(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521623
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置およびそれに対応する光学ユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20190520BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-256820(P2014-256820)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-132821(P2015-132821A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2017年11月20日
(31)【優先権主張番号】13306814.8
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100123629
【弁理士】
【氏名又は名称】吹田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】ブロンド,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ドラジツク,バルター
(72)【発明者】
【氏名】シユーベルト,アルノ
【審査官】
越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0194389(US,A1)
【文献】
特許第4605152(JP,B2)
【文献】
特表2001−522063(JP,A)
【文献】
米国特許第06349001(US,B1)
【文献】
特開2004−021078(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0008624(US,A1)
【文献】
特表2008−506980(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0273246(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/170073(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0300634(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/064546(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0113092(US,A1)
【文献】
特開2006−171302(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0092328(US,A1)
【文献】
特開2013−235119(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0300766(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00−27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置であって、
前側矯正面および後側矯正面を有する光学ユニットと、
仮想画像を投影する画像プロジェクタと、
周囲光景画像を取り込む画像センサと、
を有し、
前記光学ユニットは、前記前側矯正面を通って入来する周囲光景画像光を前記画像センサに導き、かつ仮想画像光が前記後側矯正面を通って出射するように前記仮想画像光を導くように構成されており、
第1の光学補正素子は、前記前側矯正面によって生じる前記周囲光景画像の変形を補正するよう前記光学ユニットと前記画像センサとの間の光路中に位置し、第2の光学補正素子は、前記後側矯正面によって生じる前記仮想画像の変形を補償するよう前記画像プロジェクタと前記光学ユニットとの間の光路中に位置しており、
前記光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置は、前記画像センサによって取り込まれた前記周囲光景画像を解析して、前記画像プロジェクタに供給する仮想画像を前記周囲光景画像の解析結果に応じて作成するように構成された処理モジュールをさらに有する、前記ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記処理モジュールは、前記周囲光景画像の前記解析によって前記周囲光景画像中における追跡対象を特定し、前記追跡対象の大きさおよび位置に応じて前記仮想画像を作成するように構成されている、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1の光学補正素子は、前記前側矯正面によって生じる画像の変形を補正する光学的特性を有し、前記第2の光学補正素子は、前記後側矯正面によって生じる画像の変形を補正する光学的特性を有する、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記光学ユニットは分離層を有しており、前記分離層は、入来する光の一部を反射し、前記入来する光の残りの部分を透過するように構成されている、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記光学ユニットは、前記前側矯正面を有する前側板と、前記後側矯正面を有する後側板と、前記前側板と前記後側板の間に配置された中間板とを有する、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第1の光学補正素子は、前記前側板と前記画像センサとの間の光路中に位置し、前記第2の光学補正素子は、前記画像プロジェクタと前記中間板との間の光路中に位置する、請求項5に記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置は、グラス越しに見える周囲光景に重ね合された仮想画像を観察者に提供する。この仮想画像は、プロジェクタによって投影して、グラス上の光学素子を介して観察者の眼に導くことができる。光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置は、装置の左側のグラスに左画像を表示し、右側のグラスに右画像を表示して、観察者が奥行きを3次元的に知覚することができるようにすることによって、立体仮想画像を提示することもできる。
【0003】
このような光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置では、仮想画像が立体仮想画像である場合に、適切な位置および大きさで、かつ適切な奥行きで周囲光景画像上に仮想画像を提示するために、ディスプレイ装置が度付きレンズ機能を提供する矯正面を含む場合でも、観察者が、周囲光景画像と空間的な一貫性がある仮想画像を知覚することが好ましい。
【0004】
トロント大学の研究所であるEyeTap Personal Imaging(ePI)Labは、フラット・ビーム・スプリッタ・プレート(flat beam splitter plate)を用いて現実世界と仮想世界との間の対応を保つためにディスプレイおよびカメラを眼鏡に組み込む「EyeTap」技術を開発した(http://www.eyetap.org/research/eyetap.htmlを参照)。しかし、この技術は、眼鏡が度付きレンズを含む状況を想定していない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によれば、光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置は、前側矯正面および後側矯正面を有する光学ユニットと、仮想画像を投影する画像プロジェクタと、周囲光景画像を取り込む画像センサとを有する。光学ユニットは、前側矯正面を通って入来する周囲光景画像光を画像センサに導き、かつ仮想画像光が後側矯正面を通って出射するように仮想画像光を導くように構成されている。第1の光学補正素子が、光学ユニットと画像センサとの間の光路中に位置し、第2の光学補正素子が、画像プロジェクタと光学ユニットの間との光路中に位置する。この装置は、画像センサによって取り込まれた周囲光景画像を解析して、画像プロジェクタに供給する仮想画像を周囲光景画像の解析結果に応じて作成するように構成された処理モジュールをさらに有する。
【0006】
本発明の目的および利点は、特許請求の範囲に具体的に指摘する要素および組合せによって実現され、達成される。
【0007】
上記の概略的な説明、および以下の詳細な説明は、例示および説明のためのものであり、請求する本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0008】
本発明の上記その他の態様、特徴および利点は、以下の説明を添付の図面と関連付けて読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態によるシースルー・グラス型ディスプレイ装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態によるシースルー・グラス型ディスプレイ装置の構成要素を示すブロック図である。
【
図3】周囲光景から入来して画像センサに取り込まれる光の第1の光路と、画像プロジェクタから投影され、観察者の眼に向けられる光の第2の光路とを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明の実施形態の様々な態様について述べる。説明を目的として、完全な理解が得られるように、具体的な構成および詳細を記載する。ただし、本発明は、本明細書に記載する具体的な詳細を用いることなく実施することもできることも、当業者には明らかであろう。
【0011】
図1は、本発明の実施形態によるシースルー・グラス型ディスプレイ装置を示す図である。
【0012】
図1に示すように、シースルー・グラス型ディスプレイ装置100は、前側ガラス板112、中間ガラス板114および後側ガラス板116を有するガラス板ユニット110と、画像センサ120と、画像プロジェクタ130とを含み得る。画像センサ120は、第1の光学導光素子122を介して前側ガラス板112に光学的に接続され、画像プロジェクタ130は、第2の光学導光素子132を介して中間ガラス板114に光学的に接続されている。第1の光学補正素子124が、前板112と画像センサ120との間の光路中の、前板112の出射端部の後方に位置している。また、第2の光学補正素子134が、画像プロジェクタ130と中間板114との間の光路中の、中間板114の入射端部の前方に位置している。光学補正素子124および134の詳細については、後述する。
【0013】
装置100は眼鏡型装置とすることもできるので、2つのガラス板ユニットを互いに接続するブリッジ(図示せず)、および観察者の両耳の上にそれぞれ延びて装置100を適所に保持するのを助けるテンプル・アーム(図示せず)も含む。
図1では、図示を簡潔にするために、観察者の右眼105用の、装置100の半分の構成要素のみを示してある。
【0014】
前側ガラス板112は、観察者の近視または遠視を矯正するために、周囲光景側に位置する前側矯正面112a(
図1では湾曲は示していない)を有する。ガラス板112の前側矯正面112aは、周囲光景から入来する光150がガラス板112に入射したときに、その光を屈折させる。
【0015】
ガラス板ユニット110は、前側ガラス板112と中間ガラス板114との間に分離層113を有する。分離層113は、例えば、フレネル構造を有することができる。分離層113は、入来する光の一部を反射し、残りを透過させる、半反射特性を有する。
【0016】
分離層113は、前側ガラス板112の前側矯正面112aを通って周囲光景から入来する光ビームの方向を変えて、光ビームがガラス板112の両表面の間の全反射(TIR:Total Internal Reflection)によって前側ガラス板112内を横方向に伝搬するようにする。ガラス板112内を伝搬する光ビームは、第1の光学導光素子122を介して画像センサ120まで進んだ後に、画像センサ120に取り込まれる。分離層113は、周囲光景から入来する光が分離層113内を通って観察者の眼105に向かって進むように透過性である。
【0017】
画像プロジェクタ130は、仮想画像を投影するように構成されている。画像プロジェクタ130によって投影される仮想画像の光ビームは、第2の光学導光素子132を介して導かれた後に、中間ガラス板114に入射する。この光ビーム160は、板114の両面の間の全反射(TIR)によって中間ガラス板114内を横方向に伝搬する。次いで、光ビームの少なくとも一部は、分離層113によって反射され、観察者の眼105に向けられる。その結果、観察者に対して仮想画像が提示される。
【0018】
中間ガラス板114の後方の後側ガラス板116は、観察者の近視または遠視を矯正するために、観察者の眼の側に位置する後側矯正面116aを有する。後側矯正面116aは、後側ガラス板116から出射する光を屈折させる。
【0019】
なお、前側ガラス板112の前側矯正面112aおよび後側ガラス板116の後側矯正面116aの曲率は、視力検査によって予め測定することができる、観察者の視力特性に応じて事前に決定することができることに留意されたい。また、分離層113の半反射性要素の寸法、角度および反射/透過レベルは、上述の周囲光景画像光および仮想画像光の光路がガラス板ユニット110内に確立されるように規定することができることにも留意されたい。さらに、例えば、分離層113の領域を除く前側ガラス板112と中間ガラス板114との間の境界面、および中間ガラス板114と後側ガラス板116との間の境界面を、ガラス板112,114および116より低い屈折率を有する透明樹脂で構成して、前側ガラス板112および中間ガラス板114内で全反射(TIR)を生じさせることができるようにすることも可能である。
【0020】
装置100は、画像センサ120および画像プロジェクタ130に接続された処理モジュール140をさらに含む。モジュール140は、(1)例えば周囲光景画像中における追跡対象を特定するための、画像センサ120によって取り込まれた周囲光景画像の解析、ならびに、(2)取り込まれた周囲光景画像中における追跡対象の位置および大きさに応じて適当な位置に適当な大きさでガラス板ユニット110上に仮想画像が提示されるように仮想画像を提供するための仮想画像の重ね合せ(overlay)を実行するように構成されている。
【0021】
図2は、本発明の実施形態によるシースルー・グラス型ディスプレイ装置の構成要素を示すブロック図である。
図2に示すように、この装置200の構成要素は、画像プロジェクタ210と、処理モジュール230と、画像センサ250とを含む。画像プロジェクタ210と画像センサ250は、有線または無線の接続を介してそれぞれモジュール230に接続されている。
【0022】
画像プロジェクタ210は、仮想画像を投影するディスプレイ215と、ディスプレイ215を制御する制御装置220と、ディスプレイ215から光学導光素子132(
図1)に光を導く光学素子225とを含む。ディスプレイ215の例示的な実施態様は、LCD(液晶ディスプレイ)とLED(発光ダイオード)のRGB光源モジュールとで構成することができる。なお、その他の任意の技術を利用して、ディスプレイ215を構成してもよいことに留意されたい。
【0023】
モジュール230は、受信機235およびメモリ240を含む。これらの受信機235およびメモリ240は、仮想画像として投影される画像または映像を受信し、格納するように構成されている。これらの画像または映像は、任意の種類の外部装置(図示せず)に格納されており、その外部装置から有線または無線の接続を介して受信する。受信機235およびメモリ240は、取り込まれた周囲光景画像を画像センサ250から受信して格納するようにも構成されている。
【0024】
モジュール230は、プロセッサ245をさらに含む。プロセッサ245は、メモリ240に格納された周囲光景画像の解析を実行して、例えば、周囲光景画像中における追跡対象の大きさおよび/または位置を特定する。例えば、追跡対象は、観察者の眼の前に伸ばした、観察者の手であってもよい。プロセッサ245は、取り込まれた周囲光景画像中における追跡対象の位置および大きさに応じて適当な位置に適当な大きさでガラス板ユニット110上に仮想画像形成ビームが提示されるように仮想画像を提供するための仮想画像の重ね合せも実行する。
【0025】
例えば、プロセッサ245は、ガラス板ユニット110を通して見える周囲光景画像中のトラッキングされた観察者の手の上、またはその隣に仮想画像が重ね合されるように、かつ仮想画像が観察者の手と一緒に動くように、取り込まれた周囲光景画像中におけるトラッキングされた観察者の手の位置および大きさに応じて、ガラス板ユニット110の分離層113の領域に表示される仮想画像の大きさおよび位置を決定することができる。仮想画像は、受信機235が受信してメモリ240に格納された画像、映像またはテキスト情報などであってもよい。画像プロジェクタ210に供給される仮想画像は、プロセッサ245によって、上述の周囲光景画像の解析の結果に応じて作成される。大きさおよび位置が調節された仮想画像のデータは、プロセッサ245から画像プロジェクタ210に出力され、その後、大きさおよび位置が調節された仮想画像が、画像プロジェクタ210によって投影される。
【0026】
上述のように、プロセッサ245によって周囲光景画像の解析を実行して、周囲光景画像中における追跡対象の大きさおよび/または位置を特定する。周囲光景画像の解析は、表示される仮想画像の較正(キャリブレーション)のために必要であるので、プロセッサ245における解析プロセスおよび画像センサ250における撮像動作は、較正が確立されたら停止または解除することもできる。停止した場合には、これらのプロセスおよび動作は、例えば周囲光景画像および追跡対象が変化したときなど、周囲光景画像中における追跡対象の大きさおよび/または位置を特定し直さなければならないときに、再び作動させることができる。コンシューマの用途が光景の取込みを必要としない場合には、画像センサおよび撮像動作を除去すればよい。この場合には、較正は、例えば専門機器のある眼鏡店ってもよい。この場合には、コンシューマ眼鏡製品の複雑さおよびコストを低減することができる。
【0027】
図1を参照すると、プロジェクタ130によって投影された仮想画像光160は、中間ガラス板114内を伝搬し、仮想画像光160の少なくとも一部が、分離層113によって観察者の眼105に向かって方向が変えられる。方向が変えられた光は、眼105の網膜に到達し、これにより、観察者はガラス板ユニット110を通して見える周囲光景画像に重ね合された仮想画像を知覚することになる。後側矯正面116aは、後側ガラス板116から出射する周囲光景画像光および仮想画像光の両方を屈折させる。
【0028】
図3は、周囲光景から入来して画像センサに取り込まれる光の第1の光路と、画像プロジェクタから投影され、観察者の眼に向けられる光の第2の光路とを示す概略図である。
図3に示す前側ガラス板310、第1の光学補正素子315および画像センサ320は、
図1に示す要素112,124および120にそれぞれ対応する。また、
図3に示す画像プロジェクタ350、第2の光学補正素子355および後側ガラス板360は、
図1に示す要素130,134および116にそれぞれ対応する。
【0029】
図1および
図3を参照すると、上述のように、前側ガラス板112に入射した光は、板112の前側矯正面112aによって屈折される。従って、前側ガラス板112に入射し、板112内を伝搬し、画像センサ120に取り込まれる周囲光景画像は、前側ガラス板112の前側矯正面112aによって変形される(拡大される、縮小される、または歪まされる)。取り込まれた周囲光景画像に補正が行われない場合には、周囲光景画像は、モジュール230(
図2)のプロセッサ245によって正しく認識されず、これによりプロセッサ245から出力される仮想画像の位置または大きさに誤りが生じ、ガラス・ユニット110を通して見える周囲光景画像と周囲光景画像に重ね合される仮想画像との間に空間的な非一貫性が生じることになる。このような補正は、プロセッサ245が実行する任意の種類の画像処理によって実現することもできるが、この解決策では、プロセッサ245に要求される計算コストが大きくなり、画像処理中の再サンプリングまたは補間によって、取り込まれる周囲光景画像の画質が低下することになる。
【0030】
取り込まれた周囲光景画像の変形を補正するための画像処理を必要としない別の手法が、本発明の実施形態によって提供される。この実施形態では、第1の光学補正素子124は、画像センサ120の入力端部に設けられる。光学補正素子124は、光学レンズまたは光学表面などであってもよい。光学補正素子124は、前側ガラス板112の前側矯正面112aによって生じる周囲光景画像の変形を補正する、または打ち消す光学的特性を有する。光学補正素子124の光学的特性は、前側ガラス板112の前側矯正面112aの光学的特性に基づいて、製造時に選択することができる。光学補正素子124により、画像センサ120は、画像センサ120の撮像領域に形成される補正された「元の」周囲光景画像を取り込むことができる。
【0031】
また、上述のように、画像プロジェクタ130によって投影され、中間ガラス板114内を伝搬し、分離層160によって観察者の眼105に向かって方向が変えられた光は、後側ガラス板116の後側矯正面116aによって屈折される。従って、観察者の眼105は、後側ガラス板116の後側矯正面116aによって変形した(拡大した、縮小した、または歪んだ)仮想画像を見る。観察者に提示される仮想画像に補正が行われない場合には、観察者は、ガラス板ユニット110を通して見える周囲光景に対して不適切な位置に、かつ/または不適切な大きさで重ね合された仮想画像を見ることになり、これによりガラス・ユニット110を通して見える周囲光景画像と周囲光景画像に重ね合される仮想画像との間に空間的な非一貫性が生じることになる。後側矯正面116aによって生じる変形を考慮して、予め画像処理によって仮想画像を変形させておくこともできるが、この手法では、必要とされる計算コストが大きくなり、画像処理中の再サンプリングまたは補間によって仮想画像の画質も低下することになる。
【0032】
この実施形態では、第2の光学補正素子134が、画像プロジェクタ130の出力端部に設けられる。光学補正素子134は、光学レンズまたは光学表面などであってもよい。光学補正素子134は、後側ガラス板116の後側矯正面116aによって生じる仮想画像の変形を補正する、または打ち消す光学的特性を有する。光学補正素子134の光学的特性は、後側ガラス板116の後側矯正面116aの光学的特性に基づいて、製造時に選択することができる。この実施形態では、画像プロジェクタ130によって投影された「元の」仮想画像を、光学補正素子134が変形させ(拡大し、縮小し、または歪ませ)、その後、この「変形した」仮想画像の光が、中間ガラス板114内を全反射(TIR)によって伝搬し、分離層160によって反射されて観察者の眼105に向かって方向が変えられ、最終的に後側ガラス板116の後側矯正面116aを通って後側ガラス板116から出射する。この「変形した」仮想画像は、「変形した」仮想画像の光が後側矯正面116aから出射するときに生じる屈折によって、「元の」仮想画像に復元される。従って、「元の」仮想画像が、観察者の眼105に提示される。
【0033】
上述のように、図示を簡潔にするために、
図1には、観察者の右眼用の装置100の半分の構成要素しか示していない。ただし、装置100は、
図1に示す構成要素と同じ観察者の左眼用の構成要素を、対称的に含むことができ、この場合、観察者の両眼に仮想画像を提供することになることに留意されたい。あるいは、装置100は、観察者の左眼用としては、単一の単純なガラス板と、そのガラス板に接続されたテンプルだけを含むか、あるいは、ガラス板のない空のフレームと、そのフレームに接続されたテンプルだけを含んでいてもよく、この場合は、観察者の片眼にしか仮想画像が供給されないが、特定の用途では、これで問題ない。
【0034】
以上、前側ガラス板112、中間ガラス板114および後側ガラス板116の3つの要素を含むという状況において、ガラス板ユニット110について述べてきた。しかし、ガラス板ユニット110は、上述のガラス板ユニットの機能を実行する限り、いかなる構成でもとることができ、それらの機能としては、仮想画像光の入射および抽出、周囲光景画像光および仮想画像光のガイド、ならびに視力矯正などが少なくとも挙げられることに留意されたい。この意味において、2つの隣接する板112および114および/または2つの隣接する板114および116を一体化することもでき、従って、ガラス板ユニット110の板の数は3枚未満であってもよい。
【0035】
さらに、上述の例では、周囲光景画像光150および仮想画像光160は、それぞれ、板112内および板114内の全反射(TIR)によって導かれる。なお、ガラス板ユニット110は、光150および160の少なくとも一方をTIRの手法以外の手法によって導くように構成することもできることに留意されたい。例えば、分離層113で反射された周囲光景画像光150を、第1の光学補正素子124によって画像センサ120上に直接収束させ、かつ/または、画像プロジェクタ130から投影され、第2の光学補正素子134を通過した仮想画像光160を、分離層113に直接当てることもできる。
【0036】
さらに、本発明の一実施形態では、ガラス板ユニット110は、分離層113の代わりに、そのうちの少なくとも2つの間に隙間が存在するように位置決めされた反射鏡要素のアレイを含むこともできる。本発明の別の実施形態では、ガラス板ユニット110は、分離層113の代わりに、そのうちの少なくとも2つの間に隙間が存在するようにやはり互いに離間した半反射鏡要素のアレイを含むこともできる。このような隙間によって、外部光をその内部に通すことができる。
【0037】
本明細書に記載する全ての例および条件に関する表現は、本発明と、当技術分野をさらに進歩させるために発明者が与える概念とを、読者が理解するのを助けるという教育的な目的を有するものであって、本発明がこれらの具体的に列挙した例および条件に限定されるわけではないものと解釈されたい。また、本明細書におけるこれらの例の構成は、本発明の優劣を示すこととは無関係である。
上記の実施形態に加えて、以下の付記を開示する。
(付記1)
光学シースルー・グラス型ディスプレイ装置であって、
前側矯正面および後側矯正面を有する光学ユニットと、
仮想画像を投影する画像プロジェクタと、
周囲光景画像を取り込む画像センサと、
を有し、
前記光学ユニットは、前記前側矯正面を通って入来する周囲光景画像光を前記画像センサに導き、かつ仮想画像光が前記後側矯正面を通って出射するように前記仮想画像光を導くように構成されており、
第1の光学補正素子は、前記光学ユニットと前記画像センサとの間の光路中に位置し、第2の光学補正素子は、前記画像プロジェクタと前記光学ユニットとの間の光路中に位置しており、
前記装置は、前記画像センサによって取り込まれた前記周囲光景画像を解析して、前記画像プロジェクタに供給する仮想画像を前記周囲光景画像の解析結果に応じて作成するように構成された処理モジュールをさらに有する、前記ディスプレイ装置。
(付記2)
前記処理モジュールは、前記周囲光景画像の前記解析によって前記周囲光景画像中における追跡対象を特定し、前記追跡対象の大きさおよび位置に応じて前記仮想画像を作成するように構成されている、付記1に記載のディスプレイ装置。
(付記3)
前記第1の光学補正素子は、前記前側矯正面によって生じる画像の変形を補正する光学的特性を有し、前記第2の光学補正素子は、前記後側矯正面によって生じる画像の変形を補正する光学的特性を有する、付記1に記載のディスプレイ装置。
(付記4)
前記光学ユニットは分離層を有しており、前記分離層は、入来する光の一部を反射し、前記入来する光の残りの部分を透過するように構成されている、付記1に記載のディスプレイ装置。
(付記5)
前記光学ユニットは、前記前側矯正面を有する前側板と、前記後側矯正面を有する後側板と、前記前側板と前記後側板の間に配置された中間板とを有する、付記1に記載のディスプレイ装置。
(付記6)
前記第1の光学補正素子は、前記前側板と前記画像センサとの間の光路中に位置し、前記第2の光学補正素子は、前記画像プロジェクタと前記中間板との間の光路中に位置する、付記5に記載のディスプレイ装置。