(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521246
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】車載表示システム及び車両における表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20190520BHJP
G02B 27/22 20060101ALI20190520BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B27/22
B60K35/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-146333(P2015-146333)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-26870(P2017-26870A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】今西 俊一
【審査官】
鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−070074(JP,A)
【文献】
特開2014−142474(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/044437(WO,A1)
【文献】
特開2015−054599(JP,A)
【文献】
特開2011−070073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 27/22
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から出射される映像を車両のフロントウィンドウで反射させて、前記フロントウィンドウの前方に当該映像を虚像として形成する第1表示システムと、
前記映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成する第2表示システムと、
形成させる像を、前記第1表示システムにより形成される虚像と、前記第2表示システムにより形成される前記実像との間で切り替える形成像切替え機構とを有し、
前記第2表示システムは、映像を空間に実像として結像させる空中結像部材を有し、
前記形成像切替え機構は、前記映像源から前記フロントウィンドウに至る前記第1表示システムの光路中に対する前記空中結像部材の所定姿勢での進入と退避とを切り替える進退動機構を有する車載表示システム。
【請求項2】
前記第2表示システムは、前記映像を前記フロントウィンドウと運転者との間の空間に実像として形成する請求項1記載の車載表示システム。
【請求項3】
前記形成像切替え機構により形成させる像が切替えられる際に、前記映像源から出射される映像を異ならせる出射映像制御手段を有する請求項1または2記載の車載表示システム。
【請求項4】
前記第2表示システムは、前記第1表示システムにより形成される虚像の高さ方向位置より高い位置に前記実像を形成する請求項1乃至3のいずれかに記載の車載表示システム。
【請求項5】
映像源から出射される映像を車両のフロントウィンドウで反射させて、前記フロントウィンドウの前方に当該映像を虚像として形成する第1表示ステップと、
前記映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成する第2表示ステップと、
形成させる像を、前記第1表示ステップにより形成される虚像と、前記第2表示ステップにより形成される前記実像との間で切り替える形成像切替えステップとを有し、
前記第2表示ステップは、映像を空間に実像として結像させる空中結像部材により前記映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成させ、
前記形成像切替えステップは、前記映像源から前記フロントウィンドウに至る前記第1表示ステップの光路中に対する前記空中結像部材の所定姿勢での進入と退避とを切り替える進退動ステップを有する車両における表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の技術を適用した車載表示システム及び車両における表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の技術を適用した車載表示装置が知られている(特許文献1)。この車載表示装置では、映像源(液晶パネル、バックライト)から出射される映像(光像)が、光学系(凹面鏡を含む)を介してフロントウィンドウの所定部位に導かれる。そして、フロントウィンドウで反射された前記映像(光像)が当該フロントウィンドウの前方に形成される虚像として運転者に供される。これにより、この虚像を見る運転者には、あたかもフロントウィンドウに前記映像が映し出されたように見える。
【0003】
このような車載表示装置によれば、運転者は、フロントウィンドウを通して見る前景から目を大きく離すことなく、映像(例えば、メータ類、車速値、進路表示マーク等)を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−99199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した車載表示装置において、種々の映像を表示(形成)させることが考えられる。そのような状況において、例えば、メータ類、車速値、進路表示マーク等の車両の運転支援に係る映像であれば、前景から目を大きく離すことなく見ることができるという点で、前述したようにフロントウィンドウの前方に虚像として形成することが好ましい。一方、例えば、メニュー映像、地点設定のための地図、車両ナビゲーションにおいて1つの案内経路を選択させるために用いられる複数の案内経路候補を表す映像等、操作が要求されるような映像については、前述したようにフロントウィンドウの外側に虚像を形成させて運転者に供するよりも、運転者等の操作者に比較的近い位置に像を表示(形成)させることが好ましい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両の乗員に供すべき映像に応じて当該乗員が見ることになる像の形成される位置を変えることのできる車載表示システム及び車両における表示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車載表示システムは、映像源から出射される映像を車両のフロントウィンドウで反射させて、前記フロントウィンドウの前方に当該映像を虚像として形成する第1表示システムと、前記映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成する第2表示システムと、形成させる像を、前記第1表示システムにより形成される虚像と、前記第2表示システムにより形成される前記実像との間で切り替える形成像切替え機構とを有
し、前記第2表示システムは、映像を空間に実像として結像させる空中結像部材を有し、前記形成像切替え機構は、前記映像源から前記フロントウィンドウに至る前記第1表示システムの光路中に対する前記空中結像部材の所定姿勢での進入と退避とを切り替える進退動機構を有する構成となる。
【0008】
このような構成によれば、前記映像源から出射される映像に基づいて形成される像は、形成像切替え機構により、第1表示システムによりフロントウィンドウの前方に形成される虚像から第2表示システムによりフロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に形成される実像に切り替えられる。また、逆に、第2表示システムによりフロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に形成される実像から第1表示システムによりフロントウィンドウの前方に形成される虚像に切り替えられる。
そして、映像源から出射される映像は、空中結像部材により、フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として結像される。さらに、進退動機構が空中結像部材を映像源からフロントウィンドウに至る第1表示システムの光路中から退避させると、前記映像源から出射される映像に基づいて形成される像は、当該第1表示システムによりフロントウィンドウの前方に形成される虚像になる。一方、進退動機構が空中結像部材を第1表示システムの前記光路中に進入させると、前記映像源からの映像がフロントウィンドウに至ることなく第2表示システムの空中結像部材に至り、前記映像源からの映像がフロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成される。この場合、前記映像源から出射される映像に基づいて形成される像は、第2表示システムによりフロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に形成される実像となる。
【0009】
前記第2表示システムは、前記実像をフロントウィンドウと運転者との間の空間に形成するようにしても、前記実像をフロントウィンドウと運転者以外の乗員、例えば、車両の助手席に着座する乗員との間の空間に形成するようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る車載表示システムにおいて、前記形成像切替え機構により形成させる像が切替えられる際に、前記映像源から出射される映像を異ならせる出射映像制御手段を有する構成とすることができる。
【0011】
このような構成によれば、第1表示システムによりフロントウィンドウの前方に形成される虚像が表す映像と、第2表示システムによりフロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に形成される実像が表す映像とが異なったものとなる。
【0012】
本発明に係る車載表示システムにおいて、前記第2表示システムは、前記第1表示システムにより形成される虚像の高さ方向位置より高い位置に前記実像を形成する構成とすることができる。
【0013】
このような構成によれば、第2表示システムにより形成される実像は、第1表示システムによりフロントウィンドウの前方に形成される虚像より、車両の乗員に近く、かつ、高い位置に形成される。
【0018】
本発明に係る車両における表示方法は、映像源から出射される映像を車両のフロントウィンドウで反射させて、前記フロントウィンドウの前方に当該映像を虚像として形成する第1表示ステップと、前記映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成する第2表示ステップと、形成させる像を、前記第1表示ステップにより形成される虚像と、前記第2表示ステップにより形成される前記実像との間で切り替える形成像切替えステップとを有
し、前記第2表示ステップは、映像を空間に実像として結像させる空中結像部材により前記映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に実像として形成させ、前記形成像切替えステップは、前記映像源から前記フロントウィンドウに至る前記第1表示ステップの光路中に対する前記空中結像部材の所定姿勢での進入と退避とを切り替える進退動ステップを有する構成となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車載表示システム及び車両における表示方法によれば、前記映像源から出射される映像に基づいて形成される像が、形成像切替え機構により、第1表示システム(ステップ)によりフロントウィンドウの前方に形成される虚像と、第2表示システム(ステップ)によりフロントウィンドウと所定の乗員との間の空間に形成される実像との間で切り替えられるので、車両の乗員に供すべき映像に応じて当該乗員が見ることになる像の形成される位置を変えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車載表示システムの構造例(状態1)を示す図である。
【
図2】
図1に示す構造の車載表示システムの構造例(状態2)を示す図である。
【
図3】
図1に示す構造の車載表示システムの制御系の基本構成を示すブロック図である。
【
図4A】車載表示システムが
図1に示す状態(状態1)のときに、形成された像の見え方の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Aに示すように見える像の詳細例を示す図である。
【
図5A】車載表示システムが
図3に示す状態(状態2)のときに、形成された像の見え方の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Aに示すように見える像の詳細例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
本発明の実施の一形態に係る車載表示システムは、
図1に示すように構成される。
【0023】
図1において、車室前方のダッシュボード110内に、液晶パネル及びバックライトユニット等で構成される投影機10が設けられており、投影機10の前方所定位置にHUD(ヘッドアップディスプレイ)光学ユニット11が配置されている。ダッシュボード110のフロントウィンドウ100に対向する所定部位に開口111が形成されている。HUD光学ユニット11は、凹面鏡等の光学部品を含んでおり、投影機10から出射される映像Iを凹面鏡での反射等によってダッシュボード110の開口111を通してフロントウィンドウ100に導いて反射させ、フロントウィンドウ100の前方(車両外部)に当該映像Iを虚像Ivとして形成する。なお、投影機10及びHUD光学ユニット11により、映像源から出射される映像を前記フロントウィンドウの前方に虚像として形成する第1表示システムが構成される。
【0024】
また、ダッシュボード110内には、映像を空間に実像として結像させる空中結像パネル13(空中結像部材:例えば、アスカネット社製、AI plate(エアリアルイメージング・プレート):特開2013−127625号公報、特開2012−155345号公報等参照)が可動的に設けられている。更に、ダッシュボード110内には、進退動機構20(形成像切替え機構)が設けられている。進退動機構20は、空中結像パネル13を、退避位置(
図1に示す位置)と、HUD光学ユニット11からフロントウィンドウ100に至る光路中に設定された機能位置(後述する
図2に示す位置)との間で進退動させる。
【0025】
進退動機構20の動作により、空中結像パネル13が、前記機能位置に進出して、HUD光学ユニット11からフロントウィンドウ100に至る光路中に所定の姿勢で進入すると、
図2に示すように、HUD光学ユニット11を介した投影機10からの映像Iが、フロントウィンドウ100に至ることなく、空中結像パネル13を通ることにより、当該映像Iがフロントウィンドウ100と運転者Dとの間の空間に実像Irとして形成される。なお、投影機10、HUD光学ユニット11及び空中結像パネル13によって、映像源から出射される映像をフロントウィンドウと所定の乗員(運転者D)との間の空間に実像として形成する第2表示システムが構成される。
【0026】
上述したような構造の車載表示ステムの制御系は、
図3に示すように構成される。
【0027】
図3において、制御ユニット30は、ダッシュボード110の所定の位置に設けられた操作部32での操作に従って、投影機10から出射される映像を制御する(出射映像制御手段)。また、制御ユニット30は、操作部32での操作に従って、進退動機構20の動力源であるアクチュエータ21(例えば、モータ)を駆動させる駆動部31を制御する。
【0028】
上述したような車載表示システムでは、操作部32において、例えば、車両運転支援モードの操作が行われると、制御ユニット30は、運転支援のための映像、例えば、車速値(数字)、進路表示マーク、簡単な地図等の映像を投影機10に出射させる。このとき、制御ユニット30は、駆動部32を制御して、空中結像パネル13が退避位置に位置するように、進退動機構20のアクチュエータ21を駆動させる。これにより、
図1に示すように、投影機10から出射される映像Iは、空中結像パネル13によって遮られることなく、HUD光学ユニット11によりフロントウィンドウ100の所定部位に導かれて反射し、フロントウィンドウ100の前方に当該運転支援のための映像Iが虚像Ivとして形成される。例えば、
図4Aに示すように、その虚像Ivを見る運転者には、ステアリングの先のフロントウィンドウ100の所定部位に前記映像Iが映し出されたように見える。従って、運転者Dは、フロントウィンドウ100を通して見ている前景から目を大きく離すことなくそのフロントウィンドウ100に映し出される、例えば、
図4Bに示すような、車速値(数字)、進路表示マーク、簡単な地図等を含む映像I(虚像Iv)の支援を受けつつ車両を運転することができる。
【0029】
一方、操作部32において、例えば、目的地を地図上で設定するなどの地点設定モードの操作が行われると、制御ユニット30は、前記運転支援のための映像に代えて地点設定のための地図を含む映像を投影機10に出射させる(出射映像制御手段)。このとき、制御ユニット30は、駆動部32を制御して、空中結像パネル13が機能位置に位置するように、進退動機構20のアクチュエータ21を駆動させる。これにより、
図2に示すように、HUD光学ユニット11からフロントウィンドウ100に至る光路中に所定の姿勢で空中結像パネル13が進入した状態になり、HUD光学ユニット11を介した投影機10からの映像Iが、フロントウィンドウ100に至ることなく、空中結像パネル13を通る。これにより、当該映像Iがフロントウィンドウ100と運転者Dとの間の空間に実像Irとして形成される。この実像Irは、前述したようにフロントウィンドウ100の前方(外側)に形成される虚像Ivより、距離Aだけ、運転者D側に寄った位置に形成されるとともに、当該虚像Ivの高さ方向の位置より、距離Bだけ高い位置に形成される。
【0030】
例えば、
図5Aに示すように、その実像Irを見る運転者Dには、フロントウィンドウ100の内側(車室内側)でステアリングより僅かに高い位置に前記映像Iが浮き上がって映し出されたように見える。従って、運転者Dは、例えば、
図5Bに示すような、車速値(数字)、進路表示マーク等の運転支援のための映像I−2(Ir−2)とともに、前記虚像Ivに対応した映像Iより近づいて、かつ高い位置に映し出される(
図2参照)、地図の映像I−1(Ir−1)に対して、地点設定のための操作を行うことができる。なお、空間に実像Ir−1として形成された地図の映像I−1に対する操作は、例えば、運転者Dの指によってなされ、別途指の動きを撮影するカメラによって得られる映像から判断される指の位置や動きに基づいて映像I−1上の地点が特定される。この場合、操作を行う運転者Dは、操作を行う地図の映像1−1を、虚像Ivとして形成される映像Iに比べて、当該運転者Dに近く、また、高い位置に見ることができるので、その地図の映像I−1が見やすく、容易に地点設定の操作を行うことができる。
【0031】
上述したような車載表示システムでは、投影機10から出射される映像Iに基づいて形成される像は、進退動機構20が空中結像プレート13を退避位置(
図1参照)から機能位置(
図2参照)に進出させることにより、HUD光学ユニット11(第1表示システム)によりフロントウィンドウ100の前方に形成される虚像Ivから空中結像プレート13(第2表示システム)によりフロントウィンドウ100と運転者Dとの間の空間に形成される実像Irに切り替えられる。また、逆に、進退動機構20が空中結像プレート13を機能位置(
図2参照)から退避位置(
図1参照)に対比させることにより、空中結像プレート13(第2表示システム)によりフロントウィンドウ100と運転者Dとの間の空間に形成される実像IrからHUD光学ユニット11(第1表示システム)によりフロントウィンドウ100の前方に形成される虚像Ivに切り替えられる。
【0032】
このように、投影機10から出射される映像に基づいて形成される像が、空中結像プレート13を退避位置と機能位置との間で進退動させる進退動機構20により、HUD光学ユニット11によりフロントウィンドウ100の前方に形成される虚像Irと、空中結像プレート13によりフロントウィンドウ100と運転者Dとの間の空間に形成される実像Irとの間で切り換えられるので、車両の運転者Dに供すべき映像I(例えば、運転支援に係る映像(
図4B参照)や地点選択に用いられる地図の映像(
図5B参照))に応じて、運転者Dが見ることになる像(虚像Iv、実像Ir)の形成される位置を変えることができる。具体的には、運転支援に係る映像(
図4B参照)であれば、運転者Dが前方の前景から目を大きく離すことなく見ることのできるフロントウィンドウ100の前方の位置に、地点選択に用いられる地図の映像(
図5B参照)であれば、操作者である運転者Dがより操作のし易いフロントウィンドウ100と当該運転者Dとの間の空間の比較的高い位置に、それぞれ形成されるようになる。
【0033】
なお、前述した実施の形態では、投影機10から出射される映像に基づいて形成される像を、空中結像プレート13を退避位置と機能位置との間で進退動させる進退動機構20により、フロントウィンドウ100の前方に形成される虚像Irと、フロントウィンドウ100と運転者Dとの間の空間に形成される実像Irとの間で切り替えるようにしたが、これに限られず、フロントウィンドウ100の前方に形成される虚像Irと、フロントウィンドウ100と運転者D以外の乗員、例えば、助手席に座る乗員との間の空間に形成される実像Irとの間で切り替えるようにすることもできる。この場合、自分とフロントウィンドウ100との間に形成された実像Irを見る運転者D以外の乗員(例えば、助手席に座った乗員)は、より容易にその映像に対する操作を行うことができる。
【0034】
また、乗員とフロントウィンドウ100との間に形成される実像Irにて表される映像Iは、前述した地点選択に係る映像のように操作が要求される映像に限られない。例えば、運転者D以外の乗員とフロントウィンドウ100との間に形成さえる実像Irは、AVコンテンツの映像を表すものであってもよい。
【0035】
更に、車速を条件として(例えば、車速が所定値より小さい場合等)、運転者Dとフロントウィンドウ100との間に、操作が要求される映像を表す実像Irを形成することもできる。
【0036】
また、前記虚像Ivと実像Ivとの切替えは、操作部32の操作に代えて、乗員の発する音声により行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上、説明したように、本発明に係る車載表示システムは、車両の乗員に供すべき映像に応じて当該乗員が見ることになる像の形成される位置を変えることができるという効果を有し、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の技術を適用した車載表示システムとして有用である。
【符号の説明】
【0038】
10 投影機
11 HUD光学ユニット
13 空中結像パネル
20 進退動機構
21 アクチュエータ
30 制御ユニット
31 駆動部
32 操作部
100 フロントウィンドウ
110 ダッシュボード
111 開口