(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被転写体上に、線幅Wpのデバイスパターンを近接露光によって形成するための転写用パターンを備えた、一辺が300mm以上の主表面をもつ表示装置製造用のフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなる遮光領域と、
前記遮光領域に挟まれて配置された抜きパターンであって、前記デバイスパターンに対応する、線幅Wmの第1抜きパターンと、を有し、
前記第1抜きパターンは、前記透明基板上に半透光膜が形成された半透光部からなり、
前記半透光膜の露光光透過率は、20〜60%であり、かつ、
前記デバイスパターンの線幅Wpと前記第1抜きパターンの線幅Wmとの関係は、下記式(1)及び式(3)を満たすものであることを特徴とする、フォトマスク。
Wp≦8μm ・・・(1)
1.0≦(Wm−Wp)/2 ≦ 3.0(μm) ・・・(3)
前記転写用パターンは、線幅Wmのライン形状をもつ前記第1抜きパターンを複数有し、幅方向において隣り合う前記第1抜きパターン間に、幅(3×Wm)以上の前記遮光領域が介在する部分を有することを特徴とする、請求項1に記載のフォトマスク。
前記転写用パターンは、線幅Wn(Wn>Wm)の第2抜きパターンをさらに有し、前記第2抜きパターンは、透光部で構成されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のフォトマスク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、フォトマスクのたわみによる、パターン転写上の影響を軽減することが有用であっても、それだけでは、上記用途の精密な表示装置の製造に十分ではないことが発明者によって見出された。
【0014】
例えば、フォトマスクの保持方式やたわみを軽減するための保持機構により、フォトマスクが受ける力の方向や大きさが異なることにより、フォトマスク基板の主表面が変形することがわかっている。さらに、露光装置のステージの平坦度や、露光装置に載置した被転写体の厚み分布などのため、プロキシミティギャップの面内変動を完全に抑えることはほぼ不可能である。特許文献2には、こうしたプロキシミティギャップの面内変動を、基板の形状によって低減する方法が記載されている。但し、プロキシミティギャップの面内変動は使用する露光装置ごとに異なるという煩雑さがある。
【0015】
近接露光において、プロキシミティギャップの面内ばらつきが生じると、微細線幅の抜きパターンを転写することにはさらなる困難が伴う。スリット状の抜きパターンのエッジにおいて、光の回折が生じ、抜きパターンが微細幅になるほど、この回折と干渉との影響が無視できない程度に大きくなるためである。
【0016】
図3は、近接露光における透過光が形成する干渉による光強度分布を例示する図である。
図3において、抜きパターンが設けられたフォトマスク120が、被転写体121に対してパターン面120aが対向するように設けられている。このとき、フォトマスク120と被転写体121との間には、プロキシミティギャップpgが設けられている。
【0017】
曲線122は、フォトマスク120の裏面側から光を照射した場合に、透過光が形成する干渉パターンによる、光強度曲線を模式的に示している。
図3に示すように、パターン面120aにおける抜きパターンのエッジにおいて光の回折が生じ、複雑な干渉パターンが形成されている。
【0018】
近接露光においては、面内の位置によって、異なる大きさのギャップが生じ、これに応じた、異なる回折パターンが生じ、形成されるパターンの線幅や、光照射量がばらつく傾向がある。ただし、面内の各位置において実際に被転写体が受ける、透過光の強度分布は容易に推測することができない。
【0019】
ところで、
図1に示すようなカラーフィルタやTFT基板は、複数のフォトマスクを使用して、フォトリソグラフィ工程を適用して製造される。近年、最終製品である表示装置の明るさ、動作速度等の仕様の高度化に伴い、フォトマスクのパターンは微細化し、転写結果としての線幅精度の要求はますます厳しくなっている。
【0020】
例えば、LCD用ブラックマトリクスにおいては、現在LCDに求められる高性能化、すなわち、(1)動作速度、(2)明るさ、(3)消費電力の減少、(4)高精細のうち、少なくとも(2)から(4)に対して、細線化が有効であると考えられる。具体的には、ブラックマトリクスの細線化により、透過光量が増加するため、LCDの明るさを得ることができる。また、明るさが大幅に向上すれば、LCDのバックライトの消費電力を低減することができる。さらに、ブラックマトリクスの細線化により、画像のシャープネスを向上することができる。
【0021】
ブラックマトリクスを黒色のネガ型感光性材料によって形成するためには、大面積の遮光領域中に、X方向、Y方向のライン状抜きパターンの集合体で構成されるマトリクス状の抜きパターン(格子状抜きパターン)が形成された転写用パターンを設けたフォトマスクを用いる必要がある。しかしながら、微細幅の抜きパターンを精緻に形成することは容易ではない。
【0022】
大面積の透光領域中に、ライン状の膜パターンで構成される残しパターンを形成する場合には、所望の線幅を形成するために、ウェットエッチングにおけるサイドエッチングを利用して、線幅の微調整が可能である。しかし、抜きパターンにおいては、予め描画、現像、エッチング等の条件を精緻に決定する必要がある。また、わずかな線幅変動であっても、線幅自体が微細であれば、その変動による光の透光挙動に大きな変動をもたらすという不都合もある。
【0023】
また、線幅制御が確実に行われたフォトマスクを用いたとしても、転写用パターンを被転写体上に転写する際には、さらなる課題がある。
【0024】
遮光部に挟まれた抜きパターンを有する転写用パターンを用いて露光する場合、抜きパターンの線幅の微細化に伴って、被転写体上における光強度分布は、上述のとおり、光の回折の影響を受ける。
図4は、抜きパターンの線幅と被写体上における光強度分布との関係を簡略に示す図である。
図4において、転写用パターンは、遮光部103及び遮光部103に挟まれた抜きパターン104から構成されている。
【0025】
図4Aは、抜きパターン104の線幅がa1である場合の、C−D間の光強度分布を示している。
図4Bは、抜きパターン104の線幅がa2(a2<a1)である場合の、E−F間の光強度分布を示している。このように抜きパターン104の線幅がa2<a1である場合に、
図4Aと
図4Bとを比較すると、
図4Bに示す線幅a2における光強度分布のピークは、
図4Aに示す線幅a1における光強度分布のピークよりも下がっている。すなわち、抜きパターン104の線幅が小さくなるほど光強度分布のピークが下がり、被転写体上の感光性材料を十分に感光させることが困難になるという問題が生じる。
【0026】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、微細線幅の抜きパターンを被転写体上に転写するにあたり、線幅や光量の制御を精緻に行うことができるフォトマスク、フォトマスクの製造方法、パターン転写方法及び表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のフォトマスクは、被転写体上に、線幅Wpのデバイスパターンを形成するための転写用パターンを備えた、一辺が300mm以上の主表面をもつフォトマスクであって、前記転写用パターンは、透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなる遮光領域と、前記遮光領域に囲まれて配置された抜きパターンであって、前記デバイスパターンに対応する、線幅Wmの第1抜きパターンと、を有し、かつ、前記デバイスパターンの線幅Wpと前記第1抜きパターンの線幅Wmとの関係は、下記式(1)及び式(2)を満たすものであることを特徴とする。
Wp<10μm・・・(1)
1≦(Wm−Wp)/2≦4(μm)・・・(2)
【0028】
上記フォトマスクによれば、被転写体上に線幅Wpのデバイスパターンを形成するために必要な、フォトマスクの転写用パターンにおける抜きパターンの線幅Wmが所定のバイアス量((Wm−Wp)/2(μm))を満たすように調整されることから、被転写体上に届く光量を調整できるとともに、プロキシミティギャップのばらつきに起因するデバイスパターンのCDばらつきを抑制することができる。したがって、微細線幅の抜きパターンを被転写体上に転写するにあたり、線幅や光量の制御を精緻に行うことが可能となる。
【0029】
上記フォトマスクにおいて、前記第1抜きパターンは、前記透明基板表面が露出してなる透光部で構成されてもよい。
【0030】
また、上記フォトマスクにおいて、前記第1抜きパターンは、前記透明基板上に半透光膜が形成されてなる半透光部で構成されてもよい。
【0031】
さらに、上記フォトマスクにおいて、前記半透光膜の露光光透過率は、20〜60%とすることができる。
【0032】
さらに、上記フォトマスクにおいて、前記転写用パターンは、線幅Wmのライン形状をもつ前記第1抜きパターンを複数有し、前記幅方向において隣接する前記第1抜きパターン間に、幅(3×Wm)以上の前記遮光領域が介在する部分を有することができる。
【0033】
さらに、上記フォトマスクにおいて、前記転写用パターンは、線幅Wn(Wn>Wm)の第2抜きパターンをさらに有し、前記第2抜きパターンは、透光部で構成されてもよい。
【0034】
さらに、上記フォトマスクにおいて、前記フォトマスクは、プロキシミティギャップを10〜200μmの範囲内とした、近接露光に用いるフォトマスクであってもよい。
【0035】
本発明のフォトマスクの製造方法は、被転写体上に、線幅Wpのデバイスパターンを形成するための転写用パターンを備えるフォトマスクの製造方法であって、透明基板上に、少なくとも遮光膜を含む光学膜が形成されたフォトマスクブランクを形成し、前記光学膜に対してフォトリソグラフィ工程を施した後、ウェットエッチングを含むパターニングを行うことにより、前記転写用パターンを形成するステップを含み、前記転写用パターンは、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなる遮光領域と、前記遮光領域に囲まれて配置された第1抜きパターンであって、前記デバイスパターンに対応する、線幅Wmの抜きパターンを有し、かつ、前記デバイスパターンの線幅Wpと前記第1抜きパターンの線幅Wmとの関係は、下記式(1)及び式(2)を満たすものであることを特徴とする。
Wp<10μm・・・(1)
1≦(Wm−Wp)/2≦4(μm)・・・(2)
【0036】
本発明のパターン転写方法は、転写用パターンを備えたフォトマスクを用いて、近接露光によって、被転写体上に、線幅Wpのデバイスパターンを形成するためのパターン転写方法であって、上記に記載のフォトマスク、又は上記に記載のフォトマスクの製造方法により製造したフォトマスクを用いて、前記被転写体上に形成したネガ型感光性材料膜に対して、近接露光装置を用いて露光することを特徴とする。
【0037】
本発明の表示装置の製造方法は、上記パターン転写方法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、微細線幅の抜きパターンを被転写体上に転写するにあたり、線幅や光量の制御を精緻に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図5及び
図6は、本実施の形態に係るフォトマスク及びこのフォトマスクを用いて第1デバイスパターンを転写した被転写体の一例を示す模式図である。
【0041】
図5に示すフォトマスク10は、透明基板10a上に遮光膜が設けられて構成された遮光領域10bと、線幅Wmの第1抜きパターン10cと、を有する。遮光領域10bと、第1抜きパターン10cとは、転写用パターン(例えば、画素パターン)を構成する。また、第1抜きパターン10cは、透明基板10a表面が露出してなる透光部で構成される。
【0042】
一方、
図6に示すフォトマスク12は、透明基板12a上に遮光膜、又は遮光膜と半透光膜が設けられて構成された、遮光領域12bと、透明基板12a上に半透光膜のみが設けられて構成された、線幅Wmの第1抜きパターン12cと、を有する。遮光領域12bと、第1抜きパターン12cとは、転写用パターン(例えば、画素パターン)を構成する。
【0043】
なお、
図6に示すフォトマスク12においては、透明基板12a上に半透光膜が成膜され、この半透光膜上に遮光膜が積層されて遮光領域を構成してもよく、又は、透明基板上に遮光膜のみが形成されて遮光領域を構成してもよい。
【0044】
線幅とは、いわゆるCritical Dimension(CD)であり、ライン状のパターンであればそのライン幅を指し、ホールパターンであればその径(又は短径)を指すものとする。
【0045】
フォトマスク10(12)は、一辺が300mm以上の主表面を有する。一辺とは、フォトマスク10(12)の外形が正方形の場合には一辺に該当し、長方形の場合には短辺に該当する。本実施の形態に係るフォトマスクは、たわみやこれを低減するための保持治具などによる歪のために、プロキシミティギャップの面内ばらつきが生じても、これによる転写性の劣化を抑止する効果があるため、一辺が300mm以上の大型のフォトマスクにおいて、顕著な効果が得られる。なお、一辺が600mm以上(第6世代)の方形形状のフォトマスクにおいて、さらに大きな効果を得ることができる。
【0046】
第1抜きパターン10c(12c)は、遮光領域10b(12b)に囲まれて配置される。換言すると、第1抜きパターン10c(12c)は、少なくとも遮光領域10b(12b)に両側から挟まれた状態で配置される。例えば、第1抜きパターン10c(12c)が所定幅のライン形状を持つ場合には、このラインの両側に隣接して遮光領域が配置される。また、第1抜きパターン10c(12c)がホールパターンである場合には、このホールパターンを取り囲んで遮光領域が配置される。
【0047】
カラーフィルタ基板などの被転写体11a上に形成された第1デバイスパターン11bは、微細幅(Wp<10μm)を有する。第1デバイスパターン11bは、例えば、カラーフィルタ用ブラックマトリクス(BM)、ブラックストライプ(BS)として利用されるフォトスペーサ(PS)として利用されてもよい。第1デバイスパターン11bの線幅Wpは、具体的には、2μm≦Wp<10μmを満たすことが好ましい。第1デバイスパターン11bをブラックマトリクスまたはブラックストライブとして利用する場合には、線幅Wpは、3μm≦Wp≦8μmを満たすことが好ましく、4μm≦Wp≦7μmを満たすことがより好ましい。
【0048】
一方、転写用パターンを構成する第1抜きパターン10c(12c)の線幅Wmは、1≦(Wm−Wp)/2≦4(μm)を満たすことが好ましい。ここで、第1抜きパターン10c(12c)の線幅Wmは、第1デバイスパターン11bの線幅Wpに対して、その両側にバイアスを付加した幅となる。すなわち、バイアスをβとすると、1≦β≦4(μm)が成り立つ。このように、フォトマスク10上の抜きパターン10cの線幅Wmに対して、片側β分だけ両側に増加させた幅の第1デバイスパターン11bを用いて、被転写体11a上に転写を行う。また、1.2Wp≦Wm≦3.0Wpを満たすことがより好ましい。更には、第1抜きパターン10c(12c)の線幅Wmは、1.4Wp≦Wm≦3.0Wpを満たすことがより好ましい。
【0049】
フォトマスク10のように、第1抜きパターン10cが、透明基板10a表面が露出してなる透光部で構成される場合、第1抜きパターン10cの線幅Wmは、1.4Wp≦Wm≦2.0Wpを満たすことが好ましい。
【0050】
一方、フォトマスク12のように、第1抜きパターン12cが、透明基板12a上に半透光膜が形成されてなる半透光部で構成される場合、第1抜きパターン12cの線幅Wmは、1.2Wp≦Wm≦2.6Wpを満たすことが好ましい。なお、第1抜きパターン12cの線幅Wmは、1.0μm≦(Wm−Wp)/2≦3.0μmを満たすこと、すなわち、1.0μm≦β≦3.0μmを満たすことが、より好ましい。
【0051】
フォトマスク12において、半透光膜は、第1抜きパターン12cに対応する部分だけでなく、遮光領域部分にも形成されていることが好ましい。すなわち、遮光領域において、遮光膜と半透光膜とを積層する構成とすることが好ましい。パターニングした遮光膜とパターニングした半透光膜とをそれぞれ透明基板12a上に形成する場合には、それぞれの膜のエッチング工程が必要となり、また、そのアライメント精度を十分に得ることが容易ではないためである。
【0052】
ただし、例えば、画素パターンなどの微細パターンの存在しない領域(例えば、フォトマスクの周辺領域、
図8参照)においては、透明基板表面が露出した透光部としてもよく、この場合、成膜した半透光膜を除去してもよい。あるいは、半透光膜の成膜を行わず、透明基板12aが露出した状態としてもよい。こうした領域は、パターニングのアライメント精度が、画素パターン内ほど高くなくても良いからである。
【0053】
フォトマスク12において、半透光膜の露光光透過率Tは、20〜60%であることが好ましい。なお、半透光膜の露光光透過率Tは、30〜55%であるとより好ましく、30〜50%であるとさらに好ましい。半透光膜の露光光透過率Tが過度に大きくなると、半透光膜の膜厚が小さくなり、わずかな膜厚変動が、透過率値を相対的に大きく変動させてしまう傾向があるためである。一方、半透光膜の透過率が小さすぎると、微細な第1抜きパターン12cを透過する光量が不足するリスクがあるためである。
【0054】
半透光膜の露光光透過率Tとは、透明基板12aの露光光透過率を100%としたときの、透明基板12a上に半透光膜を形成した半透光部の透過率を示す。ただし、半透光部は、隣接するパターンの影響を受けない程度に十分な幅をもつ場合を想定する。
【0055】
露光光透過率Tは、露光光として用いるi線〜g線を含む波長域の中の代表波長に対するものであり、好ましくは、i線、h線、及びg線のすべての波長に対する透過率である。
【0056】
フォトマスクに備えられる転写用パターンは、線幅Wn(Wn>Wm)の第2抜きパターンをさらに有していてもよい。
図7は、第2抜きパターンを有するフォトマスク及びこのフォトマスクを用いて第2デバイスパターンを転写した被転写体の一例を示す模式図である。
【0057】
図7に示すフォトマスク14は、石英などの透明基板14a上に遮光膜が設けられ、又は遮光膜と半透光膜が積層された、遮光領域14bと、線幅Wmの第1抜きパターン14cと、線幅Wnの第2抜きパターン14dと、を有する。遮光領域14bと、第1抜きパターン14cと、第2抜きパターン14dとは、転写用パターン(例えば、画素パターン)を構成する。また、第1抜きパターン14cは、透明基板14a上に半透光膜が形成されてなる半透光部で構成される。第2抜きパターン14dは、透明基板14a表面が露出してなる透光部で構成される。
【0058】
フォトマスク14における第2抜きパターン14dは、被転写体11a上に線幅Wqの第2デバイスパターン11cを形成するために用いられる。第2抜きパターン14dの線幅Wnは、8μm≦Wn、更には10μm≦Wnであることが好ましい。すなわち、第2抜きパターン14dは、第1抜きパターン14cより線幅が大きく、後述する半透光部による微細化のメリットを用いることよりも、透光部で構成することにより透過光量を得ることを優先することもできる。
【0059】
フォトマスク10(12,14)における転写用パターンは、線幅Wmのライン形状で構成される第1抜きパターン10c(12c,14c)を複数有し、幅方向において隣接する第1抜きパターン10c(12c,14c)間に、幅(3×Wm)以上の遮光領域が介在する部分を有することが好ましい。
【0060】
抜きパターン、すなわちスリットのエッジにおいて生じる回折光とこれにより生じる光の干渉の結果として、被転写体11aには後述する光強度分布が形成される。この光強度分布は、後述するように(
図17から
図22参照)、中央に単一のピークをもつ光強度曲線とすることが好ましい。光強度分布は、ガウシアン分布のように、中央に単一のピークを有し、このピークの両側が単調増加又は単調減少となる、釣鐘型のピークであることが、より好ましい。これは、転写用パターンの設計(抜きパターン線幅、透過率)、及び露光条件(照度、コリメーションアングル)の適切な選択によって得られる。
【0061】
これは、第1抜きパターン10c(12c,14c)の両エッジでそれぞれ生じる光の回折作用による回折光が、第1抜きパターン10c(12c,14c)の幅に応じて、複雑な干渉を生じさせる結果、合成された光強度の分布が、単一のピークを形成することを意味する。被転写体11a上に形成される光強度分布は、幅方向の中心に対して±Wp/2の領域において単一のピークを形成することが好ましい。また、その外側に、サイドピークがあってもよい。
【0062】
隣接する第1抜きパターン10c(12c,14c)の間隔が小さい場合には、隣接する第1の抜きパターン10c(12c,14c)において相互に透過光の干渉が生じると、被転写体11aに形成される光強度分布の形状は変化し、さらに複雑化する。この結果、必ずしも、単一のピークを描かないものとなり、被転写体11aに解像度の良い感光性材料膜パターンを形成しにくいためである。
【0063】
フォトマスク10(12,14)における転写用パターンは、ブラックマトリクス又はブラックスストライプ製造用とすることができる。
図8は、本実施の形態に係るフォトマスク10(12)を用いて製造したブラックマトリクスの一例を示す図である。
図8は、1パネル分のブラックマトリクスパターン全景を示している。
図8に示すブラックマトリクス20は、画素パターン領域20a及び周辺領域20bから構成されている。周辺領域20bの幅は、画素パターン20aより大きいが、その他パターンの寸法比率や、画素パターンの面積、配置位置は、得ようとするデバイスによって適宜変更される。
【0064】
図9は、フォトマスクの画素部の一部を示す図である。
図9Aは、
図8に示すようなブラックマトリクス20の画素パターン領域20aを形成するための、マトリクス状のフォトマスクを示している。ここでは、四角形状の遮光領域が間隔をおいて行列(マトリクス)状に配列され、隣接する遮光領域の間に抜きパターンが形成されている。但し、遮光領域は必ずしも四角形である必要はなく、これと異なる一定形状の遮光領域が規則的に配列している態様でも構わない。
図9Aに示すフォトマスクは、遮光部21aと、線幅Wmのライン状の第1抜きパターン21b
1と、第1抜きパターン21b
1と交差する線幅Wn(Wn>Wm)のライン状の第1抜きパターン21b
2と、を有している。
【0065】
一方、
図9Bは、ブラックストライプを形成するための、ストライプ状のフォトマスクを示している。
図9Bに示すフォトマスクは、遮光部21aと、線幅Wmのライン状の第1抜きパターン21cと、を有している。
【0066】
図10から
図13は、被転写体上に形成されるデバイスパターンとフォトマスクにおける抜きパターンの形状との関係を示す図である。なお、
図10から
図13においては、フォトマスクの周辺領域は図示を省略し、画素パターン領域のみを図示している。
【0067】
図10Aは、Y方向に伸びるライン状のデバイスパターン22で構成されるブラックストライプを示している。
図10Aに示すようなデバイスパターンを形成するために、フォトマスクは、Y方向に伸びるライン状の線幅Wmの第1抜きパターンを有する。
図10Bに示すフォトマスクは、遮光部23aと、透光部で構成される第1抜きパターン23bと、を有している。
図10Cに示すフォトマスクは、遮光部23aと、半透光部で構成される第1抜きパターン23cと、を有している。
【0068】
図11Aは、互いに直交するX,Y方向に伸びるライン状のデバイスパターン24で構成されるブラックマトリクスを示している。
図11Aに示すようなデバイスパターンを形成するために、
図11Bに示すフォトマスクは、X,Y方向にそれぞれ伸びる線幅Wmのライン状の第1抜きパターン24bを有する。
図11Bに示すフォトマスクは、遮光部24aと、半透光部で構成される格子形状の第1抜きパターン24bと、を有している。
【0069】
図12Aは、Y方向に伸びる線幅Wpのライン状のデバイスパターン25aと、X方向に伸びる線幅Wq(Wq>Wp)のライン状のデバイスパターン25bと、で構成されるブラックマトリクスを示している。
図12Aに示すようなデバイスパターンを形成するために、
図12Bに示すフォトマスクは、Y方向に伸びる線幅Wmのライン状の第1抜きパターン26bと、X方向に伸びる線幅Wn(Wn>Wm)のライン状の第2抜きパターン26cと、を有する。
図12Bに示すフォトマスクは、遮光部26aと、半透光部で構成される第1抜きパターン26b及び第2抜きパターン26cと、を有している。
【0070】
第2抜きパターン26cの線幅Wnは、8μm≦Wn、更には10μm≦Wnを満たすことが好ましい。第2抜きパターン26cの線幅Wnの上限の制限は無いが、例えば、
図12Bに示すように交差線に使用する場合は、8μm≦Wn≦30μmを満たすように構成することができる。また、第2抜きパターン26cの線幅Wnと、デバイスパターン25bの線幅Wqとの関係は、1.0≦Wn/Wq≦1.5を満たすことが好ましく、1.0≦Wn/Wq≦1.2を満たすことがより好ましい。
【0071】
図13Aは、Y方向に伸びる線幅Wpのライン状のデバイスパターン27aと、X方向に伸びる線幅Wq(Wq>Wp)のライン状のデバイスパターン27bと、で構成されるブラックマトリクスを示している。
図13Aに示すようなデバイスパターンを形成するために、
図13Bに示すフォトマスクは、Y方向に伸びる線幅Wmのライン状の第1抜きパターン28bと、X方向に伸びる線幅Wn(Wn>Wm)のライン状の第2抜きパターン28cと、を有する。
図13Bに示すフォトマスクは、遮光部28aと、半透光部で構成される第1抜きパターン28bと、透光部で構成される第2抜きパターン28cと、を有している。
【0072】
続いて、本実施の形態に係るフォトマスクの製造方法について説明する。
図14は、本実施の形態に係る第1のフォトマスクの製造方法を説明する図である。
【0073】
まず、
図14(a)に示すように、透明基板31上に遮光膜32、レジスト膜33をこの順に形成したフォトマスクブランク30を準備する。
【0074】
透明基板31としては、例えば、合成石英、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の、露光光に対して透明な基板を用いることができる。
【0075】
遮光膜32としては、クロム又はその化合物が使用できる。例えば、遮光膜32は、窒化クロム膜、炭化クロム膜、クロム炭化酸化物膜、酸化クロム膜、クロム酸化窒化物膜、又はこれらの積層膜とすることができる。
【0076】
あるいは、遮光膜32としては、金属シリサイドが使用できる。例えば、遮光膜32として、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、チタンシリサイド、タングステンシリサイドや、これらの酸化物、窒化物、酸窒化物を用いることができる。また、遮光膜32に用いるモリブデンシリサイド系の膜は、例えば、MoxSiy膜、MoSiO膜、MoSiN膜、MoSiON膜等であってもよい。
【0077】
続いて、
図14(b)に示すように、フォトマスクブランク30に対して、描画装置を用いてレーザ又は電子線による描画を行い、レジスト膜33を感光する。この描画データは、遮光部を形成するためのものである。
【0078】
続いて、
図14(c)に示すように、レジスト膜33に現像液を供給して現像を施し、遮光部の形成予定領域を覆うレジストパターン33aを形成する。
【0079】
続いて、
図14(d)に示すように、レジストパターン33aをマスクとして、遮光膜32をエッチングして、遮光膜パターン32aを形成する。遮光膜32のエッチングには、公知のエッチャントを用いたウェットエッチングを適用することができる。例えば、遮光膜32がクロムやその化合物を含有していれば、クロム用エッチャント(例えば、硝酸第2セリウムアンモニウム及び過塩素酸など)が使用でき、遮光膜32がシリサイドを含有していれば、フッ素系エッチャントを用いることができる。
【0080】
続いて、
図14(e)に示すように、レジストパターン33aを剥離した後に、遮光膜パターン32aが形成された透明基板31の全面に半透光膜34を成膜する。半透光膜34は、所望の透過率と、必要な場合には位相シフト量を予め決定して、適切な膜厚で成膜する。
【0081】
半透光膜34としては、クロム化合物、又は金属シリサイドを原料とする膜を使用できる。例えば、半透光膜34として用いるクロム化合物膜としては、窒化クロム膜、炭化クロム膜、クロム炭化酸化物膜、酸化クロム膜、クロム酸化窒化物膜などが挙げられる。
【0082】
また、半透光膜34として用いる金属シリサイド膜としては、モリブデンシリサイド膜、タンタルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、タングステンシリサイド膜や、これらの酸化物膜、窒化物膜、酸窒化物膜などが挙げられる。また、半透光膜34に用いるモリブデンシリサイド系の膜は、例えば、MoxSiy膜、MoSiO膜、MoSiN膜、MoSiON膜等であってもよい。
【0083】
フォトマスクの製造方法によって、半透光膜34と遮光膜32とのエッチング選択性が必要とされる場合には、クロム系の膜とシリサイド系の膜とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0084】
図14(e)に示した工程において、
図10B,
図10C及び
図11Bに示したフォトマスクの転写用パターンが形成できる。すなわち、Wp(Wp<10μm)のデバイスパターン22(24)を被転写体上に形成するための、線幅Wm(1≦(Wm−Wp)/2≦4(μm))の透光部で構成される第1抜きパターン23bを有するフォトマスク、あるいは線幅Wm(1≦(Wm−Wp)/2≦4(μm))の半透光部で構成される第1抜きパターン23c(24b)を有するフォトマスクを、上記工程によって製造することができる。
【0085】
一方、
図12B及び
図13Bに示したフォトマスクの転写用パターンのように、転写用パターンが、線幅Wn(Wn>Wm)のデバイスパターンを有する場合には、さらに以下の工程を実施する。
【0086】
図14(f)に示すように、遮光膜パターン32a及び露出した半透光膜34を有するフォトマスクブランク30aの全面に、レジスト膜35を形成する。そして、レジスト膜35が形成されたフォトマスクブランク30aに対して、描画装置を用いてレーザ又は電子線による描画を行い、レジスト膜35を感光する。この描画データは、透光部を形成するためのものである。
【0087】
続いて、
図14(g)に示すように、レジスト膜35に現像液を供給して現像を施し、透光部の形成予定領域以外を覆うレジストパターン35aを形成する。
【0088】
続いて、
図14(h)に示すように、レジストパターン35aをマスクとして、半透光膜34をエッチングして、半透光膜パターン34aを形成する。
【0089】
最後に、
図14(i)に示すように、レジストパターン35aを剥離することにより、線幅Wmの抜きパターンに加えて、透光部で構成される線幅Wn(Wn>Wm)の抜きパターンを有するフォトマスクを製造することができる。
【0090】
図14に示す第1のフォトマスクの製造方法は、半透光膜34と遮光膜32との間に、相互にエッチング選択性があるものを用いた例である。ただし、半透光膜34と遮光膜32との間にエッチング選択性がない場合、すなわち半透光膜34と遮光膜32のいずれか一方の膜のエッチャントに対して、他方の膜の耐性が低い場合であっても、第1のフォトマスクの製造方法を適用することができる。この場合には、2回の描画工程のアライメントずれに応じて、パターン寸法が影響を受けることがある点を考慮する必要がある。
【0091】
なお、半透光膜34の透過率は、20〜60%を満たすことが好ましい。また、例えば
図13Bに示すフォトマスクのように、転写用パターンが、遮光部、半透光部及び透光部を有する場合には、透光部と半透光部とが隣接することがあり得る。この場合、選択する半透光膜34によっては、透光部との境界において、透過光の位相差による干渉が生じ、意図しない暗部が形成される可能性がある。このため、隣接する
透光部と半透光部の相互に、透過光の位相差が90度以下、より好ましくは60度以下となるように、半透光膜34の素材、膜厚を選択することが好ましい。
【0092】
続いて、上記第1のフォトマスクの製造方法とは異なる、フォトマスクの製造方法について説明する。
図15は、本実施の形態に係る第2のフォトマスクの製造方法を説明する図である。
【0093】
まず、
図15(a)に示すように、透明基板41上に、半透光膜42、遮光膜43、レジスト膜44をこの順に形成したフォトマスクブランク40を準備する。このように、第2のフォトマスクの製造方法は、透明基板41上に半透光膜42が形成されている点で、上記第1のフォトマスクの製造方法と相違する。
【0094】
続いて、
図15(b)に示すように、フォトマスクブランク40に対して、描画装置を用いてレーザ又は電子線による描画を行い、レジスト膜44を感光する。この描画データは、遮光部を形成するためのものである。
【0095】
続いて、
図15(c)に示すように、レジスト膜44に現像液を供給して現像を施し、遮光部の形成予定領域を覆うレジストパターン44aを形成する。
【0096】
続いて、
図15(d)に示すように、レジストパターン44aをマスクとして、遮光膜43をエッチングして、遮光膜パターン43aを形成する。
【0097】
続いて、
図15(e)に示すように、レジストパターン44aを剥離する。
【0098】
さらに、転写用パターンが、線幅Wn(Wn>Wm)のデバイスパターンを有する場合には、以下の工程を実施する。
【0099】
図15(f)に示すように、半透光膜42及び遮光膜パターン43aを有するフォトマスクブランク40aの全面に、レジスト膜45を形成する。そして、レジスト膜45が形成されたフォトマスクブランク40aに対して、描画装置を用いてレーザ又は電子線による描画を行い、レジスト膜45を感光する。この描画データは、透光部を形成するためのものである。
【0100】
続いて、
図15(g)に示すように、レジスト膜45に現像液を供給して現像を施し、透光部の形成予定領域以外を覆うレジストパターン45aを形成する。
【0101】
続いて、
図15(h)に示すように、レジストパターン45aをマスクとして、半透光膜42をエッチングして、半透光膜パターン42aを形成する。
【0102】
最後に、
図15(i)に示すように、レジストパターン45aを剥離することにより、線幅Wmの抜きパターンに加えて、透光部で構成される線幅Wn(Wn>Wm)の抜きパターンを有するフォトマスクを製造することができる。
【0103】
図15に示す第2のフォトマスクの製造方法においては、半透光膜42と遮光膜43との間に、互いにエッチング選択性がある素材を用いている。また、半透光膜42の膜厚は、得ようとする透過率に合わせて、予め決定して成膜する必要がある。
【0104】
続いて、本実施の形態に係るフォトマスクを用いたパターン転写方法について説明する。
【0105】
本実施の形態に係るパターン転写方法は、転写用パターンを備えたフォトマスクを用いて、被転写体上に形成したネガ型感光性材料膜に対して近接露光装置を用いて露光して、被転写体上に線幅Wpの第1デバイスパターンを形成する。例えば、このようなパターン転写方法を用いて、表示装置におけるブラックマトリクスを製造することができる。
【0106】
このとき、透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなる遮光領域と、遮光領域に囲まれて配置された抜きパターンであって、デバイスパターンに対応する、線幅Wmの第1抜きパターンと、を有する転写用パターンを備えた、一辺が300mm以上の主表面をもつフォトマスクを用い、被転写体上に、線幅Wpのデバイスパターンを形成するパターン転写方法において、デバイスパターンの線幅Wpと第1抜きパターンの線幅Wmとの関係が、下記式(1)及び式(2)を満たすように、適切な露光条件を適用して転写を行う転写方法により、パターンを転写することができる。
Wp<10μm・・・(1)
1≦(Wm−Wp)/2≦4(μm)・・・(2)
【0107】
本実施の形態に係るフォトマスクは、プロキシミティギャップを10〜200μmの範囲内とした近接露光に用いることが好ましい。プロキシミティギャップは、30〜150μmの範囲内とするとより好ましく、60〜150μmの範囲内とするとさらに好ましい。なお、プロキシミティギャップが、被転写体の面内位置によって相違する、すなわち面内ばらつきを有する場合であっても、面内のいずれの位置においてもプロキシミティギャップが上記範囲内であることが好ましい。
【0108】
ここで、面内におけるプロキシミティギャップの分布、すなわちプロキシミティギャップの最大値と最小値との差が、30μmから100μmの範囲内である場合に、本発明の効果が顕著となる。すなわち、本実施の形態に係るフォトマスクは、面内におけるプロキシミティギャップの分布にばらつきが存在する系において、有用である。
【0109】
本実施の形態に係るフォトマスクの転写用パターンを設計するに際しては、被転写体上にデバイスパターンが転写されたとき、プロキシミティギャップの存在下においても、これによる露光光の光強度ばらつきが抑えられ、面内のCD分布が、目標CD±10%、或いは、CDばらつきが1μm以下となるようにすることが好ましい。
【0110】
例えば、
図20を参照すると、プロキシミティギャップが、70μmから130μmまで変動し、プロキシミティギャップの分布が60μmである場合に(
図20A参照)、CDばらつきは0.9μm以下に抑えられている(
図20B参照)。
図21Bにおいて、CDばらつきは0.8μm以下、
図22Bにおいて、CDばらつきは0.7μm以下(ただし、光強度分布によるCD)となっている。
【0111】
(実施例)
本発明の実施の形態に係るフォトマスクによる転写性を確認するために、
図16に示すモデルを用いて光学シミュレーションを行った。
【0112】
図16Aは、透光部を有するフォトマスク(バイナリマスク)50を示している。フォトマスク50は、遮光部50aと、線幅Wmの透光部で構成される抜きパターン50bと、を有している。また、
図16Bは、半透光部を有するフォトマスク(ハーフトーンマスク)51を示している。フォトマスク51は、遮光部51aと、線幅Wmの半透光部で構成される抜きパターン51bと、を有している。
【0113】
(比較例)
図16Aに示すフォトマスク50において、被転写体上に形成すべきデバイスパターンの線幅Wpを5μm、フォトマスク50における抜きパターン50bの線幅Wmを5μmとした場合、すなわちバイアスβをゼロとした場合に、プロキシミティギャップを変動させて、CD変動及び光強度のピークを求めた。ここでは、プロキシミティギャップ100μmの場合を基準化して、この値において目標CDが得られる場合について調べた。
【0114】
図17Aは、被転写体上に形成される光強度分布を示すグラフである。
図17Aにおいて、横軸はマスク上の位置、縦軸は光強度を示している。プロキシミティギャップは、70μmから130μmの間で5μmずつ変動させた。
図17Aにおいて、グラフ170aはプロキシミティギャップ70μmのグラフを示し、グラフ170bはプロキシミティギャップ130μmのグラフを示し、グラフ170cはプロキシミティギャップ100μmのグラフを示している。
【0115】
図17Bは、プロキシミティギャップと形成されるパターンのCDとの関係を示すグラフである。
図17Bにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸はCD[μm]を示している。また、
図17Cは、プロキシミティギャップとピークの光強度との関係を示すグラフである。
図17Cにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸は光強度を示している。
【0116】
図17Bに示すように、プロキシミティギャップが70μmから130μmまで変動したとき、すなわち60μm変動する間において、2.3μm程度のCD変動が生じた。また、
図17Cに示すように、プロキシミティギャップが70μmから130μmまで変動したとき、すなわち60μmの変動において、0.35単位(相対値)のピークの光強度変動が生じた。
【0117】
(実施例1)
図16Aに示すフォトマスク50において、比較例の場合と同様に被転写体上に形成すべきデバイスパターンの線幅Wpを5μmとしたまま、フォトマスク50における抜きパターン50bの線幅Wmを6μm,7μmとして同様のシミュレーションを行った。すなわち、バイアスβの値は、それぞれ0.5μm,1.0μmであり、Wm/Wpは、それぞれ1.2,1.4である。
【0118】
シミュレーションの結果を
図18に示す。
図18Aは、プロキシミティギャップとCDとの関係を示すグラフである。
図18Aにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸はCD[μm]を示している。また、
図18Bは、プロキシミティギャップとピークの光強度との関係を示すグラフである。
図18Bにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸は光強度を示している。
【0119】
図18A,
図18Bにおいて、グラフ180aは抜きパターン50bの線幅Wmが5μmのグラフを示し、グラフ180bは抜きパターン50bの線幅Wmが6μmのグラフを示し、グラフ180cは抜きパターン50bの線幅Wmが7μmのグラフを示している。
【0120】
図18Aに示すように、グラフ180b,180cにおいては、双方1μm程度のCD変動が生じた。
図18Bに示すように、バイアスβの値が大きくなるほど、同一プロキシミティギャップにおけるピークの光強度は大きくなった。特に、線幅Wmを7μmとしたグラフ180cでは、グラフ180aが示す比較例よりも大幅にピークの光強度が増加した。光強度の増加は、ネガ型感光性材料の架橋反応を十分に生じさせる点で有利である。
【0121】
(実施例2)
図16Bに示すフォトマスク51を用いた場合の、フォトマスク50との相違について検討した。
【0122】
図19は、被転写体上に形成される光強度分布を示すグラフである。
図19において、横軸はマスク上の位置、縦軸は光強度を示している。
図19において、グラフ190aは比較例を示し、グラフ190bは
図16Bに示すフォトマスク51において、被転写体上に形成すべきデバイスパターンの線幅Wpを5μm、フォトマスク51における抜きパターン51bの線幅Wmを8μmとし、抜きパターン51bを構成する半透光膜の透過率を55%とした場合のグラフを示す。このようにすることで、比較例を示すグラフ190aと、グラフ190bとの光強度分布のピーク強度を同程度に揃えた。
【0123】
図19に示すように、ハーフトーンマスクを用いた本実施例(グラフ190b)では、同一のピーク強度を得るにあたり、ピーク形状がバイナリマスク(グラフ190a)に比べてよりシャープであった。すなわち、より微細なパターンが形成できるのみならず、光強度の傾斜角が大きく、垂直に近くなった。これは、実際に転写に用いた際に、得られるレジストパターンの断面形状が垂直に近づくことを意味し、後工程での加工精度が高くなるという優れた効果をもつことを示す。すなわち、カラーフィルタ等の中間製品、さらには、表示装置などの最終製品における性能の安定性、歩留まりの向上に寄与することがわかる。
【0124】
(実施例3)
実施例2の結果を踏まえて、
図16Bに示すフォトマスク51において、被転写体上に形成すべきデバイスパターンの線幅Wpを5μm、フォトマスク51における抜きパターン50bの線幅Wmを7μm、半透光膜の透過率を55%とした場合に、プロキシミティギャップを変動させて、CD変動及び光強度のピークを求めた。ここでは、プロキシミティギャップ100μmの場合を基準化して、この値において目標CDが得られる場合について調べた。
【0125】
図20Aは、被転写体上に形成される光強度分布を示すグラフである。
図20Aにおいて、横軸はマスク上の位置、縦軸は光強度を示している。プロキシミティギャップは、70μmから130μmの間で5μmずつ変動させた。
図20Aにおいて、グラフ200aはプロキシミティギャップ70μmのグラフを示し、グラフ200bはプロキシミティギャップ130μmのグラフを示し、グラフ200cはプロキシミティギャップ100μmのグラフを示している。
【0126】
図20Bは、プロキシミティギャップと形成されるパターンのCDとの関係を示すグラフである。
図20Bにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸はCD[μm]を示している。また、
図20Cは、プロキシミティギャップとピークの光強度との関係を示すグラフである。
図20Cにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸は光強度を示している。
【0127】
図20Bに示すように、プロキシミティギャップが70μmから130μmまで変動したとき、すなわち60μm変動する間において、CD変動は1μm未満であった。また、
図20Cに示すように、プロキシミティギャップが70μmから130μmまで変動したとき、すなわち60μmの変動において、0.25単位(相対値)のピークの光強度変動が生じた。
【0128】
(実施例4)
フォトマスク51における抜きパターン50bの線幅Wmを8μmとして、実施例3と同様のシミュレーションを行った。
【0129】
図21Aは、被転写体上に形成される光強度分布を示すグラフである。
図21Aにおいて、横軸はマスク上の位置、縦軸は光強度を示している。プロキシミティギャップは、70μmから130μmの間で5μmずつ変動させた。
図21Aにおいて、グラフ210aはプロキシミティギャップ70μmのグラフを示し、グラフ210bはプロキシミティギャップ130μmのグラフを示し、グラフ210cはプロキシミティギャップ100μmのグラフを示している。
【0130】
図21Bは、プロキシミティギャップと形成されるパターンのCDとの関係を示すグラフである。
図21Bにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸はCD[μm]を示している。また、
図21Cは、プロキシミティギャップとピークの光強度との関係を示すグラフである。
図21Cにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸は光強度を示している。
【0131】
図21Bに示すように、プロキシミティギャップが70μmから130μmまで変動したとき、すなわち60μm変動する間において、CD変動はさらに小さくなり、0.8μm未満であった。また、
図21Cに示すように、ピークの光強度は実施例3と比較して増加した。
【0132】
(実施例5)
フォトマスク51における抜きパターン50bの線幅Wmを9μmとして、実施例3と同様のシミュレーションを行った。
【0133】
図22Aは、被転写体上に形成される光強度分布を示すグラフである。
図22Aにおいて、横軸はマスク上の位置、縦軸は光強度を示している。プロキシミティギャップは、70μmから130μmの間で5μmずつ変動させた。
図22Aにおいて、グラフ220aはプロキシミティギャップ70μmのグラフを示し、グラフ220bはプロキシミティギャップ130μmのグラフを示し、グラフ220cはプロキシミティギャップ100μmのグラフを示している。
【0134】
図22Bは、プロキシミティギャップと形成されるパターンのCDとの関係を示すグラフである。
図22Bにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸はCD[μm]を示している。また、
図22Cは、プロキシミティギャップとピークの光強度との関係を示すグラフである。
図22Cにおいて、横軸はプロキシミティギャップ、縦軸は光強度を示している。
【0135】
図22Bに示すように、プロキシミティギャップが70μmから130μmまで変動したとき、すなわち60μm変動する間において、CD変動はさらに小さくなり、0.7μm未満であった。また、
図22Cに示すように、ピークの光強度は実施例4と比較して増加した。
【0136】
以上により、被転写体上に微細幅のパターンを形成する際に必要な、フォトマスクの抜きパターンを、これより大きな線幅とすることで、被転写体上に届く光量を調整できることがわかった。また、バイアス量(β)を調整し、更に好ましくはバイアス率Wm/Wpを調整することにより、プロキシミティギャップのばらつきに対する、転写パターンのCDばらつきを、効果的に抑えることができることがわかった。この点は、特に、量産上の意義が大きい。
【0137】
なお、この効果は、フォトマスクの抜きパターンとして、被転写体上に形成する目標線幅より大きい線幅のパターンを用いることで近接露光ギャップによる光強度変化を小さくすることによる。そして更に、フォトマスクの抜きパターンに半透光膜を用いることによって、透過する光強度を適切に調整して露光することで、露光ギャップによる線幅バラツキを抑える作用を奏することによる。
【0138】
本発明によれば、いわゆる半導体製造用のプロジェクション露光装置や、位相シフトマスクといった技術に依存することなく、上記微細幅のパターンを形成することが可能である。
【0139】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変さらが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変さらして実施可能である。
【0140】
例えば、本発明は、ブラックマトリクスやブラックストライプに限られず、液晶表示装置のフォトスペーサ(PS)などに適用してもよい。この場合には、上記実施の形態における抜きパターンが、例えばホールパターンなどの異なる形状となるが、本発明の効果を妨げない。