(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記神経学的状態が、急性脳卒中、虚血性脳卒中又は出血性脳卒中などの脳卒中、動脈瘤、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、HIV関連認知症、多発性硬化症、緑内障、周産期低酸素症などの低酸素症、虚血、再灌流傷害、頭部外傷又は脊髄損傷である、請求項18に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、以下の用語集及び締めくくりの実施例を含む以下の記載を参照することによって、より完全に理解されうる。簡素化のため、特許を含む本明細書に引用される出版物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の請求項により引用される主題が、本明細書において参照され、その例は、添付された構造及び式によって説明される。例示的な主題が記載されるが、例示的な記載は、特許請求の範囲を制限することを意図しないことが理解される。対照的に、本発明の主題は、全ての代替案、改変及び等価物を網羅することが意図され、これらは、特許請求の範囲により定義されている本開示の主題の範囲内に含まれうる。
【0041】
ゼラチナーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼ2及び9)は、多くの神経疾患の病理において重要な役割を果たす。神経疾患の治療用の治療薬の開発における大きな課題は、>98%の小分子薬物が、血液脳関門(BBB)を通過する及び脳内に治療濃度を達成する能力が無いことである。SB−3CT(化合物1)は、ゼラチナーゼの選択的な遅延結合性の強力な阻害剤であり、神経疾患の動物モデルにおいて効力を示す。しかしSB−3CTは、水溶性が乏しい。
【0042】
p−アミノメチルオキサジアゾール(4)、p−アミノメチル(5、ND−336)、p−アセトアミドメチル(6、ND−378)及びp−グアニジノ(7)を化合物1に対する進歩として合成し、評価した。これらの化合物は、1よりも10〜14,000倍の水溶性があり、MMP−2に対して遅延結合性阻害の挙動を保持し、BBBを通過した。p−アセトアミドメチル類似体(化合物6)は、MMP−2の選択的ナノモル遅延結合性阻害剤であり、密接に関係するMMP−9又はMMP−14を阻害しない。標的MMP−2からの化合物6の解離が遅いため(MMP−2に結合した6の滞留時間は、18.2±0.4分である)、6の濃度がK
i値を下回っても、MMP−2の持続的阻害をもたらす。この阻害剤は、治療介入にとって及び神経疾患におけるMMP−2の役割についての調査にとって有用なツールである。p−アミノメチル誘導体(化合物5)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14の水溶性ナノモル遅延結合性阻害剤であり、MMPを調節する目的で進化したタンパク質インヒビターであるMMP−9に結合したメタロプロテイナーゼ1又は2の組織阻害剤(TIMP−1又はTIMP−2)より6〜7倍長い阻害滞留時間を、これらの酵素に対して有する。
【0043】
定義
以下の定義は、本明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために含まれる。本明細書で使用されるとき、列挙された用語は、以下の意味を有する。本明細書で使用される他の全ての用語及び語句は、当業者が理解するような通常の意味を有する。そのような通常の意味は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 14
th Edition,by R.J.Lewis,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,2001などの専門用語辞典を参照して得ることができる。
【0044】
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」などへの参照は、記載されている実施形態が特定の態様、特質、構造、部分又は特徴を含みうるが、必ずしも全ての実施形態がこの態様、特質、構造、部分又は特徴を含むとは限らないことを示す。更に、そのような語句は、本明細書の別の部分において参照される同じ実施形態を言及しうるが、必ずしもそうとは限らない。更に、特定の態様、特質、構造、部分又は特徴が実施形態と関連して記載されるとき、明確に記載されているか否か関わらず、他の実施形態に影響を与える、又はそのような態様、特質、構造、部分又は特徴を他の実施形態と関連付けることは、当業者の知識の範囲内である。
【0045】
単数形の用語「a」、「an」及び「the」は、文脈から特に明示のない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば「化合物(a compound)」への参照は、複数のそのような化合物を含み、これにより、化合物Xは複数の化合物Xを含む。特許請求の範囲は、任意の随意的要素を除外するように起草されうることが、更に留意される。このように、この記述は、「単独で」、「のみ」などの排他的用語の、本明細書に記載されている任意の要素及び/又は特許請求の範囲の要素の列挙若しくは「否定による」限定の使用と関連した使用の基礎となる先行事項としての機能を果たすことが意図される。
【0046】
用語「及び/又は」は、この用語が関連する任意の1つの事項、事項の任意の組合せ又は全ての事項を意味する。語句「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、特にその使用の文脈に関連して読んだとき、当業者により容易に理解される。例えば、上記語句は、1、2、3、4、5、6、10、100又は列挙された下限よりおよそ10、100若しくは1000倍高い任意の上限を意味することができる。例えば、フェニル環の1つ以上の置換基は、例えばフェニル環が二置換されている場合、1〜5つ又は1〜4つを指す。
【0047】
用語「約」は、特定される値の±5%、±10%、±20%又は±25%の変動を指すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態において、45〜55パーセントの変動を持つことができる。整数範囲では、用語「約」は、範囲のそれぞれの末端で列挙された整数より大きい及び/又は小さい1又は2つの整数を含むことができる。本明細書において特に指示のない限り、用語「約」は、個別の成分、組成物又は実施形態の機能性に関して同等の列挙された範囲に近似している値、例えば重量百分率を含むことも意図される。約という用語は、この段落の上記に考察されているように、列挙された範囲の端点を修飾することもできる。
【0048】
当業者に理解されるように、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表現するものを含む全ての数は、近似値であり、全ての場合において用語「約」により任意選択で修飾されることが理解される。これらの値は、本明細書に記載の教示を利用して当業者が得ようとする望ましい特性に応じて変わりうる。そのような値は、対応する試験測定に見出される標準偏差から必然的にもたらされる変動性を本質的に含有することも、理解される。
【0049】
当業者に理解されるように、任意及び全ての目的において、特に書面による提出に関して、本明細書に列挙される全ての範囲は、可能な任意及び全ての部分範囲及びその部分範囲の組合せ、並びに範囲を構成する個別の値、特に整数の値も包含する。列挙される範囲(例えば、重量百分率又は炭素基)は、範囲内のそれぞれの特定の値、整数、小数又は恒等性を含む。任意の提示された範囲は、十分に記載されている及び同じ範囲を少なくとも等しく二分の一、三分の一、四分の一、五分の一又は十分の一に細分化できることが容易に認識されうる。非限定例として、本明細書において考察されるそれぞれの範囲は、下三分の一、中三分の一及び上三分の一などに容易に細分化されうる。当業者に理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「超える」、「以上」などの言葉は、全て、列挙されている数を含み、そのような用語は、上記に考察されたように、部分範囲に後に細分化されうる、範囲を指す。同様に、本明細書に列挙される全ての比は、広い比の範囲内に入る全ての部分比も含む。したがって、ラジカル、置換基及び範囲について列挙される特定の値は、説明のためだけであり、ラジカル及び置換基の規定された範囲内の他の規定された値又は他の値を除外するものではない。
【0050】
当業者は、メンバーがマーカッシュ群などの慣用的な方法で一緒に集められる場合、本発明が、提示されている群を全体としてだけではなく、群の各メンバーを個別に及び主群の可能な全ての部分群も包含することも、容易に認識する。加えて、全ての目的において、本発明は主群のみならず、1つ以上の群メンバーが存在しない主群も包含する。したがって本発明は、列挙された群の任意の1つ以上のメンバーの明確な除外を想定する。したがって、条件が、任意の開示されている分類又は実施形態に適用されてもよく、それは、任意の1つ以上の列挙された要素、種又は実施形態が、そのような分類又は実施形態から、例えば、明確な否定による限定における使用から除外されうるというものである。
【0051】
用語「アルキル」は、1〜約20個の炭素原子を鎖に有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を指す。例えば、アルキル基は、(C
1〜C
20)アルキル、(C
1〜C
12)アルキル、(C
1〜C
8)アルキル、(C
1〜C
6)アルキル又は(C
1〜C
4)アルキルでありうる。アルキル基の例には、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル(t−Bu)、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、並びに当業者及び本明細書に提供されている教示を考慮すると、前述の例のいずれか1つと同等であると考慮される基が含まれる。アルキル基は、任意選択で置換されうる又は非置換でありうる及びアルケニル基など任意選択で部分的不飽和でありうる。
【0052】
用語「アルケニル」は、2〜20個の炭素原子を鎖に有する直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基を指す。(アルケニル基の二重結合は、2個のsp
2混成炭素原子により形成される。)説明されているアルケニル基には、プロパ−2−エニル、ブタ−2−エニル、ブタ−3−エニル、2−メチルプロパ−2−エニル、ヘキサ−2−エニルなどのC
1〜C
12アルケニル基、並びに当業者及び本明細書に提供されている教示を考慮すると、前述の例のいずれか1つと同等であると考慮される基が含まれる。アルケニル基は、任意選択で置換されうる又は非置換でありうる。
【0053】
用語「シクロアルキル」は、炭素環1つあたり3〜12個の環原子を有する、飽和又は部分的に飽和されている、単環式、縮合多環式又はスピロ多環式の炭素環を指し、任意選択で置換されうる又は非置換でありうる。いくつかの実施形態において、アルキル基はシクロアルキル基を指し、したがって環構造を含む。そのようなアルキル基には、(シクロアルキル)−アルキル基が含まれる。シクロアルキル基の実例的な例には、適切に結合された部分の形態である以下の実体が含まれ:
【化8】
ここでシクロアルキル基は、任意の水素原子の位置に結合している。
【0054】
「複素環」又は「ヘテロシクロアルキル」基は、飽和又は部分的に飽和されている、環構造1つあたり、炭素原子、並びに窒素、酸素及び硫黄から選択される3個までのヘテロ原子から選択される3〜12個の環原子を有する、単環式又は縮合、架橋若しくはスピロ多環式環構造を指す。環構造は、炭素又は硫黄環メンバーに2つまでのオキソ基を任意選択で含有してもよく、任意選択で置換されうる又は非置換でありうる。複素環基の実例的な例には、適切に結合された部分の形態である以下の実体が含まれ:
【化9】
ここで複素環基は、任意の水素原子の位置に結合している。
【0055】
用語「アリール」は、親芳香族環系の単一炭素原子から少なくとも1個の水素原子を除去することによって誘導される芳香族炭化水素基を指す。ラジカルの結合部位は、親環系の飽和又は不飽和炭素原子でありうる。アリール基は、6〜30個の炭素原子、例えば、約6〜14個の炭素原子、約6〜13個の炭素原子又は約6〜10個の炭素原子を有することができる。アリール基は、単一の環(例えば、フェニル)又は複数の縮合(condensed)(縮合(fused))環を有することができ、少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル又はアントリル)である。典型的なアリール基には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルが含まれるが、これらに限定されない。アリールは、非置換でありうる又は任意選択で置換されうる。
【0056】
用語「ヘテロアリール」は、複素環1つあたり3〜12個の環原子を有する単環式、縮合二環式又は縮合多環式の芳香族複素環(炭素原子、並びに窒素、酸素及び硫黄から選択される4個までのヘテロ原子から選択される環原子を有する環構造)を指す。ヘテロアリールは、非置換でありうる又は任意選択で置換されうる。ヘテロアリール基の実例的な例には、適切に結合された部分の形態である以下の実体が含まれ:
【化10】
ここでヘテロアリールは、任意の水素原子の位置に結合している。
【0057】
当業者は、上記に提示又は説明されたシクロアルキル、複素環及びヘテロアリール基の化学種が網羅的ではないこと及びこれらの定義された用語の範囲内の追加の化学種も選択されてもよいことを認識する。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「Het」は、O、N、S又はPから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む5員又は6員複素環式環を指すことができ、ここで、環は、1又は2つの不飽和部位(cites)を任意選択で含み、環は、1、2又は3つのオキソ、ハロ、ニトロ又はメチル基により任意選択で置換されている。Het基は、複素環基又はヘテロアリール基でありうる。例には、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、チアゾール、ジアジン、トリアゾール及びテトラゾールが含まれる。一実施形態において、Hetは、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、異性1,2,4−オキサジアゾール、テトラゾール、1,3,4−チアジアゾール、オキサゾール、1,2−ジアジン、チアゾール及び1,3,4−トリアゾールをとりわけ指す。別の特定の実施形態において、Hetは、1,2−ジアジン、チアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール又はテトラゾールをとりわけ指す。なお別の実施形態において、Hetは、1,2,4−オキサジアゾール又は1,3,4−チアジアゾールをとりわけ指す。他の実施形態において、Hetは、5員複素環式環を指すことができ、ここで環は、O、S、P及びNから独立して選択される3個のヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも2個のヘテロ原子はNである。いくつかの実施形態において、少なくとも2個のヘテロ原子はOである。なお他の実施形態において、Hetは、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、異性1,2,4−オキサジアゾール、テトラゾール、1,3,4−チアジアゾール、オキサゾール、1,2−ジアジン、チアゾール及び1,3,4−トリアゾールから選択される、とりわけ任意の1、2、3、4、5、6、7又は8つの基である。
【0059】
用語「ハロゲン」は、塩素、フッ素、臭素又はヨウ素を指す。用語「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0060】
本明細書に記載されている任意の基又は「置換基」として、それぞれ、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5又は6つ)の置換基を更に含むことができる。そのような基が、立体的に実現不可能である及び/又は合成的に実行可能ではない任意の置換又は置換パターンを含有しないことは、当然のことながら理解される。
【0061】
用語「置換されている」は、特定の基又は部分が、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5又は6つ)の置換基を保有しうることを意味する。用語「非置換」は、特定の基が置換基を保有しないことを意味する。用語「任意選択で置換されている」は、特定の基が非置換である又は1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。用語「置換されている」が、構造系を記載するために使用される場合、置換は、系における任意の原子価許容位置(valency−allowed position)に生じることを意味する。特定の部分又は基が任意選択で置換されている又は任意の特定の置換基で置換されていると明確に示されていない場合、そのような部分又は基は、いくつかの実施形態では非置換であることが意図されるが、他の実施形態では置換されうることが理解される。適切な置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、アロイル、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスフェート、スルフェート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン及び/又はシアノが含まれる。ある特定の実施形態において、上記の基の任意の1つが、含まれうる又は可変基若しくは置換基の群から除外されうる。
【0062】
本明細書に記載されている化合物の範囲内で選択される置換基は、再帰的に存在してもよい。この文脈において、「再帰的置換基」は、置換基がそれ自体の別の例として列挙されうることを意味する。そのような置換基の再帰的性質のため、理論的には多数が任意の所定の請求項おいて存在しうる。医薬品化学及び有機化学の当業者は、そのような置換基の総数が、意図される化合物の望ましい特性により合理的に制限されることを理解する。そのような特性には、分子量、溶解度又はlogPなどの物理的特性、意図される標的に対する活性などの適用特性及び合成の容易さなどの実用的な特性が、例として、限定することなく含まれる。いくつかの実施形態において、置換は、約1200Da未満、約1000Da未満、約900Da未満、約800Da未満、約750Da未満、約700Da未満、約650Da未満、約600Da未満、約500Da未満又は約400Da未満の分子量を有する化合物をもたらす。
【0063】
再帰的置換基は、本発明の意図される態様である。医薬品及び有機化学の当業者は、そのような置換基の汎用性を理解する。再帰的置換基が、ある実施形態に存在する程度まで、総数は上記に記載されたように決定される。
【0064】
置換基(すなわち、基)のために下記に提示される特定の値及び範囲は、説明のためだけである。これらは、置換基の確定された範囲内の他の確定値又は他の値を除外しない。
【0065】
とりわけ、(C
1〜C
6)アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル又はヘキシルでありうる;
(C
1〜C
6)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ又はヘキシルオキシありうる;
(C
2〜C
6)アルケニルは、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル又は5−ヘキセニルでありうる;
(C
2〜C
6)アルキニルは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル又は5−ヘキシニルでありうる;
(C
1〜C
6)アルカノイルは、アセチル、プロパノイル又はブタノイルでありうる;
(C
2〜C
6)アルカノイルオキシは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ又はヘキサノイルオキシでありうる;
(C
3〜C
8)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルでありうる;
アリールは、フェニル、インデニル、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル又はナフチルでありうる;及び
二環式アリールは、インデニル又はナフチルでありうる。
【0066】
Hetは、ヘテロアリール、単環式ヘテロアリール、二環式ヘテロアリール又は非芳香族複素環でありうる。ヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピリジル(若しくは、そのN−オキシド)、チエニル、ピリミジニル(若しくは、そのN−オキシド)、インドリル又はキノリル(若しくは、そのN−オキシド)でありうる;単環式ヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル(若しくは、そのN−オキシド)、チエニル又はピリミジニル(若しくは、そのN−オキシド)でありうる;二環式ヘテロアリールは、キノリル(又は、そのN−オキシド)でありうる;及び二環式アルキルは、デカヒドロキノリン又はデカヒドロナフタレン(シス又はトランス)でありうる。Het基は、例えば、1又は2つの不飽和部位を任意選択で含むことができ、環は、1、2、3又は4つの置換基、例えば、オキソ、ハロ、ニトロ又はメチル基により任意選択で置換されうる。
【0067】
本明細書に提示されている任意の式は、構造式により描写されている構造、及びある特定の変形又は形態を有する化合物を表すことが意図される。特に、本明細書に提示されている任意の式の化合物は、不斉中心を有してもよく、したがって、異なる鏡像異性及び/又はジアステレオマー形態で存在してもよい。一般式の化合物の全ての光学異性体及び立体異性体、並びにこられの混合物は、式の範囲内であると考慮される。したがって、本明細書に提示されている任意の式は、ラセミ体、1つ以上の鏡像異性形態、1つ以上のジアステレオマー形態、1つ以上のアトロプ異性形態及び/又はこれらの混合物を表すことが意図される。更に、ある種の構造は、幾何異性体(すなわち、シス及びトランス異性体)、互変異性体又はアトロプ異性体として存在してもよい。加えて、本明細書に提示されている任意の式は、そのような化合物の水和物、溶媒和物及び多形、並びにこれらの混合物を包含することが意図される。
【0068】
本発明は、とりわけ、ラセミ、スカレミック(scalemic)、R及びS混合物を含み、式A、式I及びこれらの関連する式の化合物のチイラン部分において生じる。したがって、いくつかの実施形態において、チイランのキラル中心の立体化学はR配置であり、いくつかの実施形態において、チイランのキラル中心の立体化学はS配置である。両方の配置の化合物は、MMPを活発に阻害する。
【0069】
本明細書に提示されている任意の式は、化合物の非標識形態と共に同位体標識形態を表すことも意図される。同位体標識化合物は、1個以上の原子が、選択される原子質量又は質量数を有する原子に代えられていることを除いて、本明細書に提示されている式により描写される構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれ
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
15N、
18O、
17O、
31P、
32P、
35S、
18F、
36Cl、
125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が含まれる。
【0070】
そのような同位体標識化合物は、代謝研究(好ましくは、
14Cを用いる)、反応速度論的研究(例えば、
2H若しくは
3Hを用いる)、薬物若しくは基質組織分布アッセイを含む[陽電子放射断層撮影法(PET)若しくは単一光子放出型コンピューター断層撮影法(SPECT)などの]検出若しくは画像化技術、又は患者の放射線療法において有用である。特に、
18F又は
11C標識化合物は、PET又はSPECT研究にとって特に好ましいことがある。更に、重水素(すなわち、
2H)などのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性、例えばインビボ半減期の増加又は投与必要量の低減、をもたらす、ある種の治療利益を与えうる。本発明の同位体標識化合物及びそのプロドラッグは、スキーム又は下記に記載されている実施例及び調製例に開示されている手順を、容易に利用可能な同位体標識試薬で非同位体標識試薬を置換することによって実施して、一般に調製することができる。
【0071】
本明細書に提示されている任意の式を参照するとき、特定の可変基に可能な化学種のリストから特定の部分を選択することは、他に現れるその可変基における部分の定義を制限することを意図しない。換言すると、可変基が1回を超えて現れる場合、特定のリストからの化学種の選択は、式の他の場所又は異なる式の他の場所にある同じ可変基のための化学種の選択と無関係である。
【0072】
式Iの様々な化合物は、本明細書に記載されている技術と共に、米国特許第6,703,415号(Mobashery et al.)及び同第7,928,127号(Lee et al.)、国際公開第2011/026107号(Mobashery et al.)、並びに米国特許出願公開第2013/0064878号(Chang et al.)に記載されている技術を含む当業者に周知のものを使用して、容易に調製することができる。
【0073】
用語「接触させる」は、インビトロ又はインビボにおいて、例えば溶液中、反応混合物中に、例えば生理学的反応、化学反応又は物理的変化をもたらすため、細胞又は分子レベルを含んで、触れ合わせる、接触を行う又は隣接若しくは近接させる作用を指す。
【0074】
「有効量」は、疾患、障害及び/若しくは状態を治療する又は列挙された効果をもたらすのに有効な量を指す。例えば、有効量は、治療される状態又は症状の進行又は重篤度を低減するのに有効な量でありうる。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。用語「有効量」は、例えば、宿主において疾患若しくは障害を治療若しくは予防する又は疾患若しくは障害の症状を治療するのに有効である本明細書に記載されている化合物の量、又は本明細書に記載されている化合物の組合せの量を含むことが意図される。したがって「有効量」は、所望の効果を提供する量を一般に意味する。
【0075】
用語「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」及び「治療(treatment)」には、(i)疾患、病理的又は医学的な状態が生じるのを防止すること(例えば、予防)、(ii)疾患、病理的若しくは医学的な状態を阻害する又はその進展を阻止すること、(iii)疾患、病理的又は医学的状態を軽減すること、及び/或いは(iv)疾患、病理的又は医学的状態に関連する症状を減少させることが含まれうる。したがって用語「治療する」、「治療」及び「治療すること」は、予防まで広げることができ、治療される状態又は症状の進行又は重篤度を、防止する、防止、防止すること、低下させること、停止すること又は反転することを含むことができる。このように、用語「治療」は、適切であれば医学的、治療的及び/又は予防的投与を含むことができる。
【0076】
用語「阻害する(inhibit)」、「阻害すること(inhibiting)」及び「阻害(inhibition)」は、疾患、感染、状態又は細胞群の増殖又は進行を緩徐化する、停止する又は反転することを指す。阻害は、例えば、治療又は接触がない場合に生じる増殖又は進行と比較して、約20%、40%、60%、80%、90%、95%又は99%大きくなりうる。
【0077】
用語「選択的阻害剤」は、MMPを参照して使用されるとき、1つ以上の他のMMPの存在下で1つのMMPの酵素活性を、典型的には、例えばK
iに関して少なくとも1桁で阻害する阻害剤を指す。K
iデータを得るために使用される方法は、当該技術において知られており、例えば、Brown et al.,J.Amer.Chem.Soc.2000,122(28),6799−6800及びそれに引用された参考文献に記載されている。追加的に有用なアッセイ及び技術は、米国特許出願公開第2009/0209615号(Lipton et al.)において見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
用語「哺乳動物」は、体温の自己調節、毛及び雌では乳生産乳房により識別される、ヒトを含む15,000種を超える脊椎動物の綱を指す。哺乳動物には、霊長類、ヒト、齧歯類、イヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ウマ類、イノシシ類、ヤギ類などが含まれる。とりわけ、哺乳動物はヒトでありうる。
【0079】
血液脳関門を通過する選択的な水溶性の遅延結合性マトリックスメタロプロテイナーゼ−2及び−9阻害剤
ニューロンへの損傷及びニューロンのアポトーシス死が、急性及び慢性神経障害を含む多くの状態及び障害の病因に役割を果たしているという証拠が、蓄積している。これらの障害は、急性脳卒中、頭部外傷及びてんかんから、ハンチントン病、アルツハイマー病、HIV関連認知症、多発性硬化症及び緑内障などのより慢性な状態までの範囲がある。これらの疾患のうちのいくつかへの寄与因子は、細胞外マトリックスにおけるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性化である。
【0080】
MMPは、細胞外可溶性又は膜結合プロテアーゼのファミリーを構成し、細胞外マトリックスの再構築に顕著に関与している。特にMMP−9は、脳卒中の後にヒトにおいて有意に上昇しており、米国において三番目に多い死亡原因である。長期間の身体障害の主な原因でもある。最も一般的な形態の脳卒中である急性虚血性脳卒中は、大脳動脈における凝血により、脳の酸素欠乏及び脳梗塞をもたらすことによって引き起こされる。ゼラチナーゼ(例えば、MMP−2及びMMP−9)は、ニューロン細胞死、血液脳関門の破壊及び出血に関与することが知られている。虚血性脳卒中の治療のための唯一のFDA承認薬は、血栓溶解剤の組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)である。tPAの投与は、脳卒中の発生から3時間以内である必要があり、その結果、脳卒中患者の5%未満に適用可能である(CNS Neurol.Disord.Drug Targets 2008,7,243−53)。tPAの使用は、神経毒性及び血栓溶解関連出血性変化を含む重篤な副作用によっても制限され、tPAの使用は、出血の証拠を有する患者又は抗凝固投薬を摂取している患者にとって禁忌となる。tPA治療を受けている脳卒中患者の血液は、上昇した濃度のMMP−9を示し、tPAは、MMP−9を活性化することが示された。加えて、最近の報告は、tPAがMMP−9を脳において上方調節すること、並びにマトリックスの分解及び脳損傷に寄与することを示している。
【0081】
したがって、脳卒中の治療のため、並びに現在使用されている療法より副作用が少ない及び/又は小さい脳卒中の治療のために、新たな療法が必要である。tPAなどの既知の療法の副作用を有さない、選択的ゼラチナーゼ阻害剤などの新たなゼラチナーゼ阻害剤も必要である。
【0082】
化合物SB−3CT(1)は、標的酵素により触媒される反応を伴い、遅延結合性の強固な結合による阻害をもたらす特有の作用機構により、ゼラチナーゼを選択的に阻害する。大部分の広域メタロプロテアーゼ阻害剤のように、金属キレート剤ではない。更に、化合物1は、亜鉛依存性プロテアーゼを、他の密接に関連するMMPであっても、広範囲に阻害しない。化合物1は、素早く吸収され、BBBを素早く通過して、脳内に治療濃度を達成する。しかし、化合物1は水溶性に乏しく、2つの主な代謝産物に代謝され、一方は活性を保持し、他方は活性を欠いている。
【0083】
構造活性相関についての本発明者たちの研究は、化合物1のフェノキシフェニル部分の末端環が置換を許容したことを明らかにした。これらの阻害剤のうちの1つはND−322(化合物2)と呼ばれ、水溶性であり、MMP−2及びMMP−9をそれぞれ24及び870nMのK
i値で選択的に阻害する。化合物2はBBBを通過するが、脳における濃度はMMP−9のK
i値を下回るため、N−アセチル化して、脳において治療濃度を達成する、より強力なゼラチナーゼ阻害剤のND−364(化合物3)にすることが必要である。
【化11】
【0084】
ここで、化合物1の4つの類似体である化合物4〜7の合成、MMP動力学、水に対する溶解度、薬物動態(PK)及び脳透過性について報告する。これらの化合物は、化合物1と比較して、水に対する溶解度が10〜14,000倍の増加を示し、MMP−2に対して遅延結合性阻害の挙動を保持し、BBBを通過する。化合物4は、MMP−9及びMMP−14より1〜2桁も、MMP−2に対して強力である。p−アミノメチル類似体(化合物5)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14のナノモル遅延結合性阻害剤であり、MMP−8を非競合的に弱くに阻害する。p−アセトアミドメチル類似体(化合物6)は、MMP−2の選択的ナノモル遅延結合性阻害剤であり、密接に関係するMMP−9又はMMP−14を阻害しない。p−グアニジノ誘導体(化合物7)は、このシリーズのなかで最も強力な阻害剤であるが、選択性を欠いており、MMP−2、MMP−8、MMP−9及びMMP−14を阻害する。
【化12】
【0085】
MMPの阻害。神経学的状態において重要な酵素である、いくつかのMMP、並びに関連するADAM9(
a disintegrin
and
metalloproteinase 9)及びADAM10により、化合物4、5、6及び7の酵素反応速度論を評価した。速度論的解析におけるMMPの選択は、異なる部類のMMPの代表的なメンバーに基づき、コラゲナーゼ(MMP−1及びMMP−8)、ゼラチナーゼ(MMP−2及びMMP−9)、ストロメライシン(MMP−3)、マトリライシン(MMP−7)、及び膜型MMP(MMP−14)であった。結果を下記の表1に示す。4つの阻害剤は、全て強力な阻害をMMP−2に対してナノモル範囲で示し、MMP−1、MMP−3、MMP−7、ADAM9及びADAM10には阻害をごく僅かか、全く示さなかった。p−アミノメチルオキサジアゾール誘導体(化合物4)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14を、それぞれ0.63±0.06μM、34±3μM及び9.4±1.1μMのK
i値で遅延結合的に阻害した。チイラン部類のMMP阻害剤の特有の特徴は、ゼラチナーゼの遅延結合性阻害である。
【0087】
化合物4は、MMP−9及びMMP−14より、それぞれ54倍及び15倍、MMP−2に対して強力であった。p−アミノメチル類似体(化合物5)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14のナノモル遅延結合性阻害剤(それぞれ0.085±0.001μM、0.015±0.01μM及び0.12±0.01μMのK
i値)であり、MMP−8を非競合的に弱く阻害した(K
i=7.7±0.1μM)。p−アセトアミドメチル誘導体(化合物6)は、MMP−2の強力な遅延結合性阻害剤(K
i=0.23±0.01μM)であり、MMP−8の線形競合阻害剤(K
i=0.69±0.04μM)であり、MMP−9及びMMP−14を含む他のMMP及びADAMを弱くに阻害した。対照的に、p−グアニジノ誘導体(化合物7)は、シリーズにおいて最も強力な阻害剤であった。しかし、選択性を欠いており、MMP−2、MMP−8、MMP−9及びMMP−14を阻害した。
【0088】
コンピューター分析。チイラン部類の構造活性相関に対する本発明者たちの研究は、スルホニルメチルチイラン部分及びフェノキシフェニル基がゼラチナーゼの阻害に必要であることを明らかにした。これらの基は、化合物4〜7に存在している。
【0089】
阻害剤の選択性を合理的に説明するため、MMP−2、MMP−9及びMMP−14の触媒部位への化合物の分子ドッキングを実施した。この分析に対する注意点は、相当大きな立体配座変化が阻害剤結合において発生する場合、その原因を説明できないことである。更に、チイラン阻害剤に結合した任意のMMPのX線構造が現在存在しないので、量子力学/分子力学(QM/MM分析)に基づいて生成された、チイランに結合したMMP−2の複合体を使用した。しかし、ドッキングの結果は、これらの化合物と一群のMMPとの阻害分析から現れた多数の特徴を説明している(
図1)。
【0090】
阻害剤のドッキングポーズは、末端アリール環のp−置換基が、MMPのS1’サブサイト内に嵌まることを示している。このサブサイトは、MMP−2のPro417〜Leu433、MMP−9のPro415〜Leu431及びMMP−14のPro253〜Leu271の残基にわたるループにより画定され、阻害剤の末端環を収容する空洞を作り出す。ループの最小残基のThr426及びThr428は、MMP−2のS1’部位を裏打ちして、阻害剤の嵩高p−置換基による占有を可能にする。対照的に、MMP−9のArg424、並びにMMP−14のGln262及びMet264の残基は、上記部位を、これらの阻害剤のうちの大きなp−置換基にとって接近しにくいようにする。例えば、嵩高p−アミノメチルオキサジアゾールを有する阻害剤4は、MMP−9に54倍大きな解離定数を示し、これは、Arg424との立体的な衝突に起因すると思われる。Arg424は、文献においてMMP−9阻害剤の選択性決定因子として報告されている(Tochowicz et al.,J.Mol.Biol.2007,371,989−1006)。S1’ループの主鎖アミドカルボニル酸素は、阻害剤の置換基への水素結合供与体としての機能を果たす。p−グアニジノ置換を有するドッキング阻害剤7は、全てのMMPにおいて、主鎖への複数の潜在的な水素結合を示し、このことは、阻害剤7が上記一連の阻害剤のなかで最も強力で非選択的な化合物である理由を説明することができる。p−アミノメチル部分を有する阻害剤5も、類似した水素結合を形成する。しかし、MMP−2への化合物6の高い選択性の理由は、容易に明らかにならなかった。MMP−9及びMMP−14のS1’部位の立体的な妨げが、おそらくp−アセトアミド部分を、ループ主鎖と水素結合を形成することにあまり好ましくないようにしていると指摘することは、妥当であると思われる。これらの知見は、4つ全ての化合物の最も強力な阻害がMMP−2において観察されたという観察結果も裏付けている。
【0091】
化合物5は、化合物1及び化合物2よりそれぞれ3倍及び6倍、MMP−9に対して強力であった(表1)。化合物4はMMP−14に優先してMMP−2を阻害するが(15倍)、1桁を超える大きさが、治療上のいくらかのインビボ選択性のシナリオにとって好ましい。しかし阻害は、診断解析用の重要なツールでもありうる。インビボでの化合物6はMMP−9よりもMMP−2を阻害するが、この化合物はMMP−8も、ある程度阻害する。しかし、MMP−8が役割を果たさない疾患では、化合物6は、MMP−2を選択的又は限定的に阻害する。本発明者らは、O−フェニルカルバメート及びフェニル尿素チイランを、240〜760nMの範囲のK
i値を有する選択的MMP−2阻害剤として以前に報告している(Gooyit et al.,J.Med.Chem.2013,56,8139−8150)。化合物6は、O−フェニルカルバメート及びフェニル尿素チイランと比較して、より強力なMMP−2阻害剤である。化合物6は、MMP−9又はMMP−14を阻害しないので、疾患の病理におけるMMP−2の役割を確かめる有用なツールである。
【0092】
インビボで効力を維持する最も重要な要因の1つは、薬剤が標的に物理的に結合している持続時間である、薬物標的複合体の滞留時間である。滞留時間が長いほど、薬理学的効果の持続時間が長くなる。滞留時間は、解離速度定数(k
off)の逆数として計算することができる。MMP−2、MMP−9及びMMP−14に結合した阻害剤の滞留時間は、表2に提示されている。MMP−2では、化合物6は、最短滞留時間の18.2±0.4分を有し、一方、化合物4は、最長の50.5±4.1分を有する。4つ全ての化合物の滞留時間は、それぞれ7分及び10分であるMMP−2−TIMP−1又はMMP−2−TIMP−2の複合体の滞留時間よりも長い(Olson et al.,J.Bio.l Chem.1997,272,29975−29983)。TIMPがMMPのタンパク質阻害剤であり、これらの酵素の阻害のために進化したので、このことは重要な知見である。要するに、これらの化合物はTIMPよりも、標的としたMMPの阻害に有効である。同様に、MMP−9に結合した化合物4、5及び7の滞留時間は、15.2〜47.4分の範囲であり、TIMP−1又はTIMP−2に結合したMMP−9のそれぞれ8分及び7分より有意に長く、化合物1に結合したMMP−9の13.4分よりも長かった。MMP−14に結合した化合物4、5及び7の滞留時間は、それぞれ14.6±1.1、12.6±0.3及び16.4±0.6で類似しており、MMP−14に結合したTIMP−2又はTIMP−4のそれぞれ83分及び39分より有意に低かった。チイラン阻害剤の滞留時間は、ゼラチナーゼ−TIMP複合体より典型的に有意に長いので、チイラン阻害剤は、ゼラチナーゼの調節において等しく有効である又はさらに良好であるはずである。
【0094】
化合物5はMMP−9よりもMMP−2に対して1.7倍強力な阻害剤であるが、滞留時間は、MMP−2よりもMMP−9への結合のほうが2倍長い。このことは、化合物5が脳からほぼ完全に排出されるとき、MMP−9からの化合物5の解離が遅いため、このゼラチナーゼの持続的阻害がもたらされることを示している。
【0095】
水に対する溶解度。多重反応モニタリング(MRM)を用いる超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)により飽和水溶液の濾液を分析することによって、化合物4、5、6及び7の水に対する溶解度を決定した。結果は上記の表1に含まれている。グアニジン類似体(化合物7)は、最も水溶性がある阻害剤であり、32mg/mLの溶解度を有する。p−アミノメチル誘導体(化合物5)は、4.9mg/mLまでの水溶性を有し、一方、p−アミノメチルオキサジアゾール(4)の水に対する溶解度は、0.61mg/mLである。p−アセトアミドメチル誘導体(化合物6)は、4つのうちで最も少ない水溶性があり、0.025mg/mLの水に対する溶解度を有し、化合物1と比べて10倍超の水溶性の改善に相当する。化合物2と比較すると、化合物5を得るためのメチレン基の添加は、水溶性を減少させなかった。
【0096】
阻害剤5及び7の水溶性の増加は、脳卒中及び外傷性脳傷害などの急性神経疾患において好ましい経路である静脈内(iv)投与用に、阻害剤5及び7を順応させる。
【0097】
薬物動態及び脳分布。薬物動態(PK)及び脳分布を、化合物4、5、6及び7の5mg/kgの単回iv投与後にマウスにおいて評価した。血漿及び脳濃度時間曲線及びPKパラメーターを、それぞれ
図2及び表3に示す。4の血漿濃度は、最初の収集時点の2分で62.4±61.6μMであり、30分でMMP−2のK
i値を下回る濃度の0.097±0.092μMに急速に減少した。化合物4は、0.0158L/分/kg(肝血流速度の19%)の中程度のクリアランス(CL)、0.0213L/kgの低い分布容積(Vd)、非常に短い分布半減期(t
1/2α=0.621分)及び74.5分の排出半減期(t
1/2β)を有した(表3)。4の脳内濃度は、血漿よりも一般に低かった。4の脳内濃度は、2分で9.76±7.24pmol/mg組織(1.0g/mLの密度を想定して、9.76±7.24μMと等しい)であり、30分でMMP−2のK
i値を下回って減少した。脳と血漿のAUC
0〜∞比は、化合物4で0.138であり、化合物4がBBBを通過したことを示した(
図2A、表3)。
【0099】
マウスへの5mg/kgの単回静脈内投与量後の化合物4、5、6及び7の濃度を、下記の表4に示す。
【0101】
化合物5の血漿及び脳濃度は、少なくとも30分間、MMP−2及びMMP−9のK
i値を上回った(
図2のB及び表5)。前に示したように、MMP−9からの化合物5の解離が遅いため、化合物5の脳内濃度がK
i値を下回っていても、持続的な阻害をもたらすはずである。化合物5は、0.202L/分/kgのクリアランスを有し、これは0.086L/分/kgの肝血流速度よりもかなり高く、5の体循環からの高いクリアランスを示し、血漿t
1/2βは68.0分であった。化合物5は、2.76L/kgの分布容積を有し、5が組織に高度に分布されていることを示した(表3)。脳と血漿のAUC
0〜∞比の0.793は、化合物5が、BBBを素早く通過したことを示し、脳t
1/2βは75.3分であった。
【0103】
化合物6の血漿内濃度は、2分で35.0±7.69μMであり、30分間にわたってMMP−2のK
iを上回っていた。分布半減期は、6.31分であり、排出半減期は、86.6分であった(
図2のC、表3及び表5)。化合物6のクリアランスは、0.0303L/分/kg(肝血流速度の35%)であり、6の体循環からの中程度のクリアランスを示した(Davies et al.,B.;Pharm.Res.1993,10,1093−1095)。化合物6の分布容積は、0.326L/kgであり、6が組織に中程度に分布されていることを示した(表3)。化合物6の脳内濃度は、2分で5.98±1.48pmol/mg組織であり、30分間にわたってMMP−2のK
i(0.23μM、表1)を上回った。脳と血漿のAUC
0〜∞比の0.154は、化合物6がBBBを通過し、脳内に治療濃度を達成したことを示した(
図2のC、表3及び表5)。
【0104】
p−アミノメチル(化合物5)に対する、脂肪族アミドであるp−アセトアミドメチル類似体(化合物6)のAUCは、脳では0.5%であり、血漿では3.9%であった(表5)。このことは、脂肪族アミンである化合物5の最低限のインビボN−アセチル化を示した。対照的に、化合物2の芳香族アミンのN−アセチル化は、対応するN−アセチル代謝産物(3)に対する化合物2のAUCが脳では81%であり、血漿では7.4%であると決定されたように有意であった。加えて、2の投与後の活性種は、化合物3である。化合物2から化合物3へのN−アセチル化に関与する酵素は多形であるので、化合物3の直接的な投与が、脳内に治療濃度を達成するために必要であった。一方、p−アミノメチル(5)は、それ自体活性であり、有意なN−アセチル化を受けない。
【0105】
グアニジノ誘導体7は、血漿及び脳において、2分でそれぞれ12.6±10.9μM及び0.577±0.560pmol/mgの濃度に到達した。濃度は、90分で血漿及び120分で脳においてMMP−2のK
iを上回り、一方、濃度は、60分及び30分で、それぞれ血漿及び脳においてMMP−9のK
iを上回った(
図2のD及び表5)。化合物7のクリアランスは、高く(0.107L/分/kg)、1.08L/kgの高い分布容量は、化合物7が組織に高度に分布されていることを示した。血漿t
1/2βは64.2分であった。脳と血漿のAUC
0〜∞比は0.136であり、化合物7が、BBBを通過したことを示し、脳t
1/2βは133分であった(表3)。化合物7の脳t
1/2βは、化合物4、5及び6よりも有意に長く、薬理学的効果の持続期間が延長されたことを示唆した。
【0106】
化合物4〜7のPK特性の比較は、血漿からのクリアランスが、化合物5で最高であり、その後に7、6及び4が続くことを示した。クリアランスと一致して、血漿全身性曝露(AUCにより測定した)は、化合物4で最高であり、次に6、7であり、5が最低であった。分布容積は、クリアランスと同じ順番に従い、5>7>6>4であった。分布容積は、薬物が身体に分布する程度を記載するが、脳への分布は含意しない。このことは、臓器の毛細管の内皮細胞が、血液中から臓器への小分子の通過を許容することによるが、脳の毛細管の内皮細胞は、薬物が循環系から脳に侵入することを防止するタイトジャンクションにより囲まれている。その結果、分布容量は、AUC
脳/血液と相関せず、化合物5が最高であり、5>6>4=7であった。化合物5の脳への分布及び脳からのクリアランスとともに、MMP−9への高い効力、MMP−9の阻害における長い滞留時間は、化合物5を、MMP−9依存性神経疾患の動物モデルへの投与を価値のあるものする。同様に、MMP−2への化合物6の効力及び選択性、並びにBBBを通過し、脳内に治療濃度を達成する能力は、この化合物を、神経学的な病気のMMP−2依存性動物モデルを調査する有用な化学ツールにする。
【0107】
結論。本発明者たちは、10〜14,000倍多い水溶性があり、MMP−2対して活性を保持し、BBBを通過した、化合物1の4つの類似体を設計し、合成した。p−アミノメチルオキサジアゾール類似体(4)は、長い滞留時間及び中程度の水溶性を有する選択的MMP−2阻害剤である。p−アセトアミドメチル(化合物6)は、MMP−2の選択的で4より3倍強力な遅延結合性阻害剤であり、MMP−9又はMMP−14を阻害しない。一次標的のMMP−2からの解離が遅いため、化合物6は、6の濃度がK
i値を下回っていても、MMP−2の持続的阻害を提供することができる。対照的に、化合物6は、線形競合阻害剤として短い滞留時間でMMP−8を阻害する。化合物6は、BBBを通過し、脳内に治療濃度を達成する。この阻害剤は、神経疾患におけるMMP−2の役割を確定するのに有用なプローブである。p−グアニジノ誘導体(化合物7)は、32mg/mLの水に対する溶解度を有し、MMP−2、MMP−9及びMMP−14を遅延結合的に阻害し、MMP−8を線形競合阻害剤として阻害する。p−アミノメチル誘導体(化合物5)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14の水溶性ナノモル阻害剤であり、BBBを通過し、脳内に治療濃度を達成する。MMP−9に結合した5の滞留時間は、MMP−9に結合したTIMP−1又はTIMP−2より6〜7倍長い。したがって、この阻害剤は、MMP−9の活性を調節するのに等しく又は更に有効でありうる。
【0108】
治療方法
式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物(まとめて、「活性剤」)は、本発明の方法において、MMP阻害剤として又はMMP阻害剤をインビボ若しくはインビトロで提供するために有用である。活性剤は、上記の背景技術のセクションに記載された状態を含む、本明細書に記載されているものなどの様々なMMPの阻害又は調節により媒介される医学的状態(例えば、創傷)、疾患又は障害の治療又は予防に使用されうる。本発明の活性剤は、したがって、鎮痛薬、抗うつ薬、認識賦活薬又は神経保護薬として、また、下記に記載される状態の治療のために使用されうる。
【0109】
一見無関係のように思われるが共有の機構的特性により互いに関係している多数の疾患及び状態が、本明細書に記載されている。本明細書に記載されているそれぞれの疾患又は状態は、ゼラチナーゼ依存性である。例えば、自己制御増殖と転移能力の両方が、癌と関連する。本明細書に記載されている化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ依存性疾患に対して抗増殖性及び抗転移性でありうる。
【0110】
本発明における使用に適切な化合物及び医薬組成物には、活性剤がその意図される目的を達成する有効量で投与されるものが含まれる。語句「治療有効量」は、疾患、障害及び/又は状態を治療するのに有効な量、例えば、治療される状態又は症状の進行又は重篤度を低減するのに有効な量を指す。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。用語「有効量」は、例えば、宿主において疾患若しくは障害を治療若しくは予防する又は疾患若しくは障害の症状を治療するために、本明細書に記載されている化合物の量又は本明細書に記載されている化合物の組合せの量を含むことができる。したがって「有効量」は、所望の効果を提供する量を一般に意味する。
【0111】
例示的な医学的状態、疾患及び障害には、不安症、抑うつ病、疼痛、睡眠障害、炎症、多発性硬化症及び他の運動障害、HIV消耗症候群、閉鎖性頭部傷害、脳卒中、学習及び記憶障害、アルツハイマー病、てんかん、トゥーレット症候群、てんかん、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、視神経炎、自己免疫性ぶどう膜炎、薬物離脱症候群、嘔気、嘔吐、性機能不全、心的外傷後ストレス障害又は脳血管攣縮、或いはこれらの組合せ、並びに下記に記載される状態が含まれる。
【0112】
活性剤を、MMP活性により、例えば、26個の既知のゼラチナーゼのうちの1個により、媒介される疾患、障害又は状態を診断された又は罹患している対象(患者)を治療することに使用してもよい。用語「治療する」又は「治療すること」は、本明細書で使用されるとき、MMP活性の調節により治療又は予防利益をもたらす目的において、対象に本発明の作用物質又は組成物を投与することを指すことが意図される。治療することは、MMP活性の調節により媒介される疾患、障害若しくは状態又はそのような疾患、障害若しくは状態の1つ以上の症状を反転する、寛解する、緩和する、その進行を阻害する、その重篤度を減ずる又は予防することを含む。
【0113】
用語「対象」は、ヒトなどの、そのような治療を必要とする哺乳類の患者を指す。「調節因子」には、阻害剤と活性化剤の両方が含まれ、「阻害剤」は、MMPの発現又は活性を減少させる、防止する、不活性化する、脱感作する又は下方調節する化合物を指し、「活性化剤」は、MMPの発現又は活性を増加させる、活性化する、推進する、感作する又は上方調節する化合物である。
【0114】
したがって、本発明は、不安症、疼痛、睡眠障害、炎症又は運動障害(例えば、多発性硬化症)などの、MMP活性により媒介される疾患、障害又は状態を診断された又は罹患している対象を治療するための、本明細書に記載されている活性剤の使用方法に関する。
【0115】
症状又は疾患状態は、「医学的状態、障害又は疾患」の範囲内に含まれることが意図される。例えば、疼痛は、様々な疾患、障害又は状態と関連することがあり、様々な病因が含まれうる。本発明のMMP調節剤により治療可能な実例的な種類の疼痛には、癌疼痛、術後疼痛、消化管疼痛、脊髄損傷疼痛、内臓痛覚過敏、視床痛、頭痛(ストレス性頭痛及び片頭痛を含む)、腰痛、頸部痛、筋骨格痛、末梢神経障害性疼痛、中枢神経障害性疼痛、神経変性傷害関連疼痛及び月経痛が含まれる。HIV消耗症候群には、食欲喪失及び嘔気などの関連する症状が含まれる。パーキンソン病には、例えばレボドパ誘発性運動機能異常が含まれる。
【0116】
多発性硬化症の治療には、痙縮、神経因性疼痛、中枢性疼痛又は膀胱機能不全の治療が含まれうる。薬物離脱の症状は、例えば、アヘン又はニコチンへの嗜癖によって引き起こされうる。嘔気又は嘔吐は、化学療法、術後又はオピオイドに関係する原因に起因しうる。癌の治療には、神経膠腫の治療が含まれうる。睡眠障害には、例えば、睡眠時無呼吸、不眠症及び鎮静又は麻薬型効果を有する作用物質による治療が求められる障害が含まれる。摂食障害には、例えば、癌又はHIV感染/AIDSなどの疾患と関連する食欲不振又は食欲喪失が含まれる。
【0117】
本発明は、本明細書に記載されているいずれか1つの式の化合物、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む組成物も提供する。医薬組成物は、血栓溶解剤又はオピオイド若しくは非ステロイド系抗炎症薬などの鎮痛薬を含むことができる。そのような鎮痛薬の例には、アスピリン、アセトアミノフェン、オピオイド、イブプロフェン、ナプロキセン、COX−2阻害剤、ガバペンチン、プレガバリン、トラマドール又はこれらの組合せが含まれる。
【0118】
用語「血栓溶解剤」は、凝血塊又は「血栓」を溶解し、動脈又は静脈を再開口することができる薬物を指す。血栓溶解剤を使用して、心臓発作、脳卒中、深部静脈血栓症(例えば、深部下肢静脈における凝血塊)、肺塞栓症及び末梢動脈の閉塞又は留置カテーテルによる閉塞を治療することができる。血栓溶解剤は、セリンプロテアーゼであり、セリンプロテアーゼはプラスミノーゲンをプラスミンに変換し、プラスミンはフィブリノーゲン及びフィブリンを分解し、血餅を溶解する。現在利用可能な血栓溶解剤には、レテプラーゼ(r−PA又はレタバーゼ(Retavase))、アルテプラーゼ(t−PA又はアクチバーゼ(Activase))、ウロキナーゼ(アッボキナーゼ(Abbokinase))、プロウロキナーゼ、アニソイル化精製ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)及びストレプトキナーゼが含まれる。血栓溶解剤は、クロットバスター(clotbuster)、凝血塊溶解投薬及び線維素溶解剤とも呼ばれる。
【0119】
したがって、本発明は、MMP活性により媒介される疾患、障害又は医学的状態を罹患している又は診断された対象を治療する方法であって、本明細書に記載されている式の少なくとも1つの化合物、その薬学的に許容される塩、その薬学的に許容されるプロドラッグ又はその薬学的に活性な代謝産物の有効量を、そのような治療を必要とする対象に投与するステップを含む方法も提供する。疾患、障害又は医学的状態には、不安症、抑うつ病、疼痛、睡眠障害、摂食障害、炎症、運動障害、HIV消耗症候群、閉鎖性頭部傷害、脳卒中、アルツハイマー病、てんかん、トゥーレット症候群、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、視神経炎、自己免疫性ぶどう膜炎、薬物離脱、嘔気、嘔吐、心的外傷後ストレス障害、脳血管攣縮、緑内障、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、免疫抑制、胃食道逆流性疾患、麻痺性イレウス、分泌性下痢、胃潰瘍、関節リウマチ、高血圧症、癌、肝炎、アレルギー性気道疾患、自己免疫性糖尿病、難治性そう痒、神経炎症又はこれらの組合せが含まれうる。
【0120】
本発明は、MMP活性により媒介される疾患、障害又は医学的状態を治療するための医薬組成物であって、(a)本明細書に記載されている式の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩、その薬学的に許容されるプロドラッグ若しくはその薬学的に活性な代謝産物又はそれらの任意の組合せの有効量と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を更に含む。
【0121】
疾患、障害及び状態
本明細書に記載されている化合物及び組成物を使用して、以下の疾患、障害及び状態の症状を治療又は低減することができる。
【0122】
用語「神経障害」は、神経系及び/又は視覚系の任意の障害を指す。「神経障害」には、中枢神経系(脳、脳幹及び小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)、並びに自律神経系(その一部分は、中枢と末梢の両方の神経系に位置する)に関わる障害が含まれる。神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、タウオパチー(前頭側頭型認知症を含む)及びハンチントン病が含まれるが、これらに限定されない、神経細胞の喪失が特徴の神経疾患の種類も指す。
【0123】
神経障害の主な群には、頭痛、昏迷及び昏睡、認知症、発作、睡眠障害、外傷、感染、新生物、神経眼科学、運動障害、脱髄性疾患、脊髄障害、並びに末梢神経、筋肉及び神経筋接合部の障害が含まれるが、これらに限定されない。神経障害の定義には、限定されないが双極性障害及び統合失調症を含む嗜癖及び精神の病気も含まれる。以下は、いくつかの神経障害、症状、徴候及び症候群のリストである。後天性てんかん性失語症、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、脳梁欠損症、失認症、アイカルディ症候群、アレキサンダー病、アルパース病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、無脳症、アンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、失語症、失行症、くも膜嚢胞、くも膜炎、アーノルド・キアリ奇形、動静脈奇形、アスペルガー症候群、血管拡張性運動失調症、注意欠陥多動障害、自閉症、自律神経機能不全、背部痛、バッテン病、ベーチェット病、ベル麻痺、良性本態性眼瞼痙攣(Benign Essential Blepharospasm)、良性限局性筋萎縮症(Benign Focal Amyotrophy)、良性頭蓋内圧亢進症、ビンスワンガー病、眼瞼痙攣、ブロッホ・ズルツベルガー症候群、腕神経叢傷害、脳膿瘍、脳傷害、脳腫瘍(多形神経膠芽腫を含む)、脊椎腫瘍、ブラウン・セカール症候群、カナバン病、手根管症候群(CTS)、灼熱痛、中枢痛症候群、橋中心髄鞘崩壊症、頭部障害、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、大脳萎縮症、脳性巨人症、脳性麻痺、シャルコー・マリー・トゥース病、化学療法誘発性神経障害及び神経障害性疼痛、キアリ奇形、舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性疼痛、慢性局所疼痛症候群、コフィン・ローリー症候群、遷延性植物状態を含む昏睡、先天性両側顔面麻痺(Congenital facial diplegia)、皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋縫合早期癒合症、クロイツフェルト・ヤコブ病、累積外傷性障害、クッシング症候群、巨細胞封入体病(CIBD)、サイトメガロウイルス感染症、ダンシングアイズ−ダンシングフィート症候群(Dancing eyes−dancing feet syndrome)、ダンディ・ウォーカー症候群、ドーソン病(Dawson disease)、ド・モルシア症候群(De Morsier’s syndrome)、デジェリーヌ・クルンプケ麻痺(Dejerine−Klumpke palsy)、認知症、皮膚筋炎、糖尿病性神経障害、びまん性硬化症、自律神経障害、書字障害、失読症、異緊張症、早期乳児てんかん性脳症、トルコ鞍空洞症候群、脳炎、脳ヘルニア、脳三叉神経性血管腫症、てんかん、エルブ麻痺、本態性振戦、ファブリー病、ファール症候群、失神、家族性痙性麻痺、熱性発作、フィッシャー症候群、フリートライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症及び他の「タウオパチー」、ゴーシェ病、ゲルストマン症候群、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入体病(Giant cell inclusion disease)、グロボイド細胞白質ジストロフィー、ギラン・バレー症候群、HTLV−1関連脊髄症、ハラーホルデン・スパッツ病、頭部傷害、頭痛、片側顔面痙攣、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性多発神経炎性失調(Heredopathia atactica polyneuritiformis)、耳帯状ヘルペス、帯状ヘルペス、平山症候群、HIV関連認知症及び神経障害(AIDSの神経症状も参照すること)、全前脳胞症、ハンチントン病及び他のポリグルタミンリピート病、水無脳症、水頭症、高コルチゾール症、低酸素症、免疫媒介性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児型フィタン酸蓄積症(Infantile phytanic acid storage disease)、乳児レフサム病、点頭てんかん、炎症性筋疾患、頭蓋内嚢胞、頭蓋内圧亢進、ジュベール症候群、カーンズ・セイヤー症候群、ケネディ病、キンスボーン症候群(Kinsbourne syndrome)、クリッペル・ファイル症候群、クラッベ病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、クールー病、ラフォラ病、ランバート・イートン筋無力症症候群、ランドウ・クレフナー症候群、延髄外側(ワレンベルグ)症候群、学習障害、リー病、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、白質ジストロフィー、レビー小体認知症、脳回欠損、閉じ込め症候群、ルー・ゲーリック病(別名:運動ニューロン疾患又は筋萎縮性側索硬化症)、腰部椎間板症、ライム病−神経学的続発症、マシャド・ジョセフ病、巨脳髄症、巨脳症、メルカーソン・ローゼンタール症候群、メニエール病、髄膜炎、メンケス病、異染性白質ジストロフィー、小頭症、片頭痛、ミラー・フィッシャー症候群、軽度脳卒中、ミトコンドリア筋症、メビウス症候群、一側上肢筋萎縮症(Monomelic amyotrophy)、運動ニューロン疾患、もやもや病、ムコ多糖症、多発脳梗塞性認知症、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症及び他の脱髄性障害、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、ミエリン分解性びまん性硬化症(Myelinoclastic diffuse sclerosis)、小児期ミオクロニー脳症、ミオクローヌス、ミオパチー、先天性筋強直症(Myotonia congenital)、ナルコレプシー、神経線維腫症、神経弛緩薬性悪性症候群、AIDSの神経症状、ループスの神経学的続発症、神経性筋強直症、神経セロイドリポフスチン沈着症、神経細胞移動障害、ニーマン・ピック病、オサリバン・マクラウド症候群(O’Sullivan−McLeod syndrome)、後頭神経痛、潜在的脊髄癒合不全序列(Occult Spinal Dysraphism Sequence)、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、眼球クローヌス・ミオクローヌス、視神経炎、起立性低血圧症、使いすぎ症候群、知覚異常、パーキンソン病、先天性筋緊張症、腫瘍随伴性疾患、発作(Paroxysmal attacks)、パリー・ロンベルク症候群(Parry Romberg syndrome)、ペリツェウス・メルツバッヘル病、周期的麻痺、末梢神経障害、有痛性神経障害及び神経障害性疼痛、遷延性植物状態、広汎性発達障害、光くしゃみ反応、フィタン酸蓄積症、ピック病、圧迫神経(Pinched Nerve)、下垂体腫瘍、多発性筋炎、孔脳症、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛(PHN)、麻疹後脳脊髄炎、体位性低血圧、プラダー・ウィリー症候群、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性片側顔面萎縮症(Progressive Hemifacial Atrophy)、進行性多巣性白質脳症、進行性硬化性ポリオジストロフィー、進行性核上性麻痺、偽脳腫瘍、ラムゼイ・ハント症候群(I型及びII型)、ラスムッセン脳炎、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、レフサム病、反復運動障害、反復性ストレス傷害、下肢静止不能症候群、レトロウイルス関連脊髄症、レット症候群、ライ症候群、聖ヴァイタス舞踏(Saint Vitus Dance)、サンドホフ病、シルダー病、裂脳症、中隔視神経異形成症、揺さぶられっ子症候群、帯状疱疹、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸、ソトス症候群、痙縮、二分脊椎症、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄性筋萎縮症、全身硬直症候群、脳卒中、スタージ・ウェーバー症候群、亜急性硬化性全脳炎、くも膜下出血、皮質下動脈硬化性脳症、シデナム舞踏病、失神、脊髄空洞症、遅発性ジスキネジア、テイ・サックス病、側頭動脈炎、脊髄係留症候群、トムゼン病、胸郭出口症候群、疼痛性チック、トッド麻痺、トゥレット症候群、一過性脳虚血発作、伝達性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳傷害、振戦、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺症、結節性硬化症、血管性認知症(多発脳梗塞性認知症)、側頭動脈炎を含む血管炎、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)、ワレンベルグ症候群、ウェルドニッヒ・ホフマン病、ウエスト症候群、むち打ち症、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、並びにツェルウェーガー症候群。
【0124】
医学療法は、癌、血管新生、心血管疾患、神経疾患、炎症、眼疾患、自己免疫疾患又はMMP−9の調節により影響を受ける他の状態の治療でもありうる。癌は、膵癌、胃癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、腎細胞癌、基底細胞癌、乳癌、骨癌、脳癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、骨髄腫及び他の血液癌などでありうる。癌は、原発性、転移性又はその両方でありうる。本発明の化合物を使用する癌の治療は、血管新生に影響を与える(すなわち、血管新生を阻害又は促進する)ことができる。心血管疾患は、脳卒中、動脈瘤、虚血又は再灌流傷害でありうる。
【0125】
本明細書に記載されている式の化合物又はその薬学的に許容される塩を、哺乳動物(例えば、ヒト)に単独で又は神経剤若しくはその薬学的に許容される塩などの第2の作用物質と一緒に投与することができる。したがって、化合物をtPAなどの血栓溶解剤と一緒に投与して、本明細書に記載されている障害、疾患又は状態を治療することができる。
【0126】
用語「神経剤」は、神経系に効果を有する化学及び生物学的化合物(例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチド及び抗体)、例えば、神経系に影響を与える障害を治療、阻害又は予防することができる化合物、或いは神経及び/若しくは眼科障害又はそれらの症状を誘発することができる化合物を指す。
【0127】
様々な研究は、MMP−9及びMMP−2が脳卒中の疾患過程に寄与することを示している。ゼラチナーゼ阻害剤は、基底膜ラミニンの分解を遮断し、神経細胞に抗アポトーシス効果を及ぼすことによって、虚血及び外因的tPA血栓溶解から脳の神経血管の完全性を保護することができる。したがって本明細書に記載されている化合物の選択性は、虚血性と出血性の両方の脳卒中の治療を可能にする。加えて、選択的ゼラチナーゼ阻害剤及びtPAとの併用治療は、tPAの使用に関連する神経毒性及び出血性変化を最小限にし、tPAの再灌流療法の治療範囲を広げることができる。
【0128】
脳卒中患者を有効に治療するこの手法では、静脈内投与によるゼラチナーゼ阻害剤の送達を必要とすることがある。第二世代ゼラチナーゼ阻害剤の水溶性プロドラッグを本明細書に記載されているように調製され、静脈内投与に適している。この新規治療戦略は、それ自体又はtPAと組み合わせて、脳卒中を有する患者において傷害を低減し、血栓溶解療法の時間範囲を広げることができる。
【0129】
神経疾患は、有痛性神経障害、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害、薬物依存、薬物離脱、抗うつ病、不安症、運動障害、遅発性ジスキネジア、血液脳関門を破壊する脳感染、髄膜炎、脳卒中、低血糖症、心停止、脊髄外傷、頭部外傷及び周産期低酸素症のうちの少なくとも1つから生じるものでありうる。神経疾患は、神経変性障害でもありうる。神経疾患は、てんかん、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症又は筋萎縮性側索硬化症、並びにアレキサンダー病、アルパース病、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病としても知られる)、カナバン病、コケイン症候群、皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体認知症、マシャド・ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多系統萎縮症、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、脊髄小脳失調症(様々な特徴を持つ複数の種類)、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー疾患又は脊髄癆でありうる。
【0130】
本明細書に記載されている化合物を使用して、角膜創傷、緑内障、眼乾燥症及び黄斑変性症を含む眼の状態を治療することができる。化合物を使用して、MMP−9が関わる、MMP−9により引き起こされる、もたらされる又は悪化される、眼の状態を治療することもできる。
【0131】
本明細書に記載されている化合物を使用して、結合組織、気道組織又は中枢神経系組織に関わる炎症を治療することができる。炎症は、急性喘息、慢性喘息、アレルギー性喘息又は慢性閉塞性肺疾患でありうる。一実施形態において、炎症は関節炎である。
【0132】
本明細書に記載されている化合物を使用して、眼科疾患を治療することができる。用語「眼科疾患」又は「眼科障害」は、緑内障、網膜動脈閉塞症、虚血性視神経症及び滲出型(wet)又は萎縮型(dry)黄斑変性症が含まれるが、これらに限定されない視覚系の解剖学的形態及び/又は機能に関わる疾患又は障害を指す。
【0133】
神経障害は、情動障害(例えば、抑うつ病又は不安症)でありうる。用語「情動障害」又は「気分障害」は、主な特徴として気分の動揺により特徴付けられる様々な状態を指す。
【0134】
用語「抑うつ病」は、悲哀、落胆及び失望の気持ちにより特徴付けられる気分の異常な動揺を指す。抑うつ病は、悲哀、憂鬱、失意、無価値、空虚及び絶望の誇張された感情により特徴付けられる、不適切であり、現実との釣り合いを失っている異常な情緒的状態を指す。Mosby’s Medical,Nursing & Allied Health Dictionary,5th Edition(1998)を参照すること。抑うつ病は、大うつ病性障害(単一エピソード、反復性、軽度、中程度、精神病の特徴を伴わない重度、精神病の特徴を伴う重度、慢性、緊張性の特徴を伴う、憂鬱の特徴を伴う、非定型の特徴を伴う、産後発症、部分寛解、完全寛解)、気分変調性障害、抑うつ気分を伴う適応障害、混合型不安及び抑うつ気分を伴う適応障害、月経前不快気分障害、小うつ病性障害、反復性短期うつ病性障害、統合失調症の精神病後うつ病性障害(post−psychotic depressive disorder of schizophrenia)、パーキンソン病に関連する大うつ病性障害及び認知症に関連する大うつ病性障害の少なくとも1つでありうる。
【0135】
用語「不安障害」は、懸念、確信のなさ又は恐怖の感情により特徴付けられる過剰又は不適切な喚起状態を指す。不安障害は、症状の重篤度及び持続期間並びに特定の行動特性によって分類されている。分類には、長く持続する低悪性度の全般性不安障害(GAD)、より劇的な症状を有するパニック障害、恐怖症、強迫性障害(OCD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)及び分離不安障害が含まれる。
【0136】
神経障害は、疼痛関連抑うつ病(PAD)でありうる。用語「疼痛関連抑うつ病」は、疼痛と非定形型抑うつ病の共存症により特徴付けられるうつ病性障害を指す。とりわけ疼痛は、慢性疼痛、神経障害性疼痛又はこれらの組合せでありうる。とりわけ疼痛関連抑うつ病は、慢性疼痛が非定形型うつ病に先行する、非定形型うつ病及び慢性疼痛を含みうる。或いは疼痛関連抑うつ病は、非定形型うつ病が慢性疼痛に先行する、非定形型うつ病及び慢性疼痛を含みうる。疼痛関連抑うつ病は、非定形型うつ病及び神経障害性疼痛を含みうる。
【0137】
「慢性疼痛」は、関節リウマチなどの様々な疾患又は異常な状態により引き起こされる、長期間(すなわち、>3か月間)にわたって続く又は再発する疼痛を指す。慢性疼痛は、急性疼痛より強度が低いことがある。慢性疼痛を有する人は、疼痛への自動的な反応を長時間にわたって持続できないので、脈拍の増加及び急速な発汗を通常示さない。慢性疼痛を有する他の人々は、家族、友人及び外部刺激を完全に無視して、環境から退き、苦痛のみに集中することもある。Mosby’s Medical,Nursing & Allied Health Dictionary,5th Edition(1998)を参照すること。
【0138】
「非定形型うつ病」は、前向きな生活効果に応答して一時的に気持ちがよくなることができ(気分反応性)、さらに、過眠症、食欲亢進又は体重増加、鉛様の麻痺(leaden Paralysis)及び知覚対人拒絶(perceived interpersonal rejection)に対する長年の極端な感受性のパターンからなる群から選択される2つ以上の自律神経系症状を有する、抑うつ的情動を指し、ここで自律神経系症状は、約2週間を超えて存在する。当業者は、上記自律神経系症状が、他のうつ病性障害(例えば、憂鬱性うつ病)において見出されるものと比較して反転されうることを認識し、それ故に用語「非定型」が適用される。
【0139】
用語「急性神経障害」は、障害が急速に発症し、続いて短時間であるが重篤な過程が続く、上記に定義された神経障害を指し、熱性痙攣、ギラン・バレー症候群、脳卒中及び脳内出血(ICH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
用語「慢性神経障害」は、障害が、長時間にわたって続く(例えば、2週間を超えて続き、とりわけ慢性神経障害では、約4週間を超えて、約8週間を超えて若しくは約12週間を超えて持続若しくは反復しうる)又は頻繁な再発を特徴とする、上記に定義された神経障害を指し、ナルコレプシー、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、脳性麻痺(CP)、てんかん、多発性硬化症、失読症、アルツハイマー病及びパーキンソン病が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
用語「外傷」は、暴力又は事故による任意の傷害又は衝撃を指す。外傷という用語は、任意の情緒的創傷又は衝撃も指し、その多くは、人の心理的な発達に対して実質的に長続きする損傷を作り出し、多くの場合に神経症をもたらすことがある。
【0142】
用語「虚血性状態」は、血管の収縮又は閉塞によって引き起こされる身体の臓器、組織又は部分への血液供給の減少をもたらし、多くの場合に臓器、組織又は部分への酸素の低減をもたらす、任意の状態を指す。用語「低酸素状態」は、空気、血液又は組織における酸素の量/濃度が低い(準正常である)状態を指す。
【0143】
用語「有痛性神経障害」又は「神経障害」は、末梢又は中枢神経系の損傷又は病理学的変化をもたらす慢性疼痛を指す。末梢神経障害性疼痛は、有痛性神経障害、神経痛、末梢感覚神経障害又は末梢神経炎とも呼ばれる。神経障害を伴うと、疼痛は傷害の症状ではなく、むしろ疼痛は、それ自体が疾患過程である。神経障害は、治癒過程に関連しない。他にある傷害を伝達するのではなく、神経それ自体が機能不全を起こし、疼痛の原因になる。
【0144】
「神経障害性疼痛」は、末梢神経、脳神経、脊髄神経又はこれらの組合せの炎症又は変性に関連する疼痛を指す。疼痛は、典型的には鋭いもの、針で刺すようなもの又は突き刺すようなものである。基礎にある障害は、末梢神経組織の破壊をもたらし、皮膚の色や温度の変化及び浮腫を伴いうる。Mosby’s Medical,Nursing & Allied Health Dictionary,5th Edition(1998)及びStedman’s Medical Dictionary,25th Edition(1990)を参照すること。
【0145】
用語「糖尿病性神経障害」は、糖尿病により引き起こされる末梢神経障害/神経損傷を指し、糖尿病に関連する末梢、自律及び脳神経の障害/損傷が含まれる。糖尿病性神経障害は、神経が高血糖症(高い血中糖濃度)の結果として損傷している真性糖尿病の一般的な合併症を指す。
【0146】
用語「遅発性ジスキネジア」は、任意の年齢で現れうる重篤な非可逆的な神経障害を指す。遅発性ジスキネジア、例えば、トゥーレット症候群は、抗精神病/神経遮断薬の長期使用の副作用でありうる。症状は、体幹、脚、腕、指、口、唇又は舌を含む様々な身体部分の制御不能な動作を伴う。
【0147】
用語「運動障害」は、運動失調、パーキンソン病、眼瞼痙攣、アンジェルマン症候群、毛細血管拡張性運動失調症、発声障害、筋緊張異常障害、歩行障害、斜頸、書痙、進行性核上性麻痺、ハンチントン舞踏病、ウィルソン病、ミオクローヌス、痙縮、遅発性ジスキネジア、チック及びトゥーレット症候群病、並びに振戦が含まれるが、これらに限定されない運動及び動作系に関わる一群の神経障害を指す。
【0148】
用語「血液脳関門を破壊する脳感染」は、例えば血流からCNSへの物質及び/又は生物体の通過を防止する能力の増加又は減少のいずれかによって、血液脳関門の有効性に変更をもたらす脳又は大脳の感染を指す。
【0149】
用語「血液脳関門」は、中枢神経系(CNS)の毛細管内の内皮細胞(内壁)の半透性の細胞層を指す。血液脳関門は、大分子、免疫細胞、多くの潜在的に損傷性の物質及び外来性生物体(例えば、ウイルス)が、血流からCNS(脳及び脊髄)へ通過するのを防止する。血液脳関門の機能不全が、部分的にMS(多発性硬化症)の疾患過程の基礎となりうる。
【0150】
用語「髄膜炎」は、ほとんどの場合細菌又はウイルス感染により引き起こされ、発熱、嘔吐、激しい頭痛及び肩こりにより特徴付けられる、脳及び脊髄の髄膜の炎症を指す。用語「髄膜脳炎」は、脳と髄膜の両方の炎症を指す。
【0151】
用語「脳卒中」は、脳への血管の、封鎖又は破裂(脳への酸素の欠如をもたらす)により引き起こされる脳機能の突然の喪失を指し、筋肉の制御の喪失、感覚若しくは意識の減少若しくは消失、眩暈、不明瞭発語又は脳への損傷の程度及び重篤度によって変わる他の症状により特徴付けられ、脳事故又は脳血管事故とも呼ばれる。用語「脳虚血」(又は「脳卒中」)は、多くの場合に脳への酸素の欠如をもたらす、脳への血液供給の欠乏をも指す。
【0152】
用語「心停止」は、有効な循環の一時的又は永久的な喪失をもたらす、心拍及び心機能の突然の休止を指す。
【0153】
用語「脊髄外傷」は、脊髄それ自体への直接的な傷害によりもたらされる、又は骨、並びに脊髄を囲んでいる軟部組織及び血管への損傷によって間接的にもたらされる、脊髄への損傷を指す。脊髄圧迫、脊髄損傷又は脊髄への圧迫とも呼ばれる。
【0154】
用語「頭部外傷」は、頭皮、頭蓋又は脳の頭部傷害を指す。これらの傷害は、頭蓋上の小さい隆起から壊滅的な脳傷害までの範囲でありうる。頭部外傷は、閉鎖性又は穿通性のいずれかに分類されうる。閉鎖性頭部傷害において、頭部は、物体に当たることによって鈍力を受ける。脳震盪は、脳に関わる閉鎖性頭部傷害の1つの種類である。穿通性頭部傷害において、物体は頭蓋を突破して脳内に侵入する。
【0155】
用語「周産期低酸素症」は、周産期(出産の直前後に生じる期間と定義され、妊娠の20〜28週目の完了時から始まり出産の7〜28日後に終了すると様々に定義される)の際の酸素の欠如を指す。
【0156】
用語「低血糖性神経損傷」は、低血糖状態(血液中の異常に低い濃度のグルコース)の結果としてもたらされる、神経損傷(nerve damage)などの神経損傷(neuronal damage)を指す。
【0157】
用語「てんかん」は、意識消失又は痙攣発作を伴う又は伴わない、運動、感覚又は精神機能不全の突然の再発性発作により特徴付けられる様々な神経障害のいずれかを指す。
【0158】
用語「アルツハイマー病」は、一般に10〜15年間にわたる認知能力の喪失が特徴であり、大脳皮質における異常な組織及びタンパク質沈着(プラーク(plaques)及びもつれ(tangles)としても知られている)の発生に関連する疾患を指す。
【0159】
用語「ハンチントン病」は、本質的に遺伝性であり、成人に発生し、認知症になる疾患を指す。より詳細には、ハンチントン病(HD)は、タンパク質ハンチンチンをコードする遺伝子のDNA配列のポリグルタミン反復により引き起こされる、脳のある特定の区域におけるニューロンと呼ばれる脳細胞の、遺伝的にプログラムされた変性によってもたらされる。この変性は、非制御的動作、知的能力の喪失及び情緒不安定を引き起こす。
【0160】
用語「パーキンソニズム」は、パーキンソン病と類似するが、薬剤、異なる神経変性障害、又は別の病気の作用によって引き起こされる、障害を指す。用語「パーキンソニズム」は、脳のある特定の区域におけるドーパミンニューロンの損傷又は破壊により、パーキンソン病に見られる種類の運動異常の任意の組合せを引き起こす、任意の状態も指す。
【0161】
用語「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)は、ルー・ゲーリック病及び運動ニューロン疾患とも呼ばれ、進行性の致命的な神経疾患を指す。この障害は、運動ニューロン疾患として知られている障害の部類に属する。ALSは、随意運動を制御する脳及び脊髄における特定の神経細胞が徐々に変性するときに生じる(通常、「上位」(大脳皮質内)及び「下位」(脊髄内)運動ニューロンであるが、明らかに別の疾患を表している原発性側索硬化症として知られているいくつかの変異型では、上位運動ニューロンのみが影響を受ける)。これらの運動ニューロンの喪失は、制御下の筋肉を弱め、衰弱させ、麻痺をもたらす。ALSは、どの筋肉が最初に弱まるかに応じて異なる方法で発現する。症状には、躓き及び転倒、手及び腕の運動制御の喪失、発話、嚥下及び/又は呼吸の困難、持続的疲労、並びに時にはかなり重症な単収縮及び筋痙攣が含まれうる。上位運動ニューロン変異型(例えば、原発性側索硬化症)も含まれる。
【0162】
用語「緑内障」は、異常に高い眼内液圧、視神経乳頭の損傷、眼球の硬化及び部分的から完全な視力喪失により特徴付けられる一群の眼の疾患のいずれかを指す。網膜神経節細胞は、緑内障によって失われる。緑内障のいくつかの変異型は、正常な眼内液圧を有する(低眼圧緑内障としても知られている)。
【0163】
用語「網膜虚血」は、網膜への血液供給の減少を指す。
【0164】
用語「虚血性視神経障害」は、一側的に低減された視力の突然の発症を伴って通常表れる状態を指す。その状態は、視神経への血流の減少(虚血)によってもたらされる。2つの基本的な種類:動脈炎性及び非動脈炎性の虚血性視神経障害がある。非動脈炎性虚血性視神経障害は、一般に心血管疾患によってもたらされる。これらの最大の危険性を有する患者は、高血圧、高コレステロール、喫煙、糖尿病又はこれらの組合せの病歴を有する。動脈炎性虚血性視神経障害は、視神経に血液を供給する血管の炎症により引き起こされる状態であり、側頭動脈炎として知られている。この状態は、一方の眼における突然で重篤な視力喪失、咀嚼時の顎の疼痛、こめかみ領域の圧痛、食欲喪失及び全身的な疲労感又は病感を伴って通常表れる。
【0165】
用語「黄斑変性症」は、斑と呼ばれる網膜の中心の物理的撹乱を指す。班は、最も鋭く詳細な視覚を可能にする網膜の一部である。黄斑変性症は、55歳を超える人々における法的盲の主な原因である(法的盲とは、人が眼鏡を掛けて20/200以下を見ることができることを意味する)。しかし、中心視野を喪失しても、色覚及び周辺視野は、明瞭なままでありうる。視力喪失は、通常徐々に生じ、典型的には両眼に異なる早さで影響を与える。
【0166】
本明細書で使用されるとき、「脱髄性障害」は、ミエリン鞘が損傷を受ける医学的状態を指す。ミエリン鞘は神経を囲み、脳へのインパルスの伝達に関与する。ミエリン鞘の損傷は、筋力低下、協調運動不良及び麻痺の可能性をもたらしうる。脱髄性障害の例には、多発性硬化症(MS)、視神経炎、横断性神経炎及びギラン・バレー症候群(GBS)が含まれる。一実施形態において、脱髄性障害を治療するとき、MMP阻害剤は、NMDAR拮抗薬(例えば、メマンチン)又はβ−インターフェロンアイソフォームのコパキソン若しくはアンテグレン(Antegren)(ナタリズマブ)と共に投与される。最近、基礎となる神経損傷は、MSなどの脱髄性状態において生じ、したがって有用な薬物は、ミエリンの代わりに又はミエリンに加えてニューロンを保護することもできることが、注目されている。
【0167】
用語「多発性硬化症」は、主に若年成人に影響を与える中枢神経系の慢性疾患を指す。ウイルス性及び自己免疫性の病因が想定されている。遺伝及び環境因子が、MSに寄与することが知られているが、この疾患の特定の原因は、まだ確認されていない。病理学的には、MSは、脳白質における脱髄及びT細胞型血管周囲炎症の領域の存在により特徴付けられる。いくつかの軸索がこれらの病理過程で温存されうる。この疾患は、神経学的異常の急性又は亜急性の発症によって最も一般的に始まる。初期及び続く症状は、通常は数年間にわたって続く疾患の過程において発現及び重篤度が劇的に変わりうる。初期症状には、痺れ及び/又は知覚異常、不全単麻痺又は不全対麻痺、複視、視神経炎、運動失調及び膀胱制御の問題が含まれる。続く症状には、より顕著な上位運動ニューロンの徴候、すなわち、痙縮の増加、増悪する不全対麻痺又は四肢不全麻痺、も含まれる。めまい、協調運動不能及びの他の小脳の問題、抑うつ病、情緒不安定、歩行異常、構音障害、疲労、並びに疼痛も一般的に見られる。
【0168】
用語「高ホモシステイン血症の後遺症」は、高濃度のホモシステインを意味する高ホモシステイン血症の結果の後の状態を指す。
【0169】
用語「脳浮腫」は、脳の中、上、周囲への及び/又は脳に対する体液の過剰蓄積を指す。
【0170】
用語「AIDS誘発性認知症」又は「HIV関連認知症」は、AIDS(免疫系の不全及び衰弱を引き起こすレトロウイルスである、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2)による感染で引き起こされ、多くの場合に結核などの感染を伴う流行性疾患である、後天性免疫不全症候群)により誘発された認知症(器質性疾患又は脳の障害によりもたらされる、記憶、集中及び判断などの知的能力の劣化)を指す。
【0171】
用語「HIV関連神経障害」は、神経障害がCMV又はヘルペス科の他のウイルスなどの感染により引き起こされる、HIVに感染した哺乳類における神経障害を指す。神経障害は、症状がつま先及び指のチクチクする感覚又は痺れから麻痺までの範囲でありうる、一群の障害に与えられた名称である。神経障害は、いくつかの種類があり、有痛性でありうるので、より正確には「複数の神経障害(neuropathies)」と呼ぶこともできる。
【0172】
用語「網膜症」は、網膜の任意の病理学的障害を指す。
【0173】
用語「認知障害」は、任意の認知機能不全、例えば、記憶の障害(例えば、健忘症)又は学習の障害を指す。
【0174】
用語「HIV感染に関連する神経傷害」は、HIV感染により直接的又は間接的に引き起こされる神経細胞の損傷/傷害を指す。
【0175】
用語「認知、運動及び感覚の機能不全」は、認知(認識、知覚、推論及び判断などの局面を含む理解の心理過程)、運動又は感覚の異常な又は損なわれた機能を指す。
【0176】
上記の疾患、障害又は状態のいずれも、化合物又は本明細書に記載されている化合物を含む組成物を投与し、マトリックスメタロプロテイナーゼを選択的に阻害して、疾患、障害又は状態を治療することによって、治療されうる。
【0177】
創傷の治療
選択的マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤は、糖尿病性創傷又は慢性創傷を含む創傷の治癒を推進することが見出されている。多数の選択的阻害剤化合物が、様々な慢性創傷の治癒過程を有意に加速することが発見されている。本明細書に記載されている評価は、これらの化合物が糖尿病の哺乳動物において治癒過程を加速することに実際に効果的であることを実証している。注目すべきは、療法が糖尿病マウスには有効であったが、非糖尿病マウスには有効でなかったことである。MMP阻害剤により治療された非糖尿病マウスは、創傷治癒にいかなる加速効果も示すことができなかった。これらの化合物は、この種類の療法について、最初に発見されたものである。糖尿病患者において創傷治癒過程を加速できる臨床剤は現在存在せず、したがって、本明細書に記載されている化合物、組成物及び方法は、慢性創傷を治療する治療方法を必要とする患者及び医師たちにとって大変重要である。
【0178】
したがって本発明は、皮膚創傷の治癒過程を加速する方法を提供する。本方法は、皮膚創傷を罹患している哺乳動物に、MMP阻害剤又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与するステップを含むことができ、ここでゼラチナーゼ阻害剤が、皮膚創傷の治癒過程を加速する。
【0179】
本発明は、高濃度のマトリックスメタロプロテイナーゼにより特徴付けられる皮膚創傷関連疾患状態の進行を阻害する方法も提供する。本方法は、皮膚創傷を罹患している哺乳動物に、哺乳動物において皮膚創傷の進行を阻害するのに有効であるゼラチナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与するステップを含むことができる。
【0180】
本発明は、糖尿病性皮膚創傷の回復速度を向上させる方法を更に提供する。本方法は、皮膚創傷に、ゼラチナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与するステップを含むことができ、ここで皮膚創傷の回復速度は、例えば、ゼラチナーゼ阻害剤の投与を受けていない皮膚創傷の回復速度と比較して向上されている。
【0181】
本発明は、慢性皮膚創傷用の包帯又はパッチを追加的に提供する。包帯又はパッチは、ゼラチナーゼ阻害剤又はその薬学的に許容される塩の有効量、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むことができる。例えば活性剤を軟膏基剤に含めることができ、ゼラチナーゼ阻害剤及び軟膏基剤は組み合わされて、包帯に組み込まれる。包帯は、織布又は不織布であり、裏地及び/又は接着材を更に含むことができる。
【0182】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているMMP阻害剤の有効量は、例えば、1日あたり約0.01〜約50mg、1日あたり約0.1〜約10mg、1日あたり約0.5〜約5mg又は1日あたり約0.5〜約2.5mgでありうる。ゼラチナーゼ阻害剤の有効量を、例えば局所的に、任意選択で他の活性剤及び/又は担体と組み合わせて適用することができる。1日あたりの量は、例えば局所的若しくは経皮的に投与される組成物の量でありうるし、又は皮下などの別の方法により投与される量でありうる。局所投与では、量は、治療される患者の表面にある創傷の100cm
2あたり、1日に約0.01〜約50mg、1日に約0.1〜約10mg、1日に約0.5〜約5mg又は1日に約0.5〜約2.5mgでもありうる。
【0183】
いくつかの実施形態において、皮膚創傷は慢性皮膚創傷である。本明細書に記載されている方法により治療可能な創傷を有する対象には、ヒトなどの哺乳動物が含まれる。いくつかの場合では、哺乳動物は、糖尿病を患っていることもあり、皮膚創傷は、慢性糖尿病性皮膚創傷でありうる。阻害剤は、軟膏などの様々な形態で皮膚創傷に送達されうる又は阻害剤の投与は、静脈内投与などの腹腔内でありうる。
【0184】
したがって本発明は、哺乳動物において皮膚創傷を治療する治療方法を提供する。本方法は、慢性皮膚創傷などの創傷を有する哺乳動物に、本明細書に記載されている化合物又は組成物の有効量を投与するステップを含むことができる。本発明は、外皮の創傷(例えば、皮膚潰瘍及び外皮への任意の切断若しくは損傷)又は外科手術の結果としての創傷の治療に有用な化合物も提供し、そのような内部創傷の治癒を助ける全身治療が含まれうる。
【0185】
MMP−2及びMMP−9の著しい上方調節が、慢性創傷において見出される。慢性創傷液におけるMMP−9の濃度が高いほど、臨床的により重篤な創傷と相関する。低減されたTIMP濃度も、慢性創傷において見出される。本明細書に記載されているように、選択的ゼラチナーゼ阻害剤は、慢性創傷の治療に有効でありうることが現在決定されている。
【0186】
本明細書に記載されている組成物及び方法を、創傷管理を助けるために使用することができる。用語「創傷管理」は、壊死などの組織損傷の阻止、組織増殖及び修復の促進、創傷に確立された微生物感染の低減又は排除、並びに新たな又は追加の微生物感染又はコロニー形成が含まれるが、これらに限定されない創傷の修復を誘発及び/又は促進する治療方法を指す。この用語は、創傷に起因する疼痛の感覚を低減又は排除することを更に含むことができる。
【0187】
創傷管理の方法に使用される治療組成物は、創傷の清浄への又は投与された組成物の殺菌活性への寄与に有用でありうる界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤には、ダイズレシチンを含むレシチンなどのリン脂質及び洗剤が含まれるが、これらに限定されない。創傷又は皮膚表面への適用のために選択される界面活性剤は、典型的には穏やかであり、患者に広範囲の刺激作用をもたらさない又は更なる組織損傷を促進しない。
【0188】
「創傷」は、外傷、暴力、事故又は外科手術による傷害が含まれるが、これらに限定されない身体への傷害を指す。創傷は、膜(例えば、皮膚)の裂傷又は破損に起因し、通常は基礎組織への損傷に起因して生じうる。創傷は、局所位置又は内部的に生じうる。慢性創傷は、糖尿病;肝臓、腎臓又は肺の疾患が含まれるが、これらに限定されない内部臓器の疾患;癌;又は治癒過程を遅くする任意の他の状態が含まれるが、これらに限定されない疾患により引き起こされうる。
【0189】
自然治癒は、明確に確定された段階で生じる。急性の性質の皮膚創傷は、皮膚及び基礎組織の完全性及び機能を回復する生物学的過程において、1〜3週間で治癒しうる。そのような創傷は、皮膚の掻爬、擦過、切断、擦り剥き、切開、裂離又は打撲の結果でありうる。創傷が4〜12週間で治癒しない場合、慢性と考慮されうる。慢性創傷の場合、創傷は治癒段階のうちの1つで減弱されうる又は正常な治癒段階へ進行することができないことがある。慢性創傷は、1か月などの短期間にわたって存在しているものでありうる又は数年間にわたって存在しているものでありうる。
【0190】
語句「慢性皮膚創傷」には、皮膚潰瘍、床ずれ、褥瘡、糖尿病性潰瘍及びただれ、並びに他の皮膚障害が含まれるが、これらに限定されない。慢性皮膚創傷は、任意のサイズ、形状又は深さであり、正常で健康的な皮膚の色素と比較して、変色してみえうる。慢性皮膚創傷は、出血する、腫れる、膿汁若しくは化膿性分泌物又は他の液体を滲出する、疼痛を引き起こす、或いは罹患域の動作を困難又は有痛にすることがある。慢性皮膚創傷は、感染して体温の上昇を生じうる、また、乳白色、黄色、緑色又は褐色であり、無臭又は刺激臭を有する膿汁又は分泌物を生じうる。感染すると、慢性皮膚創傷は、赤色でありうる、圧痛がありうる又は暖かい触感でありうる。
【0191】
慢性皮膚創傷は、糖尿病、血液供給不足、低血中酸素、血流が低血圧により減少する状態又は閉塞、封鎖若しくは狭窄された血管により特徴付けられる状態によって引き起こされうる。低酸素供給は、ある特定の血液、心臓及び肺疾患、並びに/又はタバコの喫煙により引き起こされうる。慢性皮膚創傷は、組織内の膨張若しくは圧力の増加などの皮膚への反復される外傷、又は創傷区域への絶え間ない圧力の結果でもありうる。慢性皮膚創傷は、弱められた又は危険にさらされた免疫系により引き起こされうる。弱められた又は危険にさらされた免疫系は、加齢、放射線、栄養不足及び/又は抗癌薬若しくはステロイドなどの薬剤により引き起こされうる。慢性皮膚創傷は、細菌、ウイルス若しくは真菌感染又は外来性の物体の存在によっても引き起こされうる。
【0192】
用語「糖尿病」は、過剰な尿排泄及び持続的な口渇により特徴付けられるいくつかの代謝状態のいずれかを指す。過剰な尿は、尿崩症のように抗利尿ホルモンの欠乏により引き起こされうる又は真性糖尿病に生じる高血糖症によりもたらされる多尿症でありうる。
【0193】
語句「1型真性糖尿病」は、症状の突然の発症(多くの場合、青年期早期)、インスリン欠乏(insulinopenia)及び外因性インスリン依存により特徴付けられる、2つの主な種類の真性糖尿病の1番目のものを指す。膵ベータ細胞によるインスリン生産の不足によってもたらされる。不適切な制御によって、高血糖症、タンパク質消耗及びケトン体産生が生じる。高血糖症は、溢流糖尿、浸透圧利尿、高浸透圧、脱水及び糖尿病性ケトアシドーシスをもたらし、これらは嘔気及び嘔吐、昏迷、並びに潜在的に致命的な高浸透圧性昏睡に進行しうる。血管の関連血管障害(特に、微小血管障害)は、網膜、腎臓及び細動脈基底膜に影響を与える。多尿症、多飲症、過食症、体重減少、知覚異常、かすみ目及び被刺激性も生じうる。
【0194】
語句「2型真性糖尿病」は、わずかな代謝障害の症状(糖尿及びその帰結)を伴って徐々に発症し、食事療法により制御され、経口低血糖薬を用いる又は用いないが、外因性インスリンの必要がないことによって特徴付けられる、発症のピークが50〜60歳である2つの主な種類の真性糖尿病の2番目のものを指す。基礎インスリン分泌は、正常又は低減レベルで維持されるが、グルコース負荷に応答したインスリン放出は、遅延又は低減される。膵ベータ細胞の欠陥グルコース受容体が関わっていることもある。血管、特に大型血管の疾患を多くの場合に伴い、心筋梗塞又は脳卒中症候群を有する早期アテローム性動脈硬化症をもたらす。
【0195】
糖尿病を患っている患者は、皮膚の慢性創傷、外科手術による内部創傷又は本明細書に記載されている治療方法の助けなしでは完全に治癒することができない他の医学的状態を発生しうる。
【0196】
併用療法
以下の記載では、構成成分「(b)」は、本明細書に記載されている1つ以上の作用物質(例えば、式Iの化合物)を表すと理解されるべきである。したがって、構成成分(a)及び(b)が同時又は独立して処理される場合、構成成分(b)の各作用物質も、同時又は独立して処理されうる。構成成分(a)及び(b)は、組合せ生成物として単一投与単位に一緒に処方されうる(すなわち、例えば1つのローション剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤又は注射用製剤に一緒に組み合わされうる)。構成成分(a)及び(b)が、単一投与単位に一緒に処方されないとき、構成成分(a)は、構成成分(b)と同時に又は任意の順番で投与されうる。例えば構成成分(a)が最初に投与され、続いて構成成分(b)が投与される又は逆の順番で投与されうる。構成成分(b)が1つを超える作用物質、例えば、血栓溶解剤及びNSAIDを含有する場合、これらの作用物質は一緒に又は任意の順番で別々に投与されうる。同時に投与されないとき、構成成分(a)及び(b)の投与は、約1日未満のうちに又は約10時間未満の間隔を置いて又はいくつかの実施形態では約1時間の間隔を置いて実施することができる。
【0197】
当該技術に精通した医師に理解されるように、本発明の併用療法の投与量は、特定の作用物質の薬力学的特徴及びその投与様式、受容者の年齢、健康及び体重、症状の性質及び程度、同時治療の種類、治療の頻度、並びに上記に記載された望ましい効果などの様々な要因に応じて変わりうる。構成成分(a)及び(b)の正確な投与量は、当該技術に精通した医師によって容易に確かめることができる。一般的指針よると、典型的な1日投与量は、それぞれの構成成分において約10ミリグラムから約1.5グラムである。構成成分(b)が1つを超える化合物を表す場合、典型的には1日投与量は、構成成分(b)の各作用物質において約10ミリグラムから約1.5グラムである。一般的指針よると、構成成分(a)及び(b)の化合物が組合せで投与される場合、各構成成分の投与量は、組合せの相乗効果を考慮して、障害及び関連する症状の治療のために単一作用物質として単独で投与されるときの構成成分の通常の投与量と比べて、約50〜80%低減されうる。
【0198】
1つ以上の滅菌容器に、構成成分(a)の化合物と、構成成分(b)の1つ以上の化合物とを含む医薬組成物の治療有効量を含む、本明細書に記載されている障害及び関連する症状の治療に有用な薬学的キットも、本発明の範囲内である。容器の滅菌は、当業者に周知の従来の滅菌方法を使用して実施することができる。構成成分(a)及び構成成分(b)は、同じ滅菌容器又は別々の滅菌容器内にありうる。滅菌容器の材料は、望ましくは、別個の容器又は1つ以上の複数部分を持つ容器を含むことができる。構成成分(a)及び構成成分(b)は、別々でありうる又は上記に記載されたように、単一剤形若しくは単位に物理的に組み合わせることができる。そのようなキットは、当業者には容易に認められるように、所望ならば、例えば1つ以上の薬学的に許容される担体、構成成分を混合するための追加のバイアルなどの1つ以上の様々な従来の薬学的キット構成成分を更に含んでもよい。投与される構成成分の量を示す、挿入物又はラベルとしての使用説明書、投与の指針及び/又は構成成分を混合するための指針を、キットに含めてもよい。
【0199】
本明細書に記載されているMMP阻害剤は、メマンチン又はその誘導体が含まれるが、これらに限定されない、アルツハイマー病又は他の神経若しくは眼科障害(例えば、緑内障)の治療に例えば使用される神経保護薬と、任意選択で同時投与することができる。
【0200】
本明細書に記載されているMMP阻害剤を、下記の少なくとも1つと任意選択で同時投与することができる。
抗緑内障剤、ベータアドレナリン作動遮断剤、炭酸脱水酵素阻害剤、縮瞳剤、交感神経刺激剤、アセチルコリン遮断剤、抗ヒスタミン薬、抗ウイルス剤、キノロン、抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、抗うつ薬(例えば、セロトニン再取り込み阻害剤、SSRI)、心理療法剤、抗不安剤、鎮痛薬、抗てんかん剤、抗痙攣薬、ガバペンチン(gabapentine)、抗高血圧剤、ベンゾポルフィリン光感作物質(phtosensitiser)、免疫抑制性代謝拮抗薬、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、GABA阻害剤、ヒダントイン、抗精神病薬、神経遮断薬(neurolaptic)、抗運動障害薬(antidysknetic)、アドレナリン作動剤、三環系抗うつ薬、抗血糖降下薬、グルコース溶液、ポリペプチド(plypeptide)ホルモン、抗生物質、血栓溶解剤、血液希釈剤、抗不整脈剤、コルチコステロイド、発作性障害剤、抗コリンエステラーゼ、ドーパミン遮断薬、抗パーキンソン病剤、筋弛緩薬、抗不安筋弛緩薬、CNS刺激薬、制吐薬、ベータアドレナリン作動遮断剤、麦角誘導体、イソメテプテン、抗セロトニン剤、鎮痛薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、抗感染症剤、ヌクレオシド系逆転写酵素、プロテアーゼ阻害剤又はtPAなどの血栓溶解剤。
【0201】
とりわけ、MMP阻害剤を下記の少なくとも1つと任意選択で同時投与することができる。
ベータアドレナリン作動遮断剤、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、コリン作動薬(縮瞳薬)、ドコサノイド、プロスタグランジン、三環系抗うつ薬、心理療法剤、抗不安剤、鎮痛剤、抗てんかん剤、神経障害性疼痛に鎮痛効果を有する三環系抗うつ薬、リノレン酸、補酵素、ビタミン、免疫抑制性代謝拮抗薬、抗ウイルス薬、コポリマー、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、GABA阻害剤、ヒダントイン、精神安定薬、抗精神病薬、ノルエフェドリン、ペプチド、抗菌薬、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、血液希釈剤/抗凝固薬、心臓刺激薬(cardiostimulant)、炭酸脱水酵素阻害剤、カルバマゼピンのケト誘導体、アセチルコリンエステラーゼ、抗精神病薬、アルカロイド、GABA−B受容体作動薬、ベンゾジアゼピン、抗パーキンソン病薬、抗うつ薬、CNS刺激薬、受容体拮抗薬、ベータアドレナリン作動遮断剤、麦角誘導体(抗片頭痛薬)、抗痙攣薬、セロトニン(5−HT)受容体作動薬、抗躁薬、SSRI、MAOI、AIDS補助抗感染症剤(aids adjunct anti−infective agent)、抗ウイルス薬又はプロテアーゼ阻害剤。
【0202】
加えて、MMP阻害剤を下記の少なくとも1つと任意選択で同時投与することができる。
チモロールマレイン酸塩;チモロール半水和物;ベタキソロールHCl;メチプラノロール;ブリモニジン酒石酸塩;ブリンゾラミド;ドルゾラミド;アセタゾラミド;エコチオパートヨウ化物;ピロカルピンHCl;ウノプロストンイソプロピルエステル;ラタノプロスト;アカンプロセート;アミトリプチリン;ペルフェナジン;クロルジアゼポキシド;トリミプラミンマレイン酸塩;クロルジアゼポキシド(Chlodiazepoxide)HCl;アルプラゾラム;ヒドロキシジン二塩酸塩;メプロバメート;ドキセピン(Doxipin)HCl;ヒドロキシジンパモ酸塩;アスピリン;アセトアミノフェン;イブプロフェン;カルバマゼピン(Carbamazipine);フルピルチン;ラモトリギン;フェニトインナトリウム;ペントキシフィリン(Pentaxifylline);チオクト酸;レボカルニチン;ビオチン;ニコチン酸;タウリン;ベルテポルフィン;アザチオプリン;インターフェロンベータ1;インターフェロンベータ1;シクロホスファミド;メトトレキセート;ネラメキサン(Neurmexane);メホバルビタール(Mephobarbitol);ペントバルビタール(Pentobarbitol);ロラゼパム(Lorazipam);クロナゼパム;クロラゼプテート(Chlorazeptate)二カリウム塩;ホスフェニトインナトリウム;オランザピン;ハロペリドール(Heloperidol);トリフルオペラジン(Trifluoperizine);フルフェナジン;フェニルプロパノールアミン;プソイドエフェドリンHCl;イミプラミン;グルカゴン;グルカゴン関連ペプチド−1;グルカゴン関連ペプチド−2;ペニシリンG、N、O又はV;アンピシリン;クロラムフェニコール;ホルボール;ヘパリン、L−イズロン酸又はD−グルクロン酸を有するD−グルコサミン;ワルファリン;エピネフリン;アミオダロン;リドカイン;ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、アミル、ブチル、イソブチル又は神経保護的であることが示されている様々な他の硝酸塩;アテノロール;デキサメタゾン;プレドニゾロン;アセタゾラミド;フェニトイン;チアガビンHCl;ガバペンチン;オクスカルバゼピン(Oxacarbazepine);タクリン;ドネペジル;リバスチグミン;ハロペリドール(Heloperidol);フェノチアジン;レセルピン;テトラベナジン(Tetrabenazene);ブロモクリプチン(Bromocryptine);チアプリド;バクロフェン;ジアゼパム;トリヘキシフェニジルHCl;アミトリプチリン(Amitrityline);アンフェタミン;メチルフェニデート;アミトリプチリンc(Amitritylinec);クロミプラミン;ドラセトロン;グラニセトロン;フペルジン(Huperzine);メトクロプラミド;プロクロルペラジン;デキサメタゾン;チモロール水素マレイン酸塩;プロプラノロール(Propanolol);イソメテプテン(Isometheptine);アテノロール;メトプロロール;ナドロール;エルゴタミン;ジヒドロエルゴタミン(Dihydroargotamine);ナラトリプタン;スマトリプタン;リザトリプタン;ゾルミトリプタン;イミプラミンHCl;ドーパミン;クロザピン;バルプロ酸;アミトリプチリンc;イミプラミンHCl;イミプラミンパモ酸塩;クロミプラミン;アンフェタミン;メチルフェニデート;フェニトイン;フェノバルビタール;アミトリプチリン(Amitryptyline);イミプラミンパモ酸塩;ノルトリプチリン(Nortrityline);トラゾドン;ネファゾドン;セルトラリン;フルオキセチン;パロキセチン;フェネルジン(Phenalzine);トラニルシプロミン;エリスロポイエチン、糖タンパク質;免疫グロブリン(ガンマグロブリン);テトラヒドロカンナビノール;アリトレチノイン;ラミブジン;スタブジン;ザルシタビン;アバカビル;リトナビル;インジナビル;及びネルフィナビル。これらの化学名は、当該技術において良く知られており、また米国特許出願公開第2009/0209615号(Liption et al.)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。MMP阻害剤は、米国特許第6,703,415号(Mobashery et al.)及び同第7,928,127号(Lee et al.)、国際公開第2011/026107号(Mobashery et al.)及び米国特許出願公開第2013/0064878号(Chang et al.)に記載されている化合物を含む追加のMMP阻害剤と共に投与することができ、これらの特許文書は、参照により本明細書に組み込まれる。上記の化合物のいずれか1つ以上を、その薬学的に許容される塩形態、溶媒和物形態(例えば、一若しくは二水和物)又は任意の組合せで使用することができる。
【0203】
薬学的な塩及び溶媒和物
本発明は、上記に記載されたものなどの、本明細書に記載されている式により表される化合物及び本明細書に例示されている特定の化合物の薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物、並びにそのような塩及び/又は溶媒和物を使用する治療方法も含む。
【0204】
「薬学的に許容される塩」は、非毒性であり、生物学的に耐容性があり、そうでなければ対象への投与に生物学的に適している、本明細書に記載されている式により表される化合物の遊離酸又は塩基の塩を意味することが意図される。一般的に、S.M.Berge, et al.,“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19及びHandbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection, and Use,Stahl and Wermuth,Eds.,Wiley−VCH and VHCA,Zurich,2002を参照すること。好ましい薬学的に許容される塩は、過剰な毒性、刺激又はアレルギー反応を有することなく、患者の組織への接触に薬理学的に有効及び適切であるものである。
【0205】
薬学的に許容される塩には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ハロゲン化物、硫酸、リン酸、炭酸、重炭酸、二リン酸及び硝酸などの無機酸又は酢酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、アスコルビン酸、トシル酸、メシル酸、トリフル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、α−ケトグルタル酸及びα−グリセロリン酸などの有機酸の付加塩が含まれる。使用できるときには、水酸化ナトリウム又はカリウムなどの塩基から形成された塩も、本発明の範囲内である。薬学的に許容される塩の他の例については、“Salt selection for basic drugs”,Int.J.Pharm.(1986),33,201−217を参照することができる。
【0206】
本明細書に記載されている式の化合物は、十分な酸性基、十分な塩基性基又はその両方の種類の官能基を有することができ、したがって多数の無機又は有機塩基、並びに無機及び有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。薬学的に許容される塩の例には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、ベヘン酸塩、ベシル酸塩、プロピオン酸塩、デンカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオ−ル酸塩(propiolate)、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、安息香酸メチル、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、酪酸フェニル、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシブチレート、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホネート、ナフタレン−2−スルホメネート及びマンデル酸塩が含まれる。
【0207】
本明細書に記載されている式の化合物が塩基性窒素を含有する場合、望ましい薬学的に許容される塩は、当該技術において利用可能な任意の適切な方法によって、例えば、遊離塩基を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などの無機酸により、又は酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、イセチオン酸、コハク酸、吉草酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、グルクロン酸若しくはガラクツロン酸などのピラノシジル酸(pyranosidyl acid)、マンデル酸、クエン酸若しくは酒石酸などのアルファ−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、ナフトエ酸若しくはケイ皮酸などの芳香族酸、ラウリルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのスルホン酸などの有機酸、本明細書に例として提示されている酸などの酸の任意の適合可能な混合物、並びに本技術の通常の技能レベルの観点から同等又は許容可能な代替物であると考慮される任意の他の酸及びそれらの混合物により処理することによって、調製されうる。
【0208】
本明細書に記載されている式の化合物が、カルボン酸又はスルホン酸などの酸部分を含む場合、望ましい薬学的に許容される塩は、任意の適切な方法によって、例えば、遊離塩基を、アミン(第一級、第二級又は第三級)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの無機又は有機塩基、本明細書に例として提示されているものなどの塩基の任意の適合可能な混合物、並びに本技術の通常の技能レベルの観点から同等又は許容可能な代替物であると考慮される任意の他の塩基及びそれらの混合物により処理することによって、調製されうる。適切な塩の実例的な例には、グリシン及びアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、炭酸塩、重炭酸塩、第一級、第二級及び第三級アミン、ベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン及びピペラジンなどの環状アミンから誘導される有機塩、並びにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩が含まれる。
【0209】
用語「溶媒和物」は、固体構造と会合する1つ以上の溶媒分子を有する固体化合物を指す。溶媒和物は、化合物が溶媒から結晶化されるときに形成されることができ、1つ以上の溶媒分子は、結晶の不可欠な部分(1つ又は複数)になる。本明細書に記載されている式の化合物は、溶媒和物、例えばエタノール溶媒和物でありうる。同様に、「水和物」は、固体構造と会合する1つ以上の水分子を有する固体化合物を指す。水和物は、溶媒和物の部分群である。水和物は、化合物が水から結晶化されるときに形成されることができ、1つ以上の水分子は、結晶の不可欠な部分(1つ又は複数)になる。本明細書に記載されている式の化合物は、水和物でありうる。
【0210】
医薬製剤
本明細書に記載されている化合物を使用して、例えば、化合物を薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と組み合わせることによって、治療医薬組成物を調製することができる。化合物を、塩又は溶媒和物の形態で担体に加えることができる。例えば、化合物が、安定で非毒性の酸又は塩基の塩を形成するために十分に塩基性又は酸性である場合、化合物を塩として投与することが適切でありうる。薬学的に許容される塩の例は、生理学に許容可能なアニオンを形成する酸、例えば、トシル酸、メタンスルホン酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、安息香酸、アスコルビン酸、α−ケトグルタル酸及びβ−グリセロリン酸と形成される有機酸付加塩である。塩酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩を含む適切な無機塩も形成されうる。
【0211】
薬学的に許容される塩は、当該技術に周知の標準的な手順を使用して、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて、生理学的に許容されるイオン化合物をもたらすことによって、得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム若しくはリチウム)又はアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)の塩も、類似した方法によって調製することができる。
【0212】
本明細書に記載されている式の化合物を医薬組成物として処方することができ、ヒト患者などの哺乳類宿主に、様々な形態で投与することができる。形態は、例えば、経口若しくは非経口投与、静脈内、筋肉内、局所又は皮下の経路によってなど、選択された投与経路に適合させることができる。
【0213】
本明細書に記載されている化合物を、不活性希釈剤又は同化性食用担体などの薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて、全身投与してもよい。経口投与では、化合物を硬ゼラチンカプセル若しくは軟ゼラチンカプセルに封じる、錠剤に圧密する又は患者の食事の食べ物に直接組み込むことができる。化合物を1つ以上の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ錠、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート剤などの形態で使用することもできる。そのような組成物及び調合剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を典型的に含有する。組成物及び調合剤の割合は、変動し、所定の単位剤形の重量の約0.5%〜約60%、約1%〜約25%又は約2%〜約10%であることが好都合でありうる。そのような治療的に有用な組成物における活性化合物の量は、有効な投与量濃度を得ることができるようなものでありうる。
【0214】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、以下の、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤の1つ以上を含有することもできる。スクロース、フルクトース、ラクトース若しくはアスパルテームなどの甘味剤又はペパーミント、冬緑油若しくはサクランボ風味などの風味剤を加えることができる。単位剤形がカプセル剤であるとき、上記の種類の材料に加えて、植物油又はポリエチレングリコールなどの液体担体を含有することができる。様々な他の材料が被覆として、そうでなければ固体単位剤形の物理的形態を修飾するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤をゼラチン、ロウ、シェラック又は糖などで被覆してもよい。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてスクロース又はフルクトース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素及びサクランボ又はオレンジ風味などの風味剤を含有してもよい。任意の単位剤形の調製に使用される任意の材料は、用いられる量において薬学的に許容され、実質的に非毒性であるべきである。加えて、活性化合物を、持続放出調合剤及び装置に組み込むことができる。
【0215】
活性化合物を、注入又は注射によって静脈内又は腹腔内投与することができる。活性化合物又はその塩の溶液は、非毒性界面活性剤と任意選択で混合した水により調製することができる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン若しくはこれらの混合物により又は薬学的に許容される油により調製することができる。通常の条件下の貯蔵及び使用では、調合剤は、微生物の増殖を防止するため防腐剤を含有してもよい。
【0216】
注射又は注入に適した医薬剤形は、任意選択でリポソームにカプセル化した、滅菌注射用又は注入用の液剤又は分散剤の用時調製に適応する、活性成分を含む滅菌水性液剤、分散剤又は滅菌粉末剤を、含むことができる。最終的な剤形は、滅菌であり、流体であり、製造及び貯蔵の条件下で安定しているべきである。液体担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングルコール、液体ポリエチレングルコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成により、分散剤の場合では要求される粒径の維持により又は界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、緩衝液又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の延長吸収は、吸収を遅延する作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンによってもたらすことができる。
【0217】
滅菌注射用液剤は、適切な溶媒中の必要量の活性化合物を、必要であれば上記に列挙された様々な他の成分と共に組み込み、任意選択で続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉末剤の場合では、調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥の技術を含むことができ、活性成分の粉末剤に加えて、液剤に存在する任意の追加的に望ましい成分を生じる。
【0218】
局所投与では、化合物を、例えば化合物が液体であるときは、純粋な形態で投与してもよい。しかし、活性剤を、組成物又は製剤として、例えば、固体、液体、ゲルなどでありうる皮膚科学的に許容される担体と組み合わせて皮膚に投与することが、一般に望ましい。
【0219】
有用な固体担体には、タルク、粘土、微晶質セルロース、シリカ、アルミナなどの微細固体が含まれる。有用な液体担体には、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール、グリコール又は水アルコール/グリコールブレンドが含まれ、その中に化合物を、任意選択で非毒性界面活性剤の助けを借りて、有効濃度で溶解又は分散させることができる。香料及び追加の抗微生物剤などの補助剤を加えて、所定の使用のために特性を最適化することができる。得られた液体組成物を、吸収パッドから外用すること、絆創膏及び他の包帯への含浸に使用すること又はポンプ型若しくはエアロゾル噴霧器の使用により罹患領域に噴霧することができる。
【0220】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は改質鉱物材料などの増粘剤を液体担体と共に用いて、塗布可能なペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、ソープ剤などを、使用者の皮膚への直接的な適用のために形成することもできる。
【0221】
活性剤を皮膚に送達する皮膚科学用組成物の例は、当該技術において知られており、例えば、米国特許第4,992,478号(Geria)、同第4,820,508号(Wortzman)、同第4,608,392号(Jacquest et al.)及び同第4,559,157号(Smith et al.)を参照すること。そのような皮膚科学用組成物を、本明細書に記載されている化合物と組み合わせて使用することができ、そのような組成物の成分を、任意選択で本明細書に記載されている化合物に代えることができるし、又は本明細書に記載されている化合物を組成物に加えることができる。
【0222】
本明細書に記載されている化合物の有用な投与量は、インビトロ活性及び動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物からにおける有効量をヒトに外挿する方法は、当該技術において知られており、例えば、米国特許第4,938,949号(Borch et al.)を参照すること。治療における使用に必要な化合物又はその活性塩若しくは誘導体の量は、特定の化合物又は選択される塩のみならず、投与経路、治療される状態の性質、並びに患者の年齢及び状態によっても変わり、最終的には担当の医師又は臨床医の裁量による。
【0223】
化合物は、例えば、単位剤形1つあたり5〜1000mg/m
2、都合良くは10〜750mg/m
2、最も都合良くは50〜500mg/m
2の活性成分を含有する単位剤形で、都合良く投与することができる。望ましい用量は、単回用量として又は適切な間隔により、例えば1日あたり2、3、4回若しくはそれ以上の回数の部分用量で投与される分割用量として、都合良く存在してもよい。部分用量それ自体を、例えば、多くの別々の大ざっぱに間隔を開けた投与に更に分けても良い。
【0224】
本発明は、哺乳動物において癌を治療する治療方法を提供し、治療方法は、癌を有する哺乳動物に、本明細書に記載されている化合物又は組成物の有効量を投与することを伴う。哺乳動物には、霊長類、ヒト、齧歯類、イヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ウマ類、イノシシ類、ヤギ類、ウシ類などが含まれる。癌は、任意の様々な種類の悪性新生物を指し、例えば、結腸癌、乳癌、黒色腫及び白血病であり、一般に、望ましくない細胞増殖、例えば未制御の増殖、分化の欠如、局所組織侵襲及び転移により特徴付けられる。本発明の化合物が癌を治療する能力は、当該技術に周知のアッセイを使用して決定することができる。例えば、治療プロトコールの設計、毒性評価、データ分析、腫瘍細胞死滅の定量化及び移植可能腫瘍選別の使用の生物学的有意性が知られている。本発明は、慢性創傷及び糖尿病患者の創傷などの創傷、並びに脳卒中及び外傷性脳傷害などの神経学的状態を治療する治療方法、また、本明細書に記載されている状態及び障害などの様々な状態及び障害におけるMMPの役割を評価するのに有用な化合物も提供する。
【0225】
以下の実施例は、上記の発明を説明することが意図され、その範囲を狭めるものとして解釈されるべきではない。当業者は、実施例が本発明を実施することができる多くの他の方法を示唆していることを容易に認識する。本発明の範囲内に留まりながら、多数の変更及び修正を行えることが理解されるべきである。
【実施例】
【0226】
略語。ADAM ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(a disintegrin and metalloproteinase);AUC 濃度時間曲線下面積;BBB 血液脳関門;Boc t−ブトキシカルボニル;m−CPBA メタ−クロロ過安息香酸;CNS 中枢神経系;DIEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMF ジメチルホルムアミド;DMSO ジメチルスルホキシド;ESI エレクトロスプレーイオン化;HCTU O−(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;MMP マトリックスメタロプロテイナーゼ;MOCAc (7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル;MRM 多重反応モニタリング;MS 質量分析;TEA トリエチルアミン;THF テトラヒドロフラン;TIMP メタロプロテイナーゼの組織阻害剤;TLC 薄層クロマトグラフィー;UPLC 超高性能液体クロマトグラフィー。
【0227】
実施例1.血液脳関門を通過する選択的な水溶性の遅延結合性マトリックスメタロプロテイナーゼ−2及び−9阻害剤
本発明は、化合物SB−3CT(1)のp−アミノメチルオキサジアゾール(4)、p−アミノメチル(5、ND−336)、p−アセトアミドメチル(6、ND−378)及びp−グアニジノ(7)類似体などの選択的MMP阻害剤、並びにそれらの使用方法を提供する。化合物は、1よりも10〜14,000倍の水溶性があり、MMP−2に対して遅延結合性阻害挙動を保持し、血液脳関門(BBB)を通過することができる。p−アセトアミドメチル類似体(化合物6)は、MMP−2の選択的ナノモル遅延結合性阻害剤であり、密接に関係するMMP−9又はMMP−14を阻害しない。標的MMP−2からの化合物6の解離が遅いため、6の濃度がK
i値を下回って下降しても、MMP−2の持続的阻害をもたらす。この阻害剤は、治療介入にとって及び神経疾患におけるMMP−2の役割についての調査にとって有用なツールである。p−アミノメチル誘導体(化合物5)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14の水溶性ナノモル遅延結合性阻害剤であり、MMP−9に結合したメタロプロテイナーゼ1又は2の組織阻害剤(TIMP−1又はTIMP−2)より6〜7倍長い阻害滞留時間を、これらの酵素に対して有する。
【0228】
化学。1のp−アミノメチルオキサジアゾール(4)、p−アミノメチル(5、ND−336)、p−アセトアミドメチル(6、ND−378)及びp−グアニジノ(7)誘導体の合成を下記のスキーム1によって概説する。4−メルカプトフェノール(8)のアリル化によって化合物9を得て(Ikejiri et al.,J.Biol.Chem.2005,280,33992−34002)、それを4−フルオロベンゾニトリルと反応させて、ジフェニルエーテル10を得た。10とヒドロキシルアミンとの反応、続く、Boc−グリシンの、アミドキシムへの付加によって、オキサジアゾール誘導体12を生じ、これを更に酸化させて、対応するオキシラン13にし、続いてチオ尿素と反応させて、Boc保護チイラン14を生じた。1,4−ジオキサン中の4N HClを使用するBoc脱保護によって、所望のチイラン4を得た。LiAlH
4による10の還元、続くBoc保護により、15を得た。化合物5を、12から4を合成するのに使用したものと同じ手順を使用して、15から合成した。TEAの存在下で塩化アセチルを使用した5のN−アセチル化によって、化合物6がもたらされた。塩基としてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用した、2と、N,N’−ジ−Boc−1H−ピラゾール−1−カルボキサミジンとの反応は、チイラン18を容易にもたらし、次にチイラン18を、HClガスを用いてBocを脱保護してp−グアニジノ誘導体7を得た。
【0229】
【化13】
a試薬及び条件:(a)臭化アリル、K
2CO
3、94%;(b)4−フルオロベンゾニトリル、Cs
2CO
3、DMF、100℃、82%;(c)ヒドロキシルアミン(水中50%)、EtOH、還流;(d)Boc−グリシン、HCTU、DIEA、DMF、100℃、2ステップで78%;(e)m−CPBA、CH
2Cl
2、0℃から室温(約22℃)、8日間、36〜74%;(f)チオ尿素、MeOH/CH
2Cl
2、室温、24時間、58〜78%;(g)4N HCl(1,4−ジオキサン中)、EtOAc/CH
2Cl
2、0℃から室温、24時間、98〜99%;(h)LiAlH
4、THF;(i)(Boc)
2O、I
2、MeOH/CH
2Cl
2、2ステップで55%:(j)塩化アセチル、TEA、THF、0℃から室温(約22℃)、66%;(k)N,N’−ジ−Boc−1H−ピラゾール−1−カルボキサミジン、DIEA(2.2当量)、THF、室温、24時間、68%;(l)HCl(ガス)、EtOAc/CH
2Cl
2、0℃、3分間、95%。
【0230】
実験セクション
化学。全ての反応は、特に示されない限り、窒素雰囲気下で実施した。
1H及び
13C NMRスペクトルは、Varian INOVA−500(Varian Inc.、Palo Alto、CA、USA)、Varian UnityPlus 300分光計(Varian Inc.、Palo Alto、CA、USA)、Bruker AVANCE III HD 500(Bruker Corporation、Billerica、MA、USA)又はBruker AVANCE III HD 400(Bruker Corporation、Billerica、MA、USA)で記録した。TLCシリカゲル60F
254アルミニウムシート(EMD Millipore Corporation、Billerica、MA、USA)を、薄層クロマトグラフィーに使用した。フラッシュクロマトグラフィーを、自動クロマトグラフ装置:Combiflash RF 200i UV/Vis(Teledyne Isco、Lincoln、NE、USA)により実施した。高解像度質量スペクトルは、BrukermicrOTOF/Q2質量分析計(BrukerDaltonik、Bremen、Germany)を使用して、ESIイオン化によって得た。調製された化合物の純度は、UPLCにより確認すると、一般に>95%であった。条件は、UPLCセクションに詳述されている。4−(アリルチオ)フェノール(9)は、以前に記載されたように調製した(Ikejiri et al.,J.Biol.Chem.2005,280,33992−34002;Goux et al.,C.;Tetrahedron 1994,50,10321−10330)。
【0231】
4−(4−(アリルチオ)フェノキシ)ベンゾニトリル(10)。DMF(50mL)中の9(1.45g、8.72mmol)、4−フルオロベンゾニトリル(1.01g、8.38mmol)及びCs
2CO
3(4.26g、13.1mmol)の混合物を100℃で3.5時間加熱した。飽和LiBr水溶液(250mL)を加えた後、混合物をヘキサン/EtOAc(9:1)で抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 97:3)により精製して、5(1.84g、82%)を油状物として得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.77〜7.52(m,2H)、7.49〜7.30(m,2H)、7.14〜6.82(m,4H)、5.87(ddt,J=16.9,10.0,6.9Hz,1H)、5.29〜4.93(m,2H)、3.53(dt,J=6.9,1.1Hz,2H)。
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ161.6、153.9、134.4、133.7、132.7、132.4、121.0、119.0、118.2、118.1、106.3、38.2。HRMS(ESI+,m/z):C
16H
14NO[M+H]
+の計算値、268.0791;実測値、268.0799。
【0232】
(E)−4−(4−(アリルチオ)フェノキシ)−N’−ヒドロキシベンズイミドアミド(11)。EtOH(40mL)中の10(865mg、3.24mmol)及びヒドロキシルアミン(793μL、水中50%、12.9mmol)の溶液を、1.5時間還流した。溶媒を減圧下で蒸発させ、11を白色の固体として得て、それを更に精製することなく次のステップに直接使用した。
【0233】
t−ブチル((3−(4−(4−(アリルチオ)フェノキシ)フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)メチル)カルバメート(12)。DIEA(1.05mL、5.93mmol)を、DMF(16mL)中のBoc−グリシン(692mg、3.95mmol)及び11(989mg、3.29mmol)の溶液に加えた。次にHCTU(1.64g、3.95mmol)を、得られた混合物に室温で加え、100℃で3時間撹拌した。この時点で、TLCは、出発材料の完全な変換を示した。溶液を、EtOAcとLiBr水溶液に分配した。水溶液をEtOAcで抽出し、合わせた有機層を飽和NaHCO
3及びブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 85:15)により精製して、12(1.13g、2ステップで78%)を得た。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ8.03(d,J=8.6Hz,2H)、7.43〜7.35(m,2H)、7.05(d,J=8.7Hz,2H)、7.02〜6.97(m,2H)、5.95〜5.80(m,1H)、5.22(s,b,1H)、5.15〜5.02(m,2H)、4.64(s,2H)、3.52(d,J=7.0Hz,2H)、1.48(s,9H)。
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ176.7、168.1、160.2、155.7、155.2、132.9、131.2、131.0、129.5、120.7、120.4、118.6、118.0、80.9、38.5、37.4、28.6。HRMS(ESI+,m/z):C
23H
26N
3O
4S[M+H]
+の計算値、440.1639;実測値、440.1634。
【0234】
t−ブチル((3−(4−(4−((オキシラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)メチル)カルバメート(13)。m−CPBA(2.03g、11.8mmol)を、氷水浴に浸けたCH
2Cl
2(8mL)中の12(1.04g、2.36mmol)の溶液にバッチで加えた。添加が完了した後、氷水浴を取り外し、溶液を室温で3日間撹拌した。m−CPBA(1.02g、5.89mmol)の別のバッチを加え、混合物を室温で更に5日間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾液をCH
2Cl
2で希釈し、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、続いて飽和NaHCO
3及びブラインで洗浄した。有機層を無水Na
2SO
4で乾燥し、懸濁液を濾過し、溶液を真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 2:1〜1:1)により精製して、13(0.85g、74%)を得た。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ8.05(d,J=8.8Hz,2H)、7.87(d,J=8.9Hz,2H)、7.11(d,J=8.9Hz,4H)、5.58(s,b,1H)、4.59(d,J=5.8Hz,2H)、3.38〜3.24(m,3H)、2.79〜2.76(m,1H)、2.55〜2.34(m,1H)、1.42(s,9H)。
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ176.9、173.9、167.9、162.1、157.8、133.7、131.0、129.9、123.5、120.6、118.7、81.1、59.9、46.13、46.12、37.5、28.6。HRMS(ESI+,m/z):C
23H
26N
3O
7S[M+H]
+の計算値、488.1486;実測値、488.1498。
【0235】
t−ブチル((3−(4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)メチル)カルバメート(14)。チオ尿素(55.3mg、0.73mmol)を、MeOH/CH
2Cl
2(1:1、3mL)中の化合物13(161.1mg、0.33mmol)の溶液に加え、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をCH
2Cl
2と水に分配した。有機層を水及びブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥し、濾過した。溶媒の蒸発により粗生成物を得て、それをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した(130.1mg、78%)。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ8.13(d,J=8.9Hz,2H)、7.92(d,J=8.7Hz,2H)、7.18(d,J=8.5Hz,4H)、5.30(s,b,1H)、4.65(s,2H)、3.52(dd,J=14.0,5.8Hz,1H)、3.22(dd,J=14.3,7.6Hz,1H)、3.16〜2.99(m,1H)、2.56(dd,J=6.0,1.6Hz,1H)、2.18(dd,J=5.0,1.6Hz,1H)、1.48(s,9H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ177.0、167.9、162.1、157.9、143.2、133.2、131.2、130.0、123.5、120.5、118.8、77.5、62.9、37.5、28.5、26.3、24.4。HRMS(ESI+,m/z):C
23H
26N
3O
6S
2[M+H]
+の計算値、504.1258;実測値、504.1247。
【0236】
(3−(4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)メタンアミン・HCl塩(4)。HCl(0.7mL、1,4−ジオキサン中4N)を、CH
2Cl
2/EtOAc(1:1、4mL)中のチイラン14(71mg、0.14mmol)の溶液に加えた。室温で24時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮した。得られた粗化合物をジエチルエーテルで粉砕し、生成物を濾過により得た(60.5mg、98%)。
1H NMR(300MHz,CD
3OD)δ8.32〜8.12(m,2H)、8.09〜7.92(m,2H)、7.42〜7.20(m,4H)、4.62(s,2H)、3.65〜3.41(m,2H)、3.11〜3.03(m,1H)、2.53(dd,J=6.5,1.5Hz,1H)、2.16(dd,J=5.2,1.5Hz,1H)。
13C NMR(75MHz,CD
3OD)δ174.7、169.2、163.0、159.8、134.8、132.4、130.8、123.8、121.4、120.0、63.1、36.2、26.9、24.1。HRMS(ESI+,m/z):C
18H
18N
3O
4S
2[M+H]
+の計算値、404.0733;実測値、404.0746。
【0237】
t−ブチル4−(4−(アリルチオ)フェノキシ)ベンジルカルバメート(15)。THF(78mL)中の化合物10(4.98g、18.63mmol)の溶液を、THF(78mL)中のLiAlH
4(2.12g、55.89mmol)に0℃で30分間かけて滴加した。氷浴を取り外し、反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、その時点で、TLCは反応が完了したことを示した。溶液を氷水温度に再び冷却し、2.4mLの水、2.4mLの15%NaOH水溶液及び7.2mLの水の注意深い滴加により停止させた。溶液を室温に徐々に温め、30分間撹拌し、セライトパッドで濾過し、ジエチルエーテル及びEtOAcで抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、溶液を無水Na
2SO
4で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗第一級アミンを得て、それを次のステップに直接使用した。
【0238】
MeOH/CH
2Cl
2(3:2、150mL)中のアミン(4.3g、15.84mmol)及び(Boc)
2O(5.2g、23.77mmol)の混合物に、触媒量のヨウ素(402mg、1.58mmol、10mol%)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した後、溶媒を真空下で蒸発させ、EtOAcを加えた。溶液を5%Na
2S
2O
3水溶液及び飽和NaHCO
3で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥した。溶媒を真空下で蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 95:5)により精製して、化合物15(3.21g、2ステップで55%)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.38〜7.32(m,2H)、7.31〜7.25(m,2H)、6.99〜6.90(m,4H)、6.17〜6.09(m,1H)、5.08〜5.03(m,2H)、4.85(s,b,1H)、4.29(d,J=3.0Hz,2H)、3.49〜3.47(m,2H)、1.46(s,9H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ156.8、156.4、156.1、134.0、133.2、131.4、131.2、129.2、127.2、119.3、117.7、79.7、44.4、38.8、28.6。HRMS(ESI+,m/z):C
21H
25NNaO
3S[M+Na]
+の計算値、394.1447;実測値、394.1472。
【0239】
t−ブチル4−(4−((オキシラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)ベンジルカルバメート(16)。化合物16は、化合物13の合成について記載されたものと同じ手順に従って調製した。収率 36%。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ7.91〜7.65(m,2H)、7.27〜7.25(m,2H)、7.06〜6.95(m,4H)、5.22(s,b,1H)、4.24(d,J=5.1Hz,2H)、3.44〜3.02(m,3H)、2.72(dd,J=8.0,2.0Hz,1H)、2.39(dd,J=4.8,2.0Hz,1H)、1.39(s,9H)。
13C NMR(100MHz,CDCl
3)δ163.0、154.1、136.6、130.7、129.5、123.2、120.7、118.0、117.8、79.7、59.8、46.04、45.99、44.1、28.6。HRMS(ESI+,m/z):C
21H
25NNaO
6S[M+Na]
+の計算値、442.1295;実測値、442.1292。
【0240】
t−ブチル4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)ベンジルカルバメート(17)。化合物17は、化合物14の合成について記載されたものと同じ手順に従って調製した。収率 58%。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.85(d,J=8.7Hz,2H)、7.33(d,J=8.7Hz,2H)、7.13〜6.97(m,4H)、4.95(s,b,1H)、4.33(d,J=5.9Hz,2H)、3.51(dd,J=14.1,5.7Hz,1H)、3.17(dd,J=14.1,7.8Hz,1H)、3.11〜2.98(m,1H)、2.53(dd,J=6.3,1.6Hz,1H)、2.15(dd,J=5.1,1.6Hz,1H)、1.46(s,9H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ163.1、156.0、154.0、136.3、132.1、130.8、129.4、120.7、117.8、79.8、62.8、44.1、28.5、26.2、24.4。HRMS(ESI+,m/z):C
21H
25NNaO
5S
2[M+Na]
+の計算値、458.1066;実測値、458.1089。
【0241】
(4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)フェニル)メタンアミンHCl塩(5)。化合物5は、化合物4の合成について記載されたものと同じ手順に従って調製した。収率 98%。
1H NMR(300MHz,CD
3OD)δ7.93(d,J=8.6Hz,2H)、7.58(d,J=8.6Hz,2H)、7.19(d,d,J=8.4Hz,4H)、4.16(s,2H)、3.57〜3.43(m,2H)、3.11〜2.99(m,1H)、2.52(dd,J=6.3,1.4Hz,1H)、2.14(dd,J=5.1,1.4Hz,1H)。
13C NMR(75MHz,CD
3OD)δ162.5、156.2、133.0、131.3、131.1、130.0、120.7、118.2、62.0、42.6、25.8、23.0。HRMS(ESI+,m/z):C
16H
18NO
3S
2[M+H]
+の計算値、336.0723;実測値、336.0709。
【0242】
N−(4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)ベンジル)アセトアミド(6)。THF(0.5mL)中の塩化アセチル(43.6μL、0.61mmol)を、THF(1.0mL)中の5(69mg、0.19mmol)、トリエチルアミン(85.4μL、0.61mmol)の冷却溶液にゆっくりと加えた。反応混合物を氷水浴において3時間撹拌し、室温に温め、一晩撹拌した。反応を飽和NaHCO
3で停止させ、生成物をCH
2Cl
2で抽出した。合わせた有機層を無水Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。残渣を分取TLC(ヘキサン/EtOAc/MeOH 14:85:1)により精製して、6(45.8mg、65%)を得た。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ7.87(d,J=8.5Hz,2H)、7.36(d,J=8.5Hz,2H)、7.08(d,d,J=8.6Hz,4H)、6.03(s,b,1H)、4.47(d,J=5.9Hz,2H)、3.52(dd,J=14.2,5.7Hz,1H)、3.21(dd,J=14.2,7.7Hz,1H)、3.14〜2.98(m,1H)、2.56(dd,J=6.2,1.6Hz,1H)、2.18(dd,J=5.1,1.6Hz,1H)、2.07(s,3H)。
13C NMR(126MHz,CDCl
3)δ170.1、163.0、154.5、135.8、132.6、130.9、129.9、120.8、118.0、63.0、43.3、26.2、24.4、23.4。HRMS(ESI+,m/z):C
18H
20NO
4S
2[M+H]
+の計算値、378.0828;実測値、378.0836。
【0243】
1−(4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)フェニル)−2,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)グアニジン(18)。DIEA(31μL、0.17mmol)を、THF(0.5mL)中の化合物2(56.8mg、0.16mmol)及び(Z)−t−ブチル(((t−ブトキシカルボニル)イミノ)(1H−ピラゾール−1−イル)メチル)カルバメート(44.3mg、0.14mmol)の溶液に加えた。得られた反応混合物を室温で24時間撹拌した。有機溶媒を減圧下で除去し、残渣を分取TLC(ヘキサン/EtOAc 3:1)により精製して、18(54.8mg、68%)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl
3)δ11.64(s,1H)、10.40(s,1H)、7.85(d,J=8.7Hz,2H)、7.67(d,J=8.7Hz,2H)、7.07(d,d,J=8.8Hz,4H)、3.53(dd,J=13.9,5.3Hz,1H)、3.16(dd,J=13.9,8.1Hz,1H)、3.09〜3.01(m,1H)、2.54(dd,J=6.1,1.6Hz,1H)、2.16(dd,J=4.8,1.6Hz,1H)、1.52(s,s,18H);
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ163.6、163.3、153.8、153.6、151.5、134.3、132.0、131.0、124.3、121.2、117.8、84.2、80.2、62.9、28.4、28.4、26.4、24.6;HRMS(ESI+,m/z):C
26H
34N
3O
7S
2[M+H]
+の計算値、564.1833;実測値、564.1836。
【0244】
1−(4−(4−((チイラン−2−イルメチル)スルホニル)フェノキシ)フェニル)グアニジンHCl塩(7)。塩化水素ガスを、CH
2Cl
2/EtOAc(1:1、3mL)中の18(37.1mg)の溶液に氷水温度で3分間にわたって通過させた。次に有機溶媒を減圧下で除去して、7(37.1mg、95%)を得た。
1H NMR(500MHz,DMSO−d
6)δ9.92(s,1H)、7.91(d,J=8.8Hz,2H)、7.50(s,3H)、7.34(d,J=8.8Hz,2H)、7.28〜7.16(m,4H)、3.66(m,2H)、2.99(m,1H)、2.56(dd,J=6.0,1.0Hz,1H)、2.16(dd,J=5.0,1.0Hz,1H)。
13C NMR(126MHz,DMSO−d6)δ162.5、157.0、153.7、133.3、132.7、131.5、128.1、122.2、118.4、61.3、27.7、24.6。HRMS(ESI+):C
16H
18N
3O
3S
2[M+H]
+の計算値、364.0784;実測値、364.0770。
【0245】
酵素阻害研究。ヒト組み換え活性MMP−2及びMMP−7、並びにMMP−3及びMMP−14/MT1−MMPの触媒ドメインを、EMD Chemicals,Inc.(San Diego、CA、USA)から購入し、MMP−1、MMP−8及びMMP−9のヒト組み換え触媒ドメインを、Enzo Life Sciences,Inc.(Farmingdale、NY、USA)から購入し、ヒト組み換え活性ADAM9及びADAM10を、R&D Systems(Minneapolis、MN、USA)から購入した。蛍光発生基質のMOCAc−Pro−Leu−Gly−Leu−A2pr(Dnp)−Ala−Arg−NH
2を(MMP−2、MMP−7、MMP−9及びMMP−14のために)、MOCAc−Arg−Pro−Lys−Pro−Val−Glu−Nva−Trp−Arg−Lys(Dnp)−NH
2を(MMP−3のために)、Peptides International(Louisville、KY、USA)から購入し、Mca−KPLGL−Dpa−AR−NH
2を(MMP−1、MMP−8及びADAM10のために)、Mca−PLAQAV−Dpa−RSSSR−NH
2を(ADAM9のために)、R&D Systems(Minneapolis、MN、USA)から購入した。MMP−2、MMP−9及びMMP−14のK
m値は、Gooyit et al.,J.Med.Chem.2013,56,8139−8150により以前に報告されたとおりであった。阻害剤貯蔵溶液(10mM)は、酵素阻害アッセイの前に、DMSOにより新に調製した。本発明者たちは、Page−McCaw et al.(Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2007,8,221−233)により報告された酵素阻害研究と同じ方法に従った。酵素阻害研究は、キャリー・エクリプス(Cary Eclipse)蛍光分光光度計(Varian、Walnut Creek、CA、USA)を使用して実施した。化合物4、5、6及び7は、速度論的アッセイに使用した緩衝液中で安定していた。
【0246】
コンピューター分析。MMP−2のタンパク質座標は、本発明者たちの以前のQM/MM研究(Zhou et al.,J.Chem.Theory Comput.2010,6,3580−3587)から得た。MMP−9及びMMP−14の座標は、Protain Data Bank(1GKC及び3MA2それぞれのPDBコード)からダウンロードし、Protein Preparation Wizard via Maestro v9.3.5(Schrodinger LLC、Portland、OR、USA)を使用して調製した。化合物は、LigPrep v2.55を使用して調製した。MMPの触媒部位への化合物の分子ドッキングは、チイラン基の1−Åコア拘束を実施するGlide v5.8により実施し、Standard Precision(Friesner et al.,J.Med.Chem.2004,47,1739−1749)によりスコア付けした。
【0247】
動物。マウス(雄CD−1、6〜7週齢、体重約30g、特定病原体除去)を、Charles River Laboratories,Inc.(Wilmington、MA、USA)から購入した。マウスにはTeklad 2019 Extruded Rodent Diet(Harlan、Madison、WI、USA)を給餌し、水を適宜供給した。動物を、Bed−o’Cobs 1/4”(The Andersons Inc.、Maumee、OH)/Alpha−dri(Sheperd Specialty Papers,Inc.、Richland、MI)寝床を含有するポリカーボネートの靴箱型ケージに、12時間の明/12時間の暗のサイクルにより72±2°Fで収容した。
【0248】
動物への投与及び試料収集。化合物4、5、6及び7を1.25mg/mLの濃度で液剤として処方した。化合物4、5及び7を水73%/プロピレングリコール20%/DMSO 7%に溶解した。化合物6を水61%/プロピレングリコール27%/DMSO 12%に溶解した。マウスに、化合物4、5、6又は7の単回120μLのiv用量を与えた(5mg/kgに相当、n=時点あたり3匹)。Gooyit et al.(J.Med.Chem.2013,56,8139−8150)により報告されたとおりの、投与液剤の滅菌、並びに血漿及び脳の両方の収集手順。
【0249】
試料分析。血漿及び脳試料の調製手順、並びに定量化分析用の較正曲線は、Gooyit et al.(J.Med.Chem.2013,56,8139−8150)により記載されたとおりであった。試料を、逆相C18カラム(アクレイム(Acclaim)(登録商標)RSLC 120 C18、2.2μm、120Å、2.1×100mm、Dionex、Sunnyvale、CA、USA)を用いる超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)/(+)エレクトロスプレーイオン化(ESI)多重反応モニタリング(MRM)により分析した。クロマトグラフィー及び質量分析条件は、以下を除いてGooyit et al.(J.Med.Chem.2013,56,8139−8150)により以前に報告されたとおりであった。キャピラリー電圧、コーン電圧、エクストラクター電圧及びRFレンズ電圧を、それぞれ、4.6kV、25V、3V及び0.1Vに設定し、コーンガス流速を50L/時間(窒素)に設定した。MRMトランジションは、4では404→209、5では319→182、6では378→182、7では364→227及び内部基準19では300→93であった。
【化14】
血漿及び脳における化合物の定量化は、化合物と内部基準とのピーク面積の比及び較正曲線から得た線形回帰パラメーターを使用して得た。決定係数(R
2)は、>0.99であり、アッセイは、100μMの濃度まで線形であった。
【0250】
薬物動態パラメーター。表3に提示されている薬物動態パラメーターの計算方法は、Gooyit et al.(J.Med.Chem.2013,56,8139−8150)により報告されたとおりである。
【0251】
実施例2.外傷性脳傷害療法、神経疾患及び創傷治癒療法における選択的な水溶性の遅延阻害マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤
外傷性脳傷害(TBI)は、持続性の認知欠陥により特徴付けられる慢性疾患過程をもたらしうる一次及び二次障害により引き起こされる、壊滅的な疾患である。この疾患過程は、数か月から数年後に脳細胞損傷及び細胞死をもたらす、生化学的変化から出発する。マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)は、二次障害をもたらす事象の生化学的カスケードの上位にある。本発明者らは、MMP−9の選択的阻害が、TBIからもたらされる二次損傷を減弱することを示した。本発明者らは、TBIの治療領域における治療上の必要性に対処するため、水溶性の選択的MMP−9阻害剤を作り出した(表2.1)。化合物のND−336及びND−378は、血液脳関門を通過し、脳に治療濃度を達成する(
図5)。
【0252】
【表6】
【0253】
ゼラチナーゼ(マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−2及び9)は、多くの神経疾患の病理において、及び創傷治癒において重要な役割を果たす。神経疾患の治療用の治療薬の開発における大きな課題は、>98%の小分子薬物が、血液脳関門(BBB)を通過する及び脳内に治療濃度を達成する能力が無いことである。
【0254】
SB−3CT(化合物1)は、ゼラチナーゼに選択的に遅延結合する強力な阻害剤であり、神経疾患の動物モデルにおいて効力を示す。しかしこの化合物は、水溶性が乏しい。本発明者たちは、p−アミノメチルオキサジアゾール(4)、p−アミノメチル(5、ND−336)、p−アセトアミドメチル(6、ND−378)及びp−グアニジノ(7)化合物を化合物1に対する改善として合成し、評価した。化合物は、1よりも10〜14,000倍の水溶性があり、MMP−2に対して遅延結合性阻害挙動を保持し、BBBを通過する。
【0255】
p−アセトアミドメチル類似体(化合物6)は、MMP−2の選択的ナノモル遅延結合性阻害剤であり、密接に関係するMMP−9又はMMP−14を阻害しない。標的MMP−2からの化合物6の解離が遅いため(MMP−2に結合した6の滞留時間は、18.2±0.4分である)、6の濃度がK
i値を下回っても、MMP−2の持続的阻害をもたらす。この阻害剤は、治療介入にとって及び神経疾患におけるMMP−2の役割についての調査にとって有用なツールである。p−アミノメチル誘導体(化合物5)は、MMP−2、MMP−9及びMMP−14の水溶性ナノモル遅延結合性阻害剤であり、MMPを調節する目的で進化したタンパク質インヒビターである、MMP−9に結合したメタロプロテイナーゼ1又は2の組織阻害剤(TIMP−1又はTIMP−2)より6〜7倍長い阻害滞留時間を、これらの酵素に対して有する。
【0256】
慢性創傷は、糖尿病の合併症である。本発明者らは、MMP−9が、創傷治癒に有害であり、一方、MMP−8が創傷の修復に関わることを以前に示した。p−アミノメチル化合物のND−336は、p−アミノ化合物のND−322よりも良好な選択性をMMP−8に対して有する(表2.2)。糖尿病性創傷治癒のマウスモデルを伴う実験において、ND−336は、ND−322よりも有意に良好な効力を示した(
図3及び4)。
【0257】
ND−366は、SB−3CTよりも>2,000倍多くの水溶性があり、MMP−9の阻害に対してSB−3CTよりも4倍高い効力があり、BBBを通過し、脳内に治療濃度を達成する。更に、本発明者らは、MMP−9がタウを切断すること及びND−336がタウの切断を防止することを示した(
図6)。切断されたタウは、外傷性脳傷害(TBI)後の慢性神経変性をもたらす可能性があり、アルツハイマー病及び慢性外傷性脳症の病理において重要な役割を果たすので、ND−336を使用して、TBI後の認知機能不全を反転させることができる。
【0258】
【表7】
【0259】
ND−378も、選択的MMP−2阻害剤であり、BBBも通過する。癌におけるMMPの役割を確定する最近の努力は、MMP−2の発現の増加を、侵襲性の乳癌、悪性前立腺癌、膵癌、胃癌、脳転移及び黒色腫、並びに肺癌脳転移と関連づけた。MMP−2を発現する腫瘍は、脳−腫瘍界面において血管系を増加させ、MMP−2が、中枢神経系内の侵襲及び血管化の向上において役割を果たすことを示している。したがって、選択的MMP−2阻害を、脳転移の治療のための標的療法とすることができる。
【0260】
実施例3.MMP−9は有害であり、MMP−8は有益であり、MMP−2は糖尿病性創傷に関わらない
真性糖尿病の発生率は増加している。2010年には、米国の人口の8.3%が糖尿病を有していた(およそ2千5百80万人のアメリカ人)。2年後には、率は9.3%に増加した(2千9百10万人)。糖尿病の合併症は、創傷を治癒する能力が無いことであり、その結果、手足の非外傷性切断の60%超が、糖尿病を有する個人において発生している。下肢切断の数は、2006年には65,700件であり、2010年には73,000件に増加した。
【0261】
創傷治癒は4つの段階:止血、炎症、増殖及び再構築を伴う。止血の際、血管は収縮され、フィブリン塊が形成される。フィブリン塊は、炎症促進性サイトカイン及び増殖因子を放出し、その後に好中球、マクロファージ及びリンパ球の浸潤が続く。好中球は、反応性酸素種及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を放出し、一方、マクロファージは、アポトーシス細胞を誘発する。アポトーシス細胞が排除されると、再上皮化を促進するように血管新生が刺激される。コラーゲンと共に細胞外マトリックス(ECM)構成成分が産生され、再構築及び創傷閉鎖をもたらす。この過程におけるいかなる混乱、異常又は延長も、創傷治癒の遅延又は慢性創傷をもたらす。
【0262】
MMPは、亜鉛依存性であり、ECMを分解する26個のプロテイナーゼのファミリーある。MMPは、創傷治癒、過剰ECMの切断に重要な役割を果たし、また、ケモカイン及びサイトカインをタンパク質分解的に処理する。通常、MMP活性は、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)との複合体形成により調節される。しかし、慢性創傷では、MMP活性は調節不全になっており、上昇したMMP濃度は、ECMの過剰な分解に寄与し、創傷治癒過程の失速をもたらす。
【0263】
本発明者らは、糖尿病マウスの創傷におけるMMP−8及びMMP−9の確認について最近報告している(Gooyit et al.,ACS Chem.Biol.2014,9,505−510)。本発明者らは、MMP酵素前駆体及びTIMP複合型MMPを除外するため、活性MMPのみに結合する阻害剤連結樹脂を使用した。この樹脂を使用して、本発明者らはMMP−2を検出しなかったが、ゼラチン酵素電気泳動により活性MMP−2バンドを観察し、このことは、MMP−2がTIMPと複合体化していることを示唆している。MMP−2及びMMP−9は、糖尿病患者及び糖尿病マウスの創傷において報告されている。これらの研究では、ゼラチナーゼの量を、ELISA、ゼラチン酵素電気泳動、mRNA及びウエスタンブロットによって決定した。しかし、これらの方法は活性ゼラチナーゼとTIMP複合型ゼラチナーゼ(不活性形態)とを区別することができなかった。ドデシル硫酸ナトリウムをゼラチン酵素電気泳動に使用し、このことは不活性TIMP−MMP複合体を変性させ、活性MMPバンドの出現をもたらす。このように、糖尿病患者及び糖尿病マウスの創傷において報告されたMMP−2は、実際、TIMPと複合体形成した不活性MMP−2でありうる。
【0264】
本発明者らは、選択的MMP−2阻害剤(化合物1X)を設計及び合成した。この化合物は、440±60nMのK
i値を有する遅延結合性阻害剤としてMMP−2を阻害し、MMP−8(K
i=17,000±2,000nM)及びMMP−9(50,000nMで28%阻害)を含む他のMMPを弱くに阻害する又は阻害しない(Gooyit et al.,J.Med.Chem.(2013)56,8139−8150)。MMP−2に結合した化合物1Xの滞留時間は、24.5分であり、これは、MMP−2に結合したTIMP−1及びTIMP−2それぞれの滞留時間の6.9分及び10.4分より有意に長い。したがって、化合物1Xは、MMP−2の阻害においてTIMPより有効である。
【化15】
【0265】
本発明者らは、化合物1Xを使用して、糖尿病性創傷治癒に対するMMP−2を阻害する効果を決定した。MMP−2阻害剤治療群及びビヒクル群において有意な差は観察されなかった(7日目:23±16%対18±21%、n=12、p=0.7;10日目:45±11%対50±11%、n=6、p=0.5;14日目:70±15%対75±9%、n=6、p=0.5、
図7a及び7b)。部分的な再上皮化は、MMP−2阻害剤治療群及びビヒクル治療群の両方において観察された(
図7c)。したがって、MMP−2の選択的阻害剤は、糖尿病性創傷治癒において効果を有さない。この研究は、MMP−2が糖尿病性創傷治癒において役割を果たさないことを確認した。残念ながら、糖尿病性創傷治癒におけるMMP−2の役割は、MMP−2ノックアウトマウスによる研究によって確認することができない。これは、MMP−2の破壊がMMP−9の代償的増加をもたらし、この方法によるMMP−2の役割の確認を難しくしているからである。
【0266】
本発明者らは、MMP−9が糖尿病性創傷治癒にとって有害であることを、選択的化学阻害により以前に示している(Gooyit et al.,J.Med.Chem.(2013)56,8139−8150)。糖尿病性創傷治癒におけるMMP−9の有害な役割を確認するため、本発明者たちはMMP−9ノックアウトマウスを使用した。ストレプトゾトシンにより動物に糖尿病を誘発した。ストレプトゾトシンは膵臓のインスリン産生ベータ細胞にとって毒性が高く、1型糖尿病の動物モデルを生じる(Szkudelski,Physiol.Res.(2001)50,537−546)。ストレプトゾトシン治療(腹腔内に与えられた150mg/kg)は、2週間で確実に糖尿病を誘発し、空腹時血中グルコース濃度の>300mg/dLにより確認された。対照と同じ背景の野生型マウスにおいても、ストレプトゾトシンにより糖尿病を誘発した。MMP−9ノックアウトと野生型のストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスの創傷治癒における有意な差が、7日目に観察された(76±14%対58%±24%、n=14、p=<0.05、
図8a及び8b)。14日目には、MMP−9ノックアウトの創傷閉鎖は、野生型マウスよりも低かったが、統計学的に有意ではなかった(95±6%対89±9%、n=7、p=0.15、
図8a)。部分的な再上皮化が野生型ストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスにおいて見られたが(
図8b、右上)、再上皮化は、MMP−9ノックアウトストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスでは完了していた(
図8b、右下)。インサイツゼラチン酵素電気泳動からは、蛍光強度の顕著な減少により明白なように、MMP−9ノックアウトマウスの創傷においてゼラチナーゼ活性がないことが示された(
図8c、左下)。まとめると、本発明者らは、MMP−9の遺伝子破壊は、糖尿病マウスにおいて創傷治癒を加速すると結論付ける。これらの結果は、MMP−9が創傷治癒に有害であることを確認した。
【0267】
本発明者らは、糖尿病性及び非糖尿病性の両方の創傷における活性MMP−8及びMMP−9を確認するため、独自の汎用阻害剤連結樹脂を使用し、後者の濃度が、糖尿病性創傷のみにおいて統計的に有意なレベルに上昇したことを示した。MMP−9は糖尿病性創傷の治癒に有害であるが、MMP−8は、有益な効果を果たす可能性があるという仮説のもとで研究を進め、本発明者らは、ND−322を使用してMMP−9を選択的に阻害した。糖尿病性創傷は、創傷の再上皮化を伴う過程においてより迅速に治癒し、野生型マウスにおける非糖尿病性創傷の場合も同様である。加えて、アポトーシスは有意に減弱された。本発明者らは、また、選択的MMP−8阻害剤を使用し、糖尿病性創傷の治癒が、再上皮化の減少及び減少されないアポトーシスを伴って、遅延されたことを示した。本研究は、糖尿病性創傷の治癒におけるMMP−9の選択的阻害の有益な効果を明らかにしている。選択的阻害剤ND−322の使用は、非糖尿病性創傷に対して、有害な効果も有益な効果も含めて何らの効果も示さないが、ラット、ブタ及びヒトの非糖尿病性創傷における広域性MMP阻害剤のイロマスタット(GM−6001としても知られている)の使用が、創傷閉鎖を遅延し、上皮化を減少させたことは、興味深いことである。これらの知見は、「良い」及び「悪い」MMPを広く同時に阻害することが、創傷治癒過程に有害であることを明らかにしている。糖尿病性創傷の臨床管理は、現在、創傷の壊死組織除去、及び創傷を清浄及び無感染に保つ試みのみを伴う。本明細書に開示されている選択的MMP−9阻害戦略は、糖尿病性創傷の治療における最初の潜在的な薬理学的介入であり、未だ満たされていない医療上の必要性に対処するのに大いに有望である。
【0268】
方法
化合物1xの合成。選択的MMP−2阻害剤(化合物1)を、以前に記載された本発明者らの方法(Gooyit et al.,J.Med.Chem.(2013)56,8139−8150)により調製し、DMSO 20%/プロピレングリコール80%に5.0mg/mLの濃度で溶解した。投与溶液及び対応するビヒクル溶液を、アクロディスク(Acrodisc)シリンジフィルター(Pall Life Sciences)に接続した0.2μmで直径が13mmのPTFE膜に通して滅菌した。
【0269】
動物。雌マウスをJackson Laboratoryから得て、実験5001齧歯類食(Laboratory 5001 Rodent Diet)(PMI)及び水を適宜提供した。マウスを、硬材寝床を有するポリカーボネートの靴箱型ケージに72±2°F及び12:12時間の明/暗サイクルで保持した。
【0270】
マウスの糖尿病性創傷モデル。Sullivan et al.により評価された、切除によるマウス糖尿病モデルを使用した(Sullivan et al.,Plast.Reconstr.Surg.(2004)113,953−960)。創傷(背部への単独の8mm創傷)を与える手順は、以前に記載されたもの(Gooyit et al.,ACS Chem.Biol.(2014)9,505−510)と同じであった。創傷を撮影し、滅菌3Mテガダーム(Tegaderm)(登録商標)透明包帯(Butler Schein Animal Health,Inc.)で覆った。
【0271】
MMP−2阻害剤研究。雌糖尿病db/db(BKS.Cg−Dock7m+/+Leprdb/J、8週齢、38±3g、n=24)をこの研究に使用した。創傷を記載されたように与えた。MMP−2阻害剤(プロピレングリコール80%/DMSO 20%中5.0mg/mLの50μL、創傷1つあたり0.25mgに相当)又はビヒクル(プロピレングリコール80%/DMSO 20%の50μL)による治療を、創傷を与えた1日後から開始し、1日1回で14日間にわたって続けた。創傷のデジタル写真を0、7、10及び14日目に撮り、その間、動物をイソフルラン麻酔下に置いた。14日目に、全てのマウスを殺処分した。創傷を切り取り、最適切断温度(OCT)化合物に包埋し、組織学的評価のために凍結切片にした。
【0272】
MMP−9ノックアウト研究。雌MMP−9ノックアウトマウス(B6.FVB(Cg)−Mmp9
tm1Tvu/J、8週齢、19±2g、n=14)及び野生型マウス(C57BLKS/6J、8週齢、19±2g、n=14、MMP−9ノックアウトマウスと同じ背景)を使用した。マウスを、研究を開始する前に、1週間にわたって研究室に順化させた。糖尿病を、ストレプトゾトシン(Sigma)の150mg/kgでの腹腔内注射により誘発した。ストレプトゾトシンを100mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に溶解し、調製後の15分以内に投与した。ストレプトゾトシン治療の後、マウスを使い捨てケージに収容し、飲用のために10%スクロース水を2日間与えた。空腹血中グルコース濃度を、ストレプトゾトシン治療の2日後に決定した。300mg/dLを超えた血中グルコースを有する動物を、糖尿病と考慮した。300mg/dL未満の血中グルコースを有する動物は、第二用量のストレプトゾトシンを1週間後に受けた。創傷を記載されたように与え、デジタル写真を0、7及び14日目に撮った。マウス(n=1群あたり7匹)を、7及び14日目に殺処分し、創傷を切り取り、OCT化合物に包埋し、組織学的評価のために凍結切片にした。
【0273】
ムス・ムスクルスのMMP−8のクローニング、精製及び速度論的分析。MMP−8の触媒ドメイン(304−852bp)を、エシェリキア・コリ(大腸菌)における発現に最適化し、5’及び3’末端でそれぞれ遺伝子に隣接する独自のNdeI及びXhoI制限部位を有するよう、ジェンスクリプト(GenScript)(Piscataway、NJ)によって合成された。次に遺伝子をベクターpET28aにクローニングした。コンストラクトをエシェリキア・コリのDH5αに形質転換し、抽出プラスミドのNdeI及びXhoI二重消化を使用して正確な挿入を確認し、両方のDNA鎖の配列決定により更に確認した。組み換えMMP−8の精製手順は、以前に公表された方法(Tkalcevic et al.,Toxicol.Pathol.(2009)37,183−192)を変更した。確認されたコンストラクトをエシェリキア・コリのBL21(DE3)細胞に形質転換した。MMP−8の発現を、0.5mMのイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシドの20℃での添加によって誘発した。細胞を20時間後に採取し、緩衝液A(200mMのNaCl、20mMのHEPES、pH7.5)に再懸濁し、氷上で超音波処理した。溶解細胞を、20,000gで5分間遠心分離した。ペレットを緩衝液Aで穏やかに洗浄して、細胞片を除去し、緩衝液Aに再懸濁し、20,000gで30分間遠心分離し、緩衝液B(6Mの尿素、50mMのTris(pH8.5)、5μMのZnCl
2)に再懸濁した。未溶解細片を20,000gで30分間の遠心分離により除去した。上澄みを、緩衝液Bで平衡化したQセファロース(Sepharose)カラムに装填した。0から1MのNaClの直線勾配を使用して、タンパク質を溶出した。所望のタンパク質の画分をプールし、タンパク質を280nmで0.3の吸光度に希釈すること、並びに尿素の濃度を6Mから8M及びZnCl
2の濃度を5μMから50μMに増加することによって、透析用に調製した。
【0274】
3ステップの透析を実施した。透析は、第1に、タンパク質と緩衝液C(50mMのTris(pH8.0)、200mMのNaCl、100mMのグリシン、10mMのCaCl
2、3mMのNaN
3、50μMのZnCl
2)の1:5において2回実施し、次に、2Lの緩衝液D(50mMのTris(pH7.5)、10mMのCaCl
2)において実施した。タンパク質溶液を、マクロセップ(Macrosep)(登録商標)遠心分離フィルター(Pall Life Sciences)で濃縮した。タンパク質の純度はSDS−PAGEにより≧95%であると決定された(
図11)。酵素濃度は、プロットパラム(ProtParam)(Gasteiger et al.,Protein identification and analysis tools on the ExPASy Server,in The Proteomics Protocols Handbook,2005,Walker,J.M.,Ed.,pp 571−607,Humana Press)により推定された消衰係数(Δε
280=19681.6M
−1cm
−1)を使用して、分光光度的に評価した。濃縮タンパク質のアリコートを、50mMのTris(pH7.5)、5mMのCaCl
2、300mMのNaCl、20μMのZnCl
2、0.5%(w/v)のBrij−35、30%のグリセロールに−80℃で貯蔵した。
【0275】
MMP−8と蛍光発生基質のMca−KPLGL−Dpa−AR−NH2(R&D Systems)との反応のK
m、k
cat及びV
maxの値を、反応緩衝液(50mMのTris(pH7.5)、10mMのCaCl
2、150mMのNaCl、0.05%(w/v)のBrij−35)で評価した。基質を、DMSO中の1mM貯蔵溶液として調製した。基質の加水分解を、キャリー・エクリプス蛍光分光光度計(Varian)を用いて、325nmでの励起及び393nmでの蛍光をモニターした。標準曲線を、較正のために、完全に加水分解された基質の様々な濃度で構築した。初期速度は、時間に対する蛍光のプロットから得た。これらのプロットからの勾配を、完全な加水分解に対応する蛍光変化により割り、次に基質濃度を掛けて、秒の単位(s
−1)で初期速度を得た。パラメーターk
cat及びK
mを、ミカエリスメンテン式を使用して、基質の様々な濃度での初期速度の非線形あてはめにより決定した。速度論的分析は、K
m=4.5±0.5μM、V
max=1.07±0.03nM s
−1、k
cat=0.54±0.02s
−1、k
cat/K
m=1.19×10
5M
−1s
−1、活性=926pmol/分/μgをもたらした。精製されたMMP−8の触媒効率は、他の市販のMMPと比較して高かった。
【0276】
外因性MMP−8の研究。雌糖尿病db/db(BKS.Cg−Dock7m+/+Leprdb/J、8週齢、38±3g、n=24)をこの研究に使用した。創傷を与え、翌日に創傷を、MMP−8(反応緩衝液中20μg/mLのMMP−8の50μL)又はビヒクル(50μLの反応緩衝液)により1日1回で14日間局所的に治療した。反応緩衝液は、50mMのTris(pH7.5)、10mMのCaCl
2、150mMのNaCl及び0.05%(w/v)のBrij−35からなった。創傷のデジタル写真を0、7、10及び14日目に撮り、その間、動物をイソフルラン麻酔下に置いた。7及び14日目に12匹のマウス(n=1群あたり6匹)を殺処分した。創傷を切り取り、OCT化合物に包埋し、組織学的評価のために凍結切片にした。
【0277】
創傷測定。写真を、Gooyit et al.(ACS Chem Biol.(2014)9,505−510)により記載された手順を使用して、創傷の上方の固定距離から撮り、写真フレームに含まれた定規を使用して較正した。イメージ(Image)J 1.48cソフトウエアを使用して、創傷面積を計算した。創傷閉鎖の率を、0日目に対する特定の日の創傷面積から計算した。
【0278】
組織学的評価、アポトーシスの検出及びインサイツ酵素電気泳動。新たな創傷組織を採取し、OCT化合物に包埋した。続いて、組織をH&E染色のために凍結切片(厚さ12μm)にし、アポトーシスアッセイ及びインサイツ酵素電気泳動のために凍結切片(厚さ8μm)にした。再上皮化を、ニコン・エクリプス(Nikon Eclipse)90i蛍光顕微鏡(Nikon Instruments Inc.)により、以前に記載されたように評価した(Tkalcevic et al.,Toxicol.Pathol.(2009)37,183−192)。アポトーシスは、製造会社の使用説明書に従ってダーマ(Derma)TACSTMアポトーシス検出キット(Trevigen,Inc.)を使用し評価した。インサイツ酵素電気泳動のプロトコールを既知の方法から構成した。ゼラチン溶解活性は、DQ−ゼラチンを基質として使用した非固定クリオスタット切片において検出した。DQ−ゼラチンは、Tris緩衝生理食塩水(TBS)緩衝液(50mMのTBS、pH7.6、1mMのCaCl
2)に20μg/mLの濃度で調製した。0.5mMのEDTA中の一般的なMMP阻害剤を、陰性対照として調製した。クリオスタット切片を10分間空気乾燥し、EDTAの存在下及び非存在下で基質混合物中において室温で1時間インキュベートした。インキュベーション時間の後、スライドをPBS(3回、各5分間)で洗浄し、PBS中4%のパラホルムアルデヒドで10分間暗黒中で固定し、PBS(3回、各5分間)で再び洗浄し、300nMのDAPI溶液と共に暗黒中で5分間インキュベートし、非消光装填培地(anti−quenching mounting medium)により装填した。FITCの蛍光を460〜500nmでの励起及び512〜542nmでの蛍光によって検出した。DAPIを340〜380nmでの励起及び425〜∞nmでの蛍光によって検出した。
【0279】
統計分析。データは、平均±SDで表される。研究群間の創傷治癒について、対応スチューデントt検定を使用して統計的有意性について分析し、p<0.05は、統計的に有意であると考えた。
【0280】
実施例4.医薬剤形
以下の製剤は、本明細書に記載されている式の化合物、本明細書に特定的に開示されている化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物(以下、「化合物X」と呼ぶ)の治療のための又は予防のための投与に使用することができる代表的な医薬剤形を説明する。
【0281】
(i)錠剤1 mg/錠
「化合物X」 100.0
ラクトース 77.5
ポビドン 15.0
クロスカルメロースナトリウム 12.0
微晶質セルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム
3.0
300.0
【0282】
(ii)錠剤2 mg/錠
「化合物X」 20.0
微晶質セルロース 410.0
デンプン 50.0
デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate) 15.0
ステアリン酸マグネシウム
5.0
500.0
【0283】
(iii)カプセル剤 mg/カプセル
「化合物X」 10.0
コロイド状二酸化ケイ素 1.5
ラクトース 465.5
アルファ化デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム
3.0
600.0
【0284】
(iv)注射剤1(1mg/mL) mg/mL
「化合物X」(遊離酸形態) 1.0
第二リン酸ナトリウム(Dibasic sodium phosphate)
12.0
第一リン酸ナトリウム(Monobasic sodium phosphate)
0.7
塩化ナトリウム 4.5
1.0N水酸化ナトリウム溶液 十分量
(pHを7.0〜7.5に調整)
注射剤用水 1.mLにする十分量
【0285】
(v)注射剤2(10mg/mL) mg/mL
「化合物X」(遊離酸形態) 10.0
第一リン酸ナトリウム 0.3
第二リン酸ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
0.1N水酸化ナトリウム溶液 十分量
(pHを7.0〜7.5に調整)
注射剤用水 1mLにする十分量
【0286】
(vi)エアロゾル剤 mg/缶
「化合物X」 20
オレイン酸 10
トリクロロモノフルオロメタン 5,000
ジクロロジフルオロメタン 10,000
ジクロロテトラフルオロエタン 5,000
【0287】
(vii)局所ゲル剤1 wt%
「化合物X」 5%
カルボマー934 1.25%
トリエタノールアミン 十分量
(pHを5〜7に調整)
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにする十分量
【0288】
(viii)局所ゲル剤2 wt%
「化合物X」 5%
メチルセルロース 2%
メチルパラベン 0.2%
プロピルパラベン 0.02%
精製水 100gにする十分量
【0289】
(ix)局所軟膏剤 wt%
「化合物X」 5%
プロピレングリコール 1%
無水軟膏基剤 40%
ポリソルベート80 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにする十分量
【0290】
(x)局所クリーム剤1 wt%
「化合物X」 5%
白ロウ 10%
流動パラフィン 30%
ベンジルアルコール 5%
精製水 100gにする十分量
【0291】
(xi)局所クリーム剤2 wt%
「化合物X」 5%
ステアリン酸 10%
モノステアリン酸グリセリン 3%
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 3%
ソルビトール 5%
パルミチン酸イソプロピル 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにする十分量
【0292】
これらの製剤は、医薬技術において周知の従来の手順によって調製することができる。上記の医薬組成物は、異なる量及び種類の活性成分「化合物X」に適応するように周知の薬学的技術に従って変わりうることが、理解される。エアロゾル製剤(vi)を、標準的な定量エアロゾル分配器と共に使用してもよい。加えて、特定の成分及び割合は、説明の目的のためである。成分を適切な同等物に交換してもよく、割合を、目的の剤形の望ましい特性に従って変えてもよい。
【0293】
特定の実施形態が、開示されている実施形態及び実施例を参照して上記に記載してきたが、そのような実施形態は、説明のみのためであり、本発明の範囲を制限しない。変更及び修正は、以下の特許請求の範囲に定義されている本発明の広義の態様から逸脱することなく、当業者が行うことができる。
【0294】
全ての出版物、特許及び特許文献は、まるで個別に参照により組み込まれるかのように、本明細書に参照により組み込まれる。それらからは、本開示に一致しないいかなる制限も読み取るべきでない。本発明は多様な特定の好ましい実施態様及び技術を参照して記載してきた。しかし、本発明の精神及び範囲内に留まりながら、多様な変更及び修正を行ってもよいことは理解されるべきである。
【0295】
[関連する出願]
本出願は、2014年2月20日出願の米国仮特許出願第61/942.516号及び2014年12月5日出願の同第62/088,380号に基づく優先権を米国特許法119条(e)に基づいて主張し、これらの出願は、参照により組み込まれる。