特許第6522102号(P6522102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522102
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】電界効果ダイオード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20190520BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20190520BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   H01L29/86 301D
   H01L29/86 301E
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301M
   H01L29/48 D
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-500023(P2017-500023)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公表番号】特表2017-524246(P2017-524246A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】CN2015075970
(87)【国際公開番号】WO2016033968
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】201410452104.6
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515308855
【氏名又は名称】蘇州捷芯威半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】GPOWER SEMICONDUCTOR,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 洪維
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101694833(CN,A)
【文献】 国際公開第2014/121710(WO,A1)
【文献】 特開2008−108870(JP,A)
【文献】 特開2014−090037(JP,A)
【文献】 特表2011−523218(JP,A)
【文献】 特表2007−520884(JP,A)
【文献】 特開2011−210779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 29/78
H01L 29/47
H01L 21/329
H01L 29/872
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置する核形成層と、
前記核形成層上に位置するバック障壁層と、
前記バック障壁層上に位置するチャネル層と、
前記チャネル層上に位置する第1障壁層と、
前記第1障壁層上に位置する、凹溝が形成される第2障壁層と、
前記第2障壁層に位置するアノード及びカソードと
を備え、
前記カソードは、オーム接触電極であり、前記アノードは、複合構造であり、前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝に位置する、前記オーム接触電極と短絡するショットキー電極からなり、
前記第1障壁層の厚さが15nmよりも小さく、
前記バック障壁層のAl成分の含有量は、10%〜15%であり、
前記第1障壁層のAl成分の含有量は、10%〜15%であり、
前記第2障壁層のAl成分の含有量は、20%〜40%であることを特徴とする電界効果ダイオード。
【請求項2】
前記電界効果ダイオードは、前記核形成層と前記バック障壁層との間に位置するバッファ層をさらに備え、
前記バック障壁層は、前記バッファ層上に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項3】
前記バック障壁層、前記第1障壁層及び前記第2障壁層の材料は、AlGaNであり、
前記チャネル層の材料は、GaNであり、
前記バック障壁層及び前記第1障壁層のAl成分の含有量は、等しく、又は5%以下の差があり、
前記第2障壁層のAl成分の含有量は、前記バック障壁層及び前記第1障壁層のAl成分の含有量よりも高い、ことを特徴とする請求項2に記載の電界効果ダイオード。
【請求項4】
前記バッファ層の厚さは、1−3.5μmであり、
前記バック障壁層の厚さは、50〜100nmであり、
前記チャネル層の厚さは、15〜35nmであり、
前記第2障壁層の厚さは、25〜40nmである、ことを特徴とする請求項3に記載の電界効果ダイオード。
【請求項5】
前記第1障壁層と前記チャネル層との界面には、二次元電子ガスが存在し、
ショットキー電極の凹溝の下に対応する第1障壁層とチャネル層との界面領域には、二次元電子ガスが存在しない、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項6】
前記凹溝の側壁は、傾斜度を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項7】
前記凹溝の深さは、前記第2障壁層の深さに等しい、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項8】
前記第2障壁層には、パッシベーション層が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項9】
前記パッシベーション層は、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム又は有機ポリマーの中の1種類又は複数種類の組み合わせである、ことを特徴とする請求項記載の電界効果ダイオード。
【請求項10】
前記第1障壁層と前記第2障壁層との間には、エッチングストップ層が含まれ、 前記エッチングストップ層のエッチング速度は、前記第1障壁層のエッチング速度より低い、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項11】
前記第2障壁層と、前記ショットキー電極の一部との上には、絶縁層が形成され、 前記アノード上には、前記絶縁層の一部を覆うフィールドプレートが形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項12】
前記ショットキー電極と前記第2障壁層との間に前記凹溝内及び前記第2障壁層の一部表面には、絶縁誘電体層が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の電界効果ダイオード。
【請求項13】
基板を提供することと、
前記基板上に核形成層を形成することと、
前記核形成層上にバック障壁層を形成することと、
前記バック障壁層上にチャネル層を形成することと、
前記チャネル層上に第1障壁層を形成することと、
前記第1障壁層上に第2障壁層を形成し、前記第2障壁層に凹溝をエッチングし形成することと、
前記第2障壁層にアノード及びカソードを形成することと
を備え、
前記カソードはオーム接触電極であり、前記アノードは複合構造であり、前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝に位置する、オーム接触電極と短絡するショットキー電極とからなり、
前記第1障壁層の厚さが15nmよりも小さい、ことを特徴とする電界効果ダイオードの製造方法。
【請求項14】
前記核形成層を形成した後且つ前記バック障壁層を形成する前に、
前記核形成層上にバッファ層を形成することをさらに備える、ことを特徴とする請求項13に記載の電界効果ダイオードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「電界効果ダイオード及びその製造方法」と題する、2014年09月05日に出願された中国特許出願第201410452104.6号の優先権を主張し、当該出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、半導体の技術分野に関し、特に、エネルギーバンド工学に基づく、低い順方向導通電圧降下、低い逆方向リーク電流及び高い破壊電圧を有する電界効果ダイオード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代社会において、高電圧供給、電力変換、工場自動化及び車両のエネルギー分配管理等の諸々分野に関するパワー電子技術が発展してきている。パワー半導体デバイスは、通常的に、回路システムのスイッチ又は整流器として用いられており、パワー電子技術の重要な構成要素である。パワーデバイスは、回路システムの消費電力量及び効率を決定し、省エネルギーに対して非常に重要な役割を有する。近年、高周波、大パワー密度及び低電力消費量の特性を有するGaNショットキーダイオードは、優れた性能により、人の注目を集めている。
【0004】
GaNは、バンドギャップが広く、室温でのバンドギャップが3.4eVに達し、且つ高電子移動度、高熱伝導率及び耐高温高圧などの特性を有する。ドープされていなくても、AlGaN/GaNのヘテロ接合の界面において、密度が1013cm−2である二次元電子ガス(2DEG)を容易に形成することもできる。その理由は、AlGaN/GaN構造に自発分極及び圧電分極が存在し、分極電界はAlGaN/GaN界面のGaN層に高濃度と高移動度の2DEGを誘起することである。GaN材料の絶縁破壊電圧は、Siより約1桁高く、GaN材料に対応するショットキーダイオードの順方向導通抵抗は、Siデバイスより約3桁低い。高温、高変換速度及び高電圧を求めるパワーデバイス分野において、GaNデバイスはSiデバイスの理想的な代替品である。
【0005】
高圧変換回路のためのダイオードデバイスは、以下の特徴を有するべきである。ショットキーダイオードが逆バイアスされているとき(カソードの電圧がアノードより高いとき)、高い電圧に耐えることができ、同時に逆方向リーク電流が低いレベルに維持される。ダイオードが正バイアスされているとき、順方向電圧降下は、できるだけ小さくなり、ダイオードの順方向導通抵抗は、伝導損失を低減するように、小さければ小さいほどよい。一方、オンオフ状態を切り換えるときに少数キャリア電荷によるオンオフ損失を減少し且つ効率を向上するように、ダイオードに蓄積された少数キャリア電荷は小さければ小さいほどよい。ダイオードにおいて、上述の異なる性能とパラメーターはお互いに制限する。低いショットキー障壁高さを用いることは、ショットキーダイオードの順方向電圧降下を減少し、順方向導通時の電流密度を増加することができる。しかし、それによって、ショットキーダイオードの逆方向リーク電流は増加される。また、低い障壁高さは、高温でのショットキーダイオードの電気的特性を劣化させ、例えば、破壊電圧を小さくする。高いショットキー障壁高さを用いることは、逆方向リーク電流の低減に役に立つが、順方向電圧降下(V)を大きくし、オン損失を増加させる。
【0006】
したがって、上述の技術的問題に対して、新規の低い順方向導通電圧降下、低い逆方向リーク電流及び高い破壊電圧を有する電界効果ダイオード及びその製造方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、エネルギーバンド工学に基づく、低い順方向導通電圧降下、低い逆方向リーク電流及び高い破壊電圧を有する電界効果ダイオード及びその製造方法を提供する。当該電界効果ダイオードは、基板と、核形成層と、バッファ層と、バック障壁層と、チャネル層と、第1障壁層と、第2障壁層と、アノードと、カソードとを順に備える。第2障壁層には凹溝が形成される。かソードはオーム接触電極である。アノードは複合構造である。前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝中に位置する、オーム接触電極と短絡するショットキー電極とからなる。第1障壁層及びバック障壁層は近い成分含有量を有する。第2障壁層及び第1障壁層は、異なる成分含有量を有する。第2障壁層の格子定数は第1障壁層の格子定数より小さい。
【0008】
電界効果ダイオードのアノードは、オーム金属と、凹溝構造とショットキー金属とを備え、カソードは、オーム金属で形成される。凹溝領域において、第1障壁層の成分がバック障壁層の成分と近いので、両者とGaNチャネル層との間の界面において形成された分極電荷は、密度が相当するが、電荷の符号が反対し、その作用がお互いに相殺される。したがって、GaNチャネル層中には二次元電子ガス(2DEG)が形成されることができない。当該凹溝領域には空乏チャネルを形成する。当該電界効果ダイオードのアノードに逆バイアス電圧を印加しているとき(カソードに対してアノードに逆バイアス電圧を印加している)、凹溝領域の空乏チャネルの電流遮断作用によって、逆バイアスされたアノードとカソードとの間に導電を行うことができなく、つまり、ダイオードが逆方向オフ状態になっている。しかし、当該電界効果ダイオードのアノードに正バイアス電圧を印加しているとき、凹溝領域の空乏チャネルは、ショットキー金属の正電圧の作用によって、チャネル中の障壁が低下され、二次元電子ガスが徐々に回復され、電子導電路を形成し、つまり、当該電界効果ダイオードは順方向導通特性を有する。
【0009】
本発明では、第2障壁層のAlGaNのAl成分の含有量は、バック障壁層及び第1障壁層のAlGaNのAl成分の含有量より大きく設計され、当該第2障壁層及び第1障壁層は、そちらとGaNチャネル層との間の界面に共に作用し、生成した分極電荷密度は、バック障壁層とGaNチャネル層との間の界面にバック障壁層が生成した分極電荷密度より大きい。したがって、第1障壁層とチャネル層との間の界面に、高濃度の二次元電子ガス(2DEG)を生成し、当該電界効果ダイオードの順方向導通抵抗を低減する。
【0010】
以上により、当該電界効果ダイオードのアノード凹溝領域の下のGaNチャネル層における2DEGは、空乏化されてストップチャネルを形成し、当該ダイオードを逆バイアス電圧でオフにし、しかし、凹溝以外の領域に高濃度の二次元電子ガスを形成し、ダイオードの順方向導通抵抗を効果的に低減することができる。
【0011】
本発明による電界効果ダイオードは、以下の幾つかのメリットがある。
【0012】
1、逆バイアス電圧の印加時、凹溝の下の2DEGが空乏化されているので、チャネルは導電を行うことができない。逆バイアス電圧の増加に伴って、カソードに隣接するショットキー電極の縁部の下のチャネルにおける二次元電子ガスの空乏領域をさらに拡大し、高圧での逆方向リーク電流の増加を抑制する。
【0013】
2、バック障壁層はバッファ層のリーク電流を効果的に抑制することができ、したがって、ダイオードの逆方向リーク電流を減少し、これにより、逆方向耐圧を向上することができる。また、バック障壁層は、バッファ層と比較して、結晶品質がより良く、欠陥密度が低く、したがって、バック障壁層を用いていないデバイスと比較すると、デバイスの安定性をさらに向上することができる。
【0014】
3、正バイアス電圧の場合、アノードのショットキー金属の凹溝の下に位置する領域は、正電圧により、障壁を低下し、二次元電子ガスチャネルを回復することができ、アノードのオーム電極をカソードと導通させ、同時にアノード凹溝におけるショットキー接合が所定の正バイアス電圧でオンになって導電することができる。この2つの電流は共にダイオードの順方向電流を構成し、したがって、順方向導通抵抗の減少及び順方向電圧降下(V)の低減に役に立つ。
【0015】
上述の目的を実現するため、本発明の実施例による技術案は、以下のとおりである。
【0016】
電界効果ダイオードは、
基板と、
前記基板上に位置する核形成層と、
前記核形成層上に位置するバック障壁層と、
前記バック障壁層上に位置するチャネル層と、
前記チャネル層上に位置する第1障壁層と、
前記第1障壁層上に位置する、凹溝が形成される第2障壁層と、
前記第2障壁層に位置するアノード及びカソードと
を備え、
前記カソードは、オーム接触電極であり、前記アノードは、複合構造であり、前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝に位置する、前記オーム接触電極と短絡するショットキー電極とからなる。
【0017】
本発明の更なる改善として、前記電界効果ダイオードは、前記核形成層と前記バック障壁層との間に位置するバッファ層をさらに備える。前記バック障壁層は、前記バッファ層上に形成される。
【0018】
本発明の更なる改善として、前記バック障壁層、前記第1障壁層及び前記第2障壁層の材料は、AlGaNであり、前記チャネル層の材料は、GaNであり、前記バック障壁層及び前記第1障壁層のAl成分の含有量は、等しく、又は5%以下の差があり、前記第2障壁層のAl成分の含有量は、前記バック障壁層及び前記第1障壁層のAl成分の含有量よりも高い。
【0019】
本発明の更なる改善として、前記バック障壁層のAl成分の含有量は、10%〜15%であり、前記第1障壁層のAl成分の含有量は、10%〜15%であり、前記第2障壁層のAl成分の含有量は、20%〜40%である。
【0020】
本発明の更なる改善として、前記バッファ層の厚さは、1−3.5μmであり、前記バック障壁層の厚さは、50〜100nmであり、前記チャネル層の厚さは、15〜35nmであり、前記第1障壁層の厚さは、15〜45nmであり、前記第2障壁層の厚さは、25〜40nmである。
【0021】
本発明の更なる改善として、前記第1障壁層と前記第2障壁層との界面には、二次元電子ガスが存在し、ショットキー電極の凹溝の下に対応する第1障壁層と第2障壁層との界面領域には、二次元電子ガスが存在しない。
【0022】
本発明の更なる改善として、前記凹溝の側壁は傾斜度を有する。
【0023】
本発明の更なる改善として、前記凹溝の深さは、前記第2障壁層の厚さに等しい。
【0024】
本発明の更なる改善として、前記第2障壁層にはパッシベーション層が設けられる。
【0025】
本発明の更なる改善として、前記パッシベーション層は、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム又は有機ポリマーの中の1種類又は複数種類の組み合わせである。
【0026】
本発明の更なる改善として、前記第1障壁層と前記第2障壁層との間には、エッチングストップ層が含まれ、前記エッチングストップ層のエッチング速度は、第1障壁層のエッチング速度より低い。
【0027】
本発明の更なる改善として、前記第2障壁層と、前記ショットキー電極の一部との上には、絶縁層が形成され、前記アノード上には、前記絶縁層の一部を覆うフィールドプレートが形成される。
【0028】
本発明の更なる改善として、前記ショットキー電極と前記第2障壁層との間に前記凹溝内及び前記第2障壁層の一部表面には、絶縁誘電体層が形成される。
【0029】
なお、電界効果ダイオードの製造方法は、
基板を提供することと、
前記基板上に核形成層を形成することと、
前記核形成層上にバック障壁層を形成することと、
前記バック障壁層上にチャネル層を形成することと、
前記チャネル層上に第1障壁層を形成することと、
前記第1障壁層上に第2障壁層を形成し、前記第2障壁層に凹溝をエッチングし形成することと、
前記第2障壁層にアノード及びカソードを形成し、前記カソードはオーム接触電極であり、前記アノードは複合構造であり、前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝に位置する、オーム接触電極と短絡するショットキー電極とからなることとを備える。
【0030】
本発明の更なる改善として、前記核形成層を形成した後且つ前記バック障壁層を形成する前に、当該方法は、前記核形成層上にバッファ層を形成することをさらに備える。
【0031】
本発明の利点は以下のとおりである。
【0032】
本発明のダイオードの正バイアス時には、凹溝の下のチャネル層と第1障壁層との界面に2DEGを誘起するように、アノードに小さいバイアス電圧を印加してもよい。水平方向において、高濃度と高移動度を有する2DEGにより、導通を行い、したがって、ダイオードの順方向電圧降下及び導通抵抗が小さい。
【0033】
本発明のダイオードの逆バイアス時には、凹溝のショットキー電極の下の二次元電子ガスが空乏状態にあるため、チャネルが遮断される。したがって、逆バイアス電圧により電子がカソードとアノードとの間に流れ、逆方向リーク電流を低くする。一方、本発明は、結晶品質が良いバック障壁層を用いて、その上のチャネル層と共に1つの障壁を形成する。当該障壁が存在するため、ダイオードが逆バイアス時には、電子がチャネル層からバック障壁層に進入することが困難になり、ダイオードのバッファ層のリーク電流を遮断する。したがって、当該電界効果ダイオードの逆方向リーク電流を低いレベルに保持する。逆方向電圧に対するダイオードの耐圧能力を増加させ、デバイスの逆方向破壊電圧を向上させる。
【0034】
同時に、当該ダイオード構造のショットキー電極は、凹溝の分布は所定の傾斜度を有し、ダイオードが逆バイアス時にアノード金属縁部の下の電界線分布を調節することができ、アノード縁部のカソードに隣接する一側の電界ピーク値を低減させ、したがって、ダイオードの耐圧能力を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下、本発明の実施形態または先行技術の技術案をさらに明瞭に説明するために、実施形態または先行技術の説明に用いられている図面について簡単に紹介する。明らかに、後述の図面は、本発明の実施形態を説明するものに過ぎない。当業者は、創造的な活動をしない前提で、提供された図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0036】
図1(a)】図1(a)は、本発明の第1実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
図1(b)】図1(b)は、本発明の第1の実施形態による電界効果ダイオードのチャネル層における二次元電子ガス空乏領域付近の水平方向(電流伝導方向)のエネルギーバンド分布模式図を示す。
図1(c)】図1(c)は、本発明の第1の実施形態による電界効果ダイオードに逆バイアス電圧が印加された場合、チャネル層における二次元電子ガス空乏領域付近の水平方向(電流伝導方向)のエネルギーバンド分布模式図を示す。
図1(d)】図1(d)は、本発明の第1の実施形態による電界効果ダイオードに逆バイアス電圧が印加された場合、チャネル層における二次元電子ガス空乏領域付近の水平方向(電流伝導方向)のエネルギーバンド分布模式図を示す。
図1(e)】図1(e)は、本発明の第1実施形態の電界効果ダイオードのIV特性曲線図を示す。
図2図2は、本発明の第2実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
図3図3は、本発明の第3実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
図4図4は、本発明の第4実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
図5図5は、本発明の第5実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
図6図6は、本発明の第6実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
図7図7は、本発明の第7実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に示された具体的な実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明する。しかし、これらの実施形態は、本発明を限定するものではなく、当業者がこれらの実施形態に基づいて実施し得る構造、方法又は機能の変更は、全て本発明の範囲に含まれる。
【0038】
なお、異なる実施例において同じ符号又は表示を用いる可能性がある。これらの同じ符号又は表示は、本発明を簡単に且つ明瞭に説明するためのものであり、説明される異なる実施例又は構造の間に何らかの関連性があることを示すものではない。
【0039】
本発明は、電界効果ダイオードを提供する。
【0040】
当該電界効果ダイオードは、
基板と、
前記基板上に位置する核形成層と、
前記核形成層上に位置するバック障壁層と、
前記バック障壁層上に位置するチャネル層と、
前記チャネル層上に位置する第1障壁層と、
前記第1障壁層上に位置する、凹溝が形成される第2障壁層と、
前記第2障壁層に位置するアノード及びカソードと
を備える。
前記カソードは、オーム接触電極であり、前記アノードは、複合構造である。前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝に位置する、オーム接触電極と短絡するショットキー電極とからなる。
【0041】
さらに、前記電界効果ダイオードは、前記核形成層と前記バック障壁層との間に位置するバッファ層をさらに備える。前記バック障壁層は、前記バッファ層上に形成される。
【0042】
本発明は、電界効果ダイオードの製造方法を提供する。
【0043】
当該方法は、
基板を提供することと、
前記基板上に核形成層を形成することと、
前記核形成層上にバック障壁層を形成することと、
前記バック障壁層上にチャネル層を形成することと、
前記チャネル層上に第1障壁層を形成することと、
前記第1障壁層上に第2障壁層を形成し、前記第2障壁層に凹溝をエッチングし形成することと、
前記第2障壁層にアノード及びカソードを形成し、前記カソードはオーム接触電極であり、前記アノードは複合構造であり、前記複合構造は、オーム接触電極と、前記凹溝に位置する、オーム接触電極と短絡するショットキー電極とからなることと
を備える。
【0044】
さらに、当該方法は、前記核形成層を形成した後且つ前記バック障壁層を形成する前に、前記核形成層上にバッファ層を形成することをさらに備える。
【0045】
図1(a)は、本発明の第1実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0046】
基板12は、一般的にサファイア、SiC又はSiである。核形成層13は基板12上に成長される。核形成層13上にはバッファ層14が設けられる。バッファ層14上にはバック障壁層15が設けられる。バック障壁層15上にはチャネル層16が設けられる。チャネル層16上には第1障壁層17が設けられる。第1障壁層17上には第2障壁層18が設けられる。第2障壁層18には、2つのオーム接触が電界効果ダイオードのアノードオーム電極19及びカソードオーム電極20をそれぞれ形成する。アノードオーム電極19とカソードオーム電極20との間には、第2障壁層18に所定の傾斜度を有する凹溝がエッチングされ、凹溝は、第1障壁層17と第2障壁層18との界面に停止される。ショットキー電極21は、凹溝内に形成され、アノードオーム電極19と短絡して、アノードオーム電極19と共にダイオードのアノード構造を構成する。
【0047】
本実施形態では、バック障壁層15、第1障壁層17及び第2障壁層18の材料は、全てAlGaNであり、チャネル層16の材料は、GaNである。バック障壁層15の厚さは、1〜3.5μmであり、チャネル層16の厚さは、15〜35nmであり、第1障壁層17の厚さは、15〜45nmであり、第2障壁層18の厚さは、25〜40nmである。
【0048】
さらに、第2障壁層18のAl成分の含有量は、第1障壁層17のAl成分の含有量よりも高い。第1障壁層17及びバック障壁層15のAl成分の含有量は、等しく、又は5%以下の差である。好ましくは、バック障壁層15及び第1障壁層17のAl成分の含有量は、10%〜15%(質量百分率)であり、第2障壁層18のAl成分の含有量は、20%〜40%(質量百分率)である。
【0049】
バック障壁層15の成分は、第1障壁層17のAl成分に近いので、この2つの層のAlGaNの格子定数が近い。バック障壁層15と第1障壁層17との間におけるチャネル層16のGaN厚さが小さいので、チャネル層16の格子定数は、その下のバック障壁層15の格子定数を保持する。チャネル層16は、第1障壁層17のAlGaN格子定数にも近い。バック障壁層15及び第1障壁層17と、GaNチャネル層16との間の界面に形成される分極電荷の密度は一致しており、電荷の符号が反対であり、その作用がお互いに相殺される。したがって、凹溝領域のGaNチャネル層16中には2DEGが形成されることができない。当該凹溝領域には空乏チャネルを形成する。このとき、GaNチャネル層16と第1障壁層17との界面において水平方向(電流伝導方向)に沿うエネルギーバンド分布は図1(b)に示される。対応する凹溝領域の下のチャネルにおける二次元電子ガスは空乏化されて1つの電子障壁を形成し、逆バイアス電圧が印加される場合、電子がこの障壁を通過できず、二次元電子ガスのチャネルがオフ状態である。
【0050】
第2障壁層18のAlGaNのAl成分はバック障壁層15及び第1障壁層17のAl成分よりも高いため、第2障壁層18の格子定数はその下の第1障壁層17及びチャネル層16の格子定数よりも小さい。したがって、第2障壁層18の凹溝のない領域には、自発分極電界も存在し、圧電分極電界も存在する。当該分極電界は、第1障壁層17とチャネル層16との界面に2DEGを誘導することができる。最終的に、第1障壁層17とチャネル層16の界面において、凹溝に対応する領域に2DEGが空乏化され、他の領域に2DEGが存在する電子分布を形成する。
【0051】
逆バイアス電圧が印加された場合、凹溝の下の2DEGが空乏化されるため、チャネルは導電を行うことができない。逆バイアス電圧の増加に伴って、カソードに隣接するショットキー電極縁部の下のチャネルにおける二次元電子ガスの空乏領域は、さらに拡大され、逆方向リーク電流を抑制する。このとき、GaNチャネル層16の界面における水平方向(電流伝導方向)のエネルギーバンド分布は、図1(c)に示される。電子が障壁を通過できないため、ダイオードはオフ状態になる。一方、バック障壁層15を用いて、当該障壁が存在するため、電子がチャネル層からバッファ層に進入することは、より困難になって、ダイオードのバッファ層のリーク電流を遮断する。したがって、当該構造により、ダイオードは、非常に高い逆バイアス電圧に耐えることができる。
【0052】
正バイアス電圧が印加された場合、一方で、ショットキー電極の凹溝の下の二次元電子ガスチャネルは、正のショットキー電圧により部分的又は全部で回復される。このとき、GaNチャネル層の界面に水平方向(電流伝導方向)のエネルギーバンド分布は図1(d)に示される。電子障壁の高さは、フェルミ準位以下に減少し、電子は、カソードのオーム金属からアノードのオーム金属に流れることができ、ダイオードはオン状態になる。他方で、ショットキー電極の自身は、所定の正バイアス電圧によりオンされて導電を行うことができる。この2つの電流は、併せてダイオードの順方向電流を構成する。したがって、当該ダイオードの順方向導通電圧を減少し、且つ順導通抵抗を減少することに役に立つ。これにより、当該電界効果ダイオードは、順方向導通特性を有し、そのIV特性が図1(e)に示される。
【0053】
本実施形態の電界効果ダイオードでは、凹溝の側壁は所定の傾斜度を有し、ショットキー電極は所定の傾斜度を有する凹溝内に形成され、ゲートフィールドプレートが用いられて、アノードの縁部電界を調節することができ、さらに、高い破壊電圧を取得する。
【0054】
図2は、本発明の第2実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0055】
本実施形態は、第1の実施形態の1つの変形である。図2に示すように、第2障壁層18上には、デバイス表面をパッシベーションする1つのパッシベーション層22が追加される。パッシベーション層22は、デバイスの電流コラプス現象を抑制し、ダイオードの動的特性劣化を減少することができる。当該パッシベーション層22は、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム又は有機ポリマーの中の1種類又は複数種類の組み合わせであってもよい。
【0056】
ダイオードデバイスがパッシベーションされていない場合、ダイオードが逆バイアス時には、カソードに隣接するショットキー電極の一側の表面準位は、電子を捕獲し、表面負電荷を導入して、二次元電子ガスを空乏化させる。窒化ガリウム材料のバンドギャップは3.4eVに達し、AlGaNのバンドギャップは3.4eV〜6.2eV(AIN)であり、Al成分により異なることになる。ある準位位置が深い表面準位は、電子を捕獲した後、長期間にわたって電子が解放されていない。導入された負電荷は、二次元電子ガスを部分的に空乏化させ、ダイオードの順方向導通抵抗を増加させる。パッシベーション層の追加によって、電流コラプス現象を効果的に除去し、ダイオードの動的性能を向上することができる。
【0057】
図3は、本発明の第3実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0058】
本実施形態は、第1の実施形態のもう1つの変形である。図3に示すように、第1障壁層17と第2障壁層18との間には、1つのエッチングストップ層23を挿入させる。エッチングストップ層23は、一般的に、AlGaNとのエッチング速度が遅い材料(例えば、AlN)を用いる。それによって、エッチングストップ位置を第2障壁層/第1障壁層の界面により正確に制御し、工程面でデバイスを容易に実現することを確保し、歩留まりを向上する。
【0059】
図4は、本発明の第4実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0060】
本実施形態は、第1の実施形態のもう1つ変形である。図4に示すように、第2障壁層18とショットキー電極21の一部との上には、絶縁層22が形成され、アノード19には、絶縁層22の一部を覆うフィールドプレート24が形成される。この構造は、アノードに隣接するショットキー電極の一側エッジにおける電界線の集中分布を最適化し、アノードのエッジの電界ピーク値を減少し、ダイオードの破壊電圧を向上することができる。
【0061】
図5は、本発明の第5実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0062】
本実施形態は、第1の実施形態のもう1つの変形である。図5に示すように、本実施形態では、凹溝内には1つの絶縁誘電体層25が形成され、ショットキーの逆方向リーク電流を効果的に低減することができる。ダイオードが逆バイアス時には、電子が絶縁誘電体層の形成した障壁を越えず、ショットキー電極の逆方向リーク電流が形成できない。したがって、この構造によるダイオードのリーク電流は、第1の実施形態によるリーク電流より小さい。
【0063】
図6は、本発明の第6実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0064】
本実施形態は、第1の実施形態のもう1つの変形である。図6に示すように、この構造において第1障壁層17の厚さが小さく(15mよりも小さい)、その抵抗をさらに減少させることができる。したがって、ダイオードが正バイアス時には、電流は、ショットキーから第1障壁層17を垂直に通過して導通することができる。この構造では横方向の2DEGと縦方向のショットキーダイオードとの2つの導電路が存在するため、ダイオードの順方向電圧降下をさらに降低し、飽和電流密度を増加し、ダイオードの電力消費量を低減する。
【0065】
図7は、本発明の第7実施形態の電界効果ダイオードの構成模式図を示す。
【0066】
本実施形態は、第1の実施形態のもう1つの変形である。図7に示すように、当該構造はバッファ層を含まないが、バック障壁層15はバッファ層として機能され、バック障壁層15の厚さは、1〜3.5μmである。より厚いバック障壁層15を用いて、逆方向リーク電流を低減すると同時に、工程プロセスを簡略化する。
【0067】
以上により、従来の技術と比較すると、本発明の利点は以下のとおりである。
【0068】
本発明のダイオードの正バイアス時には、凹溝の下のチャネル層と第1障壁層との界面に2DEGを誘起するように、アノードに小さいバイアス電圧を印加してもよい。水平方向において、高濃度と高移動度を有する2DEGにより、導通を行い、したがって、ダイオードの順方向電圧降下及び導通抵抗が小さい。
【0069】
本発明のダイオードの逆バイアス時には、凹溝のショットキー電極の下の二次元電子ガスが空乏状態にあるため、チャネルが遮断される。したがって、逆バイアス電圧により電子がカソードとアノードとの間に流れ、逆方向リーク電流を低くする。一方、本発明は、結晶品質が良いバック障壁層を用いて、その上のチャネル層と共に1つの障壁を形成する。当該障壁が存在するため、ダイオードが逆バイアス時には、電子がチャネル層からバック障壁層に進入することが困難になり、ダイオードのバッファ層のリーク電流を遮断する。したがって、当該電界効果ダイオードの逆方向リーク電流を低いレベルに保持する。逆方向電圧に対するダイオードの耐圧能力を増加させ、デバイスの逆方向破壊電圧を向上させる。
【0070】
同時に、当該ダイオード構造のショットキー電極は、凹溝の分布は所定の傾斜度を有し、ダイオードが逆バイアス時にアノード金属縁部の下の電界線分布を調節することができ、カソードに隣接するアノード縁部の一側の電界ピーク値を低減させ、したがって、ダイオードの耐圧能力を向上する。
【0071】
本発明は、上述の例示した実施例の詳細に限定されるものではなく、本発明の趣旨又は基本的な特徴を逸脱しない範囲で他の具体的な形態により実現されることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、どの視点から見ても、上述の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、明細書ではなく、請求の範囲により決定される。したがって、請求項の均等物の意味及び範囲に入る全ての変更は、本発明の範囲に含まれることが意図されている。請求項における参照符号は、請求項を限定するものと解釈されるべきではない。
【0072】
なお、本明細書が実施形態により説明されたが、各実施形態が1つの独立の技術案のみを含むことではないことは理解されるべきである。当業者は、明確にするために上述の方式で明細書を説明したが、明細書を全体として、各実施例の技術案が組み合わせられることで他の実施形態を形成することと理解すべきである。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7