特許第6521808号(P6521808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521808
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/01 20060101AFI20190520BHJP
   A01K 85/16 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   A01K85/01 B
   A01K85/16
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-177117(P2015-177117)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-51128(P2017-51128A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】平原 研治
【審査官】 川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/119406(WO,A1)
【文献】 特開2011−135806(JP,A)
【文献】 特開2002−272320(JP,A)
【文献】 特開2000−236779(JP,A)
【文献】 米国特許第5926995(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00−85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部のヘッド及び後部のテールを有するボディと、
このボディの内部において、前後方向に延在する収容空間と、
この収容空間の前端に装着された保持体と、
上記収容空間に、移動可能に収容された第一可動体と、
この収容空間における上記第一可動体の後方に、移動可能に収容された第二可動体とを備えており、
上記保持体及び第一可動体のうち、いずれか一方が磁石を含み、他方が磁性体からなり、
上記第二可動体が、非磁性体又は第一可動体より磁性の弱い磁性体からなるルアー。
【請求項2】
上記収容空間の後端に、金属製の後方当接体が装着されている請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
上記第二可動体の質量が、上記第一可動体の質量より大きい請求項1又は2に記載のルアー。
【請求項4】
上記第二可動体の質量が、上記第一可動体及び上記後方当接体の各質量の、2倍以上8倍以下である請求項2に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りに用いられるルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ルアーを用いたルアーフィッシングが普及している。ルアーフィッシングによる捕獲対象は、主として小魚を捕食する大型の魚(フィッシュイータ)である。このルアーは、キャストによって空中を飛行し、やがて着水する。ルアーは、ラインが巻かれることによって水中を泳ぐ。フィッシュイータは、このルアーに食いつく。ルアーに取り付けられたフックがフィッシュイータに刺さり、フィッシュイータが釣り上げられる。フィッシュイータの勘違いを誘う水中姿勢及びアクションが達成されるルアーが好ましい。
【0003】
釣り人はルアーを遠方へキャストしたいと望むことがある。ルアーは、飛行時に空気抵抗を受ける。空気抵抗の小さなルアーは、遠方へキャストされうる。重心位置が適正なルアーは、飛行姿勢が安定して空気抵抗が小さいので好ましい。
【0004】
また、体内にラトルボールが内蔵されたルアーが知られている。例えば、特開平10−248441号公報、特開2002−218865号公報、特開2005−210951号公報等に開示されたルアーである。これらのルアーでは、そのボディ内部の収容空間(ラトルルームとも呼ばれる)に、一個又は複数個のラトルボールが収容されている。ルアーが、水中でリトリーブされて泳動するとき、ラトルボール同士、又は、ラトルボールと収容空間の内壁面とが衝突し、ラトル音が発生する。このラトル音が、フィッシュイータの興味を引き、フィッシュイータを引き寄せる。
【0005】
特開2004−121115号公報にも、ラトルボールを有したルアーが開示されている。このルアーのボディ内には、前後方向に延びるラトルルームが形成されている。このラトルルームには、3個のラトルボールが収容されている。最も後ろ側に配置されたラトルボールのみが磁性体から形成されている。ラトルルームの前後方向のほぼ中間部に、磁石が設置されている。このルアーは、ラトルボールの動作の利用により、遠方へのキャスト、及び、水中でのバランスのとれた遊泳が可能となる、というものである。すなわち、ルアーのキャスト時には、全ラトルボールがラトルルームの後方(テール)寄りの位置に移動して、飛行姿勢の安定に寄与し、ルアーの水中遊泳時には、全ラトルボールがラトルルームの前方(ヘッド)寄りの位置に拘束されて、遊泳時の姿勢の安定に寄与する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−248441号公報
【特許文献2】特開2002−218865号公報
【特許文献3】特開2005−210951号公報
【特許文献4】特開2004−121115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、飛距離を犠牲にすることなく、フィッシュイータの興味を引くラトル音並びに水中姿勢及びアクションが達成されうるルアーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るルアーは、
前部のヘッド及び後部のテールを有するボディと、
このボディの内部において、前後方向に延在する収容空間と、
この収容空間の前端に装着された保持体と、
上記収容空間に、移動可能に収容された第一可動体と、
この収容空間における上記第一可動体の後方に、移動可能に収容された第二可動体とを備えており、
上記保持体及び第一可動体のうち、いずれか一方が磁石を含み、他方が磁性体からなり、
上記第二可動体が、非磁性体又は第一可動体より磁性の弱い磁性体からなる。
【0009】
好ましくは、上記収容空間の後端に、金属製の後方当接体が装着されている。
【0010】
好ましくは、上記第二可動体の質量が、上記第一可動体の質量より大きい。
【0011】
好ましくは、上記第二可動体の質量が、上記第一可動体及び上記後方当接体の各質量の、2倍以上8倍以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るルアーでは、飛距離を犠牲にすることなく、フィッシュイータの興味を引くラトル音並びに水中姿勢及びアクションが達成されうる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るルアーの側面図である。
図2図2は、図1のルアーの縦断面図である。
図3図3は、図1のIII−III線に沿った横断面図である。
図4図4は、図2における前方当接体及びラトルボールが収容空間の後端に移動した状態を示すルアーの縦断面図である。
図5図5は、図2のルアーがキャストされたときの状態を時系列に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1に示されたルアー2は、ボディ4、ラインアイ6、フックアイ8を備えている。各フックアイ8にはフック30が取り付けられる。ラインアイ6にはライン32が接続される。ボディ4は、ベイトである小魚に類似した外形を有する。ボディ4は、前部のヘッド10及び後部のテール12を備えている。図中の左側がヘッド10側(前方)であり、右側がテール12側(後方)であり、上側が背14側であり、下側が腹16側である。
【0016】
ボディ4は、ヘッド10側であって且つ腹16側に、リップを備えてもよい。典型的には、ボディ4は合成樹脂から形成されている。好ましい合成樹脂はABS樹脂である。ボディ4は、金属材料又は木質材料から形成されてもよい。ラインアイ6及びフックアイ8は、金属線が曲げられることによって形成されている。金属線の典型的な材質はステンレス鋼である。
【0017】
図2から図4に示されるように、ボディ4は中空である。典型的には、このボディ4は、対称形の左ボディピース4Lと右ボディピース4Rとが重ね合わされた状態で接合されることにより構成される(図3)。
【0018】
このボディ4の内部に、前後方向に延在する収容空間20が形成されている。この収容空間20には、前後方向に移動可能に収容された第一可動体22及び第二可動体24が収容されている。第一可動体22及び第二可動体24の各比重は、いずれもボディ4の比重より大きい。第二可動体24は、主として、他部材と衝突することによって魚の興味を引くラトル音を発生する作用を奏する。また、本実施形態における第二可動体24は、球形を呈している。従って、ここでは、第二可動体24をラトルボール24と呼ぶ。本実施形態の場合、ラトルボール24は、前方の第一可動体22、及び、後述する後方の後方当接体28と衝突しうる。ラトルボール24は、一個には限定されず、複数個備えられてもよい。第一可動体22は、ラトルボール24と衝突することによってラトル音を発生する他、ルアー2の重心位置を調節する作用を奏する。第一可動体22は、金属から形成されるのが好ましい。ここでは、この第一可動体22を前方当接体22と呼ぶ。
【0019】
ラトルボール24は、大きいラトル音を発生させるために、金属から形成されるのが好ましい。前方当接体22及びラトルボール24ともに、球形を呈している。前方当接体22もラトルボール24も、球形には限定されず、中心軸が前後方向に向いた円柱形等を呈していてもよい。しかし、特にラトルボール24は、収容空間20内を動きやすい形状であるのが好ましい。ラトルボール24の形状は球形が好ましい。
【0020】
この収容空間20において、前方当接体22が前方に位置し、ラトルボール24が後方に位置している。この収容空間20の横断面は、ラトルボール24の中心を通る断面より僅かに大きいだけであるため、前方当接体22とラトルボール24との前後位置が入れ替わることはない。
【0021】
収容空間20の前端には、保持体26が不動の状態で装着されている。保持体26は、ボディ4の内面に突設された枠体40によって拘束されている。保持体26は、前方当接体22を保持することができるが、ラトルボール24を保持することはできない。保持体26及び前方当接体22のうち、いずれか一方が磁石を含み、他方が磁性体からなる。この前方当接体22は、磁石の作用によって保持体26に吸着される(磁着と呼ぶ)。前方当接体22は、保持体26に保持される。その結果、ルアー2の重量バランスが安定しうる。ラトルボール24は、前方当接体22が磁石の場合は、非磁性体からなる。ラトルボール24は、保持体26が磁石で前方当接体22が磁性体の場合は、前方当接体22より磁性の弱い磁性体からなるのが好ましい。ラトルボール24が拘束されることを回避するためである。
【0022】
図2は、前方当接体22が保持体26に保持され、ラトルボール24は何物にも拘束されていない状態を示している。ルアー2は、大きな外力が加えられていないときには、図2に示す状態にある。ルアー2に作用する外力が小さい場合、前方当接体22が保持体26に保持され、ラトルボール24は前後に移動しうる。前後移動するラトルボール24は、前方に保持されている前方当接体22と、後方に固定されている後述の後方当接体28とに自在に衝突してラトル音を発生させる。
【0023】
上記磁性体としては、例えば、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼等が採用されうる。ラトルボール24には、例えば、黄銅、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、タングステン等が用いられうる。保持体26の形状は限定されない。保持体26は、板状、柱状等であってもよい。
【0024】
この収容空間20の後端には、後方当接体28が不動の状態で装着されている。後方当接体28は、ボディ4の内面に突設された突起部42によって拘束されている。後方当接体28は、ラトルボール24が収容空間20の後端に衝突したときに、大きいラトル音を発生させるために設けられている。この目的のために、後方当接体28は金属から形成されている。上記前方当接体22が磁石からなる場合は、後方当接体28は、非磁性体の金属から形成されるのが好ましい。前方当接体22が、ラトルボール24を介して、後方当接体28によって保持されることを回避するためである。後方当接体28は、収容空間20の後端に固定されるものであるため、その形状は限定されない。球状、柱状、板状等であってもよい。さらに、後方当接体28の材料の選択、体積の変更により、その質量を調整して、ルアー2の重心位置の調整を行いうる。保持体26と後方当接体28とは、前方当接体22及びラトルボール24の前後方向移動のストッパとしての役目も担っている。保持体26、前方当接体22、ラトルボール24及び後方当接体28は、ボディ4を左ボディピース4Lと右ボディピース4Rとに分割することにより、取り外すことができる。
【0025】
ラトルボール24の質量は、前方当接体22の質量より大きいのが好ましい。ラトルボール24の質量は、後方当接体28の質量より大きいのが好ましい。ラトルボール24の質量を大きくする目的は、大きいラトル音を発生させるためである。ラトルボール24は、前後に移動してその両側の物体22、28に衝突してラトル音を発生する。このように、他の物体22、28に比べてラトル音を発生させる回数の多い物体24の質量を増大させたのである。かかる観点から、ラトルボール24の質量は、前方当接体22及び後方当接体28の各質量の、2倍以上8倍以下であるのが好ましい。上記質量の倍数が8倍を超えると、ルアー重心位置の変動が大きすぎるので好ましくない。
【0026】
図2及び図3に示されるように、収容空間20は、左右のボディピース4L、4Rの底部34L、34R、及び、左右のボディピース4L、4Rの内面に突設されたリブ36L、36R、38L、38Rによって仕切られている。ボディピースの底部34L、34Rが、収容空間20の底面に相当する。下側のリブ36L、36Rの先端縁が、収容空間20の側面に相当する。上側のリブ38L、38Rが、収容空間20の天井に相当する。
【0027】
収容空間は、上記構成には限定されない。円筒状の内周面によって仕切られた収容空間であってもよい。また、収容空間を仕切る部材が無くてもよい。例えば、ボディ4の内部に、前後方向にガイドワイヤが張り渡されたものであってもよい。この場合、前方当接体及びラトルボールには、貫通孔が形成される。この貫通孔にガイドワイヤが挿通される。前方当接体及びラトルボールは、ガイドワイヤに沿って前後移動可能にされる。この場合、収容空間とは、前方当接体及びラトルボールが通過する範囲の空間を言うことになる。
【0028】
ルアー2がキャストされることにより、前方当接体22には、後方に向けた大きな慣性力が働く。この慣性力により、前方当接体22は、保持体26の磁着力から解放され、後方に移動する。ラトルボール24も、慣性力によって後方に移動する。図4には、ラトルボール24が後方当接体28に当接し、このラトルボール24に前方当接体22が押圧された状態が示されている。大きな慣性力が働いている間は、前方当接体22とラトルボール24とが、収容空間20の後端に位置している。この状態では、ルアー2の重心が最も後方の位置にある。
【0029】
図5には、その(1)から(4)にかけて、上記ルアー2のキャスティング状態が概略的且つ時系列に示されている。符号44は竿を示す。(1)はキャスティングの開始を示し、(2)はルアー2がライン32によってドライブされている状態を示し、(3)はルアー2がライン32によるドライブから解放されて滑空している状態を示し、(4)はルアー2が着水した後の状態を示している。
【0030】
キャストされることにより、ボディ4は飛行を開始する。このとき、前方当接体22は慣性によって瞬時に保持体26から離脱し、ラトルボール24とともに、テール12側に移動する(図4の(1)、(2)、(3))。ルアー2はテール12を先頭にして飛行する。
【0031】
ルアー2の滑空時には、前方当接体22が、先頭のテール12から後方のヘッド10に向けて移動しつつある。このように、ルアー2の重心が先頭(テール12)よりややヘッド10側にあれば、ルアー2に迎角が生じて揚力が発生する。その結果、ルアー2は、テール12を下げた姿勢(弾道曲線にほぼ平行な姿勢)では落下しないので、ルアー2の滑空距離が伸びることが期待できる。
【0032】
着水後には、前方当接体22は収容空間20内の前方位置に至っている。前方当接体22は、保持体26によって拘束される(図4の(4))。ラトルボール24は、既に、前後移動が可能な状態になっている。ライン32の引き操作により、ルアー2に対し、フィッシュイータにアピールしうる良好な姿勢及びアクションをとらせることができ、効果的なラトル音を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るルアーは、湖沼、池、ダム、川、海等の種々のフィールドでの釣りに適している。
【符号の説明】
【0034】
2・・・ルアー
4・・・ボディ
6・・・ラインアイ
8・・・フックアイ
10・・・ヘッド
12・・・テール
14・・・背
16・・・腹
20・・・収容空間
22・・・前方当接体(第一可動体)
24・・・ラトルボール(第二可動体)
26・・・保持体
28・・・後方当接体
30・・・フック
32・・・ライン
34L、34R・・・(ボディの)底部
36L、36R、38L、38R・・・リブ
図1
図2
図3
図4
図5