(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータと、第1及び第2のベアリングと、前記第1及び第2のベアリングをそれぞれ保持する第1及び第2のベアリング保持部とを有するフレームと、前記第1及び第2のベアリングによって回転可能に支持されたロータと、前記ロータの軸線の方向の予圧を発生させる予圧部材とを備えた電動機であって、前記フレームは、第1及び第2のフレーム部を有し、前記第1のフレーム部は、前記予圧部材の外側端部を覆うように対向して前記予圧部材の前記外側端部を支持する、複数の部分に分割されていない支持部を有する前記電動機の製造方法において、
前記予圧部材を前記第1のフレーム部の前記支持部に設置する工程と、
前記ステータを前記第1のフレーム部に固定すると共に、前記ロータが挿通された前記第1及び第2のベアリングを前記第1及び第2のベアリング保持部にそれぞれ設置する工程と、
前記ロータが前記第1のベアリングを介して前記軸線の方向に前記予圧部材を押す状態で前記第2のベアリングを前記第2のベアリング保持部に固定する工程と、
前記第2のフレーム部の凹状部分を前記支持部と組み合わせる工程と
を有する電動機の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。各図に示されるxyz直交座標系において、x軸方向は、電動機1のロータ5の軸線A0と平行な方向(以下、“軸線の方向”又は“軸線方向”と称する。)を示し、y軸方向は、フレーム2の分割面(第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22における各接合面)と平行な方向であって、且つ、軸線方向に直交する方向を示し、z軸方向は、x軸方向及びy軸方向の両方に直交する方向を示す。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る電動機1の内部構造を概略的に示す断面図である。
図2(a)は、電動機1の外観を概略的に示す正面図である。
図2(a)において破線で示される部分は、
図1に示される電動機1の内部構造に対応する。
図2(b)は、電動機1の外観を概略的に示す右側面図である。
図3(a)は、
図2(a)に示される電動機1のC3−C3線に沿った切断面の構造を概略的に示す断面図である。
図3(b)は、(a)に示される電動機1のフレーム2を分解した状態の構造を概略的に示す図である。
【0011】
本実施の形態に係る電動機1は、例えば、インナーロータ型の電動機である。電動機1は、フレーム2(ハウジング)と、ステータ3と、電動機1の反負荷側に備えられた第1のベアリング4a(“反負荷側ベアリング”又は“主ベアリング”とも称する。)と、電動機1の負荷側に備えられた第2のベアリング4b(“負荷側ベアリング”又は“副ベアリング”とも称する。)と、ロータ5と、予圧部材としての圧縮バネ6とを有する。
【0012】
フレーム2は、フレーム2の基部としての第1のフレーム部21(“基部側フレーム部”又は“下側フレーム部”とも称する。)と、フレーム2の反基部側に備えられた第2のフレーム部22(“反基部側フレーム部”又は“上側フレーム部”とも称する。)とを有する。第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22は、接着、ネジ締結、溶接などによって、互いに固定されている。
図2に示されるように、例えば、フレーム2は、ロータ5の軸線A0と平行な方向に沿って分割された複数のフレーム部が組み合わされていることにより、有底の円筒形状に構成されている。具体的には、フレーム2は、ロータ5の軸線A0を含む平面(ただし、後述する支持部21dの部分を除く。)で互いに分割(2分割)された部品(すなわち、第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22)が組み合わされて構成されている。本実施の形態では、第1のフレーム部21をフレーム2の基部として構成しているが、第2のフレーム部22をフレーム2の基部として構成してもよい。
【0013】
さらに、フレーム2は、電動機1の反負荷側に備えられた第1のベアリング保持部2a(“反負荷側ベアリング保持部”又は“主ベアリング保持部”ともいう)と、電動機1の負荷側に備えられた第2のベアリング保持部2b(“負荷側ベアリング保持部”又は“副ベアリング保持部”ともいう)とを有する。フレーム2は、ステータ3を収容する。具体的には、フレーム2の第1のベアリング保持部2aが、第1のベアリング4aを介してロータ5の反負荷側(−x方向の端部)を保持し、フレーム2の第2のベアリング保持部2bが第2のベアリング4bを介してロータ5の負荷側(+x方向の端部)を保持する。
【0014】
第1のフレーム部21は、ステータ3と嵌合するステータ嵌合部21a(“第1のステータ嵌合部”、“基部側ステータ嵌合部”、又は“下側ステータ嵌合部”とも称する。)、第1のベアリング4aと嵌合するベアリング嵌合部21b、及び第2のベアリング4bと嵌合するベアリング嵌合部21cを有する。本実施の形態では、ステータ3(具体的には、軸線A0に対して−z側のステータコア3a)の外周部の一部が、凹状のステータ嵌合部21aに嵌め込まれており、軸線A0に対して−z側の第1のベアリング4aがベアリング嵌合部21bに嵌め込まれており、軸線A0に対して−z側の第2のベアリング4bがベアリング嵌合部21cに嵌め込まれている。
【0015】
第1のフレーム部21は、電動機1の反負荷側に、圧縮バネ6を支持する支持部21d(底部)を有する。支持部21dは、第2のフレーム部22に向けて突出した凸状部分210dを有する。支持部21dは、軸線方向と直交する平面(zy平面)において、略円状に形成されている。凸状部分210dは、軸線方向と直交する平面(zy平面)において、略半円状に形成されている。フレーム2は、複数のフレーム部(例えば、第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22)に分割されているが、支持部21dはフレーム2において分割されていない。支持部21dは、電動機1の負荷側に、圧縮バネ6に対向して、圧縮バネ6を支持する支持面211dを有する。
【0016】
第1のフレーム部21は、軸線方向における第2のベアリング4bの固定位置を規制するための第1の規制部21fを有する。第1の規制部21fは、“基部側規制部”、“下側規制部”、“基部側突出部”、又は“下側突出部”とも称する。本実施の形態では、第2のベアリング4bの外側(反負荷側)の端部が、第1の規制部21fに接触している。ただし、第2のベアリング4bの外側(反負荷側)の端部が、第1の規制部21fに接触しないように、第2のベアリング4bが位置決めされていてもよい。
【0017】
第2のフレーム部22は、ステータ3と嵌合するステータ嵌合部22a(“第2のステータ嵌合部”、“反基部側ステータ嵌合部”、又は“上側ステータ嵌合部”とも称する。)、第1のベアリング4aと嵌合するベアリング嵌合部22b、及び第2のベアリング4bと嵌合するベアリング嵌合部22cを有する。本実施の形態では、ステータ3(具体的には、軸線A0に対して+z側のステータコア3a)の外周部の一部が、凹状のステータ嵌合部22aに嵌め込まれており、軸線A0に対して+z側の第1のベアリング4aがベアリング嵌合部22bに嵌め込まれており、軸線A0に対して+z側の第2のベアリング4bがベアリング嵌合部22cに嵌め込まれている。
【0018】
第2のフレーム部22は、支持部21d(具体的には、凸状部分210d)と組み合わされる凹状部分22dを有する。凹状部分22dの外縁は、凸状部分210dと凹状部分22dとの間の間隙が形成されないように、凸状部分210dの外縁に沿って組み合わされる形状(例えば、略半円状)であることが望ましい。
図2(b)に示されるように、本実施の形態では、フレーム2は、第1のフレーム部21と第2のフレーム部22とが互いに固定された状態において、凸状部分210dの外縁に沿って凹状部分22dが組み合わされている。ただし、凸状部分210dと凹状部分22dとの間に間隙が形成されていてもよい。
【0019】
第2のフレーム部22は、軸線方向における第2のベアリング4bの固定位置を規制するための第2の規制部22fを有する。第2の規制部22fは、“反基部側規制部”、“上側規制部”、“反基部側突出部”、又は“上側突出部”とも称する。本実施の形態では、第2のベアリング4bの外側(反負荷側)の端部が、第2の規制部22fに接触している。すなわち、本実施の形態では、第2のベアリング4bの外側(反負荷側)の端部が、第1の規制部21f及び第2の規制部22fに接触していることにより、第2のベアリング4bが位置決めされている。
【0020】
第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22は、1つの金型を用いた成型により形成されていることが望ましい。第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22の成型の方法としては、例えば、樹脂成型又はアルミダイキャストが適している。
【0021】
ステータ3は、ステータコア3aと巻線3bとを有する。ステータ3は、フレーム2の内側(内壁)に固定されている。具体的には、ステータコア3aは、ロータ5の外側において空隙8(エアギャップ)を隔ててロータ5と対向するように、接着、圧入などの手段により、ステータ嵌合部21a及び22aに固定されている。ステータコア3aは、例えば、複数の電磁鋼板が積層されて固着されることにより形成されている。ステータコア3aの形状は、例えば、略円環形状であり、ステータコア3aの内周側において周方向(例えば、ロータ5の回転方向)に略等間隔で複数のティースが備えられている。ステータコア3aに備えられた各ティースには、インシュレータを介して巻線3bが巻装されている。
【0022】
第1のベアリング4aは、第1のベアリング保持部2aに保持されている。第1のベアリング4aは、例えば、転がり軸受である。本実施の形態では、第1のベアリング4aは、隙間嵌めによってベアリング嵌合部21b及び22bに嵌合されている。第1のベアリング4aは、第1のベアリング保持部2a内において軸線方向に可動である。第1のベアリング4aの外周面と第1のベアリング保持部2a(具体的には、ベアリング嵌合部21b及び22b)との間には間隙が形成されていることが望ましい。ただし、第1のベアリング4aの外周面と第1のベアリング保持部2a(具体的には、ベアリング嵌合部21b及び22b)とが接触していてもよい。
【0023】
第2のベアリング4bは、第2のベアリング保持部2bに保持されている。第2のベアリング4bは、例えば、転がり軸受である。本実施の形態では、第2のベアリング4bは、隙間嵌めによってベアリング嵌合部21c及び22cに嵌合されており、接着剤7によって第2のベアリング保持部2bに固着されている。すなわち、本実施の形態では、第1のベアリング4aは、第1のベアリング保持部2a(具体的には、ベアリング嵌合部21b及び22b)に固着されていないが、第2のベアリング4bは、第2のベアリング保持部2b(具体的には、ベアリング嵌合部21c及び22c)に固着されている。
【0024】
ロータ5は、ロータ5の回転軸としてのシャフト5aと、永久磁石5bとを有する。シャフト5aの断面(x軸に直交する面)は、例えば、円形である。ロータ5(具体的には、シャフト5a)は、第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bによって回転可能に支持されている。永久磁石5bは、接着などによってシャフト5aの側面(外周面)に固定されている。永久磁石5bは、例えば、リング形状であり、予め定められた極数を持つように着磁されている。
【0025】
ロータ5の他の例として、永久磁石5bを、予め定められた極数に対応した平板形状又は蒲鉾形の複数の磁石とし、軸線方向におけるシャフト5aの中央部(ステータ3に対向する部分)の断面(x軸に直交する面)が、予め定められた極数に対応した多角形断面となるように構成しても良い。
【0026】
圧縮バネ6は、支持部21dと第1のベアリング4aとの間に挟まれ、圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)は、支持部21dで覆われるように支持部21dに対向している。すなわち、圧縮バネ6の反負荷側の端部は、圧縮バネ6の内の支持部21dに対向する部分の全体である。圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)の全体が支持部21dによって支持されていることが望ましい。ただし、圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)の全体が、必ずしも支持部21dの支持面211dに接触していなくてもよい。
【0027】
圧縮バネ6は、例えば、ウェーブワッシャである。圧縮バネ6は、第1のベアリング4a及び支持部21dによって軸線方向に圧縮されているため、圧縮バネ6は、軸線方向の予圧を発生させている。例えば、第1のベアリング4aとして転がり軸受を用い、圧縮バネとしてウェーブワッシャを用いる場合、ウェーブワッシャが転がり軸受の外輪に予圧を与えるように、ウェーブワッシャ及び転がり軸受の配置を設定することが望ましい。
【0028】
第2のベアリング4bは、フレーム2に固着されているが、第1のベアリング4aは、フレーム2に固着されていないので、圧縮バネ6による予圧は、第1のベアリング4aを介してロータ5に与えられる。圧縮バネ6が第1のベアリング4aを介してロータ5に予圧を与えている状態で、第2のベアリング4bが第2のベアリング保持部2bに固定されている。すなわち、圧縮バネ6は、第1のベアリング4a、第2のベアリング4b、及びロータ5に、軸線方向(+x方向)の予圧を与えている。
【0029】
本実施の形態では、予圧部材の例として圧縮バネ6を用いて説明したが、予圧部材は、ロータ5の軸線方向に予圧を発生させることができればよく、バネに限られない。
【0030】
次に、
図4から7を用いて、以上に説明した電動機1の複数の変形例を説明する。
【0031】
変形例1.
図4は、電動機1の内部構造の他の一例を概略的に示す断面図である。
図4に示されるように、変形例1に係る電動機1aの第2のベアリング保持部2bは、第2のベアリング4bの外周面と対向する位置に、凹部21g及び22gを有していてもよい。具体的には、第1のフレーム部21(具体的には、ベアリング嵌合部21c)及び第2のフレーム部22(ベアリング嵌合部22c)に、凹部21g及び22gがそれぞれ形成されていてもよい。
図4に示される例では、凹部21g及び22gに接着剤7が充填されている。第2のベアリング4bは、凹部21g及び22gと第2のベアリング4bの外周面との間の接着剤7により第2のベアリング保持部2bに固定されている。第2のベアリング4bが第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22(すなわち、第2のベアリング保持部2b)に固定された状態における接着層の厚さDpは、接着剤7の接着強度が発揮されるために必要な厚さよりも厚くなるように設定されることが望ましい。
【0032】
変形例2.
図5は、電動機1の内部構造のさらに他の一例を概略的に示す断面図である。
図6(a)は、
図5に示される電動機1bの外観を概略的に示す正面図である。
図6(a)において破線で示される部分は、
図5に示される電動機1bの内部構造に対応する。
図6(b)は、(a)に示される電動機1のC6−C6線に沿った切断面の構造を概略的に示す断面図である。
変形例2に係る電動機1bの第1のベアリング保持部2aは、第1のベアリング4aの外周面と対向する内周面を持つリング23を有してもよい。言い換えると、第1のベアリング4aの外周面とフレーム2(第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22)との間にリング23が配置されていてもよい。リング23は、第1のベアリング4aの外周面とフレーム2(第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22)との間の距離が、周方向において均一になるように、周方向に分割されていないことが望ましい。
図4に示される例では、第1のベアリング4aの外周面とリング23の内周面との間に間隙が形成されているが、第1のベアリング4aの外周面とリング23の内周面とが接触していてもよい。リング23の主材料は、特に限定されないが、フレーム2の耐摩耗性よりも高い耐摩耗性を持つ材料であることが望ましい。
【0033】
変形例3.
図7は、電動機1の内部構造のさらに他の一例を概略的に示す断面図である。
図7に示されるように、変形例3に係る電動機1cの第2のベアリング4bは、第2の規制部22fから離間していてもよい。すなわち、第2のベアリング保持部2bにおいて、軸線方向における第2のベアリング4bと第2のフレーム部22との間(第2のベアリング4bの反負荷側)に、間隙22iが形成されていることが望ましい。言い換えると、第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22cは、第1のフレーム部21のベアリング嵌合部21cよりも、軸線方向に大きく形成されていることが望ましい。なお、同様に、第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22bは、第1のフレーム部21のベアリング嵌合部21bよりも、軸線方向に大きく形成されていることが望ましい。
【0034】
図7に示されるように、変形例3に係る電動機1cにおいて、ステータ嵌合部22aの軸線方向の幅は、ステータ嵌合部21aの軸線方向の幅よりも広くてもよい。すなわち、ステータ嵌合部22a内において、軸線方向におけるステータコア3aと第2のフレーム部22(ステータ嵌合部22aの内壁)との間に、間隙22g及び22hが形成されていることが望ましい。
【0035】
以上に説明した本実施の形態に係る電動機1及び変形例に係る電動機1aから1cは、種々の用途に適用することができ、例えば、冷蔵庫、空気調和機などに適用することができる。
【0036】
以上に説明した実施の形態における特徴及び各変形例における特徴は、適宜組み合わせることができる。
【0037】
本実施の形態に係る電動機1によれば、圧縮バネ6が第1のベアリング4aを介してロータ5に予圧を与えている。この際、例えば、圧縮バネを支持する支持部が複数の部分に分割されている場合、フレームの組み立て精度、又は分割された支持部の各部分における接合部(分割面)の加工精度によっては、ステータに対するロータの適切な同軸度が得られない場合がある。これに対し、本実施の形態に係る電動機1によれば、圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)は、支持部21dで覆われるように支持部21dに対向しており(すなわち、支持部21dが分割されていない)、この支持部21dが圧縮バネ6を支持しているので、ステータ3に対するロータ5の同軸度を高めることができる。言い換えると、支持部21dは、第2のフレーム部22に向けて突出した凸状部分210dを有し、複数の部分に分割されていない支持部21dが圧縮バネ6を支持しているので、第1のベアリング4aを介してロータ5に与えられる予圧の方向が軸線方向と平行になるように、圧縮バネ6の姿勢を維持させることができる。したがって、ステータ3に対するロータ5の同軸度を高めた状態を維持することができる。
【0038】
第2のフレーム部22は、凸状部分210dと組み合わされる凹状部分22dを有するので、電動機1の反負荷側におけるフレーム2の密閉性を確保することができる。
【0039】
また、第2のベアリング4bは、第2のベアリング保持部2bにおいて軸線方向に対して固定されているが、第1のベアリング4aは、第1のベアリング保持部2a内において軸線方向に可動である(すなわち、軸線方向に対して固定されていない)ので、フレーム2とロータ5(具体的には、シャフト5a)との間の膨張差を吸収し、第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bにおける応力を抑制できるので、第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bの故障を防止することができる。さらに、第2のベアリング4bを軸線方向に対して固定し、第1のベアリング4aを軸線方向に対して可動とすることにより、軸線方向(+x方向)の予圧をロータ5に与えることができるので、ロータ5の軸線方向の振動、共振などによる異音を抑制することができる。
【0040】
第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22は、第1の規制部21f及び第2の規制部22fをそれぞれ有するので、第2のベアリング4bの軸線方向における移動又は固定位置を規制することができる。例えば、第1の規制部21fが第2のベアリング4bの外側(反負荷側)の端部に接触していることにより、ロータ5の軸線方向の振動、共振などによる異音を抑制することができる。
【0041】
第1のフレーム部21が、1つの金型を用いた成型により形成されていることにより、第1のフレーム部21の各嵌合部(例えば、ステータ嵌合部21a並びにベアリング嵌合部21b及び21c)によってそれぞれ支持されるステータ3とロータ5との間の同軸度を高めることができる。同様に、第2のフレーム部22が、1つの金型を用いた成型により形成されていることにより、第2のフレーム部22の各嵌合部(例えば、ステータ嵌合部22a並びにベアリング嵌合部22b及び22c)によってそれぞれ支持されるステータ3とロータ5との間の同軸度を高めることができる。
【0042】
変形例1に係る電動機1aによれば、第2のベアリング保持部2bは、第2のベアリング4bの外周面と対向する位置に、凹部21g及び22gを有するので、接着剤7の接着強度が発揮されるために必要な接着層の厚さDpを確保することができる。また、接着層の厚さDpのばらつきに起因する第2のベアリング4bの径方向(z方向)における固定位置のばらつきを低減することができる。
【0043】
変形例2に係る電動機1bによれば、第1のベアリング保持部2aは、第1のベアリング4aの外周面と対向する内周面を持つリング23を有するので、第1のベアリング4aの外周面とフレーム2との間の間隙を均一に小さくすることができ、クリープによる電動機1の故障を防止することができる。
【0044】
変形例3に係る電動機1cによれば、第2のベアリング4bが、第2の規制部22fから離間するように第2のベアリング保持部2bに固定されている場合には、第1のフレーム部21と第2のフレーム部22との間の軸線方向における位置ずれ(例えば、軸線方向におけるベアリング嵌合部21bの位置とベアリング嵌合部22bの位置との間の位置ずれ、軸線方向におけるベアリング嵌合部21cの位置とベアリング嵌合部22cの位置との間の位置ずれ、又は軸線方向におけるステータ嵌合部21aの位置とステータ嵌合部22aの位置との間の位置ずれ)を吸収することができる。同様に、ステータ嵌合部22aの軸線方向の幅が、ステータ嵌合部21aの軸線方向の幅よりも広く構成されている場合には、第1のフレーム部21と第2のフレーム部22との間の軸線方向における位置ずれを吸収することができる。本出願において、位置ずれとは、第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22の製造過程において生じる(金型形状の精度及び成型後の素材の収縮に起因する)、ステータ嵌合部21a及び22aの加工位置の位置ずれ(加工誤差)と、第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22の組み立て時に生じる相対的な位置ずれ(組み付け誤差)との両方を含む。
【0045】
次に、実施の形態に係る電動機1の製造方法について説明する。
【0046】
まず、電動機1の構成要素の組み立て前における準備工程として、フレーム2を金型によって成型する。フレーム2は、例えば、第1のフレーム部21と第2のフレーム部22とを有し、これらを組み合わせたときに有底の円筒形状となるよう形成される。第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22は、これらを組み合わせる際の互いの接合面(ただし、凸状部分210d及び凹状部分22dにおける接合面を除く。)が、ロータ5の軸線A0を含むように形成されることが望ましい。
【0047】
第1のフレーム部21には、電動機1の反負荷側に、圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)を覆うように対向する支持部21d(底部)が形成される。支持部21dには、圧縮バネ6に対向して、圧縮バネ6を支持する支持面211dが形成される。支持面211dは、圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)の全体を支持するように形成されることが望ましい。さらに、支持部21dは、軸線方向と直交する平面(zy平面)において、略円状に形成され、且つ、第2のフレーム部22に向けて突出した凸状部分210dを有するように形成される。凸状部分210dは、軸線方向と直交する平面(zy平面)において、略半円状に形成される。さらに、第1のフレーム部21には、ステータ3並びに第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bが嵌め込まれる複数の嵌合部(例えば、ステータ嵌合部21a並びにベアリング嵌合部21b及び21c)が形成される。
【0048】
第2のフレーム部22には、第1のフレーム部21の支持部21d(具体的には、凸状部分210d)と組み合わされる凹状部分22dが形成される。さらに、第2のフレーム部22には、ステータ3並びに第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bが嵌め込まれる複数の嵌合部(例えば、ステータ嵌合部22a並びにベアリング嵌合部22b及び22c)が形成される。
【0049】
図8は、圧縮バネ6を第1のフレーム部21の支持部21dに設置する工程(予圧部材の設置工程)を概略的に示す図である。圧縮バネ6は、例えば、ウェーブワッシャである。
図8に示されるように、圧縮バネ6の外側端部(反負荷側の端部)が支持部21d(具体的には、支持面211d)と対向するように、圧縮バネ6を支持部21dに設置する。圧縮バネ6は、例えば、接着剤などで支持面211dに固着させてもよい。
【0050】
図9は、ステータ3と、ロータ5が挿通された第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bとを第1のフレーム部21内に設置する工程(ベアリング設置工程)を概略的に示す断面図である。
まず、接着剤7を第1のフレーム部21のベアリング嵌合部21cに塗布する。圧縮バネ6は、支持部21dに設置された状態であり、圧縮バネ6は、長さL1の自由長(自然長)の状態(すなわち、無荷重状態)である。
【0051】
次に、圧縮バネ6が自由長の状態において、ロータ5のシャフト5aと圧縮バネ6との間に長さL2の間隙を確保した状態で、ステータ3と、ロータ5が挿通された第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bとを、第1のフレーム部21の開口部21eから第1のフレーム部21の内部に挿入する。この際、ステータ3を第1のフレーム部21に固定すると共に、ロータ5が挿通された第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bを第1のベアリング保持部2a及び第2のベアリング保持部2bにそれぞれ設置する。
【0052】
具体的には、挿入側(−z側)のステータコア3aを、接着、圧入などにより、ステータ嵌合部21aに固定する。さらに、第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bを、第1のベアリング保持部2a(具体的には、ベアリング嵌合部21b)及び第2のベアリング保持部2b(具体的には、ベアリング嵌合部21c)に、隙間嵌めによってそれぞれ嵌合させる。第1のベアリング4aは、隙間嵌めによってベアリング嵌合部21bに嵌合させる。第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bを第1のフレーム部21内に挿入する際におけるシャフト5aと圧縮バネ6との間の間隙(長さL2の間隙)は、第1のベアリング4a及びロータ5が、圧縮バネ6に接触しない程度の長さに設定すればよい。
【0053】
次に、
図10及び
図11を用いて、ロータ5が第1のベアリング4aを介して軸線方向(−x方向)に圧縮バネ6を押す状態で第2のベアリング4bを第2のベアリング保持部2bに固定する工程(ベアリング固定工程)について説明する。
図10は、ロータ5を移動させて圧縮バネ6を圧縮させる工程(予圧部材圧縮工程)を概略的に示す断面図である。
図11は、圧縮バネ6が圧縮された状態で第2のベアリング4bの固定位置を決定する工程(ベアリング位置決め工程)を概略的に示す断面図である。
すなわち、ベアリング固定工程は、予圧部材圧縮工程及びベアリング位置決め工程を含む。
【0054】
まず、ベアリング設置工程の実施によってロータ5が第1のフレーム部21内に挿入された状態(
図10の状態)において、ロータ5を、第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bと共に、反負荷側の方向(−x方向)に移動させることにより、第1のベアリング4aを介して圧縮バネ6を反負荷側の方向に押す。言い換えると、ロータ5を、反負荷側の方向に押すことにより、第1のベアリング4a及び支持部21dにより圧縮バネ6を挟んで、圧縮バネ6を圧縮させる。
【0055】
次に、圧縮バネ6が圧縮された状態(ロータ5が第1のベアリング4aを介して反負荷側の方向に圧縮バネ6を押している状態)において、軸線方向における第2のベアリング4bの固定位置を決定する。本実施の形態では、第2のベアリング4bの固定位置は、第2のベアリング4bの外側端部(反負荷側の端部)が第1の規制部21fと接触する位置である。
図11に示されるように、圧縮バネ6が圧縮された状態において、ベアリング嵌合部21cに塗布されている接着剤7を硬化させる。ベアリング嵌合部21cに塗布されている接着剤7を硬化させることにより、第2のベアリング4bが第2のベアリング保持部2b(具体的には、ベアリング嵌合部21c)に固着され、第2のベアリング4bの位置が固定される。第2のベアリング4bが第2のベアリング保持部2b(具体的には、ベアリング嵌合部21c)に固定された状態において、圧縮バネ6は、第1のベアリング4aに予圧を与えており、第1のベアリング4aを介してロータ5(具体的には、シャフト5a)に予圧を与えており、さらに、第1のベアリング4a及びロータ5を介して第2のベアリング4bに予圧を与えている。
【0056】
図12は、第2のフレーム部22を第1のフレーム部21に固定する工程(フレーム固定工程)を概略的に示す断面図である。
図13は、第2のフレーム部22を第1のフレーム部21に固定させた状態を概略的に示す断面図である。
図12に示されるように、第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22cに接着剤7を塗布し、第1のフレーム部21の開口部21eに第2のフレーム部22で蓋をするように、第2のフレーム部22を第1のフレーム部21の上部(+z側)に置く。第2のフレーム部22を第1のフレーム部21の上部に置く際、第1のベアリング4aを第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22bに、隙間嵌めによって嵌合させ、第2のベアリング4bを第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22cに、隙間嵌めによって嵌合させ、ステータコア3aを、接着、圧入などにより、ステータ嵌合部22aに固定する。
【0057】
図13に示されるように、第2のベアリング4bがベアリング嵌合部22cに嵌合された状態で、ベアリング嵌合部22cに塗布された接着剤7を硬化させることにより、第2のベアリング4bが第2のフレーム部22(具体的には、ベアリング嵌合部22c)に固着される。最後に第1のフレーム部21と第2のフレーム部22とを、接着、ネジ締結、溶接などによって固定する。
【0058】
以上に説明した各工程により、実施の形態に係る電動機1を製造することができる。以上に説明した電動機1の製造方法は、変形例1から3に係る各電動機を製造する際にも適用可能である。ただし、電動機1の製造方法は、以上に説明した方法に限定されない。
【0059】
例えば、変形例1に係る電動機1a(
図4)を製造する際、金型を用いて、第1のフレーム部21(具体的には、ベアリング嵌合部21c)及び第2のフレーム部22(ベアリング嵌合部22c)に、凹部21g及び22gをそれぞれ形成してもよい。この場合、凹部21g及び22gに接着剤7を充填し、第2のベアリング4bを第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22に固着させることが望ましい。第2のベアリング4bが第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22に固着された状態における接着層の厚さDpが、接着剤7の接着強度が発揮されるために必要な厚さよりも厚くなるように設定することが望ましい。
【0060】
また、例えば、変形例2に係る電動機1b(
図5)を製造する際、第1のベアリング4a(具体的には、第1のベアリング4aの外周面)とフレーム2(第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22)との間にリング23を配置してもよい。
【0061】
また、例えば、変形例3に係る電動機1c(
図7)を製造する際、金型を用いて、第2のベアリング4bが、第2の規制部22fから離間するように第2のフレーム部22を成型してもよい。すなわち、第2のベアリング保持部2bにおいて、軸線方向における第2のベアリング4bと第2のフレーム部22との間(第2のベアリング4bの反負荷側)に、間隙22iが形成されるように第2のフレーム部22を成型してもよい。言い換えると、第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22cが、第1のフレーム部21のベアリング嵌合部21cよりも、軸線方向に大きくなるように、第2のフレーム部22を成型してもよい。なお、同様に、第2のフレーム部22のベアリング嵌合部22bが、第1のフレーム部21のベアリング嵌合部21bよりも、軸線方向に大きくなるように、第2のフレーム部22を成型してもよい。
【0062】
また、例えば、変形例3に係る電動機1c(
図7)を製造する際、金型を用いて、第2のフレーム部22におけるステータ嵌合部22aの軸線方向の幅が、第1のフレーム部21におけるステータ嵌合部21aの軸線方向の幅よりも広くなるように第2のフレーム部22を成型してもよい。言い換えると、ステータ嵌合部22a内において、軸線方向におけるステータコア3aと第2のフレーム部22(ステータ嵌合部22aの内壁)との間に、間隙22g及び22hが形成されるように第2のフレーム部22を成型してもよい。
【0063】
本実施の形態に係る電動機1の製造方法によれば、圧縮バネ6の軸線方向の外側端部を覆い、圧縮バネ6の外側端部を支持する支持部21dを、第1のフレーム部21が有するので、ロータ5が第1のフレーム部21内に設置された状態において、ロータ5を、反負荷側の方向(−x方向)に移動させることにより、第1のベアリング4aを介して圧縮バネ6を反負荷側の方向に押して、第1のベアリング4a及び支持部21dにより圧縮バネ6を挟んで、圧縮バネ6を圧縮させることができる。したがって、第1のフレーム部21内に設置された圧縮バネ6が圧縮される前の状態(自然長の状態)であっても、圧縮バネ6、ロータ5、並びに第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bを、第1のフレーム部21内に容易に設置することができる。さらに、ロータ5が第1のフレーム部21内に設置された状態において、ロータ5を軸線方向に移動させて圧縮バネ6を圧縮させることができるので、ステータ3に対するロータ5の同軸度の高い電動機1を容易に製造することができる。
【0064】
ステータ嵌合部21a並びにベアリング嵌合部21b及び21cを、1つの金型によって、1つの部品である第1のフレーム部21に形成するので、例えば、各嵌合部を個別に切削加工によって形成する場合に比べて、第1のフレーム部21の各嵌合部によってそれぞれ支持されるステータ3とロータ5との間の同軸度を高めることができる。同様に、ステータ嵌合部22a並びにベアリング嵌合部22b及び22cを、1つの金型によって、1つの部品である第2のフレーム部22に形成するので、例えば、各嵌合部を個別に切削加工によって形成する場合に比べて、第2のフレーム部22の各嵌合部によってそれぞれ支持されるステータ3とロータ5との間の同軸度を高めることができる。
【0065】
ロータ5が挿通された第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bを、第1のフレーム部21内に設置する際、第1のベアリング4aを隙間嵌めによってベアリング嵌合部21bに嵌合させるので、ロータ5が第1のフレーム部21内に設置された状態において、ロータ5を第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bと共に反負荷側の方向(−x方向)に移動させる動作によって、軸線方向における第2のベアリング4bの固定位置を決定することができる。したがって、例えば、ロータ5が挿通された第1のベアリング4a及び第2のベアリング4bを、第1のフレーム部21の外部から内部に向けて挿入する動作(−z方向への挿入動作)のみによって位置決めする方法に比べて、圧縮バネ6の圧縮及び第2のベアリング4bの固定を容易に行うことができる。
【0066】
第1のフレーム部21(具体的には、ベアリング嵌合部21c)及び第2のフレーム部22(ベアリング嵌合部22c)に、凹部21g及び22gをそれぞれ形成する場合には、第2のベアリング4bの径方向(z方向)における固定位置のばらつきを低減することができる。具体的には、凹部21g及び22gを形成することにより、接着剤7の接着強度が発揮されるために必要な接着層の厚さDpを十分に確保することができ、接着層の厚さのばらつきに起因する第2のベアリング4bの径方向(z方向)における固定位置のばらつきを低減することができる。
【0067】
第1のベアリング4a(具体的には、第1のベアリング4aの外周面)とフレーム2(第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22)との間にリング23を配置する場合には、第1のベアリング4aの外周面とフレーム2との間の間隙を均一に小さくすることができ、クリープの発生が抑制された電動機1を製造することができる。
【0068】
第2のベアリング4bが、第2の規制部22fから離間するように第2のフレーム部22を成型する場合には、製造時における第1のフレーム部21と第2のフレーム部22との軸線方向における位置ずれ(例えば、軸線方向におけるベアリング嵌合部21bの位置とベアリング嵌合部22bの位置との間の位置ずれ、軸線方向におけるベアリング嵌合部21cの位置とベアリング嵌合部22cの位置との間の位置ずれ、又は軸線方向におけるステータ嵌合部21aの位置とステータ嵌合部22aの位置との間の位置ずれ)などによる組み付け誤差を吸収することができる。同様に、ステータ嵌合部22aの軸線方向の幅が、ステータ嵌合部21aの軸線方向の幅よりも広くなるように第1のフレーム部21及び第2のフレーム部22を成型する場合には、製造時における第1のフレーム部21と第2のフレーム部22との軸線方向における位置ずれなどによる組み付け誤差を吸収することができる。