。切欠部2622の周方向両端には、コイル案内壁2623が配置される。切欠部2622の周方向幅は、導線が巻かれる磁極歯232の周方向幅よりも狭く設けられる。言い換えると、下コアバック絶縁突出部2621は、切欠部2622を除く箇所において、連続して形成されている。これにより、下インシュレータ26の剛性を向上することができる。
【0062】
コイル案内壁2623は、磁極歯絶縁部261の径方向外側に位置する。コイル案内壁2623は、後述する渡り線案内壁2624よりも径方向内方に位置する。コイル案内壁2623の径方向内面は、磁極歯232に導線が巻かれて構成されるコイル24の径方向外側と対向している。好ましくは、コイル案内壁2623の径方向内面は、コイル24との径方向外側と接触している。コイル24は、磁極歯232に対して多重で導線が巻かれている。つまり、多重の導線が巻き崩れないようにインシュレータまたはその他の部材により巻き崩れを防止する必要がある。コイル案内壁2623を設けることにより、コイル24の径方向外方への巻き崩れが、防止される。
渡り線案内壁2624は、コイル案内壁2623と繋がり、一体的に設けられる。すなわち、コイル案内壁2623と渡り線案内壁2624とは、連続壁2625を介して繋がって設けられる。連続壁2625により、コイル案内壁2623と渡り線案内壁2624とを繋げることによって、コイル案内壁2623の剛性が高まる。その結果、導線が巻かれてコアバック絶縁突出部2621にテンションが掛かっても、コアバック絶縁突出部2621が倒れることを防止できる。コイル案内壁2623は、渡り線案内壁2624よりも径方向内方に位置する。渡り線案内壁2624の径方向厚みは、コイル案内壁2623の径方向厚みよりも薄い。
【0063】
渡り線案内壁2624は、コイル2623から導出される渡り線を案内する壁状の部位である。渡り線案内壁2624は、コアバックを覆う面から軸方向において離れる方向に突出する。渡り線案内壁2624の径方向内方には、渡り線保持部2626が設けられる。渡り線保持部2626は、渡り線を径方向外面で支持する。渡り線案内壁2624の内壁と渡り線保持部2626とは径方向に対向する。渡り線である導線は、渡り線案内壁2624と渡り線保持部2626との間に配置され、案内される。渡り線保持部2626において、軸方向上端外面に、斜面が設けられている。これは、渡り線である導線を渡り線案内壁2624と渡り線保持部2626との間に挿入する際、斜面により導線が案内され、作業性が向上できる。また、本実施形態においては、渡り線が下ブラケット22側に集中している。したがって、回路基板27が配置される上ブラケット21側には渡り線が形成されない。その結果、回路基板27の配線パターンの配置において渡り線を考慮する必要がなく、回路設計の自由度が向上する。
【0064】
渡り線案内壁2624は、周方向の両端から周方向の中心に向かい徐々に軸方向の高さが低くなる傾斜部2628を有する。渡り線案内壁2624の周方向の中央に位置する中央部2629は、傾斜部2628よりも軸方向の位置が低い。すなわち、渡り線案内壁2624の渡り線保持部2626と径方向に対向する部位(中央部2629)の上端は渡り線保持部2626の上端よりも軸方向の位置が低い。このように構成することにより、巻き線を巻く際、巻き線機のノズルを奥まで挿入することができる。その結果、渡り線保持部2626に渡り線を確実に引っ掛けることができる。また、渡り線案内壁2624の中央部2629の軸方向の高さが低く抑えられているため、渡り線保持部2626の軸方向の高さを相対的に低くすることができる。ゆえに、巻き線保持部2626に渡り線を引っ掛けた際に加わるモーメント荷重を小さく抑えることができる。その結果、渡り線保持部2626の径方向への倒れを防止することができる。
【0065】
なお、渡り線案内壁2624と渡り線保持部2626との径方向の間隙の幅と、渡り線保持部2626の高さとの比は、1対3以下であることが望ましい。これは、本実施形態においては、3相モータであり、3本の渡り線が重なるためである。より好ましくは、1対4以下であることが望ましい。これは、インダクタンスの調整や巻き線の引き出し位置調整等のために、さらに渡り線を設ける可能性があるためである。このように設定することで、渡り線を確実に保持することができる。
【0066】
また、渡り線案内壁2624の中央部2629の軸方向の高さは、コイル案内壁2623、連続壁2625、渡り線保持部2626よりも低い。このように構成することにより、巻き線案内壁2624の軸方向の厚みを薄くすることができる。その結果、下インシュレータ26を薄くすることができ、ひいてはモータを薄型化することができる。
【0067】
また、渡り線保持部2626の軸方向の高さは、コイル案内壁2623、連続壁2625よりも低い。また、渡り線保持部2626の軸方向の高さは、下インシュレータ26の板部2611の軸方向の高さよりも低い。
【0068】
<5.電機子と回路基板との組み立てについて>
次に、電機子29と、回路基板27および上ブラケット21、下ブラケット22との組み立て工程について説明する。なお、ステータコア23、コイル24、上インシュレータ25、下インシュレータ26の組立体を、電機子29と定義する。
【0069】
まず、上インシュレータ25の窓部2541、2552から、コイル24のU、V、W、コモンの各端部を径方向外側に引き出す。これにより、回路基板27を電機子29の上に置いたとしても、導線が上インシュレータ25と回路基板27との間に挟まれることがない。
【0070】
次に、電機子29の上インシュレータ25の座面2531上に回路基板27を置く。この際、回路基板27の位置決め部272に、位置決め凸部254を挿入するように置く。これにより、電機子29に対する、回路基板27の位置決めを精度良く行うことができる。これにより、回路基板27上に実装されている磁気センサ271を精度良く配置することが出来る。また、回路基板27の鉤部挿入部274に、鉤部255を挿入する。鉤部255は弾性変形し、部位2551が回路基板27の上面と接触する、または軸方向に間隙を介して対向する。これにより、電機子29に対して回路基板27の軸方向の移動を制限することができ、回路基板27を仮固定することができる。
【0071】
この際、各窓部2541、2552と、鉤部挿入部274との周方向の位置が一致する。好ましくは、各窓部2541、2552と、鉤部挿入幅広部2742との周方向の位置が一致する。これにより、次に記載する半田付けの作業性が向上する。
【0072】
次に、引き出された各端部を回路基板27の上面上に位置するランドに半田付けする。この際、一部のランドは鉤部挿入部274に隣接して配置される。したがって、容易に半田付けすることができる。
【0073】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
<3−1.変形例1>
例えば、
図8は本願の他の実施形態を示す図である。以下の説明では上記本発明の例示的な実施形態と異なる箇所を中心に記載する。
図8を参照して、下ブラケット22Aは電機子29の外周面を覆う。より具体的には、本実施形態における下ブラケット22Aの軸方向の長さは、ステータコア23の軸方向の長さよりも長い。また、下ブラケット22Aの軸方向の長さは、上インシュレータ25と下インシュレータ26の軸方向の長さを合わせた長さよりも長い。より具体的には、下ブラケット22Aの下突出部223Aの軸方向の長さは、上インシュレータ25と下インシュレータ26の軸方向の長さを合わせた長さよりも長い。下ブラケット22Aの下突出部223Aの上側には、後述する上ブラケット21Aを固定するかしめ部224Aが形成される。上ブラケット21Aは、略円板形状であり、上突出部213Aを有していない。上ブラケット21Aは、かしめ部224Aが塑性変形されることにより、下ブラケットに固定される。このようにしてケーシングが形成されてもよい。
【0075】
このように、電機子29の外側全域をケーシングで覆うことで、モータ内部で発生した振動や騒音を抑えることができる。また、モータ内部への塵埃の侵入を防止することができる。
【0076】
<3−2.変形例2>
例えば、
図9は本願の他の実施形態を示す図である。
図9を参照して、下ブラケット22Bの下保持部222Bが軸方向上側に大きく延出している。そして、下保持部222Bは下軸受282Bに加え、上軸受281Bをも保持している。また、本実施形態には、上ブラケットがなく、回路基板27が露出している。ただし、上ブラケットに代えて、基板を覆う部材を配置することは可能である。
【0077】
また、本願のさらに他の実施形態として、
図10に示すように、下ブラケット22Cは内下ブラケット22C1と、外下ブラケット22C2との2部材で設けられていてもよい。
【0078】
<3−3.変形例3>
例えば、
図11は本願の他の実施形態を示す図である。
図11を参照して、本実施形態においては、電機子29Dに対して、上ブラケット21Dおよび下ブラケット22Dを固定部材61Dにより固定する。まず、回路基板27Dの外周面には外周から径方向内側に窪む切り欠きが設けられている。この切り欠きは、固定部材挿入部275Dである。固定部材挿入部275Dは、固定部材(ビス61D)のねじ部の平面視における投影形状と、対応する面を有する。なお、本実施形態において、上ブラケット21Dおよび下ブラケット22Dは、ダイカスト法により成型される。したがって、本実施形態においては、開口部228は貫通孔である必要がない。したがって、カバー部材71を省略したとしても、モータ内部へ塵埃が侵入するリスクは少ない。
【0079】
上ブラケット21Dは、貫通孔214Dを有する。貫通孔214Dは、蓋部211D上の径方向外側部に周方向に複数配置される。本実施形態において、貫通孔214Dの数は3である。各貫通孔214Dにはビス61Dが挿入される。貫通孔214Dの周囲には座面2141Dが配置される。座面2141Dは、蓋部211Dよりも軸方向下側に位置する。ビス61Dの頭部は、座面2141Dと接触する。換言すれば、ビス61Dは上ブラケット21Dの上面と接触する下面を有する。これにより、ビス61Dを挿入したときでも、ビス61Dが蓋部211Dから軸方向上側に突出することを防ぐことができる。これにより、モータ1Dを薄型化することができる。また、ビス61Dのねじ部の径は、貫通孔214Dの径と同じか、やや小さい。これにより、ビス61Dが挿入された後には、上ブラケット21Dは電機子29Dに対する周方向の移動が抑制される。したがって、上ブラケット21Dと電機子29Dとの固定を強固なものとすることができる。なお、固定部材61Dはリベットでもよい。また、回路基板27Dの固定部挿入部275Dの縁にグランドパターンが形成されてもよい。これにより、ビス61Dにより、回路基板27Dのグランドパターンと上ブラケット21Dとの間でグランドを取ることが可能となる。
【0080】
上インシュレータ25Dには固定部材挿入凹部256Dが設けられる。固定部材挿入凹部256Dは、コアバック絶縁部252Dの外縁から径方向内側に向かって窪む窪部である。固定部材挿入凹部256Dには、ビス61Dが挿入される。固定部材挿入凹部256Dは、径方向内側に窪む窪部ではなく、軸方向上側に開口する穴であってもよい。
【0081】
下ブラケット22Dは、下固定部材収容部224Dを有する。下固定部材収容部224Dは、下蓋部221D上の径方向外側部に周方向に複数配置される。本実施形態において、下固定部材収容部224Dの数は3である。下固定部材収容部224Dの配置は、上ブラケットの貫通孔214Dの周方向の位置と一致する。各下固定部材収容部224Dにはビス61Dが挿入される。本実施形態において、下固定部材収容部224Dは、袋状穴であり、貫通していないが、貫通孔であっても良い。
【0082】
本実施形態における下インシュレータ26の形状は、
図5および
図6に示したものと同様である。
図6および
図7を参照して、本実施形態における下コアバック絶縁突出部2621の切欠部2622は、下コアバック絶縁突出部2621のうち、下磁極歯絶縁部と径方向に対向する箇所に設けられる。切欠部2622の径方向外方にはステータコア23の固定部材配置部44Dおよびビス61Dが位置する。すなわち、切欠部2622は、ビス61Dと径方向に対向する。言い換えると、下コアバック絶縁突出部2621のうち、ビス61Dと径方向に対向する箇所は切欠かかれた切欠部2622がある。
【0083】
コイル案内壁2623は、磁極歯絶縁部261の径方向外側に位置する。コイル案内壁2623の径方向内面は、磁極歯232Dに導線が巻かれて構成されるコイル24Dの径方向外側と接触している。コイル24Dは、磁極歯232Dに対して多重で導線が巻かれている。つまり、多重の導線が巻き崩れないようにインシュレータまたはその他の部材により巻き崩れを防止する必要がある。特に本実施形態においては、コイル24Dの径方向外方には固定部材配置部44Dおよびビス61Dが位置している。万が一、コイル24Dに巻き崩れが生じた場合、モータを組み立てる際に、固定部材配置部44Dとコイル24Dとが平面視において重なる可能性がある。つまり、その場合にはビス61Dを固定部材配置部44Dに挿入することができない。またビス61Dが固定部材配置部44Dに挿入後に、固定変化によりコイル24Dに巻き崩れが生じた場合、ビス61Dと接触する可能性がある。ビス61Dが導電体で形成されている場合には、絶縁耐力を維持することができない。コイル案内壁2623を設けることにより、コイル24の径方向外方への巻き崩れが、防止される。
【0084】
固定部材配置部44Dには、ビス61Dが挿入され、上ブラケット21Dと電機子29Dと下ブラケット22Dとを固定する。固定部材配置部44Dの径方向内端は、コイル案内壁2623Dの外面よりも径方向内側に位置する。固定部材配置部44Dの径方向内端は、コイル案内壁2623の内面よりも径方向外側に位置する。コアバック絶縁部262Dは、凹部2627を有する。凹部2627は、固定部材配置部44Dの周縁に位置し、径方向内側に凹む。言い換えると、凹部2627は、固定部材配置部44Dの周縁に沿って径方向内側に凹む。下インシュレータ26Dとステータコア23Dは、量産品であるため、ある一定の寸法公差を有した状態で成型される。よって、両者を組み合わせる際に、凹部2627を設けることにより、下コアバック絶縁部262Dと固定部材配置部44Dとが平面視において重なることを防止できる。つまり、固定部材配置部44Dにビス61Dを挿入した際に、ビス61Dが下インシュレータ26Dに接触することを防止できる。凹部2627の径方向内端は、コイル案内壁2623の内面よりも径方向外側に位置する。このことにより、コイル24Dはコイル案内壁2623の内面よりも径方向内側に収容されるため、コイル24Dとステータコア23Dとが、確実に絶縁することができる。
【0085】
<3−4.カバー部材の変形例>
また、
図12は、上記実施形態に適用されうるカバー部材の変形例を示した図である。
図12を参照して、カバー部材71Eは、環状部714Eと、外周部715Eと、収容部716E、717Eとを有する。本実施形態におけるカバー部材71Eは樹脂製である。ただし、カバー部材71Eをゴム製としてもよい。環状部714Eは、ドーナツ状の円板形であり、各収容部716E、717Eを連結する。外周部715Eは、環状部714Eの径方向外側に位置する。外周部715Eは円筒形状である。本実施形態におけるカバー部材71Eは、下ブラケット22の突出部223に圧入されて固定される。
【0086】
収容部716E、717Eは、それぞれ有底円筒形状である。各収容部716E,717Eの周方向の位置は、下ブラケット22の各開口部228の周方向の位置と一致する。本実施形態においては、収容部716E、717Eは、それぞれ、周方向に3箇所、点対称に配置されている。また、各収容部716E、717Eの径方向の位置は、下ブラケット22の各開口部228の径方向の位置と一致する。各収容部716E、717Eは、それぞれ各開口部228に向かって開口している。したがって、開口部228にねじが挿入された際、各収容部716E、717Eは、ねじを収容することができる。したがって、モータ内部への塵埃の侵入を防止することができる。ここで、各収容部716E、717Eの周方向の位置は、ステータコア23の隣り合う磁極歯232同士の間に、それぞれ位置する。また、収容部716E、717Eの底の軸方向の位置は、環状部714Eの軸方向の位置よりもステータコア23側に位置する。このように構成することにより、開口部228に挿入するねじを長くすることができる。
【0087】
<3−5.その他変形例>
本実施形態では、3相ブラシレスモータに使用したが、これに限られるものではない。単相や二相のブラシレスモータでもよい。また、ブラシとコミュテータとを有するブラシ付モータでもよい。また、ステッピングモータ等他のタイプのモータに用いられてもよい。
【0088】
本実施形態では、突出部は環状としたが、これに限られるものではない。平板状等、他の形状であってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、上ブラケット21の形状を中心開口部の径方向内側に上軸受が位置する、としたがこれに限られるものではない。
【0090】
また、シャフト31の上側、下側のいずれに被回転物が固定されてもよく、両方に固定されていてもよい。また、上インシュレータ25と下インシュレータ26とが逆に配置されていてもよい。
【0091】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。