(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された前記冷媒が放熱して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮された前記冷媒を減圧する膨張機構と、前記膨張機構において減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、が接続されて前記冷媒の循環回路を構成する主回路と、
前記蒸発器と前記圧縮機の間において、前記主回路に並列に設けられ、前記蒸発器で蒸発された前記冷媒を、前記凝縮器を流れる前記冷媒と熱交換させてから前記主回路に戻す過熱回路と、
冷房運転時には前記凝縮器として機能するとともに、暖房運転時には前記蒸発器として機能する室外熱交換器と、
前記冷房運転時には前記蒸発器として機能するとともに、前記暖房運転時には前記凝縮器として機能する室内熱交換器と、を備え、
前記過熱回路は、
前記冷房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室外熱交換器から集熱する第1過熱回路と、
前記暖房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室内熱交換器から集熱する第2過熱回路と、
を備えることを特徴とする冷凍装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態にかかる冷凍装置1は、圧縮機10と、室外熱交換器13と、膨張弁15と、室内熱交換器16と、四方弁18と、を備え、冷凍サイクルを実行する主回路が構成される。
冷凍装置1は、HFO冷媒を冷媒として用いることを前提としており、主回路に加えて第1過熱回路20と第2過熱回路30を備え、この第1過熱回路20又は第2過熱回路30を稼働させることにより、圧縮機10に吸入される冷媒を過熱する。本実施形態は、HFO冷媒として、HFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン)からなる単一冷媒を使用して、冷凍サイクルを行う装置である。ここで、HFO−1234yfは、CF
3−CF=CH
2の化学式で表される。
以下、冷凍装置1の構成、冷凍装置1の動作及び効果の順に説明する。
【0015】
[冷凍装置1の構成]
主回路の構成は以下の通りである。
圧縮機10には、圧縮された高温・高圧の冷媒(気体)が吐出される冷媒配管L1の一端が接続されている。冷媒配管L1の他端は、四方弁18の第1ポートP1に接続されている。四方弁18は、第1ポートP1〜第4ポートP4と4つのポートが設けられており、冷凍装置1の冷房運転、暖房運転に応じて、内部の流路を切り替える。
四方弁18の第2ポートP2には、冷媒配管L2の一端が接続されている。冷媒配管L2の他端は、室外熱交換器13に接続されている。
四方弁18の第3ポートP3には、冷媒配管L9の一端が接続されている。冷媒配管L9の他端は、圧縮機10の吸入側に接続されている。
四方弁18の第4ポートP4には、冷媒配管L4の一端が接続されている。冷媒配管L4の他端は、室内熱交換器16に接続されている。
室外熱交換器13には、冷媒配管L3の一端が接続され、冷媒配管L3の他端は室内熱交換器16に接続されている。冷媒配管L3には、膨張弁15が設けられており、冷媒配管L3を通過する冷媒を断熱膨張させる。
【0016】
圧縮機10は、冷媒を圧縮する装置であり、外部の駆動源により圧縮動作を行う密閉式圧縮機及び駆動モータを内蔵する密閉式圧縮機のいずれも適用することができる。また、圧縮機構の方式についても制約はなく、ロータリー式、スクロール式のいずれをも適用することができる。また、ここでは一台の圧縮機10を用いる例を示しているが、圧縮機10を複数台が並列に接続して用いることもできる。
【0017】
室外熱交換器13は、通過する冷媒と室外空気との間で熱交換を行う空気熱交換器として構成されており、例えばフィン・アンド・チューブ型の熱交換器が適用される。室外熱交換器13には室外ファン14が付随して設けられており、室外ファン14を動作させることにより吸引される室外空気を、室外熱交換器13を送風にして通過させることで、室外空気と冷媒との間で熱交換を行なわせる。
【0018】
室内熱交換器16は、室内空気と冷媒との間で熱交換を行う空気熱交換器として構成されており、例えばフィン・アンド・チューブ型の熱交換器が適用される。室内熱交換器16には室内ファン17が付随して設けられており、室内ファン17を動作させることにより吸引される室内空気を、室内熱交換器16を送風にして通過させることで、室内空気と冷媒との間で熱交換を行なわせる。
【0019】
膨張弁15は、冷房運転時に、室外熱交換器13から室内熱交換器16に送られる冷媒を減圧する機構であり、例えば、電子膨張弁が適用される。
【0020】
以上の主回路構成を備える冷凍装置1は、冷房運転の際には、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒が、冷媒配管L1、四方弁18、冷媒配管L2、室外熱交換器13、冷媒配管L3、室内熱交換器16、冷媒配管L4、四方弁18及び冷媒配管L9の順に通過して、圧縮機10に吸入される。また、暖房運転の際には、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒が、冷媒配管L1、四方弁18、冷媒配管L4、室内熱交換器16、冷媒配管L3、室外熱交換器13、冷媒配管L2、四方弁18及び冷媒配管L9の順に通過して、圧縮機10に吸入される。ただし、以下説明する第1過熱回路20又は第2過熱回路30が動作する場合には、冷媒の流れの一部が変更される。
【0021】
第1過熱回路20は、冷房運転時に機能するものであり、
図1に示すように、第1過熱熱交換器21と、一端が第1過熱熱交換器21に繋がり、他端が冷媒配管L4に繋がる冷媒配管L5と、一端が第1過熱熱交換器21に繋がり、他端が冷媒配管L4に繋がる冷媒配管L6と、を備え、冷媒配管L4、冷媒配管L5、第1過熱熱交換器21及び冷媒配管L6により、冷媒の循環回路が構成される。
【0022】
第1過熱熱交換器21は、室外熱交換器13に近接して設けられ、冷媒が通過する過程で室外熱交換器13を流れる冷媒との間で熱交換することにより、圧縮機10に吸入される冷媒を過熱する。第1過熱熱交換器21は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器から構成される。後述する第2過熱熱交換器31も同様である。
【0023】
第1過熱回路20は、冷媒配管L4上であって、冷媒配管L5と冷媒配管L4の接続部位と冷媒配管L6と冷媒配管L4の接続部位との間に開閉弁V1を、また、冷媒配管L5上に開閉弁V2を備える。第1過熱回路20は、また、冷媒配管L6上に逆止弁V5を備える。逆止弁V5は、第1過熱熱交換器21から冷媒配管L4に向けた冷媒の流れを許容するが、この逆、つまり冷媒配管L4から第1過熱熱交換器21に向けた冷媒の流れを阻止する。
第1過熱回路20は、開閉弁V1及び開閉弁V2の開閉を制御することにより、冷媒を循環回路に引き込み第1過熱熱交換器21にて過熱する過熱運転と、冷媒を循環回路に引き込まない通常運転と、のいずれかが選択的に行われる。この選択は、後述するように、コントローラ50が担う。
【0024】
第1過熱熱交換器21は室外熱交換器13と熱交換が可能なように、室外熱交換器13に近接して配置する。具体的には、
図4(a)に示すように室外ファン14による室外空気の送風の向きAを基準にして、室外熱交換器13より下流側、又は、
図4(b)に示すように、室外熱交換器13より上流側に第1過熱熱交換器21を配置できる。下流側及び上流側のいずれであっても、室外熱交換器13の周囲の空気は冷媒からの放熱により例えば40〜50℃に暖められるので、第1過熱熱交換器21を通る冷媒を過熱することができる。
図4(a)に示す下流側に第1過熱熱交換器21を設ける場合には、室外熱交換器13を通過して暖められた空気が第1過熱熱交換器21を通過する。
図4(b)に示す上流側に第1過熱熱交換器21を設ける場合には、室外熱交換器13に吸い込まれる前の空気が第1過熱熱交換器21を通過する。
この配置は、室内熱交換器16に対する第2過熱熱交換器31の配置位置についても同様に適用することができる。
【0025】
第2過熱回路30は、暖房運転時に機能するものであり、
図1に示すように、第2過熱熱交換器31と、一端が第2過熱熱交換器31に繋がり、他端が冷媒配管L2に繋がる冷媒配管L7と、一端が第2過熱熱交換器31に繋がり、他端が冷媒配管L2に繋がる冷媒配管L8と、を備え、冷媒配管L2、冷媒配管L7、第2過熱熱交換器31及び冷媒配管L8により、冷媒の循環回路が構成される。
【0026】
第2過熱熱交換器31は、室内熱交換器16に近接して設けられ、冷媒が通過する過程で室内熱交換器16を流れる冷媒との間で熱交換することにより、圧縮機10に吸入される冷媒を過熱する。
【0027】
第2過熱回路30は、冷媒配管L2上であって、冷媒配管L7と冷媒配管L2の接続部位と冷媒配管L8と冷媒配管L2の接続部位との間に開閉弁V3を、また、冷媒配管L7上に開閉弁V4を備える。第2過熱回路30は、また、冷媒配管L8上に逆止弁V6を備える。逆止弁V6は、第2過熱熱交換器31から冷媒配管L2に向けた冷媒の流れを許容するが、この逆、つまり冷媒配管L2から第2過熱熱交換器31に向けた冷媒の流れを阻止する。
第2過熱回路30は、開閉弁V3及び開閉弁V4の開閉を制御することにより、冷媒を循環回路に引き込み第2過熱熱交換器31にて過熱する過熱運転と、冷媒を循環回路に引き込まない通常運転と、のいずれかが選択的に行われる。
【0028】
冷凍装置1は、冷凍装置1の動作を司るコントローラ50を備えている。
具体的には、圧縮機10、室外ファン14及び室内ファン17の運転、停止、膨張弁15の開度、四方弁18の流路切替えを制御する。また、コントローラ50は、第1過熱回路20及び第2過熱回路30に設けられる開閉弁V1〜V4の開閉動作を制御する。
コントローラ50は、冷媒配管L1に付設された温度センサSにより、圧縮機10により圧縮された冷媒の温度(T)を検知する。コントローラ50は、検知した温度Tと閾値温度T
Rを比較することにより、開閉弁V1〜V4の開閉動作を制御する。
【0029】
[冷凍装置1の動作]
次に、冷凍装置1の動作について、
図2を参照して冷房運転を、
図3を参照して暖房運転の順に説明する。なお、
図2において、コントローラ50及び温度センサSの記載は省略する。
冷凍装置1は、冷房運転又は暖房運転を行いながら、第1過熱回路20又は第2過熱回路30を機能させることにより、冷媒を過熱することができる。
なお、本願明細書において、「高圧」とは冷凍サイクルにおける高圧を意味し、「低圧」とは冷凍サイクルにおける低圧を意味している。また、
図2、
図3の白抜きの矢印は、冷媒が流れる向きを示している。
図6も同様である。
【0030】
[冷房運転]
冷房運転は、冷媒を循環回路に引き込まない通常運転(
図2(a))と、第1過熱回路20の循環回路に冷媒を引き込む過熱運転(
図2(b))と、があるので、以下この順に説明する。なお、冷凍装置1は、コントローラ50からの指示により、通常運転から過熱運転に切り替えること、また、過熱運転から通常運転に切り替えることができる。コントローラ50は、温度センサSにより検知した冷媒の温度Tが閾値温度T
Rを超えていれば通常運転(T
R<T)を行うように開閉弁V1〜V4の開閉を制御し、温度Tが閾値温度T
R以下であれば通常運転(T
R≧T)を行うように開閉弁V1〜V4の開閉を制御する。
【0031】
[通常運転:
図2(a)]
冷凍装置1は、冷房運転時には、四方弁18の第1ポートP1と第2ポートP2が繋がれて、また、第3ポートP3と第4ポートP4が繋がれている。つまり、冷房運転時には、冷媒配管L1と冷媒配管L2が繋がれ、また、冷媒配管L4と冷媒配管L9が繋がれている。
また、第1過熱回路20及び第2過熱回路30の開閉弁V1〜V4の開(ON)・閉(OFF)の状態は、以下の通りである。なお、
図2において、開いている開閉弁V1〜V4は白抜きで示し、また、閉じている開閉弁V1〜V4は黒塗りで示している。
図3及び
図6も同様である。
V1:開(ON) V2:閉(OFF) V3:閉(OFF) V4:開(ON)
【0032】
さて、圧縮機10が運転されると、圧縮機10で圧縮された高温高圧の冷媒(気体)は冷媒配管L1に吐出され、四方弁18を通って冷媒配管L2を流れる。開閉弁V3が開いているので、高温高圧の冷媒は、室外熱交換器13に流入し、室外ファン14により送風される室外空気へ放熱して凝縮する。また、開閉弁V4が閉じられ、かつ、逆止弁V6が設けられているために、冷媒は第2過熱回路30に流入できない。
室外熱交換器13で凝縮して生成された常温高圧の冷媒(液体)は、室外熱交換器13から冷媒配管L3を流れる過程で膨張弁15により減圧されて、低温低圧の気液二相状態となり、室内熱交換器16に向けて流れる。
室内熱交換器16に流入した冷媒は、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ファン17の動作により室内熱交換器16を通過する室内空気は、冷却されて室内へ供給される。
室内熱交換器16で蒸発して低温低圧とされた冷媒(気体)は、冷媒配管L4、四方弁18及び冷媒配管L9を順に通ってから圧縮機10に吸入され、圧縮機10により高温高圧にされた後に、冷媒配管L1に吐出される。このとき、開閉弁V2が閉じられ、かつ、逆止弁V5が設けられているために、冷媒は第1過熱回路20に流入できない。
冷凍装置1は、以上のサイクルが繰り返される間、室内の冷房が実現される。
ここで、室内熱交換器16で蒸発して低温低圧とされた冷媒は、理想的には気体であるが、液相が混じることがある。その場合には、以下説明する過熱運転を実行する。これは暖房運転時でも同じである。
【0033】
[過熱運転:
図2(b)]
次に、過熱運転について、
図2(b)を参照して説明する。
過熱運転の際にも圧縮機10から高温高圧の冷媒が吐出され、室外熱交換器13、膨張弁15及び室内熱交換器16を通過した後に圧縮機10に吸入されるという基本的な冷媒の流れは変わらないので、以下では、通常運転との相違点を中心に説明する。
【0034】
はじめに、第1過熱回路20及び第2過熱回路30の開閉弁V1〜V4の開(ON)・閉(OFF)の状態は、以下の通りである。
V1:閉(OFF) V2:開(ON) V3:開(ON) V4:閉(OFF)
【0035】
室内熱交換器16を通過した低温低圧の冷媒(気体)は、開閉弁V1が閉じているとともに開閉弁V2が開いているので、開閉弁V1の手前で冷媒配管L5に流入し、第1過熱熱交換器21を通過してから冷媒配管L6を流れる。冷媒配管L6に設けられる逆止弁V5はこの冷媒の流れに対して順方向を向いているので、逆止弁V5を通過してから冷媒配管L4に流入し、以下は、通常運転と同様にして圧縮機10に吸入される。
【0036】
第1過熱回路20を以上の順番で流れる冷媒は、第1過熱熱交換器21を通過する際に、室内熱交換器16を流れる高温高圧の冷媒との間の熱交換により過熱されてから、冷媒配管L6を通って冷媒配管L4に戻される。このように、第1過熱回路20を通過してから圧縮機10に吸入される冷媒は、第1過熱熱交換器21において過熱される。
【0037】
[暖房運転]
暖房運転についても、冷媒を第2過熱回路30の循環回路に引き込まない通常運転(
図3(a))と、第1過熱回路20の循環回路に冷媒を引き込む過熱運転(
図3(b))と、があるので、以下この順に説明する。なお、暖房運転についても冷房運転と同様に、コントローラ50が温度センサSにより検知した冷媒の温度Tと閾値温度T
Rの比較結果に基づいて、通常運転から過熱運転への切り替え、過熱運転から通常運転への切り替えることができる。
【0038】
[通常運転:
図3(a)]
冷凍装置1は、暖房運転時には、四方弁18の第1ポートP1と第4ポートP4が繋がれ、また、第2ポートP2と第3ポートP3が繋がれている。つまり、暖房運転時には、冷媒配管L1と冷媒配管L4が繋がれ、また、冷媒配管L3と冷媒配管L9が繋がれている。
また、第1過熱回路20及び第2過熱回路30の開閉弁V1〜V4の開(ON)・閉(OFF)の状態は、以下の通りであり、冷房運転と同じである。
V1:開(ON) V2:閉(OFF) V3:開(ON) V4:閉(OFF)
【0039】
さて、圧縮機10が運転されると、圧縮機10で圧縮された高温高圧の冷媒(気体)は冷媒配管L1に吐出され、四方弁18を通って冷媒配管L4を流れる。開閉弁V1が開いているので、高温高圧の冷媒は、室内熱交換器16に流入し、室内ファン17により送風される室内空気と熱交換され、室内側に放熱することにより、凝縮液化される。また、開閉弁V2が閉じられ、かつ、逆止弁V5が設けられているために、冷媒は第1過熱回路20に流入できない。
室内熱交換器16で凝縮して生成された常温高圧の冷媒(液体)は、室内熱交換器16から冷媒配管L3を流れる過程で膨張弁15により減圧されて、低温低圧の気液二相状態の冷媒となり、室外熱交換器13に向けて流れる。
室外熱交換器13に流入した冷媒は、室外空気から吸熱して蒸発する。
室外熱交換器13で蒸発して低温低圧とされた冷媒(気体)は、冷媒配管L2、四方弁18及び冷媒配管L9を順に通ってから圧縮機10に吸入され、圧縮機10により高温高圧にされた後に、冷媒配管L1に吐出される。このとき、開閉弁V4が閉じられ、かつ、逆止弁V6が設けられているために、冷媒は第2過熱回路30に流入できない。
冷凍装置1は、以上のサイクルが繰り返される間、室内の暖房が実現される。
【0040】
[過熱運転:
図3(b)]
次に、過熱運転について、
図3(b)を参照して説明する。
過熱運転の際にも圧縮機10から高温高圧の冷媒が吐出され、室内熱交換器16、膨張弁15及び室外熱交換器13を通過した後に圧縮機10に吸入されるという基本的な冷媒の流れは変わらないので、以下では、通常運転との相違点を中心に説明する。
【0041】
はじめに、第1過熱回路20及び第2過熱回路30の開閉弁V1〜V4の開(ON)・閉(OFF)の状態は、以下の通りである。
V1:開(ON) V2:閉(OFF) V3:閉(OFF) V4:開(ON)
【0042】
室外熱交換器13を通過した低温低圧の冷媒(気体)は、開閉弁V2が閉じているとともに開閉弁V4が開いているので、開閉弁V2の手前で冷媒配管L7に流入し、第2過熱熱交換器31を通過してから冷媒配管L7を流れる。冷媒配管L7に設けられる逆止弁V6はこの冷媒の流れに対して順方向を向いているので、逆止弁V6を通過してから冷媒配管L2に流入し、以下は、通常運転と同様にして圧縮機10に吸入される。
【0043】
第2過熱回路30を以上の順番で流れる冷媒は、第2過熱熱交換器31を通過する際に、室内熱交換器16を流れる高温高圧の冷媒との間の熱交換により過熱されてから、冷媒配管L8から冷媒配管L2に戻される。このように、第2過熱回路30を通過してから圧縮機10に吸入される冷媒は、第2過熱熱交換器21において過熱される。
【0044】
[冷凍装置1の効果]
以上説明したように、冷凍装置1は第1過熱回路20と第2過熱回路30を備え、冷房運転時には第1過熱回路20を用いて冷媒を過熱してから、また、暖房運転時には第2過熱回路30を用いて冷媒を過熱してから、圧縮機10に吸入させる。したがって、高圧のガス温度が低くなる傾向にあるHFO冷媒を用いても、圧縮機10に吸入される冷媒が湿り状態になるのを防ぎ、液圧縮による圧縮機10の信頼性を損なうのを防止することができる。
【0045】
冷凍装置1は、冷房運転時に適用される第1過熱回路20が高温の冷媒が流れる室外熱交換器13からの放熱される熱との間で熱交換させる。したがって、第1過熱回路20を流れる冷媒(過熱対象冷媒)と室外熱交換器13を流れる冷媒の温度差を大きくすることができるので、過熱対象冷媒を過熱する程度を大きくすることができる。また、冷房運転時において、室内熱交換器16を用いて冷媒を過熱させることがないので、室内熱交換器16の性能を落とすおそれがない。このことは、暖房運転時に適用される第2過熱回路30についても同様である。
これに対して引用文献1の過熱機構は、冷房運転時の室外熱交換器13を通過して液化された冷媒と過熱対象冷媒を熱交換させるものであるから、両者の温度差は小さいために、本実施形態に比べると、過熱対象冷媒を過熱する程度が小さい。
【0046】
冷凍装置1は、四方弁18を用いて冷媒を逆向きにして流すことにより、冷房と暖房を選択的に運転できるが、冷房運転時に対応する第1過熱回路20と暖房運転時に対応する第2過熱回路30を設けている。したがって、圧縮機10は、冷房運転及び暖房運転のいずれであっても、HFO冷媒を用いると生じやすい液圧縮を避けることができる。
【0047】
また、冷凍装置1は、温度センサSによる冷媒の吐出温度の検出結果に基づいて、通常運転と過熱運転を切り替えることができる。したがって、常に過熱運転を行うのに対して、熱負荷に応じた運転制御が可能という利点がある。つまり、常に過熱運転を行って熱負荷が高いと過度な過熱運転となり、冷凍機油の劣化が生たり、最悪の場合には圧縮機10の駆動源である電動機が過熱する恐れがある。これに対して、熱負荷に応じて運転を切り換えることで、上記のような問題を防ぐことができる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る冷凍装置2ついて、
図5〜
図7を参照して説明する。
冷凍装置2は冷房専用の装置であり、冷房運転と暖房運転を切り替えるための四方弁18を備えていないことを除くと、冷凍装置1と基本的な構成は一致する。したがって、冷凍装置1と同様の構成要素には冷凍装置1と同じ符号を付けるとともに、以下では、冷凍装置1との相違点を中心に説明する。
【0049】
[構成]
冷凍装置2における主回路の構成について、
図5を参照して説明する。
圧縮機10には、冷媒の吐出側に冷媒配管L2の一端が接続されており、冷媒配管L2の他端は、室外熱交換器13に接続されている。
室外熱交換器13には、冷媒配管L3の一端が接続されている。冷媒配管L3の他端は、室内熱交換器16に接続されている。冷媒配管L3には、膨張弁15が設けられており、冷媒配管L3を通過する冷媒を断熱膨張させる。
室内熱交換器16には、冷媒配管L4の一端が接続されており、冷媒配管L4の他端は、圧縮機10の吸入側に接続されている。
【0050】
以上の回路構成を備える冷凍装置2は、冷房運転の際に、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒(気体)は、冷媒配管L1、室外熱交換器13、冷媒配管L3、室内熱交換器16及び冷媒配管L4の順に通過して、圧縮機10に吸入される。ただし、以下説明する第3過熱回路40が動作する場合には、冷媒の流れの一部が変更される。
なお、冷凍装置2は冷房専用であるから、冷凍装置1が備える第2過熱回路30に対応する冷媒の循環回路を備えていない。
【0051】
第3過熱回路40は、第3過熱熱交換器41と、一端が第3過熱熱交換器41に繋がり、他端が冷媒配管L4に繋がる冷媒配管L15と、一端が第3過熱熱交換器41に繋がり、他端が冷媒配管L4に繋がる冷媒配管L16と、を備え、冷媒配管L4、冷媒配管L15、第3過熱熱交換器41及び冷媒配管L16により、冷媒の循環回路が構成される。
【0052】
第3過熱熱交換器41は、第1過熱熱交換器21と同様に機能する部材であり、室外熱交換器13に近接して設けれ、冷媒が通過する過程で室外熱交換器13を流れる冷媒との間で熱交換することにより、圧縮機10に吸入される冷媒を過熱する。
【0053】
第3過熱回路40は、冷媒配管L4上であって、冷媒配管L15と冷媒配管L4の接続部位と冷媒配管L16と冷媒配管L4の接続部位との間に開閉弁V11を、また、冷媒配管L5上に開閉弁V12を備える。第3過熱回路40は、また、冷媒配管L16上に逆止弁V15を備える。逆止弁V15は、第3過熱熱交換器41から冷媒配管L4に向けた冷媒の流れを許容するが、この逆、つまり冷媒配管L4から第3過熱熱交換器41に向けた冷媒の流れを阻止する。
第3過熱回路40は、開閉弁V11及び開閉弁V12の開閉を制御することにより、冷媒を循環回路に引き込み第3過熱熱交換器41にて過熱する過熱運転と、冷媒を循環回路に引き込まない通常運転と、のいずれかが選択的に行われる。
なお、
図5において示す、冷媒配管L15と冷媒配管L16の冷媒配管L4に対する接続位置は一例であり、圧縮機10に近接する位置にて冷媒配管L15と冷媒配管L16を冷媒配管L4に接続することができる。
【0054】
第3過熱熱交換器41は室外熱交換器13と熱交換が可能なように、室外熱交換器13に近接して配置する。具体的には、
図7(a)に示すように室外ファン14による室外空気の送風の向きAを基準にして、室外熱交換器13より下流側、又は、
図7(b)に示すように、室外熱交換器13より上流側に第3過熱熱交換器41を配置できる。下流側及び上流側のいずれであっても、第3過熱熱交換器41を通る冷媒を過熱することができる。
第3過熱熱交換器41は、
図7に示すように、例えば銅製の冷媒配管を蛇行させた形態を有しているだけで、冷却フィンを備えていないが、この形態であっても、過熱するのに必要な熱を室外熱交換器13から得る熱交換器として機能する。つまり、本発明において、機能として熱交換をし得る部材を広く熱交換器として用いることができる。なお、第3過熱熱交換器41は、冷却フィンを備えていないので、低コスト化に寄与する。これに対して冷却フィンを備える第1過熱熱交換器21及び第2過熱熱交換器31は、第3過熱熱交換器41よりも熱交換量を大きくできる。
【0055】
[冷凍装置2の動作]
次に、冷凍装置2の動作について、
図6を参照して説明する。
冷凍装置2は、冷房運転を行いながら、第3過熱回路40を動作させることにより、冷媒を過熱することができる。
【0056】
冷凍装置2の冷房運転においても、冷媒を循環回路に引き込まない通常運転(
図6(a))と、第3過熱回路40の循環回路に冷媒を引き込む過熱運転(
図6(b))と、があるので、以下この順に説明する。なお、第1実施形態と同様に、コントローラ50が温度センサSにより検知した冷媒の温度Tと閾値温度T
Rの比較結果に基づいて、通常運転から過熱運転への切り替え、過熱運転から通常運転への切り替えを行う。
【0057】
[通常運転:
図6(a)]
冷凍装置2は、通常運転を行う際の開閉弁V11,V12の開(ON)・閉(OFF)は以下の通りである。
V11:開(ON) V12:閉(OFF)
【0058】
さて、圧縮機10の運転が行われると、圧縮機10で圧縮された高温高圧(気体)の冷媒は冷媒配管L2に吐出され、室外熱交換器13に流入し、室外ファン14により送風される室外空気へ放熱して凝縮する。
室外熱交換器13で凝縮して生成された常温高圧の冷媒(液体)は、室外熱交換器13から冷媒配管L3を流れる過程で膨張弁15により減圧されて、低温低圧の気液二相状態となり、室内熱交換器16に向けて流れる。
室内熱交換器16に流入した冷媒は、室内空気から吸熱して蒸発する。室内ファン17の動作により室内熱交換器16を通過する室内空気は、冷却されて室内へ供給される。
室内熱交換器16で蒸発して低温低圧とされた冷媒(気体)は、冷媒配管L4を通ってから圧縮機10に吸入され、圧縮機10により高温高圧にされた後に、冷媒配管L2に吐出される。このとき、開閉弁V12が閉じられ、かつ、逆止弁V15が設けられているために、冷媒は第3過熱回路40に流入できない。
冷凍装置2は、以上のサイクルが繰り返される間、室内の冷房が実現される。
【0059】
[過熱運転:
図6(b)]
次に、過熱運転について、
図6(b)を参照して説明する。
過熱運転の際にも圧縮機10から高温高圧の冷媒が吐出され、室外熱交換器13、膨張弁15及び室内熱交換器16を通過した後に圧縮機10に吸入されるという基本的な冷媒の流れは変わらないので、以下では、通常運転との相違点を中心に説明する。
【0060】
はじめに、第3過熱回路40の開閉弁V11,V12の開(ON)・閉(OFF)の状態は、以下の通りである。
V11:開(ON) V12:閉(OFF)
【0061】
室内熱交換器16を通過した低温低圧の冷媒(気体)は、開閉弁V11が閉じているとともに開閉弁V12が開いているので、開閉弁V11の手前で冷媒配管L15に流入し、第3過熱熱交換器41を通過してから冷媒配管L16を流れる。冷媒配管L16に設けられる逆止弁V15はこの冷媒の流れに対して順方向を向いているので、逆止弁V15を通過してから冷媒配管L4に流入し、圧縮機10に吸入される。
【0062】
第3過熱回路40を以上の順番で流れる冷媒は、第3過熱熱交換器41を通過する際に、室内熱交換器16を流れる高温高圧の冷媒との間の熱交換により過熱されてから、冷媒配管L16を通り冷媒配管L4に戻される。このように、第3過熱回路40を通過してから圧縮機10に吸入される冷媒は、第3過熱熱交換器41において過熱される。
【0063】
[冷凍装置2の効果]
以上説明したように、冷凍装置2は第3過熱回路40を備え、冷房運転時に第3過熱回路40を用いて冷媒を過熱してから、圧縮機10に吸入させる。したがって、高圧のガス温度が低くなる傾向にあるHFO冷媒を用いても、圧縮機10に吸入される冷媒が湿り状態になるのを防ぎ、液圧縮による圧縮機10の信頼性を損なうのを防止することができる。
【0064】
冷凍装置2は、第3過熱回路40が高温の冷媒が流れる室外熱交換器13からの放熱される熱との間で熱交換させる。したがって、冷凍装置1と同様に、過熱対象冷媒を過熱する程度を大きくすることができるとともに、室内熱交換器16の性能を落とすおそれがない。
【0065】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
上記実施形態は、冷媒の状態を検出するのに、冷媒配管L1に付設された温度センサSを用いたが、本発明はこれに限定されない。検出する対象は温度に限らず、例えば冷媒の圧力を検出することによって冷媒の状態を知ることができるし、検出の位置も圧縮機10の吐出側に限らず、吸入側で検出することもできる。