(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラーは更に、前記膨張可能な空気袋を前記活動時間中に肢部の運動を示す圧力変動を検出及び特性化するために運動モニターと共に動作させる、請求項3に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図示の実施形態は、包括的なものでも、開示された正確な形態に本発明を限定するものでもない。本実施形態は、本発明の原理とその応用及び実際の使用を説明し且つそれにより他の当業者が本発明を利用することができるようにするために選択及び記載されている。
【0006】
図1は、血流制限下(BFR)の身体活動の時間(活動時間)中に通常使用されている好ましい実施形態のタニケットシステムを示す。BFR身体活動は、選択された筋肉群の質量を低負荷の運動で増強及び増加させるために医師又は理学療法士により指示されることがある。
【0007】
患者の肢部4を囲むタニケットカフ2が示されている。カフ2は、膨張時にカフを越える血流の制限をもたらし且つ機器6が個別制限圧(PRP)を設定することを可能にするカフ内の空気の脈動を検出する二重目的のタニケットカフである。PRPは、BFR活動が行われる限られた時間、カフ2の膨張可能な空気袋内で維持されるべき患者に特有の安全レベルの圧力である。好ましい実施形態において、PRPは、活動前時間内にBFR活動の開始に先立って機器6により自動的に決定される。
【0008】
活動前時間中、機器6は、肢部閉塞圧(LOP)、動脈血が肢部4のカフ2で囲まれた領域を越えて侵入するのを阻止するのにカフ2の膨張可能な空気袋内に必要な最小レベルの圧力を決定し、以下で説明するように個別制限圧(PRP)を設定するのに肢部閉塞圧を使用する。個別制限圧(PRP)は、一般的に、肢部閉塞圧(LOP)より小さく、それによりBFR活動中カフで囲まれた肢部の領域を越える動脈血の流れ又は侵入を制限するが阻止しない。
【0009】
カフ2は、肢部4を囲むのに十分な長さを有する単独の膨張可能な空気袋と、血圧測定用に承認されているような他のタイプのカフとは実質的に異なる0.15から0.4の間のカフの幅対周長比と、カフポート8を膨張可能な空気袋のすべての部分に空気圧で接続する連続的な空気通路と、活動時間中にカフを越える動脈血の流れを制限するレベルまでカフ2を膨張させる際に肢部4の安全な低圧勾配を生じる構造、材料、留め具及びデザインとを含む、カフを二重目的のカフとして好ましくする所定の共通パラメーターを有するタイプのタニケットカフである。
【0010】
機器6とカフ2との間の空気通路は、カフポート8と、雄型ロックコネクター10と、雌型ロックコネクター12と、可撓性チューブ14とにより提供される。カフポート8には、解放可能な空気圧接続を形成するように雌型ロックコネクター12と結合する雄型ロックコネクター10が取り付けられている。
【0011】
カフ2が血流を検出し且つカフを越える血流の制限をもたらすという二重目的にふさわしいか否かを機器6が自動的に判定できるようにするために、雄型ロックコネクター10は、カフ2の物理的な特徴を識別するしるしを含む。好ましい実施形態において、しるしは、機器6及び好ましい実施形態のユーザーにとってはっきりと異なるカフ2の物理的な特徴を識別する異なる色である。
【0012】
雌型ロックコネクター12は、コネクター10の色に反応するセンサーを含み、空気通路を形成するように雄型コネクター10をコネクター12と結合する際に検出された色情報を機器6に伝達する。当然のことながら、カフ2を自動的に識別する他の方法、例えば、カフ2又はコネクター10にRFID装置を組み込むこと、又は二重目的のカフのみが機器6に接続可能であるようにコネクター10及び12の形状を形成することを用いることができる。
【0013】
機器6は、ユーザーに情報を表示するため、且つユーザーが好ましい実施形態の動作を制御することを可能にするために、グラフィカルなタッチスクリーンユーザーインターフェース16を利用する。
【0014】
好ましい実施形態のユーザーは、機器6が実行すべきアクションを表すグラフィカルなアイコンの縁の内側でタッチスクリーン16に触れることにより、機器6が実行すべき所望のアクションを開始又は確認することができる。例えば、ユーザーは、活動前時間中に個別制限圧(PRP)を推定するためにカフ2を患者センサーとして動作させるように選択し、活動時間中にカフ2内で推定PRP付近の圧力レベルを維持するためにカフ2をエフェクターとして動作させるように選択し、カフ2内で維持された圧力レベルを調整し、カフ2の加圧を開始し、カフ2のゼロに近い圧力レベルへの減圧を開始し、最大安全活動時間警報の制限時間を設定し、可聴警報を一時的に消し、(以下で更に説明する)BFR活動のための活動プロトコルのパラメーターを設定し、且つ機器6の他の動作パラメーターを設定することができる。ユーザーは、危険状態が検出された場合に一部のアクションを開始するのを選択的に阻止されることができる。一部の動作は、所望のアクションを開始する前に確認ステップを完了することをユーザーに要求することができる。
【0015】
タッチスクリーンユーザーインターフェース16はまた、ユーザーに機器6の操作に関する情報を表示する。タッチスクリーンユーザーインターフェース16は、以下の情報、機器6により測定されたカフ2内の圧力レベル(エフェクター圧力)、カフ2が膨張しているときにカフ2内で維持されるべき圧力レベル(個別制限圧)、算出されたLOP(肢部閉塞圧)、カフ2が膨張している時間の長さ(活動時間)、圧力警告表示、警報基準「限界」又は警報基準値、検出された警報イベントを説明する警告メッセージ、行われている活動に関連する情報(インターバル進捗状況、完了したインターバル、活動の説明、警告及び指示)、及び機器6の動作に関連する他の情報及び指示、のいずれかを選択的に表示することができる。機器6のユーザーに提示される情報の明確且つ迅速な理解を容易にするために、文字と数字を組み合わせたテキスト、グラフィックアイコン、及び色のすべてを情報の伝達に使用することができる。
【0016】
図1において、機器6の一部を形成しているタッチスクリーンユーザーインターフェース16が示されている。タッチスクリーンユーザーインターフェース16は、機器6から離れ且つ機器6と無線で通信することもできる。例えば、タッチスクリーンインターフェース16は、スマートフォンのアプリケーションに組み込まれ、Bluetooth(登録商標)又は無線LANを介して機器6と通信することができる。
【0017】
機器6の好ましい実施形態のブロック図が
図2に示されている。
図2を参照すると、コントローラー18は、関連するメモリと、アナログ及びデジタルの周辺インターフェース回路と、他の支持部品とを有する、当該技術分野で知られている典型的なマイクロコントローラーである。コントローラー18は、以下で説明するように機器6の動作を制御するソフトウェアプログラムを実行する。明確にするため、且つ本発明の原理のより良い理解を可能にするために、アクチュエーター及びトランスデューサーと共にコントローラー18により実行される一部の機能が、別個の機能ブロックとして説明され、
図2に示されている。これらの機能ブロックは、エフェクターモジュール20と、センサーモジュール22と、カフ識別モジュール24と、運動モニター26と、コンプライアンスモジュール28と、リモートインターフェースモジュール30とを含む。
【0018】
タッチスクリーンユーザーインターフェース16は、アクションを開始し且つ表示用データを受信するためにコントローラー18と通信する。タッチスクリーンユーザーインターフェース16は、特許文献1に記載されるタッチスクリーンユーザーインターフェースに類似しており、危険を防止し且つ不注意の意図しないアクションを抑制するための機能を含む。
【0019】
スピーカー32が、好ましい実施形態のユーザーに警報状態を警告するために使用される。スピーカー32は、コントローラー18に接続されている。異なる警報信号及び警報状態を特定するために異なる周波数を有する電気信号がコントローラー18により生成され、スピーカー32により可聴音に変換される。
【0020】
安全弁34は、カフ2の膨張可能な空気袋と空気圧で連通するノーマルオープン弁である。安全弁34は、コントローラー18からの電気制御信号に応じて開閉する。安全弁34は、カフ2の空気袋が危なく長時間加圧されたままで、患者の負傷につながる可能性があることを防ぐのに使用される。活動時間中、空気袋内の圧力がPRP付近に維持される時間(活動時間)が監視され、所定の最大安全活動制限時間と比較される。最大安全活動制限時間に達すると、タッチスクリーン16に警告メッセージを表示し且つスピーカー32を使ってオーディオ音を出すことにより危険警告が行われ、コントローラー18は、安全弁34に開いてカフ2の空気袋をゼロに近い圧力まで収縮させるように指示する。
【0021】
活動時間の開始後、安全弁34は、カフ2がPRPまで膨張し且つユーザーがPRPに達したことをタッチスクリーン16により通知される時間を与えるために少なくとも所定の最小制限時間を超えるまで閉じたままである。
【0022】
カフ識別モジュール24は、雌型コネクター12の一部を形成するカラーセンサーと無線で通信する。カフコネクター10がコネクター12と結合する際に、コネクター12内のカラーセンサーはコネクター10の色を判別する。センサーからの色情報は、カフ識別モジュール24に伝達される。
【0023】
カフ識別モジュール24は、カフコネクターの色を接続されたカフの所定の物理的な特徴と関連付けるデータテーブルを保持している。接続されたカフの特徴は、コントローラー18に伝達され、以下で更に説明するようにコントローラー18により使用される。カフ識別モジュール24により保持されているデータテーブルの一例を以下の表1に示す
【表1】
【0024】
機器6に接続されたカフのタイプが二重目的のカフでない場合、コントローラー18は、タッチスクリーン16に警告メッセージを表示することにより機器6のユーザーに警告し、このカフをセンサー及びエフェクターとして動作するように選択することを阻止するべくタッチスクリーン16を構成する。タッチスクリーン16は、ユーザーが阻止された選択を無効にすることを可能にし且つカフがエフェクターとして動作することを可能にするように構成されることもできる。
【0025】
エフェクターモジュール20は、コントローラー18と通信し、カフ2の膨張可能な空気袋と空気圧で連通する。エフェクターモジュール20は、
図3に詳細に示されている。
図3を参照すると、エフェクターモジュール20は、圧力調整器36と、警報状態検出器38と、エフェクタータイマー40とを含む。圧力調整器36は、カフ2の膨張可能な空気袋内の空気の圧力をコントローラー18から伝達された基準圧力レベル付近に調整するための部品の組み立て品である。圧力調整器36は、設計及び動作の点で特許文献2に記載されるタニケット圧力調整器に類似しており、カフ2の膨張可能な空気袋内の圧力レベルを基準圧力レベル付近に維持するための弁と圧力源との組み合わせを含む。或いはコストを削減するために、カフ2内の圧力を制御するのに圧力調整器36の代わりに手動で制御可能なポンプ及び弁を使用することができる。この場合、コントローラー18は、活動前時間中にLOPを推定し且つ活動時間中にカフ2の空気袋内の圧力をPRP付近に維持する目的で圧力レベルを増減させるようにタッチスクリーンユーザーインターフェース16を用いてユーザーに指示するように構成される。
【0026】
カフ2を越える動脈血の流れを制限するためにカフ2を膨張させている活動時間中、警報状態検出器38は、圧力調整器36の動作を監視し且つ検出された警報状態を示す信号をコントローラー18に伝達する。警報状態検出器38により検出される警報状態は、圧力調整器36とカフ2の膨張可能な空気袋との間の空気通路の閉塞(閉塞警報)、カフ2の膨張可能な空気袋又は圧力調整器36とカフ2の膨張可能な空気袋との間の空気通路からの漏れ(漏れ警報)、所望の基準圧力レベルより極端に低い空気袋の圧力レベル(低圧警報)、所望の基準圧力レベルより極端に高い空気袋の圧力レベル(高圧警報)、圧力調整器36の故障(故障警報)である。当然のことながら、圧力調整器36の動作に関連する他の警報状態が、警報状態検出器38により検出されることができる。
【0027】
エフェクタータイマー40は、カフ2の膨張可能な空気袋が膨張している時間の長さ(活動時間)の分単位の表示を行うように動作する。活動時間は、カフ2がカフ2を越える動脈血の流れ又は侵入を制限するためにエフェクターとして動作しているときにコントローラー18に伝達され且つタッチスクリーン16に表示される。
【0028】
図2を参照すると、センサーモジュール22は、カフ2の膨張可能な空気袋と空気圧で連通し且つコントローラー18と通信する。センサーモジュール22は、個別制限圧(PRP)を設定するために、カフ2の膨張可能な空気袋内に生じる空気の脈動を検出及び解析する。検出された空気の脈動は主に、それぞれの心周期中の動脈血の肢部4への流れに起因する肢部4のカフ2で囲まれた部分の体積変化から生じる。
【0029】
センサーモジュール22は、
図4に詳細に示されている。
図4を参照すると、脈動センサー42が、カフ2の膨張可能な空気袋と空気圧で連通して示されている。脈動センサー42は、生理的な原因による、それぞれの心周期中に生じる肢部4のカフ2で囲まれた領域への血液の侵入に対応する空気の脈動を検出及び特性化するように最適化されている。血液の侵入を示す、センサー42により生成される脈動特性レベルは、最大脈動振幅と、脈動領域(心周期にわたる積分)と、脈動周波数スペクトルとを含む。当然のことながら、他の脈動特性もセンサー42により生成され得る。
【0030】
好ましい実施形態が使用される環境に特有のノイズ発生源が、肢部4のカフ2で囲まれた領域への血液の侵入に対応する空気の脈動と無関係のカフ2の空気袋内の圧力変動を生じる場合がある。これらのノイズ発生源の一部は、血液の侵入に関連する生理的な脈動に類似し且つ脈動センサー42により生成される脈動特性レベルの精度に影響する圧力変動を生じる可能性がある。生理的な圧力脈動が脈動センサー42により検出される際に存在するノイズのレベルを特性化及び定量化するため、且つ生理的な圧力脈動とノイズ発生源に起因する圧力変動とをより良く区別するため、且つ脈動の正確な特性化を確実にするために、好ましい実施形態はノイズセンサー44を含む。ノイズセンサー44は、カフ2の空気袋と空気圧で連通する。
【0031】
カフ識別モジュール24からのカフ2の物理的な特徴に関する情報は、生理的な脈動の検出をより良く最適化し且つノイズレベルをより良く決定するために、生理的脈動センサー42とノイズセンサー44とにより使用されることができる。
【0032】
それぞれの検出された生理的な脈動の特性レベルは、脈動センサー42により脈動メモリ46及び個別制限圧推定器48に伝達される。検出された脈動に関連するノイズレベルも、ノイズセンサー44によりメモリ46及び推定器48に伝達される。検出された脈動に関連するノイズレベルが所定の閾値を超える場合、脈動の特性レベルは、メモリ46及び推定器48により無効にされることができる。無効にされた脈動の数が所定の警告期間内に所定の警告制限を超えた場合、コントローラー18は、タッチスクリーン16に警告メッセージを表示し且つオーディオ音を出すことによりユーザーに知らせるように作用する。
【0033】
検出された脈動に関して、メモリ46は、脈動の特性レベルと、脈動が検出された時刻付近のノイズレベルと、脈動が検出された時刻付近のカフ2の空気袋内の圧力レベルとを記録する。脈動メモリ46は、好ましい実施形態の動作モードに応じて1つ以上の検出された脈動に関して、脈動特性レベルと、関連するノイズレベルと、関連するカフ2の空気袋内の圧力レベルとを記録することができる。
【0034】
LOPとPRPの推定は、活動前時間中に行われる。ユーザーがタッチスクリーンインターフェース16を用いてLOPとPRPの推定を開始すると、コントローラー18とセンサーモジュール22は以下のように動作する。
【0035】
a)コントローラー18は、肢部4のカフ2で囲まれた領域を越える血流を阻止するように選択された所定のデフォルト圧力レベルまでカフ2の空気袋を膨張させるようにユーザーに指示する。好ましい実施形態において、所定のデフォルト圧力レベルは300mmHgである。当然のことながら、他のデフォルト圧力レベルを予め定めることができ、デフォルト圧力レベルは、カフ識別モジュール24により報告されるような機器6に接続されたカフの特徴によって決まることができる。デフォルト圧力レベルは、タッチスクリーンユーザーインターフェース16を用いて機器6のユーザーにより選択されることともできる。
【0036】
b)カフ2の空気袋内のデフォルト圧力レベルに関連する検出された生理的な脈動の特性レベルが脈動メモリ46に記録される。検出された脈動に関連するノイズレベルも、脈動メモリ46に記録される。
【0037】
c)コントローラー18は次に、カフ2の空気袋内の圧力レベルを所定の最小圧力レベルに達するまで所定の増分で低下させるようにエフェクターモジュール20に指示する。カフ2の空気袋内の圧力レベルのそれぞれの低下に続いて、検出された生理的な脈動の特性レベル、それらの関連するノイズレベル及び関連する圧力レベルがメモリ46に記録される。所定の最小圧力レベルに達すると、コントローラー18は、空気袋を収縮させるようにエフェクターモジュール20に指示する。
【0038】
d)推定器48は次に、メモリ46から脈動特性レベルとそれらの関連する空気袋圧力レベルとを読み出す。推定器48は、記録された特性レベルを比較及び解析し、カフ2の空気袋内の圧力レベルを低下させる間に記録された脈動特性の最大レベルを決定する。一般に、カフ2の空気袋内の圧力レベルを低下させるにつれて、肢部4のカフ2で囲まれた領域への血液の侵入の距離が増大し、生理的な脈動の特性レベルも上昇する。生理的な脈動の特性レベルは、カフ2の空気袋内の圧力レベルがLOPを下回る圧力にあり且つ動脈血が肢部4のカフ2で囲まれた領域を越えて流れているときにそれらの最大レベルにある。LOPに関連する脈動の特性レベルは、血液がカフ2を越えて流れているときに検出された脈動特性の最大レベルと所定の関係を有することが分かっている。
【0039】
e)カフ2の空気袋内の圧力レベルをデフォルト圧力レベルから所定の最小圧力レベルまで低下させる間に記録された脈動特性の最大レベルを決定した後、推定器48は、これらの最大レベルの所定の割合を用いて、カフ2の空気袋内の圧力レベルがLOP付近にあるときに検出される脈動特性レベルと一致するであろう脈動特性レベルを計算する。
【0040】
f)推定器48は、記録された脈動特性レベルとそれらの関連する圧力レベルとを解析し、先に計算されたLOPに関連する脈動特性レベルと一致する特性を有する脈動を生じるためにカフ2の空気袋内に必要とされる圧力レベルを算出することにより患者のLOPを推定する。推定器48はまた、記録された脈動特性に関連するノイズレベルを解析し、LOPの推定に関連するノイズレベルを決定する。ノイズが有する可能性があるLOPの推定の精度へのあらゆる影響を補償するために、推定器48は、推定LOPとLOPの推定に関連するノイズレベルとを使用して推定PRPを決定する。推定器48によって計算された推定PRPは、推定LOPとLOPの推定に関連するノイズレベルとの関数である。LOPの推定に関連するノイズレベルがノイズ閾値以上である場合、推定LOPは、ノイズによりもたらされた可能性のある誤差を補償するために所定の圧力増分だけ増加される。PRPはその結果、LOPの所定の割合として設定される。この所定の割合は一般的に100%より少なく、結果としてLOPより小さいPRPとなる。所定の割合は、LOPの100%未満か、100%に等しいか又は100%を超えるユーザーが選択した値であることもできる。100%を超える割合は、肢部のカフで囲まれた領域を越える血液の侵入を阻止するPRPとなる。
【0041】
当然のことながら、PRPを推定するのに、上述の関数以外に、推定LOP及び関連するノイズレベルの他の関数を使用することができる。
【0042】
或いは、推定器48は、LOP自体の所定の割合を使用する代わりに、PRPを設定するのにLOPに関連する脈動特性の所定の割合を使ってPRPを決定するように構成されることができる。この構成において、推定器48は、装着されたタニケットカフ2を越えて侵入する血液の特性を検出することにより又は上記のように様々な圧力においてカフ2の膨張可能な空気袋内で検出された脈動特性を利用することによりLOPを決定する。推定器48がLOPを決定した後、コントローラー18は、カフをLOPまで加圧するようにエフェクターモジュール20に指示し、脈動センサー42がLOPにおいて最大脈動振幅及び脈動領域などの脈動特性レベルを検出するのを可能にする。推定器48は次に、LOPにおける脈動特性レベルの所定の割合である脈動特性レベルに対応する圧力を見つけ出し、この圧力をPRPとして設定する。PRPにおける所望の脈動特性を決定するのに使用される所定の割合は、LOPの大きさの関数であることができ、例えば、LOPが120mmHgであった場合、所定の割合は70%であることができ、LOPが150mmHgであった場合、所定の割合は80%であることができる。
【0043】
推定器48はまた、カフ2の空気袋内の圧力レベルをデフォルト圧力レベルから所定の最小圧力レベルまで低下させる間に記録された脈動特性レベルを用いて、最初にLOPを推定することなく、直接PRPを推定するように構成されることもできる。この場合、推定器48は、メモリ48から記録された脈動特性レベルとそれらの関連する空気袋の圧力レベルとを読み出し、記録された特性レベルを比較及び解析してカフ2の空気袋内の圧力レベルを低下させる間に記録された脈動特性の最大レベルを決定する。推定器48は次に、記憶されたその脈動特性の最大レベルの所定の割合である脈動特性レベルに対応する圧力を見つけ出し、この圧力をPRPとして設定する。
【0044】
デフォルト圧力と最小圧力との間のカフ2の空気袋内の様々な圧力レベルに関連する脈動特性レベルを記録するために、上記のもの以外の(圧力レベルをデフォルトレベルから最小レベルまで所定量低下させる)シーケンスを用いることができることは明らかであろう。例えば、コントローラー18は、カフ2の空気袋を所定の最小レベルまで膨張させ且つデフォルト圧力レベルに達するまで所定の増分で圧力レベルを上昇させるようにエフェクターモジュール20に指示することができ、コントローラー18はまた、検出された生理的な脈動特性レベルとそれらの関連するカフ2の空気袋内の圧力レベルの大きさに応じて所定の増分量、デフォルト圧力レベル及び最小圧力レベルを変えることもできる。
【0045】
図2を参照すると、運動モニター26は、カフ2の膨張可能な空気袋と空気圧で連通し、コントローラー18及びコンプライアンスモジュール28と通信する。運動モニター26は、カフ2が装着された肢部4の動きを示す、カフ2の膨張可能な空気袋内に生じる空気圧の変動を検出及び解析する。圧力変動の振幅及び周波数に基づいて、運動モニター26は、活動時間中の運動のレベルと運動の継続時間とを測定する。
図5aは、肢部4が静止しているときにカフ2に生じる圧力変動を示す。
図5bは、肢部4の低強度且つ低繰り返し数の運動に応じてカフ2に生じる圧力変動を示す。
図5cは、肢部4の高強度且つ高繰り返し数の運動に応じてカフ2に生じる圧力変動を示す。
図5b及び5cにおいて、それぞれの圧力変動は、活動を行う肢部の1回の運動に対応し、従って、これらのプロットに示した複数の変動は、肢部により行われる運動の複数の繰り返しを示す。
【0046】
BFR身体活動が指示された患者は、通常、運動レベル(活動中の運動の強度)と、運動インターバル(活動が行われる時間間隔)と、インターバル繰り返し数(行われる運動インターバルの数)と、最大安全活動制限時間とからなるそれらのニーズに特有の活動プロトコルも指示される。プロトコルの指示において、療法士は、運動レベル、運動インターバル、インターバル繰り返し数及び最大安全活動制限時間を設定し、それらはコンプライアンスモジュール28に伝達される。コンプライアンスモジュール28は、指示された活動プロトコルに対する患者のコンプライアンスを監視するために好ましい実施形態に含まれている。活動プロトコルを指示し且つプロトコルに対する患者のコンプライアンスを監視することの利点は、患者の転帰を患者が実際に行う活動に関して評価できることである。活動時間中、運動モニター26によって測定された運動レベル及び運動継続時間は、コンプライアンスモジュール28に伝達され、コンプライアンスモジュール28において指示された活動プロトコルに対して療法士が設定した限界値と比較される。指示された運動インターバルにわたって運動が行われると、インターバルの完了を示すためにコンプライアンス警告が行われる。運動レベルが高すぎるか又は低すぎる場合、或いは運動の継続時間が運動インターバルに合っていない(すなわち、運動インターバル中の運動が不十分又は運動インターバル以外に運動が検出された)場合、或いは指示された運動インターバルの1つで運動が全く行われていない場合、コンプライアンスモジュール28により警告が行われ、療法士に伝達される。活動プロトコルの上述の態様(運動レベル、運動インターバル、及びインターバル繰り返し数)に加えて、PRPを設定するのに使用されるLOPの所定の割合が、コンプライアンスモジュールにおいて定められ、コントローラー18を介してセンサーモジュール22に伝達されることができる。これにより、各運動インターバルに対して又は全体としてのBFR活動に対して個別の割合をユーザーが指定することが可能になる。
【0047】
機器6は、リモートインターフェースモジュール30を介して遠隔装置と通信する。リモートインターフェースモジュール30は、USB、イーサネット(登録商標)、Bluetooth(登録商標)又はWiFiなどの物理的な通信インターフェースと、接続された遠隔装置に特有の適切な通信プロトコルとを提供する。遠隔装置から報告又は受信され得るデータは、LOP及びPRPの測定値、カフ圧力レベル設定値、警報限界設定値、及び活動プロトコルパラメーターなどの活動前時間のデータ及びイベントと、警報状態、完了した運動インターバル、活動時間、カフ圧力レベル、圧力レベル設定値又は警報限界設定値への調整、及びコンプライアンス警告又は他の警告などの活動時間のデータ及びイベントとを含む。
【0048】
例えば、タッチスクリーンユーザーインターフェース16は、機器6から物理的に切り離され且つリモートインターフェースモジュール30を介して機器6と無線で通信することができる。また、リモートインターフェースモジュール30は、療法士が活動プロトコルのパラメーターを指示し且つプロトコルに対する患者のコンプライアンスを監視するためにコンプライアンスモジュール28と遠隔通信することを可能にする、遠隔コンプライアンスモニターのような装置用の通信リンクを提供する。機器6と遠隔のタッチスクリーンユーザーインターフェイスのような機器6の機能に不可欠な遠隔装置との間で通信が途絶えた場合に、患者の安全性を確保するために、コントローラー18は、カフ2を収縮させ且つ通信が再確立されるまで再膨張を阻止するように安全弁34に指示する。機器6と遠隔のコンプライアンスモニターのような患者のコンプライアンスを監視するための遠隔装置との間で通信が途絶えた場合、タッチスクリーン16に警告メッセージを表示し且つスピーカー32によりオーディオ音を出すことによって機器6により通信警告が行われる。
【0049】
好ましい実施形態がBFR活動を可能にするためにどのように動作するかをより良く理解できるようにするため、以下の例を提供する。遠隔のコンプライアンスモニターを用いて、療法士は、所望のBFR活動に関する特定パラメーターをリモートインターフェースモジュール30を介してコンプライアンスモジュール28に伝達する。療法士は、PRPを測定されたLOPの80%の圧力に設定し、運動レベルの上限及び下限を設定し、3つの2分間の運動インターバル及び10分間の最大活動制限時間を設定する。更に、療法士は、活動を脚伸展運動であるように設定する。次に、活動前時間中、好ましい実施形態を用いる患者は、肢部を囲むために適切な二重目的のタニケットカフ2を選択する。患者は、肢部4の周囲でカフ2を固定し、カフが機器6と空気圧で連通するようにカフ2を接続する。カフ識別モジュール24は、条件に合った二重目的のタニケットカフであるか否かを判定するためにカフ2を識別しようとする。カフ2が好ましい実施形態で使用するための条件に合った二重目的のカフでないか又は識別できない場合、タッチスクリーンユーザーインターフェース16を用いて患者に警告が出され、PRPの推定を開始し且つカフを膨張するのに用いられる制御装置は動作を停止させられ、それにより条件に合わないカフの使用を防止する。
【0050】
空気圧で接続されたカフが条件に合ったものである場合、患者は、タッチスクリーンユーザーインターフェース16に示された対応するグラフィックアイコンに触れることにより個別制限圧(PRP)の推定を開始することができる。
【0051】
PRPを推定するために、機器6は、上記のように圧力レベルに関連する生理的な空気脈動の特性レベルを記録しながらカフ2の空気袋を様々なレベルに膨張させる。PRPの推定中に、患者の肢部の運動又はタニケット機器6の調整により生じたノイズなどのLOPの推定のために解析される圧力脈動と無関係のノイズが存在し且つそのノイズが所定の閾値を超える場合、推定は一時停止され、タッチスクリーン16に警告メッセージが表示される。
【0052】
機器6がLOPの推定を完了すると、PRPはLOPの80%と算出され、LOPとPRPがタッチスクリーン16に表示される。患者はその結果、推定PRPを活動時間中にカフ2の空気袋内で維持するべき圧力レベルとして選択することができる。推定PRPが依然として患者の生理的な状態に関連していることを確実にするために、コントローラー18は、PRPの推定が完了した後の所定時間のみ患者が推定PRPを活動中にカフ2の空気袋内で維持されるべき圧力レベルとして選択することを可能にする。PRPが所定時間内に選択されない場合、PRPの別の推定を開始しなければならないか、或いは患者がデフォルト圧力レベルを活動時間中にカフ2の空気袋内で維持されるように選択しなければならない。
【0053】
活動時間中にカフ2の空気袋内で維持される圧力レベルを選択した後、患者は、タッチスクリーン16上のアイコンに触れることによりタニケットエフェクターを起動する(カフ2を膨張させる)ことができる。
【0054】
タニケットエフェクターが起動され且つ空気袋がPRPまで膨張させられると、活動時間が始まる。この時間中、患者は最初の2分間の運動インターバルの脚伸展運動を開始する。患者が運動を行うときに、運動モニター26は空気袋内の圧力変動を検出し、圧力変動に関連する肢部の運動レベルを測定する。運動インターバル中、運動レベルが所定の最小値未満である場合、無活動の警告が行われる。逆に、運動レベルが所定の最大値より大きい場合、過活動の警告が行われる。患者が2分間のインターバルの途中で運動を停止するか又は2分間のインターバルを超えて運動を継続しようとすると、コンプライアンスモジュール28によりコンプライアンスの警告が行われる。最初の2分間のインターバルが完了すると、コンプライアンスモジュール28によりコンプライアンスの警告が行われ、患者は次の運動インターバルの開始までの運動を停止する。患者は、10分間の最大活動制限時間内に同じBFR運動インターバルをもう2回繰り返す。患者が特定の運動インターバル中にまったく運動を行わないか又は療法士に指定された3つの運動インターバル以外で10分間の活動制限時間内の時間に運動を行おうとした場合、更なる警告が行われる。
【0055】
患者が指定された数のインターバルを完了した後、タッチスクリーンユーザーインターフェース16は、カフ2を収縮させるように患者に指示する。患者がカフ2を収縮させず且つカフ2が10分間の最大安全活動制限時間に達するまで膨張したままである場合、コントローラー18は、タニケットカフ2の空気袋を収縮させるように安全弁34に指示する。
【0056】
コンプライアンスモジュール28は、完了した運動インターバル及びあらゆるコンプライアンス警告又は活動警告を含む活動時間中に行われた活動の概要をタッチスクリーン18を介して患者に伝達し且つリモートインターフェースモジュール30を介して接続された遠隔コンプライアンスモニターに通信する。