(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521610
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/26 20060101AFI20190520BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20190520BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20190520BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20190520BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20190520BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20190520BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20190520BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
H05B33/26 Z
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/04
H05B33/12 E
G02B5/20 101
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-227839(P2014-227839)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-91918(P2016-91918A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 智樹
【審査官】
倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−108530(JP,A)
【文献】
特開2011−096378(JP,A)
【文献】
特開2010−129334(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0100209(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0037573(KR,A)
【文献】
特開2011−040352(JP,A)
【文献】
特開2013−118182(JP,A)
【文献】
特開2007−156058(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0073247(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102157698(CN,A)
【文献】
特開2002−318553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/32;H05B33/00−33/28;H01L51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を有する表示装置であって、
前記複数の画素は、第1色を発する第1画素と、前記第1画素と隣接し、第2色を発する第2画素と、を有し、
前記第1画素及び前記第2画素は、それぞれ、
絶縁表面上に設けられた画素電極と、
前記画素電極の端部を覆い、前記画素電極上に開口部を有するバンクと、
前記開口部上に設けられたEL層と、
前記EL層を覆って形成された対向電極と、
前記対向電極上において、前記第1画素と前記第2画素との間の、前記バンクの開口部と平面視において重畳しない領域に形成された補助配線と、を有し、
前記第1色は緑色または白色であり、前記第2色は赤色または青色であり、
断面視において前記第1画素を画定する前記バンクの開口部端と前記第1画素と前記第2画素との間に位置する前記補助配線との距離は、前記第2画素を画定する前記バンクの開口部端と前記補助配線との距離よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を有する表示装置であって、
前記複数の画素は、第1色を発する第1画素と、前記第1画素と隣接し、第2色を発する第2画素と、を有し、
前記第1画素及び前記第2画素は、それぞれ、
絶縁表面上に設けられた画素電極と、
前記画素電極の端部を覆い、前記画素電極上に開口部を有するバンクと、
前記開口部上に設けられたEL層と、
前記EL層を覆って形成された対向電極と、
前記対向電極上において、前記バンクの開口部と平面視において重畳しない領域に形成された補助配線と、を有し、
前記第1色は緑色または白色であり、前記第2色は赤色または青色であり、
断面視において前記第1画素に隣接して前記第1画素を挟む前記補助配線間の距離は、前記第2画素に隣接して前記第2画素を挟む前記補助配線間の距離より大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記補助配線の上方に充填材を介して設けられる封止基板を有し、
前記封止基板は、赤色、青色、及び緑色の各色にそれぞれ対応するカラーフィルタを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記EL層が、赤色、青色、及び緑色の各色で塗り分けて設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2画素の幅と前記第2画素を挟む補助配線間の距離は、略同一であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記補助配線は平面視において縦方向または横方向のいずれかのみに配置されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
同色の画素が並ぶ方向と垂直な方向に延長される前記補助配線は等間隔に配置されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記補助配線は、前記第1色及び前記第2色が隣り合って並ぶ方向と垂直な方向においては前記第2画素側に寄って配置されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
緑色の前記第1画素は、赤色の前記第2画素及び青色の前記第2画素の間に配置されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に隣接する画素同士で混色が生じることを効果的に防止できるEL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(Electroluminescence:EL)現象を利用した発光素子として、エレクトロルミネセンス(以下「EL」ともいう)素子が知られている。EL素子は、発光層を構成する発光材料の選択により様々な波長の色で発光させることが可能であり、表示装置や照明器具への応用が進められている。特に、発光材料として有機材料を用いた有機EL素子が注目されている。
【0003】
有機EL素子を表示装置に応用した表示装置においては、基板上にマトリクス状に配置した各画素に、発光素子としての有機EL素子と、その有機EL素子の発光制御を行うスイッチング素子とが設けられている。そして、画素ごとにスイッチング素子を制御することにより、表示領域全体に任意の画像を表示することが可能である。
【0004】
表示装置の表示形態として、トップエミッション型とボトムエミッション型の2つが知られている。トップエミッション型とは、有機EL素子で発した光を画素電極で反射させて外部に取り出す方式であり、ボトムエミッション型とは、有機EL素子で発した光を、画素電極を透過させて外部に取り出す方式である。特に、トップエミッション型は、画素の開口率を広く確保できる点で有利である。
【0005】
トップエミッション型の表示装置においては、画素電極(陽極)と対になる共通電極(陰極)を透過させて光を取り出す必要がある。そのため、トップエミッション型においては、共通電極として、MgAg(マグネシウム−銀合金)の薄膜を用いたり、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)といった透明導電膜を用いたりすることが多い。
【0006】
このうちITOやIZOといった透明導電膜は、金属膜に比べて抵抗が高いので、大画面化に伴って表示領域での消費電流が増加すると、表示領域の中央付近、すなわち電流供給源から遠い場所ほど電圧降下を生じ、表示に影響を及ぼす。
【0007】
このような問題に対処するため、ITOやIZOといった透明導電膜における抵抗率を調節する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された技術は、陰極上に低抵抗材料を用いて補助配線層を設けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−276721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、表示素子として有機EL素子を用いる場合、発光層だけでなく、ホール輸送層や電子輸送層といった機能層を形成する。発光層の形成は、単色の発光層、例えば白色の発光層を複数の画素に亘って一様に形成し、カラーフィルタ等の色変換層を用いて多色を得る方式と、各発光色に合わせた素子を個別の画素に形成し、各画素からそれぞれの発光色を得る方式とがあるが、いずれの場合も、前述の機能層は複数の画素に亘って一様に形成される場合が多い。
【0010】
すなわち、隣接する画素間で機能層が物理的に繋がっているため、ある画素に電流を供給して発光を得ようとした場合、画素電極から供給された電流が、機能層を横方向に伝わって、本来発光すべきではない隣りの画素の発光層に流れてしまい、発光してしまうという現象が生ずる。これを電気混色といい、表示品質低下の一要因として問題視されている。
【0011】
そこで、本発明は、隣接する画素同士で混色が生じることを効果的に防止できるEL表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態による表示装置は、複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を有する表示装置であって、複数の画素は、第1色を発する第1画素と、第1画素と隣接し、第2色を発する第2画素と、を有し、第1画素及び第2画素は、それぞれ、絶縁表面上に設けられた画素電極と、画素電極の端部を覆い、画素電極上に開口部を有するバンクと、開口部上に設けられたEL層と、EL層を覆って形成された対向電極と、対向電極上において、第1画素と第2画素との間の、バンクの開口部と平面視において重畳しない領域に形成された補助配線と、を有し、断面視において第1画素を画定するバンクの開口部端と補助配線との距離は、第2画素を画定するバンクの開口部端と補助配線との距離よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の実施形態による表示装置は、複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を有する表示装置であって、複数の画素は、第1色を発する第1画素と、第1画素と隣接し、第2色を発する第2画素と、を有し、第1画素及び第2画素は、それぞれ、絶縁表面上に設けられた画素電極と、画素電極の端部を覆い、画素電極上に開口部を有するバンクと、開口部上に設けられたEL層と、EL層を覆って形成された対向電極と、対向電極上において、バンクの開口部と平面視において重畳しない領域に形成された補助配線と、を有し、断面視において第1画素を挟む補助配線間の距離は、第2画素を挟む補助配線間の距離より大きいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1における表示装置の全体の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1における表示装置の画素部の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1における表示装置の画素を
図2に示すIII−III’で切断した断面の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1における表示装置のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【
図5】本発明の他の実施形態における表示装置のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態における表示装置のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施形態における表示装置のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【
図8】本発明の他の実施形態における表示装置のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態における表示装置のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
〈実施形態1〉
図1乃至4を用いて、本発明の実施形態1における表示装置100の構成を説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置100の全体構成を示す図である。表示装置100は、基板101上に形成された、画素部(表示領域)102、走査線駆動回路103、データ線駆動回路104、及びドライバIC105を備えている。ドライバICは、走査線駆動回路103及びデータ線駆動回路104に信号を与える制御部として機能する。
【0018】
なお、
図1では、基板101上にドライバIC105を一体形成した例を示しているが、ICチップのような形態で別途基板101上に配置してもよい。また、ドライバIC105をFPC(Flexible Printed Circuits)に設けて外付けする形態を採用してもよい。
【0019】
図1に示す画素部102には、複数の画素がマトリクス状に配置される。各画素には、データ線駆動回路104から画像データに応じたデータ信号が与えられる。それらデータ信号を、各画素に設けられたスイッチング素子を介して画素電極に与えることにより、画像データに応じた画面表示を行うことができる。スイッチング素子としては、典型的には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)を用いることができる。但し、薄膜トランジスタに限らず、スイッチング機能を備える素子であれば、如何なる素子を用いても良い。
【0020】
図2は、
図1に示す表示装置100における画素部102の構成を示す図である。本実施形態において、画素201は、赤(R)に対応するサブ画素201R、緑(G)に対応するサブ画素201G及び青(B)に対応するサブ画素201Bを含む。各サブ画素には、スイッチング素子として薄膜トランジスタ202が設けられる。薄膜トランジスタ202を用いて各サブ画素201R、201G及び201Bの発光/非発光を制御することにより、各サブ画素に対応する任意の色を発光させ、1つの画素として様々な色を表現できる。
【0021】
図2では、サブ画素として、RGBの三原色を用いる構成を示したが、本実施形態はそれに限定されるものではなく、RGBに白(W)又は黄(Y)を加えた4つのサブ画素で画素201を構成することもできる。また、画素配列として、同一色に対応する画素がストライプ配列された例を示したが、その他デルタ配列やベイヤー配列、又はペンタイル構造を実現する配列であってもよい。サブ画素と補助配線の配置との関係については後述する。
【0022】
図3は、
図2に示す画素201をIII−III’で切断した断面の構成を示す図である。
【0023】
図3において、第1基板301上には、その上に薄膜トランジスタ303が形成されている。
【0024】
第1基板301としては、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の曲げることが可能な基板)を用いることができる。第1基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。
【0025】
薄膜トランジスタ303は、公知の方法で形成すればよい。薄膜トランジスタ303の構造は、トップゲート型であってもボトムゲート型であってもよい。ゲート絶縁膜302は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン等を用いて、半導体層とゲート電極との間に設けられる。本実施形態の表示装置100では、薄膜トランジスタ303を覆うように第1の絶縁層304を設け、薄膜トランジスタ303に起因する凹凸を平坦化する構造としている。第1の絶縁層304としては、樹脂材料を用いることが好ましい。例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、エポキシ等の公知の有機材料を用いることができる。平坦化効果を奏するのであれば、有機材料に代えて、酸化シリコン等の無機材料を用いてもよいし、それらの積層構造としてもよい。
図3では、第1の絶縁層304は単層として記載しているが、薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極の上下となる層は分離していてもよいし、異なる材料を用いて形成してもよい。
【0026】
第1の絶縁層304上には、画素電極305が設けられる。画素電極305は、第1の絶縁層304に形成されたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタ303に接続されている。本実施形態の表示装置100において、画素電極305は、有機EL素子を構成する陽極(アノード)として機能する。
【0027】
画素電極305は、トップエミッション型であるかボトムエミッション型であるかで異なる構成とする。例えば、トップエミッション型である場合、画素電極305として反射率の高い金属膜を用いるか、酸化インジウム系透明導電膜や酸化亜鉛系透明導電膜といった仕事関数の高い透明導電膜と金属膜との積層構造を用いれば良い。逆に、ボトムエミッション型である場合、画素電極305として上述した透明導電膜を用いれば良い。本実施形態では、トップエミッション型の表示装置を例に挙げて説明する。
【0028】
隣接する画素電極305の間には、
図3に示すように、バンク306が配置される。バンク306は、各画素電極305の端部(エッジ)を覆い、各画素電極305上に開口部を有するように設けられ、結果として、各画素を画定する部材として機能する。なお、バンク306は、画素電極305の端部を覆うだけでなく、コンタクトホールに起因する凹部を埋める充填材として機能させてもよい。
【0029】
本実施形態では、バンク306としてポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系といった公知の樹脂材料を用いることができる。バンク306の形状は
図3に示した形状に限定されず、頂部を含む断面(画素電極の表面に対して垂直な面で切断した断面)の輪郭が曲線状であってもよいし、それ以外の形状でもよい。
【0030】
画素電極305及びバンク306の上には、エレクトロルミネセンス層(EL層)307が設けられる。EL層307は、少なくとも発光層を有し、有機EL素子の発光部として機能する。EL層307には、発光層以外に、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層といった各種機能層も含まれ得る。これらの層は、低分子系もしくは高分子系の有機材料を用いて構成される。また、発光層として、有機材料だけでなく、エレクトロルミネセンス型の量子ドットを用いてもよい。
【0031】
本実施形態では、白色光を発光するEL層307を設け、後述するカラーフィルタで色分離する構成とする。白色光を発光するEL層307としては、可視光波長領域に広く発光スペクトルを有する材料を用いて白色光を得てもよいし、ある特定波長にスペクトルのピークを有する材料を複数用いて、合成光として白色光を得てもよい。後者の一例としては、青色に発光する発光層と黄色に発光する発光層とを組み合わせた構造を採用してもよく、他の公知の構造や公知の材料を用いることも可能である。
【0032】
EL層307の上には、有機EL素子の陰極(カソード)として機能する共通電極308が設けられる。本実施形態の表示装置100は、トップエミッション型であるため、透明電極として形成する。例えばMgAg等の金属材料で、光が十分に透過する程度の薄膜で形成したり、もしくは透明導電膜(ITOやIZO)を用いることとする。共通電極308は、各画素間を跨いで画素部102の全面に設けられる。
【0033】
ここで、本実施形態の表示装置100においては、共通電極308のうちバンク306の開口部と平面視において重畳しない部分の上に、補助配線310が設けられる。つまり、補助配線310は、 各サブ画素の間に設けられる。
【0034】
補助配線310を構成する導電体としては、銀(Ag)、チタン(Ti)を含む金属コロイドや金属ナノワイヤを用いることができる。また、カーボンブラックなどの導電性材料を用いてもよい。これらの導電体を揮発性溶媒に分散させ、補助配線を形成したい領域に選択的に塗布した後に溶媒を除去することにより、上述の導電体で構成される補助配線を形成することができる。勿論、共通電極308にダメージを与えない限りにおいて、パターニング工程を含むような、公知の他の配線形成技術を用いることも可能である。
【0035】
ここで、本実施形態の表示装置100においては、断面視において、補助配線310を設ける領域は、サブ画素201Gに対して、隣接するサブ画素201Bにより近い側に設けるようにしている。具体的には、サブ画素201Gを画定するバンクの開口部端と補助配線310との距離Dは、サブ画素201Bを画定するバンクの開口部端と補助配線310との距離D’よりも大きい。
【0036】
距離Dの始点たるサブ画素201Gを画定するバンクの開口部端とは、
図3に示したPの地点、すなわち、サブ画素201Gを画定するバンクの開口部の周縁のうち、サブ画素201Gとサブ画素201Bとの間に形成された補助配線に最も近い地点をいう。距離Dの終点たる補助配線310とは、
図3に示したQの地点、すなわち、補助配線310のうち陰極と接する部分であって、距離Dの始点たるサブ画素201Gを画定するバンクの開口部端に最も近い地点をいう。
【0037】
距離D’ の始点たるサブ画素201Bを画定するバンクの開口部端とは、
図3に示したP’の地点、すなわち、サブ画素201Bを画定するバンクの開口部の周縁のうち、サブ画素201Gとサブ画素201Bとの間に形成された補助配線に最も近い地点をいう。距離D’の終点たる補助配線310とは、
図3に示したQ’の地点、すなわち、補助配線310のうち陰極と接する部分であって、距離D’の始点たるサブ画素201Bを画定するバンクの開口部端に最も近い地点をいう。
【0038】
実施形態の表示装置100においては、陰極のピクセルピッチ方向の抵抗値が、膜厚方向の抵抗値の1000倍程度、換言すれば、陰極膜厚をサブピクセルピッチの1/1000程度とし、敢えて陰極自体は表示部の必要電流値に対して高抵抗となるように設定し、補助配線によって陰極側の抵抗値を下げる。この点については
図4を参照して説明する。
【0039】
補助配線310の上方には、有機EL素子の保護材として機能する封止膜309及び、充填材(フィル材)311を介して封止基板が設けられる。充填材311としては、ポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系の公知の樹脂材料を用いることができる。この充填剤311は、薄膜トランジスタや有機EL素子が形成された基板と封止基板との間の空隙を埋めるためのものであるが、さらに両基板間の接着材としての機能を有していてもよい。
【0040】
なお、本実施形態において、「封止基板」とは、第2基板312、第2基板312の主面(第1基板301に対向する面)に設けられたRGBの各色にそれぞれ対応するカラーフィルタ313R、313G、313B、及び、それらカラーフィルタの隙間に設けられたブラックマトリクス314を含む。
【0041】
ただし、封止基板の構造はこれに限定されるものではなく、ブラックマトリクス314を省略してもよい。また、EL層307をRGB各色で分けて設ければ、封止基板からカラーフィルタを省略することも可能である。さらに、カラーフィルタを省略するか第1基板301側に形成すれば、封止基板そのものを省略することも可能である。
【0042】
図4は、サブ画素と補助配線の配置を示す図である。
【0043】
本実施形態の表示装置100においては、混色影響の強い第1色の画素の画素電極上のバンク306の開口部端と補助配線との距離は、混色影響の弱い第2色の画素の画素電極上のバンク306の開口部端と補助配線との距離よりも大きくなるように配置される。
図4(A)を参照すると、サブ画素401Gを挟む補助配線間の距離Xは、サブ画素401Rを挟む補助配線間の距離Yより大きい。
【0044】
このような配置にすることで、電気混色の影響を低減することが可能となる。混色影響の強い第1色とは、相対的に比視感度の高い色の集合を指し、例えば緑色、白色、黄色を含む。他方、混色影響の弱い第2色とは、相対的に比視感度の低い色の集合を指し、例えば赤色や青色を含む。
【0045】
図4(A)に示したとおり、本実施形態の表示装置100においては、補助配線が格子状に配置され、赤色、緑色、青色、白色の順にサブ画素が並べられる。サブ画素401Rまたはサブ画素401Bを挟む補助配線の間隔は、サブ画素401R及びサブ画素401Bの発光領域の幅と略同一であり、サブ画素401G及びサブ画素401Wを挟む補助配線はサブ画素401G及びサブ画素401Wから一定の幅大きく形成されている。すなわち、比視感度の高い色のサブ画素に対しては、より遠い位置に補助配線が設けられ、比視感度の低いサブ画素に対しては、より近い位置に補助配線が設けられる。本実施形態はあくまで例示であり、
図4(B)に示したとおり、補助配線は縦方向のみに配置してもよい。また、赤色、緑色、青色、白色はどのような並び方となっていてもよく、サブ画素401G及びサブ画素401Wと補助配線との距離が、サブ画素401R及びサブ画素401Bと補助配線との距離よりも大きくなっていればよい。サブ画素401R及びサブ画素401Bを挟む補助配線の間隔は、サブ画素401R及びサブ画素401Bの発光領域の幅と略同一でなくてもよい。
【0046】
また、同色が並ぶ方向と垂直な方向に延長される補助配線が等間隔に配線されていてもよく、そのような配置にすることで、特性を均一化できる。
【0047】
本実施形態の表示装置100においては、縦方向に同じ色のサブ画素が並ぶように配置されているため横方向の補助配線は上下のサブ画素からの距離が均一になるように配線されているが、縦方向に異なる色のサブ画素が並ぶように配置されている場合には、上下のサブ画素のいずれか一方に寄せるようにして補助配線を配置してもよい。例えば、緑色又は白色のサブ画素の下に赤色又は青色のサブ画素が配置されているような場合には、赤色又は青色のサブ画素の側に寄せて、補助配線を配置してもよい。
【0048】
このように、本実施形態の表示装置100においては、比視感度の高い緑色及び白色のサブ画素と比視感度の低い赤色及び青色のサブ画素とにおいて非対称に補助配線を配置する。具体的には、比視感度の高い緑色及び白色のサブ画素の発光層から補助配線までの距離を比視感度の低い赤色及び青色のサブ画素の発光層から補助配線までの距離よりも大きくする。
【0049】
陰極として用いている共通配線308は、補助配線310を形成する材料に比べて抵抗率の高い材料を用いており、さらに成膜厚を好適にすることで、補助配線310に比べて、共通配線308の横方向の単位距離又は単位面積当たりの抵抗値(シート抵抗値)を高くしている。従って、サブ画素と補助配線との位置関係を前述の通りとすることで、視感度の低い赤色または青色のサブ画素においては、共通配線+補助配線の合成抵抗値が緑色または白色のサブ画素のそれよりも下がるので、比視感度の低い赤色または青色のサブ画素が発光、比視感度の高い緑色または白色のサブ画素が非発光になっているときに、緑色または白色のサブ画素の方へ電流が流れて緑色または白色のサブ画素が発光してしまうことを防止することができる。他方、緑色及び白色のサブ画素から補助電極までの距離は大きいことから、緑色または白色のサブ画素における共通配線+補助配線の合成抵抗値は大きいままなので、緑色及び白色のサブ画素が発光、赤色または青色のサブ画素が非発光になっているときには、赤色または青色のサブ画素の方へ電流が流れて赤色または青色のサブ画素が発光してしまうことを防止することができる。
【0050】
したがって、本実施形態の表示装置によると、効率や色度等を犠牲にすることなく最適なOLED素子設計をすることが可能となる。また、前述のように、発光素子上に設ける陰極の抵抗値を敢えて高めとし、サブピクセル間に、金属など比較的抵抗値の低い材料を用いて補助配線を設け、かつ補助配線と発光素子との距離を、サブピクセルの色によって異ならせることにより、陰極の抵抗値を下げると同時に、電気混色の影響を低減することができる。
【0051】
(実施形態2)
図5(A)〜(D)は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置200のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。第2の実施形態と第1の実施形態との違いは、第2の実施形態に係る表示装置200は、縦方向及び横方向の両方において、比視感度の高い緑色または白色のサブ画素と、比視感度の低い赤色または青色のサブ画素が交互に配置され、比視感度の高い緑色及び白色のサブ画素同士及び、比視感度の低い赤色及び青色のサブ画素同士がそれぞれ対角に配置されている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る表示装置100と同じである。
【0052】
このような構成を有する第2の実施形態においては、隣接画素間距離を確保したままで開口率を向上させることができるので、高精細化に有利となる。
【0053】
(実施形態3)
図6(A)〜(D)は、本発明の第3の実施形態に係る表示装置300のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。第3の実施形態と第1の実施形態との違いは、第3の実施形態に係る表示装置300は、横方向において、比視感度の高い緑色または白色のサブ画素と、比視感度の低い赤色または青色のサブ画素が交互に配置され、縦方向には比視感度の高い緑色及び白色のサブ画素が同列に、また、比視感度の低い赤色及び青色のサブ画素が同列に配置されている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る表示装置100と同じである。
【0054】
このような構成を有する第3の実施形態においては、縦方向に比視感度の高い色同士または比視感度の低い色同士が隣り合うため、補助配線をどちらかの色の側に寄せる必要がない。したがって、補助配線をシンプルな格子状に配置することができ、加工が容易になるという利点がある。
【0055】
(実施形態4)
図7(A)〜(D)、
図8(A)〜(D)及び
図9(A)〜(D)は、本発明の第4の実施形態に係る表示装置400のサブ画素と補助配線の配置を示す図である。第4の実施形態と第1の実施形態との違いは、第4の実施形態に係る表示装置400においては、赤色、緑色、青色の3色のサブ画素から構成される点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る表示装置100と同じである。
【0056】
すなわち、第4の実施形態に係る表示装置400においても、
図7(A)や
図9(A)に示したように全サブ画素を挟むように補助配線を配置してもよく、
図7(B)に示したように縦方向には全サブ画素を挟むように補助配線を配置し、横方向には補助配線を配置しなくてもよい。また、
図7(C)、
図7(D)、
図9(C)に示したように、赤色、緑色、青色の3色はどのような並びで配置してもよい。
【0057】
さらに、
図8(A)、
図8(C)、
図9(B)や
図9(D)に示したように、赤色、緑色、青色、若しくは、青色、緑色、赤色の順に並んで配置された3色のサブ画素を1セットにして、その周囲を囲むように補助配線を配置してもよい。また、
図8(B)や
図8(D)に示したように、赤色、緑色、青色、若しくは、青色、緑色、赤色の順に並んで配置された3色のサブ画素を1セットにして、その左右を挟むように補助配線を配置してもよい。
【0058】
このような構成を有する実施形態においては、赤色と青色の間に挟まれる緑色のサブ画素を挟む補助配線を配置しなくても、比視感度の高い緑色及び白色のサブ画素の発光層から補助配線までの距離を確保して、緑色及び白色のサブ画素の配線抵抗の方が比視感度の低い赤色及び青色のサブ画素よりも大きい状態として、比視感度の高い緑色及び白色のサブ画素の印加電圧を下げることにより、電気混色の影響を低減することが可能となる。したがって、このような構成を有する実施形態においては、上記効果を奏しつつ、必要となる補助配線の量を減らすことがき、また、作成工程も容易になる。
【0059】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 表示装置
102 画素部
103 走査線駆動回路
104 データ線駆動回路
105 ドライバIC
201 画素
201R R(赤)に対応するサブ画素
201G G(緑)に対応するサブ画素
201B B(青)に対応するサブ画素
202 薄膜トランジスタ
301 第1基板
303 薄膜トランジスタ(TFT)
304 第1の絶縁層
305 画素電極(陽極)
306 バンク
307 EL層
308 共通電極(陰極)
310 補助配線
311 充填材
312 第2基板
313R R(赤)に対応するカラーフィルタ
313G G(緑)に対応するカラーフィルタ
313B B(青)に対応するカラーフィルタ
314 ブラックマトリクス