特許第6522005号(P6522005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522005
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】薬学的方法および中間体
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
   C07F9/6561 Z
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-560869(P2016-560869)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-503018(P2017-503018A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014071613
(87)【国際公開番号】WO2015095765
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】61/919,671
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504294145
【氏名又は名称】ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マッキーヴァー ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ディオラジオ ルイ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ マーティン フランシス
(72)【発明者】
【氏名】フェリス リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンボン ソフィー ロール マリー
(72)【発明者】
【氏名】シードルツキ パウェル スタニスロー
(72)【発明者】
【氏名】チャーチル グウィディオン ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】クラフツ ピーター アラン
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−532143(JP,A)
【文献】 特表2010−510322(JP,A)
【文献】 特表2008−527048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、式(I)
の化合物またはその水和物を調製するための方法:
(a) 式(II)
の化合物のアミド溶媒和物を、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件の下でアミンと接触させる段階;ならびに
(b) 該アミン塩を、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件の下でナトリウムイオンを含む試薬と接触させる段階。
【請求項2】
式(I)の化合物が六水和物の形態にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下の段階を含む、式(VI)
の化合物を調製するための方法:
式(VI)の化合物を形成させるのに適した条件の下で、テトラ-アルキルアンモニウム塩の存在下において式(VII)
の化合物を式(VIII)
の化合物と接触させる段階であって、
式中、
R3およびR4が各々独立してC1〜6アルキルであり;かつ
Xがハロゲンである、段階。
【請求項4】
以下の段階を含む、式(I)
の化合物またはその水和物を調製するための方法:
(a) R3およびR4が各々独立してC1〜6アルキルである、式(VI)
の化合物を、式(V)
の化合物を形成させるのに適した条件の下で酢酸および水と接触させる段階;
(b) 式(V)の化合物を、式(II)
の化合物のアミド溶媒和物を形成させるのに適した条件の下でアミドと接触させる段階;
(c) 式(II)の化合物のアミド溶媒和物を、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件の下でアミンと接触させる段階;ならびに
(d) 式(II)の化合物のアミン塩を、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件の下でナトリウムイオンを含む試薬と接触させる段階。
【請求項5】
式(I)の化合物が六水和物の形態にある、請求項4記載の方法。
【請求項6】
アミド溶媒和物のアミド成分が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である、請求項1、2、4または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物のアミン塩のアミン成分が、N(R40)3であり、ここで各R40は独立して-HもしくはC1〜12アルキルであるか、または2つのR40基はそれらが付着している窒素とともに4〜6員複素環を形成しかつ残りのR40は-HもしくはC1〜12アルキルである、請求項1、2、4、5または6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
式(II)の化合物のアミン塩のアミン成分が、トリエチルアミンである、請求項1、2、4、5、6または7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ナトリウムイオンを含む試薬が、2-エチルヘキサン酸ナトリウムである、請求項1、2、4、5、6、7または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物のトリエチルアンモニウム塩である化合物。
【請求項11】
トリエチルアミンと式(II)の化合物との化学量論比が1.5:1〜2.5:1である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
式(II)の化合物のビス(トリエチルアンモニウム)塩である、請求項10または請求項11記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬学的化合物の大規模製造、詳細には2,4-ピリミジンジアミンの大規模製造およびその中で用いられる中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
国際特許出願WO 2005/016893(特許文献1)は、さまざまな疾患の処置および予防において有用である、2,4-ピリミジンジアミン化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩およびそれに至るプロセスを開示している。
【0003】
国際特許出願WO 2006/078846(特許文献2)は、2,4-ピリミジンジアミン化合物のプロドラッグおよびそれに至るプロセスを開示している。
【0004】
国際特許出願WO 2011/002999(特許文献3)は、式(I)の2,4-ピリミジンジアミン化合物を調製するためのプロセスを開示している。
【0005】
式(I)の化合物は、活性薬学的化合物として開発されているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願WO 2005/016893
【特許文献2】国際特許出願WO 2006/078846
【特許文献3】国際特許出願WO 2011/002999
【発明の概要】
【0007】
式(I)の化合物の費用効果の高い、効率的かつ環境に配慮した製造に適した方法が望ましい。生成物の分解を低減し、かつ反応選択性を改善する製造条件を利用することも望ましい。本発明は、式(I)の化合物およびその水和物(例えば六水和物など)の大規模製造のためのプロセスを提供する。
【0008】
本発明の第1の局面において、
(a) 式(II)
の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件の下でアミンと式(II)の化合物のアミド溶媒和物を接触させる段階;
および
(b) 式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件の下でナトリウムイオンを含む試薬と前記アミン塩を接触させる段階
を含む、式(I)の化合物またはその水和物を調製するためのプロセスが提供される。
【0009】
本発明の1つの態様において、この方法により生成される式(I)の化合物は、水和物である。特定の態様において、この方法により生成される式(I)の化合物は、六水和物である。
【0010】
いくつかの態様において、式(II)の化合物のアミド溶媒和物のアミド成分は、R30CON(R2)2であり、ここで各R2は独立して-HもしくはC1〜4アルキルであり、または両方のR2基は、それらが付着している窒素とともに4〜6員複素環を形成し、かつR30は-HもしくはC1〜4アルキルであり;あるいはR30、およびR2基の一方は、それぞれ、それらが付着している窒素とともに、組み合わさって4〜6員複素環を形成し、かつ他方のR2基は独立して-HもしくはC1〜4アルキルである。
【0011】
いくつかの態様において、アミド成分は、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-ホルムアミド、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-アセトアミド、N-C1〜6アルキル-ピロリジノンまたはN-C1〜6アルキル-ピペリジノンから選択される。
【0012】
さらなる態様において、アミド成分は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0013】
特定の態様において、アミド溶媒和物は式(III)のものである。
【0014】
さらなる態様において、式(II)の化合物のアミン塩のアミン成分は、N(R40)3であり、ここで各R40は独立して-HもしくはC1〜12アルキルであるか、または2つのR40基はそれらが付着している窒素とともに4〜6員複素環を形成しかつ残りのR40基は-HもしくはC1〜12アルキルである。
【0015】
さらなる態様において、式(II)の化合物のアミン塩のアミン成分は、N(R40)3であり、ここで各R40は独立してC1〜12アルキルであるか、または2つのR40基はそれらが付着している窒素とともに4〜6員複素環を形成しかつ残りのR40基はC1〜12アルキルである。
【0016】
さらなる態様において、アミン成分は、N(C1〜6アルキル)3、N-メチルモルホリンまたはN-メチルピペリジンから選択される。
【0017】
さらなる態様において、アミン成分は、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンまたはジ-イソプロピルエチルアミンのような、N(C1〜6アルキル)3である。
【0018】
さらなる態様において、アミン成分は、トリエチルアミンである。
【0019】
さらなる態様において、式(II)の化合物のアミン塩は、トリエチルアンモニウム塩である。さらなる態様において、トリエチルアミンと式(II)の化合物との化学量論比は、0.5:1〜2.5:1、例えば1.5:1〜2.5:1、例えば約2:1などである。さらなる態様において、アミン塩は、式(II)の化合物のビス(トリエチルアンモニウム)塩(式(IV)の化合物)である。
【0020】
さらなる態様において、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件は、極性溶媒および水に溶かしたアミンの溶液を式(II)の化合物のアミド溶媒和物と混ぜ合わせることを含む。
【0021】
さらなる態様において、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件は、以下のことを含む:
(i) 極性溶媒および水に溶かしたアミンの溶液を式(II)の化合物のアミド溶媒和物と混ぜ合わせること;ならびに
(ii) 反応混合物をろ過すること。
【0022】
さらなる態様において、極性溶媒は、アルコール、アセトン、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドから選択される。さらなる態様において、極性溶媒は、イソプロパノールのような、アルコールである。
【0023】
さらなる態様において、アミン塩の形成は、70℃を超えない、例えば、約0℃からかつ60℃、50℃、40℃、30℃、20℃または10℃を超えない、例えば、約10℃〜約30℃の温度で実行される。さらなる態様において、アミン塩の形成は、周囲温度で実行される。
【0024】
さらなる態様において、極性溶媒および水に溶かしたアミンの溶液が、アミド溶媒和物に添加される。
【0025】
さらなる態様において、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件は、先の段階から得られた式(II)の化合物のアミン塩の溶液と極性溶媒および水中のナトリウムイオンを含む試薬の溶液を混ぜ合わせることを含む。
【0026】
さらなる態様において、極性溶媒は、アルコール、アセトン、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドから選択される。さらなる態様において、極性溶媒は、イソプロパノールのような、アルコールである。さらなる態様において、極性溶媒は、先の段階において用いられた極性溶媒と同じものである。
【0027】
さらなる態様において、ナトリウムイオンを含む試薬は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは2-エチルヘキサン酸ナトリウム、例えば塩化ナトリウムまたはエチルヘキサン酸ナトリウム、例えば2-エチルヘキサン酸ナトリウムなどから選択される。
【0028】
さらなる態様において、ナトリウムイオンを含む試薬は、アミン塩の溶液に添加される。
【0029】
さらなる態様において、式(I)の化合物またはその水和物の形成は、70℃を超えない、例えば、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃または10℃を超えない温度で実行される。さらなる態様において、形成は、40℃を超えない温度で実行される。
【0030】
さらなる態様において、アミン塩の溶液は、ナトリウムイオンを含む試薬の添加の前に必要とされる反応温度まで加温される。
【0031】
さらなる態様において、式(II)の化合物のアミン塩の溶液とのナトリウムイオンを含む試薬の混合溶液はさらに、式(I)の化合物またはその水和物の種結晶を含む。
【0032】
さらなる態様において、ナトリウムイオンを含むある割合(例えば50%未満、例えば40%、30%、20%、10%または5%未満など、例えば5%未満)の試薬および式(I)の化合物またはその水和物の種結晶が、式(II)の化合物のアミン塩の溶液に添加される。この反応混合物は次いで、残りの、ナトリウムイオンを含む試薬が添加される前に、ある時間(例えば少なくとも2時間、例えば少なくとも3時間、4時間、5時間、12時間または24時間など)保持される。
【0033】
さらなる態様において、ナトリウムイオンを含む試薬は、長時間(例えば少なくとも2時間、例えば少なくとも3時間、4時間、5時間、12時間または24時間)にわたって添加される。
【0034】
さらなる態様において、反応混合物は、ろ過の前に、30℃を超えない、例えば20℃または10℃を超えない温度まで冷却される。さらなる態様において、反応混合物は、ろ過の前に周囲温度まで冷却される。
【0035】
さらなる態様において、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件はさらに、ろ過の後に極性溶媒および水で反応混合物を洗浄することを含む。
【0036】
式(II)の化合物のアミド溶媒和物を式(I)の化合物またはその水和物に変換する本プロセスは、以前に記載されていたプロセスに比べていくつかの利点を提供し、大規模製造にいっそう適している。
【0037】
本プロセスは、以前の開示と比べて生成物収率を、この変換の場合のWO 2011/002999に記述される生成物収率77%から、90%超の生成物収率まで改善する。
【0038】
本プロセスは、以前に記載されていた全体的なプロセスの量を、例えば、15相対量と比べて8相対量の使用を可能にするなど、低減する。これが生成物収率の改善の一因である。全体量の低減は、経済的かつ環境的利点も提供する。
【0039】
当業者は、活性薬学的化合物の製造において、最終プロセスの段階で用いられる全ての材料の溶液のためのろ過段階の組み入れが、単離プロセスからおよび最終生成物から粒子状物質を排除するために必要であることを承知しているであろう。望ましくない生成物分解もほとんどなく周囲温度で、本プロセスにおいて作製されるアミン塩(ビス(トリエチルアンモニウム)塩のような、トリエチルアンモニウム塩)の調製を行って、得られた溶液をろ過することができる。望ましくない早期の固体沈殿もほとんどなく周囲温度で、アミン塩の調製を行って、得られた溶液をろ過することもできる。以前に記載されていたプロセスでは、完全な溶液を確実とするために上昇させた(例えば、80℃を超過した)温度でのろ過段階を要した。そのような条件下では顕著な生成物分解が起こることもあり、その結果、そのような手順は素早く実行されることを要する。これは、早期の生成物沈殿および/または生成物結晶化の制御不良につながることもあり、そのプロセスを超大規模に適合させる際の困難さにつながることもある。
【0040】
さらに、アミン塩を形成させる追加的な段階は、安定な溶液の形成を可能にする。安定な溶液の形成は、式(I)の化合物またはその水和物の種結晶の使用を可能にする。これは、生成物結晶化の制御改善および最終生成物の固形水和の制御改善を可能にする。以前に記載されていたプロセスによっては、制御された種結晶支援結晶化の使用が容易に可能にはならなかった。
【0041】
本プロセスではさらに、ナトリウムイオンを含む試薬として2-エチルヘキサン酸ナトリウムを利用する。この試薬は有機溶媒に高溶解性であり、不要な不純物の沈殿のリスクを最小限に抑えながら比較的高い濃度で添加することができる。これが生成物収率の改善の一因である。さらに、この試薬の弱塩基性の性質によって、プロセス系の全体のpHにほとんど影響を与えずに高濃度を添加することが可能になる。これによって、分解なしに生成物形成の制御改善が可能になる。以前に記載されていたプロセスでは水酸化ナトリウムを用いる必要があり、水酸化ナトリウムは大量に添加された場合、所望とされるpH制御を容易には提供せず、結果的に生じるpHの増加が生成物分解の増加および生成物収率の低減につながっていた。
【0042】
本プロセスにおいて記述されている式(I)の化合物またはその水和物の形成を実行するために選択される条件は、40℃以下の温度で反応が実行されることを可能にする。以前に記載されていたプロセスでは、60℃を超過した温度でこの段階を実行していた。本プロセスでは、生成物の分解を顕著に低減し、ゆえに、生成物の収率を(以前に記載されていたプロセスの場合の、3時間後に10%超の分解率から、24時間後に約1%の分解率まで)改善する。
【0043】
さらに、アミン塩の導入および水酸化ナトリウムに代えて本プロセスでの2-エチルヘキサン酸ナトリウムの使用によって、不要な塩、例えば一ナトリウム塩の沈殿のリスクが低減される。アミン塩の溶解性は、任意の潜在的なその中間体塩が、所望とされる式(I)の二ナトリウム塩またはその水和物よりも顕著に溶解性が高いというようなものである。以前に記載されていたプロセスでは中間体一ナトリウム塩の種を経ているものと思われ、これが不要な、一ナトリウム塩の沈殿のリスク増加につながっていた。本プロセスでは、一ナトリウム塩の種が形成する可能性の低い一貫したpHレベルを維持する。
【0044】
本発明の第2の局面において、式(II)の化合物のトリエチルアンモニウム塩である化合物が提供される。1つの態様において、トリエチルアミンと式(II)の化合物との化学量論比が0.5:1〜2.5:1、例えば1.5:1〜2.5:1、例えば約2:1などである、式(II)の化合物のトリエチルアンモニウム塩が提供される。さらなる態様において、式(II)の化合物のビス(トリエチルアンモニウム)塩(式(IV)の化合物)が提供される。
【0045】
さらなる態様において、式(I)の化合物またはその水和物の製造における中間体として用いるための式(IV)の化合物が提供される。
【0046】
式(II)の化合物のアミド溶媒和物を調製するためのプロセスは、WO 2011/002999に記述されている。具体的には、アミド溶媒和物は式(V)の酢酸溶媒和物から調製される。
【0047】
本発明のさらなる局面において、65℃など60℃を超える温度で、例えば約65℃から約100℃まで、例えば約85℃まで、または約60℃から約75℃までの温度で、アミドと式(V)の化合物を接触させる段階を含む、式(II)の化合物のアミド溶媒和物を調製するためのプロセスが提供される。
【0048】
1つの態様において、アミドはR30CON(R2)2であり、ここで各R2は独立して-HもしくはC1〜4アルキルであり、または両方のR2基は、それらが付着している窒素とともに4〜6員複素環を形成し、かつR30は-HもしくはC1〜4アルキルであり;あるいはR30、およびR2基の一方は、それぞれ、それらが付着している窒素とともに、組み合わさって4〜6員複素環を形成し、かつ他方のR2基は独立して-HもしくはC1〜4アルキルである。
【0049】
さらなる態様において、アミドは、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-ホルムアミド、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-アセトアミド、N-C1〜6アルキル-ピロリジノンおよびN-C1〜6アルキル-ピペリジノンからなる群より選択される。
【0050】
さらなる態様において、アミドは、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0051】
さらなる態様において、アミド溶媒和物は式(III)のものである。
【0052】
さらなる態様において、反応混合物は、65℃など60℃を超える温度まで加熱され、少なくとも10分間(例えば、少なくとも1時間など少なくとも30分間)その温度で維持され、その後、50℃を超えない(例えば、30℃を超えないなど40℃を超えない)温度まで冷却される。さらなる態様において、反応混合物は、少なくとも1時間(例えば、少なくとも4時間など少なくとも2時間)にわたって冷却され、その後、60℃を超えない温度まで再び加熱される。さらなる態様において、反応混合物は、2時間など少なくとも1時間にわたってその温度まで加熱される。さらなる態様において、反応混合物は、少なくとも1時間(例えば、少なくとも8時間など少なくとも4時間)にわたって周囲温度まで冷却される。
【0053】
さらなる態様において、反応混合物はさらに、式(II)の化合物のアミド溶媒和物の種結晶、例えば式(III)のアミド溶媒和物の種結晶を含む。
【0054】
式(II)の化合物のアミド溶媒和物を調製するための本プロセスは、以前に記載されていたプロセスに比べていくつかの利点を提供し、大規模製造にいっそう適している。
【0055】
本プロセスは、これまでに開示されているよりも(約50℃と比べて60℃を超える)高い温度で実行される。本プロセスはさらに、温度循環および制御冷却プロファイルを利用する。これらは、ともにまたは独立して、生成物の物理的形状の改善およびろ過性の改善の両方を提供し、ゆえに大規模製造の観点からプロセスを改善する。
【0056】
本発明のさらなる局面において、式(V)の化合物を形成させるのに適した条件の下で酢酸および水と式(VI)の化合物を接触させる段階を含む、式(V)の化合物を調製するためのプロセスが提供される:
式中、R3およびR4は、各々独立してC1〜6アルキルである。
【0057】
1つの態様において、R3およびR4は、ともにtert-ブチルである。
【0058】
さらなる態様において、式(V)の化合物を形成させるのに適した条件は、極性溶媒に溶かした式(VI)の化合物の溶液を酢酸および水の溶液と混ぜ合わせることを含む。
【0059】
さらなる態様において、極性溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)または酢酸イソプロピル、例えば酢酸イソプロピルなどから選択される。
【0060】
さらなる態様において、極性溶媒に溶かした式(VI)の化合物の溶液が酢酸および水の溶液に添加される。さらなる態様において、式(VI)の化合物の溶液の添加は、数時間、例えば最大約5時間までなど、最大6時間までにわたって実行される。
【0061】
さらなる態様において、混ぜ合わされた溶液は50〜90℃まで加熱される。さらなる態様において、溶液は70℃まで加熱される。
【0062】
さらなる態様において、ろ過は上昇した温度、例えば約50℃で実行される。
【0063】
さらなる態様において、酢酸および水の溶液はさらに、式(V)の化合物の種結晶を含む。
【0064】
さらなる態様において、式(V)の化合物を形成させるのに適した条件はさらに、反応混合物を極性溶媒で洗浄することを含む。
【0065】
別の態様において、式(VI)の化合物は、酢酸および水の溶液に固体の形状で直接添加されうる。
【0066】
式(VI)の化合物を式(V)の酢酸溶媒和物に変換する本プロセスは、以前に記載されていたプロセスに比べていくつかの利点を提供し、大規模製造にいっそう適している。
【0067】
本プロセスは、式(V)の化合物の種結晶の添加を伴う。本プロセスはさらに、数時間にわたる式(VI)の化合物の溶液の添加制御を伴う。これは生成物のろ過率を顕著に改善する。これによって、顕著によりいっそう容易なろ過プロセスが可能となる(例えば、本プロセスのろ過率0.21時間/kgと比べて、以前に記載されていたプロセスのろ過率は0.46時間/kg)。
【0068】
さらに、本プロセスは、上昇した温度での反応混合物のろ過を開示する。これもまた、ろ過の容易さを改善する。
【0069】
非効率的なろ過段階は、薬学的製品の大規模製造において重大な問題でありうる。本開示はゆえに、以前に記載されていたプロセスに比べて顕著な経済的かつ環境的利点を提供する。
【0070】
本発明のさらなる局面において、以下の段階を含む、式(VI)の化合物を調製するための方法が提供される:
式(VI)の化合物を形成させるのに適した条件の下で、テトラ-アルキルアンモニウム塩(例えばテトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)など)の存在下において、式(VII)
の化合物を式(VIII)
の化合物と接触させる段階であって、
式中、R3およびR4が各々独立してC1〜6アルキルであり、かつXがハロゲンである、段階。
【0071】
1つの態様において、式(VIII)の化合物はリン酸ジ-tert-ブチルクロロメチル(IX)である。
【0072】
さらなる態様において、式(VI)の化合物を生成させるのに十分な条件は、以下のことを含む:
(i) 極性溶媒中のテトラ-n-ブチルアンモニウムクロリドおよび塩基とともに式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物と混ぜ合わせること;ならびに
(ii) (i)から得られた生成物を水で洗浄すること。
【0073】
さらなる態様において、塩基は、無機塩基、例えば炭酸セシウム、炭酸カリウムまたはカリウムtert-ブトキシド、例えば炭酸カリウムなどである。
【0074】
さらなる態様において、極性溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N-ジメチルホルムアミド、スルホラン、メチルtert-ブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフランもしくは酢酸イソプロピル(IPAC)またはその混合物を含む。
【0075】
さらなる態様において、極性溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)および酢酸イソプロピル(IPAC)の混合物を含む。
【0076】
さらなる態様において、段階(i)における反応は、約40℃など、20〜50℃の温度で実行される。
【0077】
さらなる態様において、極性溶媒(例えば酢酸イソプロピルなど)に溶かした式(VIII)の化合物の溶液が、極性溶媒(例えばN,N-ジメチルアセトアミドなど)に溶かした式(VII)の化合物、テトラ-アルキルアンモニウム塩(例えばテトラ-n-ブチルアンモニウムクロリドなど)および塩基(例えば炭酸カリウムなど)の溶液に添加される。
【0078】
さらなる態様において、段階(i)における反応の完了後に、反応混合物は冷却され(例えば約5℃までなど)、さらに極性溶媒(例えば酢酸イソプロピルなど)が添加され、反応混合物は水で洗浄される。さらなる態様において、作業過程中の溶液の温度は25℃未満に維持される。
【0079】
式(VIII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する本プロセスは、以前に記載されていたプロセスに比べていくつかの利点を提供し、大規模製造にいっそう適している。詳細には、アルキル化反応は、詳細には望ましいアミドN-アルキル化と望ましくないアミドO-アルキル化との間の選択性を制御することが困難でありうる。本プロセスは、反応選択性を(例えばこれまでに開示されているプロセスと比べてN:O選択性を約6:1から約14:1まで改善することにより)改善する。本プロセスはさらに、製造規模で全体の生成物収率を(例えばこれまでに開示されているプロセスと比べて約5〜10%だけ)改善する。
【0080】
本過程は、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリドの使用について開示する。理論によって束縛されることを望むわけではないが、この試薬の導入は、用いられる塩基の溶解性にわずかな影響を及ぼし、後続の、式(VII)の化合物の陰イオンの溶解性および反応性にわずかな影響を及ぼし、これが反応の率および選択性の両方の改善につながるものと考えられる。これまでに開示されているプロセスでは、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリドを利用せず、それゆえ、所望とされる率および選択性のプロファイルを有していない。
【0081】
さらに、本プロセスでは、従前のプロセスでは溶媒として開示されていなかった酢酸イソプロピルを追加的な溶媒として導入する。N,N-ジメチルアセトアミド/酢酸イソプロピル混合溶媒の導入は、さらに低いN,N-ジメチルアセトアミド負荷によって反応の作業過程中に必要とされる水の量が減らされるので、全プロセスの量の低減を可能にする。加えて、酢酸イソプロピルを反応溶媒および抽出溶媒の両方として用い、この場合もやはり、全体的なプロセスの量を(例えば以前に記載されていたプロセスの場合の23相対量の溶媒から、本プロセスの場合の18相対量の溶媒まで)低減することができる。さらに、酢酸イソプロピルの導入は、以前に記載されていた多重の洗浄ではなく、単一の洗浄からなる、簡便化された作業過程の手順につながる。
【0082】
本発明のさらなる局面において、極性溶媒および水中のリン酸ジ-tert-ブチルカリウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム硫酸水素塩(TBAHS)および炭酸水素ナトリウムの混合物をクロロ硫酸クロロメチルと接触させる段階を含む、リン酸ジ-tert-ブチルクロロメチル(IX)を調製するためのプロセスが提供される。
【0083】
1つの態様において、極性溶媒は、2-メチルテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテルおよび酢酸イソプロピル、例えば酢酸イソプロピルなどから選択される。
【0084】
さらなる態様において、溶液は水および酢酸イソプロピルの混合物を含む。
【0085】
さらなる態様において、溶液は、周囲温度を超える温度(30℃を超える、例えば35℃を超えるなど)まで加熱される。
【0086】
リン酸ジ-tert-ブチルクロロメチル(IX)を調製する本プロセスは、以前に記載されていたプロセスに比べていくつかの利点を提供する。詳細には、従前のプロセスでは、リン酸ジ-tert-ブチルクロロメチル(IX)の分解を制御するためにDMACの添加を要した。このプロセスは、後続のプロセスでの使用の前にDMAC溶液から残留溶媒を除去するための困難な蒸留を招いた。溶媒として酢酸イソプロピルを用いることで、DMACを用いる必要性が取り除かれ、大規模製造にいっそう適した、はるかに単純な蒸留プロセスが可能となる。
【0087】
本発明のさらなる局面において、以下の段階を含む、式(I)
の化合物またはその水和物を調製するためのプロセスが提供される:
(a) R3およびR4が前述の通りである、式(VI)
の化合物を、式(V)
の化合物を形成させるのに適した条件の下で酢酸および水と接触させる段階;
式(V)の化合物を、式(II)
の化合物のアミド溶媒和物を形成させるのに適した条件の下でアミドと接触させる段階;
(b) 式(II)の化合物のアミド溶媒和物を、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件の下でアミンと接触させる段階;ならびに
(c) 式(II)の化合物のアミン塩を、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件の下でナトリウムイオンを含む試薬と接触させる段階。
【0088】
1つの態様において、本方法により生成される式(I)の化合物は、例えば六水和物などの水和物である。上記の特定のプロセス段階に関して記述される態様の各々は、独立して行われてもよく、または他のプロセス段階の場合の1つもしくは複数の態様と組み合わされてもよい。例えば、上記のプロセスにおいて、または独立して、(b)におけるアミドは、R30CON(R2)2、例えばN,N-ジ-(C1〜4アルキル)-ホルムアミド、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-アセトアミド、N-C1〜6アルキル-ピロリジノン、N-C1〜6アルキル-ピペリジノンまたはその組み合わせなどであることができる。独立して、上記(c)に記載されるアミンは、N(R40)3、例えばN(C1〜6アルキル)3、N-メチルモルホリンもしくはN-メチルピペリジンなどであることができ、またはより詳細には、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジ-イソプロピルエチルアミンおよびその組み合わせから選択されることができる。同様におよび独立して、(d)におけるナトリウムイオンを含む試薬は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウムおよびその組み合わせから選択される。
[本発明1001]
以下の段階を含む、式(I)
の化合物またはその水和物を調製するための方法:
(a) 式(II)
の化合物のアミド溶媒和物を、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件の下でアミンと接触させる段階;ならびに
(b) 該アミン塩を、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件の下でナトリウムイオンを含む試薬と接触させる段階。
[本発明1002]
式(I)の化合物が六水和物の形態にある、本発明1001の方法。
[本発明1003]
以下の段階を含む、式(VI)
の化合物を調製するための方法:
式(VI)の化合物を形成させるのに適した条件の下で、テトラ-アルキルアンモニウム塩の存在下において式(VII)
の化合物を式(VIII)
の化合物と接触させる段階であって、
式中、
R3およびR4が各々独立してC1〜6アルキルであり;かつ
Xがハロゲンである、段階。
[本発明1004]
以下の段階を含む、式(I)
の化合物またはその水和物を調製するための方法:
(a) R3およびR4が各々独立してC1〜6アルキルである、式(VI)
の化合物を、式(V)
の化合物を形成させるのに適した条件の下で酢酸および水と接触させる段階;
(b) 式(V)の化合物を、式(II)
の化合物のアミド溶媒和物を形成させるのに適した条件の下でアミドと接触させる段階;
(c) 式(II)の化合物のアミド溶媒和物を、式(II)の化合物のアミン塩を形成させるのに適した条件の下でアミンと接触させる段階;ならびに
(d) 式(II)の化合物のアミン塩を、式(I)の化合物またはその水和物を形成させるのに適した条件の下でナトリウムイオンを含む試薬と接触させる段階。
[本発明1005]
式(I)の化合物が六水和物の形態にある、本発明1005の方法。
[本発明1006]
アミド溶媒和物のアミド成分が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である、本発明1001、1002、1004または1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
式(II)の化合物のアミン塩のアミン成分が、N(R40)3であり、ここで各R40は独立して-HもしくはC1〜12アルキルであるか、または2つのR40基はそれらが付着している窒素とともに4〜6員複素環を形成しかつ残りのR40は-HもしくはC1〜12アルキルである、本発明1001、1002、1004、1005または1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
式(II)の化合物のアミン塩のアミン成分が、トリエチルアミンである、本発明1001、1002、1004、1005、1006または1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
ナトリウムイオンを含む試薬が、2-エチルヘキサン酸ナトリウムである、本発明1001、1002、1004、1005、1006、1007または1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
式(II)の化合物のトリエチルアンモニウム塩である化合物。
[本発明1011]
トリエチルアミンと式(II)の化合物との化学量論比が1.5:1〜2.5:1である、本発明1010の化合物。
[本発明1012]
式(II)の化合物のビス(トリエチルアンモニウム)塩である、本発明1010または本発明1011の化合物。
【発明を実施するための形態】
【0089】
発明の詳細な説明
「アルキル」とは、明示的に別段の定めをした場合を除き、1〜8個の炭素原子、例えば、1〜6個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有する一価飽和脂肪族ヒドロカルビル基をいう。この用語は、例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびネオペンチルのような直鎖および分枝鎖ヒドロカルビル基を含む。同様に例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基は全て、C1〜4アルキルという用語によって表される。同じく、より大きな数値範囲の炭素原子を示す用語(C1〜6アルキル)は、該数値範囲の中に入る任意の直鎖または分枝鎖ヒドロカルビルを代表する。
【0090】
「周囲温度」とは、15℃〜約25℃、例えば18℃〜22℃、例えば約20℃などの温度をいう。
【0091】
「塩基」とは、プロトンを受容できる物質をいう。塩基の例としては、無機塩基、例えば炭酸塩(例えば炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)および水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムなど)、ならびに有機塩基、例えば含窒素有機塩基(例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミンまたはジ-イソプロピルエチルアミンなど)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0092】
「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードをいう。
【0093】
「複素環(の)」とは、N、SおよびOから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含んだC連結型またはN連結型の4〜6員単環式飽和環系を意味する。例として、そのような複素環は、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、およびピロリジニル環を、N-メチルモルホリニルおよびN-メチルピペリジニルなどの、そのような環のN-アルキル化型を含めて、含む。
【0094】
「溶媒和物」とは、少なくとも1つの溶媒分子と少なくとも1つの溶質の分子またはイオンとの組み合わせによって形成された複合体をいう。当業者は、溶媒和物中の溶質に対する溶媒の化学量論が1より大きいか、1に等しいか、または1未満でありうることを理解するであろう。溶媒は有機化合物、無機化合物、または両方の混合物であることができる。溶媒のいくつかの例としては、酢酸、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-ホルムアミド、N,N-ジ-(C1〜4アルキル)-アセトアミド、N-C1〜6アルキル-ピロリジノン、N-C1〜6アルキル-ピペリジノン、N,N-ジメチルホルムアミドおよび水が挙げられるが、これらに限定されることはない。本明細書において用いられる場合、「溶媒和物」という用語は、本明細書において記述される溶媒和化合物を、いずれかの特定の種類の結合(例えばイオン結合または共有結合など)に制限することは意図されない。
【0095】
塩においては、プロトン移動は式(II)の化合物と塩の対イオン(例えばトリエチルアミンなど)との間で起こる。当業者は、場合によってプロトン移動が完全ではないこともあり、固体はそれゆえ、真の塩ではないことを承知しているであろう。そのような場合、式(II)の化合物および固体中の「共形成体(co-former)」分子は主に、水素結合のような非イオン力を通して相互作用する。プロトン移動は連続性であって、温度により変化することもあり、それゆえ、塩が共結晶として好ましく記述される点は、やや主観的でありうるということが受け入れられている。式(II)の化合物はそれゆえ、塩および共結晶形の混合物を形成することがあり、本発明は、塩形態、共結晶形および塩/共結晶混合物、ならびにそれらの任意の溶媒和物(水和物を含む)を包含することが理解されるべきである。
【0096】
リン酸ジ-tert-ブチルクロロメチル(IX)の合成を下記スキームIに示す。
【0097】
R3およびR4がともにtert-ブチルである式(VI)の化合物(式(X))の、式(VII)の化合物からの合成を下記スキームIIに示す。
【0098】
式(V)の化合物の、式(X)の化合物からの合成を下記スキームIIIに示す。
【0099】
式(III)の化合物の、式(V)の化合物からの合成を下記スキームIVに示す。
【0100】
式(II)の化合物のビス(トリエチルアンモニウム)塩(式(IV)の化合物)の合成を下記スキームVに示す。
【0101】
式(I)の化合物またはその水和物の、式(IV)の化合物からの合成を下記スキームVIに示す。
【実施例】
【0102】
本発明は、本発明のある特定の局面の純粋に例示であることが意図されかつ本発明の範囲を限定する事は意図されない以下の実施例を参照することによってさらに理解される。
【0103】
下記の実施例において、および明細書の全体を通じて、以下の略語は以下の意味を有する。定義されていなければ、用語は、一般に受け入れられているその意味を有する。
AcOH = 酢酸
DMAC = N,N-ジメチルアセトアミド
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド
DMI = 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン
DMSO = ジメチルスルホキシド
g = グラム
IPA = イソプロパノール
IPAC = 酢酸イソプロピル
kg = キログラム
L = リットル
mbar = ミリバール
ml = ミリリットル
mol eq = モル当量
MTBE = メチルtert-ブチルエーテル
TBAC = テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド
TBAHS = テトラ-n-ブチルアンモニウム硫酸水素塩
w/v = 重量/容量
w/w = 重量/重量
【0104】
一般的な手順
Bruker Avance 400分光計を300 Kで用いて、プロトン(1H)および炭素(13C)核磁気共鳴(NMR)スペクトルを取得した。サンプルは、トリメチルシラン(TMS)を含有するd6-DMSO (d6-ジメチルスルホキシド)、またはd4-MeOD (d4-メタノール)中の溶液として調製された。NMRデータは各シグナルの記述で、標準的な略語(s = 一重線、d = 二重線、m = 多重線、t = 三重線、q = 四重線、br = 広域など)を用い、化学シフト(δ, ppm単位)のリストとして報告されている。スペクトルはd6-DMSO (δ = 2.50 ppm)またはd4-MeOD (δ = 3.30 ppm)を基準とした。共鳴の記述のなかで、測定された場合、J-結合定数が記載されている。当技術分野において周知であるように、分析物濃度のバラツキのような、サンプル調製のバラツキの結果として、化学シフトおよびJ-結合定数のわずかなバラツキが生じることもある。
【0105】
Bruker micrOTOF-Q四重極飛行時間型質量分析計を用いて、質量分析データを得た。正イオンエレクトロスプレイイオン化を用いてサンプルを分析した。正確な質量測定を用いて、結果的に生じたイオンの元素式を決定した。
【0106】
伝熱ジャケットを装着し、適切な付属機器で保守点検されるガラスライニング鋼製反応器の中で大規模反応を実行した。より小規模なプロセスの場合には、標準的な実験用ガラス製品および機器を用いた。出発材料、溶媒および試薬は、商業的に購入し、供給されたままの状態で用いた。
【0107】
実施例1
リン酸[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル二ナトリウム六水和物の調製
【0108】
段階A:6-[(2-クロロ-5-フルオロ-ピリミジン-4-イル)アミノ]-2,2-ジメチル-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3-オンの調製
5-フルオロピリミジン-2,4-ジオール(525 kg, 1.00 mol当量)をオキシ塩化リン(1545 kg, 2.50 mol当量)と混合し、窒素雰囲気下で撹拌しながら約100℃まで加熱する。次にN,N-ジメチルアニリン(980 kg, 2.00 mol当量)を約9時間にわたって添加し、得られる混合物を最大4時間まで約100℃で撹拌する。これを次に、約2時間かけて約20℃まで冷却し、その後、水(3150 kg)およびジクロロメタン(1915 kg)の混合物に入れて冷却し、温度を40℃未満に維持する。内容物を次に、少なくとも3時間、約20℃で撹拌し、その後、層を分離する。水相をジクロロメタン(1915 kg)で洗浄し、層を再び分離する。合わせた有機物を次に、少なくとも1回、時に2回以上、濃縮塩酸水溶液(525 kg)で洗浄し、次に5% w/wの炭酸水素ナトリウム水溶液(2625 kg)で洗浄する。得られる有機溶液を次に、大気圧で約1310 kgまで蒸留し、典型的な溶液強度約50% w/wおよび収率約95%で、2,4-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンのジクロロメタン溶液を得る。この溶液をその後、次のプロセスにおいて直接用いる。
【0109】
6-アミノ-2,2-ジメチル-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3-オン(450 kg, 1.00 mol当量)を窒素雰囲気下で、約65℃まで加熱しながらメタノール(1971 kg)および水(1610 kg)の混合物中で撹拌する。これに、2,4-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンのジクロロメタン溶液(2,4-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジン545 kg, 1.40 mol当量,約50% w/wの溶液)を約4時間にわたって添加し、この間にジクロロメタンを留去する。この混合物を次に、蒸留が完了するまで約70℃で撹拌し、その後、約15時間還流状態で撹拌する。これを次いで、約45℃まで冷却し、ろ過する。ろ過された固体をメタノールで2回(2×675 kg)洗浄し、その後、約55℃で真空下で乾燥させる。乾燥したら、固体を約6時間、約50℃で85% w/wの含水ギ酸(3150 kg)中でスラリーにし、その後、ろ過する。このスラリーは繰り返して行われうる。結果的に生じる湿気のある固体を約20℃まで冷却し、メタノールで2回(2×1800 kg)洗浄し、約80℃で真空下で乾燥させて、表題の化合物(577 kg, 77%)を有色の固体として得る。
m/z 324 [MH]+
【0110】
段階B:6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3-オンの調製
6-[(2-クロロ-5-フルオロ-ピリミジン-4-イル)アミノ]-2,2-ジメチル-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3-オン(段階A) (568 kg, 1.00 mol当量)を窒素雰囲気下で撹拌しながら、N-メチルピロリジン-2-オン(2835 kg)中の3,4,5-トリメトキシアニリン(402 kg, 1.25 mol当量)と混合する。これに水(11 kg)を添加し、混合物を約120℃まで加熱し、約10時間撹拌する。これを次いで、約65℃まで冷却し、pHを4% w/wの水酸化ナトリウム水溶液でpH 8.5に調整する。結果的に生じるスラリーを約20℃までさらに冷却し、少なくとも6時間撹拌し、その後、ろ過する。ろ過された固体を水で2回(2×1440 kg)洗浄し、その後、アセトンで2回(2×1140 kg)洗浄し、最後に約40℃で真空下で乾燥させて、表題の化合物(754 kg, 91%)を有色の固体として得る。
m/z 471 [MH]+
【0111】
段階C:リン酸ジtert-ブチル[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチルの調製
6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3-オン(段階B) (382 kg, 1.00 mol当量)、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド(57.5 kg, 0.25 mol当量)および炭酸カリウム(252 kg, 2.25 mol当量)のN,N-ジメチルアセトアミド(1792 kg)混合物を、撹拌しながら約40℃まで加温する。これに、リン酸ジtert-ブチルクロロメチル(実施例2)の酢酸イソプロピル溶液(リン酸ジtert-ブチルクロロメチル229 kg, 1.10 mol当量,約25% w/vの溶液)を添加する。結果的に生じる混合物を約8時間撹拌し、その後、約5℃まで冷却する。温度を25℃未満に維持しながら、酢酸イソプロピル(1329 kg)を添加し、その後、水(2292 kg)をゆっくり添加する。次いで層を分離し、観察される3つの上層を保持する。これに酢酸(99 kg)を添加し、結果的に生じる、副題の化合物の溶液を次の段階において直接用いる。
【0112】
段階D:リン酸二水素[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル; 酢酸溶媒和物の調製
リン酸二水素[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル; 酢酸溶媒和物の種結晶(WO 2011/002999に記述されている方法によって合成された) (15 kg, 0.03 mol当量)とともに酢酸(2605 kg)および水(860 kg)の混合物を約70℃まで加熱する。これに次いで、約5時間かけてリン酸ジtert-ブチル[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル(段階C)の溶液を添加する。結果的に生じる混合物を約1時間さらに撹拌し、約50℃まで冷却し、その後、ろ過し、アセトンで2回(2×605 kg)洗浄する。湿気のある固体を最終的に、約40℃で真空下で乾燥させて、副題の化合物(317 kg, 61%)をオフホワイト色の固体として得る。
m/z 581 [MH]+
【0113】
段階E:リン酸二水素[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル; N,N-ジメチルホルムアミド溶媒和物の調製
約65℃の加熱された容器中のリン酸二水素[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル; 酢酸溶媒和物(段階D) (3.50 kg)に、熱N,N-ジメチルホルムアミド(17.5 kg,約70℃まで予熱された)を加える。混合物を約30分間約65℃で撹拌し、リン酸二水素[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル; N,N-ジメチルホルムアミド溶媒和物の種結晶(WO 2011/002999に記述されている方法によって合成された) (0.04 kg)を添加し、その後、混合物を約4時間かけて約40℃まで冷却する。これを次に、約1時間かけて約60℃まで再び加温し、約30分間保持し、その後、約8時間かけて約20℃まで冷却する。結果的に生じるスラリーを少なくとも10時間撹拌し、ろ過し、その後、メチル-t-ブチルエーテルで2回(2×7.88 kg)洗浄する。湿気のある固体を最終的に、約40℃で真空下で乾燥させて、副題の化合物(2.82 kg, 88%)を白色〜オフホワイト色の固体として得る。
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【0114】
段階F:リン酸ビス(トリエチルアンモニウム) [6-[[5-フルオロ-2-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチルの調製
リン酸二水素[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル; N,N-ジメチルホルムアミド溶媒和物(段階E) (1.00 kg, 1.00 mol当量)に、トリエチルアミン(0.34 kg, 2.20 mol当量)のイソプロパノール(1.32 kg)および水(3.33 kg)溶液を添加する。これを約20℃で撹拌して、溶液を得、これを次にろ過する。結果的に生じる、副題の化合物の溶液を次の段階において直接用いる。
【0115】
段階G:リン酸[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル二ナトリウム六水和物の調製
リン酸ビス(トリエチルアンモニウム) [6-[[5-フルオロ-2-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル(段階F)の溶液を約40℃まで加温し、その後、2-エチルヘキサン酸ナトリウム(0.05 kg, 0.20 mol当量)のイソプロパノール(0.04 kg)および水(0.10 kg)溶液を約20分かけて添加する。結果的に生じる溶液にその後、リン酸[6-[[5-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシアニリノ)ピリミジン-4-イル]アミノ]-2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル二ナトリウム六水和物の種結晶(WO 2011/002999に記述されている方法によって合成された)(0.01 kg, 0.01 mol当量)を添加し、混合物を約3.5時間保持する。2-エチルヘキサン酸ナトリウム(0.97 kg, 3.80 mol当量)のイソプロパノール(0.75 kg)および水(1.90 kg)溶液を次に、約6時間かけて添加する。結果的に生じるスラリーを少なくとも1時間かけて約20℃まで冷却し、約1時間撹拌し、その後、ろ過し、イソプロパノール(0.53 kg)および水(1.33 kg)の混合物で洗浄し、その後、アセトン(1.58 kg)で洗浄する。湿気のある固体を最終的に、約40℃で真空下(約400 mbar)で乾燥させて、表題の化合物(1.03 kg, 92%)を白色〜オフホワイト色の固体として得る。
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【0116】
実施例2
リン酸ジtert-ブチルクロロメチルの調製
リン酸ジtert-ブチルカリウム(261 kg, 1.00 mol当量)、テトラ-n-ブチルアンモニウム硫酸水素塩(18.5 kg, 0.05 mol当量)および炭酸水素ナトリウム(400 kg, 4.50 mol当量)の水(1150 kg)混合物に、酢酸イソプロピル(1275 kg)を添加する。混合物を約35℃まで加温し、その後、これに、約4時間かけてクロロ硫酸クロロメチル(313 kg, 1.80 mol当量)を添加する。混合物を約45分間さらに撹拌し、約25℃まで冷却し、その後、層を分離する。有機相を約10℃まで冷却し、2% w/vの炭酸水素カリウム水溶液で2回(2×800 kg)洗浄し、その後、混合された2% w/vの炭酸水素カリウムおよび20% w/vの炭酸水素カリウム水溶液(640 kg)で洗浄する。結果的に生じる有機溶液を次に、温度を45℃未満に維持しながら、100 mbar未満で半分の容量まで蒸留する。結果的に生じる混合物をろ過し、フィルタを酢酸イソプロピル(115 kg)で洗浄して、典型的な溶液強度約25% w/vおよび収率約90%で、表題の化合物を溶液として得る。この溶液を次に、実施例1の段階Cにおいて直接用いる。