(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部分の前記延在方向における中心の位置を前記延在方向において前記回転中心の位置に合わせる位置合わせ機構を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンター。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の側面側から観察した概略構成図である。なお、
図1においては、床90に対して各部材を支持する枠体を省略して描いている。
【0028】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、媒体としての布80が円筒状に巻き取られて形成されているロール81から布80を繰り出して印刷を実行し、印刷が実行された布80を再び円筒状に巻き取ってロール82を生成する装置である。例えば、布80の材質は、伸縮性のある柔らかい材質である。
【0029】
インクジェットプリンター10は、インクジェットプリンター10全体の動作を制御する図示していない制御部を備えている。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0030】
インクジェットプリンター10は、布80にインクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットヘッド20を備えている。インクジェットヘッド20によって吐出されるインクは、染料または顔料の水性捺染インクである。布80のうちインクジェットヘッド20に対向している部分は、矢印10aで示す鉛直方向に直交する矢印10bで示す副走査方向に搬送される。インクジェットヘッド20は、鉛直方向と、副走査方向との両方に直交する主走査方向に移動することによって、主走査方向の印刷を実行する。
【0031】
インクジェットプリンター10は、布80を挟んでインクジェットヘッド20に対向する位置に減圧手段としての吸引ファン31を備えている。吸引ファン31は、空気を吸引するための多数の吸引孔31aがインクジェットヘッド20側に形成されている。吸引ファン31は、多数の吸引孔31aから吸入した空気を、矢印31bで示すように、インクジェットヘッド20側とは反対側に排出する装置である。インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって印刷のために吐出されたインクを吸引ファン31によって吸引するので、布80へのインクの着弾の乱れを低減することができる。また、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって印刷のために吐出されたインクを吸引ファン31によって吸引するので、布80がタオル地などの毛足の長い布である場合に、布80の内部までインクを引き込んで印刷の品質を向上することができる。また、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によるインクの吐出の際に発生する不要なインクミストを吸引ファン31によって吸引するので、インクジェットプリンター10の内部にインクミストが付着して汚れてしまうことを防止することができる。
【0032】
インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって布80に付着させられたインクの滲みを抑えるためのプリ乾燥ヒーター32を、布80の矢印80aで示す搬送方向においてインクジェットヘッド20の下流に備えている。また、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって布80に付着させられたインクを乾燥させるためのアフター乾燥ヒーター33および34を、布80の搬送方向においてプリ乾燥ヒーター32の下流に備えている。
【0033】
インクジェットプリンター10は、ロール81から布80を繰り出す繰り出しローラー41と、布80を巻き取ってロール82を生成する巻き取りローラー42とを備えている。繰り出しローラー41および巻き取りローラー42は、副走査方向に互いに離れて配置されている。繰り出しローラー41および巻き取りローラー42のそれぞれは、主走査方向に延在している。また、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42のそれぞれは、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されている。
【0034】
繰り出しローラー41および巻き取りローラー42は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42の少なくとも一方が布80を巻き取る回転方向に駆動させられることによって、布80に張力を付与する。すなわち、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42は、布80に張力を付与する張力付与機構を構成している。
【0035】
インクジェットプリンター10は、布80を搬送する搬送機構50を備えている。
【0036】
搬送機構50は、布80を搬送する搬送部材として、円柱形のドラム51およびドラム52を備えている。ドラム51およびドラム52のそれぞれは、主走査方向に延在している。また、ドラム51およびドラム52のそれぞれは、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されている。ドラム51およびドラム52は、同一の構成である。
【0037】
搬送機構50は、ドラム51に布80を押し付ける押し付け部材53を、布80を挟んでドラム51に対向する位置に備えている。押し付け部材53は、主走査方向に延在している。押し付け部材53は、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。押し付け部材53は、ゴム製であったり、表面の状態が起毛状であったりして、表面に柔軟性を有している。そして、押し付け部材53は、表面の柔軟性によってドラム51に布80を適度な強さで押し付けることができる。
【0038】
搬送機構50は、ドラム52を回転させる図示していない駆動モーターを備えている。すなわち、ドラム52は、駆動モーターによって回転させられる駆動側のドラムである。一方、ドラム51は、布80の搬送に伴って布80との間の摩擦力によって回転させられる従動側のドラムである。
【0039】
図2は、ドラム52の側面断面図である。
【0040】
図2に示すように、ドラム52は、基材ドラム52aと、基材ドラム52aに溶射による表面処理が施されて形成された溶射粗面層52bとを備えている。
【0041】
基材ドラム52aは、例えば、SUS(ステンレス鋼)などの合金で形成されていても良いし、アルミニウム、鉄などの金属で形成されていても良いし、プラスチックで形成されていても良い。特に、基材ドラム52aは、アルミニウムで形成されていることが好ましい。
【0042】
溶射粗面層52bは、例えば、SUS、タングステンカーバイド、アモルファス合金、ニクロム、ハステロイC、チタニアなどの合金で形成されていても良いし、アルミナなどのセラミックスで形成されていても良いし、ニッケル、モリブデン、タングステンなどの金属で形成されていても良い。特に、溶射粗面層52bは、SUSで形成されていることが好ましい。
【0043】
ドラム52は、布80(
図1参照。)と接触する媒体接触面として、布80を保持する媒体保持面52cが溶射粗面層52bによって形成されている。ドラム52は、媒体保持面52cによって布80を保持した状態で媒体保持面52cが移動させられることによって布80を搬送する部材である。ドラム52は、媒体保持面52cが側面である円柱形である。
【0044】
図1に示すように、ドラム52は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42によって布80に付与された張力によって布80が媒体保持面52cに押し付けられる位置に配置されている。同様に、ドラム51は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42によって布80に付与された張力によって布80がドラム51の媒体保持面に押し付けられる位置に配置されている。
【0045】
インクジェットプリンター10は、ドラム52の媒体保持面52cの汚れを洗浄する媒体保持面洗浄機構61を備えている。媒体保持面洗浄機構61は、洗浄剤が貯留されているケース61aと、ケース61aに一部が収納されているローラー状の毛ブラシ61bと、毛ブラシ61bを回転させる図示していない駆動モーターとを備えている。毛ブラシ61bは、主走査方向に延在している。また、毛ブラシ61bは、主走査方向に延在している中心軸61cを中心として回転可能に支持されている。媒体保持面洗浄機構61は、媒体保持面52cの汚れを洗浄する場合、ドラム52の媒体保持面52cに毛ブラシ61bが接触する状態まで図示していない移動機構によって移動させられた後、毛ブラシ61bが駆動モーターによって中心軸61cを中心として回転させられることによって媒体保持面52cの汚れを洗浄する。インクジェットプリンター10の制御部は、媒体保持面洗浄機構61による媒体保持面52cの洗浄を定期的に実行することができる。また、インクジェットプリンター10の利用者は、ドラム52の媒体保持面52cの汚れの状況を判断して、媒体保持面洗浄機構61による媒体保持面52cの洗浄を、図示していない操作部を介して制御部に指示することができる。
【0046】
インクジェットプリンター10は、布80の搬送方向を屈曲させる方向屈曲部材62を、布80の搬送方向においてアフター乾燥ヒーター33および34の下流に備えている。方向屈曲部材62は、主走査方向に延在している。方向屈曲部材62は、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。
【0047】
インクジェットプリンター10は、主走査方向における布80の中心を調整するためのセンター調整機構70を、布80の搬送方向においてドラム51の上流に備えている。センター調整機構70は、布80の蛇行を自動的に修正する蛇行修正機構71と、布80のうち後述する媒体支持部71cによって支持されている部分の主走査方向における中心の位置を、主走査方向において、蛇行修正機構71の後述する回転中心71eの位置に合わせる位置合わせ機構72とを備えている。
【0048】
図3は、蛇行修正機構71の概略構成図である。なお、
図3においては、位置合わせ機構72(
図1参照。)を省略して描いている。
【0049】
図3に示すように、蛇行修正機構71は、架台71aと、架台71aを矢印10cで示す主走査方向に移動可能に支持するスライド軸71bと、搬送機構50(
図1参照。)によって搬送されている布80を支持する媒体支持部71cと、架台71aに支持されていて媒体支持部71cを揺動可能に支持する揺動支持部71dとを備えている。媒体支持部71cは、布80のうち媒体支持部71c自身が支持している部分が搬送機構50による布80の搬送中に移動する方向と直交する方向、すなわち、主走査方向に延在している。媒体支持部71cは、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。揺動支持部71dによる媒体支持部71cの揺動の回転中心71e(
図1参照。)は、媒体支持部71cの延在方向と直交する方向、例えば、矢印10b(
図1参照。)で示す副走査方向に延在している。
【0050】
図4は、位置合わせ機構72の概略構成図である。なお、
図4においては、蛇行修正機構71(
図3参照。)を省略して描いている。
【0051】
図4に示すように、位置合わせ機構72は、蛇行修正機構71と兼用の架台71aおよびスライド軸71bと、架台71aに支持されていて布80を両側から支持する一対の布支持板72aおよび72bと、布支持板72aおよび72bを連結する一対のケーブル72cおよび72dと、架台71aに支持されていてケーブル72cおよび72dをそれぞれ屈曲させるための軸72eおよび72fとを備えている。布支持板72aおよび72bは、それぞれ、矢印10cで示す主走査方向に移動可能に架台71aに支持されている。ケーブル72cは、布支持板72aのうち布支持板72b側とは反対側の端と、布支持板72bのうち布支持板72a側の端とを連結している。ケーブル72dは、布支持板72aのうち布支持板72b側の端と、布支持板72bのうち布支持板72a側とは反対側の端とを連結している。すなわち、位置合わせ機構72の構造は、布支持板72aおよび72bの一方が架台71aに対して主走査方向に移動させられると、その移動の方向とは反対方向に布支持板72aおよび72bの他方も移動する対称構造である。
【0052】
位置合わせ機構72は、布支持板72aと、布支持板72bとの間の空間の中央が主走査方向において蛇行修正機構71の回転中心71eの位置に配置されているので、布80のうち媒体支持部71cによって支持されている部分の主走査方向における中心の位置を、主走査方向において、蛇行修正機構71の回転中心71eの位置に合わせることができる。インクジェットプリンター10の利用者は、布支持板72aおよび布支持板72bがそれぞれ布80の一端および他端に接触するように布支持板72aおよび布支持板72bを主走査方向において移動させた後、布支持板72aおよび布支持板72bの位置を固定することによって、布80のうち媒体支持部71cによって支持されている部分の主走査方向における中心の位置を、主走査方向において、蛇行修正機構71の回転中心71eの位置に合わせることができる。
【0053】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0054】
インクジェットプリンター10の制御部は、図示していないPC(Personal Computer)などのコンピューターから印刷データが送信されてくると、送信されてきた印刷データに基づいた画像をインクによって布80に印刷する。具体的には、制御部は、布80に対してインクジェットヘッド20を主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、インクジェットヘッド20によって布80にインクを吐出させる。ここで、制御部は、布80に対する主走査方向におけるインクジェットヘッド20の相対位置を変更する場合には、インクジェットヘッド20を駆動することによって、布80に対してインクジェットヘッド20を主走査方向に移動させる。また、制御部は、布80に対する副走査方向におけるインクジェットヘッド20の相対位置を変更する場合には、搬送機構50を駆動することによって、インクジェットヘッド20に対して布80を副走査方向に移動させる。
【0055】
搬送機構50による布80の搬送について詳細に説明する。制御部は、ドラム52を回転させる図示していない駆動モーターを駆動することによってドラム52を回転させる。ここで、ドラム52は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42によって布80に付与された張力によって布80が媒体保持面52cに押し付けられている。したがって、ドラム52の媒体保持面52cに押し付けられている布80は、ドラム52の回転に伴って、矢印80aで示す搬送方向に搬送させられる。また、ドラム51は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42によって布80に付与された張力と、押し付け部材53とによって布80がドラム51の媒体保持面に押し付けられている。したがって、ドラム51は、ドラム51の媒体保持面に押し付けられている布80の搬送方向へのドラム52による搬送に伴って、回転させられる。なお、制御部は、搬送機構50による布80の搬送に合わせて、繰り出しローラー41によって布80を繰り出し、巻き取りローラー42によって布80を巻き取る。
【0056】
蛇行修正機構71による布80の蛇行の修正について説明する。ここで、インクジェットプリンター10の利用者は、搬送機構50による布80の搬送の開始前に、上述したように、布80のうち媒体支持部71cによって支持されている部分の主走査方向における中心の位置を、主走査方向において、蛇行修正機構71の回転中心71eの位置に位置合わせ機構72によって合わせる。そして、搬送機構50による布80の搬送が開始されて蛇行修正機構71の媒体支持部71cの近傍で布80が蛇行すると、布80のうち媒体支持部71cに接触している部分の主走査方向における両側で、矢印80aで示す搬送方向における張力の大きさが異なってしまう。そのため、媒体支持部71cは、例えば、
図5に示すように、布80の主走査方向における両側の張力の差によって傾く。媒体支持部71cが傾くと、布80のうち媒体支持部71cに接触している部分の主走査方向における両側で、搬送方向における搬送経路の長さに差が生じる。具体的には、布80のうち媒体支持部71cに接触している部分の主走査方向における両側で、搬送方向における張力の大きさが近付くように、搬送経路の長さに差が生じる。そのため、布80のうち媒体支持部71cに接触している部分の主走査方向における両側で、搬送方向における張力の大きさの差が軽減される。それによって、媒体支持部71cも傾きが軽減される。したがって、布80のうち媒体支持部71cに接触している部分の主走査方向における両側で、搬送方向における張力の大きさの差が徐々に無くなり、媒体支持部71cも
図3に示す状態に復帰する。媒体支持部71cが
図3に示す状態に復帰するということは、布80の蛇行が修正されたということである。すなわち、蛇行修正機構71は、以上に説明した動作によって、布80の蛇行を自動的に修正する。
【0057】
以上に説明したように、ドラム52は、溶射による表面処理が施されることによって媒体保持面52cに鑢状の多数の凹凸が形成されているので、媒体保持面52cの摩擦係数が大きい。ドラム52は、媒体保持面52cに形成された鑢状の多数の凹凸のうちの多数の鋭い凸部に布80を引っかけることによって布80を保持するので、布80を保持する保持力を長時間一定の大きさに維持することができる。したがって、ドラム52は、布80の搬送量の精度を従来より容易に維持することができる。なお、ドラム52について説明したが、ドラム51についても同様である。
【0058】
インクジェットプリンター10は、ドラム51および52によって布80を保持する保持力を長時間一定の大きさに維持することができるので、搬送機構50による布80の搬送量の精度を従来より容易に維持することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって布80に印刷された画像の品質を向上することができる。
【0059】
インクジェットプリンター10は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42によって布80に付与された張力によって布80がドラム52の媒体保持面52cに押し付けられるので、布80に対してドラム52の媒体保持面52cの反対側から布80を媒体保持面52cに押し付けるための機構を備えなくても良い。したがって、インクジェットプリンター10は、構成を簡略化することができる。なお、インクジェットプリンター10は、繰り出しローラー41および巻き取りローラー42によって布80に付与された張力によって布80がドラム51の媒体保持面に押し付けられるので、ドラム51に布80を押し付ける押し付け部材53を備えなくても良い。
【0060】
インクジェットプリンター10は、ドラム51および52の内周側から外周側に貫通する多数の貫通孔がドラム51および52に形成されていて、ドラム51および52の内周側の空間を減圧する吸引ファンなどの減圧手段を備えていれば、ドラム51および52の内周側の空間が減圧手段によって減圧されることによって、ドラム51および52に貫通孔の箇所で布80を吸い付けることができる。
【0061】
インクジェットプリンター10は、ドラム51および52に布80を押し付けたり、ドラム51および52に布80を吸い付けたりすることで、ドラム51および52と、布80とを密着させる。インクジェットプリンター10は、ドラム51および52と、布80との密着によって、ドラム51および52と、布80との間に十分な摩擦力を発生させ、ドラム51および52によって布80を適切に搬送することができる。なお、ドラム51および52と、布80との間に十分な摩擦力を発生させるためには、ドラム51および52に対する布80の巻き付け距離を伸ばすことによって、ドラム51および52と、布80との接触面積を増加させることも好ましい。
【0062】
インクジェットプリンター10は、布80の搬送中に蛇行修正機構71によって布80の蛇行を自動的に修正するので、布80の搬送中に布80が蛇行することや布80に皺が発生することを抑えることができる。したがって、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって布80に印刷された画像の品質を向上することができる。また、インクジェットプリンター10は、布80の搬送中に布80が蛇行することや布80に皺が発生することを抑えることができるので、巻き取りローラー42によって布80を緩みのなく安定的に巻き取ることができるとともに、巻き取りローラー42によって生成されるロール82において、主走査方向における両端面に生じる凹凸を低減することができる。
【0063】
インクジェットプリンター10は、布80のうち媒体支持部71cによって支持されている部分の主走査方向における中心の位置を、主走査方向において、揺動支持部71dによる媒体支持部71cの揺動の回転中心71eの位置に位置合わせ機構72によって容易に合わせることができるので、蛇行修正機構71による布80の蛇行の修正の精度を容易に向上させることができる。
【0064】
なお、インクジェットプリンター10は、蛇行修正機構71および位置合わせ機構72が架台71aを兼用している。しかしながら、位置合わせ機構72は、蛇行修正機構71の架台71aとは独立して主走査方向に移動可能に支持されている架台を、架台71aに代えて備えていても良い。蛇行修正機構71の架台71aと、位置合わせ機構72の架台とが別々の部材である場合であっても、インクジェットプリンター10の利用者は、例えば、蛇行修正機構71の架台71aに設けられている目印と、位置合わせ機構72の架台に設けられている目印との主走査方向における位置を合わせることによって、布80のうち媒体支持部71cによって支持されている部分の主走査方向における中心の位置を、主走査方向において、蛇行修正機構71の回転中心71eの位置に合わせることができる。
【0065】
インクジェットプリンター10は、ドラム52の媒体保持面52cによる布80の保持力を低下させる汚れを媒体保持面洗浄機構61によって媒体保持面52cから除去することができるので、搬送機構50による布80の搬送量の精度を維持することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって布80に印刷された画像の品質を維持することができる。
【0066】
なお、インクジェットプリンター10は、ドラム52が駆動側であって、ドラム51が従動側である。しかしながら、インクジェットプリンター10は、ドラム51が駆動側であって、ドラム52が従動側であっても良い。例えば、布80の材質が硬い材質である場合には、インクジェットプリンター10は、ドラム51が駆動側であっても良い。インクジェットプリンター10は、布80の蛇行の修正という観点では、繰り出しローラー41の近傍における主走査方向への布80の位置のずれの量が同一であっても、繰り出しローラー41から駆動側のドラムまでの布80の搬送の距離が長い方が、駆動側のドラムの近傍における主走査方向への布80の位置の修正の量が少なくて済むので、ドラム52が駆動側である方が好ましい。
【0067】
インクジェットプリンター10は、駆動側のドラム52だけでなく、従動側のドラム51も媒体保持面が溶射粗面層によって形成されている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、従動側のドラムについては媒体保持面が溶射粗面層によって形成されていなくても良い。
【0068】
インクジェットプリンター10は、インクの滲みを抑える前処理剤が塗布されている布80にインクジェットヘッド20によってインクが付着させられる場合や、布80の材質がインクが滲み難い材質である場合には、プリ乾燥ヒーター32を備えていなくても良い。
【0069】
インクジェットプリンター10は、プリ乾燥ヒーター32を備えていない場合、ドラム51と、ドラム52との間でプリ乾燥ヒーター32に代わって布80を支持する
図6に示すような支持部材35を備えていると良い。支持部材35は、矢印10bで示す副走査方向に延在している複数の凸部35aを布80側に備えている。複数の凸部35aは、矢印10cで示す主走査方向に並んで配置されている。支持部材35は、凸部35aで布80に接触することによって、平面で布80に接触する場合と比較して、布80との間に生じる摩擦力を抑えることができる。
【0070】
なお、インクジェットプリンター10は、吸引ファン31を備えていない場合にも、プリ乾燥ヒーター32を備えていない場合と同様に、ドラム51と、ドラム52との間で吸引ファン31に代わって布80を支持する支持部材を備えていると良い。
【0071】
インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって水性捺染インクを吐出するようになっている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、水性捺染インク以外のインクをインクジェットヘッド20によって吐出するようになっていても良い。例えば、インクジェットプリンター10は、紫外線が照射されることによって硬化する水溶性UV捺染染料インクをインクジェットヘッド20によって吐出するようになっていても良い。例えば、水溶性UV捺染染料インクとしては、助剤や媒染剤が混入されているインクが使用されても良い。なお、助剤や媒染剤は、紫外線が照射されることによって硬化する水溶性UV硬化前処理インクとして、水溶性UV捺染染料インクとは別に吐出されても良い。インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド20によって水溶性UV捺染染料インクを吐出するようになっている場合、インクジェットヘッド20によって布80上に吐出された水溶性UV捺染染料インクを硬化させるために、LED(Light Emitting Diode)などのUV照射器を備えている必要がある。
【0072】
以上においては、ドラム52として、布80と接触する媒体接触面の全部が媒体保持面52cであるドラムについて説明している。しかしながら、媒体保持面52cは、
図7に示すように、媒体接触面の全部でなくても良い。ドラム51についても同様である。
【0073】
図7は、ドラム52の外観斜視図の一例である。
【0074】
図7に示すように、ドラム52は、布80(
図1参照。)と接触する媒体接触面52dが形成されている。ここで、媒体保持面52cは、媒体接触面52dの全部ではなく、一部である。ドラム52は、媒体接触面52dにおける媒体保持面52cの面積の比率が調整されることによって、布80を保持する保持力が調整されることができる。
【0075】
以上においては、布80を搬送する搬送部材として円柱形のドラムについて説明している。しかしながら、搬送部材は、溶射粗面層を備えていれば、ドラム以外の構成であっても良い。例えば、搬送部材は、表面に溶射粗面層を備えているベルトであっても良いし、表面に溶射粗面層を備えていて布80の搬送方向に移動させられる板であっても良い。
【0076】
(第2の実施の形態)
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成のうち、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10(
図1参照。)の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図8は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター110の側面側から観察した概略構成図である。なお、
図8においては、床90に対して各部材を支持する枠体を省略して描いている。
【0078】
図8に示すように、インクジェットプリンター110は、布80に水溶性UV捺染染料インクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットヘッド120を備えている。インクジェットヘッド120は、布80に塗布された水溶性UV捺染染料インクを仮硬化させるためのUV照射器を備えている。
【0079】
インクジェットプリンター110は、インクジェットヘッド120によって布80に吐出された水溶性UV捺染染料インクの溶媒を蒸発させるためのプリントヒーター131を、布80を挟んでインクジェットヘッド120に対向する位置に備えている。
【0080】
インクジェットプリンター110は、布80に塗布された水溶性UV捺染染料インクを本硬化させるためのUV照射器132を、布80の矢印80aで示す搬送方向においてインクジェットヘッド120の下流に備えている。
【0081】
インクジェットプリンター110は、矢印10aで示す鉛直方向の下方向に自身の重量によって一定の張力を布80に付与する張力付与機構としての張力付与部材140を、布80の搬送経路において繰り出しローラー41と、センター調整機構70との間に備えている。張力付与部材140は、主走査方向に延在している。張力付与部材140は、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。
【0082】
インクジェットプリンター110は、布80の搬送方向を屈曲させる方向屈曲部材161を、布80の搬送経路においてドラム51と、センター調整機構70との間に備えている。また、インクジェットプリンター110は、布80の搬送方向を屈曲させる方向屈曲部材162を、布80の搬送経路において繰り出しローラー41と、張力付与部材140との間に備えている。また、インクジェットプリンター110は、方向屈曲部材162に布80を押し付ける押し付け部材163を、布80を挟んで方向屈曲部材162に対向する位置に備えている。方向屈曲部材161、方向屈曲部材162および押し付け部材163は、それぞれ、主走査方向に延在している。方向屈曲部材161、方向屈曲部材162および押し付け部材163は、それぞれ、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。押し付け部材163は、ゴム製であったり、表面の状態が起毛状であったりして、表面に柔軟性を有している。そして、押し付け部材163は、表面の柔軟性によって方向屈曲部材162に布80を適度な強さで押し付けることができる。
【0083】
(第3の実施の形態)
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成のうち、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10(
図1参照。)の構成、または、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンター110(
図8参照。)の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
図9は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター210の側面側から観察した概略構成図である。なお、
図9においては、床90に対して各部材を支持する枠体を省略して描いている。
【0085】
図9に示すように、インクジェットプリンター210は、インクジェットヘッド20によって布80に付着させられたインクの滲みを抑えるためのプリ乾燥ヒーター231を、布80の矢印80aで示す搬送方向においてインクジェットヘッド20の下流に備えている。なお、プリ乾燥ヒーター231は、後述のドラム252の内部に収納されている。
【0086】
インクジェットプリンター210は、布80を搬送する搬送機構250を備えている。
【0087】
搬送機構250は、円柱形のドラム251およびドラム252を備えている。ドラム251およびドラム252のそれぞれは、主走査方向に延在している。また、ドラム251およびドラム252のそれぞれは、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されている。ドラム251およびドラム252は、同一の構成である。
【0088】
搬送機構250は、ドラム251およびドラム252に掛けられたベルト253を、布80を搬送する搬送部材として備えている。ベルト253は、ドラム52(
図2参照。)と同様に、基材と、基材に溶射によって表面処理が施されて形成された溶射粗面層とを備えている。ベルト253の基材は、ドラム52の基材ドラム52a(
図2参照。)と同様の材質によって形成されていても良いし、硬い布によって形成されていても良い。ベルト253は、布80と接触する媒体接触面の少なくとも一部に、布80を保持する媒体保持面が溶射粗面層によって形成されている。
【0089】
搬送機構250は、ベルト253のうちドラム251によって支持されている部分に布80を押し付ける押し付け部材254を、布80およびベルト253を挟んでドラム251に対向する位置に備えている。押し付け部材254は、主走査方向に延在している。押し付け部材254は、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。押し付け部材254は、ゴム製であったり、表面の状態が起毛状であったりして、表面に柔軟性を有している。そして、押し付け部材254は、表面の柔軟性によってベルト253に布80を適度な強さで押し付けることができる。
【0090】
搬送機構250は、ドラム251または252を回転させる図示していない駆動モーターを備えている。
【0091】
インクジェットプリンター210は、ベルト253によって布80を支持することができるので、布80の搬送経路においてドラム251と、ドラム252との間に布80の支持機構を備える必要がない。
【0092】
(第4の実施の形態)
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成のうち、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10(
図1参照。)の構成、または、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンター110(
図8参照。)の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0093】
図10は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター310の側面側から観察した概略構成図である。なお、
図10においては、床90に対して各部材を支持する枠体を省略して描いている。
【0094】
図10に示すように、インクジェットプリンター310は、布80に水溶性UV硬化前処理インクを吐出するインクジェットヘッド321と、布80に水溶性UV捺染染料インクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットヘッド322とを備えている。インクジェットヘッド321は、布80に塗布された水溶性UV硬化前処理インクを仮硬化させるためのUV照射器を備えている。インクジェットヘッド322は、布80に塗布された水溶性UV捺染染料インクを仮硬化させるためのUV照射器を備えている。インクジェットヘッド322は、布80の矢印80aで示す搬送方向においてインクジェットヘッド321の下流に配置されている。
【0095】
インクジェットプリンター310は、布80に塗布された水溶性UV硬化前処理インクおよび水溶性UV捺染染料インクを仮硬化させるためのUV照射器331と、布80に塗布された水溶性UV硬化前処理インクおよび水溶性UV捺染染料インクを本硬化させるためのUV照射器332とを、布80の矢印80aで示す搬送方向においてインクジェットヘッド322の下流に備えている。UV照射器332は、布80の搬送方向においてUV照射器331の下流に配置されている。
【0096】
ここで、本硬化は、仮硬化よりも強い紫外線が必要である。したがって、UV照射器332は、強い紫外線を照射する装置である。そのため、UV照射器332は、照射した紫外線がインクジェットヘッド321およびインクジェットヘッド322のそれぞれのノズル面に届き難いように、インクジェットヘッド321およびインクジェットヘッド322から離れた位置に配置されていることが好ましい。
【0097】
なお、インクジェットプリンター310は、インクジェットヘッド321およびインクジェットヘッド322がそれぞれUV照射器を備えている場合には、UV照射器331を備えていなくても良い。一方、インクジェットプリンター310は、UV照射器331を備えている場合には、インクジェットヘッド321およびインクジェットヘッド322がUV照射器を備えていなくても良い。
【0098】
インクジェットプリンター310は、布80を搬送する搬送機構350を備えている。
【0099】
搬送機構350は、布80を搬送する搬送部材としてドラム52と、ドラム52を回転させる図示していない駆動モーターとを備えている。
【0100】
インクジェットプリンター310は、布80の搬送方向を屈曲させる方向屈曲部材361を、布80の搬送経路においてセンター調整機構70と、張力付与部材140との間に備えている。また、インクジェットプリンター310は、布80の搬送方向を屈曲させる方向屈曲部材362を、布80の搬送経路において張力付与部材140と、方向屈曲部材361との間に備えている。また、インクジェットプリンター310は、布80の搬送方向を屈曲させる方向屈曲部材363を、布80の搬送経路において張力付与部材140と、方向屈曲部材162との間に備えている。また、インクジェットプリンター310は、方向屈曲部材362に布80を押し付ける押し付け部材364を、布80を挟んで方向屈曲部材362に対向する位置に備えている。方向屈曲部材361、方向屈曲部材362、方向屈曲部材363および押し付け部材364は、それぞれ、主走査方向に延在している。方向屈曲部材361、方向屈曲部材362、方向屈曲部材363および押し付け部材364は、それぞれ、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。押し付け部材364は、ゴム製であったり、表面の状態が起毛状であったりして、表面に柔軟性を有している。そして、押し付け部材364は、表面の柔軟性によって方向屈曲部材362に布80を適度な強さで押し付けることができる。
【0101】
以下、ドラム52に対するインクジェットヘッド322の配置について説明する。
【0102】
図11は、ドラム52に対するインクジェットヘッド322の配置を示す図である。
【0103】
図11に示すように、インクジェットヘッド322は、矢印322aで示すインクの吐出方向においてドラム52の媒体保持面52cと最も近い図示していない最近ノズルと、矢印322aで示す吐出方向において媒体保持面52cと最も遠い図示していない最遠ノズルとを含む図示していない複数のノズルが矢印322aで示す吐出方向において媒体保持面52cと対向して形成されている。
【0104】
図11においては、最近ノズル、最遠ノズルの位置をそれぞれ位置A、位置Bとしている。また、矢印322aで示す吐出方向において最近ノズルに対向する媒体保持面52c上の位置を位置Cとしている。また、矢印322aで示す吐出方向において最遠ノズルに対向する媒体保持面52c上の位置を位置Dとしている。位置A、B、CおよびDは、ドラム52の回転軸に直交する平面上の位置である。ドラム52の回転軸に直交する平面上における回転軸の位置を位置Oとする。位置Oおよび位置Cの間の距離と、位置Oおよび位置Dの間の距離とは、それぞれ、ドラム52の半径である。以下、ドラム52の半径を距離rとする。
【0105】
矢印322aで示す吐出方向における最近ノズルから媒体保持面52cまでの距離、すなわち、位置Aと、位置Cとの間の距離を距離Lgcとする。また、矢印322aで示す吐出方向における最遠ノズルから媒体保持面52cまでの距離、すなわち、位置Bと、位置Dとの間の距離を距離Lgeとする。そして、距離Lgeと、距離Lgcとの差をΔLgとする。ここで、線分ODと、線分OCとがなす角をθとする。矢印322aで示す吐出方向における位置Dと、位置Oとの間の距離を距離H
θとすると、距離H
θは、r×cosθである。したがって、ΔLgは、r(1−cosθ)と表すことができる。
【0106】
インクジェットヘッドのノズルと、このノズルによって吐出されたインクが付着させられる印刷対象との距離は、印刷された画像の品質が特定の品質以下になることを抑えるために、一般的に、約6mm以下が好ましい。すなわち、距離Lgeは、約6mm以下が好ましい。そのため、距離Lgcがある程度の長さになることを考慮すると、ΔLgは、3mm以下、好ましくは2mm以下になる。したがって、インクジェットヘッド322によって布80に印刷された画像の品質が特定の品質以下になることを抑えるために、インクジェットヘッド322は、ΔLgが3mm以下、好ましくは2mm以下になるようにドラム52に対して配置されている。
【0107】
最遠ノズルと、最近ノズルとの距離、すなわち、位置Aと、位置Bとの距離を距離L
(A−B)とする。また、位置Cと、位置Dとの媒体保持面52c上における距離を距離Lc
(C−D)とする。インクジェットヘッド322の最大プリント幅、すなわち、両端のノズル間の距離を距離Dhとする。距離L
(A−B)は、位置Aがインクジェットヘッド322の最大プリント幅の中央の位置である場合、Dh/2である。距離Lc
(C−D)は、2πr(θ/360)である。
【0108】
距離L
(A−B)に対して距離Lc
(C−D)が長過ぎると、媒体保持面52c上の布80にインクジェットヘッド322のノズルから吐出されたインクによって形成される画像に発生する歪みが許容できない程に大きくなる。したがって、インクジェットヘッド322は、距離Lc
(C−D)が距離L
(A−B)の1.003倍以下、好ましくは1.001倍以下になるようにドラム52に対して配置されている。
【0109】
以上においては、ドラム52に対するインクジェットヘッド322の配置について説明したが、ドラム52に対するインクジェットヘッド321の配置についても同様である。
【0110】
以上に説明したように、インクジェットプリンター310は、円柱形のドラム52の側面としての媒体保持面52c上の布80にインクジェットヘッド322のノズルから吐出されたインクによって形成される画像に発生する歪みを抑えることができるので、インクジェットヘッド322によって布80に印刷された画像の品質を向上することができる。
【0111】
(第5の実施の形態)
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成のうち、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10(
図1参照。)の構成、第3の実施の形態に係るインクジェットプリンター210(
図9参照。)の構成、または、第4の実施の形態に係るインクジェットプリンター310(
図10参照。)の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0112】
図12は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター410の側面側から観察した概略構成図である。なお、
図12においては、床90に対して各部材を支持する枠体を省略して描いている。
【0113】
図12に示すように、インクジェットプリンター410は、布80にインクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットヘッド421およびインクジェットヘッド422を備えている。インクジェットヘッド421およびインクジェットヘッド422によって吐出されるインクは、染料または顔料の水性捺染インクである。インクジェットヘッド422は、布80の矢印80aで示す搬送方向においてインクジェットヘッド421の下流に配置されている。例えば、インクジェットヘッド421と、インクジェットヘッド422とは、互いに異なる色のインクを吐出する。
【0114】
インクジェットプリンター410は、布80を搬送する搬送機構450を備えている。
【0115】
搬送機構450は、布80を搬送する搬送部材としてドラム52と、ドラム52を回転させる図示していない駆動モーターとを備えている。
【0116】
搬送機構450は、ドラム52に布80を押し付ける押し付け部材451を、布80を挟んでドラム52に対向する位置に備えている。押し付け部材451は、主走査方向に延在している。押し付け部材451は、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されているローラーであっても良いし、回転しない単なるバーであっても良い。押し付け部材451は、ゴム製であったり、表面の状態が起毛状であったりして、表面の柔軟性によってドラム52に布80を適度な強さで押し付けることができる。
【0117】
インクジェットプリンター410は、主走査方向における布80の中心を調整するためのセンター調整機構470を、布80の搬送方向においてアフター乾燥ヒーター33および34と、巻き取りローラー42との間に備えている。センター調整機構470の構成は、センター調整機構70の構成と同様である。インクジェットプリンター410は、巻き取りローラー42の直前で布80が蛇行することをセンター調整機構470によって抑えることができるので、巻き取りローラー42によって布80を緩みのなく安定的に巻き取ることができるとともに、巻き取りローラー42によって生成されるロール82において、主走査方向における両端面に生じる凹凸を低減することができる。
【0118】
ドラム52に対するインクジェットヘッド421および422の配置は、それぞれ、第4の実施の形態におけるドラム52に対するインクジェットヘッド321および322の配置と同様である。
【0119】
(第6の実施の形態)
本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成のうち、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンター110(
図8参照。)の構成、または、第4の実施の形態に係るインクジェットプリンター310(
図10参照。)の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0120】
図13は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター510の側面側から観察した概略構成図である。なお、
図13においては、床90に対して各部材を支持する枠体を省略して描いている。
【0121】
図13に示すように、ドラム52に対するインクジェットヘッド120の配置は、第4の実施の形態におけるドラム52に対するインクジェットヘッド322の配置と同様である。
【0122】
図13に示す巻き取りローラー42は、布80に一定の張力を付与する図示していない張力付与機構を備えている。
【0123】
本実施の形態に係るインクジェットプリンター510は、構成する部材の数が少ないので、小型化を実現することができる。
【0124】
インクジェットプリンター510は、インクジェットヘッド120によって水溶性UV捺染染料インクを吐出するようになっている。しかしながら、インクジェットプリンター510は、水溶性UV捺染染料インク以外のインクをインクジェットヘッド120によって吐出するようになっていても良い。例えば、インクジェットプリンター510は、水性捺染インクをインクジェットヘッド120によって吐出するようになっていても良い。インクジェットプリンター510は、インクジェットヘッド120によって水性捺染インクを吐出するようになっている場合、インクジェットヘッド120によって布80上に吐出された水性捺染インクを乾燥させるために、乾燥ヒーターを備えている必要がある。
【0125】
上述した各実施の形態においては、媒体として布が使用されているが、布以外の媒体が使用されても良い。例えば、媒体としてフィルムが使用されても良い。
【0126】
(参考の形態)
上述した各実施の形態において、布80を搬送する搬送部材の媒体保持面は、溶射による表面処理が施されている。しかしながら、布80を搬送する搬送部材の媒体保持面は、溶射による表面処理以外の方法によって布80との間の摩擦力を確保しても良い。例えば、媒体保持面は、ブラシ状の突起が表面に形成されることによって、布80との間の摩擦力を確保しても良い。
【0127】
図14は、媒体保持面952cの表面にブラシ状の突起が形成されたドラム952を備えたインクジェットプリンター910の側面側から観察した概略構成図である。
【0128】
図14に示すように、インクジェットプリンター910は、布80を搬送する搬送機構950以外、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンター10(
図1参照。)の構成と同様である。
【0129】
搬送機構950は、布80を搬送する搬送部材として、円柱形のドラム951およびドラム952を備えている。ドラム951およびドラム952のそれぞれは、主走査方向に延在している。また、ドラム951およびドラム952のそれぞれは、主走査方向に延在している図示していない中心軸を中心として回転可能に支持されている。ドラム951は、内周側から外周側に貫通する多数の貫通孔951aが全周に形成されている。ドラム952は、内周側から外周側に貫通する多数の貫通孔952aが全周に形成されている。ドラム951およびドラム952は、同一の構成である。
【0130】
搬送機構950は、ドラム951を回転可能に支持する円柱形の軸953と、ドラム952を回転可能に支持する円柱形の軸954と備えている。軸953および軸954のそれぞれは、主走査方向に延在していて、固定されている。軸953は、内周側から外周側に貫通する多数の貫通孔953aが一部に形成されている。軸953において貫通孔953aが形成されている位置は、ドラム951が布80に接触する位置に対応している。軸954は、内周側から外周側に貫通する多数の貫通孔954aが一部に形成されている。軸954において貫通孔954aが形成されている位置は、ドラム952が布80に接触する位置に対応している。
【0131】
搬送機構950は、ドラム951に布80を押し付ける押し付け部材53を、布80を挟んでドラム951に対向する位置に備えている。
【0132】
搬送機構950は、ドラム952を回転させる図示していない駆動モーターを備えている。すなわち、ドラム952は、駆動モーターによって回転させられる駆動側のドラムである。一方、ドラム951は、布80の搬送に伴って布80との間の摩擦力によって回転させられる従動側のドラムである。
【0133】
図15は、ドラム952の一部の側面断面図である。
【0134】
図15に示すように、ドラム952は、基材952bと、基材952bの一面側から挿し込まれて基材952bの他面側に一部が突出している突起952cとを備えている。
【0135】
基材952bは、例えば、金属で形成されていても良いし、プラスチックで形成されていても良い。
【0136】
突起952cは、例えば、金属製の針で形成されていても良いし、ポリプロピレンなどのプラスチック製の針で形成されていても良い。突起952cのうちドラム952の媒体保持面952dに突出している長さは、例えば、100〜200μm程度である。突起952cのうちドラム952の媒体保持面952dに突出している部分は、布80に引っかかることによって布80を保持することができる程度に硬い。したがって、ドラム952は、媒体保持面952dに形成された多数の突起952cに布80を引っかけることによって布80を保持することができる。
【0137】
インクジェットプリンター910は、吸引ファンなどの減圧手段によって軸953の内周側の空間が減圧されることによって、軸953の貫通孔953aに対応する位置で、軸953の貫通孔953aと、ドラム951の貫通孔951aとを介して、ドラム951に布80を吸い付けることができる。同様に、インクジェットプリンター910は、吸引ファンなどの減圧手段によって軸954の内周側の空間が減圧されることによって、軸954の貫通孔954aに対応する位置で、軸954の貫通孔954aと、ドラム952の貫通孔952aとを介して、ドラム952に布80を吸い付けることができる。
【0138】
インクジェットプリンター910は、以上に説明したように、ドラム951が布80に接触する位置に対応している位置に貫通孔953aが形成されていてドラム951を回転可能に支持する軸953を備えることによって、ドラム951の貫通孔951aのうちドラム951が布80に接触する位置の貫通孔951aのみによってドラム951に布80を吸い付けることができる。このような一部の範囲のみによる吸い付けの方法は、上述したドラム51および52においても採用されることが可能である。
【0139】
なお、溶射による表面処理を施すことによって媒体保持面に鑢状の多数の凹凸を形成する方法は、
図15に示すような突起952cを媒体保持面952dに形成する方法と比較して、容易に製造可能であるので、製造コストを抑えることができる。