特許第6521980号(P6521980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521980
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】レール固定システム
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/38 20060101AFI20190520BHJP
   E01B 9/68 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   E01B9/38
   E01B9/68
【請求項の数】32
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-541886(P2016-541886)
(86)(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公表番号】特表2016-534262(P2016-534262A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2014068752
(87)【国際公開番号】WO2015036304
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】102013218424.7
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507178730
【氏名又は名称】シュヴィハーク・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ブーダ
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−509533(JP,A)
【文献】 実開昭54−104704(JP,U)
【文献】 特開平08−277501(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/071815(WO,A1)
【文献】 特表2011−500989(JP,A)
【文献】 特開昭63−315701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/38
E01B 9/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール要素(3)を強固な走行路面(5)に固定するレール固定システム(S)であって、前記レール要素(3)と前記強固な走行路面(5)との間に中間構造体(2)が配置されており、前記中間構造体(2)によって前記レール要素(3)が前記強固な走行路面(5)に弾性的に作用結合されている、レール固定システム(S)において、
前記中間構造体(2)は、単一の弾性的な中間層要素(1;101)を1つしか有さず、前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、該中間層要素(1;101)の断面(6)にわたって、該中間層要素(1;101)の長手方向延在長さ(8)の方向(7A)でかつ/又は前記長手方向延在長さ(8)に対して横方向(7B)で変化する弾性分布を有しており、
前記強固な走行路面(5)は、ポリバレントな枕木要素を有し、前記レール固定システム(S)の前記中間構造体(2)は、梯形部(41;141;241;341)を有して構成された硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)を有し、該硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)は、前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)と前記強固な走行路面(5)の一構成部材(4)との間に配置されていることを特徴とする、レール固定システム(S)。
【請求項2】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、前記レール要素(3)の下面(10)に直接隣接して配置されている、請求項1に記載のレール固定システム(S)。
【請求項3】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、該中間層要素(1;101)の縁部(18,19,20,21)から完全に間隔を置いた、より弾性的に構成された弾性内側領域(15)を有し、前記縁部(18,19,20,21)からの間隔が、30mm未満である、請求項1又は2に記載のレール固定システム(S)。
【請求項4】
前記より弾性的に構成された弾性内側領域(15)を、より弾性が小さく構成された弾性外側領域(16)が完全に包囲している、請求項3に記載のレール固定システム(S)。
【請求項5】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、中心(17)周りに同心的に配置された、より弾性的に構成された弾性内側領域(15)を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項6】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、円形、楕円形又は卵形の弾性内側領域(15)を有し、該弾性内側領域(15)は、該弾性内側領域(15)に隣接する、より弾性が小さく構成された弾性外側領域(16)よりも弾性的に構成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項7】
前記より弾性的に構成された弾性内側領域(15)は、60mm〜100mmの直径(D)を有する、請求項3から6までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項8】
前記より弾性的に構成された弾性内側領域(15)は、前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)の、隣接するより弾性が小さく構成された弾性外側領域(16)よりも薄く構成されている、請求項3から7までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項9】
前記より弾性的に構成された弾性内側領域(15)は、3mm〜10mmの厚さ(d)を有する、請求項3から8までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項10】
前記より弾性的に構成された弾性内側領域(15)は、15:1の直径と厚さの関係を有する、請求項3から9までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項11】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、21:15:1の幅:奥行き:高さ(h)の関係を有する外形寸法を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項12】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、前記単一の弾性的な中間層要素(1)の、支持能力のある実効支持面に対する、前記レール要素(3)の総重なり面に関して、1.2の支持関係を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項13】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、35kN/mmの静的ばね定数を有し、該静的ばね定数は、28kNと78kNの間のセカントとして測定されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項14】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、45kN/mm未満の動的ばね定数を有し、該動的ばね定数は、室温及び15Hzの振動数で、28kNと78kNの間のセカントとして測定されている、請求項1から13までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項15】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、1.3未満の硬化率を有する動的ばね定数と静的ばね定数との間の比を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項16】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、微孔性のゴム又はポリウレタンからなる本体(22)を有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項17】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)の縁部の少なくとも2つ(18,20)に、それぞれ1つの縦長の材料凹欠部(23,24)を有する、請求項1から16までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項18】
前記縦長の材料凹欠部(23,24)は、前記単一の弾性的な中間層要素(1)の長辺縁部(18,20)の方向で延在する、請求項17に記載のレール固定システム(S)。
【請求項19】
前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)は、前記単一の弾性的な中間層要素(1;101)の縁部の少なくとも2つ(18,20)に、それぞれ2つの突出した歯部(25,26,27,28)を有する、請求項1から18までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項20】
前記硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)は、側方のアングルガイドプレート(90)によって前記強固な走行路面(5)に固定されている、請求項1から19までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項21】
前記硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)の前記梯形部(41;141;241;341)は、前記強固な走行路面(5)に面している、請求項1から20までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項22】
前記梯形部(41;141;241;341)は、前記レール要素(4)の下に配置されている、請求項から21までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項23】
前記梯形部(41;141)は、多数の横方向リブ要素(57;157)により形成された梯形体(59;159)を有し、前記梯形体(59;159)は、中央ウェブ部(170)により補強されている、請求項から22までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項24】
前記梯形部(241)は、中空体(275)を有する、請求項から23までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項25】
前記中空体(275)は、横方向内部ウェブ(277)により空間的に分割された二分割の中空室(276)を有する、請求項24に記載のレール固定システム(S)。
【請求項26】
前記硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)は、該硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)の縁部(43,44,55,56;143,144,155,156)の少なくとも2つに、それぞれ1つの縦長の材料凹欠部(45,46;145,146)を有する、請求項から25までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項27】
前記縦長の材料凹欠部(45,46;145,146)は、該硬質の梯形中間層要素(40;140;240;340)の前記長手方向延在長さ(48;148)の方向(47;147)で延在する、請求項26に記載のレール固定システム(S)。
【請求項28】
前記硬質の梯形中間層要素(41;141;241;341)は、前記硬質の梯形中間層要素(41;141;241;341)の縁部(43,44,55,56;143,144,155,156)の少なくとも2つに、それぞれ2つの突出した歯部(49,50,51,52;149,150,151,152)を有する、請求項1から27までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【請求項29】
前記レール固定システム(S)は、アングルガイドプレート(90;190)を有し、該アングルガイドプレート(90;190)は、少なくとも1つのプレート端部(91)に、歯部(25,26,27,28;49,50,51,52;149,150,151,152)を収容する2つの材料欠截部(92,93)を有する、請求項19または28に記載のレール固定システム(S)。
【請求項30】
前記2つの材料欠截部(92,93)は両方とも、前記アングルガイドプレート(90;190)の一長辺(94)に配置されている、請求項29に記載のレール固定システム(S)。
【請求項31】
前記2つの材料欠截部(92,93)は、前記アングルガイドプレート(90;190)の角隅(95,96)に配置されている、請求項29又は30に記載のレール固定システム(S)。
【請求項32】
前記材料欠截部(92,93)は、前記アングルガイドプレート(90;190)を前記アングルガイドプレート(90;190)のプレート厚に関して部分的にのみ欠截したものである、請求項29から31までのいずれか1項に記載のレール固定システム(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール要素を強固な走行路面に固定するレール固定システムであって、レール要素と強固な走行路面との間に中間構造体が配置されており、中間構造体によってレール要素が強固な走行路面に弾性的に作用結合される、レール固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上位概念部に記載のレール固定システムは、相応に構成された基礎にレール要素を固定することができるように、従来技術において既に公知である。例えば、これに関して好適に設計された基礎は、強固な走行路面又はバラスト敷きの走行路面である。特に、強固な走行路面を使用した場合には、ここで使用されるレール固定システムは、十分に良好な振動特性を保証することができるように、剛体の基礎構造に基づいて弾性的に設計されていなければならない。この弾性的な特性は、レール要素と、強固な走行路面の構成部材、例えばコンクリート枕木との間に配置されている弾性及び高弾性の構成要素を組み合わせた形の、弾性的に構成された中間構造体により保証することができる。これらの弾性及び高弾性の構成要素の使用により、特に最大軸重(欧州では一般に22.5t)又は高速鉄道(350km/hまで)において、これらの要求を充足することができる。弾性及び高弾性の構成要素は、例えば、一方では、100kN/mm〜500kN/mmのばね定数(Federkennziffer)を有する、レール要素のレール底部の下に直接配置される弾性の中間層を有し、他方では、15kN/mm〜40kN/mmのばね定数を有する、鋼製のリブ付きプレート又は鋼製の荷重分配プレートの下に位置する高弾性の中間プレートを有している。しかし、この公知のレール固定システムは、必要な構成要素が多数あることに基づいて、製造及び組立に極めて多くの手間、ひいてはコストを要することが判っている。それぞれ異なる弾性を有する構成要素の他に、上位概念部に記載のレール固定システムは、大抵の場合、レール固定プレート及びこのレール固定プレート上に配置されるアングルガイドプレートと、レール要素のレール底部をレール固定プレートに締め付ける少なくともさらに2つの第1のクランプと、さらにはレール固定システムを強固な走行路面又はバラスト敷きの走行路面の構成部材に螺止するさらに多数のねじと、をさらに有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根底にある課題は、上位概念部に記載の、強固な走行路面におけるレール固定システムを、必要な弾性を維持しつつ、構造的により簡単に構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、レール要素を強固な走行路面に固定するレール固定システムであって、レール要素と強固な走行路面との間に中間構造体が配置されており、レール要素が中間構造体によって強固な走行路面に弾性的に作用結合されており、中間構造体は、本発明に従って、単一の弾性的な中間層要素を1つしか有さず、単一の弾性的な中間層要素は、中間層要素の断面にわたって、中間層要素の長手方向延在長さの方向でかつ/又は長手方向延在長さに対して横方向で変化する弾性分布を有する、レール固定システムによって解決される。
【0005】
このように本発明に従って構成された単一の弾性的な中間層要素の使用または利用により、別の高弾性の中間プレート等を省略可能であり、したがって、レール固定システムの構造が著しく単純化される。これにより、特にレール固定システムの組立が単純化される。これは、線路に沿ってこの種のレール固定システムを多数使用することで、材料及び組立時間を大きく節約できる可能性を必然的に伴う。
【0006】
この場合、特に強調すべきは、単一の弾性的な中間層要素の長手方向延在長さの方向でも、単一の弾性的な中間層要素の横方向延在長さの方向でも変化する弾性分布の実施変化態様である。これは、特に横方向延在長さでの変化する弾性分布が、レール固定システムの弾性挙動に肯定的に作用するからである。
【0007】
つまり、本発明では、強固な走行路面に関して必要なすべての弾性を、本発明に係るレール固定システムの単一の弾性的な中間層要素のみで、構造的に実現可能である。
【0008】
「強固な走行路面(Feste−Fahrbahn)」なる概念は、本発明の意味だけでなく、専門図書においても、実質的にバラストレスのレール基礎を指している。実質的にバラストレスのレール基礎の場合、レール固定システムが固定される特にコンクリート枕木は、バラスト内ではなく、大抵の場合、コンクリートにより強固に固められて、剛体の基礎構造上に位置している。代替的に、この種のレール固定システムは、枕木なしに、予め製造されたコンクリートプレート上に直接固定されている。このような剛体の基礎構造またはコンクリート構造に基づいて、この種のレール固定システムは、弾性的に形成されていなければならない。
【0009】
この点において、本発明の意味で、レール固定システムは、強固な走行路面用のレール固定システムである。
【0010】
単一の弾性的な中間層要素は、レール要素の下面に直接隣接して配置されていると好ましく、その結果、レール要素を、直接、緩衝作用をもって良好に弾性支承することができる。
【0011】
特に良好な弾性特性は、単一の弾性的な中間層要素が、中間層要素の縁部から完全に間隔を置いた、より弾性的に構成された弾性内側領域を有していると、実現可能である。
【0012】
この関連で、単一の弾性的な中間層要素全体の良好な安定性を保証すべく、より弾性的に構成された弾性内側領域が、単一の弾性的な中間層要素のすべての縁部に対して、20mmの最低間隔を有していると、特に有利である。
【0013】
この点において、好ましい実施変化態様では、単一の弾性的な中間層要素の縁部からの、より弾性的に構成された弾性内側領域の間隔は、30mm未満、好ましくは20mm未満であってもよい。
【0014】
さらに、より弾性的に構成された弾性内側領域を、より弾性が小さく(weniger elastisch)構成された弾性外側領域が完全に包囲するようになっていると、有利である。これにより、より弾性が小さく構成された弾性外側領域をひとまとまりに形成することができ、したがって、単一の弾性的な中間層要素の極めて良好な安定性を実現することができる。
【0015】
より弾性的に構成された弾性内側領域を多様に構成可能であることは明らかである。
【0016】
単一の弾性的な中間層要素が、中心周りに同心的に配置された、より弾性的に構成された弾性内側領域を有していると、単一の弾性的な中間層要素における好ましい弾性分布を実現することができる。
【0017】
単一の弾性的な中間層要素が、円形、楕円形又は卵形の弾性内側領域を有し、弾性内側領域が、円形、楕円形又は卵形の弾性内側領域に隣接する、より弾性が小さく構成された弾性外側領域よりも弾性的に構成されていると、単一の弾性的な中間層要素は、その周囲を取り巻く縁部領域の領域全体で、好適に高められた剛性を得ることができる。
【0018】
より弾性的に構成された弾性内側領域が、60mm〜100mm、好ましくは80mmの直径を有していると、単一の弾性的に構成された中間層要素において、極めて良好な弾性分布を実現することができる。
【0019】
弾性が異なるように構成された領域が、単一の弾性的な中間層要素において構造的に様々に、例えば異なる弾性特性を有する互いに隣接する材料領域によって形成されてもよいことは、明らかである。
【0020】
好ましい実施変化形態では、より弾性的に構成された弾性内側領域は、単一の弾性的な中間層要素の、隣接するより弾性が小さく構成された弾性外側領域よりも薄く構成されている。特に、単一の弾性的な中間層要素の、相応に構成された中央部の材料弱化部により、本発明において所望される弾性分布を構造的に簡単に実現することができる。
【0021】
例えば、単一の弾性的な中間層要素は、単一の弾性的な中間層要素の縁部領域が、より弾性的に構成された弾性内側領域よりも低い弾性、ひいては、より高い固有剛性を有するように寸法設定されているか、好ましくは中央部に配置された材料凹陥部を有している。これにより、レール要素に働く横方向力により引き起こされるレール要素の転動またはレール要素の傾倒が、明らかに軽減される。
【0022】
この材料凹陥部は、好ましくは円形、楕円形又は卵形に形成されている。
【0023】
好ましくは、所望の弾性分布を達成すべく、より弾性的に構成された弾性内側領域が、3mm〜10mmの厚さを有し、好ましくは5.5mmの厚さを有している。
【0024】
特に好ましくは、より弾性的に構成された弾性内側領域が、15:1の直径と厚さの関係を有していると、単一の弾性的な中間層要素の断面にわたって変化する弾性分布を実現することができる。
【0025】
より弾性的に構成された弾性内側領域が、本発明の意味で約15:1の直径と厚さの比に相当する、14.55の直径と厚さの比に等しい80mmの直径と5.5mmの厚さとを有していると好ましい。
【0026】
単一の弾性的な中間層要素が、21:15:1、好ましくは210mm×148mm×10mmの幅:奥行き:高さの関係を有する外形寸法を有していると、当該レール固定システムの単一の弾性的な中間層要素を、特に既存のレール固定システムにも組み込むことができる。
【0027】
この点において、単一の弾性的な中間層要素の外形寸法は、好ましくは210mm×148mm×10mmであり、すなわち外形寸法は、21:15:1の関係を有している。このとき、より弾性的に構成された弾性内側領域の直径は、より弾性的に構成された弾性内側領域の厚さが5.5mmであるとき、80mmであると好ましい。
【0028】
さらに、単一の弾性的な中間層要素が、単一の弾性的な中間層要素の、支持能力のある実効支持面に対する、レール要素の総重なり面に関して、1.2の支持関係(Auflagerelation)を有していると、有利である。
【0029】
単一の弾性的な中間層要素の、レール要素により覆われる総重なり面は、単一の弾性的な中間層要素がレール要素と持続的に作用接触する有効支持面が26,053mmであるとき、31,080mmであると好ましい。
【0030】
さらに、単一の弾性的な中間層要素が、35kN/mm(±15%)の静的ばね定数を有し、静的ばね定数が、28kNと78kNの間のセカント(正割)として測定されていると、有利である。
【0031】
さらに、単一の弾性的な中間層要素が、45kN/mm(±15%)未満の動的ばね定数を有し、動的ばね定数が、室温(21°)及び15Hzの振動数で、28kNと78kNの間のセカントとして測定されていると、有利である。
【0032】
この関連で、単一の弾性的な中間層要素が、1.3未満の硬化率(Versteifungsfaktor)を有する動的ばね定数と静的ばね定数との間の比を有していると、さらに有利である。
【0033】
特に本発明の意味で必要な特性を充足すべく、単一の弾性的な中間層要素が様々な材料から製造されていてもよいことは、自明である。材料の例は、全般的に、発泡されたプラスチック等である。特にターポリマーエラストマー、例えば、特にエチレン‐プロピレン‐ジエン‐ゴム、略してEPDM、発泡された独立気泡型のポリウレタン(PU)等が、ここでの要求を長期にわたって特に良好に充足し得ることが、判っている。
【0034】
この点において、単一の弾性的な中間層要素が、微孔性のゴム又はポリウレタンからなる本体を有していると、有利である。
【0035】
単一の弾性的な中間層要素におけるさらなる重量削減は、単一の弾性的な中間層要素が、単一の弾性的な中間層要素の縁部の少なくとも2つに、それぞれ1つの縦長の材料凹欠部を有していると、簡単に達成可能である。
【0036】
縦長の材料凹欠部が、単一の弾性的な中間層要素の長辺の方向で延在していると好ましく、これにより、縦長の材料凹欠部を、より大きく単一の弾性的な中間層要素から凹欠させることができる。
【0037】
これに加え、単一の弾性的な中間層要素が、中間層要素の縁部の少なくとも2つに、それぞれ2つの突出した歯部を有していると、単一の弾性的な中間層要素と、レール固定システムの単数又は複数のアングルガイドプレートとの好適な噛み合いを達成することができる。これらの突出した歯部は、材料凹欠部から張り出しており、その結果、相応に相補的に構成されたアングルガイドプレートと良好に噛み合うことができる。
【0038】
別の態様において、本発明の根底にある別の課題は、強固な走行路面における単純化されたポリバレントな(polyvalent)レール固定システムを提供すること、すなわち、対応する剛体の基礎構造内にコンクリートによって強固に固められたコンクリート枕木等が、2つの異なる軌間を可能にするようになっている強固な走行路面にも、当該レール固定システムを使用可能に構成することである。
【0039】
本発明の根底にあるこの別の課題は、強固な走行路面が、ポリバレントな枕木要素を有し、レール固定システムの中間構造体が、梯形部を有して構成された硬質の梯形中間層要素を有し、硬質の梯形中間層要素が、単一の弾性的な中間層要素と強固な走行路面の一構成部材との間に配置されている、改良されたレール固定システムにより解決される。
【0040】
好ましくは、本発明に係るレール固定システムを用いてポリバレントな枕木要素も強固な走行路面において使用することができるように、中間構造体は、既に上で詳細に説明したような単一の弾性的な中間層要素に対して付加的に、さらに1つの硬質の梯形中間層要素を有している。
【0041】
この梯形中間層要素にも、確かに、ある程度の弾性が内在しているものの、この弾性は、本発明の意味で、特に単一の弾性的な中間層要素と比べて、無視できるほどの低さであるので、梯形中間層要素は、単一の弾性的な中間層要素よりも明らかに硬く構成されている。この点において、中間構造体は、引き続き、全体として1つの単一の弾性的な中間層要素を有しているにすぎない。
【0042】
レール要素に及ぼされる横方向力を強固な走行路面に導入することができるように、レール固定システムは、さらに、梯形に形成された隆起部を有するアングルガイドプレートを備え、梯形に形成された隆起部は、コンクリート枕木等の、相補的に形成された梯形溝内に係合可能である。この結果、運転時に発生する横方向力を、強固な走行路面に導入することができる。
【0043】
ポリバレントな枕木要素の場合、レール固定システムの2つの異なる組み付け位置を生じさせる2つの要求される軌間に基づいて、4つの梯形溝が枕木要素の各側に存在することを必要とする。
【0044】
しかし、このことは、レール固定システムを組み立てたときに、梯形溝の1つが覆われてしまうことも意味している。
【0045】
この点において、レール底部の下に位置決めされる単一の弾性的な中間層要素が全面的に枕木要素上に載置可能であるように、この梯形溝を充填要素により充填する必要性がある。
【0046】
従来技術によれば、ポリバレントな枕木要素であるが、従来使用されるレール固定システムでは必要な弾性を得られないために、古典的なバラスト敷きの走行路面にしか適しておらず、強固な走行路面には不適なポリバレントな枕木要素の場合、ポリバレントな枕木要素上へのレール底部の全面的な支持を保証することができるように、覆われてしまう梯形溝用の充填要素として梯形くさびが組み付けられる。しかし、この場合の欠点は、梯形くさびが固定不能であることである。
【0047】
この点において、単一の弾性的な中間層要素と強固な走行路面の一構成部材との間にレール固定システムが配置される、梯形部を有して構成された硬質の梯形中間層要素を有していると、有利である。
【0048】
当該レール固定システムの構造は、硬質の梯形中間層要素が、側方のアングルガイドプレートによって強固な走行路面に固定されていると、さらに単純化可能である。こうして、硬質の梯形中間層要素の、充填要素として作用する梯形部を、構造的に簡単に、自体公知のアングルガイドプレートによってポリバレントな枕木要素に締結し、ひいては、位置固定することができる。これにより、別の固定手段は不要となる。
【0049】
硬質の梯形中間層要素の梯形部が、強固な走行路面に面していると、当該レール固定システムまたは梯形部を有して構成された硬質の梯形中間層要素を、市販のポリバレントな枕木要素においても問題なく使用することができる。
【0050】
硬質の梯形中間層要素の梯形部を、レール要素によって相応の梯形溝内に固定可能であると好ましい。
【0051】
これにより、梯形部がレール要素の下に配置されていると、有利である。
【0052】
梯形部が、横方向リブ要素によって補強された梯形体を有していると、梯形要素を、硬質の梯形中間層要素に特に安定に構成することができる。
【0053】
追加的又は代替的に、梯形部が中空体を有していると有利である。これにより、梯形部は、より良好に梯形溝の形状に適合可能となり、したがって、梯形中間層要素とポリバレントな枕木要素との間の作用接触を強化することができる。さらに、硬質の梯形中間層要素を、より少量の材料によって製造可能になる。
【0054】
中空体が、横方向内部ウェブにより空間的に分割された二分割の中空室を有していると、安定性が改善された中空の梯形部を実現することができる。
【0055】
硬質の梯形中間層要素が、硬質の梯形中間層要素の縁部の少なくとも2つに、それぞれ1つの縦長の材料凹欠部を有していると、硬質の梯形中間層要素におけるさらなる材料節約を達成することができる。
【0056】
縦長の材料凹欠部が、硬質の梯形中間層要素の長辺の方向で延在していると好ましく、これにより、縦長の材料凹欠部も、単一の弾性的な中間層要素からより大きく凹欠させることができる。
【0057】
単一の弾性的な中間層要素が、単一の弾性的な中間層要素の縁部の少なくとも2つに、それぞれ2つの突出した歯部を有していると、レール固定システムの単数又は複数のアングルガイドプレートと硬質の梯形中間層要素の好ましい噛み合いを達成することができる。これらの突出した歯部は、張り出して、相応に相補的に構成されたアングルガイドプレートに噛み合うことができるように、材料凹欠部から張り出している。
【0058】
ここで再度明言しておくと、硬質の梯形中間層要素に関する特徴だけで、上位概念部に記載のレール固定システムが有利にさらに発展し、その結果、これらの特徴の組み合わせが本発明のその他の特徴なしに既に有利である。
【0059】
特に、当該梯形中間層要素を備えるレール固定システムは、ポリバレントな枕木要素と組み合わせた強固な走行路面における使用のための要求を充足する。
【0060】
本発明の付加的な態様によれば、レール固定システムが、アングルガイドプレートを有し、アングルガイドプレートが、少なくとも2つのプレート端部に、それぞれ2つの材料欠截部を有していると、本発明のその他の特徴とは独立して有利である。
【0061】
この点において、レール固定システムの別の独立した実施変化態様において、アングルガイドプレートの特別な構成が提案されている。
【0062】
この場合、2つの材料欠截部は、すなわち、単一の弾性的な中間層要素の2つの突出した歯部と、硬質の梯形中間層要素の2つの突出した歯部とが、アングルガイドプレートに係合可能であるように、アングルガイドプレートにおいて欠截されている。これにより、一方では、単一の弾性的な中間層要素とアングルガイドプレートとの間の特に緊密な作用結合が形成可能であり、他方では、硬質の梯形中間層要素とアングルガイドプレートとの間の特に緊密な作用結合が形成可能である。したがって、レール固定システムの個々の構成要素が、特に良好に互いに噛み合うことができる。
【0063】
この点において、それぞれのアングルガイドプレート自体は、レール要素に作用するより大きな横方向力を、強固な走行路面またはこれに関連する枕木要素に伝達することができる。
【0064】
2つの材料欠截部が、直方体状にアングルガイドプレートの縁部領域において欠截されていると好ましい。
【0065】
2つの材料欠截部が両方とも、アングルガイドプレートの長辺に配置されていると好ましく、その結果、突出した歯部が、ちょうど嵌まるようにアングルガイドプレートに差し込み可能となる。
【0066】
2つの材料欠截部が、アングルガイドプレートの角隅に配置されていると、アングルガイドプレートを、より容易にレール固定システムに取り付けることができる。
【0067】
材料欠截部が、アングルガイドプレートをアングルガイドプレートのプレート厚に関して部分的にのみ欠截したものであると、アングルガイドプレートに、好ましくは三方において開放された好適な歯部収容ポケットを形成することができる。
【0068】
全体として、アングルガイドプレートに設けられた材料欠截部により、軽量化が達成可能である。これにより、一方では、組立が容易になり、他方では、コストを削減する材料使用が保証される。
【0069】
有利には、ここでは理想的に、単一の弾性的な中間層要素も、硬質の梯形中間層要素も、形状結合(formschluessig:形状による束縛)を介してアングルガイドプレートに作用結合可能である。
【0070】
これだけでも、上位概念部に記載のレール固定システムを有利に改良可能であり、この結果、アングルガイドプレートに関する特徴も、本発明のその他の特徴なしに既に有利である。
【0071】
総括すると、本発明の主態様は、レール要素と、当該レール固定システムの強固な走行路面との間に設けられる中間構造体が、本明細書に記載した弾性的な中間層要素を1つだけ有しており、注型された一体又は二分割の枕木要素又はコンクリート支持プレートを有する強固な走行路面の場合、本発明の本明細書に記載した別の態様に係る硬質の梯形中間層要素を必ずしも必要としないことにある。
【0072】
これに対して、ポリバレントな使用のための強固な走行路面の場合、本発明のこの別の態様に係る梯形中間層要素を使用すると有利である。
【0073】
最後にさらに附言しておくと、一体及び二分割の枕木要素も、バラスト敷きの走行路面における標準使用及びポリバレントな使用のために、本発明に係る梯形中間層要素あり又はなしで使用可能である。このことは、バラスト敷きの走行路面をベースとした高速用の軌道での使用目的での本発明の使用可能性をも開く。
【0074】
全3つの態様に関して記載した当該レール固定システムにより、一般に使用される鋼製プレート及び付加的な高弾性の中間プレートを設ける必要性がなくなり、これにより、上位概念部に記載のレール固定システムを、構造上、大幅に簡略化することができる。したがって、本発明は、各種の強固な走行路面に使用可能であり、限定するものではないが、特に本明細書で説明するようなポリバレントなシステムにも使用可能である。
【0075】
場合によっては、利点を相応に追加的に実現することができるように、前述の解決手段または特許請求の範囲に記載の解決手段の特徴を組み合わせてもよいことは明らかである。
【0076】
本発明のその他の特徴、効果及び利点について、添付の図面を参照しながら、以下に説明する。図面及び説明は、本発明に係るレール固定システムの構成要素を例示的に図示し説明するものである。
【0077】
個々の図面において少なくとも実質的にその機能に関して一致している構成要素には、図中、同じ符号を付してある。これらの構成要素について、全図で符号を付して説明を加えることはしない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1A】レール固定システムの、断面にわたって変化する弾性分布を有する単一の弾性的な中間層要素の概略上面図である。
図1B図1Aに示した単一の弾性的な中間層要素の、断面線A−Aに沿った概略横断面図である。
図1C図1A及び図1Bに示した単一の弾性的な中間層要素の概略透視上面図である。
図1D図1A乃至図1Cに示した単一の弾性的な中間層要素の概略透視下面図である。
図2A】レール固定システムの、梯形部を有する硬質の梯形中間層要素の概略透視上面図である。
図2B図2Aに示した硬質の梯形中間層要素の概略上面図である。
図2C図2A及び図2Bに示した硬質の梯形中間層要素の概略縦側面図である。
図2D図2A乃至図2Cに示した硬質の梯形中間層要素の概略横側面図である。
図3A】レール固定システムの、梯形部を有する代替的な硬質の梯形中間層要素の概略透視上面図である。
図3B図3Aに示した代替的な硬質の梯形中間層要素の概略上面図である。
図3C図3A及び3Bに示した代替的な硬質の梯形中間層要素の概略縦側面図である。
図4A】レール固定システムの、中空の梯形部を有する別の代替的な硬質の梯形中間層要素の概略透視上面図である。
図4B図4Aに示した別の代替的な梯形中間層要素の概略縦断面図である。
図4C図4A及び図4Bに示した別の代替的な硬質の梯形中間層要素の中空の梯形部の概略横断面詳細図である。
図4D図4A乃至図4Cに示した別の代替的な硬質の梯形中間層要素の中空の梯形部の概略縦断面詳細図である。
図5A】レール固定システムの、突出した歯部を収容するそれぞれ2つの材料欠截部を少なくとも2つのプレート端部に有するアングルガイドプレートの概略下面図である。
図5B図5Aに示したアングルガイドプレートの概略縦側面図である。
図5C図5A及び図5Bを示したアングルガイドプレートの概略上面図である。
図5D図5A乃至図5Cに示したアングルガイドプレートの概略横側面図である。
図6】レール固定システムの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1A乃至図1Dに示す第1の考えられる弾性的な中間層要素1は、レール要素3を道床(図示せず)の強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4に固定する、一例として示したレール固定システムS(図6参照)の中間構造体2の単一の弾性的な中間層要素1であってよい。この単一の弾性的な中間層要素1は、その断面6(図1Bも参照)にわたって見て、長手方向延在長さ8の長手方向7Aでも、長手方向延在長さ8に対して横向き(横方向延在長さ)の横方向7Bでも、変化する弾性分布を有している。
【0080】
この単一の弾性的な中間層要素1は、レール要素3のレール底部9、ひいてはレール要素3の下面10に直接隣接している(図6も参照)。
【0081】
単一の弾性的な中間層要素1は、2つの異なる弾性領域、すなわち、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15と、より弾性が小さく構成された弾性外側領域16とを有している。このより弾性的に構成された弾性内側領域15は、単一の弾性的な中間層要素1が相応に構成されているのであれば、別の態様においては、楕円形又は卵形に構成されていてもよい。
【0082】
より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15は、単一の弾性的な中間層要素1において、中間層要素1の中心17周りに同心的に延在し、中間層要素1の周囲を取り巻く辺または縁部18,19,20,21から完全に間隔を置いている。
【0083】
特に図1A及び図1Cに良好に看取可能であるように、より弾性が小さく構成された弾性外側領域16は、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15を完全に包囲している。
【0084】
より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15は、80mmの直径Dを有している。
【0085】
この場合、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15は、単一の弾性的な中間層要素1全体の十分な安定性を長期にわたって保証すべく、すべての縁部18〜21に対して20mmの最低間隔を有している。
【0086】
単一の弾性的な中間層要素1は、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15において、より弾性が小さく構成された弾性外側領域16よりも薄く構成されている。これにより、少なくとも本実施形態では、断面6にわたり変化する弾性分布を構造的に簡単に形成可能であり、かつ調整可能である。
【0087】
単一の弾性的な中間層要素1は、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15では、5.5mmの厚さdしか有していないのに対して、より弾性が小さく構成された弾性外側領域16では、10mmの厚さまたは高さhを有している。
【0088】
さらに、本実施形態では、単一の弾性的な中間層要素1は、エチレン‐プロピレン‐ジエン‐ゴム、略してEPDMからなる本体22を有している。
【0089】
単一の弾性的な中間層要素1は、35kN/mmの静的ばね定数、45kN/mm未満の動的ばね定数、ひいては、動的ばね定数と静的ばね定数との間の比に関して、1.3未満の硬化率を有している。
【0090】
さらに、単一の弾性的な中間層要素1は、その長辺縁部18及び20にそれぞれ1つの縦長の材料凹欠部23または24を有している。材料凹欠部23または24の長さ(別途符号を付さず)は、単一の弾性的な中間層要素1の長手方向延在長さ8の方向7で延在している。
【0091】
この縦長の材料凹欠部23または24に起因して、単一の弾性的な中間層要素1は、その長辺縁部18及び20にそれぞれ2つの突出した歯部25及び26あるいは27及び28を有している。これにより、単一の弾性的な中間層要素1は、その長辺縁部18及び20において、レール固定システムSの別の構成要素、例えばレール固定システムSのアングルガイドプレート90(特に図5A乃至図5D)に、特に良好に形状結合を介して噛み合うことができ、したがって、例えばレール固定システムS内の力の流れを改善することができる。突出した歯部25及び26あるいは27及び28は、このためにそれぞれの材料凹欠部23または24から張り出している。
【0092】
断面6にわたり変化する弾性分布を有する単一の弾性的な中間層要素1は、本発明において考え得るところでは、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15を、適当な大きさの円形の、単一の弾性的な中間層要素1の中央部に作り込まれた材料凹陥部30によって形成することで、簡単に構成されている。この円形の材料凹陥部30は、単一の弾性的な中間層要素1の中心17周りに同心的に配置されている。
【0093】
単一の弾性的な中間層要素1は、その上面31にこの円形の材料凹陥部30を有している一方、その下面32では完全に平たんである。
【0094】
単一の弾性的な中間層要素1が、より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15では、円形の材料凹陥部30によってより弾性が小さく構成された弾性外側領域16の厚さと比較して約半分にすぎない厚さに形成されていることにより、単一の弾性的な中間層要素1の変化する弾性分布は、長手方向延在長さ8の方向7で連続的に変化するのではなく、円形の材料凹陥部30の縁部33において突然変化する。
【0095】
より弾性的に構成された円形の弾性内側領域15が、円形の材料凹陥部30によって形成されているだけでなく、より弾性が小さく構成された弾性外側領域16も、円形の材料凹陥部30によって形成されている。
【0096】
図2A乃至図2Dに示す第1の考えられる硬質の梯形中間層要素40は、単一の弾性的な中間層要素1に加え、レール要素3を強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4に固定する、一例として図6に示したレール固定システムSの中間構造体2の単一の別の構成要素であってよい。
【0097】
硬質の梯形中間層要素40は、特に梯形部41を特徴としている。梯形部41は、コンクリート枕木要素4に設けられた梯形溝42(例えば図6参照)に対して相補的に形成されており、この梯形溝42内に差し込み可能である。硬質の梯形中間層要素40のために、レール要素4に作用する横方向力を、中間構造体2によって直接、強固な走行路面5またはそれぞれのコンクリート枕木要素4に導入または導出することができる。
【0098】
硬質の梯形中間層要素40は、単一の弾性的な中間層要素1と、強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4との間に配置される。具体的には、硬質の梯形中間層要素40は、レール要素4の下に存在する梯形溝42内に特に梯形部41を配置することができるように、レール要素4(例えば図6参照)の下に配置されている。この点において、梯形部41は、レール要素4の下に配置される。
【0099】
硬質の梯形中間層要素40は、梯形部41を除いてフラットに形成されており、梯形中間層要素40の両長辺縁部43及び44にそれぞれ1つの縦長の材料凹欠部45または46を有している。縦長の材料凹欠部45及び46は、硬質の梯形中間層要素40の長手方向延在長さ48の方向47で延在している。
【0100】
硬質の梯形中間層要素40は、両長辺縁部43及び44にそれぞれさらに2つの突出した歯部49及び50あるいは51及び52を有している。これにより、硬質の梯形中間層要素40も、その長辺縁部43及び44において、レール固定システムSの別の構成要素、例えばレール固定システムSのアングルガイドプレート90(特に図5A乃至図5D参照)に、特に緊密に形状結合を介して噛み合うことができ、したがって、例えばレール固定システムS内の力の流れを改善することができる。突出した歯部49及び50あるいは51及び52は、このためにそれぞれの材料凹欠部45または46から張り出している。
【0101】
梯形部41は、梯形部長手方向延在長さ54でもって、硬質の梯形中間層要素40の第1の短辺縁部55から第2の短辺縁部56にかけて、ひいては、硬質の梯形中間層要素40の長手方向延在長さ48の方向47で延在しており、梯形部41は、特に良好に図2Bに看取可能であるように、硬質の梯形中間層要素40の中央から偏った箇所に配置されている。
【0102】
本実施形態では、梯形部41は、梯形部長手方向延在長さ54に関して横方向に配置される多数の横方向リブ要素57(例示的にのみ符号を付した)からなっている。横方向リブ要素57は、硬質の梯形中間層要素40のフラットな約3mm厚の基体58に、梯形部41の梯形体59を形成する。
【0103】
横方向リブ要素57は、一列60に、互いに3mmの間隔61を置いて相並んで配置されている。この場合、横方向リブ要素57は、約5mm厚のベース区分62を有している。ベース区分62によって、横方向リブ要素57は、硬質の梯形中間層要素40のフラットな基体58に移行している。
【0104】
横方向リブ要素57は、この約5mm厚のベース区分62から、フラットな基体58から高さ方向に、全体として約18mm張り出しており、横方向リブ要素57のそれぞれの先端63になおも3mmの厚さを有している。したがって、相並んで配置される横方向リブ要素57は、それぞれ、互いに狭まっていくように6°の角度64を形成している。
【0105】
横方向リブ要素57は、約10mm幅の先端63に向かって錐形に狭まっている。横方向リブ要素57のそれぞれの両フランク65及び66は、60°のフランク角67を互いに形成している。
【0106】
図3A乃至図3Cに示す代替的に考えられる硬質の梯形中間層要素140は、単一の弾性的な中間層要素1に加え、やはり、レール要素3を強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4に固定する、一例として図6に示したレール固定システムSの中間構造体2の単一の別の構成要素となり得る。
【0107】
代替的な硬質の梯形中間層要素140は、梯形部141を有している。梯形部141は、コンクリート枕木要素4に設けられた梯形溝42(例えば図6参照)に対して相補的である。したがって、代替的な硬質の梯形中間層要素140によっても、レール要素4に作用する横方向力を、中間構造体2によって直接、強固な走行路面5またはそれぞれのコンクリート枕木要素4に導入または導出することができる。硬質の梯形中間層要素140は、単一の弾性的な中間層要素1と強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4との間に配置される。具体的には、硬質の梯形中間層要素140は、レール要素4の下に存在する梯形溝42内に特に梯形部141を配置することができるように、レール要素4(例えば図6参照)の下に配置される。
【0108】
代替的な硬質の梯形中間層要素140のフラットな基体158は、梯形部141を除いてフラットに形成されており、その両長辺縁部143及び144にそれぞれ1つの縦長の材料凹欠部145または146を有している。材料凹欠部145または146は、硬質の梯形中間層要素140の長手方向延在長さ148の方向147で延在している。
【0109】
代替的な硬質の梯形中間層要素140は、両長辺縁部143及び144にそれぞれさらに2つの突出した歯部149及び150あるいは151及び152を有している。突出した歯部149及び150あるいは151及び152は、本実施形態でも、それぞれの材料凹欠部145または146から張り出している。
【0110】
梯形部141の梯形部長手方向延在長さ154は、代替的な硬質の梯形中間層要素140の第1の短辺縁部155から第2の短辺縁部156にかけて、ひいては、代替的な硬質の梯形中間層要素140の長手方向延在長さ148の方向147で延びている。
【0111】
この代替的な実施形態においても、梯形部141は、梯形部長手方向延在長さ154に関して横方向に配置される多数の横方向リブ要素157(例示的にのみ符号を付した)からなっている。横方向リブ要素157は、代替的な硬質の梯形中間層要素140のフラットな基体158に梯形体159を形成している。
【0112】
横方向リブ要素157は、互いに間隔を置いて一列160に並んで配置されている。個々の横方向リブ要素157は、中央ウェブ部170によって付加的に相互に結合されている。これにより、梯形部141の安定性は著しく高められる。
【0113】
図3A乃至図3Cに示した代替的な硬質の梯形中間層要素140は、中央ウェブ部170を除いて、図2A乃至図2Dに示した硬質の梯形中間層要素40と同一に形成されている。この点において、硬質の梯形中間層要素40に関する説明を参照されたい。
【0114】
図4A乃至図4Dに示す別の考えられる硬質の梯形中間層要素240は、単一の弾性的な中間層要素1に加え、やはり、レール要素3を強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4に固定する、一例として図6に示したレール固定システムSの中間構造体2の単一の別の構成要素となり得る。
【0115】
別の硬質の梯形中間層要素240は、その梯形部241を除いて、前述した硬質の梯形中間層要素40(図2A乃至図2D)及び140(図3A乃至図3C)と実質同一である。この点において、以下では、異なる形に構成された梯形部241についてのみ説明し、この別の硬質の梯形中間層要素240のその他の構造については、繰り返しを避けるため、前述の説明を参照されたい。
【0116】
別の硬質の梯形中間層要素240の梯形部241は、中空体275を特徴としている。中空体275は、安定化の役割を担う横方向内部ウェブ277によって空間的に分割された二分割の中空室276を有している。中空体275のために、梯形部241は、より少ない材料で形成される。これに応じて、別の硬質の梯形中間層要素240は、軽量となる。この場合、二分割の中空室276の両中空チャンバ278及び279は、補強された壁領域280(例示的にのみ符号を付した)によって錐形に形成されており、その結果、梯形部241は、中空体275にも関わらず、極めて安定である。
【0117】
道床(図示せず)の強固な走行路面5のコンクリート枕木要素4にレール要素3を固定する、一例として示したレール固定システムS(図6参照)の、図5A乃至図5Dに示す第1の可能なアングルガイドプレート90は、プレート端部91に2つの材料欠截部92及び93を有し、材料欠截部92及び93には、中間構造体2の対応する構成要素をそれぞれのアングルガイドプレート90に形状結合式に特に緊密に互いに噛み合わせるために、前述の突出した歯部25,26若しくは27,28及び49,50若しくは51,52又は149,150若しくは151,152が係合する。
【0118】
この場合、2つの材料欠截部92及び93は、アングルガイドプレート90の一方の長辺94において、しかも長辺94の角隅95または96に配置されており、その結果、相応に材料欠截部92及び93に対して相補的に形成された突出した歯部25,26若しくは27,28及び49,50若しくは51,52又は149,150若しくは151,152は、それぞれの材料欠截部92または93にちょうど嵌まるような形で係合可能である。
【0119】
アングルガイドプレート90は、梯形のくさび要素97を有している。アングルガイドプレート90は、くさび要素97により、強固な走行路面5の別の梯形溝98(図6参照)に係合可能である。
【0120】
図6に一例として示したレール固定システムSは、この有利な中間構造体2を有している。中間構造体2は、本発明における単一の弾性的な中間層要素101及び本発明における梯形部341を有する硬質の梯形中間層要素340のみから構成される(図1乃至図4参照)。
【0121】
硬質の梯形中間層要素340は、その梯形部314によってコンクリート枕木要素4の梯形溝42内に、上で詳細に説明したように固定される。
【0122】
さらに、この単一の弾性的な中間層要素101及びこの硬質の梯形中間層要素340は、アングルガイドプレート190に上述したような形(図5参照)で形状結合を介して互いに噛み合っている。
【0123】
この場合、レール底部9も、それぞれのアングルガイドプレート190も、従来慣用のクランプ11(例示的にのみ符号を付した)によってコンクリート枕木要素4に対して締結されている。
【0124】
このために、クランプ11(例示的にのみ符号を付した)は、ねじ13(例示的にのみ符号を付した)によって締め付けられている。ねじ13は、コンクリート枕木要素4に挿入されたアンカ12(例示的にのみ符号を付した)に雌ねじ山及び雄ねじ山によって公知の形式で螺入されている。
【0125】
この箇所で明示的に附言しておくと、場合によっては、記載した特徴、効果及び利点を相応に追加的に実現または達成することができるように、前述のまたは特許請求の範囲及び/又は図面に記載した解決手段の特徴を組み合わせてもよい。
【0126】
前述の実施形態が最初の形態にすぎないことは自明である。この点において、本発明の形態は、実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0127】
1 単一の弾性的な中間層要素
2 中間構造体
3 レール要素
4 コンクリート枕木要素
5 強固な走行路面
6 断面
7A 長手方向
7B 横方向
8 長手方向延在長さ
9 レール底部
10 下面
11 クランプ
12 アンカ
13 ねじ
15 より弾性的に構成された弾性内側領域
16 より弾性が小さく構成された弾性外側領域
17 中心
18 第1の長辺縁部
19 第1の短辺縁部
20 第2の長辺縁部
21 第2の短辺縁部
22 本体
23 第1の材料凹欠部
24 第2の材料凹欠部
25 第1の突出した歯部
26 第2の突出した歯部
27 第3の突出した歯部
28 第4の突出した歯部
30 円形の材料凹陥部
31 上面
32 下面
33 縁部
40 硬質の梯形中間層要素
41 梯形部
42 梯形溝
43 第1の長辺縁部
44 第2の長辺縁部
45 第1の材料凹欠部
46 第2の材料凹欠部
47 方向
48 長手方向延在長さ
49 第1の突出した歯部
50 第2の突出した歯部
51 第3の突出した歯部
52 第4の突出した歯部
54 梯形部長手方向延在長さ
55 第1の短辺縁部
56 第2の短辺縁部
57 横方向リブ要素
58 フラットな基体
59 梯形体
60 列
61 間隔
62 ベース区分
63 先端
64 角度
65 第1のフランク
66 第2のフランク
67 フランク角
90 アングルガイドプレート
91 プレート端部
92 第1の材料欠截部
93 第2の材料欠截部
94 長辺
95 第1の角隅
96 第2の角隅
97 梯形のくさび要素
98 別の梯形溝
101 単一の弾性的な中間層要素
140 代替的な硬質の梯形中間層要素
141 梯形部
143 第1の長辺縁部
144 第2の長辺縁部
145 第1の材料凹欠部
146 第2の材料凹欠部
147 方向
148 長手方向延在長さ
149 第1の突出した歯部
150 第2の突出した歯部
151 第3の突出した歯部
152 第4の突出した歯部
154 梯形部長手方向延在長さ
155 第1の短辺縁部
156 第2の短辺縁部
157 横方向リブ要素
158 フラットな基体
159 梯形体
160 列
170 中央ウェブ部
190 アングルガイドプレート
240 別の代替的な硬質の梯形中間層要素
241 梯形部
275 中空体
276 二分割の中空室
277 横方向内部ウェブ
278 第1の中空チャンバ
279 第2の中空チャンバ
280 壁領域
340 梯形中間層要素
341 梯形部
S レール固定システム
D 直径
d 厚さ
h 高さ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6