特許第6522212号(P6522212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6522212-自走車用集電装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6522212
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】自走車用集電装置
(51)【国際特許分類】
   B60M 7/00 20060101AFI20190520BHJP
   B60L 5/38 20060101ALI20190520BHJP
   B60M 1/12 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   B60M7/00 U
   B60L5/38 Z
   B60M1/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-128988(P2018-128988)
(22)【出願日】2018年7月6日
【審査請求日】2019年2月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】東島 光男
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−166702(JP,U)
【文献】 特開昭56−082587(JP,A)
【文献】 特開昭52−027109(JP,A)
【文献】 特開昭52−018620(JP,A)
【文献】 特開2012−239268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 7/00
B60L 5/00 − 5/42
B60M 1/12 − 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車の走行路上に配置され直線状、又は曲線状の架線台本体と、
前記架線台本体に配置され自走車に給電する送電用の電線である架線と、
前記自走車に取り付けられ、前記架線に対して摺動して通電する集電器と
からなる自走車用集電装置において、
前記架線台本体は、
前記架線台本体の一端の厚み方向の上側を切り欠いて形成した上側凹部と、
前記上側凹部に連結され、前記架線台本体の他端の厚み方向の下側を切り欠いて形成した下側凹部と
からなる自走車用集電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自走車用集電装置において、
前記架線台本体の断面形状は台形状であり、前記台形の側面に前記架線を配置し、前記架線に接続された電線が前記架線台本体内部に配線され、
前記上側凹部及び前記下側凹部には、前記電線を相互に連結するプラグ及び前記プラグに接続されるソケットが配置されている
ことを特徴とする自走車用集電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自走車用集電装置において、
前記架線台本体の台形の上面に磁性体が配置されており、
前記集電器に磁石が配置されている
ことを特徴とする自走車用集電装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の自走車用集電装置において、
前記架線台本体の材質はゴム又は合成樹脂である
ことを特徴とする自走車用集電装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の自走車用集電装置において、
前記架線台本体には前記集電器を案内する案内溝が形成され、前記集電器には前記案内溝に案内される案内ローラーを有している
ことを特徴とする自走車用集電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用等の自走車用集電装置に関する。更に詳しくは、電動機を搭載し、自走可能な運搬用等の自走車用集電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山の採掘場、砕石場等において、運搬のために走行用のモーター、蓄電池等を搭載した自走車に、架線から電力を供給して走行しながら充電する集電装置付運搬車は知られている(特許文献1)。また、軌道面上において、走行する車輪の横の位置に側溝、又は円管状の屋根部材を配置し、この側溝、又は屋根部材内に複数個の給電線(架線)を配線し、この給電線に導電ローラーを接触転動させて給電を受けるものも知られている(特許文献2及び特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−239268号公報
【特許文献2】特開昭52−27109号公報
【特許文献3】特開昭52−18620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池、モーターを備え自走する砕石場の運搬用自走車のように、切羽(掘削現場)の位置が変わると、自走車が走行する走行路も変わる。このとき、従来の電線を架線柱に張り渡す架空電車線方式の場合、自走車が運搬する走行路が変わる毎に、架線柱を走行路に沿って建てる必要があり、手数と工数がかかる。同様に、地上に配置した給電線を張り渡している車両用の集電装置も、給電装置を走行路に沿って配置し直す必要がある。
本発明の目的は、任意の走行路に沿って簡単に配置でき、かつ走行路の変更も容易にできる、自走車用集電装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、低コストで走行路を配置できる自走車用集電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の自走車用集電装置は、自走車の走行路上に配置され直線状、又は曲線状の架線台本体と、前記架線台本体に配置され自走車に給電する送電用の電線である架線と、前記自走車に取り付けられ、前記架線に対して摺動して通電する集電器とからなる自走車用集電装置において、前記架線台本体は、前記架線台本体の一端の厚み方向の上側を切り欠いて形成した上側凹部と、前記上側凹部に連結され、前記架線台本体の他端の厚み方向の下側を切り欠いて形成した下側凹部とからなることを特徴とする。
【0006】
本発明2の自走車用集電装置は、本発明1において、前記架線台本体の断面形状は台形状であり、前記台形の側面に前記架線を配置し、前記架線に接続された電線が前記架線台本体内部に配線され、前記上側凹部及び前記下側凹部には、前記電線を相互に連結するプラグ及び前記プラグに接続されるソケットが配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明3の自走車用集電装置は、本発明1又は2において、前記架線台本体の台形の上面に磁性体が配置されており、前記集電器に磁石が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明4の自走車用集電装置は、本発明1又は2において、前記架線台本体の材質はゴム又は合成樹脂であることを特徴とする。
【0009】
本発明5の自走車用集電装置は、本発明1又は2において、前記架線台本体には前記集電器を案内する案内溝が形成され、前記集電器には前記案内溝に案内される案内ローラーを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自走車用集電装置は、直線状の架線台本体と曲線状の架線台本体を適宜組み合わせることで、必要な形状の走行路を容易に敷設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態の自走車用集電装置を示す全体斜視図である。
図2図2は、図1のA−A断面図である。
図3図3は、図1の架線台本体を示す斜視図である。
図4図4は、直線状の架線台本体と曲線状の架線台本体を組み合わせて走行路を形成した状態を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態の自走車用集電装置を示す図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔自走車用集電装置の第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の自走車用集電装置を示す全体斜視図、図2図1のA−A断面図、図3図1の架線台本体を示す斜視図である。図4は、直線状の架線台本体と曲線状の架線台本体を組み合わせて走行路を形成した状態を示す平面図である。図1から図4に示すように、直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bが地面に連結して設置されて走行路を形成し、この直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bに沿って自走車2が走行する。自走車2は、走行用のモーター、蓄電池等を搭載している。自走車2の前面には集電器3が取り付けられ、直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bに沿って集電器3が摺動して、直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bから自走車2に給電する。集電器3は、板状のステー21を介して自走車2の前面に取り付けられている。
【0013】
図1から図3に示すように、直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bは、断面形状が台形状であり、台形の両側面に送電用の電線である架線11、11が埋め込まれている。架線11、11は、直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bの側面から突出し、外側に凸の円弧状に形成されている。直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bの材質は、絶縁性の有るゴム又は合成樹脂である。曲線状の架線台本体1Bは、必要な走行路の形状に応じて、任意の曲率で任意の曲線のものを用意しておくことが好ましい。また、直線状の架線台本体1Aの全長は、複数の長さのものを用意しておくことが好ましい。直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bの内部には、架線11、11に接続された電線12、12が配線されている。図3は直線状の架線台本体1Aを示す斜視図である。図3に示すように、直線状の架線台本体1Aの右端(一端)には、厚み方向の上側を切り欠いて形成した上側凹部13が形成されている。直線状の架線台本体1Aの左端(他端)には、厚み方向の下側を切り欠いて形成した下側凹部14が形成されている。上側凹部13には2個のソケット15、15が形成され、下側凹部14には2個のプラグ16、16が形成されている。ソケット15、15、及びプラグ16、16は電線12、12に各々接続されている。曲線状の架線台本体1Bにも直線状の架線台本体1Aと同様に、上側凹部13、下側凹部14、ソケット15、15、プラグ16、16が形成されている。
【0014】
図4に示すように、隣接する直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bの下側凹部14に上側凹部13を連結すれば、上側凹部13のソケット15、15に下側凹部14のプラグ16、16が接続されて、隣接する直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bが電気的及び機械的に接続される。従って、直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bを適宜組み合わせることで、必要な形状の走行路を容易に敷設することが可能となる。また、走行路の変更も容易である。上記したように、直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bの一端に上側凹部13を形成し、他端に下側凹部14を形成しているため、一種類の直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bで済むため、部品の種類を削減することができ、製造コストを削減することが可能となる。
【0015】
図1図2に示すように、集電器3は、非導電体の板材を台形に折り曲げて形成したスライダー保持板31、スライダー32、32、中空円筒状の支持筒33、圧縮コイルばね34、35、案内ローラー36で構成されている。スライダー保持板31は、下面が開放した台形に形成されている。スライダー32、32はスライダー保持板31の両側板の内側下端に固定され、直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bの架線11、11に接触して摺動し、自走車2に給電する。本発明の実施例では直流を使用しているので、一方の架線11がプラス側、他方の架線11がマイナス側となる。三相交流を使用する場合には、架線11及びスライダー32を各々3個配置すればよい。スライダー32、32は、カーボン、銅系の焼結合金等で形成されている。直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bの上面には、長手方向の全長にわたって断面形状が矩形の案内溝17が形成されている。スライダー保持板31の上板下面には回転可能に案内ローラー36が鉛直方向下側に突出して取り付けられている。案内溝17に案内ローラー36が嵌入して転動し、直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bに沿って集電器3を案内する。
【0016】
スライダー保持板31の上板上面には支持筒33が鉛直方向上側に突出して取り付けられている。ステー21には断面が円形の貫通孔22が形成され、支持筒33が貫通穴22に嵌入して、貫通孔22に案内されて鉛直方向に上下移動可能である。また、支持筒33は貫通孔22に案内されて、鉛直軸線を中心にして揺動可能で、曲線状の架線台本体1Bの曲線に追従する。支持筒33の上端には支持筒33よりも大径のフランジ37が形成され、ステー21の上面とフランジ37の下面との間に圧縮コイルばね34が挿入されている。また、ステー21の下面とスライダー保持板31の上板上面との間に圧縮コイルばね35が挿入されている。スライダー32、32に電気的に接続された電線38が支持筒33を通して自走車2の蓄電池及び走行用のモーターに接続されている。圧縮コイルばね34、35によって集電器3は、自走車2に対して鉛直方向に上下移動可能に支持されている。従って、地面の凹凸によって走行中の自走車2が上下しても、スライダー保持板31の上下方向の位置が維持され、スライダー32、32と架線11、11の接触が保たれる。その結果、自走車2は、直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bから給電された電力で走行しながら蓄電池を充電するため、地面に設置した走行路から外れて蓄電池で自立走行する際の、蓄電池の蓄電量を確保することが可能となる。
【0017】
〔自走車用集電装置の第2の実施の形態〕
以下、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。図5は本発明の第2の実施の形態の自走車用集電装置を示す図2相当図である。第2の実施の形態の自走車用集電装置は、鉄、コバルト、ニッケル等の材質の磁性体を架線台本体に配置し、集電器に磁石を配置して、磁石の吸引力で架線台本体に集電器を引きつけるようにした例である。以下の説明では、第1の実施の形態の自走車用集電装置と異なる部分についてのみ説明し、第1の実施の形態の自走車用集電装置と同一部品には同一番号を付与して説明する。図5に示すように、第2の実施の形態の集電器30は、スライダー保持板31の上板下面に板状の磁石39、39が固定されている。磁石39、39は案内ローラー36の両側に配置されている。、また、直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bの上面には、案内溝17の両側で、磁石39、39に対向した位置に、長手方向の全長にわたって板状の磁性体18、18が固定されている。従って、地面の凹凸によって走行中の自走車2が上下しても、磁石39、39の吸引力でスライダー保持板31が直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bに引きつけられる。その結果、圧縮コイルばね35の付勢力に磁石39、39の吸引力が付加されるため、第1の実施の形態の自走車用集電装置よりもスライダー保持板31と直線状の架線台本体1A及び曲線状の架線台本体1Bとの間の上下方向の位置が維持され、スライダー32、32と架線11、11の接触が保たれる。
【0018】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されることはない。例えば、前述した実施の形態では、案内ローラー36をガイドするために、架線台本体1A、1Bの上部には、案内溝17が形成されている。しかしながら、スライダー保持板31は、台形状の形をしたバネ性のある部材であり、架線台本体1Aの上表面も台形状であるから、上から押し付けられるだけで軌道からスライダー保持板31が外れることはない。従って、架線台本体1A、1Bの上部に案内溝17がないものでも良い。また、前述した実施の形態では、上側凹部にソケットを配置し、下側凹部にプラグを配置しているが、他の実施の形態として、上側凹部にプラグを配置し、下側凹部にソケットを配置してもよい。また、前述した実施例では、架線台本体の一端に上側凹部を形成し、架線台本体の他端に下側凹部を形成しているが、架線台本体の両端に上側凹部を形成したものと、架線台本体の両端に下側凹部を形成したものの二種類の架線台本体を用意してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1A…直線状の架線台本体
1B…曲線状の架線台本体
11…架線
12…電線
13…上側凹部
14…下側凹部
15…ソケット
16…プラグ
17…案内溝
18…磁性体
2…自走車
21…ステー
22…貫通孔
3、30…集電器
31…スライダー保持板
32…スライダー
33…支持筒
34、35…圧縮コイルばね
36…案内ローラー
37…フランジ
38…電線
39…磁石
【要約】      (修正有)
【課題】任意の走行路に沿って簡単に配置でき、かつ走行路の変更も容易にできる、自走車用集電装置を提供する。
【解決手段】隣接する直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bの下側凹部14に上側凹部13を連結すれば、下側凹部14のソケット15に上側凹部13のプラグ16が接続されて、隣接する直線状の架線台本体1Aまたは曲線状の架線台本体1Bが電気的に接続される。従って、直線状の架線台本体1Aと曲線状の架線台本体1Bを適宜組み合わせることで、必要な形状の走行路を容易に敷設することが可能となる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5