特許第6522184号(P6522184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6522184エレベータ制御装置及び電圧異常時におけるエレベータ運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6522184
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置及び電圧異常時におけるエレベータ運転方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20190520BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   B66B5/02 S
   B66B1/34 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-36419(P2018-36419)
(22)【出願日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平賀 正明
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−169658(JP,A)
【文献】 特開2001−106452(JP,A)
【文献】 特開2007−070080(JP,A)
【文献】 特開平10−203740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 1/00 − 1/52
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ制御装置を構成するエレベータ制御基板に供給される電源電圧の異常を検出する電源電圧異常検出部と、
前記電源電圧異常検出部によって、前記電源電圧の異常が検出された場合には、前記エレベータ制御基板に供給される電源電圧をバックアップ電源側に切り換える電源供給切換部と、
切り換えられたバックアップ電源によってエレベータを最寄階まで運転制御する運転制御部と、を備え
前記エレベータ制御基板への電圧は、商用電源電圧を直流電圧に変換する変換器と、ヒューズを介在させて前記変換器に接続される基板電源装置とを経由して供給されており、
前記電源電圧異常検出部は、前記変換器の出力電圧、前記ヒューズの出力側であって前記基板電源装置の入力電圧及び前記基板電源装置の出力電圧の少なくとも何れかを監視するとともに、何れの出力電圧が異常かを示す監視結果を外部に出力する、
ことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記エレベータ制御基板に対して一時的に電源電圧を供給してエレベータ乗りかごの最寄階への運転を実施させた後、前記バックアップ電源から前記エレベータ制御基板への電源電圧供給を停止させる電源遮断部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記電源電圧異常検出部は、商用電源の停電を監視しており、監視された電圧異常が商用電源の停電に起因する場合には、前記運転制御部に対して停電時着床運転を実施させる指令を出力する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
エレベータの運転中、エレベータ制御装置を構成するエレベータ制御基板に供給される電源電圧の異常有無を監視し、
前記電源電圧の異常が検出された場合、電圧異常が商用電源の停電に起因する場合には、停電時着床運転を実施して乗りかごを所定階に着床させ、
前記電源電圧の異常が商用電源の停電でない場合には、バックアップ電源からの電源電圧をエレベータ制御基板に供給してエレベータを最寄階まで運転して利用者を降車させ、
最寄階への運転終了後は、前記エレベータ制御基板への前記バックアップ電源からの電圧供給を停止する、
ことを特徴とする電圧異常時におけるエレベータ運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置及び電圧異常時におけるエレベータ運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ制御装置は、各機能モジュールに対応する複数の基板で構成されている。そのうち、エレベータ制御に使用するマイコンを搭載したエレベータ制御基板は、停電発生時にも最低限のエレベータ運転が可能なようにバックアップ電源により停電時着床運転を実施して所定階までの運転を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−060583号公報
【特許文献2】特開平09−255259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、停電が発生していない場合でも、エレベータ制御基板への電源電圧供給系に故障が発生して電源電圧の供給が遮断されると、エレベータの運転制御が不能になることがある。このとき、乗りかご内に利用者が存在する場合には、乗りかご内に閉じ込められしまうおそれがあり、利用者に対するサービス低下を招くという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、エレベータ制御基板への電源電圧供給ラインに異常が発生した場合にあってもエレベータを停止させることなく、最低限の運転を確保することで利用者に対するサービス低下を防止することができるエレベータ制御装置及び電圧異常時におけるエレベータ運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための実施形態は、エレベータ制御装置を構成するエレベータ制御基板に供給される電源電圧の異常を検出する電源電圧異常検出部と、前記電源電圧異常検出部によって、前記電源電圧の異常が検出された場合には、前記エレベータ制御基板に供給される電源電圧をバックアップ電源側に切り換える電源供給切換部と、切り換えられた前記バックアップ電源によってエレベータを最寄階まで運転制御する運転制御部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態が適用されるエレベータシステムの構成図。
図2】本発明の第1実施形態に係るエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態のエレベータ制御基板の構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態の処理手順を示すフローチャート。
図5】本発明の第2実施形態に係るエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
初めに、図1に基づき本発明の実施形態が適用されるエレベータシステムについて説明する。
【0009】
図1に示すエレベータシステムは、マシンルームレスエレベータを想定している。建屋1の昇降路2内には、乗りかご3とつり合いおもり4とが主ロープ5により接続され、巻上機6によって上下動されている。巻上機6は巻上機用モータ7によって駆動されている。昇降路2の壁面には、エレベータ制御装置10A(10B)が取り付けられている。図中8は昇降路2の底部を構成するピットを示す。
【0010】
<第1実施形態>
図2は第1実施形態のエレベータ制御装置10Aの構成を示している。エレベータ制御装置10Aは、エレベータ制御基板11と停電時着床制御基板12Aとを備えている。エレベータ制御基板11への電源電圧供給ラインには、三相交流電源(商用電源)PSを所定の直流電圧に変換する変換器としての電源トランス・整流器13と、ヒューズ14を介在させて電源トランス・整流器13と接続される基板電源装置15とを備えている。この基板電源装置15は逆流防止用ダイオード16を介してエレベータ制御基板11と接続されている。また、基板電源装置15の出力側であってエレベータ制御基板11の入力側である電源電圧供給ラインには電圧検出ポイントP1が設定されている。
【0011】
停電時着床制御基板12Aは、電源電圧異常検出部31Aと、バックアップ電源部32と、スイッチSWとを備えている。この停電時着床制御基板12Aは、停電発生時においては、バックアップ電源部32のバックアップ電源をエレベータ制御基板11に供給して乗りかご3を避難階(所定階)まで運転させる。また、本実施形態では、エレベータ制御基板11に対する電源電圧供給ラインに異常が発生すると、同じく、バックアップ電源部32のバックアップ電源をエレベータ制御基板11に供給して乗りかご3を最寄階まで運転させる。
【0012】
電源電圧異常検出部31Aは、エレベータ制御基板11の入力側の電源電圧供給ラインの電圧検出ポイントからの検出電圧を入力する入力端子T1,T2を備え、入力される検出電圧の異常有無を監視し、電圧異常が検出された場合には、電圧異常検出信号をスイッチSWとエレベータ制御基板11に出力する。
【0013】
バックアップ電源部32は、バッテリ41と、ブレーカ42と、DC/DCコンバータ43とを備えており、バッテリ41の直流電圧をDC/DCコンバータ43によって所望の電圧値に変換した後、エレベータ制御基板11に供給するように構成されている。また、ブレーカ42は、電源供給を停止する際に接点が開き、バッテリ41とDC/DCコンバータ43との間の回路を開いて、エレベータ制御基板11への電源電圧の供給を停止する。
【0014】
スイッチSWは、電源電圧異常検出部31Aから出力される電源電圧供給異常検出信号S1によって接点を閉じ、バックアップ電源部32からエレベータ制御基板11に対する電源供給を行う。また、電源電圧異常検出部31Aからの電源電圧供給異常検出信号S1の出力停止によって接点を開いてエレベータ制御基板11へのバックアップ電源の供給を停止する。
【0015】
図3に示すように、エレベータ制御基板11は、電源電圧供給異常入力部21と、運転制御部22と、電源電圧供給停止指令部23とを備えている。
【0016】
電源電圧供給異常入力部21は、電源電圧異常検出部31Aから出力される電源電圧供給異常検出信号S1が入力されると、運転制御部22に対して最寄階運転指令S2を出力する。
【0017】
運転制御部22は、通常運転の実施の他に、停電時には停電時運転を実施するとともに、最寄階運転指令S2が供給されると、乗りかご3を最寄階まで走行する運転を実施する。最寄階までの運転が完了すると、最寄階運転完了信号S3を電源電圧供給停止指令部23に出力する。
【0018】
電源電圧供給停止指令部23は、最寄階運転完了信号S3を入力すると、バックアップ電源部32に対して電源電圧供給停止指令S4を出力する。
【0019】
次に、第1実施形態の処理手順を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
エレベータ運転中において、電源電圧異常検出部31Aは、エレベータ制御基板11に供給される電源電圧ラインの電圧異常を監視している。第1実施形態では、電圧検出ポイントP1の電圧値を入力端子T1−T2間に入力して電圧異常があるか否かを検出する。電源電圧異常が検出されると(ステップST1YES)、電源電圧の異常が停電に起因するものか否かがチェックされる。停電に起因する電源電圧異常であれば(ステップST2NO)、予め定められている手順に従い、停電時着床運転が実施される(ステップST3)。この停電時着床運転では、例えば、図1に示すように、乗りかご3が5階付近を走行している場合には、バックアップ電源部32からの電源供給によって避難階(所定階)である1階まで乗りかご3を走行させて利用者を降車させる。利用者降車後は、閉扉してその場に待機する。
【0021】
一方、電源電圧の異常が停電に起因するものでなければ(ステップST2YES)、電源電圧異常検出部31Aは、電源電圧供給異常検出信号S1をエレベータ制御基板11に出力するともに、スイッチSWに出力して接点を閉じる。スイッチSWが閉じると、バックアップ電源部32のDC/DCコンバータ43からの電圧がエレベータ制御基板11に供給される(ステップST4)。これによって、エレベータ制御基板11は正常な制御機能を維持することが可能になる。
【0022】
エレベータ制御基板11の電源電圧供給異常入力部21は、電源電圧供給異常検出信号S1が入力されると(ステップST5)、最寄階運転指令S2を運転制御部22に出力する。これにより、運転制御部22は巻上機用モータ7を駆動制御して乗りかご3を最寄階まで運転する(ステップST6)。図1に示した例では、乗りかご3が5階付近を走行している場合には、最寄階である4階まで走行させて停止する。利用者を降車させると閉扉してその場に待機する。
【0023】
最寄階運転が完了すると(ステップST7YES)、運転制御部22から電源電圧供給停止指令部23に対して最寄階運転完了信号S3が出力される。電源電圧供給停止指令部23は、電源電圧供給停止指令S4をバックアップ電源部32に出力する。電源電圧供給停止指令S4が供給されると、バックアップ電源部32のブレーカ42が開き、エレベータ制御基板11への電源電圧の供給が停止する(ステップST8)。
【0024】
このように第1実施形態によれば、エレベータ制御基板11への電源電圧供給ラインに異常が発生した場合にあってもバックアップ電源部32から電源電圧を供給することができるので、エレベータを停止させることなく、最低限の運転を確保することができ利用者に対するサービス低下を防止することができる。
【0025】
<第2実施形態>
図5は第2実施形態のエレベータ制御装置10Bの構成を示している。
【0026】
第2実施形態では、エレベータ制御基板11の電源電圧供給ラインに複数の電圧異常検出ポイントが設定されている。具体的には、第1実施形態と同様の第1検出ポイントP1と、ヒューズ14の出力側であって基板電源装置15の入力側に設定された第3検出ポイントP2と、電源トランス・整流器13とヒューズ14との間に設定された第3検出ポイントP3の3箇所が設定されている。
【0027】
また、停電時着床制御基板12Bは、電源電圧異常検出部31Bと、バックアップ電源部32と、出力部33とを備えている。電源電圧異常検出部31Bには、入力端子T1〜T6が設定されている。入力端子T1−T2間には第1検出ポイントP1の検出電圧、入力端子T3−T4間には第2検出ポイントP2の検出電圧、及び入力端子T5−T6間には第3検出ポイントP1の検出電圧がそれぞれ入力される。したがって、入力端子T1〜T6に入力される電源電圧の値からどの検出ポイントP1〜P3で電圧異常が発生しているかが分かる。
【0028】
電圧異常が発生した検出ポイントP1〜P3に関する電圧異常検出データは、出力部33を介して外部に出力される。例えば、出力部33に接続された保守端末に電圧異常検出データを出力することで、保守員は電源電圧供給ラインの何処で電圧異常が発生したかを理解することができる。
【0029】
なお、第2実施形態において、電圧異常が検出された後の制御動作は、図3のフローチャートに示した第1実施形態と同じ処理が実行されるため、その説明は省略する。
【0030】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、電圧異常が発生した異常箇所を特定することができるので、電源供給ラインの電圧異常に対する保守管理が容易になるという効果を奏する。
【0031】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…建屋、2…昇降路、3…乗りかご、4…つり合いおもり、5…主ロープ、6…巻上機、7…巻上機用モータ、8…ピット、10A,10B…エレベータ制御装置、11…エレベータ制御基板、12A,12B…停電時着床制御基板、13…電源トランス・整流器、14…ヒューズ、15…基板電源装置、16…逆流防止用ダイオード、21…電源電圧供給異常入力部、22…運転制御部、23…電源電圧供給停止指令部(電源遮断部)、31A,31B…電源電圧異常検出部、32…バックアップ電源部、33…出力部、41…バッテリ、42…ブレーカ(電点遮断部)、43・・DC/DCコンバータ、PS…三相交流電源(商用電源)、SW…スイッチ(電源供給切換部)、P1,P2,P3…電圧検出ポイント。
【要約】
【課題】エレベータ制御基板への電源電圧供給ラインに異常が発生した場合にあってもエレベータを停止させることなく、最低限の運転を確保することで利用者に対するサービス低下を防止する。
【解決手段】エレベータ制御装置10Aを構成するエレベータ制御基板11に供給される電源電圧の異常を検出する電源電圧異常検出部31Aと、電源電圧異常検出部31Aによって、電源電圧の異常が検出された場合には、エレベータ制御基板11に供給される電源電圧をバックアップ電源部32側に切り換える電源供給切換部(スイッチSW)と、切り換えられたバックアップ電源部32によってエレベータを最寄階まで運転制御する運転制御部22とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5