特許第6521608号(P6521608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521608
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】高耐久性コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20190520BHJP
   C04B 7/19 20060101ALI20190520BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20190520BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C04B28/08
   C04B7/19
   C04B18/08 Z
   C04B18/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-221977(P2014-221977)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-88778(P2016-88778A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230836
【氏名又は名称】日本興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛朗
(72)【発明者】
【氏名】綿屋 晃希
(72)【発明者】
【氏名】大和 功一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】山地 功二
(72)【発明者】
【氏名】津郷 俊二
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−100996(JP,A)
【文献】 特開2006−016212(JP,A)
【文献】 特開2010−001208(JP,A)
【文献】 藤井隆史、藤木昭宏、綾野克紀、阪田憲次,鉄鋼スラグ水和固化体の凍結融解抵抗性とその改善に関する研究,土木学会論文集E,日本,土木学会,2007年 5月,Vol.63, No.12,PP.262-273
【文献】 依田彰彦,資源の有効利用とコンクリート (第5回) 高炉スラグ微粉末を用いたコンクリート,コンクリート工学,日本,コンクリート工学会,1996年 4月,Vol.34, No.4,PP.72-82
【文献】 小山田邦弘、藤原浩巳、丸岡正知,フライアッシュ原粉及び高炉スラグ細骨材を用いた環境負荷低減コンクリートの基本物性に関する研究,コンクリート工学年次論文集,日本,コンクリート工学会,2011年,Vol.33, No.1,PP.1595-1600
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とからなる結合材であって当該結合材100質量部に対して前記高炉スラグ微粉末を45〜70質量部含む結合材と、
フライアッシュと、
硬質高炉スラグ細骨材を含む細骨材であって当該細骨材の体積基準で前記硬質高炉スラグ細骨材を40〜100体積%含む細骨材と、
粗骨材と、
化学混和剤と、
水と、
を含有し、
前記フライアッシュの含有量は前記結合材100質量部に対して30〜50質量部であり、
前記結合材の質量Aに対する前記水の質量Bの比(B/A)が0.2〜0.6であり、
1m中に
前記普通ポルトランドセメントを200350kg、
前記高炉スラグ微粉末を150250kg、
前記水を140190kg、
前記フライアッシュを80180kg、
前記細骨材を550900kg、
前記粗骨材を7001100kg含み、
前記硬質高炉スラグ細骨材がJIS A5011−1:2013に記載の区分であって、5mm高炉スラグ細骨材、2.5mm高炉スラグ細骨材、1.2mm高炉スラグ細骨材及び5〜0.3mm高炉スラグ細骨材からなる群から選ばれる少なくとも一つの区分の高炉スラグ細骨材である、高耐久性コンクリート。
【請求項2】
前記高炉スラグ微粉末は
密度が2.80〜3.00g/cm
SiO量が25〜40質量%、
Al量が10〜20質量%、
CaO量が35〜50質量%、
SO量が0.5〜3.5質量%、
ブレーン比表面積が2750〜10000cm/gである、請求項1に記載の高耐久性コンクリート。
【請求項3】
前記フライアッシュは
SiO量が55〜70質量%、
Al量が20〜30質量%、
Fe量が2〜10質量%、
CaO量が1〜5質量%、
ブレーン比表面積が1000〜5000cm/gである、請求項1又は2に記載の高耐久性コンクリート。
【請求項4】
前記硬質高炉スラグ細骨材は、
粗粒率が2.30〜2.90、
SiO量が25〜40質量%、
Al量が10〜20質量%、
CaO量が35〜50質量%、
である、請求項1〜のいずれか一項に記載の高耐久性コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐久性コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国や地方自治体の財政逼迫、インフラの安定的な供用などの観点から、鉄筋コンクリート(RC)構造物の長寿命化の必要性がより高まりつつある。RC構造物の経年劣化の主たる要因として、塩害や中性化、コンクリートの乾燥収縮によるひび割れの発生、凍害によるコンクリートの損傷などが挙げられ、RC構造物の劣化要因は多岐に渡る。
【0003】
一方、資源有効利用・環境負荷低減を目的として、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末あるいは高炉スラグ細骨材等の産業副産物を、積極的にコンクリート材料として利用する動きも多く見られる。特許文献1は、高炉セメント、フライアッシュ、細骨材、粗骨材、混和剤及び水からなるコンクリート組成物に関するものであり、骨材に高炉スラグ骨材を100%使用することで製鉄副産物のみでコンクリート組成物を構成することを特徴としている。
【0004】
しかし、例えば非特許文献1では、細骨材を全量高炉スラグ細骨材とし、フライアッシュ粗粉を10%細骨材置換したコンクリートにおいて、普通骨材を使用したコンクリートに比べ、アルカリ骨材反応抑制効果、塩化物イオン浸透深さの抑制効果は見られるものの、圧縮強度及び凍結融解抵抗性には劣ることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−16212号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小山田邦弘、藤原浩已、丸岡正知、川島顕、「各種リサイクル材料のコンクリートへの有効活用に関する研究」、コンクリート工学年次論文集、Vol.31、No.1、pp.1915−1920、2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、フライアッシュ等の産業副産物をコンクリート材料として利用すると、例えば塩化物浸透抵抗性が向上すれば圧縮強度が低下するといった問題があった。塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度といった性能を、いずれも向上させるようなコンクリート、あるいはコンクリートの製造方法は存在していなかった。
【0008】
本発明は、塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度の全てを十分高水準に達成し得る高耐久性コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、普通ポルトランドセメントの一部を高炉スラグ微粉末で置換し且つ混和材としてフライアッシュを使用するとともに、細骨材の少なくとも一部を硬質高炉スラグ細骨材で置換することが上記目的の達成に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とからなる結合材であって当該結合材100質量部に対して高炉スラグ微粉末を30〜70質量部含む結合材と、硬質高炉スラグ細骨材を含む細骨材であって当該細骨材の体積基準で硬質高炉スラグ細骨材を40〜100体積%含む細骨材と、フライアッシュと、粗骨材と、水と、化学混和剤とを含有し、フライアッシュの含有量は結合材100質量部に対して10〜50質量部であり、結合材の質量Aに対する水の質量Bの比(B/A)が0.2〜0.6である高耐久性コンクリートを提供する。当該高耐久性コンクリートによれば、塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度の全てを十分高水準に達成できる。
【0011】
上記効果が奏される主因について、本発明者らは、高炉スラグ微粉末とフライアッシュを併用することにより、コンクリート組織が高度に緻密化し、これにより、塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度の全てを十分高水準に達成できると推測している。
【0012】
上記高耐久性コンクリートを構成する成分の単位量(コンクリート1mに含まれる量)は以下の範囲とすればよい。
・普通ポルトランドセメント150〜450kg/m
・高炉スラグ微粉末100〜300kg/m
・水130〜200kg/m
・フライアッシュ20〜250kg/m
・細骨材500〜1500kg/m
・粗骨材500〜1500kg/m
【0013】
本発明の効果をより安定的且つより高水準に達成する観点から、上記高炉スラグ微粉末として以下の条件を満たすものを使用することが好ましい。なお、「密度」及び「ブレーン比表面積」はJIS R5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した値を意味する。
・密度2.80〜3.00g/cm
・SiO量25〜40質量%
・Al量10〜20質量%
・CaO量35〜50質量%
・SO量0.5〜3.5質量%
・ブレーン比表面積2750〜10000cm/g
【0014】
本発明の効果をより安定的且つより高水準に達成する観点から、上記フライアッシュとして以下の条件を満たすものを使用することが好ましい。
・SiO量55〜70質量%
・Al量20〜30質量%
・Fe量2〜10質量%
・CaO量1〜5質量%
・ブレーン比表面積1000〜5000cm/g
【0015】
本発明の効果をより安定的且つより高水準に達成する観点から、上記硬質高炉スラグ細骨材として以下の条件を満たすものを使用することが好ましい。なお、「粗粒率」はJIS A1102−2006「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定した値を意味する。
・粗粒率2.30〜2.90
・SiO量25〜40質量%
・Al量10〜20質量%
・CaO量35〜50質量%
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度の全てを十分高水準に達成し得る高耐久性コンクリートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<高耐久性コンクリート>
本実施形態に係る高耐久性コンクリートは結合材と、細骨材と、フライアッシュと、粗骨材と、水と、化学混和剤とを含む。
【0018】
(結合材)
上記結合材、普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とからなる。普通ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4800cm/g、より好ましくは2800〜4000cm/g、更に好ましくは3000〜3600cm/gであり、特に好ましくは3200〜3500cm/gである。普通ポルトランドセメントのブレーン比表面積が2500cm/g未満では高耐久性コンクリートの硬化体の強度が低くなる傾向にあり、4800cm/gを超えると低水セメント比での流動性が低下する傾向にある。
【0019】
高炉スラグ微粉末は高炉水砕スラグを粉砕することによって得られるものである。高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は好ましくは2750〜10000cm/gであり、より好ましくは3500〜7000cm/gであり、更に好ましくは3500〜5000cm/gであり、特に好ましくは4500〜5000cm/gである。高炉スラグ微粉末の密度は、好ましくは2.80〜3.00g/cmであり、より好ましくは2.81〜2.99g/cmであり、更に好ましくは2.82〜2.98g/cmであり、特に好ましくは2.84〜2.96g/cmである。
【0020】
高炉スラグ微粉末の主成分は、CaO及びSiOである。高炉スラグ微粉末におけるCaOの含有率は好ましくは35〜50質量%であり、より好ましくは40〜48質量%である。高炉スラグ微粉末におけるSiOの含有率は好ましくは25〜40質量%であり、より好ましくは28〜35質量%である。高炉スラグ微粉末におけるAlの含有率は好ましくは10〜20質量%であり、より好ましくは12〜17質量%である。高炉スラグ微粉末におけるSOの含有率は好ましくは0.5〜3.5質量%であり、より好ましくは1.0〜2.0質量%である。
【0021】
高炉スラグ微粉末として、JIS A6206:2013に記載の品質「高炉スラグ3000」、「高炉スラグ4000」、「高炉スラグ6000」及び「高炉スラグ8000」のうち、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。高炉スラグ微粉末は例えば軟質高炉スラグを微粉砕することによって製造される。
【0022】
結合材100質量部に対する高炉スラグ微粉末の含有量は30〜70質量部であり、好ましくは34〜60質量部であり、より好ましくは38〜55質量部であり、更に好ましくは40〜50質量部である。高炉スラグ微粉末の含有量が30質量部未満(ポルトランドセメントの含有量が70質量部超)であると、塩化物浸透抵抗性の向上効果が薄くなる傾向にあり、高炉スラグ微粉末の含有量が70質量部超(ポルトランドセメントの含有量が30質量部未満)であると、圧縮強度や中性化に対する抵抗性が低下する傾向にある。
【0023】
(フライアッシュ)
フライアッシュは、火力発電所で石炭を燃やしたときに発生する微細な石炭灰である。フライアッシュの主成分は、SiO及びAlである。フライアッシュにおけるSiOの含有率は好ましくは55〜70質量%であり、より好ましくは58〜65質量%である。フライアッシュにおけるAlの含有率は好ましくは20〜30質量%であり、より好ましくは21〜26質量%である。フライアッシュはSiO及びAl以外の成分として、微量のFe、CaOなどを含有する。フライアッシュのブレーン比表面積は好ましくは1000〜5000cm/gであり、より好ましくは1400〜4600cm/gであり、更に好ましくは1800〜4200cm/gであり、特に好ましくは2200〜3800cm/gである。このようなフライアッシュを用いることで、高耐久性コンクリートの高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性を確保できる。
【0024】
(細骨材)
細骨材として、硬質高炉スラグ細骨材を使用し、これと川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を併用してもよい。細骨材の体積基準で硬質高炉スラグ細骨材の配合量は40〜100体積%であり、好ましくは46〜90体積%であり、より好ましくは52〜85体積%であり、更に好ましくは60〜80体積%である。硬質高炉スラグ細骨材の配合量が40体積%未満であると、塩化物浸透抵抗性の向上効果が薄くなる傾向にある。
【0025】
硬質高炉スラグ細骨材の主成分は、CaO及びSiOである。硬質高炉スラグ細骨材におけるCaOの含有率は好ましくは35〜50質量%であり、より好ましくは40〜48質量%である。硬質高炉スラグ細骨材におけるSiOの含有率は好ましくは25〜40質量%であり、より好ましくは28〜38質量%である。硬質高炉スラグ細骨材におけるAlの含有率は好ましくは10〜20質量%であり、より好ましくは12〜17質量%である。
【0026】
硬質高炉スラグ細骨材として、JIS A5011−1:2013に記載の区分「5mm高炉スラグ細骨材」、「2.5mm高炉スラグ細骨材」、「1.2mm高炉スラグ細骨材」及び「5〜0.3mm高炉スラグ細骨材」のうち、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。硬質高炉スラグ細骨材として高炉水砕スラグを使用できる。なお、高炉水砕スラグは、軽質で軽いもの(軟質高炉スラグ)と硬質で重いもの(硬質高炉スラグ)とに分類される。これらはスラグ温度、冷却水量及び水圧などをコントロールすることによって得ることができる。
【0027】
(粗骨材)
粗骨材の量や、水の量は、目標圧縮強度、じん性、目標スランプに応じて適時変えればよい。粗骨材としては、砂利、砕石、石灰石骨材、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材等を使用することができる。また、5mmの篩いに85質量%以上とどまる粗骨材がより好ましい。
【0028】
(水)
水として、水道水、蒸留水又は脱イオン水などを使用すればよい。結合材(普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末の合計)の質量Aに対する水の質量Bの比(B/A)は0.2〜0.6であり、より好ましくは0.24〜0.56であり、更に好ましくは0.28〜0.50であり、特に好ましくは0.32〜0.45である。この質量比が0.2未満であると、所定のフレッシュ性状(流動性、空気量等)や成形性の確保が難しくなる傾向にあり、0.6を超えると、圧縮強度や耐久性が低下する傾向にある。
【0029】
(化学混和剤)
化学混和剤としては、減水剤、AE剤、消泡剤、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、などが挙げられる。求められる性能に応じてこれらのうち、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
上記減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を使用することができる。低水セメント比での流動性確保の観点から、減水剤として、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いることがより好ましい。本実施形態に係る高耐久性コンクリートにおける減水剤の配合量は、結合材とフライアッシュの合計量100質量部に対して好ましくは0.2〜2.0質量部、より好ましくは0.3〜1.5質量部、更に好ましくは0.4〜1.0質量部である。
【0031】
上記消泡剤としては、特殊非イオン配合型界面活性剤、ポリアルキレン誘導体、疎水性シリカ、ポリエーテル系等が挙げられる。本実施形態に係る高耐久性コンクリートにおける消泡剤の配合量は、結合材とフライアッシュの合計量100質量部に対して好ましくは0.0000〜0.020質量部、より好ましくは0.0005〜0.015質量部、更に好ましくは0.0008〜0.010質量部、特に好ましくは0.0010〜0.0.008質量部である。
【0032】
<高耐久性コンクリートの製造方法>
本実施形態に係る高耐久性コンクリートの製造方法は、特に限定されないが、水、化学混和剤以外の材料の一部又は全部を予め混合しておき、次に、水、化学混和剤を添加してミキサに入れて練り混ぜる。コンクリートの練混ぜに使用するミキサは特に限定されず、コンクリート用ミキサ、二軸強制練りミキサ、パン型ミキサ、グラウトミキサ等を使用することができる。
【0033】
高耐久性コンクリートを構成する成分の単位量(コンクリート1mに含まれる量)は以下の範囲とすればよい。
・普通ポルトランドセメント150〜450kg/m
・高炉スラグ微粉末100〜300kg/m
・水130〜200kg/m
・フライアッシュ20〜250kg/m
・細骨材500〜1500kg/m
・粗骨材500〜1500kg/m
【0034】
ポルトランドセメントの単位量は上記のとおり好ましくは150〜450kg/mであり、より好ましくは170〜420kg/mであり、更に好ましくは190〜380kg/mであり、特に好ましくは200〜350kg/mである。
【0035】
高炉スラグ微粉末の単位量は上記のとおり好ましくは100〜300kg/mであり、より好ましくは120〜280kg/mであり、更に好ましくは140〜260kg/mであり、特に好ましくは150〜250kg/mである。高炉スラグ微粉末の単位量が100kg/m未満であると、塩化物浸透抵抗性の向上効果が薄くなる傾向にあり、300kg/mを超えると、圧縮強度や中性化に対する抵抗性が低下する傾向にある。
【0036】
水の単位量は上記のとおり好ましくは130〜200kg/mであり、より好ましくは140〜190kg/mであり、更に好ましくは145〜185kg/mであり、特に好ましくは150〜180kg/mである。
【0037】
フライアッシュの単位量は上記のとおり好ましくは20〜250kg/mであり、より好ましくは40〜220kg/mであり、更に好ましくは60〜200kg/mであり、特に好ましくは80〜180kg/mである。フライアッシュの単位量が20kg/m未満であると、塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度の向上効果が薄くなる傾向にあり、250kg/mを超えると、所定のフレッシュ性状(流動性、空気量等)や成形性の確保が難しくなる傾向にある。
【0038】
細骨材の単位量は上記のとおり好ましくは500〜1500kg/mであり、より好ましくは500〜1300kg/mであり、更に好ましくは500〜1100kg/mであり、特に好ましくは550〜900kg/mである。
【0039】
粗骨材の単位量は上記のとおり好ましくは500〜1500kg/mであり、より好ましくは600〜1300kg/mであり、更に好ましくは650〜1200kg/mであり、特に好ましくは700〜1100kg/mである。
【0040】
上記実施形態に係る高耐久性コンクリートによれば、塩化物浸透抵抗性、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性、圧縮強度の全てを十分高水準に達成し得る。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
[1.使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)結合材
・普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm、宇部三菱セメント株式会社製)
・高炉スラグ微粉末(密度2.90g/cm、CaO量41.9質量%、SiO量31.6質量%、Al量14.0質量%、SO量1.7質量%、ブレーン比表面積4760cm/g、JIS A 6206 高炉スラグ微粉末4000相当、宇部興産株式会社製)
(2)混和材
・フライアッシュ(密度2.21g/cm、SiO量62.1質量%、Al量23.5質量%、Fe量5.4質量%、CaO量2.6質量%、ブレーン比表面積2900cm/g、JIS A 6201 フライアッシュIV種相当、四国電力株式会社製)
(3)細骨材
・硬質高炉スラグ細骨材(密度2.50g/cm、粗粒率2.51、株式会社神戸製鋼所製)
・海砂A(密度2.59g/cm、粗粒率2.66、福岡県産)
・海砂B(密度2.57g/cm、粗粒率2.97、福岡県産)
・砕砂(密度2.68g/cm、粗粒率2.71、硬質砂岩、福岡県産)
(4)粗骨材
・砕石(最大寸法20mm、密度2.70g/cm、粗粒率6.64、硬質砂岩、山口県産)
(5)化学混和剤
・商品名:マイテイ21VS、高性能減水剤、花王株式会社製
・商品名:マイクロエア404、空気量調整剤、BASFジャパン株式会社製
(6)練混ぜ水
・上水道水
【0042】
[2.コンクリートの配合]
前記材料を用いた、No.1〜12のコンクリートの配合を表1に示す。
表中において、普通ポルトランドセメントはN、高炉スラグ微粉末はBFS、フライアッシュはFA、単位水量はW、単位セメント量はC、単位結合材量はBと表記する。また、配合No.2〜12において、高炉スラグ微粉末/(普通ポルトランドセメント+高炉スラグ微粉末)の質量比は45%で一定であり、これは高炉セメントB種に相当することから、配合名はBBと表記する。
硬質高炉スラグ細骨材に関しては、細骨材(海砂+砕砂+硬質高炉スラグ細骨材)に対する体積(%)置換である。また、フライアッシュに関しては、結合材質量に対する割合(%)を細骨材に対して外割置換している。
配合No.1〜4及び6〜9においては海砂Aを使用したが、配合No.5及び10〜12においては海砂Bを使用した。同一産地の海砂であるが、粒度が異なるため、配合No.1〜4及び6〜9では海砂と砕砂の体積比を8:2としたが、配合No.5及び10〜12では海砂と砕砂の体積比を4:6とした。また、配合No.10〜12においては、高流動配合とするため、粗骨材量を減じている。
【0043】
【表1】
【0044】
[3.コンクリートの調整及び試験方法]
(1)コンクリートの練り混ぜ
表1に示した配合No.1〜12のコンクリートの練り混ぜは次の手順で行った。すなわち、水平二軸強制練りミキサ内に、細骨材、粗骨材、結合材及び混和材を投入して30秒間空練りした後、水(混和剤を含む)を加えて120秒間練り混ぜた。
(2)コンクリートのフレッシュ性状
配合No.1〜12について、フレッシュコンクリートの性状試験として、スランプ、スランプフロー及び空気量を測定した。この結果を表2に示す。なお、スランプ試験はJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準じて実施し、スランプフロー試験はJIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じて実施した。また、空気量は2.0%以下とした。
【0045】
【表2】
【0046】
(3)コンクリート供試体の養生
コンクリート供試体の養生は、材齢初期に蒸気養生を行った。20℃−4時間の前置きの後、昇温速度10℃/hrにて昇温、60℃で3時間保持し、降温速度10℃/hrにて降温させた。材齢1日以降は20℃の恒温室で気中養生した。
(4)塩水浸せき試験
土木学会規準JSCE−G 572−2003「浸せきによるコンクリート中の塩化物イオンの見掛けの拡散係数試験方法(案)」に準拠して行った。直径10cm、高さ20cmの円柱供試体の両端部を2.5cmカットして高さ15cmとし、打設面以外をシリコン及びエポキシ樹脂でシーリングした後、10%塩化ナトリウム水溶液に浸せきした。定期的にコンクリートを取り出して、深さ方向にコンクリートを切り出し、JISA 1154によりコンクリート中の塩化物イオン量を測定し、見掛けの拡散係数を算出した。
(5)圧縮強度試験
JIS A1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて行い、材齢28日での圧縮強度を測定した。
(6)長さ変化試験
JIS A1129−2「モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準じて行い、乾燥収縮ひずみを測定した。ただし、乾燥開始材齢及び長さ変化の基長は材齢1日とした。
(7)促進中性化試験
JIS A1153「コンクリートの促進中性化試験方法」に準じて行い、中性化深さを測定した。
(8)凍結融解試験
JIS A1148「コンクリートの凍結融解試験方法」に準じて行い、相対動弾性係数を測定した。ただし、凍結融解試験に関してのみ、空気量を4.5〜6.0%として行った。
【0047】
[4.試験結果]
塩水浸せき試験結果として、塩水浸せき1か月及び3か月の塩化物イオンの見掛けの拡散係数を表3に、圧縮強度及びその他の耐久性試験結果を表4に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
比較例1及び2は、普通ポルトランドセメント及び高炉セメントB種相当の結合材を使用した基準コンクリートである。比較例3〜6は硬質高炉スラグ細骨材を、細骨材(海砂+砕砂+硬質高炉スラグ細骨材)に対して30〜70%体積置換したコンクリート、比較例7〜9は、結合材質量に対して10〜30質量%のフライアッシュを、細骨材に対して外割置換したコンクリートである。実施例1〜3は、硬質高炉スラグ細骨材70%細骨材体積置換と、フライアッシュ30%外割置換を組み合わせたコンクリートであり、水結合材比(W/B)を変化させている。
【0051】
[5.評価]
表3より、塩水浸せき1か月及び3か月での見掛けの拡散係数を比較すると、比較例に比べ、実施例の塩化物イオンの見掛けの拡散係数は小さい値となっており、実施例は塩化物浸透抵抗性に優れる。
表4より、材齢28日での圧縮強度を比較すると、比較例に比べ、実施例の圧縮強度はいずれも大きな値となっており、実施例は圧縮強度に優れる。
乾燥期間6か月での乾燥収縮ひずみを比較すると、比較例に比べ、実施例の乾燥収縮ひずみはいずれも小さな値となっており、実施例は乾燥収縮抑制に優れる。
促進中性化期間3か月での中性化深さを、高炉セメントB種相当の結合材をベースとする配合間で比較すると、比較例2に比べ、実施例1および3の中性化深さはいずれも小さな値となっている。また、普通ポルトランドセメントベースの比較例1と比較すると、中性化深さは、水結合材比の小さな実施例1では小さくなるが、水結合材比の大きな実施例3では大きくなる。よって、本実施例のコンクリートは中性化抵抗性に優れており、一般的に中性化抵抗性の低い高炉セメントB種相当の結合材をベースにした場合においても、普通ポルトランドセメントを結合材としたコンクリートと同等の中性化抵抗性を得ることが可能となる。
凍結融解300サイクル終了時の相対動弾性係数を比較すると、比較例では100%から値が大きく低下しているのに対し、実施例では100%からほとんど変化が見られておらず、実施例は凍害に対する抵抗性に優れる。
以上より、本実施例のコンクリートは、塩化物浸透抵抗性、圧縮強度、乾燥収縮抑制、中性化及び凍害に対する抵抗性に優れた高耐久性コンクリートであることが確認できる。これは、硬質高炉スラグ細骨材とフライアッシュを、細骨材の一部として併用することにより、コンクリート組織が極めて緻密化するためである。