特許第6521999号(P6521999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6521999骨空洞から骨セメントを取出すための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6521999
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】骨空洞から骨セメントを取出すための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/88 20060101AFI20190520BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20190520BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20190520BHJP
   A61B 17/72 20060101ALI20190520BHJP
   A61B 17/74 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   A61B17/88
   A61F2/46
   A61F2/38
   A61B17/72
   A61B17/74
【請求項の数】26
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-556856(P2016-556856)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公表番号】特表2017-507738(P2017-507738A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】IB2014066385
(87)【国際公開番号】WO2015136342
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】VR2014A000059
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】509072320
【氏名又は名称】テクレス・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】TECRES S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファッチョーリ,ジョバンニ
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−012317(JP,A)
【文献】 米国特許第05078718(US,A)
【文献】 特開平06−225895(JP,A)
【文献】 特表2011−521718(JP,A)
【文献】 米国特許第04702236(US,A)
【文献】 特開平4−212351(JP,A)
【文献】 特表平4−501223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72,17/74,17/88
A61F 2/38, 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨空洞(C)から骨セメントを除去するためのモジュール式取出し装置(1)であって、
中心対称軸(X−X)を有する細長状本体(2)と、
使用時に前記骨空洞(C)の開口部に配置される近位端部(2a)と、
使用時に前記骨空洞(C)の最も奥の部分に配置される遠位端部(2b)とを備え、
前記細長状本体(2)は、少なくとも部分的に内部が中空であって、骨セメントが充填された前記骨空洞(C)に挿入されるのに好適であり、
前記細長状本体(2)は、前記細長状本体(2)の前記軸(X−X)と同軸の複数の剛性要素(3,3a,3b,3c)を含み、前記剛性要素は少なくとも部分的に中空であって共にまたは互いに対して拘束し合っており、隣接して連続する少なくとも2つの剛性要素(3,3a,3b,3c)は、第1の主要部(6)と、第2の主要部(7)と、フランジ(8)とを含むことを特徴とし、
前記少なくとも2つの剛性要素(3,3a,3b,3c)のうち少なくとも1つの剛性要素(3,3a,3b,3c)の主要部(6,7)が、前記少なくとも2つの剛性要素(3,3a,3b,3c)のうち他の剛性要素(3,3a,3b,3c)の主要部(6,7)の内部に挿入されて適所に保持されるように、少なくとも前記第1の主要部(6)は長手軸方向のポートまたは開口(9)を規定している、モジュール式取出し装置(1)。
【請求項2】
前記第1の主要部(6)と前記第2の主要部(7)とのうち少なくとも1つは、外形断面が略円形である略円筒形の形状または外形断面が略多角形である略角柱形の形状を有し、
前記外形断面は幅または直径(d’,d’’)を有する、請求項1に記載の取出し装置。
【請求項3】
前記フランジ(8)は略円盤形または略角柱形の形状を有し、および/または、前記フランジ(8)は、前記細長状本体(2)の前記軸(X)に対して横方向に外側に向かって突出している、請求項1または2に記載の取出し装置。
【請求項4】
前記フランジ(8)の幅または直径(D)は、前記第1の主要部(6)および/または前記第2の主要部(7)の幅または直径(d’,d’’)よりも大きい、先行する請求項に記載の取出し装置。
【請求項5】
前記細長状本体(2)は、前記細長状本体(2)の前記遠位端部(2b)に配置された端部要素(30)を含み、前記端部要素(30)は、第1の主要部(6)と、フランジ(8)と、略円錐形または略ピラミッド形の形状を有する先端部(31)とのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の取出し装置。
【請求項6】
前記長手軸方向のポートまたは開口(9)の幅または直径(d’’’)は、外形幅または直径または外形横方向大きさ(d’’)と比べてわずかに大きいか、または略等しく、および/または、前記長手軸方向のポートまたは開口(9)の長手方向大きさは、前記第1の剛性要素に隣接する次のまたは隣接する前の第2の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第2の主要部(7)の長手方向大きさと比べてわずかに大きいか、または略等しく、それによって、前記第2の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第2の主要部(7)を前記第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記軸方向のポートまたは開口(9)内にぴったりと挿入することが可能になる、請求項1に記載の取出し装置。
【請求項7】
前記端部要素(30)および/または前記端部要素(30)の少なくとも前記第1の主要部(6)は、前記端部要素(30)に隣接する前の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第2の主要部(7)の外形幅または直径または外形横方向大きさ(d’’)および/または長手方向大きさと比べてわずかに大きいか、または略等しい幅または直径(d’’’)を有する、長手軸方向のポートまたは開口(9)を含み、それによって、剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第2の主要部(7)を前記端部要素(30)の前記軸方向のポートまたは開口(9)内にぴったりと挿入することが可能になる、請求項5に記載の取出し装置。
【請求項8】
前記ポートまたは開口(9)の形状は、前記第2の主要部(7)の形状に略対応し、
第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第2の主要部(7)は、使用時に、別のまたは次の剛性要素(3,3a,3b,3c)の、または端部要素(30)の前記ポートまたは開口(9)内に収容されて適所に拘束されることが可能である、請求項6または7に記載の取出し装置。
【請求項9】
前記第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記フランジ(8)は、前記第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第1の主要部(6)と前記第2の主要部(7)との中間部に配置され、前記別のまたは次の剛性要素(3,3a,3b,3c)の、または前記端部要素(30)の前記第1の主要部(6)の自由縁部(20)に対して当接している、請求項に記載の取出し装置。
【請求項10】
前記第2の主要部(7)は、自由端部と、前記第1の主要部(6)に接する別のまたは第2の端部とを含み、前記第1の主要部(6)は、前記第2の主要部(7)の反対側に位置付けられた自由縁部を含み、
前記第1の主要部(6)の前記自由縁部は、フランジ付きである、または横方向に外側に向かって突出しているフランジ(8)を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の取出し装置。
【請求項11】
前記第2の主要部(7)と前記第1の主要部(6)との間に肩部または当接面(22)があり、
前記第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第1の主要部(6)の前記フランジ付き自由縁部または前記フランジ(8)は、前記次のまたは隣接する剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記肩部または当接面(22)に対して当接している、請求項10に記載の取出し装置。
【請求項12】
前記取出し装置(1)は前記細長状本体(2)の取出しシャフト(10)を含み、
前記取出しシャフト(10)は、使用時に、前記細長状本体(2)の少なくとも一部に沿って、および/または、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)の、および前記端部要素(30)の前記ポートまたは開口(9)に沿って挿入可能である、請求項に記載の取出し装置。
【請求項13】
前記剛性要素(3,3a,3b,3c)および/または前記端部要素(30)は、前記取出しシャフト(10)に取外し可能に係合されるための取外し可能な係合手段(12)を含む、請求項12に記載の取出し装置。
【請求項14】
前記取外し可能な係合手段(12)は、ねじ付き型または差込み型である、請求項13に記載の取出し装置。
【請求項15】
前記ねじ付き型の前記取外し可能な係合手段(12)は、前記ポートまたは開口(9)の内表面に形成された母ねじ(14)と、前記取出しシャフト(10)の遠位端部に配置されたねじ手段または雄ねじ(24)とを含む、請求項14に記載の取出し装置。
【請求項16】
前記ねじ付き型の前記取外し可能な係合手段(12)は、前記第2の主要部(7)の外表面に形成されたねじ手段または雄ねじ(24)と、前記取出しシャフト(10)の遠位端部に配置された母ねじとを含む、請求項14に記載の取出し装置。
【請求項17】
前記第1の主要部(6)は環状の拡大部(16)を含み、前記環状の拡大部(16)は、前記細長状本体(2)の前記軸(X−X)に対して横方向に突出しているとともに、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)の縁部(20)に配置されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の取出し装置。
【請求項18】
前記剛性要素(3,3a,3b,3c)および/または前記端部要素(30)は、たとえばステンレス鋼のような生体適合性金属から成る、請求項に記載の取出し装置。
【請求項19】
前記剛性要素(3a)の前記第1の主要部(6)の、前記細長状本体(2)の前記軸(X−X)の方向と平行な方向に沿って考慮された長手方向の延在部は、前記剛性要素(3b)の前記第1の主要部(6)の長さよりも短く、
前記剛性要素(3b)の前記第1の主要部(6)の前記長さは、前記剛性要素(3c)の前記第1の主要部(6)の長さよりも短い、先行する請求項のいずれか1項に記載の取出し装置。
【請求項20】
骨空洞(C)から骨セメントを除去するための取出し装置(1)を構成するための剛性要素(3,3a,3b,3c)であって、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)は、
中心対称軸(X−X)を備え、
前記剛性要素(3,3a,3b,3c)は少なくとも部分的に中空であって、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)は、第1の主要部(6)と、第2の主要部(7)と、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記軸(X−X)に対して横方向に外側に向かって突出しているフランジ(8)とを含み、前記第1の主要部(6)は、前記第2の主要部(7)の寸法と比べてわずかに大きいか、または略等しい寸法を有する長手軸方向のポートまたは開口(9)を規定することを特徴とする、剛性要素(3,3a,3b,3c)。
【請求項21】
前記第1の主要部(6)と前記第2の主要部(7)とのうち少なくとも1つは、外形断面が略円形の略円筒形の形状または外形断面が略多角形の略角柱形の形状を有し、
前記フランジ(8)は略円盤形または略角柱形の形状を有する、請求項20に記載の剛性要素。
【請求項22】
前記ポートまたは開口(9)の形状は、前記第2の主要部(7)の形状に略対応しており、
第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第2の主要部(7)は、使用時に、別のまたは次のまたは隣接する剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記ポートまたは開口(9)内に収容可能であり、および/または、前記第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記フランジ(8)は、使用時に、前記別のまたは次のまたは隣接する剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第1の主要部(6)の上部である縁部(20)に対して当接している、請求項20に記載の剛性要素。
【請求項23】
前記第2の主要部(7)は、自由端部と、前記第1の主要部(6)に接する別のまたは第2の端部とを含み、前記第1の主要部(6)は、前記第2の主要部(7)の反対側に位置付けられた自由縁部を含み、
前記第1の主要部(6)の前記自由縁部は、フランジ付きであり、または横方向に外側に向かって突出しているフランジ(8)を含み、および/または、前記第2の主要部(7)と前記第1の主要部(6)との間に肩部または当接面(22)があり、
前記第1の剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記第1の主要部(6)の前記フランジ付き自由縁部または前記フランジ(8)は、前記次のまたは隣接する剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記肩部または当接面(22)に対して当接している、請求項20に記載の剛性要素。
【請求項24】
取出しシャフト(10)に係合されるのに好適で取外し可能な係合手段(12)を備え、
前記取外し可能な係合手段(12)はねじ付き型または差込み型である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の剛性要素。
【請求項25】
前記ねじ付き型の前記取外し可能な係合手段(12)は、前記ポートまたは開口(9)の内表面に形成された母ねじ(14)、または、前記第2の主要部(7)の外表面に形成されたねじ手段もしくは雄ねじ(24)を含む、請求項24に記載の剛性要素。
【請求項26】
前記第1の主要部(6)は環状の拡大部(16)を含み、前記環状の拡大部(16)は、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)の前記軸(X−X)に対して横方向に突出しているとともに、前記剛性要素(3,3a,3b,3c)の縁部(20)に配置されている、請求項20〜25のいずれか1項に記載の剛性要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、骨空洞から骨セメントを除去するための取出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の水準
関節形成に通常用いられる技術では、骨内部への人工装具の装着に伴って、ある量の骨セメント(たとえば、アクリル樹脂または類似の材料から成る)を人工装具が挿入される骨空洞に導入する。これにより、人工装具を適所で安定して維持することが可能になる。
【0003】
たとえば人工股関節の場合、内部に流体セメント層が挿入された後人工装具のステムが導入される細長い空洞が、大腿骨の近位端部で得られる。この流体セメントは、一旦硬化すると、人工装具を空洞自体の内壁に固定することを可能にする。
【0004】
人工装具を交換するために、またはインプラントの箇所における他の内科的/外科的治療介入を可能にするために人工装具を除去する必要が生じると、通常、十分な取出し力を加えることによって人工装具が除去され、固化した骨セメント層の内側に窪み空洞が残ることになる。その後、新たな人工装具をインプラントする場合および空洞にさらなる治療介入をする場合の両方において、残留する骨セメント層を取除くことが必要になる。
【0005】
このような固化した骨セメント層を取除くために、この目的のためのさまざまなタイプのシステムが公知である。
【0006】
第1のシステムは、スプーン形電極を備えた超音波機器の使用を提供する。
電極がオペレータによって手動で窪み空洞の内部に導入されると、この電極は、超音波によって引起された熱的効果によって、骨セメントを構成する固化した樹脂を軟化させ、これにより、スプーン形を利用してそれを骨空洞から引出すことを可能にする。
【0007】
この超音波機器にはいくつかの欠点がある。たとえば、オペレータは、大腿骨内に形成された空洞などの特に狭い空間でスプーン形電極を扱うことを余儀なくされることになり、オペレータにとって、この超音波機器を使用することは特に手間がかかり実行困難であるという事実がある。
【0008】
さらに、当該操作を行なうためには、十分な経験と専門知識とを有する高い専門性を持つ医療スタッフの存在が必要である。
【0009】
さらに、骨の内壁に近接して加熱電極を使用することは、骨自体の温度を過度に上げる危険性を伴い、周知のように、骨の靱性および健康状態を損なう危険性がある。
【0010】
この欠点を抑制するために、これらの超音波機器は通常、骨壁に接近したことをオペレータに警告する測深装置を備える。しかしながら、このような装置の有効性は通常かなり限定的であり、超音波使用の危険性を無くすものではない。
【0011】
この技術の別の欠点は、特にエネルギーの観点からコストがかかることであり、その全体のコストは無視できるものではない。
【0012】
骨空洞からセメントを取出すための他の技術は、US4,919,153に記載されている。この技術は、人工装具の取出し後に残された固化したセメント層に直接接触するように一塊の流体生セメントを骨空洞に注入するステップと、でこぼこな外表面を有する成形されたシャフトを当該一塊の流体内に浸すステップと、当該一塊の流体を硬化させシャフトに付着させるステップと、最後に、当該シャフトに取出し力を加えてセメントと共に骨空洞から除去するステップとから成る。
【0013】
しかしながら、この技術もまた、欠点がないわけではない。たとえば、空洞内部で硬化したすべてのセメントを1回の操作で除去するために非常に大きな取出し力を加える必要があり、治療介入を受ける人の骨に過度な応力をかける危険性があるという事実がある。
【0014】
この欠点を克服するために、前述のものと同様のシステムがUS5,078,718から公知である。異なる点は、一塊の流体セメント内に挿入される物体が細長状スリーブから成り、当該スリーブは内部が中空であり、当該スリーブ自身と空洞内部で固化した骨セメントとを取出すために、当該スリーブ内部にシャフトが挿入される点である。
【0015】
当該スリーブは、互いに一直線に位置合せされたさまざまな長手部から成り、これらの長手部は、スリーブ内部に配置されたシャフトに接続するための手段を含む。
【0016】
一旦一塊の流体セメントが硬化してスリーブがこのセメントと一体化すると、スリーブのさまざまな長手部を大腿骨近位端部に最も近いものから順に選択的に取出すために、シャフトまたは内部ねじが除去される。これにより、連続する深さのセメントが除去される。
【0017】
この技術は、一方で上述した先行技術の欠点を克服することができるが、他方で実現が容易ではなく実用的でないため、さらなる改善の余地がある。さらに、セメントはスリーブの一部分とその他の部分との間に入り込みやすく、その機能性が損なわれてしまう。
【0018】
代わりに、セメントを取出すための類似のシステムがEP0520293から公知である。このシステムは、いくつかのナットが長手方向に間隔をおいた位置に嵌められたねじ付きシャフトから成る。
【0019】
ねじ付きシャフトは、ナットと共に生セメントに浸される。セメントの固化後、硬化したセメント内のさまざまな深さにナットが埋込まれた状態で、シャフトを、それ自身の軸回りに回転することによって取出す。
【0020】
その後、好適な取出しねじによってナットが1つずつ取出され、これによりセメントのさまざまな長手方向部分が押出される。
【0021】
この取出しシステムにもいくつかの欠点がある。たとえば、ねじ付きシャフトは、治療介入を達成するのに必要なすべてのナットが1つずつ係合されるため、このねじ付きシャフトを用意するには、手間のかかる長時間の手動操作が必要であるという事実などである。
【0022】
さらに、硬化したセメントからねじ付きシャフトを取出すのが難しい場合には、当該システムで非常に深刻で複雑な事態や問題が起こる可能性がある。
【0023】
実際、ねじ付きシャフトがセメント内で詰まったままの場合、骨空洞内部の空間は、硬化したセメントとねじ付きシャフトとに完全に占有されてしまい、外側からセメントを徐々に除去するための空間が全く残されていない。したがって、そのような状況では、大腿骨の物理的な切開に頼ることが必要となり、患者にとって悲惨な結果となる。
【0024】
また、US4,919,153、US5,078,718およびEP0520293に記載された上述の方法を実現する際、取出しの最後に、従来から「遠位充填物(distal plug)」と呼ばれる硬化した骨セメントの広がりが、多かれ少なかれ骨空洞の底部に残留する場合が多いことも指摘しておく。
【0025】
この遠位充填物は、その後の追加操作によって除去されるが、これらの追加操作は、充填物に穴を開けてそこに開口を得るステップと、このように形成された穴の中にセルフタップねじを挿入するステップと、最後に、セルフタップねじを充填物とともに取出すステップとから成る。
【0026】
これらの追加操作は、とりわけ遠位充填物に穴を開けるステップにおいて、特に面倒かつ実行困難であり得る。
【0027】
正確にかつ患者へ危険が及ばないように遠位充填物に穴を開けることを可能にするためには、実際、曲がり防止調心ブッシュを使用する必要があり、その操作は容易でも単純でもない。
【0028】
骨セメントを骨空洞から除去するように適合された装置が、同じ出願人のEP1875880から公知である。この装置は、セメントが充填された骨空洞内部に挿入されるように適合された内部中空の細長状本体と、中空本体に挿入可能な、その取出しシャフトとを含む。中空本体は、互いに一直線に位置合せされた複数の剛性要素と、取出しシャフトへの接続のための手段とを含む。
【0029】
略管状であり細長状本体と同軸であるスペーサ要素を介挿することによって、剛性要素は互いに関連付けられる。スペーサ要素と剛性要素とは、噛合い型の一時的な連結器の介挿によって関連付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
この装置の欠点は、互いにさまざまに連結された複数の異なる要素から構成された複雑な装置であるということである。
【0031】
したがって、本発明の主な目的は、単純で合理的で低コストの解決策を開発することによって先行技術の上記欠点の克服を可能にする、骨空洞から骨セメントを除去するための装置を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、治療介入を行なうオペレータにとって、実用的で容易で非常に効率的な方法での骨空洞からのセメント取出しを可能にするとともに、操作を受ける人にとって、最大限安全で穏やかな状況下での骨空洞からのセメント取出しを可能にすることである。
【0033】
発明の目的
本発明の一目的は、従来技術を改善することである。
【0034】
本発明の別の目的は、骨セメントを除去するための取出し装置であって、骨空洞に存在する骨セメントを安全で効果的な方法で除去可能な取出し装置を開発することである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、単純ですぐに得られる、骨空洞から骨セメントを除去するための取出し装置を開発することである。
【0036】
本発明の別の目的は、骨空洞から骨セメントを除去するための低コストの取出し装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明の一局面によれば、独立請求項1に記載の、骨セメントを除去するための取出し装置が提供される。
【0038】
従属請求項は、本発明の好ましい有利な実施形態について述べる。
本発明のさらなる特徴および利点は、同封された一連の図面で示される、骨セメントを除去するための取出し装置の説明によってより明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る、骨セメントを除去するための取出し装置の側面図である。
図2】骨セメントを除去するための図1の取出し装置の部品の側面図である。
図3】セメントを除去するための図1の取出し装置のさらなる部品の側面図である。
図4図1の取出し装置のトレースIV−IVの平面に沿って切取った断面図である。
図5図4の拡大詳細図である。
図6】上述の図の取出し装置による骨セメント取出しのステップを示す図である。
図7】上述の図の取出し装置による骨セメント取出しのステップを示す図である。
図8】上述の図の取出し装置による骨セメント取出しのステップを示す図である。
図9】上述の図の取出し装置による骨セメント取出しのステップを示す図である。
図10】本発明に係る取出し装置の一実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の実施形態
同封された図面を参照して、骨空洞から骨セメントを除去するためのモジュール式取出し装置1を説明する。
【0041】
特に図6図9を参照すると、Oは、概してその近位端部に骨空洞Cが形成された大腿骨を示す。
【0042】
人工股関節Pのステムは、セメント層Sの介挿によって、それ自体は公知の方法で骨空洞Cに挿入される。
【0043】
一旦人工装具Pが除去されると、骨空洞Cは硬化したセメント層Sで覆われており、好ましくは、生セメントFが充填されてもよい。
【0044】
生セメントFは、セメントSの層を部分的に溶かして軟化させることができ、生セメントFが硬化させられると、セメント層Sと共に単一体S+Fを形成することができる。
【0045】
このように形成された、一塊の硬化したセメントS+Fは、本発明に係る取出し装置1によって除去可能である。
【0046】
取出し装置1は、特に、全体にわたる細長状本体2を備える。細長状本体2は、少なくとも部分的に内部が中空である。細長状本体2は、その対称軸または長手方向軸X−Xに垂直な平面に沿って切取った断面が好ましくは円形である。
【0047】
細長状本体2は、中心のまたは長手方向の対称軸X−Xと、使用時に骨空洞Cの開口部に配置されるように意図された近位端部2aと、使用時に骨空洞Cの最も奥の部分に配置されるように意図された遠位端部2bとを有する。
【0048】
取出し装置1またはその細長状本体2は、生セメントFに浸されるために骨空洞C内に挿入可能である。
【0049】
細長状本体2は、相互に一直線に位置合せされた複数の剛性要素3を含んでおり、この点において、細長状本体2または取出し装置はモジュール式として定義され得る。
【0050】
さまざまな剛性要素3が取出し装置1の細長状本体2を構成する。特に、細長状本体2は、少なくとも2つの剛性要素3を含む。
【0051】
さまざまな剛性要素3は、好ましくは細長状本体2と同軸であり、かつ、互いに同軸である。すなわち、それらは実質的に、同一の軸X−Xに沿って配置されている。
【0052】
本明細書において以下で詳述するように、剛性要素3は形状は略同一だが寸法は異なるのが好ましい。
【0053】
剛性要素3は少なくとも部分的に、断面が略円形である略管状の形状を有する。好ましくは、剛性要素3の側方の外側壁および/または内側壁の少なくとも一部は、断面が円形の略管状である。
【0054】
本発明の代替的な態様では、剛性要素の側方の外側壁および/または内側壁の少なくとも一部は、断面が円形ではなく略正多角形または不規則な多角形であり得る。
【0055】
各剛性要素3は、使用時に骨空洞Cの開口部の方向に向くように意図された近位端部4と、使用時に骨空洞Cの最も深い部分の方向に向くように意図された、近位端部4と反対側の遠位端部5とを有する。
【0056】
各剛性要素3は、少なくとも部分的に中空である。
より詳細には、剛性要素3は、直径または外形幅または横方向大きさd’を有する第1の主要部6と、直径または外形幅または横方向大きさd’’を有する第2の主要部7と、好ましくは中間部に配置され、直径または外形幅または横方向大きさDを有する少なくとも1つのフランジ8とを含む。
【0057】
第1の主要部6および第2の主要部7は、断面が略円形である略円筒形または略環状の形状を有する。
【0058】
本発明の代替的な態様では、第1の主要部6および第2の主要部7は、断面が略多角形である略角柱形の形状を有する。
【0059】
さらに別の代替的な態様では、第1の主要部6と第2の主要部7とのうち少なくとも1つは、断面が略円形である略円筒形の形状を有する。
【0060】
好ましくは、第1の主要部6および第2の主要部7はフランジ8に対して一方が他方と反対側から延在しており、この場合、フランジ8は第1の主要部6と第2の主要部7との中間部に配置されている。
【0061】
以下で詳述する代替的な態様では、フランジ8は剛性要素3の遠位端部5に配置されている。
【0062】
フランジ8は、略円盤形または略環状または略角柱形の形状を有し、細長状本体2の軸X−Xと同軸であり、略円形または略多角形の外形断面を有する。
【0063】
代替的には、フランジ8は一連の湾曲部または角度扇形部から構成されてもよく、これらの湾曲部または角度扇形部は、同一主要部の同じ高さで延在するとともに、軸X−Xに対して相互に角度間隔をおいて配置される。
【0064】
フランジ8が角柱形の形状を有する場合、その外形断面は六角形または八角形であることが好ましい。
【0065】
角柱形の形状のフランジ8は少なくとも1つの角を備えており、これによって、骨セメントS+Fにおいて脆弱点(weakening point)とその結果生じる破断線(fracture lines)とを作り出すことが可能になる。これによって、以下でさらに示す方法による一塊のセメントS’+F’の取出しが容易かつより正確になる。
【0066】
フランジ8は、細長状本体2の軸Xに対して横方向に外側に突出している。すなわち、フランジ8は、第1および第2の主要部6,7に対して骨空洞Cの側壁に向かって突出するように適合されている。フランジ8の外壁の外径または幅または外形横方向大きさDは、第1の主要部6および/または第2の主要部7の外径または幅または外形横方向大きさよりも大きい。すなわち、フランジ8は、当該第1の主要部6および第2の主要部7よりも幅が広い。
【0067】
本発明の一態様では、第1の主要部6の直径または横方向大きさd’は、第2の主要部7の直径または横方向広がりd’’よりも大きい。
【0068】
さらに、第1の主要部6および/または剛性要素3は、長手軸方向のポートまたは開口9を有する。
【0069】
ポートまたは開口9は、取出し装置1の細長状本体2の軸X−Xと同軸である。すなわち、ポートまたは開口9は、細長状本体2と略同一の軸を有する。
【0070】
ポートまたは開口9は、第1の主要部6の少なくとも一部にわたって長手方向に延在するか、第1の主要部6の長手方向の広がり全体にわたって延在するか、または、剛性要素3の少なくとも一部にわたって延在する。
【0071】
第2の主要部7が、使用時に次のまたは隣接する別の剛性要素3のポートまたは開口9の内部に配置される場合、特に当該ポートまたは開口9の形状は、第2の主要部7の形状に略対応している。
【0072】
これに関連して、第1の主要部6によって境界が規定されたポートまたは開口9の全体の寸法は、第2の主要部7の寸法と比べてわずかに大きいか、または略等しい。その結果、剛性要素3の第2の主要部7は、別のまたは次の剛性要素3の第1の主要部6のポートまたは開口9内にサイズに合わせて収容される。
【0073】
ポートまたは開口9の直径d’’’または横方向大きさまたは寸法は、第2の主要部7の直径または横方向広がりd’’と比べてわずかに大きいか、または略等しい。
【0074】
それと同時に、ポートまたは開口9は、ポートまたは開口9内での第2の長手部7の限られた遊びまたは可動性を可能にし得るサイズである。その結果、細長状本体2を手で軽く曲げたり成形したりして、細長状本体2の直線軸および曲線軸の両方に沿って、細長状本体2をより良く骨空洞Cの形状に適合させることが可能になる。
【0075】
図5から理解できるように、管状の形状である第1の主要部6は、10分の数ミリメートルほどの薄い側壁を有する。このようにして、第1の主要部6を構成する材料にある種の弾性が与えられ得る。第1の主要部6は、その中に収容される、隣接する次のまたは前の剛性要素の第2の主要部7のサイズに好ましくは合わせて、締まり嵌めおよび噛合いを規定するように適合されている。
【0076】
これに関連して、ポートまたは開口9に挿入可能な第2の主要部7の自由端部は、入口部18を含み得る。入口部18は、外側または自由縁部に向かって縮小する部分を有している。これは、第2の主要部7をより容易に挿入することと、隣接のまたは次の剛性要素3のポートまたは開口9において幅を広げることとを同時に可能にするように意図されたものである。これにより、特に、第2の主要部7とポートまたは開口9とを略同一のサイズにすることが可能になり得る。
【0077】
特に、本発明の一態様では、第1の主要部6のポートまたは開口9の外形断面は第2の主要部7の外形断面とわずかに異なる。その結果、隣接する剛性要素の部品間の噛合いが確実に容易になる。
【0078】
このような締まり嵌めは、環状の拡大部16の存在によってより安定かつ確実になる。環状の拡大部16は、第1の主要部6の外壁において、その上縁部であって近位端部4に配置されている。当該環状の拡大部は、細長状本体2の軸X−Xに対して横方向かつ外側に延在している。
【0079】
特に、当該環状の拡大部16の外側への突出は、第1の主要部6の外径または横方向大きさd’よりも大きい。
【0080】
特に、剛性要素3の第2の主要部7を、別のまたは次のまたは隣接する剛性要素3の第1の主要部6のポートまたは開口9内に挿入することは、以下の事実を規定する。すなわち、第1の剛性要素3の好ましくは中間部に配置されたフランジ8は、別のまたは次のまたは隣接する剛性要素3の近位端部4に配置された好ましくは上縁部20に対して当接するという事実である。
【0081】
第1の剛性要素3のフランジ8と、次のまたは隣接する剛性要素3の縁部20との間の当接は、当該第1の要素3の遠位位置5においても起こり得る。このことは、この取出し装置1のさらなる態様に従って後述する。
【0082】
このように、別のまたは次のまたは隣接する剛性要素3のポートまたは開口9は、好ましくは第1の剛性要素3のフランジ8によって略完全に覆われて密閉されている。これにより、一塊の固化したセメントS+Fを取出すために骨空洞Cに挿入された生セメントFの、その内部への侵入が防止される。
【0083】
したがって、剛性要素3は、噛合い型の一時的な連結器によって互いに連結されており、予め定められた大きさの軸方向分離力がそれらの間に加えられるまで、さまざまな剛性要素3を結合することが可能になる。
【0084】
取出し装置1は、細長状本体2の遠位端部2bに配置された端部要素30をさらに含む。
【0085】
端部デバイス30もまた、ポートまたは開口9の境界を規定する第1の主要部6を含む。このポートまたは開口9は、その前の剛性要素3の第2の主要部7を、実質的にサイズに合わせて収容するように適合されている。
【0086】
しかしながら、端部要素30は、第2の主要部7の代わりに、略円錐形または略ピラミッド形の閉じた形状の先端部31を有する。
【0087】
末端部30は、既に述べた剛性要素3のためのものと同様の、好ましくは中間部に配置されたフランジ8を含み得る。
【0088】
剛性要素3、特に少なくともそれらの第1の主要部6は、互いに異なる寸法を有し得る。
【0089】
すなわち、第1の主要部6の、細長状本体2の軸X−Xの方向と平行な方向に沿って考慮された長手方向の延在部は、さまざまな長さを有し得る。たとえば、図2に見られるように、剛性要素3aの第1の主要部6の長さは剛性要素3bの第1の主要部6の長さよりも短く、同様に剛性要素3bの第1の主要部6の長さは剛性要素3cの第1の主要部6の長さよりも短い。
【0090】
骨空洞Cおよび必要とされる取出し力の構成を考慮すると、有利なことに、細長状本体2は、近位端部2aにおける少なくとも1つの剛性要素3cと、中央部における少なくとも1つの剛性要素3bと、遠位端部2bにおける少なくとも1つの剛性要素3aとを含み得る。
【0091】
当然のことながら、個別の必要に応じて細長状本体2の全長は変化してもよく、それに応じて剛性要素3a,3b,3cの配置が変化してもよい。
【0092】
さらに、剛性要素3a,3b,3cの配置は、患者の個別の必要に応じて所望通りに選択され得る。したがって、取出し装置が剛性要素3aまたは3bまたは3cの1種類しか含まないことも可能である。
【0093】
剛性要素3,3a,3b,3cは、以下のことを確実にする形状を有する。すなわち、剛性要素3,3a,3b,3cの第2の主要部7が、別のもしくは次のもしくは隣接する剛性要素3,3a,3b,3c(それらの長さまたは延在範囲を問わない)に存在するポートもしくは開口9または端部30に存在するポートもしくは開口9内に、サイズに合わせて収容され得ることを確実にする形状である。
【0094】
各剛性要素3、すなわち第1の主要部6とフランジ8と第2の主要部7とは、互いに対して安定して固定され、好ましくはすべてが一体部品化されている。端部要素30もまた、第1の主要部6と先端部31と任意でフランジ8とを含み、これらは互いに対して安定して固定され、好ましくはすべてが一体部品化されている。
【0095】
このように、細長状本体2は、従来技術よりも少ない数の部品から成ることによって、実装および関連コストを大幅に簡素化した。
【0096】
さらに、取出し装置1の細長状本体2の組立ておよび使用についても、特に熟練していないオペレータがいたとしても、より単純で容易である。
【0097】
さまざまな剛性要素3および端部要素30は、たとえばステンレス鋼などの生体適合性金属から作られるのが有利である。
【0098】
当然のことながら、本発明の保護範囲から逸脱することなく、第1の主要部6と第2の主要部7とを入替えて、第2の主要部7が第1の主要部6に対してより近位に位置していてもよい。
【0099】
このことを、たとえば図10に示す。
本発明のさらなる態様を図10に示す。この態様では、第2の主要部7は、好ましくは剛性要素の近位端部4における自由端部と、第1の主要部6に接する別のまたは第2の端部とを有し、第1の主要部6は、第2の主要部7に対して反対側に位置付けられた自由縁部を有する。
【0100】
第1の主要部6の自由縁部は、好ましくはフランジ付きであり、または前述のものと全く同様のフランジ8を備える。
【0101】
上述したように、第2の主要部7の寸法と比べてわずかに大きいか、または略等しい寸法を有するポートまたは開口9の境界を第1の主要部6が規定する。その結果、第2の主要部7はサイズに合わせて収容され、第2の主要部7と第1の主要部6および/またはポートもしくは開口9との間の締まり嵌めが規定される。
【0102】
したがって、この場合も剛性要素3は、後述する取出し力が加わることで各剛性要素3が取出されるまで、安定した態様で互いに噛合って拘束し合う。
【0103】
第2の主要部7の寸法と比べてわずかに大きいか、または略等しい寸法を有するポートまたは開口9の境界を第1の主要部6が規定するという事実によって、第1の主要部6の寸法および直径または横方向広がりed’は、第2の主要部7のそれd’’よりも大きいということになる。
【0104】
このことは、第2の主要部7と第1の主要部6との間における(前述の縁部20と同様の)肩部または当接面22の存在を規定する。
【0105】
次のまたは隣接する剛性要素3のフランジ付き自由縁部またはフランジ8は、この当接面22に対して当接している。
【0106】
本発明の一態様では、細長状本体2の取出しシャフト10が取出し装置1にさらに設けられ、細長状本体2が生セメントFに埋め込まれると、一塊の硬化したセメントS+Fと一体化する。
【0107】
取出しシャフト10は、細長状本体2の少なくとも一部に沿って、および/または、剛性要素3もしくは端部要素30のポートもしくは開口9に沿って挿入可能であり、後者に関連付けられ得る。
【0108】
実際、この目的のために、剛性要素3および端部要素30は、取出しシャフトに取外し可能に係合するための手段12を内部に備える。
【0109】
したがって、当該係合手段12は、剛性要素3の各々および/または端部要素30を取出しシャフト10に接続して取外し可能に係合するように適合されている。
【0110】
当該係合手段12は、ねじ付き型でもよく、差込み(bayonet)型の係合手段でもよく、または、この目的を意図した他の取外し可能な係合手段でもよい。
【0111】
当該係合手段12がねじ付き型である態様では、剛性要素3は母ねじ(mother screw)14を含む。当該母ねじ14は、各剛性要素3の内表面であって、その遠位端部5に形成される。特に、当該母ねじ14は、第1の主要部のポートまたは開口9の内表面に形成される。または、当該ポートまたは開口9がフランジ8の領域に軸方向に延在している場合、母ねじ14は当該領域において得られる。または、有利なことに、当該ポートまたは開口9が第2の主要部7の少なくとも一部において軸方向に延在している場合、母ねじ14は、当該第2の主要部7の少なくとも一部において得られる。フランジ8の領域に母ねじ14が存在することによって、取出しシャフト10への係合および接続がより強固になる。というのは、さまざまな係合部品間がより頑丈になることで、一塊のセメントS’+F’を取出すために加えられる高いけん引力に耐えることができるからである。
【0112】
剛性要素3の内部に存在する母ねじ14は、取出しシャフト10の遠位端部に形成されたねじ手段または雄ねじ24に係合するように適合されている。詳細には、雄ねじ24は、連続する2つの剛性要素3の2つの母ねじ間に規定された距離よりも略短い長さ分だけ取出しシャフト10上に延在している。このため、雄ねじ24は、同時に2つ以上の剛性要素3に係合することができない。
【0113】
さらにこの態様では、端部要素30もその内壁に母ねじ14を有しており、この母ねじ14は、取出しシャフト10に取外し可能に接続されるように適合されている。この場合も、取出し力をできるだけ効率的に配分するために、母ねじ14または一般的には係合手段12は、剛性要素3または端部要素30の最も遠位部分に位置付けられている。
【0114】
代替的には、剛性要素3が第2の主要部7の側方の外側壁に雄ねじ24を有する場合(第2の主要部7は第1の主要部6のポートまたは開口9内に収容されるので、骨セメントの影響を受けない)、取出しシャフト10の遠位端部は対応する母ねじを含む。
【0115】
係合手段12が差込み型である態様では、係合手段12は、各剛性要素3の内壁を取出しシャフト10の遠位端部に取外し可能に係合するように適合されている。
【0116】
本発明の少なくとも1つの態様の例示的な操作は、以下の通りである。
オペレータは、患者への治療介入前のステップ時に、細長状本体2が挿入される骨空洞Cのタイプに応じて、直線軸または曲線軸またはその両方に沿って細長状本体2を手で成形し得る。
【0117】
一旦人工股関節Pが取出されると、人工装具のステムによって残された窪みに生セメントFが充填される。
【0118】
この時点で細長状本体2は生セメントFに浸されて、生セメントFが完全に硬化するまでその位置に置いたままにされる。生セメントFは、硬化したセメントSの層に安定して付着してセメント被膜S+Fの形成を規定する。
【0119】
さらに、細長状本体2は、安定してセメント被膜S+Fに組込まれて、このセメント被膜S+Fの一体化した一部となる。
【0120】
その後、取出しシャフト10が細長状本体2に挿入されるとともに、係合手段12が取外し可能に係合される。取出しシャフト10の遠位端部に存在する相補的で取外し可能な係合手段によって、取外し可能な係合は、各剛性要素3内、その後端部要素30内で行なわれる。この係合手段12がねじ付き型である態様では、当該ステップは、たとえば、(細長状本体2の近位端部2aに配置された)第1の剛性要素3の母ねじ14内に取出しシャフト10の雄ねじを螺合することによって行なわれ得る。
【0121】
それ自体は公知のタイプであるハンマリング装置によって、取出しシャフト10にけん引型の衝撃力が加えられる。この衝撃力は、細長状本体2の近位端部2aに配置された剛性要素3によって、その周りに配置された一塊の硬化したセメントS+Fの一部S’+F’に伝達される。
【0122】
この衝撃力の結果として、セメントの一部S’+F’は、一塊の硬化したセメントS+Fの残りから分離され、これにより骨空洞Cから取出される。
【0123】
セメント内に埋め込まれた剛性要素3の各々および端部要素30に対してこの操作を繰返すことによって、一塊の硬化したセメントS+Fを完全にまたはほぼ完全に除去することができる。
【0124】
一旦細長状本体2の遠位端部2bに配置された端部要素30が取出されると、硬化したセメントである遠位充填物が骨空洞Cの底部に残留する可能性があるが、この充填物は、セルフタップねじを用いた従来の穴開け技術および取出し技術によって除去可能であることを指摘しておく。
【0125】
この場合、細長状本体2の遠位端部2bに配置された端部要素30の特定の形、およびその先端部31の円錐形またはピラミッド形の表面の特定の形は、遠位充填物上に中空形を与えることを可能にする。この中空形は、入口として機能するとともに、ドリル先端を中心にもってくるものとして機能する。これにより、充填物の除去操作が容易になるとともに大幅に単純化される。
【0126】
さらに、剛性要素3の各々および端部要素30がそれぞれ一体部品化されたいくつかのパーツから構成されているという事実は、セメントの取出しが効果的かつ効率的に行なわれることを確実にする。これにより、直接拘束されまたは係合手段に重なって取出しシャフトに係合する1つまたは複数の部品のみが一塊のセメントS’+F’とともに取出される危険性が排除され、その結果、取出し装置の以降の操作に支障を来す危険性が排除される。
【0127】
さらに、生セメントが原因で「軟化(softening)」することで機械的特性を喪失する虞があるプラスチック材料ではなく、金属材料で取出し装置が作られるという事実によって、先行技術で利用可能な他の解決策と比較して、安全の観点で有利となる。
【0128】
さらに、フランジ8が主要部6,7に対して外側に突出しているという事実によって、フランジとその次のフランジとの間にある種の窪み領域が作り出され、そこに生セメントが挿入され得る。これにより、取出し装置が、硬化したセメントS+Fと一体化することが容易になり、本発明による一塊のS’+F’の取出しを効果的に行なうことができる。細長状本体2のさまざまなフランジ8は、セメント内にある種の段をさらに作り出す。フランジ8が略角柱形の形状を有する場合はなおさらそうである。上記段は、与えられた取出し力が加えられた後セメント自体において生じるであろう破断線のための入口として機能する。これにより、さらに確実に、必要とされる正確さで取出しを行なうことができる。
【0129】
取出し装置1は、たとえばシリコーン材料またはプラスチック材料から成るキャップ26を含み得る。このキャップ26は、たとえば運搬ステップ時、または骨空洞Cへの取出し装置の挿入ステップ時に、最も近位の剛性要素3に嵌められる。
【0130】
このキャップ26は、当該剛性要素3を保護するものとして機能し、そのポートまたは開口9が想定外に移動することまたは詰まることを防止する。
【0131】
このように、説明された本発明が如何にして意図された目的を達成するかについて述べてきた。
【0132】
本発明の一態様について記載されたさまざまな特徴は、示された保護範囲から逸脱することなく、記載された他の態様にも存在し得る。
【0133】
このように、考案された本発明は、特許請求の範囲によって提示された保護範囲に含まれるすべての多数の変更および変形が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
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