(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記目安時間を補正した後であれば、前記情報端末機器からの前記通信要求を受ける度に、前記通信部を介して前記情報端末機器に補正後の前記目安時間の情報を送信する請求項12に記載の加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理システムの構成を示す概略図である。
図2は、
図1の加熱調理器の上蓋周辺の構成を示す分解斜視図である。
図3は、
図1の加熱調理システムの機能構成を示すブロック図である。まず、
図1〜
図3を参照して、加熱調理器10と、情報端末機器100と、を有する加熱調理システム200の全体的構成を説明する。
【0010】
加熱調理器10は、加熱部20と、加熱制御部21と、温度検知部22と、上蓋31と、操作パネル部32と、操作部40、表示部50、報知部60と、記憶部70、制御部75、通信部80と、加熱容器90と、を有している。
【0011】
加熱部20は、例えば加熱コイルからなり、水及び米を含む調理物を収容する加熱容器90を誘導加熱するものである。加熱制御部21は、制御部75からの制御指令信号をもとに加熱部20の加熱制御を行うものである。加熱部20が加熱コイルの場合、加熱制御部21は、加熱部20の通電制御を行うことで加熱容器90を誘導加熱する。なお、加熱部20はシーズヒータ等であってもよい。
【0012】
温度検知部22は、例えばサーミスタからなり、調理物の温度を検知するものである。本実施の形態1において、温度検知部22は、内釜からなる加熱容器90の底面に、接するように配設されている。温度検知部22は、加熱容器90の底面の温度を検知し、検知した温度である検知温度を制御部75へ送信するものである。
【0013】
上蓋31は、制御部75を組み込むための溝部31Aと、ユーザが情報端末機器100をかざす部分である通信面31Bと、を有している。操作パネル部32は、炊飯スタートボタンを含む複数の設定ボタン32Aを有している。操作パネル部32は、溝部31Aを覆うように上蓋31に取り付けられる。操作部40、表示部50、及び制御部75は、上蓋31の溝部31Aに組み込まれ、操作パネル部32によって上部を覆われている。通信部80の少なくとも一部は、通信面31Bの下方に配設されている。
【0014】
操作部40は、米種及び調理メニュー等の設定操作を受け付けるものである。操作部40は、「白米」「無洗米」「玄米」などの米種の設定が可能となっている。また、操作部40は、調理メニューとして、通常の速さで炊き上げる「ふつう」、通常よりも早い時間で炊き上げる「早炊き」などの炊飯速度に関するメニューの他、「おかゆ」「炊き込み」などの調理方法に関するメニューについても設定可能となっている。
【0015】
操作部40は、調理の開始を指示する調理開始指示を受け付けるものである。操作部40は、操作パネル部32に配設されている複数の設定ボタン32Aに対応する位置に設けられている。ユーザは、複数の設定ボタン32Aを適宜選択して押下することにより、米種及び調理メニュー等を設定することができる。また、操作部40は、ユーザが炊飯スタートボタンを押下したときに調理開始指示を受け付けて、ユーザによる設定内容を示す設定情報及び調理開始信号を制御部75へ送信するように構成されている。
以降では、操作部40が調理開始指示を受け付けたとき、すなわち、制御部75が操作部40から調理開始信号を受信し、加熱部20の加熱制御を開始するときを「調理開始時」ともいう。
【0016】
表示部50は、例えば液晶パネルからなり、各種の表示情報を表示するものである。より具体的に、表示部50は、ユーザによる選択操作及び設定操作に応じて、米種及び調理メニュー等の情報を切り替えて表示するものである。また、表示部50は、ユーザが設定した米種及び調理メニュー等の情報を表示するものである。さらに、表示部50は、調理完了までに要する時間の目安となる目安時間及び調理完了までの残り時間を表示するものである。
【0017】
報知部60は、例えば、音声スピーカ又はブザーなどからなり、調理が完了したことなどといった種々の報知情報を外部に報知するものである。報知部60は、音声又はビープ音などにより、各報知情報を報知するように構成されている。
【0018】
記憶部70には、制御部75による各種制御用のプログラムが格納されている。また、記憶部70には、表示部50に表示させる各種の表示情報と、報知部60に報知させる種々の報知情報が格納されている。
【0019】
また、記憶部70には、米種とメニューとの組み合わせに対応する最大炊飯量時の炊飯時間及び最小炊飯量時の炊飯時間が格納されている。具体的には、例えば、米種とメニューとの組み合わせと、最大炊飯量時の炊飯時間及び最小炊飯量時の炊飯時間とを関連づけた目安時間テーブルが、記憶部70に格納されている。
【0020】
さらに、記憶部70には、米種と調理メニューとの組み合わせ毎に上昇速度情報と調理物の量である炊飯量とが関連づけられた炊飯量テーブル、及びこれに関連する情報が格納されている。ここで、上昇速度情報とは、調理開始後、調理物が沸騰する以前における当該調理物の温度上昇の速さを示す情報のことであり、後述するように、制御部75が求めるものである。また、記憶部70には、米種と調理メニューとの組み合わせ毎に炊飯量と後述する補正時間とが関連づけられた補正時間テーブル、及びこれに関連する情報が格納されている。さらに、記憶部70には、炊飯量と調理完了までの残り時間とが関連づけられた残り時間テーブルが格納されている。
【0021】
制御部75は、記憶部70に格納されているプログラムに従って、加熱部20の加熱制御及び表示部50への表示制御などを行うものである。制御部75は、操作部40から受信する設定情報をもとに制御指令信号を生成し、生成した制御指令信号を加熱制御部21へ送信するものである。すなわち、制御部75は、調理開始時に、加熱部20の加熱制御を始め、調理物の調理を開始する。
【0022】
また、制御部75は、調理開始時に、調理完了までに要する時間の目安となる目安時間、すなわち、調理物の炊き上がりまでの目安時間を求めて表示部50に表示させるものである。さらに、制御部75は、表示部50に表示されている目安時間を、経過時間に応じて減少させる機能を有している。本実施の形態1において、制御部75は、表示部50に表示されている目安時間又は調理完了までの残り時間を、時間の経過と共に1分ずつ減少させるカウント機能を有している。
【0023】
また、制御部75は、調理物の沸騰以前における温度上昇の速さを示す上昇速度情報を求め、求めた上昇速度情報をもとに表示部50に表示されている目安時間を補正するものである。
【0024】
ここで、制御部75による補正の前の目安時間を初期目安時間といい、制御部75による補正の後の目安時間を補正目安時間という。初期目安時間は、制御部75が調理開始時に求める目安時間の他に、補正する前において制御部75が1分経過毎に減少させた目安時間を含む。特に、制御部75が調理開始時に求める目安時間を「開始時目安時間」ともいう。また、補正目安時間は、制御部75による補正直後の目安時間の他に、補正した後において制御部75が1分経過毎に減少させた目安時間を含む。
【0025】
本実施の形態1において、制御部75は、操作部40から受信する設定情報を記憶部70内の目安時間テーブルに照らすことで、米種及びメニューに応じた最大炊飯量時の炊飯時間と最小炊飯量時の炊飯時間とを読み出すように構成されている。そして、制御部75は、初期目安時間として、米種及びメニューに応じた最大炊飯量時の炊飯時間と最小炊飯量時の炊飯時間との平均を求めるものである。
【0026】
もっとも、記憶部70に格納される目安時間テーブルは、例えば、米種とメニューとの組み合わせと、予め設定された開始時目安時間とを関連づけたものであってもよい。かかる場合の目安時間テーブルにおける開始時目安時間は、例えば、最大炊飯量と最小炊飯量との中間の炊飯量のときの炊飯時間であってもよい。そして、制御部75は、設定情報に含まれる米種及びメニューの情報を目安時間テーブルに照らすことで、開始時目安時間を求めるようにしてもよい。
【0027】
制御部75は、加熱部20に、予熱工程、強火工程、弱火工程、及びドライアップ工程を順次実行させる機能を有している。また、制御部75は、調理の最終工程であるむらし工程を実行する機能を有している。ここで、予熱工程とは、米への吸水を促進するための工程である。強火工程とは、調理物を急速に加熱する工程である。弱火工程とは、調理物の沸騰状態を維持する工程である。ドライアップ工程とは、米の中心まで水分を吸収させ且つ糊化させ、加熱容器内の余分な水分を蒸発させる工程である。むらし工程とは、炊き上がったご飯を蒸らして加熱容器90内での状態を均一に仕上げる工程である。
【0028】
むらし工程に至るまでの工程には、予め決められた定義温度への到達を条件として次の工程へ移行するものがあり、調理物の温度の変化は、環境などに左右されることから、むらし工程以前においては、調理完了までに要する時間が確定しない。このため、制御部75は、むらし工程に入るまでの表示部50の表示を、調理完了までに要する時間が確定していないこと示す目安時間表示とする。
本実施の形態1では、目安時間表示であることをユーザに視認させるため、制御部75は、初期目安時間及び補正目安時間に、目安時間であることを示す情報を添えて、表示部50に表示させる。例えば、目安時間の表示に「約」又は「およそ」等の文字表示を併記する。
【0029】
一方、むらし工程に要する時間は、米種、調理メニュー、及び炊飯量に応じて一意に定まるため、むらし工程に入るときに調理完了までに要する時間が確定する。よって、制御部75は、むらし工程へ入るときに、記憶部70内の残り時間テーブルを参照し、調理完了までに要する確定時間として調理完了までの残り時間を求める。そして、求めた調理完了までの残り時間を、目安時間に代えて表示部50に表示させる。その際、制御部75は、表示部50の表示を、目安時間表示から、調理完了までに要する時間が確定したことを示す残り時間表示に切り替える。
本実施の形態1では、残り時間表示であることをユーザに視認させるため、制御部75は、目安時間であることを示す情報(「約」等の文字表示)を表示部50から消去する。なお、以降では、調理完了までの残り時間を、単に「残り時間」ともいう。
【0030】
ここで、制御部75が求める上昇速度情報としては、例えば、調理物が基準温度から沸騰する温度以下である設定温度まで上昇するのに要する上昇時間を採用することができる。この場合、制御部75は、記憶部70内の基準温度及び設定温度を参照して、温度検知部22から送信される検知温度もとに上昇時間を計時し、計時した上昇時間を炊飯量テーブルに照らすことにより炊飯量を求める。
【0031】
ところで、調理開始時の調理物の温度は、外部環境等によって変化する。このため、基準温度は、設定温度よりも低く、かつ調理開始時の調理物の温度よりも通年にわたって高くなるように設定するとよい。このようにすると、制御部75が上昇時間を画一的に取得することができるため、後述する目安温度の補正の精度を向上させることができる。なお、基準温度は、調理開始時における調理物の温度、すなわち、調理開始時に温度検知部22から制御部75へ送信される検知温度であってもよい。また、基準温度は、制御部75が後述する強火工程を開始するときの調理物の温度であってもよい。
【0032】
一方、設定温度は、基準温度よりも高く、かつ調理物が沸騰する温度以下の温度に設定される。本実施の形態1では、設定温度は、調理物が沸騰する温度(例えば100℃)に設定されている。このようにすると、制御部75は、変動の少ない安定した上昇時間を求めることができる。
【0033】
また、制御部75が求める上昇速度情報としては、例えば、一定時間あたりの調理物の温度の変化量を示す温度変化情報を採用してもよい。この場合、制御部75は、基準温度と設定温度との差分である差分温度を、調理開始時等から調理物が設定温度に到達するまでの時間で除算して温度変化情報を求める。また、制御部75は、求めた温度変化情報を炊飯量テーブルに照らして炊飯量を求める。
【0034】
そして、制御部75は、上記により求めた炊飯量を、補正時間テーブルに照らすことにより、補正時間を求めるものである。ここで、記憶部70に格納される補正時間テーブルにおいて、炊飯量に関連づけられる補正時間としては、例えば、開始時目安時間と、米種、メニュー、及び炊飯量に応じて設定された補正目安時間との差分を示す差分補正時間を採用することができる。
【0035】
例えば、炊飯量が比較的少ない場合においては、調理開始時に表示させる目安時間が、実際の炊き上がりまでの時間よりも長くなるため、制御部75は、記憶部70から、目安時間を減算する補正を指示する差分補正時間を読み取ることになる。例えば、差分補正時間がマイナス5分であれば、制御部75は、表示部50に表示されている目安時間を5分減らす補正を行う。
【0036】
一方、炊飯量が比較的多い場合においては、調理開始時に表示させる目安時間が、実際の炊き上がりまでの時間よりも短くなるため、制御部75は、記憶部70から、目安時間を加算する補正を指示する差分補正時間を読み取ることになる。例えば、差分補正時間がプラス8分であれば、制御部75は、表示部50に表示されている目安時間を8分増やす補正を行う。
【0037】
また、補正時間としては、米種、メニュー、及び炊飯量に応じて設定された補正目安時間そのものを採用してもよい。かかる場合、制御部75は、表示部50に表示されている初期目安時間を、目安時間テーブルから読み取った補正目安時間にそのまま置き換える補正を行う。
【0038】
本実施の形態1では、炊飯量テーブル及び補正時間テーブルが、それぞれ、米種と調理メニューとの組み合わせに対応している。すなわち、制御部75は、操作部40において設定された米種及び調理メニューに応じて、表示部50に表示されている目安時間を補正するものである。
【0039】
制御部75は、調理が完了したときに、調理完了の旨を示す情報を報知部60に報知させる機能を有している。なお、制御部75は、初期目安時間を補正したときに、補正後の補正目安時間及び補正をした旨を示す情報のうちの少なくとも一方を報知部60に報知させるようにしてもよい。また、制御部75は、残り時間を求めたときに、求めた残り時間及び残り時間が確定した旨を示す情報のうちの少なくとも一方を報知部60に報知させるようにしてもよい。制御部75は、報知部60の機能及び報知の用途に応じて、音声及びビープ音などを適宜使い分けるようにするとよい。
【0040】
制御部75は、通信部80に接続されており、通信部80を介して情報端末機器100との情報通信を行うものである。制御部75は、秒単位でカウントしており、例えば長時間の工程で、その間、制御部75と情報端末機器100との間に時間のずれが生じても、再通信を行うことで、同期させることができる。制御部75は、通信部80を介して、初期目安時間及び補正目安時間を示す目安時間情報を情報端末機器100へ送信するものである。また、制御部75は、通信部80を介して、残り時間を示す残り時間情報を情報端末機器100へ送信するものである。
【0041】
通信部80は、外部の情報端末機器100との間で直接又は通信ネットワークを介して情報の授受を行うものである。通信部80は、無線LAN、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)など、任意の通信規格により情報端末機器100との通信を行う機能を有している。また、通信部80は、上蓋31の表面に設けられた通信面31Bを通じて近距離無線通信を行う機能を有している。ここで、近距離無線通信とは、例えばNFC(Near Field Communication)であり、ISO/IEC 14443、ISO/IEC 15693などに代表される通信距離がおよそ10cm以下の短距離無線通信規格である。
【0042】
情報端末機器100は、例えば高機能携帯電話であるスマートフォンであり、端末表示部150と、表示制御部175と、端末通信部180と、を有している。端末表示部150は、目安時間又は残り時間及びこれらに関連する情報を含む調理関連情報を表示する機能を有している。併せて、端末表示部150は、米種及び調理メニュー等の情報を表示するものである。端末通信部180は、通信部80との通信を行うものである。表示制御部175は、制御部75から通信部80及び端末通信部180を介して送信される目安時間及び残り時間をもとに、端末表示部150に調理関連情報を表示させるものである。
【0043】
したがって、通信部80と端末通信部180とは、無線LAN、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)などの通信ネットワークを介して、近距離から遠距離までの情報通信を幅広く行うことができる。また、ユーザが情報端末機器100を通信面31Bにかざした場合などにおいて、通信部80と端末通信部180とは、近距離無線通信を用いて、近距離での情報通信を行うことができる。
【0044】
なお、制御部75は、上述した各機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアにより実現することもできるし、例えばDSP等のマイコン又はCPU等の演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。また、記憶部70は、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等により構成することができる。
【0045】
(表示例及び情報通信)
図4は、表示部50における初期目安時間の表示例を示す説明図である。
図5は、端末表示部150における初期目安時間の表示例を示す説明図である。
図6は、表示部50における目安時間の表示例のうち、(a)は初期目安時間を示す説明図であり、(b)は補正目安時間を示す説明図である。
図7は、
図1の端末表示部150における補正目安時間の表示例を示す説明図である。
図8は、表示部50における表示例のうち、(a)は補正目安時間を示す説明図であり、(b)は調理完了までの残り時間を示す説明図である。
図9は、端末表示部150における調理完了までの残り時間の表示例を示す説明図である。
図4〜
図9を参照して、表示部50及び端末表示部150における表示例を、加熱調理器10と情報端末機器100との情報通信を交えて説明する。
【0046】
炊飯を行うにあたり、ユーザは、操作パネル部32を介して各種設定を行う。そして、設定完了後に、ユーザが炊飯スタートボタンを押下すると、加熱調理器10が炊飯を開始し、制御部75は、
図4に示すように、表示部50へ初期目安時間を表示させる。その際、制御部75は、表示部50に、目安時間表示であることを示す情報として、初期目安時間の左上部に「約」の文字を点灯表示させる。
図4には、初期目安時間が45(分)である場合を例示している。また、表示部50には、米種として「白米」の文字が示され、調理メニューとして「ふつう」の文字が示されている。
【0047】
次いで、加熱調理器10と情報端末機器100との間で通信が行われた際に、制御部75は、通信部80及び端末通信部180を介して表示制御部175に、初期目安時間を示す目安時間情報を送信する。その際、制御部75は、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。そして、表示制御部175が、
図5に示すように、端末表示部150へ初期目安時間を表示させる。端末表示部150においても、目安時間であることを示す情報として「約」の文字が示される。
【0048】
ここで、制御部75は、初期目安時間を補正する前においては、情報端末機器100からの通信要求を受けたとき、一度だけ情報端末機器100に初期目安時間を送信する。つまり、初期目安時間を補正する前、すなわち、調理物の温度が設定温度に到達する前においては、情報端末機器100から複数回の通信要求があったような場合でも、一回目の通信要求のみを有効とし、二回目以降の通信要求には応答しない。
【0049】
制御部75は、炊飯を開始してから一定時間が経過し、調理物の温度が設定温度に到達すると、記憶部70を参照して補正時間を求め、表示部50の初期目安時間を例えば
図6のように補正する。
図6では、調理開始から「15(分)」が経過したときに、調理物の温度が設定温度に到達した場合を例示しており、補正前の表示部50を示す
図6(a)には、初期目安時間として「30(分)」が示されている。そして、補正後の表示部50を示す
図6(b)には、補正目安時間として「25(分)」が示されている。
【0050】
制御部75は、補正の前後にわたり、表示部50に「約」の文字を点灯させた状態を維持させる。よって、表示部50では、
図6に示すように、初期目安時間及び補正目安時間の双方の左上部に「約」の文字が表示される。
【0051】
次いで、加熱調理器10と情報端末機器100との間で通信が行われた際に、制御部75は、通信部80及び端末通信部180を介して表示制御部175に、補正目安時間を示す目安時間情報を送信する。その際、制御部75は、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。そして、表示制御部175が、
図7に示す通り、補正目安時間である「25(分)」を「約」の文字などと共に端末表示部150へ表示させる。
【0052】
ここで、制御部75は、初期目安時間を補正した後、すなわち、調理物の温度が設定温度に到達した後においては、全ての通信要求を有効とし、情報端末機器100からの通信要求を受ける度に、情報端末機器100へ補正目安時間を送信する。
【0053】
さらに工程を進めていき、むらし工程へ入るときに、制御部75は、調理完了までの残り時間を求めて、表示部50の表示を目安時間表示から残り時間表示に切り替える。すなわち、制御部75は、
図8に示すように、残り時間を補正目安時間に代えて表示部50に表示させ、その際、表示部50から「約」の表示を消灯させる。表示部50の表示を切り替える前の状態を例示する
図8(a)では、「約」の文字と共に補正目安時間である「15(分)」が示されており、表示部50の表示を切り替えた後の状態を示す
図8(b)では、「約」の文字が消去され、残り時間である「15(分)」が示されている。よって、むらし工程へ移った後に、「約」の文字が消えた表示部50を視認したユーザは、確定時間表示に切り替わったことを認識することができる。
【0054】
本実施の形態1の制御部75は、残り時間表示へ切り替える前に、初期目安時間に補正を施した補正目安時間を表示部50に表示させている。また、制御部75は、表示部50に表示されている補正目安時間を、経過時間に応じて減少させる機能を有している。このため、むらし工程に移る前後における補正目安時間と残り時間とは、
図8のように同じとなるか、又はずれが生じるとしても、そのずれは、初期目安時間を補正せずに表示する場合に比べて小さくなる。
【0055】
次いで、加熱調理器10と情報端末機器100との間で通信が行われた際に、制御部75は、通信部80及び端末通信部180を介して表示制御部175に、残り時間を示す残り時間情報を送信する。その際、制御部75は、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。そして、表示制御部175が、
図9に示す通り、残り時間である「15(分)」を端末表示部150に表示させる。その際、表示制御部175は、端末表示部150に「約」の文字を表示させない。よって、むらし工程へ移った後に、「約」の文字が消えた端末表示部150を視認したユーザは、確定時間表示に切り替わったことを認識することができる。
【0056】
なお、本実施の形態1において、加熱調理器10は、通信部80と端末通信部180とが通信を行うまでは、表示部50の目安時間の更新を行わないように構成されている。表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させずに、表示部50の表示と端末表示部150の表示との間に齟齬が生じると、ユーザビリティが低下するためである。
【0057】
(動作説明)
図10は、加熱調理器10が情報端末機器100との間で、通信ネットワークを介して情報の授受を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図11は、加熱調理器10が情報端末機器100との間で、直接情報の授受を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図10及び
図11を参照して、加熱調理器10と情報端末機器100とが、通信ネットワークを介して中距離通信又は遠距離通信を行う場合の動作と、近距離無線通信を用いて近距離通信を行う場合の動作とを説明する。なお、以下の動作説明において、設定温度は、調理物が沸騰する温度に設定されているものとする。よって、制御部75が求める上昇速度情報は、沸騰の速さを示す情報となる。
【0058】
(通信ネットワークを介して通信を行う場合の動作)
まず、ユーザが、操作パネル部32の操作ボタンを押下することにより、米種及びメニューを設定する。これにより、操作部40は、ユーザによる米種及びメニューの設定を受け付ける(
図10:ステップS101)。
【0059】
次いで、ユーザが操作パネル部32の炊飯スタートボタンを押下すると、操作部40は、ユーザによる設定内容を示す設定情報及び炊飯開始信号を制御部75へ送信する。制御部75は、炊飯開始信号を受けて、設定情報に応じた制御指令信号を加熱制御部21に送信する。そして、加熱制御部21が、制御指令信号に従って加熱部20の加熱制御を始めることで、加熱調理器10は炊飯を開始する(
図10:ステップS102)。また、制御部75は、設定情報をもとに、米種及びメニューに応じた開始時目安時間を求めて表示部50に表示させる(
図10:ステップS103)。
【0060】
次に、制御部75は、初期目安時間を示す目安時間情報を情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。これにより、端末表示部150には、初期目安時間が、例えば
図5のように表示される(
図10:ステップS104)。
【0061】
次いで、制御部75は、温度検知部22による検知温度から沸騰を検知したときに(
図10:ステップS105)上昇速度情報を求め、求めた上昇速度情報をもとに補正時間を求める。そして、制御部75は、補正時間に応じて、例えば
図6のように、表示部50に表示されている初期目安時間を補正して補正目安時間とする(
図10:ステップS106)。
【0062】
次いで、制御部75は、補正目安時間を示す目安時間情報を、通信部80を介して情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。これにより、端末表示部150には、補正後の目安時間である補正目安時間が、例えば
図7のように表示される(
図10:ステップS107)。
【0063】
続いて、制御部75は、むらし工程へ入るときに、炊き上がりまでの残り時間を求める。制御部75は、むらし工程を時間制御によって実行するため、むらし工程へ入るときに炊き上がりまでの残り時間が確定する(
図10:ステップS108)。そして、制御部75は、表示部50に、むらし工程へ入るときに求めた残り時間を、補正目安時間の代わりに表示させ、表示部50の「約」の文字を消去させる。すなわち、制御部75は、表示部50の表示を、目安時間表示から残り時間表示へ切り替える。これにより、表示部50の表示は、
図8(b)に示すような状態となる(
図10:ステップS109)。
【0064】
次いで、制御部75は、残り時間を示す残り時間情報を、通信部80を介して情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。これにより、端末表示部150には、
図9に示すように、「約」の文字を含まない残り時間などの調理関連情報が表示される(
図10:ステップS110)。そして、制御部75は、むらし工程が完了したときに、報知部60から炊飯完了の旨を報知させ、加熱調理器10が炊飯を完了する(
図10:ステップS111)。
【0065】
(近距離通信を行う場合の動作)
まず、操作部40は、ユーザによる米種及びメニューの設定を受け付ける(
図11:ステップS201)。次いで、操作パネル部32の炊飯スタートボタンをユーザが押下したときに、操作部40は、設定情報及び炊飯開始信号を制御部75へ送信する。制御部75は、炊飯開始信号を受けて、設定情報に応じた制御指令信号を加熱制御部21に送信する。そして、加熱制御部21が制御指令信号に応じた加熱部20の加熱制御を始めることで、加熱調理器10は炊飯を開始する(
図11:ステップS202)。また、制御部75は、設定情報をもとに、米種及びメニューに応じた開始時目安時間を求めて表示部50に表示させる(
図11:ステップS203)。
【0066】
次いで、制御部75は、情報端末機器100から通信要求があったとき、すなわち、例えばユーザが通信面31Bに情報端末機器100をかざしたときに(
図11:ステップS204/YES)、加熱制御を継続した状態で、初期目安時間を示す目安時間情報を情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。これにより、端末表示部150には、初期目安時間が表示される(
図11:ステップS205)。一方、制御部75は、調理物が沸騰する前において、情報端末機器100から通信要求がない場合(
図11:ステップS204/NO)、加熱部20の加熱制御を継続する(
図11:ステップS206)。なお、制御部75は、沸騰を検知するまでの間に、情報端末機器100から再度通信要求があったとしても、情報端末機器100への情報送信を行わずに、加熱部20の加熱制御を継続する。
【0067】
次いで、制御部75は、温度検知部22による検知温度から沸騰を検知する(
図11:ステップS207)。そして、制御部75は、情報端末機器100から通信要求があったときに(
図11:ステップS208/YES)、加熱制御を継続した状態で、上昇速度情報を求め、求めた上昇速度情報をもとに補正時間を求める。また、制御部75は、補正時間に応じて、表示部50に表示されている初期目安時間を補正して補正目安時間とする(
図10:ステップS209)。
【0068】
次に、制御部75は、補正目安時間を示す目安時間情報を、通信部80を介して情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。これにより、端末表示部150には、補正目安時間が表示される(
図11:ステップS210)。一方、制御部75は、むらし工程へ入る前に、情報端末機器100から通信要求がない場合(
図11:ステップS208/NO)、加熱部20の加熱制御を継続する(
図11:ステップS211)。
【0069】
続いて、制御部75は、むらし工程へ入るときに、炊き上がりまでの残り時間を求める。これにより、炊き上がりまでの残り時間が確定する(
図11:ステップS212)。次いで、制御部75は、情報端末機器100から通信要求があったとき(
図11:ステップS213/YES)、表示部50に、補正目安時間に代えて残り時間を表示させ、かつ表示部50から目安時間表示であることを示す情報を消去させる。すなわち、制御部75は、表示部50の表示を、目安時間表示から残り時間表示へ切り替える(
図11:ステップS214)。
【0070】
次いで、制御部75は、残り時間を示す残り時間情報を、通信部80を介して情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。これにより、端末表示部150には、「約」の文字を含まない残り時間などの調理関連情報が表示される(
図11:ステップS215)。そして、制御部75は、むらし工程に要する時間が経過したときに、報知部60から炊飯完了の旨を報知させ、加熱調理器10が炊飯を完了する(
図11:ステップS217)。
【0071】
一方、制御部75は、むらし工程が完了するまでの間において、情報端末機器100から通信要求がなければ(
図11:ステップS213/NO)、表示部50の表示を切り替えない。すなわち、制御部75は、残り時間情報を情報端末機器100へ送信することなく、むらし工程を継続する(
図11:ステップS216)。
【0072】
そして、制御部75は、むらし工程が完了したときに、報知部60から炊飯完了の旨を報知させ、加熱調理器10が炊飯を完了する(
図11:ステップS217)。
【0073】
以上のように、本実施の形態1における加熱調理器10は、調理物の沸騰以前における温度上昇の速さを示す上昇速度情報をもとに、制御部75が、表示部50に表示されている目安時間を補正して更新するため、調理工程の比較的早い段階で、目安時間と実際の調理完了までの時間とのずれを低減させることができる。
【0074】
ところで、従来においては、目安時間と実際の炊き上がり時間とがずれないように、例えば炊飯工程末期のむらし工程の時間を延長又は短縮し、外観上、炊き上がり目安時間表示どおりに炊き上がったように見せる方法も採られている。しかし、かかる方法を採った場合には、蒸発過多による乾燥又は蒸発不足による水っぽさを引き起こすため、美味しく炊くためにはふさわしくない。この点、加熱調理器10は、むらし工程の時間を延長又は短縮することがないため、より美味しい状態の調理物をユーザに提供することができる。
【0075】
また、加熱調理器10が、通信ネットワークを介して情報端末機器100と通信する場合、制御部75は、表示部50の表示と情報端末機器100の表示とを、補正した目安時間に更新して同期させる。すなわち、加熱調理システム200によれば、情報端末機器100にも表示部50と同等の情報を表示させることができるため、ユーザは、加熱調理器10の傍にいなくても、目安時間及び残り時間を知ることができる。
【0076】
加えて、加熱調理器10が、近距離通信などにより情報端末機器100と直接通信を行う場合、制御部75は、通信時に補正した目安時間を情報端末機器100へ送信し、表示部50の表示と情報端末機器100の表示とを同期させる。このため、通信面31Bに情報端末機器100をかざした後に、炊飯器から離れるような場合にも、ユーザは、表示部50に表示されている目安時間又は残り時間を、情報端末機器100の端末表示部150を視認することで把握することができる。
【0077】
すなわち、本実施の形態1の加熱調理システムでは、加熱調理器10及び情報端末機器100に、より正確な炊き上がりまでの目安時間が同期して表示されるため、ユーザは、加熱調理器10の近くにいても遠くにいても、リアルタイムのより正確な目安時間を確認することができる。
【0078】
なお、
図10に基づく動作説明において、制御部75は、初期目安時間を補正したとき、又は補正目安時間を残り時間に置き換えたときに、加熱調理器10と情報端末機器100とが通信を行う場合を例示したが、これに限定されるものではない。また、
図11に基づく動作説明において、制御部75は、ユーザが通信面31Bに情報端末機器100をかざしたときに、加熱調理器10と情報端末機器100とが通信を行う場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、強火工程、弱火工程、ドライアップ工程、及びむらし工程といった炊飯調理の各工程が終了するタイミングにおいて、制御部75が、通信ネットワークを介して、又は直接的に、情報端末機器100へ最新の目安時間を送信するようにしてもよい。また、予め設定された一定時間ごとに、制御部75が情報端末機器100へ最新の目安時間を送信するようにしてもよい。このようにすれば、例えば、目安時間の送信に失敗した場合に生じ得る表示部50の表示と端末表示部150との齟齬を、速い段階で解消することができる。また、情報端末機器100がカウント機能を有しないような場合にも有効である。
【0079】
また、上記説明では、制御部75が、炊飯量テーブルから炊飯量を求めた上で、求めた炊飯量をもとに補正時間を求める場合を例示してが、これに限定されるものではない。例えば、記憶部70に、補正時間テーブルとして、上昇速度情報と補正時間とを、米種と調理メニューとの組み合わせ毎に関連づけたテーブル情報を格納しておいてもよい。そして、制御部75が、求めた上昇速度情報を当該補正時間テーブルに照らすことで、補正時間を直接求めるようにしてもよい。
【0080】
実施の形態2.
本実施の形態2に係る加熱調理器は、実施の形態1における
図1〜
図9の例示と同様の構成を有するため、各構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。ただし、本実施の形態2における制御部75は、残り時間のカウント方法が、前述した実施の形態1とは異なっている。
【0081】
本実施の形態2における制御部75は、むらし工程へ入るときに、調理完了までの残り時間を求め、求めた残り時間と表示部50に表示されている補正目安時間との差分である差分時間を求めるものである。ここで、むらし工程へ入るときの表示部50に表示されている補正目安時間を「表示時間」ともいう。本実施の形態2において、制御部75は、表示時間から残り時間を減算することにより差分時間を求めるように構成されている。また、制御部75は、差分時間の残り時間に対する割合に応じて、表示部50に表示されている補正目安時間を減少させる速度を調整するものである。
【0082】
より具体的に、制御部75は、表示時間が残り時間よりも長い場合、60秒毎に1分ずつ減少させる通常の計時速度を表す1に対し、差分時間の残り時間に対する割合を加算することにより、通常の計時速度に対する相対速度であるカウント速さを計算する。また、制御部75は、表示時間が残り時間よりも短い場合、通常の計時速度を表す1から、差分時間の残り時間に対する割合を減算することによりカウント速さを計算する。そして、制御部75は、求めたカウント速さに則して表示部50に表示されている補正目安時間を減少させる。
【0083】
例えば、炊飯量が少量の場合であって、表示時間が18分のときに、残り時間が15分に確定したとすると、制御部75は、15分の間に、表示時間である18分を徐々に0分まで減らしていく処理を実行する。すなわち、表示時間と残り時間との差分時間である「プラス3分」を15分で減らすため、制御部75は、差分時間である3分を残り時間である15分で除算することにより、差分時間の残り時間に対する割合として1/5を算出する。そして、通常の計時速度を表す1に、差分時間の残り時間に対する割合である1/5を加算して、カウント速さである1.2倍を求める。制御部75は、表示時間を15分後に0分とするために、通常の計時速度の1.2倍の速さで補正目安時間を減少させ、補正目安時間と残り時間との差を徐々に縮めていく。
【0084】
また、例えば、炊飯量が多量の場合であって、表示時間が12分のときに、残り時間が15分に確定したとすると、制御部75は、15分の間に、表示時間である12分を徐々に0分まで減らしていく処理を実行する。すなわち、表示時間と残り時間との差分時間である「マイナス3分」を15分で減らすために、制御部75は、差分時間の絶対値である3分を残り時間である15分で除算することにより、差分時間の残り時間に対する割合として1/5を算出する。そして、通常の計時速度を表す1から、差分時間の残り時間に対する割合である1/5を減算することにより、カウント速さである0.8倍を求める。制御部75は、表示時間を15分後に0分とするために、通常の計時速度の0.8倍の速さで補正目安時間を減少させ、補正目安時間と残り時間との差を徐々に縮めていく。
【0085】
(動作説明)
図12は、本実施の形態2に係る加熱調理器10が、情報端末機器100との間で通信ネットワークを介して情報の授受を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図13は、本実施の形態2に係る加熱調理器10が、情報端末機器100との間で直接情報の授受を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図12及び
図13を参照して、加熱調理器10と情報端末機器100とが、通信ネットワークを介して通信を行う場合の動作と、近距離無線通信を用いて近距離通信を行う場合の動作とを説明する。
【0086】
(通信ネットワークを介して通信を行う場合の動作)
加熱調理器10は、通信ネットワークを介して通信を行う場合、
図12のステップS101〜S108に示す動作を、実施の形態1における
図10のステップS101〜S108に係る動作と同様に実行する。
【0087】
次いで、制御部75は、表示部50から目安時間であることを示す情報を消去させて、表示部50の表示を、目安時間表示から残り時間表示へ切り替える(
図12:ステップS301)。そして、制御部75は、表示時間から残り時間を減算することにより差分時間を求め、差分時間が0分より大きいか否かを判定する(
図12:ステップS302)。
【0088】
制御部75は、差分時間が0分より大きいとき(
図12:ステップS302/YES)、通常の計時速度を表す1に差分時間の残り時間に対する割合を加算することで、60秒毎に1分ずつ減少させる通常の計時速度に対する相対速度を表すカウント速さを計算する(
図12:ステップS303)。
そして、制御部75は、通信部80を介して情報端末機器100に、残り時間情報及びカウント速さを示すカウント情報を送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる(
図12:ステップS304)。
【0089】
一方、制御部75は、差分時間が0分以下のとき(
図12:ステップS302/NO)、差分時間が0分よりも小さいか否かを判定する(
図12:ステップS305)。
制御部75は、差分時間が0分よりも小さいとき(
図12:ステップS305/YES)、通常の計時速度を表す1から差分時間の残り時間に対する割合を減算することでカウント速さを計算する(
図12:ステップS306)。そして、制御部75は、通信部80を介して情報端末機器100に、残り時間情報及びカウント情報を送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる(
図12:ステップS307)。
【0090】
以上により、むらし工程が終了するまでの間、制御部75は、カウント速さに基づいて、表示部50の補正目安時間を経時的に減少させる。また、表示制御部175は、制御部75から送信されるカウント情報に基づいて、端末表示部150の補正目安時間を経時的に減少させる。
【0091】
また、制御部75は、差分時間が0分のとき、すなわち、表示時間と残り時間との間にずれがない場合(
図12:ステップS305/NO)、通信部80を介して情報端末機器100へ残り時間情報を送信し、表示部50の表示と端末表示部150の表示とを同期させる。つまり、制御部75は、補正目安時間を残り時間に置き換えた上で、むらし工程が終了するまでの間、表示部50の残り時間を通常の計時速度により経時的に減少させる。また、表示制御部175は、制御部75から送信される残り時間情報に基づいて、端末表示部150の表示を、目安時間表示から残り時間表示に切り替える。そして、表示制御部175は、端末表示部150に表示させた残り時間を通常の計時速度によって経時的に減少させる(
図12:ステップS308)。
【0092】
続いて、制御部75は、むらし工程に要する時間が経過したときに、報知部60から炊飯完了の旨を報知させ、加熱調理器10が炊飯を完了する(
図12:ステップS111)。
【0093】
(近距離通信を行う場合の動作)
近距離通信を行う場合、加熱調理器10は、
図13のステップS201〜S213及びステップS216に示す動作を、実施の形態1における
図11のステップS201〜S213及びステップS216に係る動作と同様に実行する。また、加熱調理器10は、
図13のステップS301〜S308に示す動作を、通信ネットワークを介しての通信時における
図12のステップS301〜S308に係る動作と同様に実行する。
【0094】
以上から、本実施の形態2における加熱調理器10によっても、調理工程の比較的早い段階で、目安時間と実際の調理完了までの時間とのずれを低減させることができる。また、前述した実施の形態1では、補正目安時間を残り時間に置き換えた後、制御部75は、通常の計時速度によって残り時間を減少させるが、本実施の形態2では、表示時間と残り時間との大小関係に応じて、制御部75及び表示制御部175が、補正目安時間を減らす速さを調整し、補正目安時間と残り時間との差を徐々に縮めてゆく。具体的には、表示時間が残り時間よりも長い場合に通常の計時速度よりも速く減算し、表示時間が残り時間よりも短い場合に通常の計時速度よりも遅く減算する。
【0095】
すなわち、本実施の形態2における加熱調理器10は、むらし工程に入ったときに、補正目安時間と残り時間との間に差が生じていても、その差を一気に変更させず、徐々に縮めていく処理を行うため、ユーザに対し、表示部50及び端末表示部150に表示された時間が急に変化することによる違和感を与えることがない。つまり、本実施の形態2における加熱調理器10によれば、表示部50及び端末表示部150の表示時間の急変を防ぐことができるため、例えば、表示を見る頻度が高いユーザに与える違和感を解消することができる。
【0096】
実施の形態3.
本実施の形態3に係る加熱調理器は、実施の形態1における
図1〜
図9の例示と同様の構成を有するため、各構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
ただし、本実施の形態2における報知部60は、調理に関連する情報を報知する調理情報報知部、及び通信に関する情報を報知する通信情報報知部として機能する。
【0097】
また、制御部75は、調理が完了した際、調理開始時に表示部50に表示させる初期目安時間である開始時目安時間に対して、早く炊き上がったのか、遅く炊き上がったのかといった比較結果を表す情報を報知部60に報知させるものである。さらに、制御部75は、情報端末機器100への目安時間情報の送信が完了したか否かを表す送信結果報知情報を報知部60に報知させるものである。なお、制御部75が報知部60に報知させる各情報は、記憶部70に予め格納されているものとする。
【0098】
(動作説明)
図14は、本実施の形態3に係る加熱調理器10が、情報端末機器100との間で、通信ネットワークを介して情報の授受を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図15は、本実施の形態3に係る加熱調理器10が、情報端末機器100との間で、直接情報の授受を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図14及び
図15を参照して、加熱調理器10と情報端末機器100とが、通信ネットワークを介して通信を行う場合の動作と、近距離無線通信を用いて近距離通信を行う場合の動作とを説明する。
【0099】
(通信ネットワークを介して通信を行う場合の動作)
通信ネットワークを介して通信を行う場合、加熱調理器10は、
図14のステップS101〜S104に示す動作を、実施の形態1における
図10のステップS101〜S104に係る動作と同様に実行する。
【0100】
そして、制御部75は、調理を開始してから沸騰を検知するまでの間に、情報端末機器100との通信が行われたとき、通信部80から情報端末機器100に、初期目安時間を示す目安時間情報を送信する。その際、制御部75は、目安時間情報の送信が完了した旨、又は目安時間情報の送信に失敗した旨を表す送信結果報知情報を報知部60に報知させる。制御部75は、送信結果報知情報として、例えば、「送信を完了しました」又は「送信に失敗しました」といった音声情報を報知部60に報知させる(
図14:ステップS501)。
【0101】
その後、加熱調理器10は、
図14のステップS105〜S107に示す動作を、実施の形態1における
図10のステップS105〜S107に係る動作と同様に実行する。すなわち、制御部75は、沸騰を検知した時点で、おおよその炊飯量に応じて初期目安時間を補正した後に、情報端末機器100との通信を行い、補正目安時間を示す目安時間情報を送信する。
そして、制御部75は、送信結果報知情報を報知部60に報知させる(
図14:ステップS502)。
【0102】
続いて、加熱調理器10は、
図14のステップS108〜S110に示す動作を、実施の形態1における
図10のステップS108〜S110に係る動作と同様に実行する。そして、制御部75は、残り時間情報を情報端末機器100へ送信し、送信結果報知情報を報知部60に報知させ(
図14:ステップS503)、炊飯を完了する(
図14:ステップS504)。
【0103】
次いで、制御部75は、開始時目安時間と調理開始から調理完了までに要した時間である実質調理時間とを比較し、開始時目安時間が実質調理時間よりも小さいか否かを判定する(
図14:ステップS505)。
【0104】
ここで、開始時目安時間が実質調理時間よりも小さい場合は(
図14:ステップS505/YES)、実際の炊飯量が開始時目安時間を求める際の想定よりも多かったと考えられる。このため、制御部75は、比較結果を表す情報として、炊飯が開始時目安時間よりも遅く完了した旨を示す多量炊飯情報を報知部60に報知させる。多量炊飯情報としては、例えば、「美味しく炊き上げるために炊飯が遅めに完了しました」といった音声情報を採用することができる(
図14:ステップS506)。
【0105】
また、開始時目安時間が実質調理時間以上の場合は(
図14:ステップS505/NO)、制御部75は、開始時目安時間が実質調理時間よりも大きいか否かを判定する(
図14:ステップS507)。ここで、開始時目安時間が実質調理時間よりも大きい場合(
図14:ステップS507/YES)、実際の炊飯量が開始時目安時間を求める際の想定よりも少なかったと考えられる。このため、制御部75は、比較結果を表す情報として、炊飯が開始時目安時間よりも早く完了した旨を示す少量炊飯情報を報知部60に報知させる。少量炊飯情報としては、例えば、「美味しく炊き上げるために炊飯が早めに完了しました」といった音声情報を採用することができる(
図14:ステップS508)。
【0106】
なお、制御部75は、開始時目安時間が実質調理時間と等しい場合には(
図14:ステップS507/NO)、報知部60から炊飯完了の旨を報知させる。
【0107】
(近距離通信を行う場合の動作)
近距離通信を行う場合、加熱調理器10は、
図15のステップS201〜S216及びステップS501〜S507に示す通り、
図11及び
図14における同一の符号を付した各工程と同様の処理を実行する。
【0108】
なお、制御部75は、情報端末機器100へ目安時間情報を送信する際に、初期目安時間又は補正目安時間の送信が完了したか否かを示す送信結果表示情報を、表示部50に表示させるようにしてもよい。また、制御部75は、調理が完了した際に、開始時目安時間と実質調理時間との比較の結果を表す情報を表示部50に表示させるようにしてもよい。さらに、制御部75は、報知部60から各情報を報知させる代わりに、当該各情報と同等の情報を表示部50に表示させるようにしてもよい。
【0109】
以上から、本実施の形態3における加熱調理器10によっても、調理工程の比較的早い段階で、目安時間と実際の調理完了までの時間とのずれを低減させることができる。また、加熱調理器10は、情報端末機器100との通信時に、送信結果報知情報を報知するため、ユーザは、通信の結果を聴覚によって確認するとともに、加熱調理器10が正常に動作しているか否かを容易に知ることができる。
【0110】
ところで、加熱調理器10においては、例えばNFCにより、情報端末機器100との間で直接通信を行う場合など、残り時間が確定してから炊飯が完了するまでの間に、情報端末機器100との通信が一度も行われないことがある。また、加熱調理器10は、残り時間の送信に失敗することがある。そして、このような場合には、表示部50等に表示されている時間と炊き上がりの時間とが一致しないことがある。
【0111】
この点、加熱調理器10は、開始時目安時間と実質調理時間との比較結果を表す情報を報知する機能を有するため、ユーザに対し、表示部50等に表示されている時間と、炊き上がりの時間との不一致は、加熱調理器10の不具合ではなく、ご飯をより美味しく炊き上げるための制御の結果であることを伝えることができる。さらに、加熱調理器10を用いての炊飯を重ねていくにつれて、「この炊飯量の場合にはこの程度の差が生じる」といった具合に、ユーザは、炊飯量に対してどの程度の差が生じるのかを経験的に捉えることができる。また、加熱調理器10は、各種情報を音声又は音で報知する機能を有するため、例えば、視覚障害を持つ方をユーザとする場合にも、使い勝手の向上を図ることができる。
【0112】
ここで、制御部75は、情報端末機器100へ目安時間情報を送信する際に、初期目安時間又は補正目安時間の送信が完了したか否かを示す送信結果表示情報を、表示部50に表示させるようにしてもよい。また、制御部75は、調理が完了した際に、開始時目安時間と実質調理時間との比較の結果を表す情報を表示部50に表示させるようにしてもよい。さらに、制御部75は、報知部60から各情報を報知させる代わりに、当該各情報と同等の情報を表示部50に表示させるようにしてもよい。
【0113】
なお、上述した各実施の形態は、加熱調理器における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、
図1及び
図3では、加熱調理器10が報知部60及び通信部80を有する場合を例示したが、これに限らず、加熱調理器10は、報知部60及び通信部80のうちの一方又は双方を設けずに構成してもよい。また、加熱調理器10が操作部40及び表示部50を有する場合を例示したが、これに限らず、加熱調理器10は、操作部40及び表示部50の代わりに、これらに機能を併せもつ例えばタッチパネルなどを設けて構成してもよい。
【0114】
もっとも、上記各実施の形態おいて、記憶部70に格納されているものとして説明した各種情報の一部又は全部は、制御部75の内部メモリ等に格納されていてもよい。また、上記各実施の形態では、炊飯量テーブル及び補正時間テーブルの双方が米種と調理メニューとの組み合わせに対応している場合を例示したが、炊飯量テーブル及び補正時間テーブルの少なくとも一方は、米種と調理メニューとの組み合わせに対応していなくてもよい。