特許第6521504号(P6521504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6521504特殊信号発光機検査装置及び該特殊信号発光機検査装置を有する軌陸車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521504
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】特殊信号発光機検査装置及び該特殊信号発光機検査装置を有する軌陸車
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/04 20060101AFI20190520BHJP
   B61L 25/06 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   B61L23/04
   B61L25/06
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-209584(P2014-209584)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-78528(P2016-78528A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】505084066
【氏名又は名称】西日本電気テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】深谷 公郎
(72)【発明者】
【氏名】江田 亮太
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−076780(JP,A)
【文献】 特開2011−201426(JP,A)
【文献】 特開2013−092992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0090135(US,A1)
【文献】 特開2003−002200(JP,A)
【文献】 特開2012−225846(JP,A)
【文献】 特開2012−056514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00 − 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道における特殊信号発光機を検査するための特殊信号発光機検査装置であって、
画像データを取得する撮像部と、
前記撮像部の位置情報を取得する位置情報取得部と、
特殊信号発光機の検査における各特殊信号発光機に対する複数の確認地点の位置情報が予め記憶された記憶部と、
前記画像データ及び位置情報を処理する処理部とを備え、
前記撮像部は、軌道に沿って移動されながら少なくとも前記確認地点で画像データを取得し、
前記処理部は、前記撮像部の位置情報が前記確認地点の位置情報と一致するとき、前記撮像部がその確認地点で取得した画像データ内における特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行い、特殊信号発光機の発光が少なくとも1つ認識されるか否かを判定することを特徴とする特殊信号発光機検査装置。
【請求項2】
前記処理部の出力が表示される表示部を備え、
前記記憶部は、前記各確認地点ごとの特殊信号発光機からの軌道に沿った距離がさらに記憶されており、
前記処理部は、前記各確認地点について、前記記憶部に記憶された前記距離、前記判定の結果、及び前記撮像部が取得した画像データを含む情報を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の特殊信号発光機検査装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記表示部に表示する前記情報を前記記憶部に保存することを特徴とする請求項2に記載の特殊信号発光機検査装置。
【請求項4】
前記撮像部は、軌道に沿って移動されながら画像データを略連続的に取得し、
前記処理部は、前記撮像部が取得した前記画像データ内に特殊信号発光機の発光が1つも認識されないとの判定結果が所定時間以上継続したことを検出する連続視認検査機能を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の特殊信号発光機検査装置。
【請求項5】
前記記憶部は、対をなす位置情報が予め記憶され、
前記対をなす地点の一方は、踏切道にあり、他方は、前記踏切道から軌道に沿った距離が所定の値である地点であり、
前記処理部は、前記撮像部が前記対をなす地点の間にあるとき、前記連続視認検査機能を有効にすることを特徴とする請求項4に記載の特殊信号発光機検査装置。
【請求項6】
軌陸車に搭載され、
前記撮像部は、前記軌陸車の前方又は後方の画像データを取得することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の特殊信号発光機検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の特殊信号発光機検査装置を有する軌陸車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道における特殊信号発光機を検査するための特殊信号発光機検査装置及び該特殊信号発光機検査装置を有する軌陸車に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切道には、特殊信号発光機が設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。特殊信号発光機は、列車を緊急に停止させる必要がある場合に、発光信号を現示する装置であり(非特許文献1の番号2050)、踏切支障報知装置(非特許文献1の番号6013)が操作されたとき又は障害物検知装置(非特許文献1の番号6014)が動作したとき、発光信号を現示する。
【0003】
鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準の第33項には、発光信号を現示する装置は、接近する列車が当該列車の進路を支障する箇所までに停止することができる距離以上の地点から確認することができる位置に設置すること、と規定されている(非特許文献2参照)。このため、鉄道事業者は、踏切道から800m以上手前の地点で発光信号を確認することができるように特殊信号発光機を設置している。800mは、線区の最高運転速度からの非常ブレーキ距離に余裕を加えた距離である。すなわち、特殊信号発光機の確認距離は、800m以上とされる。
【0004】
従来から、特殊信号発光機の検査は、踏切道と、そこから離れた確認地点とに、作業員をそれぞれ配置して行われている。この検査では、踏切側の作業員が、踏切支障報知装置を操作して特殊信号発光機を実際に発光させ、確認地点側の作業員が、特殊信号発光機の発光を確認する。
【0005】
踏切道の手前に曲線区間がある場合、特殊信号発光機の発光が、沿線の建物、跨線橋、線路脇の電柱等によって遮られることがある。在来線には曲線区間が多いので、踏切道に設けられる1基の特殊信号発光機では800m以上の確認距離を確保することができない踏切道が多くある。このような踏切道においては、800m以上の確認距離を確保するため、特殊信号発光機は、踏切道だけでなく、踏切道よりも手前側(列車にとって手前側)の線路脇にも設けられている。
【0006】
特殊信号発光機の確認距離とは、特殊信号発光機の発光が間断なく確認できる位置からその特殊信号発光機までの距離である(非特許文献1の番号1006参照)。例えば、複数の特殊信号発光機が設けられている場合、各特殊信号発光機の確認距離の合計が800m以上であっても、踏切道の手前800m以内の距離範囲に特殊信号発光機の発光を確認できない地点があれば、確認距離が800m以上であることにはならない。このため、特殊信号発光機の検査において、確認地点側の作業員は、徒歩で移動しながら数多くの確認地点で特殊信号発光機の発光を確認している。また、作業員の主観によって検査結果が左右されることを出来るだけ避けるため、特殊信号発光機の検査は慎重に行われる。このため、特殊信号発光機の従来の検査は、大変時間が掛かり、1踏切当たり約15分掛っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−182576号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JIS B 3013:2001「鉄道信号保安用語」
【非特許文献2】「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準について」(国土交通省鉄道局長通達)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するものであり、特殊信号発光機の検査において、検査結果に作業員の個人差が生じること防ぐとともに、検査に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特殊信号発光機検査装置は、鉄道における特殊信号発光機を検査するためのものであって、画像データを取得する撮像部と、前記撮像部の位置情報を取得する位置情報取得部と、特殊信号発光機の検査における各特殊信号発光機に対する複数の確認地点の位置情報が予め記憶された記憶部と、前記画像データ及び位置情報を処理する処理部とを備え、前記撮像部は、軌道に沿って移動されながら少なくとも前記確認地点で画像データを取得し、前記処理部は、前記撮像部の位置情報が前記確認地点の位置情報と一致するとき、前記撮像部がその確認地点で取得した画像データ内における特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行い、特殊信号発光機の発光が少なくとも1つ認識されるか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
この特殊信号発光機検査装置において、前記処理部の出力が表示される表示部を備え、前記記憶部は、前記各確認地点ごとの特殊信号発光機からの軌道に沿った距離がさらに記憶されており、前記処理部は、前記各確認地点について、前記記憶部に記憶された前記距離、前記判定の結果、及び前記撮像部が取得した画像データを含む情報を前記表示部に表示することが好ましい。
【0012】
この特殊信号発光機検査装置において、前記処理部は、前記表示部に表示する前記情報を前記記憶部に保存することが好ましい。
【0013】
この特殊信号発光機検査装置において、前記撮像部は、軌道に沿って移動されながら画像データを略連続的に取得し、前記処理部は、前記撮像部が取得した前記画像データ内に特殊信号発光機の発光が1つも認識されないとの判定結果が所定時間以上継続したことを検出する連続視認検査機能を有することが好ましい。
【0014】
この特殊信号発光機検査装置において、前記記憶部は、対をなす位置情報が予め記憶され、前記対をなす地点の一方は、踏切道にあり、他方は、前記踏切道から軌道に沿った距離が所定の値である地点であり、前記処理部は、前記撮像部が前記対をなす地点の間にあるとき、前記連続視認検査機能を有効にすることが好ましい。
【0015】
この特殊信号発光機検査装置において、軌陸車に搭載され、前記撮像部は、前記軌陸車の前方又は後方の画像データを取得することが好ましい。
【0016】
本発明の軌陸車は、前記の特殊信号発光機検査装置を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特殊信号発光機検査装置及び軌陸車によれば、処理部が特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行うので、検査結果に作業員の個人差が生じることが防がれるとともに、作業員が特殊信号発光機の発光を認識する時間が不要になるので、検査に要する時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る特殊信号発光機検査装置のブロック構成図。
図2】同特殊信号発光機検査装置を有する軌陸車の側面図。
図3】同特殊信号発光機検査装置を用いた特殊信号発光機の検査を説明する図。
図4】同特殊信号発光機検査装置の基本動作を説明するフローチャート。
図5】同特殊信号発光機検査装置の連続視認検査機能を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る特殊信号発光機検査装置を図1及び図2を参照して説明する。特殊信号発光機検査装置は、鉄道における特殊信号発光機を検査するための装置である。図1に示されるように、特殊信号発光機検査装置1は、撮像部2と、位置情報取得部3と、制御装置4とを有する。制御装置4は、記憶部41と、処理部42と、表示部43と、入力部44とを有する。撮像部2は、画像データを取得する。位置情報取得部3は、撮像部2の位置情報を取得する。特殊信号発光機検査装置1の位置は、撮像部2の位置で代表される。記憶部41は、特殊信号発光機の検査における確認地点の位置情報が予め記憶されている。処理部42は、画像データ及び位置情報を処理する。撮像部2は、軌道に沿って移動されながら少なくとも確認地点で画像データを取得する。処理部42は、撮像部2が取得した画像データ内における特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行い、特殊信号発光機の発光が少なくとも1つ認識されるか否かを判定する。
【0020】
特殊信号発光機検査装置1の各構成をさらに詳述する。撮像部2は、CCD又はCMOS等の撮像素子を有するカメラであり、ディジタルの画像データを出力する。本実施形態では、撮像部2は、ネットワークカメラであり、動画像すなわち所定の短い時間間隔で画像データを取得し、無線で画像データを制御装置4に伝送する。取得された画像データは、処理部42に入力される。
【0021】
位置情報取得部3は、GPS受信機を有し、GPS衛星からの電波を受信して位置情報を取得する。本実施形態では、GPS受信機で取得される位置情報の精度は、約20cmである。位置情報取得部3は、GPS受信機以外に距離・速度センサを有し、GPS衛星からの電波が建物等で遮られて受信できない場合、移動速度を検知し、移動速度を時間積分して移動距離を算出し、位置情報を更新する。位置情報取得部3によって取得された位置情報は、処理部42に入力される。
【0022】
本実施形態では、制御装置4は、ノート型パソコンである。記憶部41は、ハードディスク又は不揮発性の半導体メモリである。処理部42は、CPU等を有し、プログラムを実行することにより動作する。表示部43は、例えば、液晶ディスプレイ等の視覚表示装置であり、処理部42の出力が表示される。入力部44は、例えば、キーボード及びマウス等であり、処理部42への入力操作を受ける。タッチパネルを表示部43及び入力部44として兼用してもよい。なお、制御装置4は、ノート型パソコンに限定されず、例えば、専用のハードウェアで構成してもよい。
【0023】
図2に示されるように、特殊信号発光機検査装置1は、軌陸車5に搭載される。軌陸車とは、軌道上及び一般道路を走行できる保線作業用車である(JIS E 1001:2001「鉄道−線路用語」の番号518参照)。本実施形態では、撮像部2は、軌陸車5の車室内に設置され、軌陸車5の前方の画像データを取得する。撮像部2の撮像範囲に特殊信号発光機が含まれるように撮像部2の向きが設定される。撮像部2は、軌道からの高さが列車に乗務している運転士の目の高さ程度になるように設置されることが望ましい。なお、撮像部2を軌陸車5の後部に設置し、軌陸車5の後方の画像データを取得するように軌陸車5を構成してもよい。また、前方の画像データを取得する撮像部2と、後方の画像データを取得する撮像部2とを軌陸車5に設置し、それら2つの撮像部2の一方を選択して使用するように構成してもよい。
【0024】
軌陸車5は、例えば、踏切道まで一般道路を走行し、踏切道から軌道R上に載線される。本実施形態の軌陸車5は、荷台を有する自動車であるトラック51と、軌道走行用の台車52とを有する。台車52は、軌道走行用の車輪53を有する。軌陸車5は、一般道路を走行するときは、台車52がトラック51の荷台に載せられ、自動車として走行する。軌陸車5が軌道R上を走行するときは、軌道R上に台車52が載せられ、台車52にトラック51が載せられる。軌道走行用の車輪53(後輪)は、トラック51の車輪54(後輪)によって駆動される。
【0025】
上記のように構成された特殊信号発光機検査装置1を用いた特殊信号発光機の検査について図3乃至図5を参照して説明する。図3に示される例では、踏切道Cに特殊信号発光機S1が設けられており、列車が進来する手前側にさらに特殊信号発光機S2が設けられている。なお、実際の特殊信号発光機の検査では、検査対象の特殊信号発光機が1基でも、3基以上設けられていても、検査の方法は同様である。
【0026】
踏切道Cに作業員Wが配置される。この作業員Wは、特殊信号発光機S1、S2を発光させる。
【0027】
特殊信号発光機検査装置1が搭載された軌陸車5は、踏切道Cに向かって軌道R上を前進走行する。軌陸車5が軌道R上を走行することによって、特殊信号発光機検査装置1の撮像部2は、軌道Rに沿って移動する。撮像部2は、移動されながら、画像データを撮像する。なお、軌陸車5を踏切道Cから離れる方向に後進走行させることによって撮像部2を移動させてもよい。
【0028】
特殊信号発光機の発光を確認する確認地点Pは、特殊信号発光機の配置に応じて決められている。踏切道Cから約800m離れた地点に、踏切道Cから最遠の確認地点Pがある。最遠の確認地点Pから特殊信号発光機S2まで約5m間隔で複数の確認地点Pがある。同様に、特殊信号発光機S1に対して約5m間隔で複数の確認地点Pがある。確認地点Pの位置情報は、特殊信号発光機検査装置1の記憶部41に予め記憶されている。確認地点Pが複数ある場合、確認地点Pの位置情報は、特殊信号発光機の発光を確認する順序を考慮して記憶部41に記憶される。撮像部2は、軌道Rに沿って移動されながら動画像すなわち短い時間間隔で画像データを取得するので、確認地点Pにおいても画像データが取得される。なお、撮像部2を静止画像の画像データを取得するカメラとし、制御装置4が、確認地点Pで撮像部2に画像データを取得させるように特殊信号発光機検査装置1を構成してもよい。
【0029】
図4は、特殊信号発光機検査装置1を用いた特殊信号発光機の検査における処理部42が実行する処理を示す。この処理は、特殊信号発光機検査装置1の基本動作における処理である。
【0030】
先ず、処理部42は、記憶部41から最初の確認地点の位置情報を読み出す(ステップS101)。次に、処理部42は、位置情報取得部3から撮像部2の位置情報を取得する(ステップS102)。処理部42は、撮像部2の位置情報と確認地点の位置情報を比較する(ステップS103)。撮像部2の位置情報が確認地点の位置情報と一致しないとき(ステップS103でNO)、処理部42は、位置情報取得部3から撮像部2の位置情報を取得する(ステップS102に戻る)。
【0031】
撮像部2の位置情報が確認地点の位置情報と一致するとき(ステップS103でYES)、処理部42は、撮像部2が取得した画像データ内における特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行う(ステップS104)。処理部42が行う画像処理は、例えば、パターンマッチングである。特殊信号発光機検査装置1が特殊信号発光機の発光を認識する感度は、運転士が特殊信号発光機の発光を視認する感度と同等に設定されている。処理部42は、この画像処理によって、特殊信号発光機の発光が少なくとも1つ認識されるか判定する(ステップS105)。撮像部2が取得した画像データ内に特殊信号発光機の発光が少なくとも1つ認識された場合(ステップS105でYES)、当該確認地点における判定の結果は合格である(ステップS106)。撮像部2が取得した画像データ内に特殊信号発光機の発光が1つも認識されない場合(ステップS105でNO)、当該確認地点における判定の結果は不合格である(ステップS107)。
【0032】
各確認地点Pごとの特殊信号発光機からの軌道に沿った距離Dが、予め記憶部41に記憶されている(図3参照)。処理部42は、当該確認地点における、特殊信号発光機からの軌道に沿った距離D、判定の結果、撮像部2が取得した画像データを表示部43に表示する(図1参照)。処理部42は、これら表示部43に表示する情報を記憶部41に保存する。
【0033】
当該確認地点が検査における最後の確認地点でなければ(図4のステップS109でNO)、処理部42は、記憶部41から次の確認地点の位置情報を読み出す(ステップS101に戻る)。当該確認地点が検査における最後の確認地点であれば(ステップS109でYES)、処理部42は、処理を終了する。
【0034】
特殊信号発光機検査装置1を用いた特殊信号発光機の検査において、確認地点は、例えば、既存の検査結果との一貫性を確保するため、特殊信号発光機検査装置1を用いない従来の検査における確認地点と同じとされる。確認地点の間隔が5m程度と短いので、踏切道の手前800m以内の距離範囲における全ての確認地点で判定の結果が合格(ステップS106)であれば、その距離範囲に特殊信号発光機の発光を認識できない地点は無いと考えられ、検査対象の踏切道について、検査結果は合格となる。
【0035】
なお、特殊信号発光機検査装置1を用いるによって、特殊信号発光機の発光が認識されるときの特殊信号発光機からの軌道に沿った距離Dの最大値、すなわち見通し距離が測定できる。このため、特殊信号発光機検査装置1は、「特殊信号発光機見通し測定器」とも呼ばれる。
【0036】
本実施形態の特殊信号発光機検査装置1を搭載した軌陸車5は、検査中、20km/h程度の速度で軌道上を走行する。特殊信号発光機検査装置1を用いた場合、検査に要する時間は、1箇所の踏切道当たり約3分であり、従来の検査方法と比べて約1/5の時間に短縮される。
【0037】
しかしながら、確認地点の間隔が短いといえども、確認地点が離散的であるので、踏切道の手前800m以内の距離範囲における既定の確認地点以外で特殊信号発光機の発光を認識できない地点が存在する可能性が全く無いとは言い切れない。沿線の樹木や建物等の沿線環境の変化等によって確認地点以外で特殊信号発光機の発光を認識できない地点が生じることは、極めて稀と考えられるが、理論的にはあり得ることである。
【0038】
そこで、本実施形態の特殊信号発光機検査装置1は、連続視認検査機能を有する。連続視認検査機能は、軌道に沿って移動中に使用される。
【0039】
撮像部2は、軌道に沿って移動されながら画像データを略連続的に取得する。例えば、特殊信号発光機検査装置1を搭載した軌陸車5を20km/hで走行させ、撮像部2が画像データとして1秒に30コマ(30fps)の動画像を取得する場合、画像データを取得する間隔は、(20×1000/3600)×(1/30)≒0.19[m]であり、略連続的(実質的に連続的)である。
【0040】
図5に示されるように、連続視認検査機能が使用されるとき(ステップS201でYES)、処理部42は、撮像部2が取得した画像データ内における特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行う(ステップS202)。この画像処理は、リアルタイム処理である。
【0041】
処理部42は、画像データ内に特殊信号発光機の発光が1つも認識されない時間が所定時間以上継続した時(ステップS203でYES)、特殊信号発光機検査装置1に警報を出力させる。その所定時間は、運転士が特殊信号発光機の発光が消失したと認識する時間に基づき、営業運転における列車速度と検査における移動速度の相違による補正をして設定される。警報は、表示部43への表示やブザー音等である。
【0042】
処理部42は、画像データ内に特殊信号発光機の発光が1つも認識されない時間が所定時間以上継続した時、すなわち、特殊信号発光機の発光が消失したと判定された時点から前後10個の画像データを記憶部に保存する。保存される画像データは、異常を示す目印及び日付時刻が表示される。なお、保存する画像データの数の設定は、前後10個に限定されない。
【0043】
このような連続視認検査機能の使用開始及び使用終了は、入力部44の操作を受けて行われるか、自動的に行われる。本実施形態では、連続視認検査機能の使用開始及び使用終了を自動的に行うために、記憶部41は、対をなす位置情報が予め記憶される。その対をなす地点の一方は、踏切道にあり、他方は、その踏切道から軌道に沿った距離が所定の値である地点である。この所定の値は、ちょうど800mとしてもよく、余裕を加えてもよい。処理部42は、撮像部2がその対をなす地点の間にあるとき、連続視認検査機能を有効にする。
【0044】
以上、本実施形態に係る特殊信号発光機検査装置1を特殊信号発光機の検査に用いることにより、処理部42が特殊信号発光機の発光を認識する画像処理を行うので、検査結果に作業員の個人差が生じることが防がれるとともに、作業員が特殊信号発光機の発光を認識する時間が不要になるので、検査に要する時間が短縮される。
【0045】
処理部42は、各確認地点について、特殊信号発光機からの軌道に沿った距離、特殊信号発光機の発光についての判定の結果、及び撮像部2が取得した画像データを含む情報を表示部43に表示するので、作業員は、検査の途中結果及び最終結果を容易に知ることができる。また、確認地点の位置として、特殊信号発光機からの軌道に沿った距離が表示されるので、作業員にとって、緯度経度等よりも分かり易い。
【0046】
処理部42は、表示部に表示する情報を記憶部に保存するので、作業員は、手作業で情報を記録する手間を省くことができるとともに、検査実施後にその情報を分析等に利用することができる。
【0047】
特殊信号発光機検査装置1は、撮像部2が略連続的に取得した画像データ内に特殊信号発光機の発光が1つも認識されないとの判定結果が所定時間以上継続したことを検出する連続視認検査機能を有するので、既定の確認地点以外で特殊信号発光機の発光を認識できない地点があっても、それを検出することができる。
【0048】
処理部42は、予め記憶部41に記憶された対をなす地点の間に撮像部2があるとき、連続視認検査機能を有効にするので、連続視認検査機能の使用を自動的に開始及び終了することができる。
【0049】
特殊信号発光機検査装置1は、軌陸車5に搭載されるので、軌陸車5の一般道路上の走行によって踏切道まで運ばれ、踏切道からの軌陸車5の載線によって軌道上を移動することができる。また、撮像部2は、軌陸車5の車室内に設置することにより、軌道からの高さが列車に乗務している運転士の目の高さ程度になるように設置することが容易である。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、特殊信号発光機検査装置1は、軌陸車5への搭載に限定されず、軌道自動自転車(例えば、特開2006−312417号公報参照)等に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 特殊信号発光機検査装置
2 撮像部
3 位置情報取得部
41 記憶部
42 処理部
43 表示部
5 軌陸車
C 踏切道
P 確認地点
R 軌道
S1、S2 特殊信号発光機
図1
図2
図3
図4
図5