(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁ホルダに前記回路基板に向けて突出する位置決め凸部が設けられ、前記回路基板の前記位置決め凸部に対応する位置に位置決め孔が設けられている、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の回路構成体。
前記回路基板の前記第2面と前記放熱板との間には、前記絶縁ホルダおよび前記放熱板の境界部を含む領域に、当該境界部を覆う絶縁層が設けられている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の回路構成体。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板にコイル等のインダクタが接続された回路構成体として、特開2013−99071号公報に記載のものが知られている。この回路構成体は、回路基板と、この回路基板の熱を外部に放熱する金属製の放熱部材とを備える。
【0003】
回路基板にはバスバーが配索されている。放熱板は、回路基板のうち、バスバーが配索された側の面に重ねられている。
【0004】
インダクタの端子とバスバーとをボルト等の締結部材で接続する場合に、インダクタの端子及びバスバーを、放熱部材に直接にネジ止めすることはできない。インダクタの端子及びバスバーと、放熱部材とが短絡するからである。
【0005】
そこで、特開2013−99071号公報においては、バスバーを回路基板の端縁から外方に突出させるとともに、放熱部材から離間させる方向に屈曲させた状態で、インダクタの端子とバスバーとをネジ止めしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の構成によると、インダクタの端子は放熱部材から離間した位置に配されることになる。このため、インダクタの端子からの放熱性が低下するという問題があった。
【0008】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放熱性に優れる回路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、回路基板と、前記回路基板に重ねられた放熱板と、インダクタと、を備えた回路構成体であって、前記回路基板は第1面と、前記第1面と反対側であって複数のバスバーが配索された第2面と、を有し、前記インダクタは本体部と、前記本体部から導出されるとともに前記回路基板に向けて屈曲した形状をなす端子部とを有し、前記端子部の先端部は前記回路基板に設けられた開口部から露出した前記バスバーに螺合部材により接続されており、前記螺合部材は、前記放熱板に設けられた収容凹部内に収容された絶縁ホルダに保持されており、
前記絶縁ホルダは前記放熱板の表面と面一となるように前記収容凹部内に収容されており、前記放熱板
および前記絶縁ホルダは、前記回路基板の前記第2面側において前記回路基板と伝熱的に重ねられている。
【0010】
上記構成によれば、インダクタの端子部は回路基板に向けて屈曲した形状をなしており、回路基板の開口部から露出したバスバーに接続されている。そして、放熱板は、回路基板のうちバスバーが配設された第2面側において伝熱的に重ねられている。これにより、インダクタで発生した熱は、インダクタの端子部からバスバーへと伝熱され、さらに、バスバーから放熱板へと伝熱される。これにより、回路構成体の放熱性を向上させることができる。
【0011】
上述した回路構成体は、以下の構成を備えていてもよい。
【0012】
回路基板のうち本体部に対応する領域に、放熱板を露出させる本体部用開口が設けられている構成としてもよい。
【0013】
このような構成によれば、インダクタの本体部の熱を本体部用開口を通して放熱板に伝熱させることができるから、放熱性がより向上する。
【0014】
インダクタは第1面に配設されている構成としてもよい。このような構成によれば、配線密度を確保しつつ、第1面側で発生した熱をインダクタの端子部を利用することにより第2面側に配されている放熱板に効率よく伝え、放熱させることができる。
【0015】
絶縁ホルダに回路基板に向けて突出する位置決め凸部が設けられ、回路基板の位置決め凸部に対応する位置に位置決め孔が設けられている構成としてもよい。
【0016】
インダクタの端子部とバスバーとをボルトおよびナットにより接続する際には、位置決め作業が重要であるが、このような構成の位置決め機構を設けることにより、位置決め作業が容易になる。
【0017】
前記回路基板の第2面と前記放熱板との間には、前記絶縁ホルダおよび前記放熱板の境界部を含む領域に、当該境界部を覆う絶縁層が設けられている構成としてもよい。
【0018】
このような構成とすることにより、放熱板の収容凹部の孔縁付近とバスバーとを確実に絶縁状態とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に開示される技術によれば、放熱性に優れる回路構成体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図8によって説明する。本実施形態の回路構成体10は、例えば車両のバッテリ等の電源と、ランプ、ワイパー等の車載電装品等からなる負荷との間の電力供給経路に配され、例えばDC−DCコンバータやインバータ等に用いることができる。
【0022】
以下の説明においては、
図1および
図3における上側を表側又は上側とし、下側を裏側又は下側とする。また、
図2における下側を前方(正面)、上側を後方(背面)とし、同図の右側を右、左側を左とする。
【0023】
図1に示すように、回路構成体10は、回路基板11と、回路基板11の裏面(
図3における下面)に重ねられた放熱板30とを備えてなる。
【0024】
(回路基板11)
回路基板11は、絶縁基板の表面にプリント配線技術により図示しないプリント配線回路が形成されるとともに電子部品が配され、裏面に複数のバスバー15が所定のパターンで配索されてなる。
【0025】
本実施形態においては、複数の電子部品のうち比較的大型のコイル20(インダクタの一例)だけを図示し、他の電子部品は省略する。また、回路基板11のうちコイル20が実装される面(表側の面)を第1面11A、その反対側の面(裏側の面)を第2面11Bとする。
【0026】
回路基板11は略矩形状をなしており、その所定の位置には、複数の開口部12が設けられている。これらの開口部12は、コイル20をバスバー15上に実装するためのものである。開口部12は、後述するコイル20の接続部22Aが配される領域に設けられており、バスバー15の一部を回路基板11の上面側に露出させている。
【0027】
回路基板11のうち一のコイル20の一対の接続部22Aをバスバー15に接続させる一対の開口部12の間には、後述する絶縁ホルダ40を位置決めするための位置決め孔14が貫通形成されている。
【0028】
また回路基板11の四隅付近には、回路基板11を放熱板30に固定するための基板側固定孔13が貫通形成されている。
【0029】
本実施形態で使用されるコイル20は、平角線をエッジワイズ状に巻回したエッジワイズコイルであり、直方体状の本体部21の一側面から一対の平板状の端子部22(平角線の両端部)が導出されてクランク状に屈曲された形態をなす、いわゆる横置き型のコイル20である。端子部22は、回路基板11に向けて近づく方向に屈曲している。
【0030】
端子部22の先端部は回路基板11の第1面11Aに沿うように延びており、バスバー15と接続される接続部22Aとされている。なおこの接続部22Aには、図示しないボルト(螺合部材の一例)を貫通させるためのコイル側接続孔23が貫通形成されている。
【0031】
なお、接続部22Aは本体部21の底面よりやや下方側に配されており、本体部21が第1面11A上に載置された際に、接続部22Aがバスバー15上に重ねられるように設定されている。
【0032】
バスバー15のうち上述した開口部12から露出された部分には、図示しないボルトを貫通させるためのバスバー側接続孔16が設けられている。コイル20の接続部22Aが重ねられた状態において、バスバー側接続孔16とコイル側接続孔23とは重なるように設定されている。
【0033】
(放熱板30)
放熱板30は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属材料からなり、回路基板11において発生した熱を放熱する機能を有する。
【0034】
放熱板30の上面31はほぼ平坦な板状をなしており、下面には、下方に向けて延びる多数の板状のフィン32が設けられている(
図1参照)。
【0035】
また、放熱板30の上面31の所定位置に回路基板11が載置された状態において、回路基板11の基板側固定孔13に対応する位置には、放熱板側固定孔33が設けられている。
【0036】
さらに
図1に示すように、放熱板30のうち上述したコイル20の接続部22Aが配される領域を含む領域には、上面31から下方に窪んで後述する絶縁ホルダ40を収容する収容凹部34が設けられている。
【0037】
なお、図示はしないが、放熱板30の上面には、放熱板30と回路基板11(バスバー15)との間の絶縁性を図るための絶縁シートが重ねられる。絶縁シートは粘着性を有しており、収容凹部34に対応する領域には、収容凹部34を露出させるための孔部が設けられている。
【0038】
(絶縁ホルダ40)
放熱板30の収容凹部34には、絶縁ホルダ40が収容されている。絶縁ホルダ40は、合成樹脂製で、
図6ないし
図8に示すように、やや扁平な略直方体状をなす部材である。絶縁ホルダ40の上面側には、上述したボルト(図示せず)と螺合可能なナット45(螺合部材の一例)を嵌め入れる一対のナット収容部41が、下方に窪んで設けられている。ナット収容部41の内壁には、上下方向に延びる当接リブ41Aが複数設けられている。
【0039】
また、一対のナット収容部41の間には、上方に向けて突出する位置決め凸部42が設けられている。この位置決め凸部42は、上述した回路基板11の位置決め孔14に対応する位置および大きさに設けられている。
【0040】
図4に示すように、絶縁ホルダ40の外形寸法は、上述した放熱板30の収容凹部34内にほぼぴったり収容される寸法に設定されている。またその高さ寸法は、収容凹部34の深さ寸法とほぼ同寸法とされている。
【0041】
なお、絶縁ホルダ40の上面の周縁部は断面が矩形状に切り欠かれた段差状とされている。また、下面側には軽量化を図るための肉抜き部が上方側に窪んで設けられている。
【0042】
(絶縁シート50)
放熱板30と回路基板11とが重ねられた状態において、絶縁ホルダ40とバスバー15(回路基板11の第2面11B)との間には、絶縁シート50が配されている。絶縁シート50は、
図1および
図4に示すように、その外形が収容凹部34の孔縁部よりやや大きい寸法とされており、放熱板30および絶縁ホルダ40に積層された状態においてナット収容部41および位置決め凸部42に対応する位置には、開口部51が設けられている。
【0043】
絶縁シート50は、放熱板30および絶縁ホルダ40に積層された状態においては、収容凹部34と絶縁ホルダ40との境界部(収容凹部34の孔縁付近)を覆うように設定されている。
【0044】
(回路構成体10の製造方法)
次に、本実施形態の回路構成体10の製造方法について説明する。まず、所定位置に予め開口部12および基板側固定孔13、および、位置決め孔14が形成された絶縁基板の表面側にプリント配線技術によりプリント配線回路(図示せず)を印刷するとともに、裏面側に所定のパターンで複数のバスバー15を配策・接着する。
【0045】
次に、コイル20を除く図示しない電子部品を絶縁基板の表面(回路基板11の第1面11A)の所定位置に載置し、リフローハンダ付けにより表面側のプリント配線回路(および裏面側のバスバー15)に接続する。
【0046】
次に、放熱板30の収容凹部34内に、ナット45を保持した絶縁ホルダ40を収容し、放熱板30の上面31の所定位置に、回路基板11(バスバー15)と絶縁するための絶縁シート(図示せず)を貼り付ける。また、上述した絶縁シート50を載置する。この時、絶縁シート50の所定の開口部51内に絶縁ホルダ40の位置決め凸部42を挿通させることにより、絶縁ホルダ40と絶縁シート50との位置決めがなされる。
【0047】
続いて、これらの絶縁シートの上に、コイル20以外の電子部品を接続した回路基板11を載置する。この時、回路基板11の位置決め孔14内に絶縁ホルダ40の位置決め凸部42を挿通させることにより、絶縁ホルダ40と回路基板11との位置決めがなされる。その後、互いに重ね合わされた基板側固定孔13および放熱板側固定孔33に固定用のボルト(図示せず)を螺合させ、回路基板11と放熱板30とを固定する。
【0048】
次に、回路基板11の第1面11Aの所定位置にコイル20を載置し、コイル20の接続部22Aを、開口部12から露出したバスバー15に重ね合わせる。そして、図示しないボルトをコイル側接続孔23およびバスバー側接続孔16に貫通させてナット45に螺合させ、コイル20をバスバー15と導通接続させるとともに、回路基板11上に固定する。
【0049】
これにより、コイル20を含む電子部品が実装された回路構成体10が完成する。
【0050】
(作用効果)
本実施形態によれば、コイル20の端子部22とバスバー15とを、ボルトおよびナットの締結により接続する構成であっても、回路基板11の裏面(第2面11B)側に配されたナット45は放熱板30に設けられた収容凹部34内に収容されているから、放熱板30と干渉することがない。
【0051】
また、コイル20の端子部22は回路基板11に向けて屈曲した形状をなしており、回路基板11の開口部12から露出したバスバー15に接続されている。そして、放熱板30は、回路基板11のうちバスバー15が配設された第2面11B側において伝熱的に重ねられている。これにより、コイル20で発生した熱は、コイルの端子部22からバスバー15へと伝熱され、さらに、バスバー15から放熱板30へと伝熱される。すなわち、第1面11A側で発生した熱を、コイル20の端子部22を利用することにより、第2面11B側に配されている放熱板30に効率よく伝え、放熱させることができる。
【0052】
また、コイル20とバスバー15との接続部分を回路基板11の内側の所望の位置に設けることが可能となり、従来のように、コイル20と接続するバスバー15の一部を回路基板11の縁部から導出したり、バスバー15に曲げ加工を行ったりしなくてもよい。これにより、設計の自由度が高まる。
【0053】
また、コイル20の端子部22(接続部22A)とバスバー15とをボルト・ナット締結する際には、複数の部材の位置決め作業が面倒であるが、本実施形態によれば、絶縁ホルダ40の位置決め凸部42と回路基板11の位置決め孔14により、コイル側接続孔23、バスバー側接続孔16、および、ナット45の孔部の位置決めが自動的になされるようになっているから、位置決め作業が容易である。
【0054】
さらに、絶縁ホルダ40および放熱板30の上面31の境界部(収容凹部34の孔縁付近)を覆う絶縁シート50を設けているから、放熱板30と回路基板11(バスバー15)とを確実に絶縁状態とすることができる。
【0055】
<実施形態2>
次に、実施形態2を
図9を参照して説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成には同一符号を付すこととし、重複する説明を省略する。
【0056】
本実施形態の回路構成体60は、回路基板11のうちコイル70の本体部71に対応する位置に本体部用開口17が設けられており、本体部71がこの本体部用開口17から露出した放熱板30に直接載置されているところが上記実施形態1と相違している。なお、回路基板11のうち本体部用開口17が設けられる領域には、バスバー15は配設されていない。また、コイル70の接続部72Aは、本体部71の底面よりバスバー15および絶縁シート50の厚みの和の分だけ上方側に配されるようになっている。
【0057】
このような本実施形態の回路構成体60によれば、コイル70の本体部71の熱が放熱板30に直接伝熱されるから、放熱性がより向上する。
【0058】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)上記実施形態では、ナット45を絶縁ホルダ40のナット収容部41に嵌め入れる構成としたが、例えば、絶縁ホルダにモールド成形して一体的に設ける構成としてもよい。
【0060】
(2)位置決め凸部42および位置決め孔14は省略することもできる。
【0061】
(3)絶縁シート50は省略することもできる。
【0062】
(4)上記実施形態では、絶縁ホルダ40を放熱板30の収容凹部34内に収容し、ナット45を絶縁ホルダ40のナット収容部41に嵌め入れる構成としたが、これらは例えば接着剤により固定する構成とすることもできる。
【0063】
(5)上記実施形態では、絶縁ホルダ40にナット45を保持させ、回路基板11側から図示しないボルトを螺合させる構成としたが、絶縁ホルダ40側にボルトを保持させ、回路基板11側からナットを螺合させる構成としてもよい。
【0064】
(6)上記実施形態では、絶縁層として絶縁シート50を用いたが、これに限られず、絶縁層は、接着剤、またはゲルでもよい。また、絶縁シートは粘着性、もしくは接着性を有してもよい。
【0065】
(7)また、絶縁シート50の形状は上記実施形態に限らず、例えば、収容凹部34の孔縁部だけを覆うロ字形状としてもよい。
【0066】
(8)上記実施形態では、絶縁ホルダ40を収容凹部34内に収容してから放熱板30に回路基板11を位置決めして重ねる構成としたが、絶縁ホルダ40を予め回路基板11に接着させておき、その後、絶縁ホルダ40とともに放熱板30の所定位置に配置する構成としてもよい。このような構成は、例えば、絶縁シート50を粘着性を有するものとしておくことにより実現することができる。
【0067】
(9)上記実施形態では、放熱板30と回路基板11(バスバー15)との間の絶縁性を図るために絶縁シート50を用いたが、接着剤やグリス等により絶縁性を図る構成としてもよい。接着剤を使用する場合には、基板側固定孔13および放熱板側固定孔33におけるボルト締結を省略することができる。
【0068】
(10)上記実施形態2では、コイル70の本体部71を本体部用開口17から露出した放熱板30に載置することにより、本体部71の熱を直接放熱板30に伝熱させる構成としたが、本体部71と放熱板30とは直接接触していなくてもよい。例えば、隙間を介して対向配置させたり、間に伝熱シート等を設ける構成としてもよい。