(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムの製造用の導電性組成物であって、
樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有し、
前記樹脂(A)の重量平均分子量が20,000以上600,000以下であり、
前記樹脂(A)の含有割合が、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し8質量%以上40質量%以下であり、
前記溶剤(C)が、溶剤(C')を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含み、前記溶剤(C')が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、テトラリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、トリアセチン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である、成形フィルム用導電性組成物。
前記導電性微粒子(B)が、銀粉、銅粉、銀コート粉、銅合金粉、導電性酸化物粉、およびカーボン微粒子より選択される1種以上の導電性微粒子を含む、請求項1に記載の成形フィルム用導電性組成物。
前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される1種以上の置換基を有する、請求項1又は2に記載の成形フィルム用導電性組成物。
前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される第1の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、重量平均分子量が20,000以上600,000以下であり、
成形フィルム用導電性組成物が、更に架橋剤(D)を含有し、前記架橋剤(D)が、前記第1の反応性官能基と架橋形成しうる第2の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、
前記架橋剤(D)の第2の反応性官能基の物質量の総量FD(mоl)と、前記樹脂(A)の質量MA(g)との比が下記式(1)を満たす、請求項1〜4のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物。
式(1) 5.0×10−5 ≦ FD/MA ≦ 6.0×10−4
ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムであって、
前記導電層が、請求項1〜5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形フィルム。
ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、加飾層と、導電層とを有する、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムであって、
前記導電層が、請求項1〜5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施に係る成形フィルム用導電性組成物、成形フィルム、成形体及びその製造方法について順に詳細に説明する。
なお本実施において、硬化物とは、化学反応により硬化したもののみならず、例えば溶剤が揮発することにより硬くなったものなど、化学反応によらずに硬化したものを包含する。
【0025】
[成形フィルム用導電性組成物]
本実施の成形フィルム用導電性組成物は、樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有し、
前記溶剤(C)が、下記条件(1)及び条件(2)を満たす溶剤(C’)を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含む。
(1)沸点180℃℃以上270℃以下である
(2)ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の極性パラメータδpが0≦δp≦5.0である、および、ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の水素結合パラメータδhが9.8≦δh≦24.0である、のうち少なくとも一方を満たす
【0026】
上記本実施の成形フィルム用導電性組成物によれば、引張力による導電性の低下が抑制された成形フィルムが製造可能となる。
【0027】
本発明者らは、平坦でない基材表面に適用可能な成形フィルムを製造するために、スクリーン印刷可能な導電性組成物の検討を行った。スクリーン印刷に適用するために、沸点180℃以上270℃以下の溶剤を選択して検討したところ、導電性組成物に含まれる溶剤の種類によって、得られた成形フィルムを引張ったときに生じる抵抗値の変化の大きさが異なるという知見を得た。本発明者らはこのような知見に基づいて検討を行った結果、樹脂フィルム上に特定の溶剤を含む導電性組成物を印刷および加熱乾燥した場合、当該導電性組成物と樹脂フィルムの接触面で樹脂フィルムに対して溶剤が浸透し、樹脂フィルムのわずかな溶解乃至収縮が生じることが明らかとなった。このような溶剤浸透、溶解乃至収縮は、樹脂フィルムと導電層の接触面全体で生じているものと推定される。また、加飾層上に導電層を設ける場合も同様であった。そのため、樹脂フィルムと導電層との密着性はわずかに低下し、樹脂フィルムに浸透した溶剤の乾燥中または乾燥後の導電層への移行のために導電層の凝集力もまた低下しているものと予測される。
このような溶剤浸透、溶解乃至収縮した樹脂フィルムを有する導電層形成用の成形フィルムであっても、それ単体を平坦なフィルム回路基板などとして使用する場合には問題とならなった。しかしながら平坦でない基材表面の形状に追従させ一体化させる成形フィルムとして使用する場合には、成形フィルムは変形を伴うことになる。当該変形の際、成形フィルムには、成形型との摩擦や引張力などがかかる。溶剤浸透、溶解乃至収縮した樹脂フィルムを有する成形フィルムの場合、当該変形の際に、前記摩擦や凝集力低下による導電層の脱離や、延伸に対する導電層の断線などが生じ、導電性が低下するものと推定される。
本発明者らはこれらの知見に基づいて鋭意検討を行った結果、ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の極性パラメータδpが5.0を超過し、且つ、ハンセン溶解性パラメータの水素結合パラメータδhが9.8未満である溶剤が、基材フィルムへ浸透しやすいことを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の成形フィルム用導電性組成物は、上記特定の溶剤(C’)を用いることにより、スクリーン印刷等で、導電性に優れた厚膜の導電層を有する成形フィルムを容易に製造することができる。また、当該成形フィルム用導電性組成物を用いて製造された成形フィルムは、平坦でない基材表面に用いた場合であっても導電性の低下が抑制される。更に、当該成形フィルムを用いることで、凹凸面や曲面など、任意の面に導電回路が形成された成形体を得ることができる。
【0028】
本実施の成形フィルム用導電性組成物は、少なくとも、樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有するものであり、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。以下このような成形フィルム用導電性組成物の各成分について説明する。
【0029】
<樹脂(A)>
本実施の導電性組成物は、成膜性や、ベースフィルム乃至加飾層への密着性を付与するために、バインダー性の樹脂(A)を含有する。また、本実施においては、樹脂(A)を含有することにより、導電層に柔軟性を付与することができる。そのため、樹脂(A)を含有することにより延伸に対する導電層の断線が抑制される。
【0030】
前記樹脂(A)は、導電性組成物用途に用いられる樹脂の中から適宜選択して用いることができる。
樹脂(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系ブロック共重合樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられ、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本実施において樹脂(A)は、中でも、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基より選択される置換基を有することが好ましい。当該置換基を有することにより、後述する導電性微粒子(B)との親和性が向上し、また、ベースフィルム等への密着性も向上する。
更に本実施において樹脂(A)は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基より選択される置換基を1分子中に2つ以上有することが好ましい。この場合、後述する架橋剤(D)と組み合わせることにより樹脂(A)を3次元架橋することができ、導電層に硬度が求められる用途において好適に用いることができる。
【0032】
樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及び酸無水物基より選択される官能基を有する場合、その官能基価は、1mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であることが好ましく、2mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であることが好ましい。なお、官能基価の算出方法の詳細は、後述する実施例で説明する。
なお樹脂(A)が複数種類の官能基を有する場合、官能基価はその合計とする。例えば、樹脂(A)がヒドロキシ基と、カルボキシル基とを有する場合には、官能基価は、樹脂(A)の水酸基価と、酸価との合計を表す。
【0033】
樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、塗膜形成時の取り扱い性の点から、5,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上800,000以下がより好ましく、20,000以上600,000以下が更に好ましい。
なお本実施において、重量平均分子量は、東ソー社製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)「HLC−8320」を用いた測定におけるポリスチレン換算分子量である。
【0034】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、導電層の取り扱いの容易性の点から、樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃以上150℃以下であることが好ましく、5℃以上120℃以下であることがより好ましい。
【0035】
本実施において樹脂(A)は、後述の実施例、その他公知の方法により合成して用いてもよく、また、所望の物性を有する市販品を用いてもよい。本実施において樹脂(A)は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本実施の導電性組成物中の樹脂(A)の含有割合は、用途等に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、8質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。樹脂(A)の含有割合が上記下限値以上であれば、成膜性や、ベースフィルム等への密着性向上し、また、導電層に柔軟性を付与することができる。また、樹脂(A)の含有割合が上記上限値以下であれば、相対的に導電性微粒子(B)の含有割合を高めることができ、導電性に優れた導電層を形成することができる。
【0037】
<導電性微粒子(B)>
導電性微粒子(B)は、導電層内で複数の導電性微粒子が接触して導電性を発現するものであり、本実施においては、高温で加熱することなく導電性が得られるものの中から適宜選択して用いられる。
本実施に用いられる導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボン微粒子、導電性酸化物微粒子などが挙げられる。
金属微粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、アルミニウム、タングステン、モルブテン、白金等の金属単体粉のほか、銅−ニッケル合金、銀−パラジウム合金、銅−スズ合金、銀−銅合金、銅−マンガン合金などの合金粉、前記金属単体粉または合金粉の表面を、銀などで被覆した金属コート粉などが挙げられる。また、カーボン微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、導電性酸化物微粒子としては、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウムなどが挙げられる。
【0038】
本実施においては、中でも、銀粉、銅粉、銀コート粉、銅合金粉、導電性酸化物粉、およびカーボン微粒子より選択される1種以上の導電性微粒子を含むことが好ましい。これらの導電性微粒子(B)を用いることにより、焼結することなく、導電性に優れた導電層を形成することができる。
【0039】
導電性微粒子(B)の形状は特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。成形時の導電性維持の観点や導体パターンの基材への密着性の観点から、凝集状、鱗片状、フレーク状、ワイヤー状のものが好ましい。
【0040】
導電性微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、導電性組成物中での分散性や、導電層としたときの導電性の点から、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましい。
なお本実施において導電性微粒子(B)の平均粒子径は以下のように算出する。JISM8511(2014)記載のレーザ回折・散乱法に準拠し、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック9220FRA)を用い、分散剤として市販の界面活性剤ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製:トリトンX−100)を0.5体積%含有する水溶液に導電性微粒子(B)を適量投入し、撹拌しながら40Wの超音波を180秒照射した後、測定を行った。求められたメディアン径(D50)の値を導電性微粒子(B)の平均粒径とした。
【0041】
本実施において導電性微粒子(B)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施の導電性組成物中の導電性微粒子(B)の含有割合は、用途等に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが好ましい。導電性微粒子(B)の含有割合が上記下限値以上であれば、導電性に優れた導電層を形成することができる。また、導電性微粒子(B)の含有割合が上記上限値以下であれば、樹脂(A)の含有割合を高めることができ、成膜性や、ベースフィルム等への密着性が向上し、また、導電層に柔軟性を付与することができる。
【0042】
<溶剤(C)>
本実施の導電性組成物は、溶剤(C)が、下記条件(1)及び条件(2)を満たす溶剤(C’)を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含むことを特徴とする。
(1)沸点180℃以上270℃以下である
(2)ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の極性パラメータδpが0≦δp≦5.0である、および、ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の水素結合パラメータδhが9.8≦δh≦24.0である、のうち少なくとも一方を満たす
【0043】
当該特定の溶剤(C’)を溶剤全体に対して40質量%以上含むことにより、ベースフィルムとなる樹脂フィルムの溶剤浸透、溶解乃至収縮が抑制され、引張力による導電性の低下が抑制された成形フィルムが製造可能となる。溶剤(C’)の割合は、溶剤全体に対して、40質量%以上100質量%以下であればよく、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0044】
溶剤(C’)としては、更に、下記条件(3)を満たすものが好ましい。
(3)ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の分散パラメータδdが14.0≦δd≦20.0である
【0045】
このような溶剤(C’)の具体例としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃、δd=16.2、δp=7.8、δh=12.6)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃、δd=16.1、δp=9.2、δh=12.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃、δd=16.0、δp=7.0、δh=10.6)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点256℃、δd=15.8、δp=4.4、δh=4.7)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点249℃、δd=16.2、δp=7.6、δh=12.5)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点220℃、δd=15.8、δp=2.3、δh=8.2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点213℃、δd=16.3、δp=4.9、δh=8.0)、ベンジルアルコール(沸点205℃、δd=18.4、δp=6.3、δh=13.7)、テトラリン(沸点207℃、δd=19.6、δp=2.0、δh=2.9)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点239℃、δd=16.0、δp=4.1、δh=8.2)、ターピネオール(沸点217℃、δd=13.9、δp=8.0、δh=10.3)、トリアセチン(沸点258℃、δd=16.5、δp=4.5、δh=9.1)、プロピレングリコール(沸点187℃、δd=16.8、δp=9.3、δh=23.3)、1,3−ブチレングリコール(沸点208℃、δd=16.6、δp=10.0、δh=21.5)、1,4−ブチレングリコール(沸点228℃、δd=16.6、δp=15.3、δh=21.7)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点212℃、δd=15.5、δp=5.7、δh=11.2)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル沸点214℃、δd=16.0、δp=7.2、δh=11.3)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点190℃、δd=15.5、δp=5.7、δh=11.2)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点242℃、δd=15.3、δp=5.5、δh=10.4)などが挙げられる。
【0046】
溶剤(C)は、上記溶剤(C’)以外の溶剤を60質量%未満の範囲で含んでいてもよい。このような溶剤としては、上記条件(1)を満たし、上記条件(2)を満たさない溶剤(C−1)と、上記条件1を満たさない沸点が180℃未満の溶剤(C−2)が挙げられる。
【0047】
本実施において溶剤(C−1)は、ベースフィルムへ浸透し、溶解乃至収縮する溶剤である。したがって、前記溶剤(C’)と併用することにより、その溶解乃至収縮を大きく軽減することが可能であるものの、当該溶剤(C−1)は、溶剤(C)全量に対して、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、0質量%、即ち実質的に含有しないことが更により好ましい。
溶剤(C−1)に該当する溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、イソホロンなどが挙げられる。
【0048】
沸点が180℃未満の溶剤(C−2)は、仮に条件(2)を満たさない場合であっても、スクリーン印刷後の乾燥熱により比較的速やかに蒸発するため、ベースフィルムとの接触時間が短い。そのため、ベースフィルムへ浸透し、溶解乃至収縮させる作用は小さいものの、多量に使用すると印刷時の揮発性が高すぎることから安定した連続印刷が著しく困難となるため、溶剤(C)全量に対して30質量%以下であることが好ましい。
このような沸点が180℃未満の溶剤(C−2)としては、例えば、1−メトキシプロパノール、2−メトキシプロパノール、1−メトキシプロピルアセテート、2−メトキシプロピルアセテート、ソルベントナフサ、酢酸ブチル、酢酸エチル、1−ブタノール、アセトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0049】
本実施の導電性組成物全体に対する溶剤(C)の割合は特に限定されないが、スクリーン印刷時の取り扱い性の点から、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
<任意成分>
本発明の導電性組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、架橋剤(D)のほか、分散剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤等が挙げられる
【0051】
架橋剤(D)は、前記樹脂(A)を架橋するために用いられる。架橋剤(D)としては、前記樹脂(A)が有する反応性官能基と架橋形成しうる反応性官能基を1分子中に2つ以上有するものの中から適宜選択して用いることができる。このような反応性官能基としては、たとえば、エポキシ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、アルキルオキシアミノ基、アジリジニル基、オキセタニル基、カルボジイミド基、β−ヒドロキシアルキルアミド基などが挙げられる。
架橋剤(D)を用いる場合その割合は、樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部以上30質量部以下用いることが好ましく、1質量部以上25質量部以下用いることがより好ましい。
【0052】
更に本実施においては、前記樹脂(A)として、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される第1の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、重量平均分子量が20,000以上600,000以下のものを選択し、架橋剤(D)として、前記第1の反応性官能基と架橋形成しうる第2の反応性官能基を1分子中に2つ以上有するものを選択し、
前記架橋剤(D)の第2の反応性官能基の物質量の総量F
D(mоl)と、前記樹脂(A)の質量M
A(g)との比が下記式(1)を満たすように組み合わせることが、特に好ましい。
式(1) 5.0×10
−5 ≦ F
D/M
A ≦ 6.0×10
−4
ここで架橋剤(D)の第2の反応性官能基の物質量の総量F
D(mоl)の算出例を例示する。例として第2の反応性官能基を1分子中に3つ有する、分子量600の架橋剤を10g用いる場合、F
D=(3/600)×10=0.05(mоl)となる。このとき更に、組合せる樹脂(A)の質量が500(g)である場合は、F
D/M
A=0.05(mоl)/500(g)=1.0×10
−4(mоl/g)となるため、式(1)を満たす組合せである。
このような組合せで用いることにより、柔軟性と、硬度とを兼ね備え、引張力による導電性の低下が抑制された導電層を得ることができる。
【0053】
<導電性組成物の製造方法>
本実施の導電性組成物の製造方法は、前記樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と必要により用いられるその他の成分とを、溶剤(C)中に溶解乃至分散する方法であればよく、公知の混合手段により混合することにより製造することができる。
【0054】
[成形フィルム]
本実施の成形フィルムは、ベースフィルム上に導電層を備えた成形フィルムであって、
前記導電層が、前記成形フィルム用導電性組成物の硬化物であることを特徴とする。
本実施の成形フィルムによれば、凹凸面や曲面など任意の基材面に導電回路が形成された成形体を得ることができる。
本実施の成形フィルムによれば、凹凸面や曲面など任意の基材面に導電回路が形成された成形体を得ることができる。
本実施の成形フィルムの層構成について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1及び
図2は、本実施の成形フィルムの一例を示す、模式的な断面図である。
図1の例に示される成形フィルム10は、ベースフィルム1上に、導電層2を備えている。導電層2は、ベースフィルム1の全面に形成されていてもよく、
図1の例のように所望のパターン状に形成されていてもよい。
図2の例に示される成形フィルム10は、ベースフィルム1上に、加飾層3を有し、当該加飾層3上に、導電層2を備えている。また
図2の例に示されるように、成形フィルム10は、導電層2上に、電子部品4や、取り出し回路に接続するためのピン5を備えていてもよい。
また、図示はしないが、導電層2上、又は電子部品4上には、当該導電層や電子部品を保護するための樹脂層を備えていてもよく、当該樹脂層が、後述する基材との密着性を向上するための粘着層または接着層となっていてもよい。
また、図示はしないが、本実施の成形フィルム10が加飾層3を備える場合、
図2の例のほか、ベースフィルム1の一方の面に加飾層3を有し、他方の面に導電層2を備える層構成であってもよい。
本実施の成形フィルムは、少なくともベースフィルムと、導電層を備えるものであり、必要に応じて他の層を有してもよいものである。以下このような成形フィルムの各層について説明する。
【0055】
<ベースフィルム>
本実施においてベースフィルムは、成形体形成時の成形温度条件下で基材表面の形状に追従可能な程度の柔軟性および延伸性を有するものの中から適宜選択することができ、成形体の用途や、成形体の製造方法などに応じて選択することが好ましい。
例えば、成形体の製造方法として、後述するオーバーレイ成形法や、フィルムインサート法を採用する場合には、ベースフィルムが成形体に残ることから、導電層の保護層としての機能を有することなどを考慮してベースフィルムを選択することができる。
一方、成形体の製造方法として後述するインモールド転写法などを採用する場合には、剥離性を有するベースフィルムを選択することが好ましい。
【0056】
ベースフィルムは上記の観点から適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合樹脂)、カイダック(アクリル変性塩ビ樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル、及びこれら樹脂の2種以上からなるポリマーアロイ等のフィルムや、これらの積層フィルムであってもよい。中でも、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムであることが好ましい。積層フィルムとしては、中でも、ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートの積層フィルムが好ましい。
ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートの積層フィルムの製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネートフィルムとポリメチルメタクリレートフィルムとを貼り合わせて積層してもよく、ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートとを共押出しにより積層フィルムとしてもよい。
【0057】
また、必要に応じ、導電性組成物の印刷性を向上させるなどの目的で、ベースフィルムにアンカーコート層を設け、当該アンカーコート層上に導電性組成物を印刷してもよい。アンカーコート層は、ベースフィルムとの密着性、更には導電性組成物との密着性が良好で成形時にフィルムに追従するものであれば、特に限定されず、また樹脂ビーズ等の有機フィラーや金属酸化物等の無機フィラーも必要に応じて添加してもよい。アンカーコート層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の塗工方法にて塗布、乾燥、硬化して得ることができる。
また更に必要に応じ、成形体表面の傷つき防止のため、ベースフィルムにハードコート層を設け、その反対の面に導電性組成物および必要に応じて加飾層を印刷してもよい。ハードコート層は、ベースフィルムとの密着性、更には表面硬度が良好で成形時にフィルムに追従するものであれば、特に限定されず、また樹脂ビーズ等の有機フィラーや金属酸化物等の無機フィラーも必要に応じて添加してもよい。ハードコート層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の塗工方法にて塗布、乾燥、硬化して得ることができる。
【0058】
また本実施の成形フィルムが加飾層を有する場合には、透明性を有するベースフィルムを選択することが好ましい。
【0059】
ベースフィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、20μm以上450μm以下が好ましい。
【0060】
<導電層>
本実施の成形フィルムにおいて導電層は、前記導電性組成物の硬化物である。
導電層の形成方法は特に限定されないが、本実施においては、スクリーン印刷法、パッド印刷法、ステンシル印刷法、スクリーンオフセット印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビアオフセット印刷法、反転オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法により形成することが好ましく、スクリーン印刷法により形成することがより好ましい。
スクリーン印刷法においては、導電回路パターンの高精細化に対応すべく微細なメッシュ、特に好ましくは300〜650メッシュ程度の微細なメッシュのスクリーンを用いることが好ましい。この時のスクリーンの開放面積は約20〜50%が好ましい。スクリーン線径は約10〜70μmが好ましい。
スクリーン版の種類としては、ポリエステルスクリーン、コンビネーションスクリーン、メタルスクリーン、ナイロンスクリーン等が挙げられる。また、高粘度なペースト状態のものを印刷する場合は、高張力ステンレススクリーンを使用することができる。
スクリーン印刷のスキージは丸形、長方形、正方形いずれの形状であってもよく、またアタック角度(印刷時の版とスキージの角度)を小さくするために研磨スキージも使用することができる。その他の印刷条件等は従来公知の条件を適宜設計すればよい。
【0061】
導電性組成物をスクリーン印刷により印刷後、加熱して乾燥することにより硬化する。また、導電性組成物が架橋剤(D)を含有する場合は、更に、加熱により架橋反応を行い硬化する。
架橋剤を含有しない場合は、溶剤の十分な揮発のため、また、架橋剤を含有する場合は、溶剤の十分な揮発および架橋反応のために、加熱温度は80〜230℃、加熱時間としては10〜120分とすることが好ましい。これにより、パターン状の導電層を得ることができる。パターン状導電層は、必要に応じて、導電パターンを被覆するように、絶縁層を設けてもよい。絶縁層としては、特に限定されず、公知の絶縁層を適用することができる。
【0062】
導電層の膜厚は、求められる導電性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上20μm以下とすることができ、1μm以上15μm以下とすることが好ましい。
【0063】
<加飾層>
本実施の成形フィルムは、得られる成形体の意匠性の点から、加飾層を有していてもよい。
加飾層は単色の色味を有する層であってもよく、任意の模様が付されたものであってもよい。
加飾層は、一例として、色材と、樹脂と、溶剤とを含有する加飾インキを調製した後、当該加飾インキを公知の印刷手段によりベースフィルムに塗布することにより形成することができる。
前記色材としては、公知の顔料や染料の中から適宜選択して用いることができる。また樹脂としては、前記本実施の導電性組成物における樹脂(A)と同様のものの中から適宜選択して用いることが好ましい。
加飾層の厚みは特に限定されないが、例えば0.5μm以上10μm以下とすることができ、1μm以上5μm以下とすることが好ましい。
【0064】
本実施の成形フィルムが、ベースフィルムと導電層とを有する場合、前記ベースフィルムの軟化点温度における各層の破断伸び率の関係が
ベースフィルムの破断伸び率>導電層の破断伸び率
を満たすことが好ましい。
また、実施の成形フィルムが、ベースフィルムと、加飾層と、導電層とをこの順に有する場合、前記ベースフィルムの軟化点温度における各層の破断伸び率の関係が
ベースフィルムの破断伸び率>加飾層の破断伸び率>導電層の破断伸び率
を満たすことが好ましい。
このような関係を満たすことにより、引張力が導電層に集中し大きな力学的負荷がかかることを防ぐことができ、引張力による導電性の低下がより抑制される。
【0065】
[成形体]
本実施の成形体は、基材上に少なくとも導電層が積層した成形体であって、前記導電層が、請求項1〜5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物であることを特徴とする。本実施の成形体は、前記本実施の成形フィルム用導電性組成物を用いた成形フィルムにより形成されるため、凹凸面や曲面など、任意の面に導電回路が形成された成形体となる。
以下、本実施の成形体の製造方法について、3つの実施形態を説明する。なお、本実施の成形体は、前記本実施の導電性組成物を用いて製造されたものであればよく、これらの方法に限定されるものではない。
【0066】
<第1の製造方法>
本実施に係る成形体の第1の製造方法は、前記本実施の成形フィルム用導電性組成物を、ベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、
基材上に前記成形フィルムを配置する工程と、
オーバーレイ成形法により、前記成形フィルムと前記基材とを一体化する工程と、を含む。
以下、
図3を参照して説明するが、成形フィルムの製造方法は前述のとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0067】
図3は、成形体の第1の製造方法の一例を示す、模式的な工程図である。
図3(A)〜(C)はそれぞれTOM(Three dimension Overlay Method)成形機のチャンバーボックス内に配置された成形フィルム10と基材20を図示するものであり、
図3(B)および(C)ではチャンバーボックスを省略している。
第1の製造方法においては、まず、基材20を下側チャンバーボックス22のテーブル上に設置する。次いで、前記本実施の成形フィルム10を上側チャンバーボックス21と下側チャンバーボックス22との間を通し、基材20上に配置する。この際、成形フィルム10は導電層が基材20側、もしくは基材20とは反対側のどちらと面するように配置されていてもよく、最終的な成形体の用途によって選択される。次いで上側・下側チャンバーボックスを真空状態とした後、成形フィルムを加熱する。次いで、テーブルを上昇することにより基材20を上昇15する。次いで上側チャンバーボックス21内のみを大気開放する(
図3(B))。この時、成形フィルムは基材側に加圧16され、成形フィルム10と基材20とが貼り合わされて一体化する(
図3(C))。このようにして成形体30を得ることができる。
【0068】
当該第1の製造方法において、基材20は予め任意の方法で準備することができる。当該第1の製造方法において、基材20の材質は特に限定されず、樹脂製であっても金属製であってもよい。
【0069】
<第2の製造方法>
本実施に係る成形体の第2の製造方法は、前記本実施の成形フィルム用導電性組成物を、ベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、
前記成形フィルムを所定の形状に成形する工程と、
成形後の前記成形フィルムを、射出成形用の型内に配置する工程と、
射出成形により基材を成形すると共に、前記成形フィルムと前記基材とを一体化する工程と、を含む。以下、
図4を参照して説明する。なお、第2の製造方法をフィルムインサート法ということがある。
【0070】
図4は、成形体の第2の製造方法の一例を示す、模式的な工程図である。第2の製造方法において、成形フィルム10は、金型11により予め所定の形状に成形する(
図4(A))。成形フィルム10は加熱して軟化した後に、又は軟化させながら、真空による金型への吸引もしくは圧空による金型への押しつけ、またはその両方を併用して行い、金型11により成形する(
図4(B))。この際、成形フィルム10は導電層が後述する基材20側、もしくは基材20とは反対側のどちらと面するように成形されていてもよく、最終的な成形体の用途によって選択される。次いで、成形後の成形フィルム10を射出成形用の金型12内に配置する(
図4(C)〜
図4(D))。次いで、開口部13から樹脂を射出14して、基材20を形成すると共に、前記成形フィルム10と、前記基材20とを一体化して、成形体30が得られる(
図4(E))。
【0071】
第2の製造方法において基材20は予め準備する必要はなく、基材の成形と、成形フィルムとの一体化を同時に行うことができる。基材20の材質は、射出成形用に用いられる公知の樹脂の中から適宜選択して用いることができる。
【0072】
<第3の製造方法>
本実施に係る成形体の第3の製造方法は、前記本実施の成形フィルム用導電性組成物を、スクリーン印刷により、ベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、
前記成形フィルムを、射出成形用の型内に配置する工程と、
射出成形により基材を成形すると共に、前記成形フィルム中の導電層を基材側に転写する工程と、を含む。
以下、
図5を参照して説明する。なお、第3の製造方法をインモールド転写法ということがある。
【0073】
図5は、成形体の第3の製造方法の一例を示す、模式的な工程図である。第3の製造方法において成形フィルム10は、ベースフィルムとして剥離性を有するものを選択して用いる。当該成形フィルム10を射出成形用の金型12内に、後述する基材20側に導電層が向くように配置する(
図5(A))。次いで、開口部13から樹脂を射出14して、基材20を形成すると共に、前記成形フィルム10と基材20とが密着し、基材20側に、少なくとも導電層が転写され(
図5(B))、成形体30が得られる(
図5(C))。なお、成形フィルム10が加飾層を有する場合には、加飾層と導電層とが転写される。
【0074】
第3の製造方法においては、ベースフィルムを切断する必要がないため、
図5の例に示されるように長尺状のベースフィルムを配置することができる。基材20の材質は、射出成形用に用いられる公知の樹脂の中から適宜選択して用いることができる。
【0075】
このようにして得られた成形体は、家電製品、自動車用部品、ロボット、ドローンなどのプラスチック筐体などに、回路やタッチセンサー・各種電子部品の実装を行うことを可能にする。また、電子機器の軽薄短小化および設計自由度の向上、多機能化に極めて有用である。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
また、実施例中の重量平均分子量は、東ソー社製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)「HLC−8320」を用いた測定におけるポリスチレン換算分子量である。
【0077】
また実施例中の「官能基価」は各原料の官能基1つあたりの分子量(これを官能基当量とする)を基に、以下の計算式によって原料1gあたりの官能基量を等モル量の水酸化カリウム換算質量(mg)として表したものである。
(官能基価)[mgKOH/g]=(56.1×1000)/(官能基当量)
上記官能基価は、例えば官能基がカルボキシル基である場合は酸価、官能基がヒドロキシ基である場合は水酸基価、官能基がアミノ基である場合はアミン価などと表現される量の総称であり、互いに異なる官能基をもつ物質同士の官能基比率を比較する際には、上記官能基価が同じ値であれば同モル量の官能基を有すると考えてよい。
【0078】
上記官能基価は、官能基がカルボキシル基やヒドロキシ基などの定量に水酸化カリウムの滴定を用いる場合は、例えばJIS K 0070に定められた公知公用の測定法を用いて中和に用いた水酸化カリウムの適定量から測定値(酸価および水酸基価)を直接求めることもでき、上記の計算式による計算値と同様に扱うことができる。
また、イソシアネート基など、官能基価の定量に上記の水酸化カリウムによる滴定を使用しない場合にも、官能基量を表すそれぞれの測定値から導かれた上記官能基当量ならびに上記計算式を用いて、便宜的に水酸化カリウム換算量として算出することができる。以下に具体的な計算例を示す。
【0079】
計算例:イソシアネート基を有する化合物として、JIS K 6806(イソシアネート基をn−ジブチルアミンと反応させ、残ったn−ジブチルアミンを塩酸水溶液で滴定する方法)に定められた方法で測定されたイソシアネート量が23%である3官能イソシアネート化合物「X」について計算する。3官能イソシアネート化合物「X」の官能基当量は、上記イソシアネート量(%)とイソシアネート基の分子量(NCO=44g/mоl)から以下のように導かれる。
(「X」の官能基当量)=1/(0.23/44)=191.3
この3官能イソシアネート化合物「X」の官能基当量と上記官能基価の計算式から、下記のように3官能イソシアネート化合物「X」の官能基価を算出することができる。
(3官能イソシアネート化合物「X」の官能基価)[mgKOH/g]
=(56.1×1000)/191.3=293.3
【0080】
<樹脂(A1)、(A2)>
樹脂(A1)及び(A2)として以下の樹脂を用いた。
・樹脂(A1):三菱ケミカル社製フェノキシ樹脂、jER−4250、重量平均分子量55,000、ガラス転移点78℃、ヒドロキシ基(水酸基価208mgKOH/g)およびエポキシ基(エポキシ基価5mgKOH/g)をそれぞれ1分子中に2以上含有する。
・樹脂(A2):三菱ケミカル社製アクリル樹脂、ダイヤナールBR−108、重量平均分子量550,000、ガラス転移点90℃、反応性官能基を有さない。
【0081】
<合成例1:樹脂(A3)の合成>
攪拌機、温度計、精留管、窒素ガス導入管、減圧装置を備えた反応装置に、テレフタル酸ジメチル20.3部、イソフタル酸ジメチル20.3部、エチレングリコール12.9部、ネオペンチルグリコール18.2部、及びテトラブチルチタネート0.03部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら180℃まで徐々に加熱し、180℃で3時間エステル交換反応を行なった。ついで、セバシン酸28.3部を仕込み180〜240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。240℃で2時間反応し、酸価を測定し、15以下になったら反応装置内を徐々に1〜2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止し取り出した後に表面がフッ素加工されたパレットに移して冷却することで、重量平均分子量45,000、ガラス転移点60℃、ヒドロキシ基(水酸基価5mgKOH/g)を1分子中に2以上含有するポリエステル樹脂(A3)の固形物を得た。
【0082】
<合成例2:樹脂(A4)の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、イソフタル酸と3−メチル−1,5ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール(クラレ社製「クラレポリオールP−2030」)127.4部、ジメチロールブタン酸4.2部、イソホロンジイソシアネート19.2部、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート32.5部を仕込み、窒素気流下にて90℃で3時間反応させ、ついでジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート193.7部を加えることで、重量平均分子量34,000、ガラス転移点12℃、ヒドロキシ基(水酸基価4mgKOH/g)、カルボキシル基(酸価10mgKOH/g)をそれぞれ1分子中に2以上含有するウレタン樹脂(A3)60%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒40%からなる不揮発分40%のウレタン樹脂(A4)溶液を得た。
【0083】
導電性微粒子、溶剤、及び架橋剤として以下のものを用いた。
<導電性微粒子(B1)〜(B5)>
・導電性微粒子(B1):福田金属箔粉社製、フレーク状銀粉、平均粒子径5.2μm
・導電性微粒子(B2):福田金属箔粉社製、連鎖凝集銀粉、平均粒子径1.7μm
・導電性微粒子(B3):三井金属鉱業社製、銀コート銅粉、銀被覆量10%、平均粒子径2μm
・導電性微粒子(B4):石原産業社製、針状導電性酸化錫粉、平均粒子径1μm
・導電性微粒子(B5):伊藤黒鉛社製、膨張化黒鉛、平均粒子径15μm
【0084】
<溶剤(C’1)〜(C’5)>
<溶剤(C’1)〜(C’13)>
・溶剤(C’1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル、沸点231℃、δd=16.0、δp=7.0、δh=10.6
・溶剤(C’2):トリエチレングリコールモノメチルエーテル、沸点249℃、δd=16.2、δp=7.6、δh=12.5
・溶剤(C’3):テトラリン、沸点207℃、δd=19.6、δp=2.0、δh=2.9
・溶剤(C’4):ベンジルアルコール、沸点205℃、δd=18.4、δp=6.3、δh=13.7
・溶剤(C’5):ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、沸点213℃、δd=16.3、δp=4.9、δh=8.0
・溶剤(C’6):ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、沸点239℃、δd=16.0、δp=4.1、δh=8.2
・溶剤(C’7):ターピネオール、沸点217℃、δd=13.9、δp=8.0、δh=10.3
・溶剤(C’8):ジエチレングリコールモノメチルエーテル、沸点194℃、δd=16.2、δp=7.8、δh=12.6
・溶剤(C’9):ジエチレングリコールモノエチルエーテル、沸点202℃、δd=16.1、δp=9.2、δh=12.2
・溶剤(C’10):トリアセチン、沸点258℃、δd=16.5、δp=4.5、δh=9.1
・溶剤(C’11):ジエチレングリコールジブチルエーテル、沸点256℃、δd=15.8、δp=4.4、δh=4.7
・溶剤(C’12):トリエチレングリコールジメチルエーテル、沸点220℃、δd=15.8、δp=2.3、δh=8.2
・溶剤(C’13):プロピレングリコール、沸点187℃、δd=16.8、δp=9.3、δh=23.3
【0085】
<溶剤(C14)〜(C17)>
・溶剤(C14):ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、沸点217℃、δd=16.2、δp=5.1、δh=9.2
・溶剤(C15):ガンマブチロラクトン、沸点204℃、δd=19.0、δp=16.1、δh=7.4
・溶剤(C16):イソホロン、沸点215℃、δd=16.6、δp=8.2、δh=7.4
・溶剤(C17):2−メトキシプロパノール、沸点:120℃、δd=15.6、δp=6.3、δh=11.6
【0086】
<架橋剤(D1)、(D2)>
・架橋剤剤(D1):
Baxeneden Chemicals社製ブロックイソシアネート溶液、Trixene BI7982、ブロック化されているイソシアネート基を1分子中に3つ含有(官能基価195mgKOH/g)、不揮発分70%(溶剤(C17):2−メトキシプロパノール)
・架橋剤剤(D2):
日本化薬社製グリシジルアミン、GOT、エポキシ基を1分子中に2つ含有(官能基価415mgKOH/g)、不揮発分100%
【0087】
<製造例1:加飾インキ(F1)の作成>
樹脂溶液(A3)175部(樹脂(A3)のみとして70部)を準備し、これにフタロシアニンブルー顔料(トーヨーカラー社製LIONOL BLUE FG7351)10部、酸化チタン顔料(石原産業社製TIPAQUE CR−93)20質量部を撹拌混合し、3本ロールミル(小平製作所製)で混練したのち、イソシアネート硬化剤(住化コベストロウレタン社製デスモジュール N3300、不揮発分100%)5部とトルエン90部を加えて均一に撹拌混合することで加飾インキ(F1)を得た。
【0088】
<実施例1:成形フィルム用導電性組成物(E1)の作成>
樹脂(A1)20.0部を溶剤(C'1)30.0部に溶解させ、導電性微粒子(B1)80.0部を撹拌混合し、3本ロールミル(小平製作所製)で混練することで成形フィルム用導電性組成物(E1)を得た。
【0089】
<実施例2〜16:成形フィルム用導電性組成物(E2)〜(E16)の作成>
実施例1において、樹脂、溶剤、導電性微粒子の種類及び配合量を表1のように変更し、必要に応じて、更に架橋剤を配合した以外は、それぞれ実施例1と同様にして、成形フィルム用導電性組成物(E2)〜(E16)を得た。
なお、表1〜表4中の各材料の数値はいずれも質量部である。
【0090】
<比較例1〜3:成形フィルム用導電性組成物(E17)〜(E19)の作成>
実施例1において、樹脂、溶剤、導電性微粒子の種類及び配合量を表3のように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして、成形フィルム用導電性組成物(E17)〜(E19)を得た。
【0091】
<実施例17〜32、および比較例4〜6>
ポリカーボネート(PC)フィルム(帝人社製、パンライト2151、厚み300μm)基材(300mm×210mm)上に、成形フィルム用導電性組成物(E1)〜(E14)をそれぞれスクリーン印刷機(ミノスクリーン社製、ミノマットSR5575半自動スクリーン印刷機)によって印刷した。次いで、熱風乾燥オーブンで120℃で30分加熱することで、幅15mm、長さ30mm、厚み10μmの四角形ベタ状および線幅3mm、長さ60mm、厚み10μmの直線状のパターンを有する導電層を備えた成形フィルムを得た。
【0092】
<実施例33〜48、および比較例7〜9>
前記実施例17〜32において、ポリカーボネートフィルム基材の代わりに、アクリル樹脂フィルム(住友化学社製、テクノロイS001G、厚み250μm)基材(300mm×210mm)を用いたこと、及び、熱風乾燥オーブンでの乾燥条件を80℃で30分としたこと以外は、前記実施例17〜32と同様にして、成形フィルムを得た。
【0093】
<実施例49>
前記実施例33において、アクリル樹脂フィルム基材の代わりに、ポリカーボネート樹脂/アクリル樹脂2種2層共押し出しフィルム(住友化学社製、テクノロイC001、厚み125μm)基材(300mm×210mm)を用い、ポリカーボネート樹脂側に成形フィルム用導電性組成物の印刷を行ったこと以外は、前記実施例33と同様にして、成形フィルムを得た。
【0094】
<実施例50>
ポリカーボネートフィルム(帝人社製、パンライト2151、厚み300μm)基材(300mm×210mm)上に、加飾インキ(F1)を、ブレードコーターを用いて、乾燥膜厚が2μmとなるように塗工し、120℃で30分加熱して加飾層を形成した。
次いで、前記実施例17〜32において、ポリカーボネートフィルムの代わりに上記加飾層付きフィルムを用い、加飾層上に導電層を形成した以外は、前記実施例17〜32と同様にして、ポリカーボネートフィルム、加飾インキ層、導電体がこの順に積層された成形フィルムを得た。
【0095】
[(1)体積固有抵抗測定]
上記実施例17〜50、および比較例4〜9の成形フィルムに形成された、15mm×30mmの四角形ベタ状の導電層について、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP MCP−T610型抵抗率計、JIS−K7194準拠、4端子4探針法定電流印加方式)(0.5cm間隔の4端子プローブ)を用いて体積固有抵抗(Ω・cm)を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0096】
[(2)剥離密着性評価]
上記実施例17〜50、および比較例4〜9の成形フィルムに形成された、15mm×30mmの四角形ベタ状の導電層に対し、ガードナー社製1mm間隔クロスカットガイドを使用してカッターナイフで当該導電層を貫通するように10x10マスの碁盤目状の切れ込みを入れ、ニチバン社製セロハンテープを貼り付け噛み込んだ空気を抜いてよく密着させたのち、垂直に引きはがした。塗膜の剥離度合いをASTM−D3519規格に従って下記のように評価した。結果を表1〜3に示す。
(剥離密着性評価基準)
A:評価5B〜4B、密着性に優れる
B:評価上は5B〜4Bであるが、塗膜が凝集破壊し、表面側の塗膜の一部が脱離する
C:評価3B以下、密着性に劣る
【0097】
[(3)配線抵抗評価]
上記実施例17〜50、および比較例4〜9の成形フィルムに形成された、3mm×60mmの直線状パターンの導電層が真ん中に来るように長手方向に70mm、幅方向に10mmに切り出し、測定用クーポンとした。この測定用クーポン上の導電層とは反対側の面に、長手方向端から当該導電層と垂直な線を目印として油性マジックで4cm間隔に2本書き加えた。この目印に従い、4cm間隔となる位置を、テスターを用いて抵抗値測定し、これを配線抵抗(Ω)とした。結果を表1〜3に示す。
【0098】
[(4)熱延伸評価1]
上記実施例17〜32、49、50および比較例4〜6の前記測定用クーポンを160℃の加熱オーブン中で、長手方向に引っ張り速度10mm/分で伸長率50%まで引き延ばした。オーブンから取出し、冷却後に光学顕微鏡を用いて断線の有無を評価した。また、上記配線抵抗の測定と同様の方法で、元の目印基準で4cm間隔に相当する位置の配線抵抗(Ω)を測定し、伸縮後の配線抵抗/伸縮前の配線抵抗を熱延伸時抵抗変動率(倍)とし、それぞれ以下の基準で評価した。結果を表1及び表3に示す。
(断線の有無)
A:断線は見られなかった。
B:1〜2個の軽微なヒビが確認された
C:重度の断線または導電塗膜の剥離が確認された
(熱延伸時抵抗変動率)
A:5倍以上10倍未満
B:10倍以上100倍未満
C:100倍以上
【0099】
なお、伸長率は以下のように算出される値である。
(伸長率)[%]={(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/(延伸前の長さ)}×100
【0100】
[(5)熱延伸評価2]
前記熱延伸評価1において、伸長率を100%に変更した以外は、前記熱延伸評価1と同様にして、以下の基準で評価した。結果を表1及び表3に示す。
(断線の有無)
A:断線は見られなかった。
B:1〜2個の軽微なヒビが確認された
C:重度の断線または導電塗膜の剥離が確認された
(熱延伸時抵抗変動率)
A:10倍以上100倍未満
B:100倍以上1000倍未満
C:1000倍以上
【0101】
[(6)熱延伸評価3]
上記実施例33〜48、および比較例4〜9の前記測定用クーポンを120℃の加熱オーブン中で、長手方向に引っ張り速度10mm/分で伸長率50%まで引き延ばした。オーブンから取出し、冷却後に光学顕微鏡を用いて断線の有無を評価した。また、上記配線抵抗の測定と同様の方法で、元の目印基準で4mm間隔に相当する位置の配線抵抗(Ω)を測定し、伸縮後の配線抵抗/伸縮前の配線抵抗を熱延伸時抵抗変動率(倍)とし、それぞれ以下の基準で評価した。結果を表2及び表3に示す。
(断線の有無)
A:断線は見られなかった。
B:1〜2個の軽微なヒビが確認された
C:重度の断線または導電塗膜の剥離が確認された
(熱延伸時抵抗変動率)
A:5倍以上10倍未満
B:10倍以上100倍未満
C:100倍以上
【0102】
[(7)熱延伸評価4]
前記熱延伸評価3において、伸長率を100%に変更した以外は、前記熱延伸評価3と同様にして、以下の基準で評価した。結果を表2及び表4に示す。
(断線の有無)
A:断線は見られなかった。
B:1〜2個の軽微なヒビが確認された
C:重度の断線または導電塗膜の剥離が確認された
(熱延伸時抵抗変動率)
A:10倍以上100倍未満
B:100倍以上1000倍未満
C:1000倍以上
【0103】
[(8)実施例50の破断伸び率測定]
剥離処理PETフィルム(リンテック社製、CN100)基材上に、前記導電性組成物(E1)をスクリーン印刷機(ミノスクリーン社製、ミノマットSR5575半自動スクリーン印刷機)によって乾燥膜厚が10μmとなるように印刷した後、熱風乾燥オーブンで120℃で30分加熱することで、ベタ状の導電性組成物(E1)の導電層を形成した。次いで、剥離処理PETフィルムから導電層を剥離し、破断伸び率測定用の導電層とした。
これとは別に剥離処理PETフィルム基材を用意し、当該基材上に加飾インキ(F1)をブレードコーターを用いて、乾燥膜厚が2μmとなるように塗工し、120℃で30分加熱して加飾層を形成した。次いで、剥離処理PETフィルムから加飾層を剥離し、破断伸び率測定用の加飾層とした。
また、破断伸び率測定用のベースフィルムとして、ポリカーボネートフィルム(帝人社製、パンライト2151、厚み300μm)を準備した。
前記破断伸び率測定用の導電層、加飾層、及びベースフィルムを、それぞれ60mm×10mmの形状に切り抜き、それぞれ160℃の加熱オーブン中で、引っ張り速度10mm/分で引き延ばした際の破断伸び率を測定した。この結果、それぞれの破断伸び率はベースフィルム:400%、加飾層:300%、導電層:140%であった。
【0104】
<実施例51〜53:成形体の製造>
実施例11、実施例49および実施例50の成形フィルムの3mm×60mmの直線状パターンの位置と重なるように、半径3cmの半球状のABS樹脂成形物を導電体側の面と向かい合うように合わせ、TOM成形機(布施真空社製)を用いて設定温度160℃でオーバーレイ成形を行うことで、半球形状に成形された成形フィルムとABS樹脂成形物とが一体化した成形体を得た。直線状パターンの断線の有無および熱延伸時抵抗変動率を確認した結果、断線は確認されず、また抵抗値の変動は10倍以上100倍未満であり、回路として実用可能な立体回路であることが確認された。
【0105】
<実施例54〜56>
実施例33、実施例49および実施例50で得られた成形フィルムの3mm×60mmの直線状パターンの位置と重なるように、半径3cmの半球状の金属製モールドを導電体側の面と向かい合うように合わせ、TOM成形機(布施真空社製)を用いて設定温度160℃でオーバーレイ成形を行うことで、半球形状に成形されたパターン化導電体付き成形用フィルムを得た。
次いで、当該半球形状に成形された成形フィルムを、バルブゲートタイプのインモールド成形用テスト金型が取り付けられた射出成形機(IS170(i5)、東芝機械社製)にセットし、PC/ABS樹脂(LUPOYPC/ABSHI5002、LG化学社製)を射出成形することで、パターン化導電体付き成形用フィルムと一体化された成形体を得た(射出条件:スクリュー径40mm、シリンダー温度250℃ 、金型温度(固定側、可動側)60℃ 、射出圧力160MPa(80%)、保圧力100MPa、射出速度60mm/秒(28%)、射出時間4秒、冷却時間20秒)。直線状パターンの断線の有無および熱延伸時抵抗変動率を確認した結果、断線は確認されず、また抵抗値の変動は10倍以上100倍未満であり、回路として実用可能な立体回路であることが確認された。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
[結果のまとめ]
ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の極性パラメータδpが5.0を超過し、且つ、ハンセン溶解性パラメータの水素結合パラメータδhが9.8未満である高沸点溶剤を用いた比較例1〜3の導電性組成物を用いて形成された導電層は、熱延伸時に破断を生じ、抵抗値が上昇することが明らかとなった。
【0110】
一方、実施例17〜50の結果から、本実施の導電性組成物は、得られる導電層の密着性および成形時の導電層の延伸に対し断線や脱落が起きず、抵抗値の増大も良好に保たれていた。これは本実施の導電性組成物の使用溶剤が高沸点かつ特定のHSP範囲にあることにより、揮発が緩やかで良好な印刷性の保持が可能であることに加え、ベースフィルムとの高温接触時における溶剤浸透が最低限に抑制され、良好な基材密着性と導電体本来の凝集力、導電性および延伸適性が発揮されたものと推定される。
【0111】
また実施例51〜56の結果から、本発明の導電性組成物の導電層を備えた成形フィルムによれば、基材面が平坦でない立体形状であっても、優れた配線一体型の成形体が得られた。
【0112】
このように、本実施の導電性組成物を用いた成形フィルムおよび配線一体型の成形体は、家電製品、自動車用部品、ロボット、ドローンなどのプラスチック筐体および立体形状部品へ直接、デザイン自由度を損なうことなく軽量かつ省スペースな回路の作り込みやタッチセンサー・アンテナ・面状発熱体・電磁波シールド・インダクタ(コイル)・抵抗体の作り込みや、・各種電子部品の実装を行うことを可能にする。また、電子機器の軽薄短小化および設計自由度の向上、多機能化に極めて有用である。
【解決手段】樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有し、前記溶剤(C)が、下記条件(1)及び条件(2)を満たす溶剤(C’)を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含む、成形フィルム用導電性組成物。
(2)ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の極性パラメータδpが0≦δp≦5.0である、および、ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の水素結合パラメータδhが9.8≦δh≦24.0である、のうち少なくとも一方を満たす