特許第6521685号(P6521685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521685
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
   A61F13/15 100
   A61F13/15 323
   A61F13/15 350
   A61F13/15 352
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-57590(P2015-57590)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-174753(P2016-174753A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 恵
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−125407(JP,A)
【文献】 特開2011−110287(JP,A)
【文献】 特開2010−094879(JP,A)
【文献】 特開2007−105925(JP,A)
【文献】 特開2004−298287(JP,A)
【文献】 特開平07−213552(JP,A)
【文献】 特開2010−136899(JP,A)
【文献】 特開2002−035036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体を厚み方向に圧縮した後、対向する2つを一組として送り方向に間隔をあけて2組以上配置され、かつ隣り合う組同士で軸方向に角度差を持たせたロール間に、前記吸収体を通過させることにより、前記吸収体をねじる工程を含み、かつ前記ねじる工程では、前記吸収体を一方側にねじった後、他方側にねじるように前記ロールを配置してあることを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
隣り合う組同士の前記ロール間で軸方向の角度差δは、0°<δ<180°に設定してある請求項1記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
隣り合う組同士の前記ロール間で送り方向の間隔は、前記吸収体の吸収性物品の長手方向長さより短く設定してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
対向する2つのロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凹部を設けてある請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記凹部のパターンは、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせてある請求項記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
対向する2つのロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凸部を設けてある請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
前記凸部のパターンは、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせてある請求項記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記吸収体は、パルプの目付が120〜200g/m、高吸水性樹脂の目付が30〜120g/mで積繊された薄型積繊吸収体である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項9】
前記吸収性物品の厚みは1mm〜3mmの薄型吸収性物品である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、医療用パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品に係り、吸収体を厚み方向に圧縮した後、ねじることによって、薄型でありながらしなやかさを持たせた吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に粉砕パルプ等の紙綿(高吸水性樹脂混入)からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
近年は、比較的嵩のある吸収性物品の場合には、持ち運びに不便である、または収納性が悪いなどの問題があるとともに、物流の効率化や省資源化などの要請から、体液排出部位における吸収体の厚みが5mm以下、好ましくは1〜3mmの薄型吸収性物品が好まれる傾向にある。吸収性物品の薄型化に際しては、薄型化やコンパクト化が成されても吸水量を落とすことは出来ないため、必然的に高吸水性樹脂の含有率を上げたり、ポリマーシートを使用したりするとともに、吸収体に対して過酷なプレスを施すことにより薄型化を図ることが多く行われている。
【0004】
例えば、下記特許文献1においては、複数本の高密度部と複数本の低密度部とが、それぞれ、吸収体の長手方向に延びて形成されており、該高密度部と該低密度部とが、吸収体の幅方向に交互に形成されている吸収体が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、吸水性繊維中に高吸水性樹脂が分散混入されてなるシート状体の吸収体を十分な厚み寸法まで薄型化しつつ、柔らかさ、クッション性があり、良好な装着感を確保できるようにすることなどを目的として、吸収体が経血や尿等の排出口に対応する排出口対応領域を除いた領域に波状加工部分を有する吸収性物品が開示されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3においては、薄型化を図りながらも、吸収性能を維持でき、十分な柔軟性を兼ね備えた吸収体を提供するため、吸収体面に、裏面に貫通する多数の貫通穴を形成した吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−136899号公報
【特許文献2】特開2006−68551号公報
【特許文献3】特開2002−35036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、幅方向から圧力が加わったときに、高密度部間に存する低密度部が柔軟に変形するので、高密度部を有するにも拘わらず、着用者の動きに対する追従性が良好となるなどの効果が記載されているが、このような効果は幅方向からの圧力が加わったときだけ発揮されるものであり、長手方向の曲げなどに対しては高密度部が変形しにくいため、身体に対するフィット性が低下して、吸収体の硬さによる違和感が生じていた。また、幅方向からの圧力に対して、たとえ低密度部が柔軟に変形したとしても、そもそも高密度部が変形しにくいため、身体に対するフィット性が低下する場合があると考えられる。
【0009】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、吸収体に波状加工部分を設けることによって変形しやすくしているが、吸収体を波状加工することにより吸収体が圧縮されて高密度化するため、吸収体のしなやかさや柔軟性が低下するおそれがあった。
【0010】
さらに、上記特許文献3記載の吸収体では、裏面に貫通する多数の貫通穴が形成されているため、この貫通穴やその周辺から吸収体の解れや割れが生じる可能性があるとともに、貫通穴を設けることによって吸収体の吸収量が減少するという問題があった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体を薄型化しつつ、吸収体の柔軟性を高め、吸収体をしなやかに変形させて身体にフィットしやすくするとともに、吸収体の硬さによる違和感を軽減した吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体を厚み方向に圧縮した後、対向する2つを一組として送り方向に間隔をあけて2組以上配置され、かつ隣り合う組同士で軸方向に角度差を持たせたロール間に、前記吸収体を通過させることにより、前記吸収体をねじる工程を含み、かつ前記ねじる工程では、前記吸収体を一方側にねじった後、他方側にねじるように前記ロールを配置してあることを特徴とする吸収性物品の製造方法が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、吸収体を厚み方向に圧縮して薄型化する吸収体の圧縮工程の後、吸収体にねじり変形を加える吸収体のねじり工程を経ることによって、圧縮された吸収体を変形させやすくするための変形癖をつけるようにしている。前記ねじり工程を経ることによって、前記圧縮工程における吸収体の圧縮により増加した吸収体の変形抵抗が軽減され、吸収体を薄型に維持したまま、曲げやねじれ、幅方向からの圧力などに対する柔軟性が高まり、吸収体がしなやかに変形して身体にフィットしやすくなるとともに、吸収体の硬さによる違和感が軽減できるようになる。前記ねじり工程では、対向する2つを一組として送り方向に間隔をあけて2組以上配置され、かつ隣り合う組同士で軸方向に角度差を持たせたロール間に、前記吸収体を通過させることによって吸収体にねじり変形を加えている。
【0014】
本発明では、前記吸収体を一方側にねじった後、他方側にねじるように前記ロールを配置してある。すなわち、吸収体がより一層しなやかに変形できるように、吸収体に両側にねじり変形を加えるようにしている。
【0015】
請求項2に係る本発明として、隣り合う組同士の前記ロール間で軸方向の角度差δは、0°<δ<180°に設定してある請求項1記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明では、吸収体が隣り合う組同士のロール間を通過したときに、吸収体に確実にねじり変形が加わるようにするとともに、過大なねじりによって吸収体の破壊が生じないように、隣り合う組同士のロール間で軸方向の角度差δを、0°<δ<180°に設定している。
【0017】
請求項3に係る本発明として、隣り合う組同士の前記ロール間で送り方向の間隔は、前記吸収体の吸収性物品の長手方向長さより短く設定してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0018】
上記請求項3記載の発明では、隣り合う組同士のロール間を通過する過程で、吸収体に確実に一度はねじり変形が加わるようにするため、隣り合う組同士のロール間で送り方向の間隔を、吸収体の吸収性物品の長手方向長さより短く設定している。
【0019】
請求項に係る本発明として、対向する2つのロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凹部を設けてある請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、ロールの表面構造として、対向する2つのロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凹部を設けることによって、ロール間に挟まれた吸収体がねじられた際にロール表面で滑るのが防止でき、吸収体をより一層ねじりやすくしている。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記凹部のパターンは、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせてある請求項記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明では、ロール表面の凹部のパターンを、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせることによって、隣り合う組同士で同一方向への滑りを防止し、より確実に吸収体にねじり変形が加わるようにしている。
【0023】
請求項に係る本発明として、対向する2つのロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凸部を設けてある請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0024】
上記請求項記載の発明では、対向する2つのロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凸部を設けることによって、ロール間を通過する吸収体にエンボス加工が施されるようにしている。これによって、吸収体がより一層しなやかに変形できるようになる。
【0025】
請求項に係る本発明として、前記凸部のパターンは、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせてある請求項記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0026】
上記請求項記載の発明では、隣り合うロールで凸部のパターンを異ならせることによって、両方向にしなやかになるようにしている。
【0027】
請求項に係る本発明として、前記吸収体は、パルプの目付が120〜200g/m、高吸水性樹脂の目付が30〜120g/mで積繊された薄型積繊吸収体である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0028】
請求項に係る本発明として、前記吸収性物品の厚みは1mm〜3mmの薄型吸収性物品である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品の製造方法が提供される。
【0029】
上記請求項8,9記載の発明では、薄型吸収性物品として、吸収体の目付及び吸収性物品の厚みについて具体的に規定している。
【発明の効果】
【0030】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体を薄型化しつつ、吸収体の柔軟性が高められ、吸収体がしなやかに変形して身体にフィットしやすくなるとともに、吸収体の硬さによる違和感が軽減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】生理用ナプキン1の製造工程の一部を示す側面図である。
図2】ねじり工程を示す斜視図である。
図3】ねじり工程に配置されたロールを送り方向から見た視図である。
図4】ねじり工程を示す平面図である。
図5】他の形態例に係るねじり工程を示す斜視図である。
図6】他の形態例に係るねじり工程を示す斜視図である。
図7】生理用ナプキン1の一例を示す一部破断展開図である。
図8図7のVIII−VIII線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0033】
本発明に係る製造方法は、例えば図7及び図8に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4を囲繞するクレープ紙や不織布などからなる被包シート5とから主に構成された生理用ナプキン1(参考形態例について後段で詳述。)を製造するためのものである。
【0034】
前記生理用ナプキン1の具体的な製造工程の一部を図1に示す。図1に示されるように、本製造方法では、外周面に適宜の間隔で吸収体成形用凹部10a、10a…を備えたドラム積繊機10において、前記吸収体形成用凹部10a内に細かく粉砕された粉砕パルプが空気搬送されて積繊され、コンベア上に転移される積繊工程と、この積繊した吸収体4が対向する2つの圧縮ロール11とアンビルロール12との間を通過することにより、前記吸収体4が厚み方向に圧縮され薄型化される圧縮工程と、この圧縮された吸収体4にねじり変形を加えるねじり工程とを有している。
【0035】
前記圧縮工程では、所定の間隔をあけて圧縮ロール11とアンビルロール12とを対向配置し、これらのロール11、12間に吸収体4を通過させることによって、吸収体4を厚み方向に圧縮し薄型化している。前記圧縮ロール11及びアンビルロール12は、表面が平坦に形成され、吸収体4を厚み方向に均一に圧縮するものでもよいし、前記圧縮ロール11の表面に適宜のパターンで凸条が設けられ、該凸条によって他の部分より高い圧力で圧縮された高圧縮部が吸収体4の表面に適宜のパターンで形成されるようにしたものでもよい。前記圧縮工程を通過する吸収体4は、前記被包シート5によって囲繞された状態とするのが好ましい。
【0036】
前記ねじり工程では、詳細には図2に示されるように、対向配置された2つのロールを一組として、送り方向に間隔をあけて2組以上のロールが配置されている。図2に示される例では、吸収体4の送り方向に沿って、順に第1組目のロール13、14及び第2組目のロール15、16からなる2組のロールが配置されている。
【0037】
また、前記ロール13〜16は、隣り合う組同士で軸方向に角度差δを持たせて配置されている。図示例では、前記第1組目のロール13、14は、軸方向がほぼ水平となるように平行配置されている。また、第2組目のロール15、16は、軸方向が前記第1組目のロール13、14に対して、送り方向の中心軸C回りに回転して、所定の角度差δ(図3参照。)を有するように平行配置されている。
【0038】
そして、これらのロール間に、前記圧縮工程で圧縮した吸収体4を通過させることにより、吸収体4に送り方向の中心軸C回りに対するねじり変形を加えている。すなわち、図2に示されるように、吸収体4の送り方向の後方が第1番目のロール13、14間に支持されるとともに、吸収体4の送り方向の前方が、第1番目のロール13、14に対して所定の角度差δを持つように配置された第2番目のロール15、16間に支持されることによって、吸収体4にねじり変形が加わるようにしている。
【0039】
このように、前記吸収体4を、圧縮工程で圧縮した後、ねじり工程でねじり変形を加えることによって、前記圧縮工程において吸収体4を圧縮したことにより増加した吸収体4の変形抵抗が軽減され、吸収体4を薄型に維持したまま、曲げやねじれ、幅方向からの圧力などに対する柔軟性が高まり、吸収体4がしなやかに変形して身体にフィットしやすくなるとともに、吸収体4の硬さによる違和感が軽減できるようになる。また、前記ねじり工程では所定の角度差を持たせたロール間に吸収体4を通過させるだけなので、前記吸収体4を圧縮工程から搬送する過程で吸収体4をねじることができるようになり、設備が単純化できる。
【0040】
ここで、前記吸収体4は、長手方向を送り方向に沿って配向するのが好ましく(すなわち、縦流れとするのが好ましく)、吸収体4の略長手方向中心線を中心軸とした軸回りにねじり変形が加わるようにするのが好ましい。
【0041】
図3に示されるように、隣り合う組同士の第1番目のロール13、14と第2番目のロール15、16との軸方向の角度差δは、0°<δ<180°、好ましくは30°≦δ≦90°とするのがよい。この角度差δは、大きくとればとる程、吸収体4がより大きくねじられ、吸収体4により良好なしなやかさが付与できるようになるため好ましいが、δを180°以上にすると、吸収体4が過度にねじられて裂けや割れが生じるおそれがあるので好ましくない。
【0042】
前記ねじり工程において、隣り合う組同士のロール間における送り方向の間隔D(ロールの軸間距離)は、吸収体4のナプキン長手方向長さLより短くするのが好ましい。これにより、吸収体4がロール間を通過する過程で、隣り合うロール間の両方に吸収体4が支持されるようになり、吸収体4に確実にねじり変形が加えられるようになる。前記間隔Dと長さLとの関係は、D/Lが0.6〜0.9、好ましくは0.7〜0.9となるようにするのがよい。D/Lが0.6より小さいと、ロール間の角度差によるねじりが吸収体4の十分な長さに亘って作用しないため、ねじる効果が低下するおそれがあり、0.9より大きいと、吸収体4の端部しかロールで支持できないため、吸収体4にしっかりとねじり変形を加えることができなくなるおそれがある。
【0043】
前記ねじり工程では、図2に示されるように、吸収体4を送り方向の中心軸C回りの一方側にのみねじるようにしてもよいし、図5に示されるように、送り方向に間隔をあけて5組のロールを配置することにより、吸収体4を送り方向の中心軸C回りの一方側にねじった後、他方側にねじるようにしてもよい。図5に示される例では、軸方向がほぼ水平に配置された第1組目のロール13、14と、軸方向がこれと所定の角度差で送り方向の中心軸C回りの一方側に傾斜した第2組目のロール15、16と、軸方向がほぼ水平に配置された第3組目のロール17、18と、軸方向がこれと所定の角度差で送り方向の中心軸C回りの他方側に傾斜した第4組目のロール19、20と、軸方向がほぼ水平に配置された第5組目のロール21、22とから構成されている。吸収体4に送り方向の中心軸C回りの両方にねじり変形を加えることによって、吸収体4の柔軟性が増し、より一層しなやかに変形できるようになる。
【0044】
図6に示されるように、対向する2つのロールのうち、少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凹部30を設けることができる。前記凹部30を設けることにより、前記凹部30に吸収体4が食い込んで吸収体4が滑らずにロール間を通過でき、隣り合うロール間で確実にねじり変形が加わるようになる。
【0045】
前記凹部30は、ロール外周面より窪ませた部分であり、円形、楕円形、多角形などの小さな多数の窪みを離散的に設けたものでもよいし、連続する溝状に形成したものでもよい。前記凹部30は、対向する2つのロールの両方に設けてもよいし、図6に示されるように、片方のみに設けるようにしてもよい。
【0046】
前記凹部30のパターンは、図6に示されるように、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせるのが好ましい。これにより、隣り合う組同士で同一方向への滑りが防止でき、吸収体4をこれらのロール間で確実にねじることができるようになる。
【0047】
また、前記凹部30を設ける構成に代えて、対向する2つのロールのうち、少なくとも一方のロールの表面に、ロール周方向又はロール軸方向に沿うパターンの凸部を設けてもよい。前記凸部を設けることにより、ロール間を通過する吸収体4にエンボス加工が施されるため、吸収体4がより一層しなやかに変形できるようになる。また、ロール間を通過する吸収体4の滑りも防止できる。
【0048】
前記凸部は、ロール外周面より突出させた部分であり、円形、楕円形、多角形などの小さな多数の凸部を離散的に設けたものでもよいし、連続する突条に形成したものでもよい。前記凸部は、対向する2つのロールの両方に設けてもよいし、片方のみに設けてもよい。また、一方のロールに凸部を形成し、他方のロールに前記凸部に噛み合う凹部を形成してもよい。
【0049】
前記凸部のパターンは、隣り合う組同士でロール周方向とロール軸方向に異ならせることができる(図6参照。)。これにより、ロール周方向及びロール軸方向の両方向にしなやかにできる。
【0050】
ところで、前記ねじり工程においてロールの配置は、図2に示されるように、隣り合う組同士で、水平状態のロール13、14と、ねじりの回転角が最大となる位置のロール15、16とから構成するのが好ましく、これらの組同士のロールの中間に、中間の角度差を持たせた中間ロールを配置しないのが望ましい。前記中間ロールを設けた場合には、水平状態からねじりの回転角が最大となるまでの間で、吸収体4の自由なねじり変形が阻害されるおそれがあるので、このような中間ロールを設けないのが好ましい。
【0051】
前記吸収体4は、図1に示される積繊工程において、被包シート原反から前記被包シート5となる連続シートを繰り出し、その上面に、ドラム積繊機10の吸収体成形用凹部10a内に積繊された吸収体が転移されることによって、前記被包シート5となる連続シートで囲繞された吸収体4がコンベア上を搬送されるようにするのが好ましい。また、圧縮工程とねじり工程との間において、前記被包シート5となる連続シートで囲繞された吸収体4の前記連続シートを裁断した後、この被包シート5で囲繞された吸収体4を、裏面シート原反から繰り出した前記不透液性裏面シート2となる連続シートの上面に積層するとともに、その上面に、表面シート原反から繰り出した前記透液性表面シート3となる連続シートを積層することによって、被包シート5で囲繞されるとともに不透液性裏面シート2及び透液性表面シート3となる連続シートの間に介在された吸収体4がコンベア上を搬送されるようにしてもよい。このように、前記被包シート5となる連続シート又は不透液性裏面シート2、透液性表面シート3となる連続シートがガイドとなって吸収体4を隣り合うロール間でねじり変形を加えながら通過させることができるようになる。
【0052】
〔生理用ナプキン1の参考形態例〕
本発明に係る製造方法によって製造される生理用ナプキン1の参考形態例について、図7及び図8に基づいて詳述する。
【0053】
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0054】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。
【0055】
これら不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するために、図示例のようにクレープ紙や不織布などからなる被包シート5などによって囲繞することが好ましい。
【0056】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4は、積繊やエアレイド法により作製されたものを用いることができる。積繊により作製される場合の積繊パルプの目付は、120〜200g/m、好ましくは130〜150g/mの薄型積繊吸収体とするのが好ましい。目付は、吸収体の全体に亘って均一な目付としても良いし、異なる目付で形成してもよい。また、前記高吸水性樹脂としては、高吸水ポリマー粒状粉(SAP)や高吸水ポリマー繊維(SAF)を用いることができ、30〜120g/m、好ましくは50〜80g/mの目付とするのが好ましい。
【0057】
本生理用ナプキン1は、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された生理用ナプキン1の組立状態(個包装シートやズレ止め粘着剤層及びズレ止め粘着剤層を覆う剥離紙を含まない。)で、厚みが1〜3mm、好ましくは1〜2mmの薄型生理用ナプキンとするのがよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の有効性の確認実験について説明する。試験体は、目付150g/mのパルプと、目付65g/mのポリマーとを積繊した吸収体4をクレープ紙で囲繞した後、エンボスにより厚み1.4mm(吸収体4及びクレープ紙の厚み)に薄型化した薄型積繊吸収体を用いた。平面寸法は、幅74mm、長さ210mmである。
【0059】
実験では、製造ライン上で吸収体4がねじられる状態を再現するため、以下の手順によるねじれ再現処理を行った。先ず、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製、RTC−1210A)を用いて、前記試験体を長手方向中心軸回りに180°ねじった状態で、長手方向の両端部をチャック間距離30mmのチャック間に固定し、速度1,000mm/minでチャック間距離が試験体長さ(210mm)となるまで引っ張る。一旦、引張力を解放後、逆方向に180°ねじった状態で同じようにセットし、同様に引っ張る。
【0060】
このようにしてねじれ再現処理を行った試験体と、ねじれ再現処理を行わない試験体とについて、それぞれしなやかさの測定を行った。測定では、KESねじれ試験機(カトーテック社製、KES−YN−1−B)を用いて、チャック間距離110mmのチャック間に試験体の長手方向両端部を固定し、長手方向中心軸回りに70°ねじったときの最大荷重(ねじりトルク)を測定した。試験機の諸条件は、SENS(記録感度):10、ねじれ角度:7、CONTROL:7、スピード12cm/sとした。なお、測定は、5個の試験体を製作し、各試験体について試験を行い、その平均値を記録した。
【0061】
測定の結果、ねじれ再現処理を行わない試験体は、最大荷重が20.3gf・cm/cmであるのに対し、ねじれ再現処理を行った試験体は、最大荷重が17.3gf・cm/cmと、約15%減少し、製造過程でねじることによって、ねじれやすく、しなやかになることが確認できた。
【符号の説明】
【0062】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、10…ドラム積繊機、11…圧縮ロール、12…アンビルロール、13〜22…ロール、30…凹部
図1
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図8