【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年1月7日、つくばチャレンジ2013シンポジウム 平成26年1月7日、つくばチャレンジ2013参加レポート集
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
なお、明細書本文において、ベクトルを示す矢印の表記や、行列ないしベクトルを示す太字表記を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における車両の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、車両1は、車両本体100と、モータ111および121と、回転軸112、122、132および142と、車輪113、123、133および143と、固定部131および141と、撮像装置150と、色補正用パッチ161および162と、記憶部180と、制御部190とを具備する。制御部190は、判定部191と、位置推定部193と、走行制御部194とを具備する。判定部191は、補正部192を具備する。
【0016】
車両1は、車両1自らの周囲の画像を撮像し、得られた画像から車両1自らの位置を推定して自律走行する。車両1は、自律走行装置の例に該当する。
モータ111および121と、固定部131および141と、回転軸112、122、132および142と、車輪113、123、133および143との組み合わせにて走行機構10を構成し、走行制御部194の制御に従って車両1を走行させる。
具体的には、モータ111および121は、それぞれ車両本体100に固定して設けられており、回転軸112および122を介して車輪113および123を回転させる。車輪113および123が回転することで、車両1を走行させる。また、車輪113と車輪123とが異なる回転速度で回転することで、車両1の進行方向を変化させる。
また、固定部131および141は、それぞれ車両本体100に固定して設けられており、回転軸132および142を介して車輪133および143を回転自在に支持している。車両1の走行に応じて車輪133および143が回転する。
【0017】
撮像装置150は、車両1の周囲の画像として撮像装置150自らの周囲の画像を撮像する。具体的には、撮像装置150は、複数の領域を含む色標本の像を周囲の画像に含んで撮像可能な位置に設置された全方位カメラとして構成される。当該全方位カメラは、車両1の上部に下向きに設置され、当該全方位カメラの撮像画像には、車両本体100の像が含まれる。車両本体100の上側には色補正用パッチ161および162が設置されており、当該全方位カメラの撮像画像には、色補正用パッチ161および162の像も含まれる。
【0018】
ここでいう全方位カメラとは、周囲360度(°)を撮像可能なカメラである。全方位カメラは、例えば魚眼レンズを具備して広い画角を撮像することで、周囲360度を撮像する。
色補正用パッチ161および162は、いずれも単色の色標本である。特に、色補正用パッチ161の色と色補正用パッチ162の色とは同じである。色補正用パッチ161および162は、例えば紫色の板(プレート)として構成される。以下では、色補正用パッチ161と162とを総称して色補正用パッチ160と表記する。
【0019】
記憶部180は、車両1が具備する記憶デバイスにて構成され、各種情報を記憶する。特に、記憶部180は、所定のターゲットの位置情報を記憶する。
ここでいうターゲットとは、位置推定部193が車両1の位置を推定する際に、位置の基準となる物である。
制御部190は、車両1の各部を制御する。特に、制御部190は、撮像装置150の撮像画像を用いて車両1の位置を推定し、推定結果に基づいて走行機構10を制御して車両1を走行させる。
【0020】
判定部191は、色標本(色補正用パッチ160)の撮像画像における色情報を用いて、周囲の画像(撮像装置150の撮像画像)にターゲットの像が含まれるか否かを判定する。
より具体的には、判定部191において補正部192は、撮像装置150の撮像画像に含まれる色補正用パッチ161または162の像における色情報に基づいて、周囲の画像(撮像装置150の撮像画像)における色情報を補正する。特に、補正部192は、撮像装置150の撮像画像に含まれる色補正用パッチ161の像の領域または色補正用パッチ162の像の領域のうち、領域内の色のばらつきの少ない方を選択する。そして、補正部192は、選択した領域における色情報に基づいて、周囲の画像における色情報を補正する。
【0021】
そして、判定部191は、補正部192が補正した色情報を用いて、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かを判定する。
補正部192は、撮像装置150の撮像画像に含まれる色補正用パッチ161の像の領域または色補正用パッチ162の像の領域のうち、領域内の色のばらつきの少ない方を選択することで、周囲の画像における色情報をより正確に補正することができる。これにより、判定部191は、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かをより正確に判定することができる。
【0022】
ここで、色補正用パッチ160の一部に影がかかっているなど、色補正用パッチ160の像の領域内の色のばらつきが大きい場合、補正部192が、当該色のばらつきに影響されると、サンプルの色を正しく把握できず補正の精度が低下してしまう可能性がある。さらに、当該補正の精度の低下により、判定部191が、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かを判定する精度が低下してしまう可能性がある。
これに対して、補正部192が、色補正用パッチ161の像の領域または色補正用パッチ162の像の領域のうち、領域内の色のばらつきの少ない方を選択することで、色のばらつきの影響を低減させ、周囲の画像における色情報をより正確に補正することができる。これにより、判定部191は、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かをより正確に判定することができる。
撮像装置150と、色補正用パッチ161および162と、判定部191との組み合わせにて、ターゲット判定装置20を構成する。
【0023】
位置推定部193は、判定部191が、周囲の画像にターゲットの像が含まれると判定した場合、ターゲットの位置情報に基づいて車両の位置を推定する。
撮像装置150と、色補正用パッチ161および162と、記憶部180と、判定部191と、走行制御部194との組み合わせにて、自車位置推定装置30を構成する。
走行制御部194は、位置推定部193が推定した車両1の位置に基づいて走行機構10を制御して車両1を走行させる。
【0024】
図2は、撮像装置150が撮像する周囲の画像の例を示す説明図である。同図に示される周囲の画像には、車両本体100の像と、色補正用パッチ161および162の像と、ターゲットTGの像とが含まれている。
このように、車両1では、周囲の画像と色補正用パッチ160の像とを同じカメラ(撮像装置150)で撮像する。仮に、周囲の画像と色補正用パッチ160の像とが異なるカメラで撮像される場合、カメラ毎に特性が異なると、色補正用パッチ160の像に基づいて周囲の画像に対する補正量を決定した場合に、カメラの特性の違いが反映されず、補正の精度が低下してしまう可能性がある。これに対し、車両1では、周囲の画像と色補正用パッチ160の像とを同じカメラ(撮像装置150)で撮像するので、カメラの特性の違いは生じず、より高精度に補正を行い得る。
【0025】
但し、車両1が複数のカメラを備え、周囲の画像と色補正用パッチ160の像とを異なるカメラで撮像するようにしてもよい。この場合、カメラの特性の違い等を補正することで、色補正用パッチ160の像に基づく周囲の画像に対する補正を、より高精度に行うことができる。カメラの特性の違い等の補正は、例えば、複数のカメラが同じ被写体を同じ条件で撮影して得られた画像の差分から、予め補正量を求めておいて行う。
一方、周囲の画像と色補正用パッチ160の像とを同じカメラで撮像する場合、カメラの特性の違いが生じないのでカメラの特性の違いを補正する必要がない。この点において、色補正用パッチ160の像に基づく周囲の画像に対する補正を、より容易に行うことができる。
【0026】
図3は、カラーチャートの例を示す説明図である。同図に示すカラーチャートは、横に3段、縦に6列に分割されており、合計18個の領域に分割されている。領域毎に異なる色が付されており、カラーチャートには全部で18個の異なる色が付されている。以下では、カラーチャートにおける各領域を「色パッチ」と称する。
色パッチの各々は、色のサンプルを示しており、カラーチャートは、補正部192が色の補正を行うための固有ベクトルや係数の算出に用いられる。
なお、カラーチャートにおける色パッチの数は、
図3の例における18に限らず任意である。補正部192が行う補正の精度を高める観点から、色パッチの数が、ある程度多いことが好ましい。
【0027】
次に、補正部192が色の補正を行う処理、および、当該補正のための準備作業の例について説明する。但し、判定部191が、撮像画像にターゲットの像が含まれているか否かを判定する処理は、以下で説明する処理を用いるものに限らない。例えば、判定部191が、ターゲットと同じ色の色補正用パッチ160を具備し、撮像画像に含まれるターゲットの候補の色と色補正用パッチ160の色とが同じか否かを判定することで、撮像画像にターゲットの像が含まれているか否かを判定するようにしてもよい。
【0028】
図4は、補正部192が行う補正に用いられる固有ベクトルを求める手順の例を示すフローチャートである。以下では、人(作業者)が同図の処理を行う場合を例に説明するが、車両1が自動で同図の処理を行うようにしてもよい。
図4の処理において、作業者は、まず、様々な照明条件でカラーチャートを撮像する(ステップS101)。例えば、作業者は、撮像装置150、または、撮像装置150と同じ特性のカメラを用いて、様々な時刻および様々な天候による照明条件のもとで、カラーチャートを撮像する。
以下では、ステップS101において3000回の撮像を行った場合を例に説明するが、ステップS101における撮像回数は任意である。補正部192が行う補正の精度を高める観点から、撮像回数が、ある程度多いことが好ましい。
次に作業者は、ステップS101で得られた撮像画像の各々について、式(1)に基づいて、RGBの色データを(r,g)の形式による色データに変換する(ステップS102)。
【0030】
ここで、R、G、Bは、それぞれ、変換前の画像データにおける赤、緑、青の画素値を示す。(R,G,B)の情報は明度情報を含み、照明強度やカメラのゲインの変化などに対して不安定であるので、明度を含まない色情報である(r,g)に変換した情報を用いる。
次に、作業者は、撮像画像毎かつ色パッチ毎に、色の平均値(r、g各々の平均値)を算出する(ステップS103)。ステップS103で得られるrの平均値をr
ijと表記し、gの平均値をg
ijと表記する。ここで、iは、1≦i≦18の正整数であり、色パッチを識別する番号を示す。また、jは、1≦j≦3000の正整数であり、撮像画像を識別する番号を示す。
【0031】
次に、作業者は、3000枚の撮像画像全体における色パッチ毎に色の平均値(r、g各々の平均値)を算出する(ステップS104)。ステップS104で得られるrの平均値をr(バー)
iと表記し、gの平均値をg(バー)
iと表記する。ここで、iは、1≦i≦18の正整数であり、色パッチを識別する番号を示す。
【0032】
次に、作業者は、ステップS103で得られた撮像画像毎かつ色パッチ毎の平均値と、ステップS104で得られた撮像画像全体における色パッチ毎の平均値との差を算出する(ステップS105)。ステップS105で算出される差は、式(2)のように表記される。
【0034】
ここで、d
irは、rについての差を示し、d
igは、gについての差を示す。また、d
irとd
igとを纏めてd
iと表記している。なお、式(2)では、撮像装置を識別する番号jの表記を省略している。式(2)におけるr
i、g
iは、それぞれ、上記のr
ij、g
ijを表している。
次に、作業者は、ステップS105で得られた差を、式(3)のように行列にする(ステップS106)。
【0036】
ここで、nは、ステップS101で得られた撮像画像の数を示す。本実施形態で説明する例では、n=3000である。
次に、作業者は、ステップS106で得られた行列の分散共分散行列を算出し(ステップS107)、得られた分散共分散行列の固有値および固有ベクトルを算出する(ステップS108)。
18色それぞれの色変動は、式(4)に示すように、固有ベクトルの線形結合で表される。
【0038】
ここで、mは、色パッチの数×2の整数であり、本実施形態で説明する例では、m=18×2=36である。mが色パッチの数の2倍となるのは、各色パッチにはr、gの2つの成分が存在するためである。
また、d
irは、番号iで識別されるパッチの、rについての色変動を示す。d
igは、番号iで識別されるパッチの、gについての色変動を示す。d
ir、d
igを纏めて、列ベクトルdで示している。なお、明細書本文の記載において、ベクトルを示す矢印の表記や、ベクトルまたは行列を示す太字表記を省略する。
また、e
k(kは1≦k≦mの正整数)は、ステップS108で得られた固有ベクトルである。a
k(kは1≦k≦mの正整数)は、係数である。この係数a
kの値は、後述するように色パッチの色変動を測定することによって求められる。
【0039】
次に、作業者は、次に説明する
図5の処理により、使用する色パッチを選択する(ステップS109)。
その後、
図4の処理を終了する。
【0040】
図5は、使用する色パッチを選択する処理手順の例を示すフローチャートである。作業者は、
図4のステップS109において、
図5の処理を行う。
図5の処理において、作業者は、まず、色パッチ毎、または、色パッチの組み合わせ毎に、当該色パッチから決定されるベクトルd
+の分散共分散行列を求める(ステップS201)。このステップS201について、より詳細に説明する。
式(4)には、18個の色パッチに基づく36個の等式が含まれている。これらの18個の色パッチのうち一部のみを撮像して色変動を求める場合、式(4)は、式(5)に示される近似式に再構築することができる。
【0042】
ここで、d
+は、式(6)に示されるベクトルである。
【0044】
ここで、d
k+(kは、1≦k≦pの正整数。pは正整数)は、式(4)に示されるベクトルdから選択したp個の成分を示す。このpは、撮像される色パッチの数に応じて決定される数である。例えば、撮像される色パッチの数を2倍した値をpとすることができる。
また、式(5)のEは、式(7)に示される行列である。
【0046】
ここで、e
k+は、固有ベクトルe
1,・・・,e
mからp個の固有ベクトルを選択し、選択した各固有ベクトルからp個の成分のみを抜き出して得られたベクトルである。なお、kおよびpは、式(6)の場合と同じである。
また、式(5)のaは、式(8)に示されるベクトルである。
【0048】
ここで、a
k+(kは、1≦k≦pの正整数。pは正整数)は、p個の係数を示す。なお、kおよびpは、式(6)の場合と同じである。
式(5)を変形すると式(9)を得られる。
【0050】
ここで、E
−1は、行列Eの逆行列である。
1つの色パッチについてr、gそれぞれにd
k(式(2)に示されるd
irおよびd
ig)を得られるので、p/2個の色パッチを撮像してd
kを求めれば、式(9)から全ての色パッチについて色変動を求めることができる。撮像する色パッチとしてどの色パッチを選んでもよいが、選択する色パッチによってベクトルa(係数ベクトル)の推定精度が異なる。そこで、ベクトルaの推定精度が良くなるように、選択する色パッチの候補(1つの色パッチでもよいし、複数の色パッチの組み合わせでもよい)の各々についてステップS201〜S202処理を行い、ステップS203にて候補のいずれかを選択する。
【0051】
ステップS201の後、作業者は、ステップS201で得られた分散共分散行列V
d+毎に、係数ベクトルaの分散共分散行列V
aを求める(ステップS202)。
色パッチから決定されるベクトルd
+に含まれる誤差の分散共分散行列をV
d+とすると、式(9)からベクトルaの分散共分散行列V
aは、式(10)のように示される。
【0053】
ここで、E
−1は、式(7)に示される行列Eの逆行列を示す。E
−Tは、行列E
−1の転置行列を示す。作業者は、式(10)に基づいて、V
d+からV
aを求める。
ベクトルaの誤差が最大になる方向の分散は、V
aの最大の固有値で与えられる。そこで、作業者は、ステップS202で求めた分散共分散行列V
aが最も小さくなる色パッチを選択する(ステップS203)。
さらに、作業者は、ステップS203で選択した色パッチの平均値(
図4のステップS104で求めたr(バー)
iおよびg(バー)
i)を選択し(ステップS204)、またステップS203で選択した色パッチの固有ベクトルを選択する(ステップS205)。
その後、
図5の処理を終了する。
【0054】
図6は、色の補正を行う処理手順の例を示すフローチャートである。
同図の処理において、補正部192は、色パッチの像を含む画像を取得する(ステップS301)。ステップS301で補正部192が取得する画像の例として、車両1がターゲットを探す際の、車両1の周囲の画像や、判定部191が用いる閾値を決定する際の、ターゲットの像を含む画像が挙げられる。
【0055】
次に、補正部192は、ステップS301で得られた画像から色パッチの領域を複数抽出する(ステップS302)。例えば、撮像装置150の撮像画像において、色補正用パッチ160の像は常に一定の位置に撮像される。補正部192は、当該位置について既知であり、撮像装置150から当該位置の部分を抽出することで、色パッチの領域を抽出する。特に、補正部192は、
図2の例における色補正用パッチ161の像および色補正用パッチ162の像のように色パッチの領域を複数含む画像を取得し、複数の領域の各々を抽出する。
そして、補正部192は、ステップS302で抽出した領域の各々についてr、gそれぞれの平均値およびばらつき度合い(例えば分散)を求める(ステップS303)。
【0056】
次に、補正部192は、ステップS302で抽出した領域のうち、ステップS303で得られたばらつき度合いが小さい領域を選択し、当該領域についてステップS303で計算したr、gそれぞれの平均値を選択する(ステップS304)。
次に、補正部192は、ステップS304で得られた平均値と、複数の撮像画像(本実施形態の例では3000枚の撮像画像)について
図4のステップS104で求めた色パッチの平均値r(バー)
i、g(バー)
iとの差を求める(ステップS305)。
【0057】
次に、補正部192は、ステップS305で得られた差を式(9)のベクトルd
+に代入し、ステップS205で選択した固有ベクトルから求まる行列E
−1を用いて、係数ベクトル(ベクトルa)を算出する(ステップS306)。
そして、補正部192は、ステップS306で得られた係数(係数ベクトルaの要素)を式(11)のa
1+・・・a
p+に代入し、
図5のステップS205で選択した固有ベクトルを式(11)のe
1’・・・e
p’に代入して、近似的にベクトルd(色変動ベクトル)の値を求める(ステップS307)。
【0059】
ステップS307の後、補正部192は、ステップS301で得られた撮像画像の各画素について色の補正を行う(ステップS308)。このステップS308について、より詳細に説明する。
以下、色の補正を行う処理対象の画素を「色補正対象」と称する。色補正対象の色変動をベクトルd(ハット)と表記する。d(ハット)のr成分をd(ハット)
rと表記し、g成分をd(ハット)
gと表記する。
色補正対象の色が色パッチのいずれかの色と同一である場合、補正部192は、ステップS307で得られたベクトルdの要素から、d(ハット)
rおよびd(ハット)
gを抽出することができる。具体的には、補正部192は、補正後の色パッチの色に、式(16)に示される色変動を加算して得られる色(r、gの値)を、補正前の色パッチの色として記憶しておく。そして、色補正対象の補正前の色が、いずれかの色パッチの補正前の色と同じであると判定した場合、補正部192は、当該色パッチの補正後の色を、色補正対象の補正後の色とする。
なお、補正後の色パッチの色として、例えば、3000枚の撮像画像全体における、色パッチ毎の色の平均値(式(2)のr(バー)
iおよびg(バー)
i)を用いることが出来る。
【0060】
一方、色補正対象の補正前の色が、いずれの色パッチの補正前の色とも異なる場合、以下のようにして色変動を推定し補正することができる。
色補正対象の補正前の色(r(ハット),g(ハット))と、18色の色パッチの補正前の色(r
i,g
i)(iは、1≦i≦18の正整数)との(r,g)平面でのユークリッド距離L
iから色変動を推定する。色パッチの補正前の色(r
i,g
i)は、上記のように、補正後の色パッチの色に色変動を加算して得られる。また、18色の各色パッチの色変動を示すベクトルd
i=(d
ir,d
ig)は、ベクトルdの要素から得られる。色補正対象の色の変動を示すベクトルd(ハット)=(d(ハット)
r,d(ハット)
g)は、ベクトルd
iを用いて式(12)のように表される。
【0062】
補正部192は、式(12)に基づいて、色変動のベクトルd(ハット)を求める。
そして、補正部192は、式(13)に基づいて、色変動(d(ハット)
r,d(ハット)
g)を補正対象の色(r(ハット),g(ハット))から減算することで、補正後の色(r
c,g
c)を算出する。
【0064】
これにより、任意の色を補正することができる。
なお、補正部192が、色補正対象の補正前の色がいずれかの色パッチの補正前の色と同じであるか否かの判定を行うようにしてもよいし、当該判定を行わずに直接、式(12)および式(13)の演算を行うようにしてもよい。
補正部192が、当該判定を行う場合、色補正対象の補正前の色が色パッチの補正前の色と同じときは、式(12)や式(13)の演算を行う必要無しに、色補正対象の補正後の色を得ることができる。撮像画像の画素のうち、色パッチの補正前の色と同じ色の画素が比較的多い場合、式(12)および式(13)の演算を直接行うよりも、補正部192の負荷を低減させることができ、また、補正の処理時間を短縮することができる。
【0065】
一方、補正部192が、式(12)および式(13)の演算を直接行う場合、色補正対象の補正前の色がいずれかの色パッチの補正前の色と同じか否かの判定を行う必要がない。撮像画像の画素のうち、色パッチの補正前の色と同じ色の画素が比較的少ない場合、当該判定を行う必要がないことで、補正部192の負荷を低減させることができ、また、補正の処理時間を短縮することができる。
ステップS308の後、
図6の処理を終了する。
【0066】
例えば、1つの色パッチを撮像して補正を行う場合(p=2の場合)、式(5)は、式(14)のようになる。
【0068】
ここで、e
11+およびe
12+は、ベクトルe
1+から選択された成分を示す。e
21+およびe
22+は、ベクトルe
2+から選択された成分を示す。
また、式(9)は、式(15)のようになる。
【0070】
補正部192は、式(15)のd
1+およびd
2+に測定値を代入して、係数a
1+およびa
2+を求める。
また、式(11)は、式(16)のようになる。
【0072】
補正部192は、式(15)で求まった係数a
1+およびa
2+を式(16)に代入して、近似的にベクトルdの値を求める。色パッチ以外の色について補正を行う場合は、式(12)を用いる。
【0073】
図7は、ターゲットの色か否かの判定閾値を設定する処理手順の例を示すフローチャートである。
同図の処理において、作業者は、様々な照明条件でターゲットを撮像する(ステップS401)。例えば、作業者は、撮像装置150、または、撮像装置150と同じ特性のカメラを用いて、様々な時刻および様々な天候による照明条件のもとで、ターゲットを撮像する。
【0074】
次に、作業者は、ステップS401で得られた画像の各々について、
図6の処理によりターゲットの色の補正を行う(ステップS402)。
次に、作業者は、ステップS402で得られた、画像毎の補正後のターゲットの色の、全画像についての平均値と分散とを算出する(ステップS403)。
そして、作業者は、ステップS403で得られた分散に基づいて閾値を設定する(ステップS404)。
その後、
図7の処理を終了する。
【0075】
図8は、撮像画像にターゲットの像が含まれるか否かの判定を行う処理手順の例を示す説明図である。
同図の処理において、撮像装置150は、色パッチの像を含む周囲の画像を撮像する(ステップS501)。
次に、補正部192は、ステップS501で得られた画像について、
図6の処理によりターゲットの色の補正を行う(ステップS502)。
次に、補正部192は、ステップS502で得られた補正後の色と、
図7のステップS403で得られた平均値との距離を算出する(ステップS503)。
【0076】
次に、補正部192は、ステップS503で得られた距離が閾値以下か否かを判定する(ステップS504)。
距離が閾値以下であると判定した場合(ステップS504:YES)、補正部192は、撮像画像にターゲットの像が含まれていると判定する(ステップS511)。
その後、
図8の処理を終了する。
一方、ステップS504で得られた距離が閾値より大きいと判定した場合(ステップS505:NO)、補正部192は、撮像画像にターゲットの像が含まれていないと判定する(ステップS521)。
その後、
図8の処理を終了する。
【0077】
図9は、色を補正しない場合の、照明条件の変化による色変動の例を示す説明図である。同図の縦軸および横軸は、gおよびrの値を示す。同図では、様々な照明条件にて色パッチを撮像し、撮像画像毎、かつ、色パッチ毎にrおよびgを算出してプロットしている。
【0078】
図10は、色を補正した場合の、照明条件の変化による色変動の例を示す説明図である。同図の縦軸および横軸は、gおよびrの値を示す。同図では、様々な照明条件にて色パッチを撮像し、撮像画像毎、かつ、色パッチ毎にrおよびgを算出し、補正してプロットしている。
補正を行わない場合(
図9)と補正を行った場合(
図10)とを比較すると、補正を行ったほうが照明条件の変化に伴うrやgの値の変化が小さくなっている。これにより、判定対象の色がターゲットの色か否かの判定をより正確に行うことができる。
【0079】
以上のように、判定部191は、色標本(色補正用パッチ160)の撮像画像における色情報を用いて、周囲の画像に前記ターゲットの像が含まれるか否かを判定する。
これにより、判定部191は、例えば屋外など照明条件の影響を受ける環境下でも、より高精度に色の判定を行うことができる。カメラの特性を補正するために色標本を用いる技術は知られていたが、自律走行装置がターゲットの像を検出するために色標本を用いて撮像画像を補正することは、一般には行われていなかった。車両1では、ターゲットの像を検出するために色標本を用いて撮像画像を補正することで、ターゲットの像をより正確に検出することができる。
【0080】
また、判定部191は、色標本の像に設定されている複数の領域のいずれかを選択し、選択した領域における色情報を用いて、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かを判定する。
これにより、判定部191は、色標本の一方の領域に影がかかっているなど、一方の領域内の色のばらつきが大きい場合でも、領域内の色のばらつきが小さいほうの領域を選択してより高精度に色の判定を行うことができ、もって、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かをより正確に判定することができる。
【0081】
また、撮像装置150は、複数の領域を含む色標本の像(色補正用パッチ161の像および色補正用パッチ162の像)を周囲の画像に含んで撮像可能な位置に設置された全方位カメラを具備する。
このように、色標本の像と周囲の画像とを同じ撮像装置150が撮像することで、補正部192が周囲の画像における色の補正を行う際、色標本を撮像した撮像装置の特性と、周囲の画像を撮像した撮像装置の特性との違いの影響を受けない。この点において、補正部192は、周囲の画像における色情報をより正確に補正することができる。これにより、判定部191は、周囲の画像にターゲットの像が含まれるか否かをより正確に判定することができる。
【0082】
なお、制御部190の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0083】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。