(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る印刷物を、実施例1,2,3それぞれの印刷物PT,PTB,PTCにより説明する。
【0010】
(実施例1)
図1及び
図2に示されるように、実施例1の印刷物PTは、基材1と、基材1の上に形成された印刷体PGとを有する。印刷体PGは、金属層2と顔料墨層3と染料墨層4とを有する。
この例において、印刷体PGの金属層2は、基材1の表面1aに貼着して形成された金属箔による層である。金属箔は、例えばアルミニウム箔である。
印刷体PGにおいて、金属層2は円形領域として形成されている。
【0011】
印刷体PGの第1の吸収墨層である顔料墨層3は、金属層2の一部と基材1とに跨って形成された矩形の層である。
顔料墨層3は、カーボンブラックを顔料として含む墨インキの印刷によって形成されている。顔料墨層3は、カーボンブラックを含むことにより赤外光を吸収する。
顔料墨層3を形成する墨インキを、以下、顔料墨インキと称する。
顔料墨インキとして、東洋インキ株式会社製 FD OニューHCスミを用いることができる。この顔料墨インキは、赤外光を吸収し、かつ、可視光において黒色で視認される。
【0012】
印刷体PGの染料墨層4は、染料墨層4a及び染料墨層4bの二つの部分に分けられ、染料を含み赤外光を透過する特性を有する墨インキの印刷により形成されている。染料墨層4a及び染料墨層4bをそれぞれ第1の透過墨層及び第2の透過墨層とも称する。
染料墨層4aは、顔料墨層3上に、その一部の矩形領域を覆い、かつ
図1における上下に顔料墨層3を覆わずに三角形状に突出した突出部4a1,4a1を有する領域として印刷により形成されている。突出部4a1,4a1は、基材1上に直接形成されている。
染料墨層4bは、金属層2の一部と基材1とに跨って印刷により形成された層である。染料墨層4a,4bを形成する墨インキを、以下染料墨インキと称する。
染料墨インキとして、東洋インキ株式会社製 FDフォームX カーボンレスCPスミを用いることができる。この染料インキは、赤外光を透過し、かつ、可視光において黒色で視認される。
染料墨層4bは、矩形領域として形成されている。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、顔料墨層3において、染料墨層4に覆われた領域を部分3aとし、覆われていない領域を部分3bとする。
【0014】
印刷体PGの金属層2は、金属箔で形成され入射光が正反射する層である。
そのため、金属層2は、観察方向によって異なる見え方をする。
以下の説明では、印刷体PGの見え方を、印刷物PTに対する直交方向及び斜交方向の2つの方向から、肉眼及び赤外線撮像装置6により観察した結果を比較して説明する。
【0015】
詳しくは、
図2に例示されるように、光源5から、基材1の表面1aと角度θをなす方向で印刷物PTに照射された光の反射光を、直交方向からの観察では、基材1の表面1aに対し直交する方向から観察する。この場合、肉眼及び赤外線撮像装置6は、基材1及び印刷体PGからの拡散反射光を観察することになる。
また、斜交方向からの観察では、光源5に対向する位置において、表面1aに対し角度θをなす方向から観察する。この場合、肉眼及び赤外線撮像装置6は、基材1及び印刷体PGからの正反射光を観察することになる。
角度θは、0°<角度θ<90°を満たす角度であって例えば45°とする。
【0016】
図3〜
図6を参照して、各層の見え方の違いについて説明する。まず、基材1の上に、金属箔,顔料墨インキ,及び染料墨インキを用いてそれぞれ単独に形成した金属層21,顔料墨層31,及び染料墨層41の見え方を説明する。
具体的には、観察方向を、直交方向及び斜交方向の2つの方向とし、これらの方向と、基材1の色と、観察する光の波長(可視光VLか赤外光IRか)との組み合わせで比較説明する。
【0017】
基材1は、白色紙11及び黒色紙12の2種とし、いずれも赤外光IRを吸収せずに良好に反射するものとする。
可視光VLは肉眼で観察し、赤外光IRは赤外線撮像装置6により得た画像を観察する。
【0018】
観察は、
図3に示されるように、基材1(白色紙11又は黒色紙12)の上に、金属層21,顔料墨層31,染料墨層41を独立に円形領域として形成し、光源5からの光を基材1となす角度θで当て、直交方向と正反射光を観察できる角度θの斜交方向から行った。
図4〜
図6それぞれに共通して、基材1の種類及び観察方向は、(a)は白色紙11かつ直交方向、(b)は白色紙11かつ斜交方向、(c)は黒色紙12かつ直交方向、(d)は黒色紙12かつ斜交方向である。
以下、直交方向及び斜交方向からの観察を、それぞれ直交方向視及び斜交方向視とも称する。
【0019】
図4は、金属層21の見え方を示す。
図4(a)に示される白色紙11かつ直交方向視の場合、可視光VL及び赤外光IRの両方とも、白地に黒灰色(網点)の金属層21の円形領域が視認される。これは、金属層21では入射光が正反射し、直交方向への拡散反射光がほとんど存在しないためである。
【0020】
図4(b)に示される白色紙11かつ斜交方向視の場合、可視光VL及び赤外光IRの両方とも、白地を背景に金属光沢の金属層21の楕円形領域が視認される。これは、金属層21では入射光が正反射し、その正反射光を観察していることによる。
図4(c)に示される黒色紙12かつ直交方向視の場合、可視光VLによる観察では、黒地を背景に黒灰色(網点)の金属層21の円形領域が、地に対し僅かな濃度差で視認される。これは、金属層21では入射光の直交方向への拡散反射光がほとんどないことによる。
一方、赤外光IRによる観察では、黒色紙12が赤外光を反射することから白く視認される。金属層21は赤外光IRを可視光同様に正反射するため、可視光VLの場合と同様に黒灰色の領域として視認される。
【0021】
図4(d)に示される黒色紙12及び斜交方向視の場合、可視光VLによる観察では、黒地を背景に金属光沢の金属層21の楕円形領域が視認される。赤外光IRによる観察では、白地を背景に金属層21は金属光沢の楕円形領域として視認される。
【0022】
図5は、顔料墨層31の見え方を示す。
図5(a)に示される白色紙11かつ直交方向視の場合、可視光VL及び赤外光IRの両方とも、白地を背景に黒色(クロスハッチング)の顔料墨層31の円形領域が視認される。顔料墨インキは、カーボンブラックを含有して赤外光を吸収するため、顔料墨層31は、赤外光IRでも黒く視認される。
【0023】
図5(b)に示される白色紙11かつ斜交方向視の場合、可視光VL及び赤外光IRの両方とも、白地を背景に黒色(クロスハッチング)の顔料墨層31の楕円形領域が視認される。
【0024】
図5(c)に示される黒色紙12かつ直交方向視の場合、可視光VLによる観察では、背景が黒地となるため、黒色の顔料墨層31の領域は視認されない。
一方、赤外光IRによる観察では、黒色紙12が赤外光を反射することから白く視認されるため、白地を背景に顔料墨層31は黒色の円形領域として視認される。
【0025】
図5(d)に示される黒色紙12及び斜交方向視の場合、可視光VLによる観察では、背景が黒地となるため、黒色の顔料墨層31の領域は視認されない。
一方、赤外光IRによる観察では、黒色紙12が赤外光を反射することから白く視認されるため、白地を背景に顔料墨層31は黒色の楕円形領域として視認される。
【0026】
図6は、染料墨層41の見え方を示す。
図6(a)に示される白色紙11かつ直交方向視の場合、可視光VLによる観察では、白地を背景に染料墨層41は黒色の円形領域として視認される。
一方、赤外光IRによる観察では、染料墨層41は、染料墨インキが赤外光を透過するため透けて地の色の白色と同化し、領域として視認されない。
【0027】
図6(b)に示される白色紙11かつ斜交方向視の場合、可視光VLによる観察では、染料墨層41は、白地を背景に黒色の楕円形領域として視認される。
一方、赤外光IRによる観察では、染料墨層41は、染料墨インキが赤外光を透過するため透けて地の色の白色と同化し、可視光VLの場合と同様に領域として視認されない。
【0028】
図6(c)に示される黒色紙12かつ直交方向視の場合、可視光VLによる観察では、黒地が背景になるため、黒色の染料墨層41の領域は同化して視認されない。
一方、赤外光IRによる観察では、黒色紙12が赤外光を反射することから白く視認され、染料墨層41は赤外光IRを透過するため背景の白地と同化し、領域として視認されない。
【0029】
図6(d)に示される黒色紙12及び斜交方向視の場合、可視光VLによる観察では、黒地が背景になるため、黒色の染料墨層41の領域は視認されない。
一方、赤外光IRによる観察では、黒色紙12が赤外光を反射することから白く視認されるため、染料墨層41は赤外光IRと透過して背景の白地と同化し、領域として視認されない。
【0030】
以上説明した金属層21,顔料墨層31,及び染料墨層41の見え方を基に、
図1及び
図2に示される印刷体PGの見え方を、
図7(a)〜(d)を参照して説明する。
基材1は、白色紙11及び黒色紙12の2種とし、いずれも赤外光IRを吸収せずに反射するものとする。
観察は可視光VL及び赤外光IRで行い、可視光VLは肉眼により評価し、また赤外光IRは赤外線撮像装置6により得た画像により評価する。
観察方向は、基材1の直交方向及び光源5からの光が印刷体PGで正反射した場合にその正反射光を観察できる斜交方向とする。
図7(a)は、基材1が白色紙11で、観察は直交方向である。
図7(b)は、基材1が白色紙11で、観察は斜交方向である。
図7(c)は、基材1が黒色紙12で、観察は直交方向である。
図7(d)は、基材1が黒色紙12で、観察は斜交方向である。
【0031】
図7(a)において、可視光VLによる観察では、白地を背景として、顔料墨層3及び染料墨層4のうちの最上に形成された部分が黒い領域として視認され、金属層2が露出している部分2aが黒灰色の領域として視認される。従って、染料墨層4aの突出部4a1は視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4bが透けて、金属層2については、染料墨層4bで覆われている部分2bと元から露出している部分2aとからなる部分2cが、黒灰色の領域として視認される。また、顔料墨層3は、黒色の矩形領域として視認される。すなわち、染料墨層4aの突出部4a1は視認されない。
【0032】
図7(b)において、可視光VLによる観察では、白地を背景として、顔料墨層3及び染料墨層4のうちの最上に形成された部分が黒い領域として視認され、金属層2が露出している部分2aが金属光沢領域として視認される。従って、染料墨層4aの突出部4a1は視認される。
図7以降、金属光沢領域は太線で囲った領域として示す。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4bが透け、金属層2における染料墨層4bで覆われている部分2bと元から露出している部分2aとからなる部分2cが、金属光沢領域として視認される。また、顔料墨層3は、黒色の矩形領域として視認される。すなわち、染料墨層4aの突出部4a1は視認されない。
【0033】
図8(a)において、可視光VLによる観察では、黒地を背景として、顔料墨層3又は染料墨層4が形成された部分は、黒く背景と同化して実質的に視認されない。顔料墨層3又は染料墨層4が形成されてない金属層2が露出している部分2aは、背景の黒色と僅かな濃度差の黒灰色の領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4は透け、かつ黒色紙12は赤外光IRを反射して白色で視認される。そのため、白色を背景として、顔料墨層3が黒い矩形領域として視認される。また、金属層2については、染料墨層4bで覆われている部分2bと元から露出している部分2aとからなる部分2cが黒灰色の領域として視認される。染料墨層4aの突出部4a1は視認されない。
【0034】
図8(b)において、可視光VLによる観察では、黒地を背景として、顔料墨層3又は染料墨層4が形成された部分は、黒く背景と同化して実質的に視認されない。顔料墨層3又は染料墨層4が形成されてない金属層2が露出している部分2aは、黒地を背景とする金属光沢領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4が透け、かつ黒色紙12は赤外光IRを反射して白色で視認される。そのため、白色を背景として、顔料墨層31が黒い矩形領域として視認される。また、金属層2については、染料墨層4bで覆われている部分2bと元から露出している部分2aとからなる部分2cが金属光沢領域として視認される。染料墨層4aの突出部4a1は視認されない。
【0035】
図9及び以上詳述したように、印刷体PGは、基材1の色の白黒によらず、可視光VLによる観察において視認不能で秘匿され、赤外線撮像装置6を用いた赤外光IRによる観察において視認可能な、部分2b及び部分3aを有する。部分2bは、金属層2の上に染料墨層4が最上層として形成されている部分である。部分3aは、顔料墨層3の上に染料墨層4が最上層として形成されている部分である。
また、部分2b及び部分3aは、染料墨層4が重畳形成されることによって生成される部分である。従って、秘匿部分2b及び秘匿部分3aの秘匿機能は、基材1の色によらず、白及び黒以外の他の色においても発揮される。
【0036】
また、基材1の色が黒色の場合は、顔料墨層3における染料墨層4が重畳形成されていない部分3bも、可視光VLによる観察では視認不能で秘匿され、赤外光IRによる観察で視認可能となる。
また、印刷体PGは、可視光VLによる観察で、特定の角度において金属光沢領域として他領域に対し輝度が高く目立つ領域として視認され、他の角度において黒灰色として視認される部分2aを有する。すなわち、部分2aは、観察角度によって見え方の異なる領域となる。部分2aは、金属層2が露出して形成されている部分である。
【0037】
この見え方に基づき、以下、部分2b及び部分3aをそれぞれ秘匿部分2b及び秘匿部分3aとも称する。また、部分2aを装飾部分2aとも称する。また、基材1が白色の場合に可視光VLによる観察で視認されると共に、基材1が黒色の場合に可視光VLによる観察で秘匿され、かつ赤外光IRによる観察で視認される顔料墨層3の部分3bを、準秘匿部分3bとも称する。
【0038】
このように、印刷物PTは、秘匿したい情報を、秘匿部分2b,3a、或いは準秘匿部分3bに対応させて、秘匿部分2b,3a、或いは準秘匿部分3bの形状を、秘匿したい情報が把握できるものとして印刷により形成する。
すなわち、基材1に、印刷体PGにおける秘匿部分2b,3a、或いは準秘匿部分3bを、赤外光IRによる観察で秘匿情報が把握できるように形成し、装飾部分2aを、可視光VLによる観察で異なる見え方をする領域として形成する。
これにより、高い装飾性と秘匿性とを有する印刷物PTが得られる。
印刷物PTは、赤外光を感知する赤外線撮像装置6で観察することで、秘匿した情報を取り出すことができる。
【0039】
図10及び
図11は、印刷物PT及びその見え方の例として、エンタテインメント向けのカード7A,7Bとその見え方を示している。
カード7A,7Bは、白色,黒色の基材71A,71Bそれぞれに、秘匿部分2b,3a,及び装飾部分2aを形成したものである。
基材71A,71Bは、赤外光IRを吸収せず反射する。
【0040】
図10(a)及び
図10(b)は、基材71の色が白色のカード7Aの場合を示し、それぞれカード7Aを上述の直交方向で及び斜交方向から観察した結果である。
図11(a)及び
図11(b)は、基材71の色が黒色のカード7Bの場合を示し、それぞれカード7Bを上述の直交方向で及び斜交方向から観察した結果である。
【0041】
カード7A,7Bは、表面に、装飾部分2aとして形成した文字「A」なる図柄8と、秘匿部分2bとして形成した文字「B」の秘匿情報9及び秘匿部分3aとして形成した記号「+」の秘匿情報10を有する。また、秘匿部分3aは、菱形の染料墨層41で隠蔽されている。
図10及び
図11に示されるように、秘匿部分2b,3a及び装飾部分2aを有するカード7A,7Bは、いずれも可視光VLによる肉眼観察において、装飾部分2aによる図柄8は視認され、秘匿部分2b及び秘匿部分3aによる秘匿情報9及び秘匿情報10は視認されない。
一方、秘匿情報9,10は、赤外線撮像装置6(
図2)によって把握できる。また、図柄8は、少なくとも可視光VLによる肉眼観察において、その観察角度に応じて異なる輝度で視認される。
【0042】
このように、装飾部分2aと、秘匿部分2b及び秘匿部分3aのいずれかと、を有する印刷体PGが形成された印刷物PTは、可視光VLによる肉眼観察において高い装飾性と秘匿性とを有する。
【0043】
印刷物PTは、例えば、次のような用途及び仕様で製造することができる。
【0044】
(カードゲームのカード)
印刷物PTをカードゲームのカードとする。このカードにはキャラクタを印刷しておく。キャラクタは、観察角度によって、異なる携帯品を身につけていると視認されるように、装飾部分2aを適宜レイアウトして印刷形成しておく。
一方で、カードに、ゲームの勝敗を判定するための強さを示す数値を秘匿部分2b,3aにより秘匿情報として印刷形成しておく。対戦相手とのカードの競り合いにおいて、赤外線撮像装置によりそれぞれのカードの強さを示す数値を読み取り勝敗を判定する。
【0045】
(商品タグ)
印刷物PTを商品タグとする。この商品タグには、装飾部分2aにより観察角度によって異なる見え方をする図柄を印刷形成しておく。
一方で、商品タグに、秘匿部分2b,3aにより商品管理上のバーコードを秘匿情報として印刷形成しておく。
これにより、通常の目視ではバーコードが見えないため装飾性の高いタグのデザインが採用でき買い物客の購買意欲を高められる。バーコードは、レジにおいて赤外線バーコードリーダにより読み取る。
【0046】
(ダイレクトメール)
印刷物PTをダイレクトメールのはがきとする。このはがきには、装飾部分2aにより、はがき持参で来店時に、景品引き換え及びくじ引きが可能である旨を印刷形成しておく。
一方で、秘匿部分2b,3aにより来店での引換え可能な景品名及び当選等級などを秘匿情報として印刷形成しておく。秘匿情報は、店頭の赤外線バーコードリーダで読み取る。
これにより、利用者は高額景品及び上位等級での当選が期待され来店意欲が増す。
【0047】
実施例1における染料墨層4と染料墨層4bとは、分離独立した層として形成されてなくてもよく、一体の層として形成されていてもよい。また、実施例2における染料墨層4Baと染料墨層4Bbとは、分離独立した層として形成されてなくてもよく、一体の層として形成されていてもよい。
【0048】
(実施例2)
図12及び
図12におけるS13−S13位置での断面図である
図13に示されるように、実施例2の印刷物PTBは、基材1Bと、基材1Bの上に形成された印刷体PGBとを有する。印刷体PGBは、金属層2Bと顔料墨層3Bと染料墨層4Bとを有する。
基材1B,金属層2B,顔料墨層3B,及び染料墨層4Bは、それぞれ実施例1の基材1,金属層2,顔料墨層3,及び染料墨層4と同じ材料であって、可視光及び赤外光に対し同じ特性を有する。印刷物PTBは、印刷物PTに対し、各層の形成領域が異なり、顔料墨層と染料墨層との積層順が異なるものである。
【0049】
印刷体PGBにおいて、金属層2Bは、矩形形状の部分2Baと、部分2Baに接続した矩形形状及び略三角形状からなる2Bbと、により、基材1Bの表面1Ba上に野球のホームベース状に形成されている。
染料墨層4Bは、染料墨層4Baと染料墨層4Bbとの二つの領域として形成されている。
以下、染料墨層4Bbを第3の透過墨層とも称し、染料墨層4Baを第4の透過墨層とも称する。
染料墨層4Bbは、基材1Bの上と金属層2Bの部分2Bbの上とに跨って矩形形状に形成されている。すなわち、部分層2Bbは染料墨層4Baに覆われた部分である。
染料墨層4Baは、染料墨層4Bb及び金属層2Bの部分2Baを囲むベタ部分として、基材1Bの上に形成されている。
顔料墨層3Bは、染料墨層4Baの上に円形形状で積層して形成されている。
以下、顔料墨層3Bを第2の吸収墨層とも称する。
【0050】
図14及び
図15は、印刷体PGBの、可視光VLによる観察と赤外光IRによる観察とでの見え方の違いを説明する図である。観察方法は実施例1と同じであり、基材1Bの色及び観察方向も実施例1と同じであって次の通りである。
図14(a)は、基材1Bが白色紙11Bで、観察は直交方向である。
図14(b)は、基材1Bが白色紙11Bで、観察は斜交方向である。
図15(a)は、基材1Bが黒色紙12Bで、観察は直交方向である。
図15(b)は、基材1Bが黒色紙12Bで、観察は斜交方向である。
【0051】
図14(a)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Bとしての染料墨層4Ba,4Bbが形成された範囲が黒い領域として視認され、金属層2Bにおいて露出している部分2Baが黒灰色の領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4Bが透け、金属層2Bにおいて染料墨層4Bbで覆われている部分2Bbと露出している部分2Baとからなる部分2Bcが、黒灰色の領域として視認される。また、顔料墨層3Bは、赤外光IRを吸収し黒色で円形の部分3Baとして視認される。
【0052】
図14(b)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Bが形成されている部分が黒色として視認され、金属層2の露出している部分2Baが、入射光が全反射した金属光沢領域として視認される。
赤外光IRでは、染料墨層4Bが透け、金属層2Bにおける染料墨層4Bbで覆われている部分2Bbと露出している部分2Baとからなる部分2Bcが、金属光沢領域として視認される。また、顔料墨層3Bは、赤外光IRを吸収し黒色で円形の部分3Baとして視認される。
【0053】
図15(a)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Bが形成されている部分が、黒色紙12Bの地の部分と共に黒色で視認される。
金属層2Bは、染料墨層4Bに覆われずに露出している部分2Baが黒灰色の領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4Bのうちの、黒色紙12B上に形成され、かつ顔料墨層3Bが上に積層形成されていない部分は、染料墨層4Bが透け黒色の黒色紙12Bが赤外光IRを反射するため白色で視認される。
一方、染料墨層4Bが透けることで、金属層2Bは、露出した部分2Baと染料墨層4Bに覆われた部分2Bbとを合わせた部分2Bcが黒灰色で視認される。また、顔料墨層3Bは、黒色で円形の部分3Baとして視認される。
【0054】
図15(b)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Bが形成された部分が、黒色紙12Bの地の部分と共に黒色で視認される。
金属層2Bは、染料墨層4Bに覆われずに露出している部分2Baが黒地を背景とする金属光沢領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4Bは透け、染料墨層4Bのうちの、黒色紙12B上に形成され、かつ顔料墨層3Bが上に積層形成されていない部分は、可視光VLの場合と同様に白色で視認される。
一方、金属層2Bは、部分2Bcが白地を背景とする金属光沢領域として視認される。また、顔料墨層3Bは、黒色で円形の部分3Baとして視認される。
【0055】
図14及び
図15に示されるように、印刷体PGBには、基材1Bの色の白黒によらず、可視光VLによる観察では視認されず赤外光IRによる観察で視認される領域が存在する。
その領域は、
図16に示されるように、顔料墨層3Bの部分3Ba及び金属層2Bの染料墨層4Bbで覆われた部分2Bbである。この部分3Ba及び部分2Bbを、それぞれ秘匿部分3Ba及び秘匿部分2Bbとも称する。
すなわち、印刷物PTBにおいて、基材1Bに対し、可視光VLによる観察で秘匿したい情報を、秘匿部分3Ba及び秘匿部分2Bbのいずれかで形成することにより、その秘匿したい情報は、可視光VLによる観察で視認されず秘匿される一方、赤外光IRによる観察で視認され取得可能となる。
また、印刷物PTBは、観察角度によって金属光沢領域が視認されるので高い装飾性を有する。
【0056】
(実施例3)
図17及び
図17におけるS18−S18位置での断面図である
図18に示されるように、実施例3の印刷物PTCは、基材1Cと、基材1C上に形成された印刷体PGCとを有する。印刷体PGBは、金属層2Cと顔料墨層3Cと染料墨層4Cとを有する。
基材1C,金属層2C,顔料墨層3C,及び染料墨層4Cは、それぞれ実施例1の基材1,金属層2,顔料墨層3,及び染料墨層4と同じ材料であって、可視光及び赤外光に対し同じ特性を有する。印刷物PTCは、印刷物PTに対し、各層の形成領域が異なり、顔料墨層と染料墨層との積層順が異なるものである。また、印刷物PTCは、実施例2の印刷物PTBに対し、各層の形成領域が異なり、顔料墨層と染料墨層との積層順は同じである。
【0057】
印刷体PGCにおいて、金属層2Cは、基材1Cの表面1Ca上に矩形形状で形成されている。染料墨層4Cは、矩形形状と半円形状とが組み合わされた形状を呈し、表面1Caと金属層2Cの上面とに跨って形成されている。詳しくは、半円形状の部分は金属層2C上に形成され、矩形形状の部分が金属層2Cと基材1Cとに跨って形成されている。以下、染料墨層4Cを第3の透過墨層とも称する。
顔料墨層3Cは、染料墨層4Cの上に、染料墨層4Cよりも小さい二等辺三角形状の領域として、基材1Cと金属層2Cとに跨る位置に形成されている。
以下、顔料墨層3Cを、第2の吸収墨層とも称する。
【0058】
図19及び
図20は、印刷体PGCの、可視光VLによる観察と赤外光IRによる観察とでの見え方の違いを説明する図である。観察方法は実施例と同じであり、基材1Cの色及び観察方向も実施例1と同じであって次の通りである。
図19(a)は、基材1Cが白色紙11Cで、観察は直交方向である。
図19(b)は、基材1Cが白色紙11Cで、観察は斜交方向である。
図20(a)は、基材1Cが黒色紙12Cで、観察は直交方向である。
図20(b)は、基材1Cが黒色紙12Cで、観察は斜交方向である。
【0059】
図19(a)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Cが形成された範囲が黒い領域として視認され、金属層2Cの露出している部分2Caは黒灰色の領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4Cが透け、金属層2Cにおいて、上方が染料墨層4Cのみに覆われている部分2Cbと元から露出している部分2Caとからなる部分2Ccが、黒灰色の領域として視認される。また、顔料墨層3Cは黒い領域として視認される。
【0060】
図19(b)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Cが形成された範囲が黒い領域として視認され、部分2Caは白地を背景とする金属光沢領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4Cが透け、金属層2Cにおける部分2Ccが白地を背景とする金属光沢領域として視認される。
また、顔料墨層3Cは黒い領域として視認される。
【0061】
図20(a)において、可視光VLによる観察では、染料墨層4Cが形成された範囲が基材1Cの地の部分と共に黒色で視認される。
金属層2Cにおける部分2Ccは、黒灰色の領域として視認される。
赤外光IRでは、染料墨層4Cは透け、染料墨層4Cのうちの、黒色紙12Cの上に形成された部分は、黒色紙12Cが赤外光IRを反射するため、黒色紙12Cと同化して白色で視認される。染料墨層4Cのうちの金属層2Cの上に形成された部分2Cbは、黒灰色の領域として視認される。
金属層2Cは、染料墨層4Cが形成されずに露出した部分2Caが、黒灰色で視認される。また、顔料墨層3Cは、黒い領域として視認される。
【0062】
図20(b)において、可視光VLでは、染料墨層4Cの形成された範囲が基材1Cの地の部分と共に黒色で視認される。
金属層2Cは、部分2Caが金属光沢領域として視認される。
赤外光IRによる観察では、染料墨層4Cが透け、金属層2Cにおいて、染料墨層4Cのみに覆われている部分2Cbと元から露出している部分2Caとからなる部分2Ccが、金属光沢領域として視認される。また、顔料墨層3Cは、黒い領域として視認される。
【0063】
図19及び
図20に示されるように、印刷体PGCには、基材1Cの色の白黒によらず、可視光VLによる観察では視認されず赤外光IRによる観察で視認される領域が存在する。
その領域は、
図21に示されるように、金属層2Cのうちの染料墨層4Cにのみ覆われた部分2Cbである。この部分2Cbを秘匿部分2Cbとも称する。
すなわち、印刷物PTCにおいて、基材1Cに対し、可視光VLによる観察で秘匿したい情報を、秘匿部分2Cbで形成することにより、その秘匿したい情報は、可視光VLによる観察で視認されず秘匿される一方、赤外光IRによる観察で視認され取得可能となる。
また、印刷物PTCは、観察角度によって金属光沢領域が視認されるので高い装飾性を有する。
【0064】
上述の印刷物の製造方法及びそれにより得られた印刷物PT,PTB,PTCによれば、印刷物に高い装飾性と情報秘匿性との両方を簡単な構成及び手順で付与することができる。
【0065】
実施例1〜3は、上述の構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0066】
実施例1における染料墨層4aと染料墨層4bとは、分離独立した層として形成されてなくてもよく、一体の層として形成されていてもよい。
実施例2における染料墨層4Baと染料墨層4Bbとは、分離独立した層として形成されてなくてもよく、一体の層として形成されていてもよい。
実施例1〜3において、顔料墨層3,3B,3C及び染料墨層4,4B,4Cを印刷により形成する方法及び印刷機の種類は限定されない。
実施例1〜3それぞれの染料墨層4,4B,4Cにおいて、最上となる範囲には、赤外光を透過するインキによる別の印刷層を重畳形成してもよい。これらの場合も、実施例1〜3それぞれの印刷物PT,PTB,PTCで得られる効果と同様の効果が得られる。
【0067】
基材1,1B,1Cの材質は、赤外光IRを反射するものであれば紙に限定されず、樹脂、金属フィルムなどの他の材質でもよい。
金属層2,2B,2Cを印刷で形成する方法は、光沢のある層を形成できる印刷方法であれば限定されない。
例えば、金属粉末を含有する金属インキを、オフセット印刷,フレキソ印刷,
グラビア印刷,シルクスクリーン印刷,或いはインクジェット印刷などの印刷方法で印刷することで、光沢層としての金属層2,2B,2Cを形成できる。
また、金属層2,2B,2Cは、印刷機ではなく、電着方式による金属インキのパターン形成、金属インキをベタ塗りした後のレーザアブレイションでのパターン形成或いはレジストマスクを使ったエッチングでのパターン形成、などにより形成してもよい。
【解決手段】印刷物PTは、赤外光を反射する基材1と、基材1の上に形成された金属層2と、基材1の上に形成され赤外光を吸収する第1の吸収墨層3と、第1の吸収墨層3の少なくとも一部を覆って形成された赤外光を透過する第1の透過墨層4a及び金属層2の少なくとも一部を覆って形成された赤外光を透過する第2の透過墨層4bの少なくとも一方と、を有する。