特許第6521264号(P6521264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521264
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20190520BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20190520BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C08J7/04 FCFD
   B32B27/18 Z
   B32B27/36
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-29139(P2017-29139)
(22)【出願日】2017年2月20日
(62)【分割の表示】特願2016-570362(P2016-570362)の分割
【原出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-95734(P2017-95734A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-222757(P2015-222757)
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田川 理恵
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−176465(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/137101(WO,A1)
【文献】 特開平11−133204(JP,A)
【文献】 特開2001−100002(JP,A)
【文献】 特開昭60−126601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04−7/06
G02B 1/10−1/18
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に塗布層を有するポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とするポリエステルフィルムであり、前記塗布層が、ジルコニア/チタニア混合粒子A、滑剤粒子B、及びバインダー樹脂を含有し、前記ジルコニア/チタニア混合粒子Aにおけるジルコニアとチタニア合計質量に対するジルコニアの含有率が55〜90質量%である易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
滑剤粒子Bの平均粒径が、200nm以上である請求項1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ジルコニア/チタニア混合粒子Aの平均粒径が、5〜200nmである請求項1又は2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
塗布層の固形分に対する滑剤粒子Bの含有率が、0.1〜20質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
塗布層の固形分に対するジルコニア/チタニア混合粒子Aの含有率が、2〜50質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、ハードコート層、防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層及び低反射層からなる群より選択される1以上の機能層を有する積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虹ムラの問題を解消できる低干渉性を確保でき、透明性に優れた易接着性ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、微細なキズ付きが少なく、高精細な光学用途においても好適に用いられ得る易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル、コンピューター、テレビ、液晶表示装置等のディスプレイ、装飾材等の前面には、透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また、基材の透明プラスティックフィルムとしては、透明なポリエステルフィルムが一般的に用いられ、基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接着性を有する塗布層を設ける場合が多い。
【0003】
前記のハードコートフィルムには、温度、湿度、光に対する耐久性、透明性、耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等が求められている。また、ディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため、視認性や意匠性が要求されている。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため、ハードコート層の上層に、高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、ディスプレイや装飾材などの用途では、近年、さらなる大画面化(大面積化)及び高精細化が求められ、それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0005】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62〜1.65)とアクリル樹脂等からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するため、基材のポリエステルフィルム上に塗布層を設け、ポリエステルフィルムと塗布層との屈折率差、塗布層とハードコート層の屈折率差を小さくするように、塗布層を構成する樹脂と高屈折添加剤の含有量で塗布層の屈折率を制御する方法が開示されている。
【0006】
従来、光学用易接着性フィルムの分野において、易接着層中に特定の微粒子を含ませることにより虹ムラが低減する技術が知られていた(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は、接着性と虹ムラ抑制の観点では一定の成果を上げているものと見られるものの、滑り性が悪さに起因する傷付きやすさの問題があり、滑り性を高めるために他の粒子を加えると透明性が低下するなど、滑り性と透明性、虹ムラ低減のための低干渉性のバランスが取れないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−203712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モバイル技術の発展により携帯電話、カーナビゲーションや電子ブックなど携帯機器の屋外領域での使用が拡大している。また、上記携帯機器は薄型化の点から液晶パネルによるディスプレイがほとんどである。このような分野では、例えばタッチパネルを搭載した携帯電話では、ディスプレイの表面保護のためのハードコートフィルムとして、塗布面に接する両界面の反射光による干渉縞やアイコンシートなどハードコートフィルムの裏面に意匠性を施す用途では干渉縞による視認性の欠点がより顕在化しつつある。
【0009】
しかしながら、高い低干渉性を得ようと高屈折添加剤を多量に添加すると、透明性が損なわれ低干渉性と透明性を両立できない場合が出てきた。また、高精細なディスプレイでの使用用途もあるため、キズを抑制しようと滑剤を添加してすべり性を良くしても透明性が維持できないということがあった。
【0010】
さらに、近年の生産性の向上のため、ハードコート層の積層やスリット加工等、後加工処理の高速化が進むにつれて塗布層へ強い摩擦が加わり、従来問題とならなかった塗布層のキズ付きによる厚み変動、品質変動が課題となりつつある。特に、屈折率を高めるために用いる樹脂は比較的硬度が高く、脆いため、干渉斑を抑制した塗布層ほどこの塗布層のキズ付き性は大きくなる傾向にある。
【0011】
よって、干渉斑の抑制効果を有しつつ、さらに高速加工においても塗布層にキズが付くことなく、透明性やハードコート層との高い密着性を有する光学易接着ポリエステルフィルムが切望されつつある。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、滑り性と透明性等の特性のバランスに優れ、製造時や液晶表示装置の偏光板製造工程等の後工程でのハンドリング性に優れ、キズ付きが少なく、虹ムラ抑制のための低干渉性にも優れる光学用途において好適に使用できる易接着性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. 少なくとも片面に塗布層を有するポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とするポリエステルフィルムであり、前記塗布層が、ジルコニア/チタニア混合粒子A、滑剤粒子B、及びバインダー樹脂を含有し、前記ジルコニア/チタニア混合粒子Aにおけるジルコニアとチタニア合計質量に対するジルコニアの含有率が55〜90質量%である易接着性ポリエステルフィルム。
2. 滑剤粒子Bの平均粒径が、200nm以上である上記第1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
3. ジルコニア/チタニア混合粒子Aの平均粒径が、5〜200nmである上記第1又は第2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
4. 塗布層の固形分に対する滑剤粒子Bの含有率が、0.1〜20質量%である上記第1〜第3のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
5. 塗布層の固形分に対するジルコニア/チタニア混合粒子Aの含有率が、2〜50質量%である上記第1〜第4のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
6. 上記第1〜第5のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、ハードコート層、防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層及び低反射層からなる群より選択される1以上の機能層を有する積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、虹ムラを抑制できる低干渉性を確保でき、透明性と滑り性とのバランスに優れ、キズ付きが少なく、製造時や液晶表示装置の偏光板製造工程等の後工程でのハンドリング性に優れた光学用途において好適に使用できる易接着性ポリエステルフィルムの提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ポリエステルフィルム)
本発明で基材として用いるポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。また、前記のようなポリエステルに第三成分モノマーが共重合ポリエステルからなるフィルムであってもよい。これらのポリエステルフィルムの中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートフィルムが最も好ましい。
【0016】
また、前記のポリエステルフィルムは、単層であっても複層であってもかまわない。また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0017】
(塗布層)
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、上記のようなポリエステル製の基材フィルム上に易接着性の塗布層が積層されているものである。塗布層中は、ジルコニア/チタニア混合粒子A(以下、単に粒子Aと記す場合がある)、滑剤粒子B(以下、単に粒子Bと記す場合がある)、及びバインダー樹脂を含んでいる。
【0018】
粒子Aはジルコニア/チタニア混合粒子である。本発明でいう混合粒子とは、ジルコニアとチタニアが単一の液体中でそれぞれ単独で分散し、複合体を形成していないような集合状態でジルコニアとチタニアの両者を含む粒子群である。もちろん、塗布層中では液体成分は乾燥工程や硬化工程で殆ど蒸発してなくなっている。このような粒子Aを塗布層が含んでいることで滑り性と透明性のバランス優れ、高い透明性と低干渉性を確保できるものである。液体は後述の所謂インラインコーティング法で塗布層を形成し易くするため、水系の液体であることが好ましい。
【0019】
粒子A中には、ジルコニア/チタニア以外の他の成分が含まれていても構わず、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。
【0020】
混合粒子である粒子Aの質量(液体の質量を含まない)に対するジルコニアとチタニア合計質量の割合は70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。もちろん、100質量%であっても構わない。粒子A中におけるジルコニアとチタニア合計質量の割合は70質量%以上であれば、滑り性と透明性のバランスが取れて好ましい。
【0021】
混合粒子である粒子Aを構成するジルコニアとチタニアの合計質量に対するジルコニアの質量の割合は、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上であり、更に特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは55質量%以上である。ジルコニアとチタニアの合計質量に対するジルコニアの質量の割合が10質量%以上であると、表面粗さが大きくなり過ぎることがなく、ガイドロールとの滑り性が適度となり、傷付きにくい。従って、ヘイズが高くなることがなく、透明性に優れたものとなる。
【0022】
粒子Aを構成するジルコニアとチタニアの合計質量に対するジルコニアの質量の割合は、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、特に好ましくは77質量%以下である。ジルコニアとチタニアの合計質量に対するジルコニアの質量の割合が90質量%以下であれば、表面粗さが小さくなり過ぎることがなく、適度な滑り性が保たれて、ハンドリング性が良好であり、巻き出し時に傷付きにくく好ましい。
【0023】
粒子Aを構成するジルコニアとチタニアの合計質量に対するチタニアの質量の割合は、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは23質量%以上である。ジルコニアとチタニアの合計質量に対するチタニアの質量の割合が10質量%以上であると、滑り性が向上し、ハンドリングが向上して、耐傷付き性が良好となり好ましい。但し、ジルコニアとチタニアの合計質量に対するチタニアの質量の割合が大きくなることは、ジルコニアの質量の割合が小さくなることを意味するので、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下であり、更に特に好ましくは50質量%以下であり、最も好ましくは45質量%以下である。
【0024】
粒子Aの平均粒径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは15nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。粒子Aの平均粒径は5nm以上であると、凝集しにくく好ましい。
【0025】
粒子Aの平均粒径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、特に好ましくは60nm以下である。粒子Aの平均粒径は200nm以下であると透明性が良好で好ましい。
【0026】
粒子Bは、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0027】
粒子Bの平均粒径は200nm以上であることが好ましく、より好ましくは250nm以上であり、さらに好ましくは300nm以上であり、特に好ましくは350nm以上である。粒子Bの平均粒径は200nm以上であると、凝集しにくく、滑り性が確保できて好ましい。
【0028】
粒子Bの平均粒径は2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは1500nm以下であり、さらに好ましくは1000nm以下であり、特に好ましくは700nm以下である。粒子Bの平均粒径が2000nm以下であると、透明性が保たれ、また、粒子が脱落することがなく好ましい。
【0029】
粒子A及びBの表面処理を行っても良く、表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。粒子Bがシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。粒子Bの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いても良いし、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させても良い。もちろん粒子Aに用いてもよい。
【0030】
塗布層を構成するバインダー樹脂としては易接着性をもたらす樹脂であれば特に限定されないが、ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも粒子の保持、密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。また、ポリエステルフィルムとのなじみを考慮した場合、ポリエステル樹脂が最適である。これら前記のバインダー樹脂を併用してもよい。
【0031】
前記ポリエステル樹脂は塗布層中に、全固形成分中、100質量%であってもよいが、10質量%以上90質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは20%質量%以上80質量%以下である。ポリエステル樹脂の含有量が90質量%以下の場合には、高温高湿下のハードコート層との密着性が保持されて好ましい。逆に、含有量が10質量%以上であると、他のウレタン樹脂等の存在によって、常温、高温高湿下のポリエステルフィルムとの密着性が保持されて好ましい。
【0032】
本発明において、塗布層中に架橋構造を形成させるために、塗布層は架橋剤が含まれて形成されていてもよい。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられる。これらの中で、塗液の経時安定性、高温高湿処理下の密着性向上効果からメラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系の架橋剤が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0033】
架橋剤の塗布層中の含有量としては、全固形成分中、5質量%以上50質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。10質量%以上であれば、塗布層の樹脂の強度が保持され、高温高湿下での密着性が良好であり、40質量%以下であれば、塗布層の樹脂の柔軟性が保持され、常温、高温高湿下での密着性が保持されて好ましい。
【0034】
塗布層中の粒子Aの含有量は2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。塗布層中の粒子Aの含有量は2質量%以上であると、塗布層の屈折率を高く保つことができ、低干渉性が効果的に得られて好ましい。
【0035】
塗布層中の粒子A含有量は50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。塗布層中の粒子A含有量は50質量%以下であると、造膜性が保たれて好ましい。
【0036】
塗布層中の粒子B含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。塗布層中の粒子B含有量は0.1質量%以上であると、適度な滑り性が保たれて好ましい。
【0037】
塗布層中の粒子B含有量は20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。塗布層中の粒子B含有量は20質量%以下であると、ヘイズが低く保たれて透明性の点で好ましい。
【0038】
塗布層の膜厚は0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.02μm以上であり、特に好ましくは0.05μm以上である。塗布層の膜厚が0.001μm以上であると、接着性が良好であり好ましい。
【0039】
塗布層の膜厚は2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以下である。塗布層の膜厚が2μm以下であると、ブロッキングが生じるおそれがなく好ましい。
【0040】
塗布層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコーン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果や密着性を損なわない程度の範囲で塗布層に含有させることが好ましい。
【0041】
塗布層に他の機能性を付与するために、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果や密着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0042】
塗工方法としては、ポリエステル基材フィルム製膜時に同時に塗工する所謂インラインコーティング法、及び、ポリエステル基材フィルムを製膜後、別途コーターで塗工する所謂オフラインコーティング法のいずれも適用できるが、インラインコーティング法が効率的でより好ましい。
【0043】
塗工方法としては塗布液をポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
【0044】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0045】
塗工液の固形分濃度はバインダー樹脂の種類や溶媒の種類などにもよるが、2質量%以上であることが好ましく、4質量%であることがより好ましい。塗工液の固形分濃度は35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
【0046】
塗布後の乾燥温度についても、バインダー樹脂の種類、溶媒の種類、架橋剤の有無、固形分濃度などにもよるが、80℃以上であることが好ましく、250℃以下であることが好ましい。
【0047】
塗布層の表面粗さ(Ra)は、塗布層表面の滑り性等と関係があり、0.01nm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1nm以上であり、さらに好ましくは0.2nm以上であり、特に好ましくは0.5nm以上である。一方、塗布層の表面粗さ(Ra)の上限については、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは80nm以下であり、特に好ましくは50nm以下である。
【0048】
(光学用易接着性ポリエステルフィルムの製造)
本発明の光学用易接着性ポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわないが、二軸延伸フィルムを液晶パネル前面の保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察される場合があるので注意が必要である。
【0050】
この現象は、二軸延伸フィルムが、走行方向、幅方向、厚さ方向で異なる屈折率を有する屈折率楕円体からなり、フィルム内部での光の透過方向によりリタデーションがゼロになる(屈折率楕円体が真円に見える)方向が存在するためである。従って、液晶表示画面を斜め方向の特定の方向から観察すると、リタデーションがゼロになる点を生じる場合があり、その点を中心として虹状の色斑が同心円状に生じることとなる。そして、フィルム面の真上(法線方向)から虹状の色斑が見える位置までの角度をθとすると、この角度θは、フィルム面内の複屈折が大きいほど大きくなり、虹状の色斑は見え難くなる。二軸延伸フィルムでは角度θが小さくなる傾向があるため、一軸延伸フィルムのほうが虹状の色斑は見え難くなり好ましい。
【0051】
しかしながら、完全な一軸性(一軸対称)フィルムでは配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下するので好ましくない。本発明は、実質的に虹状の色斑を生じない範囲、または液晶表示画面に求められる視野角範囲において虹状の色斑を生じない範囲で、二軸性(二軸対象性)を有していることが好ましい。
【0052】
(積層ポリエステルフィルム)
本発明の主に光学用途に用いられる積層ポリエステルフィルムは、本発明の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂等からなるハードコート層等を設けることにより得られる。
【0053】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、機能層を設けることも好ましい形態である。機能層とは、写り込み防止やギラツキ抑制、虹ムラ抑制、キズ抑制などを目的として、前述のハードコート層の他、防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層、低反射層および帯電防止層などの機能性を有する層のことをいう。機能層は、当該技術分野において公知の各種のものを使用することができ、その種類は特に制限されない。以下、各機能層について説明する。
【0054】
例えば、ハードコート層の形成には、公知のハードコート層を用いることができ、特に限定されないが、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物を用いることができる。このような、硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点で光硬化性型のアクリル系硬化性樹脂が好ましい。このようなアクリル系硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート系モノマーやアクリレート系オリゴマーを用いることができ、アクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。これらアクリル系硬化性樹脂に反応希釈剤、光重合開始剤、増感剤などを混合することで、前記光学機能層を形成するためのコート用組成物を得ることができる。
【0055】
上記のハードコート層は、外光を散乱させる防眩機能(アンチグレア機能)を有していてもよい。防眩機能(アンチグレア機能)は、ハードコート層の表面に凹凸を形成することにより得られる。このとき、フィルムのヘイズは、理想的には0〜50%であることが好ましく、より好ましくは0〜40%、特に好ましくは0〜30%である。もちろん、0%は理想的なもので、0.2%以上であっても構わず、0.5%以上であっても構わない。
【0056】
そのため、本発明のフィルムの用途は主に光学用フィルムの全般にわたり、プリズムレンズシート、AR(アンチリフレクション)フィルム、ハードコートフィルム、拡散板、破砕防止フィルムなどのLCDやフラットTV、CRTなどの光学用部材のベースフィルム、プラズマディスプレイ用の前面板に部材である近赤外線吸収フィルタ、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスなどの透明導電性フィルム、などに好適に使用することができる。
【0057】
上述のハードコート層形成のための電子線または紫外線により硬化するアクリル樹脂としてより詳しくは、アクリレート系の官能基を有するものであり、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を含有するものが使用できる。
【0058】
但し、電子線または紫外線硬化型樹脂の場合には、前述の樹脂中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチラウムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0059】
また、シリコーン系(シロキサン系)熱硬化性樹脂は、酸または塩基触媒下においてオルガノシラン化合物を単独または2種以上混合して加水分解及び縮合反応させて製造することができる。特に、低反射用の場合においてフルオロシラン化合物を1種以上混合して加水分解及び縮合反応させることが低屈折率性、耐汚染性などの向上においてさらに良い。
【0060】
(積層ポリエステルフィルムの製造)
本発明における積層ポリエステルフィルムの製造方法について、易接着性ポリエステルフィルムを例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0061】
前述の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層面に、前記の電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂を塗布する。塗布層が両面に設けられている場合は、少なくとも一方の塗布層面に塗布する。塗布液は特に希釈する必要はないが、塗布液の粘度、濡れ性、塗膜厚等の必要に応じて有機溶剤により希釈しても特に問題はない。塗布層は、前述のフィルムに前記塗布液を塗布後、必要に応じて乾燥させた後、塗布液の硬化条件に合わせて、電子線または紫外線照射及び加熱することにより塗布層を硬化させることにより、ハードコート層を形成する。
【0062】
本発明において、ハードコート層の厚みは、1〜15μmであることが好ましい。ハードコート層の厚みが1μm以上であると、ハードコート層としての耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等に対する効果が効率的に発揮されて好ましい。一方、厚みが15μm以下であるとハードコート層のフレキシブル性が保たれて、亀裂等が発生するおそれがなく好ましい。
【0063】
耐傷付き性としては塗工面を黒台紙で磨耗させたとき、目視でキズが目立たないことが好ましい。前記の評価でキズが目立なければ、ガイドロール通過時に傷が付きにくく、ハンドリング性等の観点で好ましい。
【0064】
静摩擦係数(μs)の下限は好ましくは0.3であり、0.3以上であると滑り過ぎる問題がないので、製造工程においてハードクロムメッキのロール等で巻き上げが容易となり。ハンドリング性、耐ブロッキング性が保たれて好ましい。静摩擦係数(μs)の上限は好ましくは0.5であり、0.5以下であると、巻上げ時に接触相手面となるフィルムにキズをつけてしまう恐れがなく好ましい。
【0065】
動摩擦係数(μd)の下限は好ましくは0.4であり、0.4以上であると滑り過ぎる問題がないので、製造工程においてハードクロムメッキのロール等で巻き上げが容易となり。ハンドリング性、耐ブロッキング性が保たれて好ましい。動摩擦係数(μd)の上限は好ましくは0.6であり、0.6以下であると、巻上げ時に接触相手面となるフィルムにキズをつけてしまう恐れがなく好ましい。
【0066】
本発明のポリエステルフィルムは光学用易接着フィルムとして主に用いるため、高い透明性を有することが好ましい。ヘイズの下限は理想的には0%であり、0%に近いほどより好ましい。ヘイズの上限は好ましくは2%であることが好ましく、2%以下であると光線透過率が良好であり、液晶表示装置において鮮明な画像を得ることができて好ましい。ポリエステルフィルムのヘイズは、例えば、後述する方法に従って測定することができる。
【0067】
易接着層性の塗布層とハードコート層との密着性は、後述の測定法による評価によって、下限は好ましくは80%であることが好ましく、上限は好ましくは100%である。80%以上であると、塗布層とハードコート層との密着性が十分保持された状態といえる。
【0068】
後述の方法に従って評価する易接着層とハードコート層との高温高湿条件下における密着性について、下限は好ましくは10%であることが好ましく、高温高湿密着性の上限は好ましくは100%である。10%以上であると、高温高湿条件下において易接着層とハードコート層の密着性が一通り満足され、後加工工程での通過性が一通り満足する。より好ましくは、50%以上である。
【0069】
ハードコートを形成した偏光子保護用ポリエステルフィルムは、後述の評価方法による干渉斑が確認できないことが好ましく、当該評価方法による干渉斑が確認できないものであれば、液晶画像装置の視認性が良好となり好ましい。
【0070】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、種々の用途に用いることができるが、液晶表示装置に用いられる偏光板の製造工程で好ましく用いられ、偏光板を構成する偏光子の保護フィルムとして特に好ましく用いられるものである。通常、偏光子はポリビニルアルコール製のものが多く、本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、偏光子に必要に応じてポリビニルアルコール製やそれに架橋剤等を加えた接着剤を用いて接着される。その際、本発明の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層は、偏光子と接着する側の面ではなく、その反対面に向けて用いることがより好ましい。本発明の易接着性ポリエステルフィルムの偏光子と接着される表面には、例えば、国際公開第2012/105607号に記載されるような、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及び架橋剤を含む易接着層が積層されていることが好ましい。
【実施例】
【0071】
次に、実施例、比較例、及び参考例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例2、3は、各々参考例2、3と読み替えることとする。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0072】
(1)平均粒径
〔走査型電子顕微鏡による測定法〕
上記の粒子の平均粒径の測定は下記の方法により行うことができる。粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。本発明における塗布層中に存在する粒子の平均粒径は当該測定方法により測定できる。
【0073】
〔動的光散乱法〕
粒子の平均粒径は、粒子やフィルムの製造時においては動的散乱法により求めることもできる。ゾルを分散媒で希釈し、分散媒のパラメーターを用いてサブミクロン粒子アナライザーN4 PLUS(ベックマン・コールター社製)にて測定し、キュムラント法にて演算することで平均粒子径を得た。動的光散乱法ではゾル中の粒子の平均粒子径が観測され、粒子同士の凝集があるときは、それらの凝集粒子の平均粒子径が観測される。
【0074】
(2)粒子の屈折率
粒子の屈折率測定は下記の方法により行うことができる。無機粒子を150℃で乾燥後、乳鉢で粉砕した粉末を、溶媒1(粒子より低屈折率のもの)に浸漬した後、溶媒2(粒子より高屈折率のもの)を少量ずつ微粒子がほぼ透明になるまで添加した。この液の屈折率をアッベの屈折計(株式会社アタゴ製アッベ屈折率計)を用いて測定した。測定は23℃、D線(波長589nm)で行われた。上記溶媒1と溶媒2は互いに混合可能なものを選定し、屈折率に応じて、例えば1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2−プロパノール、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、グリセリン等の溶媒が挙げられる。
【0075】
(3)易接着性ポリエステルフィルムのヘイズ
易接着性ポリエステルフィルムのヘイズはJIS K 7136:2000に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
【0076】
(4)密着性
実施例で得られたポリエステルフィルムの易接着層上に、前述のハードコート層の形成の項目で記述したハードコート層を形成した。ハードコートを形成した易接着用ポリエステルフィルムをJIS−K5400−1990の8.5.1の記載に準拠し、ハードコート層と基材フィルムとの密着性を求める。
【0077】
具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープをハードコート積層偏光子保護フィルムのハードコート層面から引き剥がして、ハードコート積層偏光子保護フィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数える。

密着性(%)={1−(剥がれたマス目の数/100)}×100
【0078】
(5)耐湿熱性
前記のハードコートを形成した偏光子保護用積層フィルムを、高温高湿槽中で85℃、85RH%の環境下500時間放置し、次いで、ハードコート積層偏光子保護フィルムを取りだし、室温で12時間放置した。その後、前記と同様の方法でハードコート層と基材フィルムとの密着性を求めて、耐湿熱性とした。
【0079】
(6)静摩擦係数、動摩擦係数(μs、μd)
実施例で得られたポリエステルフィルムの摩擦係数はJIS K7125-1999 プラスチック-フィルムおよびシート摩擦係数試験方法に準拠し、テンシロン(東洋ボールドウィン、RTM-100)を用いて測定した。
【0080】
(7)干渉縞改善性(虹彩状色彩)
各実施例で得られた光学用易接着ポリエステルフィルムの易接着層上にハードコート層を形成した。ハードコートを形成した光学用易接着ポリエステルフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層面とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工株式会社製、ビニルテープ No21;黒)を貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として、斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40〜60cm、15〜45°の角度)で観察した。
【0081】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0082】
(8)塗布層の耐傷付き性
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製、RT−200)に光学用易接着性ポリエステルフィルムを3cm(フィルム幅方向)×20cm(フィルム長手方向)を取り付け、おもり(300g)を付けた荷重ヘッド部(2cmx2cm、200g)と試料フィルムの接触部に黒台紙(厚さ80μm、算術的平均表面粗さ0.03μm)を用い、10c
mの距離を1往復20秒の速度で3往復させた。黒台紙の上に得られた試料フィルムを
のせ、傷が付いているか目視で確認した。
○:黒台紙上で傷付きが確認できない、又は場所によってわずかな傷付きが確認できる
△:黒台紙上で全体的にわずかな傷付きが確認できる
×:黒台紙上で傷付きがはっきりと確認できる
【0083】
(9)ガラス転移温度
JIS K7121−1987に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、DSC6200)を使用して、樹脂サンプル10mgを25〜300℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
【0084】
(10)数平均分子量
樹脂0.03gをテトラヒドロフラン 10ml に溶かし、GPC−LALLS装置低角度光散乱光度計 LS−8000(東ソー株式会社製、テトラヒドロフラン溶媒、リファレンス:ポリスチレン)を用い、カラム温度30℃、流量1ml/分、カラム(昭和電工社製shodex KF−802、804、806)を用い、数平均分子量を測定した。
【0085】
(11)樹脂組成
樹脂を重クロロホルムに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、1H−NMR分析を行ってその積分比より各組成のモル%比を決定した。
【0086】
(12)表面粗さ(Ra)
JIS−B0601−2001に基づいて、サーフコム(登録商標)304B(株式会社東京精密製)にてRaを測定した。なお測定条件は、カットオフ0.08μm、触針半径2μm、測定長0.8mm、測定速度0.03mm/秒で行った。
【0087】
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチルー5−ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(I)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(I)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(I)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃、数平均分子量は20000であった。
共重合ポリエステル樹脂(I)の組成は以下の通りである。
・ジカルボン酸成:分テレフタル酸49モル%、イソフタル酸48モル%、5−ナトリウムイソフタル酸3モル%
・ジオール成分:エチレングリコール40モル%、ジエチレングリコール60モル%
【0088】
(ポリエステル水分散体の製造)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、共重合ポリエステル樹脂(I)30質量部、エチレングリコール−n−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分28.2質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Iα)を作製した。
【0089】
(ポリウレタン水分散体の製造)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分37質量%の水溶性ポリウレタン樹脂溶液(II)を調製した。得られたポリウレタン樹脂(II)のガラス転移点温度は−30℃であった。
【0090】
(ブロックポリイソシアネート系架橋剤の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(III)を得た。
【0091】
(オキサゾリン系架橋剤の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに水性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、および、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学製)32質量部、およびメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂(IV)を得た。
【0092】
(カルボジイミド系架橋剤の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、撹拌し、更に4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド3.8質量部(全イソシイアネートに対し2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長2200〜2300cm−1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水溶性樹脂(V)を得た。
【0093】
(エポキシ系架橋剤)
エポキシ系架橋剤として、ナガセケムテックス社製 デナコールEX−521(固形分濃度100%)を使用した(エポキシ系架橋剤(VI))。
【0094】
(メラミン系架橋剤)
メラミン系架橋剤として、DIC社製 ベッカミンM−3(固形分濃度60%)を使用した(メラミン系架橋剤(VII))。
【0095】
(ジルコニア粒子)
3リットルのガラス製容器に、純水2283.6gとシュウ酸二水和物403.4gとを投入し、40℃に加熱して10.72質量%シュウ酸水溶液を調製した。この水溶液を撹拌しながら、オキシ炭酸ジルコニウム粉末(ZrOCO3、AMR International Corp.製、ZrO2に換算して39.76質量%を含有する。)495.8gを徐々に添加し30分間混合した後、90℃で30分の加熱を行った。次いで、25.0質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(多摩化学工業(株)製)1747.2gを1時間かけて徐々に添加した。この時点で混合液はスラリー状であり、ZrO2換算で4.0質量%含有した。このスラリーをステンレス製オートクレーブ容器に移し替え、145℃で5時間の水熱処理を行った。この水熱処理後の生成物は、未解膠物がなく完全にゾル化した。得られたゾルは、ZrO2として4.0質量%含有し、pH6.8、動的光散乱法による平均粒子径は19nmであった。また、ゾルをZrO2濃度2.0質量%に純水で調整して測定した透過率は88%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ、7nm前後のZrO2一次粒子の凝集粒子がほとんどであった。上記の水熱処理を行って得られたZrO2濃度4.0質量%のジルコニアゾル4000gを限外濾過装置を使用して、純水を徐々に添加しながら洗浄及び濃縮を行って、ZrO濃度13.1質量%、pH4.9、ZrO2濃度13.1質量%のときの透過率76%のジルコ
ニアゾル953gが得られた。
【0096】
上記の洗浄及び濃縮を行って得られたZrO2濃度13.1質量%のジルコニアゾル300gに20質量%クエン酸水溶液3.93g及び25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液11.0gを添加した後、更に限外濾過装置で濃縮を行ったところ、ZrO2濃度30.5質量%の高濃度のジルコニアゾル129gが得られた。この得られた高濃度のジルコニアゾルは、pH9.3、動的光散乱法による平均粒子径19nmであった。また、このジルコニアゾルは沈降物がなく、50℃の条件下で1ヶ月以上安定であった。
【0097】
(チタニア粒子)
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75質量%含む四塩化チタン水溶液12.09kgと、アンモニアを15質量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)4.69kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が10質量%の含水チタン酸ケーキ9.87kgを得た。次に、このケーキに、過酸化水素を35質量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)11.28kgと純水20.00kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらに純水57.52kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1質量%含む過酸化チタン酸水溶液を98.67kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0098】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液98.67kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)4.70kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1質量%含むスズ酸カリウム水溶液12.33kgを撹拌下で徐々に添加した。次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱した。
【0099】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10質量%の、チタン系微粒子(以下、「P−1」という)を含む水分散ゾル9.90kgを得た。このようにして得られたゾル中に含まれる固形物を上記の方法で測定したところ、ルチル型の結晶構造を有する、チタニウムおよびスズを含む複合酸化物からなるチタン系微粒子(一次粒子)であった。さらに、このチタン系微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO2 87.2質量%、SnO2 11.0質量%、およびK2O 1.8質量%であった。また、該混合水溶液のpHは10.0であった。さらに、前記チタン系微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であり、この水分散ゾル中に含まれる前記チタン系微粒子の平均粒子径は35nmであり、さらに100nm以上の粒子径を有する粗大粒子の分布頻度は0%であった。さらに、得られたチタン系微粒子の屈折率は2.42であるとみなすことができた。
【0100】
(ジルコニア/チタニア混合粒子)
上記で得られたジルコニア粒子とチタニア粒子をそれぞれの比率で混合することで固形分濃度13質量%のジルコニア/チタニア混合粒子を作成した。
【0101】
(ハードコート層の形成)
後述する実施例で製造したポリエステルフィルムの偏光子と接着する面とは反対側の面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有
する偏光子保護フィルムを得た。
・ハードコート層形成用塗布液
メチルエチルケトン 65.00質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 27.20質量%
(新中村化学製A−DPH)
ポリエチレンジアクリレート 6.80質量%
(新中村化学製A−400)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0102】
(実施例1)
(塗布液の調整)
下記の組成の塗布液を調整した。
水 34.94質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 7.24質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 0.90質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 17.92質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 2.90質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.26質量部
【0103】
(易接着性ポリエステルフィルムの製造)
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないPET樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0104】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0105】
次いで、上記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸後の乾燥後の塗布量が0.12g/mになるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ38μmの易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0106】
(実施例2)
塗布液の粒子A−1の代わりに、ジルコニアとチタニアの合計質量に対するジルコニアの質量の割合が50質量%の粒子A−2に変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0107】
(実施例3)
塗布液の粒子A−1の代わりに、ジルコニアとチタニアの合計質量に対するジルコニアの質量の割合が25質量%の粒子A−3に変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0108】
(実施例4)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 37.23質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 3.79質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 0.95質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 18.77質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 3.03質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.27質量部
【0109】
(実施例5)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 32.85質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 10.39質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 0.87質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 17.15質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 2.80質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.25質量部
【0110】
(実施例6)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 39.17質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 7.24質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 0.90質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリウレタン水分散体(II) 13.70質量部
(固形分濃度37質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 2.90質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.26質量部
【0111】
(実施例7)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 34.94質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 7.24質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 0.90質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 13.27質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ポリウレタン水分散体(II) 4.98質量部
(固形分濃度37質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 2.90質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.26質量部
【0112】
(実施例8)
塗布液のブロックイソシアネート系架橋剤(III)をオキサゾリン基を有する水溶性樹
脂(IV)に変更して、その含有量を調節した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0113】
(実施例9)
塗布液のブロックイソシアネート系架橋剤(III)をカルボジイミド水溶性樹脂(V)
に変更して、その含有量を調節した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0114】
(実施例10)
塗布液のブロックイソシアネート系架橋剤(III)をメラミン系架橋剤(VII)に変更して、その含有量を調節した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0115】
(実施例11)
塗布液のブロックイソシアネート系架橋剤(III)をエポキシ系架橋剤(VI)に変更し
て、その含有量を調節した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0116】
(実施例12)
塗布液の粒子A−1の代わりに、平均粒径を40nmの粒子A−4に変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0117】
(実施例13)
塗布液の粒子A−1の代わりに、平均粒径を30nmの粒子A−5に変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0118】
(実施例14)
塗布層の膜厚を0.05μmに変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0119】
(実施例15)
塗布層の膜厚を0.075μmに変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0120】
(実施例16)
塗布層の膜厚を0.125μmに変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0121】
(実施例17)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 35.40質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 7.26質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 0.36質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 17.98質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 2.90質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.26質量部
【0122】
(実施例18)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 34.48重量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 7.22質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
粒子B−1 1.44質量部
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 17.88質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 2.90質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.26質量部
【0123】
(比較例1)
塗布液の粒子A−1の代わりに、チタニアを含有しない非混合ジルコニア単独粒子A−6に変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
(比較例2)
塗布液の粒子A−1の代わりに、ジルコニアを含有しない非混合チタニア系単独粒子A−7に変更し、固形分濃度を考慮して質量%を調整した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
(比較例3)
実施例1で調整、使用した塗布液に代えて、下記の組成の塗布液を調整、使用した他は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
水 35.71質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
粒子A−1 7.27質量部
(平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子、
ジルコニア/チタニア合計質量に対するジルコニア質量75質量%、
固形分濃度13質量%)
ポリエステル水分散体(Iα) 28.58質量部
(固形分濃度28.2質量%)
ブロックイソシアネート系架橋剤(III) 1.38質量部
(固形分濃度75質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(フッソ系、固形分濃度10質量%)
高沸点溶媒 3.00質量部
分散助剤 0.26質量部
【0126】
【表1】
【0127】
各実施例により得られた易接着性ポリエステルフィルムは、耐傷付き性が良好で、静摩擦係数、動摩擦係数も適度であり、透明性、密着性、耐湿熱性、低干渉性の各評価項目においても満足のいく結果が得られた。それに対して、比較例1により得られた易接着性ポリエステルフィルムは、塗布層中の粒子Aにジルコニアが含まれていないため、耐湿熱性において満足できなかった。また、比較例2により得られた易接着性ポリエステルフィルムは、塗布層中の粒子Aにチタニアが含まれていないため、耐傷付き性において満足できなかった。そして、比較例3により得られた易接着性ポリエステルフィルムは、塗布層中の滑剤粒子Bが含まれていないため、摩擦係数が大きかった。
【0128】
(実施例19)
実施例1において得られた易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、下記組成の防眩層形成用塗布液を#5ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、防眩層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cm
紫外線を照射し、厚み5μmの防眩層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。防眩性の付与された好ましい積層ポリエステルフィルムが得られた。
・防眩層形成用塗布液
トルエン 34質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50質量部
シリカ(平均粒径1μm) 12質量部
シリコーン(レベリング剤) 1質量部
光重合開始剤 1質量部
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0129】
(実施例20)
実施例1において得られた易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、下記組成の中屈折率層形成用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、70℃1分間乾燥後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cmの紫外線を照射し、乾燥膜厚5μmの中屈折率層を得た。次
に、形成した中屈折率層の上に、バーコーターを用いて、下記組成の高屈折率層形成用塗布液を中屈折率層と同様の方法で形成し、さらにその上に下記組成の低屈折率層形成用塗布液を中屈折率層と同様の方法で形成し、反射防止層を積層した積層ポリエステルフィルムを得た。反射防止性を有する好ましい積層ポリエステルフィルムが得られた。

・中屈折率層形成用塗布液(屈折率1.52)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70質量部
1,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン
30質量部
光重合開始剤 4質量部
(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、イルガキュア184)
イソプロパノール 100質量部
・高屈折率層形成用塗布液(屈折率1.64)
ITO微粒子(平均粒径0.07μm) 85質量部
テトラメチロールメタントリアクリレート 15質量部
光重合開始剤(KAYACURE BMS、日本化薬製) 5質量部
ブチルアルコール 900質量部
・低屈折率層形成用塗布液(屈折率1.42)
1,10−ジアクリロイルオキシ−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン 70質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10質量部
シリカゲル微粒子(XBA−ST、日産化学製) 60質量部
光重合開始剤(KAYACURE BMS、日本化薬製) 5質量部