特許第6522012号(P6522012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522012
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】炭化水素をオレフィンに変換する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/06 20060101AFI20190520BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 5/333 20060101ALI20190520BHJP
   C07C 5/327 20060101ALI20190520BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190520BHJP
【FI】
   C07C4/06
   C10G47/00
   C07C7/04
   C07C15/04
   C07C15/06
   C07C15/08
   C07C11/06
   C07C11/08
   C07C11/04
   C07C5/333
   C07C5/327
   !C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-570165(P2016-570165)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-511813(P2017-511813A)
(43)【公表日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2014079210
(87)【国際公開番号】WO2015128039
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】14156633.1
(32)【優先日】2014年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503013200
【氏名又は名称】サウジ ベーシック インダストリーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAUDI BASIC INDUSTRIES CORPORAITON
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ディットリッヒ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ウィリゲンバーグ、ジョリス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラスコ ペレズ、ラウル
(72)【発明者】
【氏名】シャーレッケンズ、エギディウス ジャコバ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパラン、ヴィジャヤナンド
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、アンドリュー マーク
(72)【発明者】
【氏名】オプリンス、アーノ ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ナレイアナスワミー、ラヴィチャンダー
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04137147(US,A)
【文献】 特開昭60−004136(JP,A)
【文献】 特開昭61−047794(JP,A)
【文献】 特開昭51−027242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C10G 1/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料をオレフィン又はBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)に変換する方法であって、前記方法は、
第1の水素化分解部に炭化水素原料を供給するステップと、
前記第1の水素化分解部からの流出物を第1の分離部へ供給するステップと、
前記第1の分離部において、前記流出物を、水素を含むストリーム、メタンを含むストリーム、エタンを含むストリーム、プロパンを含むストリーム、ブタンを含むストリーム、C1−を含むストリーム、C2−を含むストリーム、C3−を含むストリーム、C4−を含むストリーム、C1−C2を含むストリーム、C1−C3を含むストリーム、C1−C4を含むストリーム、C2−C3を含むストリーム、C2−C4を含むストリーム、C3−C4を含むストリーム、及びC5+を含むストリームの群から選択されたストリームのうち、少なくとも、プロパンを含むストリーム、ブタンを含むストリーム、C2−を含むストリーム、エタンを含むストリーム、及びC1−C2を含むストリームの群から選択された少なくとも1つのストリームと、C5+を含むストリームとに分離するステップと、
前記プロパンを含むストリームを、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)及びプロパン脱水素部(PDH)の群から選択された、触媒プロセスである脱水素プロセスを実行する少なくとも1つの脱水素部に供給するステップと、
前記C2−を含むストリーム、前記エタンを含むストリーム、及び前記C1−C2を含むストリームの群から選択された少なくとも1つのストリームを、蒸気分解部及び/又は第2の分離部へ供給するステップと、
前記ブタンを含むストリームを、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)及びブタン脱水素部(BDH)の群から選択された、触媒プロセスである脱水素プロセスを実行する少なくとも1つの脱水素部に供給するステップと、
前記脱水素部及び前記蒸気分解部からの流出物の少なくとも一方を前記第2の分離部へ供給するステップと、
前記C5+を含むストリームを第2の水素化分解部に供給するステップと、
前記第2の水素化分解部からの流出物を、C4−を含むストリーム、未変換C5+を含むストリーム、及びBTXを含むストリームに分離するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
蒸気分解プロセスは熱分解プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の水素化分解部から得られる前記C4−を含むストリームを前記第1の分離部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の水素化分解部から得られる前記未変換C5+を含むストリームと、前記炭化水素原料とを混合し、得られた混合ストリームを前記第1の水素化分解部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素原料を高芳香族含有ストリームと低芳香族含有ストリームとに分離することにより前処理するステップと、
前記低芳香族含有ストリームを前記第1の水素化分解部に供給するステップと、
前記高芳香族含有ストリームを前記第2の水素化分解部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エタンを含むストリームをエタン脱水素部に供給するステップと、
前記エタン脱水素部からの流出物を前記第2の分離部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記エタン脱水素部、前記第1の分離部、前記ブタン脱水素部、前記複合プロパン/ブタン脱水素部、及び前記プロパン脱水素部のいずれかからの流出物を、前記第2の分離部において、水素を含むストリーム、メタンを含むストリーム、C3を含むストリーム、C2=を含むストリーム、C3=を含むストリーム、C4混合物を含むストリーム、C5+を含むストリーム、C2を含むストリーム、及びC1−を含むストリームの群から選択された1以上のストリームに分離するステップを更に含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の分離部から得られた前記C2を含むストリームを前記エタン脱水素部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の分離部から得られた前記C5+を含むストリームを前記第1の水素化分解部及び/又は前記第2の水素化分解部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記第2の分離部から得られた前記水素を含むストリームを前記第1の水素化分解部及び/又は前記第2の水素化分解部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第2の分離部から得られた前記C1−を含むストリームを前記第1の分離部に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項から1のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2の分離部から得られた前記C3を含むストリームを前記プロパン脱水素部(PDH)及び/又は前記複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項から1のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフサなどの炭化水素をオレフィンに、好ましくはBTXにも変換する方法に関する。より具体的には、本発明は、ナフサをオレフィンに、好ましくはBTXにも変換するための、水素化分解、熱分解、及び脱水素化の組合せに基づく統合された方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
米国特許第4,137,147号は、沸点が約360℃未満であり、1分子あたり少なくとも4個の炭素原子を含むノーマル及びイソパラフィンを少なくとも含む原油から、エチレン及びプロピレンを製造する方法であって、原油は、水素化分解ゾーンにおいて、触媒存在下で水素化分解反応を受け、(b)水素化分解反応からの流出物は、(i)上部から、メタン及び場合によっては水素、(ii)1分子あたり2及び3個の炭素原子を含む炭化水素から実質的になる留分、(iii)下部から、1分子あたり少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素からなる留分が排出される分離ゾーンに供給され、(c)1分子あたり2及び3個の炭素原子を含む炭化水素から実質的になる留分のみが蒸気分解ゾーンに供給され、蒸気存在下で、1分子あたり2及び3個の炭素原子を含む炭化水素の少なくとも一部がモノオレフィン炭化水素に変換され、分離ゾーンの下部から得られた、1分子あたり少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素から実質的になる留分は、第2の水素化分解ゾーンにおいて、触媒存在下で処理され、第2の水素化分解ゾーンからの流出物は分離ゾーンに供給され、分離ゾーンにおいて、一方で、1分子あたり少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素が、他方で、水素、メタン、及び1分子あたり2及び3個の炭素原子を含む飽和炭化水素の混合物から実質的になる留分が排出され、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素の少なくとも一部は第2の水素化分解ゾーンに再生利用され、水素ストリーム及びメタンストリームは混合物から分離され、2及び3個の炭素原子を含む炭化水素は、第1の水素化分解ゾーンに続く分離ゾーンから回収された1分子あたり2及び3個の炭素原子を含む炭化水素から実質的になる留分とともに、蒸気分解ゾーンに供給される方法に関する。蒸気分解ゾーンの出口では、メタン及び水素のストリーム、及び、1分子あたり2及び3個の炭素原子を含むパラフィン系炭化水素のストリームに加えて、1分子あたり2及び3個の炭素原子を含むオレフィン、及び、1分子あたり少なくとも4個の炭素原子を含む生成物が得られる。この米国特許第4,137,147号によれば、全てのC4+化合物は、第2の水素化分解ゾーンにおいて更に処理される。
【0003】
国際公開第2010/111199号は、(a)ブタンを含むストリームを、ブタンをブテン及びブタジエンに変換して脱水素化ユニット生成物ストリームを生成する脱水素化ユニットに供給するステップと、(b)脱水素化ユニット生成物ストリームを、ブタジエン生成物ストリーム、及び、ブテン及びブタジエン残渣を含むラフィネートストリームを生成するブタジエン抽出ユニットに供給するステップと、(c)ラフィネートストリームを、ブタジエン残渣をブテンに変換して選択的水素化ユニット生成物ストリームを生成する選択的水素化ユニットに供給するステップと、(d)選択的水素化ユニット生成物ストリームを、イソブタン及びイソブテンを水素化ユニット生成物ストリームから分離して、イソブタン/イソブテンストリーム及び脱イソブテン化ユニット生成物ストリームを生成する脱イソブテン化ユニットに供給するステップと、(e)脱イソブテン化ユニット生成物ストリーム、及び、エチレンを含む供給物ストリームを、ブテンとエチレンを反応させてプロピレンを形成させることが可能であり、オレフィン変換ユニット生成物ストリームを生成するオレフィン変換ユニットに供給するステップと、(f)オレフィン変換ユニット生成物ストリームからプロピレンを回収するステップと、を含むオレフィン生成方法に関する。
【0004】
国際公開第2006/124175号は、軽油、減圧軽油、及び常圧残油を変換してオレフィン、ベンゼン、トルエン、及びキシレン、及び超低硫黄軽油を生成するための方法であって、(a)液体触媒分解ゾーンにおいて炭化水素原料油を反応させ、C4−C6オレフィン及びライトサイクルオイル(LCO)を生成するステップと、(b)オレフィン分解ユニットにおいてC4−C6オレフィンを反応させ、エチレン及びプロピレンを生成するステップと、(c)水素化分解触媒を含む水素化分解ゾーンにおいてライトサイクルオイルを反応させ、芳香族化合物及び超低硫黄軽油を含む水素化分解ゾーン流出物を生成するステップと、(d)エチレン、プロピレン、芳香族化合物、及び超低硫黄軽油を回収するステップと、を含む方法に関する。
米国特許第3,718,575号は、ガソリン沸点範囲より高い沸点を有する炭化水素原料油と水素とを、第1反応ゾーンにおいて、ガソリン沸点範囲の炭化水素を生成するように選択された水素化分解条件で反応させるステップと;得られた第1反応ゾーン流出物を、第1分離ゾーンにおいて分離して、ガソリン沸点範囲の炭化水素を含む第1蒸気相と、ガソリン沸点範囲より高い沸点を有する炭化水素を含む第1液相とを供給するステップと;第1蒸気相を、第2反応ゾーンにおいて、液状炭化水素を標準的に液化石油ガス成分に転化するように選択された水素化分解条件で反応させるステップと;得られた第2反応ゾーン流出物を、第2分離ゾーンにおいて分離して、第2蒸気相と第2液相とを供給するステップと;第2液相を更に分離して、未反応のガソリン沸点範囲の炭化水素を含む第3液相を供給し、液化石油ガスを回収するステップとを含む液化石油ガスの製造方法に関する。
米国特許第4,458,096号は、エタン及びプロパンを含む原料ストリームから高い選択率でエチレン及びプロピレンを生成する方法であって、原料ストリームをエタン留分及びプロパン留分に分離するステップと;エタン留分を蒸気分解ユニットに通過させてエチレンに富んだストリームを生成するステップと;プロパン留分を触媒上で脱水素化ユニットを通過させてプロピレンに富んだストリームを生成するステップと;プロピレンに富んだストリームの圧力をエチレンに富んだストリームの圧力とほぼ等しい圧力に調整するステップと;エチレンに富んだストリームとプロピレンに富んだストリームを合わせて、混合エチレン/プロピレンストリームを生成するステップと;混合エチレン/プロピレンストリームをまず圧縮し、冷却して、不純物及び副生成物を除去し、精製ストリームを生成するステップと;精製ストリームを低温分留して、エチレン、プロピレン、未反応エタン、及び未反応プロパンを回収するステップと;未反応のエタン及びプロパンを蒸気分解ユニット及び脱水素化ユニットへそれぞれ再循環させるステップとを含む方法に関する。
【0005】
従来、原油は、蒸留により、ナフサ、軽油、及び残渣などの多数の留分に加工される。これらの留分のそれぞれは、例えば、ガソリン、軽油、灯油などの輸送燃料の製造や、石油化学製品及びその他の加工品の原料など、多様な利用の可能性を有している。
【0006】
ナフサや軽油などの軽質油留分は、エタン脱水素化などのプロセスにより軽質オレフィン及び単環芳香族化合物を生成するために利用することができる。エタン脱水素化において、炭化水素原料ストリームは、蒸発され、蒸気で希釈され、短滞留時間(<1秒)炉(反応装置)の管において、高温(750℃〜900℃)に晒される。このようなプロセスにおいて、原料中の炭化水素分子は、平均して、より短い分子や、原料の分子に比べて炭素原子に対する水素原子の比がより小さい分子(オレフィンなど)に変換される。このプロセスは、有用な副産物としての水素や、メタン及びC9+芳香族及び縮合芳香族種(縁を共有する2以上の芳香環を含む)などのより価値の低い多量の副産物も生成する。
【0007】
一般に、原油からの、より軽質な(蒸留可能な)生成物の収量を最大化するために、残油などの、より重質な(又はより高い沸点の)芳香族種が、原油精製装置で更に処理される。この処理は、水素化分解などのプロセス(ここで、水素化分解原料は、原料分子が水素原子の同時の付加によってより短い炭化水素分子に分解されていくつかの断片になるような条件下で、適切な触媒に曝される)により実行することができる。重質な精製ストリームの水素化分解は、一般に、高圧高温で実行されるため、資本コストが高い。
【0008】
原油蒸留と軽質留分の蒸気分解の組合せの側面は、原油の分留に関連する資本及び他のコストである。より重質な原油の留分(すなわち、沸点が約350℃超)は、置換芳香族種、とくに、置換縮合芳香族種(縁を共有する2以上の芳香環を含む)に比較的富んでおり、蒸気分解条件下では、これらの物質は、C9+芳香族及び縮合芳香族などの重質な副生成物を相当量生成する。したがって、原油蒸留と蒸気分解との従来の組合せの結果は、より重質な留分からの有益な生成物の分解収量は十分に高いとは考えられないことから、原油の相当量、例えば50質量%が蒸気分解により処理されないことになる。
【0009】
上述した技術の別の側面として、軽質油留分(例えばナフサ)のみを蒸気分解により処理する場合であっても、供給ストリームのかなりの部分が、より価値の低い重質副生成物、例えばC9+芳香族及び縮合環芳香族に変換されることがある。一般的なナフサ及び軽油によれば、これらの重質副生成物は、総生成物収量の2〜25%を構成する(表VI、290頁、熱分解:工業的手法の理論、Lyle F. Albrightら、Academic Press、1983)。これは、高価なナフサ及び/又は軽油が、従来の蒸気分解装置の規模で、より低い価値の物質になり、経済的に大幅に劣化することを意味するが、これらの重質副生成物の収量は、一般に、これらの物質をより高い価値の多量の化学物質を生成するストリームに改良する(例えば、水素化分解により)のに必要な資本投資を正当化しない。これは、部分的には、水素化分解プラントが、多くの石油化学プロセスと同様に、大きな資本コストを要するからである。これらのユニットの資本コストは、一般に、スループットの0.6又は0.7乗で変化する。したがって、小規模の水素化分解ユニットの資本コストは、通常、重質副生成物の蒸気分解プロセスへの投資を正当化するには高過ぎると考えられる。
【0010】
残油などの重質な精製ストリームの従来の水素化分解の別の側面は、一般に、望まれる全ての変換を達成するように選択される折衷条件下で実行されることである。供給物ストリームは、分解が容易な範囲で各種の混合物を含有するので、これにより、比較的容易に水素化分解される種の水素化分解によって生成された蒸留可能な生成物の一部の留分が、水素化分解がより困難である種を水素化分解するのに必要な条件下で、更に変換されることになる。これは、プロセスに関連する水素消費及び熱管理の困難性を増加させる。また、これは、より有益な種を犠牲にして、メタンなどの軽質分子の収量を増加させることにもなる。
【0011】
原油蒸留と軽質留分の蒸気分解を組み合わせた結果は、沸点が約350℃よりも高い物質を大量に含む留分を処理するにあたって、蒸気分解炉の管は概して不適であるということである。これは、炭化水素混合物を接触させる前にこれらの留分を完全に蒸発させ、熱分解を進行させるために必要な高温に加熱するのが困難だからである。液体の炭化水素の小滴が分解管の高温部分に存在すると、コークが急速に管表面に堆積し、これにより、熱交換が減退されるとともに、圧力降下が増進され、最終的には、コークを除去するために分解管の運転の停止を余儀なくされる。この難点のため、元の原油の多くの部分が、蒸気分解により軽質オレフィン及び芳香族種に加工できない。
【0012】
米国特許出願公開第2012/0125813号、米国特許出願公開第2012/0125812号、及び米国特許出願公開第2012/0125811号は、蒸発ステップと、蒸留ステップと、コーキングステップと、水素化処理ステップと、蒸気分解ステップとを備える重質炭化水素原料を分解する方法に関する。例えば、米国特許出願公開第2012/0125813号は、重質炭化水素原料を蒸気分解して、エチレン、プロピレン、C4オレフィン、熱分解ガソリン、及び他の生成物を製造する方法であって、炭化水素、すなわち、エタン、プロパン、ナフサ、軽油、又は他の炭化水素留分などの炭化水素原料の混合物の蒸気分解は、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン、並びに、ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族を製造するのに広く使用されている非触媒の石油化学的プロセスであることを特徴とする方法に関する。
【0013】
米国特許出願公開第2009/0050523号は、水素化分解運転と統合した方法で、液体全原油及び/又は天然ガス由来の凝縮物を熱分解炉内で熱分解することによるオレフィンの生成に関する。
【0014】
米国特許出願公開第2008/0093261号は、液体全原油及び/又は天然ガス由来の凝縮物を、原油精製装置と統合された態様で、熱分解炉内で炭化水素熱分解することによるオレフィンの形成に関する。
【0015】
ナフサの蒸気分解により、高い収量のメタンと、比較的低い収量のプロピレン(プロピレン/エチレン比が約0.5)だけでなく、比較的低い収量のBTXが得られる。BTXは、貴重な成分であるベンゼン、トルエン、及びキシレンなどとともに得られる。これらの成分は、単蒸留により仕様通りに回収することはできず、溶媒抽出などのより手の込んだ分離技術により回収される。
【0016】
ナフサ原料にFCC技術を適用することにより、非常に高いプロピレンの相対収率(プロピレン/エチレン比が1〜1.5)が得られるが、所望の芳香族(BTX)に加えてメタン及び循環油の比較的多量のロスが依然としてある。
【0017】
本明細書において使用される「C#炭化水素」又は「C#」(ここで、「#」は正の整数)という用語は、#個の炭素原子を有する全ての炭化水素を記述することを意味する。また、「C#+炭化水素」又は「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有する全ての炭化水素分子を記述することを意味する。したがって、「C5+炭化水素」又は「C5+」は、5個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を記述するために用いられる。「C5+アルカン」は、5個以上の炭素原子を有するアルカンに関する。したがって、「C#−炭化水素」又は「C#−」は、水素を含む、#個以下の炭素原子を有する炭化水素の混合物を記述するために用いられる。例えば、「C2−」又は「C2マイナス」は、エタン、エチレン、アセチレン、メタンおよび水素の混合物に関する。最後に、「C4混合物」は、ブタン、ブテン、及びブタジエン、すなわち、n−ブタン、i−ブタン、1−ブテン、cis−及びtrans−2−ブテン、i−ブテン、及びブタジエンの混合物を表すものとして用いられる。例えば、「C1−C3」は、C1、C2、及びC3の混合物を含む。
【0018】
本明細書において、「オレフィン」は、その定着した意味を有する用語として使用される。したがって、オレフィンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素化合物に関する。好ましくは、「オレフィン」は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン−1、イソブチレン、イソプレン、及びシクロペンタジエンの2以上を含む混合物に関する。同一の炭素数を有する純粋な又は混合したオレフィンを「C#=」と称する。例えば、「C2=」はエチレンを表す。
【0019】
本明細書において使用される「LPG」という用語は、「液化石油ガス(liquefied petroleum gas)」の定着した頭字語を指す。LPGは、一般に、C3−C4炭化水素のブレンド、すなわち、C3及びC4炭化水素の混合物からなる。
【0020】
本発明の方法で生産される石油化学生成物の1つは、BTXである。本明細書において使用される「BTX」という用語は、ベンゼン、トルエン、及びキシレンの混合物に関する。好ましくは、本発明の方法で製造される生成物は、更に、エチルベンゼンなどの有用な芳香族炭化水素を含む。したがって、本発明は、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンの混合物(「BTXE」)を製造する方法を提供する。製造される生成物は、異なる芳香族炭化水素の物理的混合物であってもよいし、精製された異なる生成物のストリームを提供するために、例えば蒸留によって更に直接分離処理されてもよい。そのような精製された生成物のストリームは、ベンゼン生成物ストリーム、トルエン生成物ストリーム、キシレン生成物ストリーム、及び/又はエチルベンゼン生成物ストリームを含み得る。
【0021】
本発明の目的は、ナフサをオレフィン及び好ましくはBTXにも変換する方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、非常に少ないメタン生成及び最小限の重質副生成物による高い炭素利用率を有する方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、水素の経済性及び収支をより良好にするために、水素生成ステップと水素消費処理ステップとの統合を組み込んだ、ナフサを有用な炭化水素に変換する方法を提供することである。
【0024】
本発明は、炭化水素原料をオレフィン及びBTXに変換する方法であって、変換方法は、
第1の水素化分解部に炭化水素原料を供給するステップと、
前記第1の水素化分解部からの留出物を第1の分離部へ供給するステップと、
前記第1の分離部において、前記流出物を、水素を含むストリーム、メタンを含むストリーム、エタンを含むストリーム、プロパンを含むストリーム、ブタンを含むストリーム、C1−を含むストリーム、C2−を含むストリーム、C3−を含むストリーム、C4−を含むストリーム、C1−C2を含むストリーム、C1−C3を含むストリーム、C1−C4を含むストリーム、C2−C3を含むストリーム、C2−C4を含むストリーム、C3−C4を含むストリーム、及びC5+を含むストリームの群から選択された1以上のストリームに分離するステップと、
前記プロパンを含むストリームを、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)及びプロパン脱水素部(PDH)の群から選択された少なくとも1つの脱水素部に供給するステップと、
前記C2−を含むストリーム、前記エタンを含むストリーム、及び前記C1−C2を含むストリームの群から選択された少なくとも1つのストリームを、蒸気分解部及び/又は第2の分離部へ供給するステップと、
前記脱水素部及び前記蒸気分解部からの留出物の少なくとも一方を前記第2の分離部へ供給するステップと、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0025】
本発明によれば、炭素利用率を大幅に向上(すなわち、メタン生成量が大幅に少なく、重質副生成物がない)させることができる。さらに、直接生成(すなわち、ベンゼンと共に蒸発する物質を、いくつかの物理的分離ステップにより除去する必要はなく、プロセスにおいて変換すること)が可能となる。さらに、本方法によれば、水素化分解部における運転温度を調整することにより、プロピレン/エチレン比を、より良好かつ広範囲に制御することが可能となる。すなわち、より広いプロピレン/エチレン比の範囲をカバーすることができる。
【0026】
ブタンを含むストリームを、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)及びブタン脱水素部(BDH)の群から選択された少なくとも1つの脱水素部に供給することが好ましい。
【0027】
本方法において、C2−を含むストリーム及びエタンを含むストリームの群から選択された少なくとも1つのストリームは、蒸気分解部及び/又は第2の分離部に供給される。蒸気分解は、最も一般的なエタン脱水素プロセスである。本明細書において、「蒸気分解部」及び「エタン脱水素部」という用語は、同一の処理部について用いられる。本方法は、好ましくは、C1−C2を含むストリームを蒸気分解部及び/又は第2の分離部に供給するステップを更に含む。
【0028】
本方法は、好ましくは、エタンを含むストリームを蒸気分解部に供給するステップを更に含み、蒸気分解部からの流出物は、好ましくは、第2の分離部に供給される。
【0029】
本発明において、少なくとも1つの脱水素部において実行される脱水素プロセスは触媒プロセスであり、蒸気分解プロセスは熱分解プロセスである。これは、第1の分離部からの流出物が、触媒プロセス、すなわち脱水素プロセスと、熱分解プロセス、すなわち蒸気分解プロセスとの組合せにより更に処理されることを意味する。
【0030】
好ましい実施の形態において、本方法は、エタン脱水素部、第1の分離部、ブタン脱水素部、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)、及びプロパン脱水素部のいずれかからの流出物を、第2の分離部において、水素を含むストリーム、メタンを含むストリーム、C3を含むストリーム、C2=を含むストリーム、C3=を含むストリーム、C4混合物を含むストリーム、C5+を含むストリーム、C2を含むストリーム、及びC1−を含むストリームの群から選択された1以上のストリームに分離するステップを更に含む。
【0031】
本方法は、好ましくは、第2の分離部からのC2を含むストリームを蒸気分解部に供給するステップを更に含む。
【0032】
本方法は、好ましくは、C5+のストリームを第1の水素化分解部及び/又は第2の水素化分解部に供給するステップを更に含む。
【0033】
本方法は、好ましくは、C1−を含むストリームを第1の分離部に供給するステップを更に含む。
【0034】
本方法は、好ましくは、第2の分離部からのC3を含むストリームを、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)及びプロパン脱水素部(PDH)の群から選択された少なくとも1つの脱水素部に供給するステップを更に含む。
【0035】
本方法は、好ましくは、C5+を含むストリームを第2の水素化分解部に供給するステップを更に含む。第1の水素化分解部から第2の水素化分解部へ供給されるC5+原料の再加熱と高温の流出物を統合することができるので、更に有利である。
【0036】
本明細書において、この第2の水素化分解部を「ガソリン水素化分解部」又は「GHC反応器」ともいう。本明細書において使用される「ガソリン水素化分解部」又は「GHC」という用語は、芳香族炭化水素化合物を比較的多く含む複合炭化水素原料(例えば、改質装置ガソリン、FCCガソリン、及び熱分解ガソリン(パイガス)が含むが、これらに限定されない、精製ユニット由来の軽質留分など)をLPG及びBTXへ転換するのに適した水素化分解プロセスを実施するためのユニットを指す。ここで、このプロセスは、GHC原料ストリームに含まれる芳香族の1つの芳香環をそのまま維持しつつ芳香環から側鎖の多くを除去するように最適化される。したがって、ガソリンの水素化分解によって生成される主生成物はBTXであり、プロセスはBTX混合物を提供するように最適化することができる。BTX混合物は、試薬等級のベンゼン、トルエン、及びキシレン混合物に簡単に分離されてもよい。好ましくは、ガソリン水素化分解を受ける炭化水素原料は、精製ユニット由来の軽質留分を含む。より好ましくは、ガソリン水素化分解を受ける炭化水素原料は、2以上の芳香環を有する炭化水素を1質量%より多く含まない。好ましくは、ガソリン水素化分解条件は、300〜580℃、より好ましくは450〜580℃、更に好ましくは470〜550℃の温度を含む。より低い温度は、芳香環の水素化が有利となることから、避けるべきである。しかしながら、触媒が、スズ、鉛、又はビスマスなど、触媒の水素化活性を低下させる更なる元素を含む場合、ガソリン水素化分解においてより低い温度を選択してもよい(例えば、国際公開第WO02/44306A1号及び国際公開第WO2007/055488号参照)。反応温度が高過ぎる場合、LPG類(とくに、プロパン及びブタン)の収量が低下し、メタンの収量が上昇する。触媒活性は触媒を使用するにつれて低下し得るので、水素化分解の反応速度を維持するために、触媒を使用するにつれて反応器温度を徐々に上昇させるのが有利である。これは、運転サイクルの開始時の最適な温度が、好ましくは、水素化分解温度範囲の下限であることを意味する。最適な反応器温度は、触媒が失活するにつれて上昇し、サイクルの終わり(触媒が置換又は再生される直前)には、好ましくは、温度が水素化分解温度範囲の上限に選択される。
【0037】
好ましくは、炭化水素原料ストリームのガソリン水素化分解は、0.3〜5MPaゲージの圧力で、より好ましくは0.6〜3MPaゲージの圧力で、特に好ましくは1〜2MPaゲージの圧力で、最も好ましくは1.2〜1.6MPaゲージの圧力で実行される。反応器の圧力を上昇させることにより、C5+非芳香族分の変換を増加させることができるが、これにより、メタンの収量と、LPG類に分解可能なシクロヘキサン類への芳香環の水素化も増大する。その結果、圧力が増加するにつれて、芳香族の収量が減少する。一部のシクロヘキサン及びその異性体であるメチルシクロペンタンは完全には水素化分解されないため、1.2〜1.6MPaの圧力で、得られるベンゼンの純度が最適になる。
【0038】
好ましくは、炭化水素原料ストリームのガソリン水素化分解は、毎時0.1〜20の重量毎時空間速度(WHSV)で、より好ましくは毎時0.2〜10の重量毎時空間速度で、最も好ましくは毎時0.4〜5の重量毎時空間速度で実行される。空間速度が速すぎる場合、全てのBTX共沸パラフィン成分が水素化分解されるわけではないので、反応器の生成物の単蒸留により試薬等級のベンゼン、トルエン、及びキシレン混合物を達成することができない。空間速度が遅過ぎると、プロパン及びブタンを犠牲にして、メタンの収量が増加する。最適な重量毎時空間速度を選択することにより、驚くべきことに、ベンゼンと共に蒸発する物質の十分に完全な反応が達成され、ベンゼンが仕様通りに生成されることを見出した。
【0039】
したがって、好ましいガソリン水素化分解条件は、450〜580℃の温度、0.3〜5MPaゲージの圧力、及び毎時0.1〜20の重量毎時空間速度を含む。より好ましいガソリン水素化分解条件は、470〜550℃の温度、0.6〜3MPaゲージの圧力、及び毎時0.2〜10の重量毎時空間速度を含む。特に好ましいガソリン水素化分解条件は、470〜550℃の温度、1〜2MPaゲージの圧力、及び毎時0.4〜5の重量毎時空間速度を含む。
【0040】
本明細書において、第1の水素化分解部を「原料水素化分解部」又は「FHC反応器」ともいう。本明細書において使用される「原料水素化分解部」又は「FHC」という用語は、ナフテン系及びパラフィン系炭化水素化合物を比較的多く含む複合炭化水素原料(例えば、非限定的な例としてナフサを含む直留留分など)をLPG及びアルカンへ転換するのに適した水素化分解プロセスを実施するための精製ユニットを指す。好ましくは、原料水素化分解を受ける炭化水素原料は、ナフサを含む。したがって、原料の水素化分解により生成される主生成物は、オレフィンへ転換される(すなわち、アルカンのオレフィンへの転換のための原料として使用される)LPGである。FHCプロセスは、FHC原料ストリームに含まれる芳香族の1つの芳香環をそのまま維持しつつ芳香環から側鎖の多くを除去するように最適化される。この場合、FHCのために使用されるべき処理条件は、本明細書において上述したGHCプロセスに使用される処理条件と同等である。または、FHCプロセスは、FHC原料ストリームに含まれる芳香族炭化水素の芳香環を開環するように最適化されてもよい。これは、触媒の水素化活性を増加させ、オプションで、より低いプロセス温度の選択と組み合わせ、オプションで、空間速度の減少と組み合わせることにより、本明細書に記載のGHCプロセスを改変することによって達成されてもよい。この場合、好ましい原料水素化分解条件は、300〜550℃の温度、300〜5000kPaゲージの圧力、及び毎時0.1〜20の重量毎時空間速度を含む。より好ましい原料水素化分解条件は、300〜450℃の温度、300〜5000kPaゲージの圧力、及び毎時0.1〜10の重量毎時空間速度を含む。芳香族炭化水素の開環のために最適化された更に好ましいFHC条件は、300〜400℃の温度、600〜3000kPaゲージの圧力、及び毎時0.2〜5の重量毎時空間速度を含む。
【0041】
本方法は、第2の水素分解部からの流出物を、C4−を含むストリーム、未変換C5+を含むストリーム、及びBTXを含むストリームに分離するステップと、好ましくは、C4−を含むストリームを第1の分離部に供給するステップとを更に含む。
【0042】
本方法は、未変換C5+を含むストリームとナフサとを混合し、得られた混合ストリームを第1の水素化分解部に供給するステップを更に含む。
【0043】
別の実施の形態において、本方法は、ナフサ原料を高芳香族含有ストリームと低芳香族含有ストリームとに分離することにより前処理するステップと、低芳香族含有ストリームを第1の水素化分解部に供給するステップとを更に含み、高芳香族含有ストリームを第2の水素化分解部に供給するステップを更に含む。
【0044】
より良好な水素の経済性及び収支のために、第1及び/又は第2の分離部からの水素を含むストリームを第1及び/又は第2の水素化分解部に供給するのが好ましい。
【0045】
アルカンをオレフィンに変換する非常に一般的な方法は、「蒸気分解」を含む。本明細書において、「蒸気分解」という用語は、飽和炭化水素を、より小さく、多くの場合は不飽和である炭化水素、例えばエチレン及びプロピレンに分解する石油化学プロセスに関する。蒸気分解において、エタン、プロパン、及びブタン、又はそれらの混合物などの気体状の炭化水素原料(気体クラッキング)、又は、ナフサ又は軽油などの液体状の炭化水素原料(液体クラッキング)は、蒸気で希釈され、酸素不存在下で炉中において短時間加熱される。一般に、反応温度は非常に高く、約850℃であるが、反応は非常に短時間で行わなければならず、通常、滞留時間は50〜500ミリ秒である。好ましくは、エタン、プロパン、及びブタンの炭化水素化合物は、最適な条件で確実に分解させるために、それぞれに合った専用の炉で別々に分解される。分解温度に達した後、反応を停止させるために、トランスファーライン熱交換器で、又は、クエンチオイルを使用した急冷ヘッダーの内部で、ガスを急冷する。蒸気分解により、コークが炭素の形で反応壁に徐々に堆積する。コークを除去するためには、炉をプロセスから外し、蒸気又は蒸気と空気の混合物の流れを炉のコイルに通す必要がある。これにより、硬質な固体の炭素層が一酸化炭素及び二酸化炭素に変換される。この反応が完了すると、炉は運転に戻される。蒸気分解により生成される生成物は、原料の組成、炭化水素と蒸気の比に依存するとともに、分解温度及び炉の滞留時間に依存する。エタン、プロパン、ブタン、又は軽質ナフサなどの軽質な炭化水素原料により、エチレン、プロピレン、及びブタジエンを含む、より軽質なポリマーグレードのオレフィンを多く含む生成物ストリームが提供される。より重質な炭化水素(全範囲及び重質ナフサ及び軽油留分)により、芳香族炭化水素を多く含む生成物も提供される。
【0046】
蒸気分解により生成された異なる炭化水素化合物を分離するために、分解されたガスは分離装置で処理される。このような分離装置は、当分野でよく知られており、重質留分(「カーボンブラックオイル」)及び中間留分(「分解留分」)が軽質留分及びガスから分離される、いわゆるガソリンフラクショネーターを含むことがある。後続の急冷塔において、蒸気分解により生成された軽質留分(「熱分解ガソリン」又は「パイガス」)のほとんどが、軽質留分を凝縮することにより、ガスから分離されてもよい。つづいて、ガスを複数の圧縮段階で処理してもよく、圧縮段階の間に、軽質留分の残りがガスから分離されてもよい。酸性ガス(CO2及びH2S)も、圧縮段階の間に除去されてもよい。後続のステップにおいて、熱分解により生成されたガスは、カスケード冷凍システムの各段階において、気相中にほぼ水素しか残っていない状態まで、部分的に凝縮されてもよい。つづいて、異なる炭化水素化合物が単蒸留により分離されてもよく、ここで、エチレン、プロピレン、及びC4オレフィンが、蒸気分解により生成される最も重要な高価値の化学物質である。蒸気分解により生成されるメタンは、一般に、燃料ガスとして使用され、水素は、分離され、水素化分解プロセスなどの水素を消費するプロセスに再循環されてもよい。蒸気分解により生成されるアセチレンは、エチレンに選択的に水素化されることが好ましい。分解されたガス中に含まれるアルカンを、アルカンをオレフィンに変換するプロセスに再循環させてもよい。
【0047】
本明細書において使用される「プロパン脱水素部」という用語は、プロパン供給ストリームをプロピレン及び水素を含む生成物に変換する石油化学プロセスのユニットに関する。同様に、「ブタン脱水素部」という用語は、ブタン供給ストリームをC4オレフィンに変換するプロセスのユニットに関する。プロパン及びブタンなどの低級アルカンの脱水素化のためのプロセスは、ともに、低級アルカン脱水素プロセスと記述される。低級アルカンの脱水素化のためのプロセスは、当技術分野で周知であり、酸化的脱水素化プロセス及び非酸化的脱水素化プロセスを含む。酸化的脱水素化プロセスにおいて、プロセスの熱は、原料中の低級アルカンの部分酸化により与えられる。本発明の状況において好ましい、非酸化的脱水素化プロセスにおいて、吸熱脱水素化反応のためのプロセスの熱は、燃料ガスの燃焼により得られる高温燃焼排ガス又は蒸気などの外部熱源により与えられる。例えば、UOP Oleflexプロセスは、移動床反応装置内において、アルミナ上に担持された白金含有触媒の存在下で、プロパンの脱水素化によりプロピレンを、(イソ)ブタンの脱水素化により(イソ)ブチレン(又はその混合物)を生成することを可能にする;例えば、米国特許第4,827,072号参照。Uhde STARプロセスは、亜鉛?アルミナスピネル上に担持された添加白金触媒の存在下で、プロパンの脱水素化によりプロピレンを、ブタンの脱水素化によりブチレンを生成することを可能にする;例えば、米国特許第4,926,005号参照。STARプロセスは、オキシ脱水素化(oxydehydrogenation)の原理を適用することによって、最近改良された。反応装置の補助断熱ゾーンにおいて、中間生成物からの水素の一部が添加された酸素により選択的に変換されて水を生成する。これにより、熱力学的平衡がより高い変換の方にシフトし、より高い収率が達成される。吸熱脱水素化反応に必要な外部熱も、水素変換の発熱により部分的に供給される。Lummus Catofinプロセスは、循環ベースで運転される多数の固定床反応器を使用する。触媒は、18?20質量%のクロムが含浸された活性アルミナである;例えば、欧州特許出願公開第0192059A1号及び英国特許出願公開第2162082A号参照。Catofinプロセスは、ロバスト性があり、白金触媒を汚染するであろう不純物を取り扱うことができると報告されている。ブタンの脱水素化プロセスにより生成される生成物は、ブタン原料の性質及び使用されるブタン脱水素化プロセスに依存する。Catofinプロセスにより、ブタンを脱水素化してブチレンを生成することも可能である;例えば、米国特許第7,622,623号参照。
【0048】
以下、添付の図面とともに、本発明を更に詳細に説明する。添付の図面では、同一又は類似の要素は、同一の符号により参照される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の方法の実施の形態の概略図である。
図2図2は、本発明の方法の別の実施の形態の概略図である。
図3図3は、本発明の方法の別の実施の形態の概略図である。
図4図4は、本発明の方法の別の実施の形態の概略図である。
図5図5は、本発明の方法の別の実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
一般論として、ナフサ又はナフサ範囲の炭化水素物質は、第1の水素化分解部、いわゆる原料水素化分解部「FHC反応器」(必要であれば脱硫を含んでもよく、複数の反応床又は反応器からなってもよい)に水素とともに供給される。ここで、原料は、水素、メタン、成分としてC2を含むLPG、及びC5+(大部分はBTX)の混合ストリームに変換される。C5+留分は、分離され、パイガス改質部において、又は、図示されるように第2の水素化分解部、いわゆるガソリン水素化分解部「GHC反応器」により、更に処理されてもよい。これにより、非芳香族共沸物を事実上含まないBTX、及びLPGが得られ、LPGは第1の分離部に戻される。パイガスユニットに残ったBTXではない任意の物質が、FHC反応器の供給口に再循環されてもよい。
【0051】
FHC反応器の留出物は、水素、メタン、エタン、プロパン、及びブタンを大部分含む分離ストリーム(全て、特定の(個々の)分離効率の結果である)に更に分離される。水素は、第1及び第2の水素化分解部に再循環され、一部はメタン及び不純物の形成を妨げるために放出される。メタンストリームは、排出されてもよいし、流れ図中の別の炉の燃料として使用されてもよい。エタンは、脱水素化されてエチレンを生成し、未変換のエタンは、エタン脱水素部に再循環するために第2の分離部において分離される。プロパン及びブタンストリームは、それぞれ、プロパン脱水素部(「PDH」)及びブタン脱水素部(「BDH」)(これらは、PDH/BDHユニットに統合されてもよい)において脱水素化される。得られた留出物も、第2の分離部において分離される。それぞれのユニットは、独立した分離部を有してもよく、ある程度の熱統合/冷却統合システム及びユーティリティーなどを有してもよく、蒸気分解装置の分離部に類似した完全に統合された留出物分離トレインを有してもよい。原理的には、第1及び第2の分離部も、(熱的に)統合され、及び/又は、(部分的に)結合されてもよい。好適な実施の形態において、エタン脱水素部(「SC、蒸気分解部」)、PDH、及びBDHユニットからの濃縮されたオレフィン生成物ストリームは、パラフィン系成分のみを含む上流のFHC分離部から分離されたままにされる。
【0052】
C4混合物、プロピレン、エチレン、メタン、又は水素以外のより重質な任意の物質は、好ましくは、第1の水素化分解部の供給物として再循環される。C4混合物ストリームは、更に処理されてもよい。この処理は、メタノールと反応させてMTBEに変換することや、C4パラフィンから残りのC4オレフィンを分離することを含む。C4パラフィンの分離が含まれる場合、得られたブタンに富んだ混合物は、C4用の脱水素反応器に再循環されてもよい。第1及び第2の分離部の双方が、(低温分離を用いる場合は)脱エタン塔及び脱メタン塔/コールドボックスなどを有してもよい。吸収(炭化水素分離のための吸収プロセス)、吸着(PSA、圧力変動吸着法)、及び/又は、ガス分離プラントにおいて一般的に見られるエキスパンダー技術などの代替の分離技術が適用されてもよい。蒸気分解技術は、好ましくは、低温分離を適用する。
【0053】
図1に係る統合されたプロセス101において、PDH/BDH流出物の分離は、C2−を有する塔頂フローに限定されてもよい(すなわち、脱エタン化に必要とされる以外の更なる/冷却分離をしなくてもよい)し、この留分の更なる分離は、エタン分解塔の分離部の冷却部において更に実行されてもよい。ここで得られた任意のC3+物質(例えば、脱エタン塔の下部にある)は、PDH/BDH脱水素部に送られてもよい。言い換えれば、C2の分離は、C2処理ライン/蒸気分解部(ここではエタン脱水素部として使用される)に設けられ、C3/C4の分離は、PDH/BDH C3/C4ラインに設けられる。これにより、必要な脱メタン塔/コールドボックス(低温分離概念の一例)の数が1つ減らされる。他の分離は、例えば、冷却をせず、又は、より困難でない分離である必要がある(例えば、低温分離において、通常、プロピレン冷却回路のみが可能)。
【0054】
図1は、水素化分解、エタン脱水素化、蒸気分解、及びプロパン/ブタン脱水素化の組合せに基づく、ナフサをオレフィン及びBTXに変換するための統合されたプロセス101を提示する。原料42、例えばナフサは、分離部2に送られ、分離部2は、芳香族の含有量が多いストリーム4、及び芳香族の含有量が少ないストリーム3を生成する。ストリーム4は、水素化分解部10に送られ、その流出物18は、分離部11において、主にC4−を含むストリーム19、及び主にBTXを含むストリーム41に分離される。未変換C5+は、配管5を介して、水素化分解部6の供給口に、又は、ストリーム5がまだBTXを含んでいる場合は分離部2の供給口に、再循環される。分離部2の適用はオプションである。つまり、原料42は、水素化分解部6に直接送られてもよい。水素化分解部6からの流出物7は、分離部50に送られる。分離部50は、主にC2−を含むストリーム52、主にC3を含むストリーム27、主にC4を含むストリーム26、及び主にC5+を含むストリーム20を提供する。ストリーム20は、水素化分解部10の供給口に送られ、その流出物18は、分離部11に送られ、主にC4−を含むストリーム19、及び主にBTXを含むストリーム41に分離される。ストリーム19は、分離部50に再循環される。分離部50からのストリーム27は、プロパン脱水素部13に送られ、その流出物39は、分離部15、16に送られる。分離部50からのストリーム26は、ブタン脱水素部12に送られ、その流出物28も、分離部15、16に送られる。分離部15、16は、主にC3=を含むストリーム30、主にC4混合物を含むストリーム29、及び主にC5+を含むストリーム31を提供する。分離部15、16からの、主にC3を含む再循環ストリーム33は、プロパン脱水素部13の供給口に再循環される。分離部50からのストリーム52は、分離部15に送られ、主に水素を含むストリーム37、主にC1を含むストリーム51、及び主にC2=を含むストリーム34に分離される。分離部15、16からの、主にC2を含む再循環ストリーム35は、エタン脱水素部14の供給口に再循環され、その流出物は、分離部15、16で分離される。水素を含むストリーム37は、配管25を介して水素化分解部6と、配管17を介して水素化分解部10に、それぞれ送られる。図示しないが、水素を含むストリーム37は、精製されてもよいし、更に増圧されてもよい。分離部15、16からのストリーム31、及び、分離部11からの未変換C5+は、水素化分解部6の供給口に送られてもよい。余剰の水素は、配管38を介して、他の化学プロセスに送られる。
【0055】
つづいて、水素化分解、エタン脱水素化、及びプロパン/ブタン脱水素化の組合せに基づく、ナフサをオレフィン及びBTXに変換する統合されたプロセス102を示す図2に概略的に示されたプロセス及び装置を参照する。原料42、例えばナフサは、分離部2に送られ、分離部2は、芳香族の含有量が多いストリーム4、及び芳香族の含有量が少ないストリーム3を生成する。ストリーム4は、水素化分解部10に送られ、その流出物18は、分離部11において、主にC4−を含むストリーム19、及び主にBTXを含むストリーム41に分離される。未変換C5+は、配管5を介して、分離部2の供給口に、又は、ストリーム5がBTXをほとんど含まない場合は水素化分解部6の供給口に、再循環される。分離部2の適用はオプションである。つまり、原料42は、水素化分解部6に直接送られてもよい。水素化分解部6からの流出物7は、分離部8、9に送られる。分離部8、9は、主にC3を含むストリーム27、主にC4を含むストリーム26、及び主にC5+を含むストリーム20を生成する。ストリーム20は、水素化分解部10の供給口に送られる。分離部8、9は、主に水素を含むストリーム24、主にC1を含むストリーム23、及び主にC2を含むストリーム22を提供する。ストリーム22は、エタン脱水素部14に送られ、その流出物は、分離部15、16において、主にC1を含むストリーム36、主に水素を含むストリーム37、主にC2=を含むストリーム34、及び主にC2を含むストリーム35に分離される。ストリーム35は、エタン脱水素部14の供給口に再循環される。水素を含むストリーム24、37は、配管25を介して水素化分解部6と、配管17を介して水素化分解部10に、それぞれ送られる。ストリーム27は、プロパン脱水素部13に送られ、その流出物39は、分離部15、16に送られる。ストリーム26は、ブタン脱水素部12に送られ、その流出物28は、分離部15、16に送られる。分離部15、16は、主にC5+を含むストリーム31、主にC4混合物を含むストリーム29、主にC3=を含むストリーム30、及び主にC3を含む再循環ストリーム33を提供する。再循環ストリーム33は、プロパン脱水素部13の供給口に供給される。C5+を含むストリーム31は、ストリーム5と混合されてもよい。また、ストリーム31を水素化分解部6の供給口に直接再循環させてもよい。余剰の水素は、配管38を介して、他の化学プロセスに送られる。
【0056】
図3は、水素化分解、エタン脱水素化、及びプロパン/ブタン脱水素化の組合せに基づく、ナフサをオレフィン及びBTXに変換する統合されたプロセス103の別の実施の形態に関する。
【0057】
原料42、例えばナフサは、水素化分解部6に送られ、その流出物7は、分離部8、9に送られる。分離部8、9は、主にC3を含むストリーム27、主にC4を含むストリーム26、及び主にC5+を含むストリーム20を生成する。ストリーム20は、水素化分解部10に送られ、その流出物18は、分離部11において、主にC4−を含むストリーム19、及び主にBTXを含むストリーム41に分離される。ストリーム19は、分離部8、9に再循環される。ストリーム27は、プロパン脱水素部13に送られ、その流出物39は、分離部15、16に送られる。ストリーム26は、ブタン脱水素部12に送られ、その流出物28も、分離部15、16に送られる。分離部15、16は、主にC3=を含むストリーム30、主にC4混合物を含むストリーム29、及び主にC5+を含むストリーム31を生成する。分離部15、16からの、主にC3を含むストリーム33は、プロパン脱水素部13の供給口に再循環される。分離部8、9は、主に水素を含むストリーム24、主にC1を含むストリーム23、及び主にC2を含むストリーム22を提供する。ストリーム22は、エタン脱水素部14の供給口に送られ、その流出物は、分離部15、16において、主に水素を含むストリーム37、主にC1を含むストリーム36、主にC2=を含むストリーム34、及び再循環ストリーム35に分離される。主にC2を含む再循環ストリーム35は、エタン脱水素部14の供給口に送られる。水素を含むストリーム24、37は、配管25を介して水素化分解部6と、配管17を介して水素化分解部10に、それぞれ送られる。図示しないが、図2は、図1に示したプロセス101と同様に、分離部2を含んでもよい。C5+を含むストリーム31は、図1において図示及び説明したように、ストリーム5と混合されてもよい。また、ストリーム31を水素化分解部6の供給口に直接再循環させてもよい。余剰の水素は、配管38を介して、他の化学プロセスに送られる。
【0058】
図3に示したプロセスに対する更なる改良として、エタン分解部から、上流のガスプラント/FHC留出物分離により、脱メタン化するステップを組み合わせることにより、更なる還元が実行されてもよい。C1−留分は、定義によりパラフィン系であるから、これは、オレフィン生成物を「希釈」せずに実行することができる。このため、最も過酷/低温の分離が、流れ図における単一の位置/ユニットにおいて実行されてもよい。
【0059】
図4は、水素化分解、エタン脱水素化、及びプロパン/ブタン脱水素化の組合せに基づく、ナフサをオレフィン及びBTXに変換する統合されたプロセス104の別の実施の形態である。原料42、例えばナフサは、水素化分解部6に送られ、その流出物7は、分離部8、9に送られる。分離部8、9は、主にC3を含むストリーム27、主にC4を含むストリーム26、及び主にC5+を含むストリーム20を提供する。ストリーム20は、水素化分解部10に送られ、その流出物18は、分離部11において、主にBTXを含むストリーム41、及び主にC4−を含むストリーム19に分離される。ストリーム19は、分離部8、9に送られる。分離部8、9は、主に水素を含むストリーム24、主にC1を含むストリーム23、及び主にC2を含むストリーム22を提供する。ストリーム22は、エタン脱水素部14の供給口に送られ、その流出物は、分離部15、16において、主にC2=を含むストリーム34、主にC2を含むストリーム35、及び主にC1−を含むストリーム43に分離される。ストリーム43は、分離部8、9に送られる一方、ストリーム35は、エタン脱水素部14の供給口に再循環される。ストリーム27は、プロパン脱水素部13に送られ、その流出物39は、分離部15、16に送られる。ストリーム26は、ブタン脱水素部12に送られ、その流出物28も、分離部15、16に送られる。分離部15、16は、主にC3=を含むストリーム30、主にC4混合物を含むストリーム29、主にC5+を含むストリーム31、及び主にC3を含む再循環ストリーム33を提供する。ストリーム33は、プロパン脱水素部13の供給口に再循環される。水素を含むストリーム24は、配管24を介して水素化分解部6と、配管17を介して水素化分解部10に、それぞれ送られる。分離部11からの未変換C5+及びストリーム31は、水素化分解部6の供給口(図示せず)に再循環されてもよい。余剰の水素は、配管38を介して、他の化学プロセスに送られる。図示しないが、図4は、図1に示したプロセス101と同様に、分離部2を含んでもよい。
【0060】
図5は、水素化分解、エタン脱水素化、及びプロパン/ブタン脱水素化の組合せに基づく、ナフサをオレフィン及びBTXに変換する統合されたプロセス105の実施の形態を示す。原料42、例えばナフサは、水素化分解部6に送られ、その流出物7は、分離部50に送られる。分離部50は、主にC3を含むストリーム27、主にC4を含むストリーム26、及び主にC5+を含むストリーム20を生成する。ストリーム20は、水素化分解部10に送られ、その流出物18は、分離部11において、主にC4−を含むストリーム19、及び主にBTXを含むストリーム41に分離される。ストリーム19は、分離部50に再循環されてもよい。分離部50からの、主にC2−を含むストリーム53は、エタン脱水素部14に送られ、その流出物は、分離部15、16において、主に水素を含むストリーム37、主にC1を含むストリーム51、主にC2=を含むストリーム34、及び主にC2を含む再循環ストリーム35に分離される。再循環ストリーム35は、エタン脱水素部14の供給口に送られる。分離部50からのストリーム27は、プロパン脱水素部13に送られ、その流出物39は、分離部15、16に送られる。分離部50からの、主にC4を含むストリーム26は、ブタン脱水素部12に送られ、その流出物28は、分離部15、16に送られる。分離部15、16は、主にC3=を含むストリーム30、主にC4混合物を含むストリーム29、主にC5+を含むストリーム31、及び主にC3を含む再循環ストリーム33を提供する。ストリーム33は、プロパン脱水素部13の供給口に再循環される。水素を含むストリーム37は、配管25を介して水素化分解部6と、配管17を介して水素化分解部10に、それぞれ送られる。余剰の水素は、配管38を介して、他の化学プロセスに送られる。分離部15、16からのストリーム31及び分離部11からの未変換C5+は、水素化分解部6の供給口(図示せず)に送られてもよい。図1に示した前処理ステップ、とくに、分離部2が、プロセス105にも設けられてもよい。
【0061】
上述したように、脱水素部12は、ブタン脱水素部として図示されるが、複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)であってもよい。プロパン脱水素部13についても同様であり、プロパン脱水素部13は複合プロパン/ブタン脱水素部(PDH−BDH)であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5