(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の前記油水分離体および/または請求項2に記載の前記油水分離体は、有機結合剤、無機結合剤の少なくとも一方、または両方によって前記袋体および/または前記排水ネットに結合されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の土のう。
前記袋体及び前記排水ネットはそれぞれさらに、その側端部に、他の土のうの袋体及び排水ネットのそれぞれの側端部同士を連結するための連結部を備えることを特徴とする請求項2ないし5いずれか一項記載の土のう。
地面または床面の袋体から離れた位置に一端を設置可能であって、転倒を防止するために前記排水ネットに取り付けられた支持棒をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし6いずれか一項記載の土のう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態である土のう及びそれを用いた油拡散防止方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
<第一実施形態>
図1(a)は、第一実施形態における土のうの概略構成を示す正面図である。図(b)は、
図1(a)に示した土のうの断面図である。また、
図2は、土のうを構成する袋体を示す要部拡大模式図である。
本実施形態の土のう10は、親水撥油性を有する油水分離体を備えた袋体11と、該袋体内に充填された重し12とを備えている。また、袋体11の少なくとも外表面11aには、油水分離体14が形成されている。
【0022】
袋体11は、少なくとも水分が通過可能な流路を備えた材料からなるものである。例えば、織布、編布、不織布など、シート状の繊維質基材や高分子多孔質基材などからなり、具体例としては、天然繊維、有機高分子、ガラス繊維などが挙げられる。本実施形態では、袋体11として、ポリプロピレン多孔質体からなる不織布シートを用いている。なお、袋体11のより詳細な具体例は後述する。
【0023】
重し12は、使用時に地面(又は床面)Fに敷設した土のうが移動するのを防止する程度の重さになる材料であればよい。例えば、通常用いられる土砂等の他、水分を吸水して保持可能な吸水性材料でもよい。吸水性材料としては、吸水性高分子や、多孔質表面が水分子を吸着しやすい性質を利用した物理的吸水材料など、各種吸水材料を用いることができる。重し12の性状は、袋体11から外部に流出しない程度の粒径をもつ粒状体、粉末、ゲル状物質などであればよい。なお、重し12のより詳細な具体例は後述する。
【0024】
図2に模式的に示すように、袋体11には、例えば、水分が通過可能な流路17が形成されている。こうした流路17は、袋体11を構成するシート状の繊維質基材や高分子多孔質基材の空孔(細孔、空洞、連通孔)からなる。流路17は、袋状の袋体11の外表面11aと内面11bとの間を連通し、水分を通過させる。袋体11の内面11b側に達した水分は、吸水性材料からなる重しを用いた場合は重しに吸収される。
【0025】
袋体11の少なくとも外表面11aの表面(表層)には、油水分離体14が形成されている。本実施形態では、流路17の内壁表面を含む袋体11の外表面11aおよび内面11b全体に油水分離体14が形成されている。
なお、油水分離体14は、油水分離体14が袋体11の表面に層状を成すように形成されていればよく、更に、袋体11の厚み方向の内側まで油水分離体14が含浸されていてもよい。
【0026】
油水分離体14は、撥油性
賦与基および親水性
賦与基を有するフッ素系化合物を含む材料から構成されている。撥油性
賦与基は、油水分離体14の表面に例えば40°以上の接触角で油滴を形成させる官能基である。また、親水性
賦与基は、油水分離体14の表面に例えば20°以下の接触角で水分に対する濡れ性を付与する官能基である。
なお、こうした接触角は、例えば、自動接触角計(協和界面科学社製、「Drop Master 701」)により測定することができる。
【0027】
油水分離体14は、こうした撥油性
賦与基および親水性
賦与基の存在によって、袋体11に親水撥油性を付与する。この油水分離体14が形成された袋体11に、水分を含む油が接触すると、油分は接触角の大きい油滴となり、水分は接触角が小さい濡れ性を保ったままとなる。これによって、濡れ性を保った水分は油水分離体14に接触した状態で流路17を通過することができる。こうした作用によって、油水分離体14は、油中の水分だけを選択的に分離して通過させることができるのみならず、透水速度を高めることができる。
【0028】
油水分離体14を構成するフッ素系化合物としては、例えば、下記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物のうち、少なくとも一種又は二種以上を含む。
【0033】
ここで、上記式(1)及び(2)中、Rf
1、Rf
2は、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、Rf
3は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0034】
また、上記式(3)及び(4)中、Rf
4、Rf
5は、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基、Rf
6は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF
2基又はCF基である。また、Zが窒素原子又は炭素原子の場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
【0035】
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基であり、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0036】
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
【0037】
上述したように、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物は、分子中に撥油性賦与基と親水性賦与基とを含む親水撥油剤である。換言すると、本実施形態の土のう10を構成する油水分離体14は、流路17が袋体11によって形成されるとともに、袋体11の外表面11aや流路17の表面に親水撥油性の油水分離体14が存在するものである。また、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上のフッ素系化合物を含む混合物を、油水分離体14として用いてもよい。
以下、油水分離体14を構成する親水撥油剤について、フッ素系化合物ごとに詳細に説明する。
【0038】
(親水撥油剤)
「直鎖状の含窒素フッ素系化合物」
上記式(1)又は上記式(2)に示す、直鎖状(又は分岐状)の含窒素フッ素系化合物では、Rf
1とRf
2からなる含窒素ペルフルオロアルキル基およびRf
3からなる含窒素ペルフルオロアルキレン基が、撥油性賦与基を構成する。
また、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性賦与基であるRf
1〜Rf
3中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
【0039】
なお、上記式(2)中、Rは、分子鎖中において撥油性賦与基と親水性賦与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、直鎖状又は分岐状の、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0040】
具体的には、例えば、連結基Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であってもよいし、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。
【0041】
また、連結基Rは、分子鎖中に、二元共重合体又は三元共重合体以上のポリマーを有していてもよい。
【0042】
なお、連結基Rは、親水撥油剤に賦与したい特性に応じて、適宜選択して導入することが好ましい。具体的には、例えば、水や有機溶媒への溶解性を調整したい場合、親水撥油剤を含む表面被覆材(コーティング剤)と基材との密着性を改善して耐久性を向上させたい場合、親水撥油剤と樹脂成分又は塗料成分との相溶性を向上させたい場合等が挙げられる。その方法としては、分子間相互作用に影響を及ぼす極性基の有無や種類を調整する、直鎖状又は分岐構造とした炭化水素基の鎖長を調整する、基材や樹脂成分又は塗料成分に含まれる化学構造の一部と類似の構造を導入する、などがある。
【0043】
また、上記式(1)又は上記式(2)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
以下、親水性賦与基Xを場合分けして、親水撥油剤の構造を説明する。
【0044】
[アニオン型]
親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO
2M
1」、「−SO
3M
1」、「−OSO
2M
1」、「−OP(OH)O
2M
1」、「−OPO
3M
12」又は「=O
2PO
2M
1」(M
1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R
1R
2R
3R
4N
+;R
1〜R
4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
【0045】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
【0046】
また、第4級アンモニウム塩(R
1R
2R
3R
4N
+)としては、R
1〜R
4が水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。より具体的には、R
1R
2R
3R
4が全て同じ化合物としては、例えば、(CH
3)
4N
+、(C
2H
5)
4N
+、(C
3H
7)
4N
+、(C
4H
9)
4N
+、(C
5H
11)
4N
+、(C
6H
13)
4N
+、(C
7H
15)
4N
+、(C
8H
17)
4N
+、(C
9H
19)
4N
+、(C
10H
21)
4N
+等が挙げられる。また、R
1R
2R
3が全てメチル基の場合としては、例えば、R
4が(C
2H
5)、(C
6H
13)、(C
8H
17)、(C
9H
19)、(C
10H
21)、(C
12H
25)、(C
14H
29)、(C
16H
33)、(C
18H
37)等の化合物が挙げられる。さらに、R
1R
2が全てメチル基の場合としては、例えば、R
3R
4が全て(C
8H
17)、(C
10H
21)、(C
12H
25)、(C
14H
29)、(C
16H
33)、(C
18H
37)等の化合物が挙げられる。更にまた、R
1がメチル基の場合としては、例えば、R
2R
3R
4が全て(C
4H
9)、(C
8H
17)等の化合物が挙げられる。
【0047】
ところで、土のう10が長期間使用される場合には、特に袋体11が油に対する耐久性や吸水撥油効果の持続性を有することが望まれる。こうした観点から、本実施形態の油水分離体14を構成する親水撥油剤は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、本実施形態の油水分離体14を構成する親水撥油剤は、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記M
1が、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
【0048】
[カチオン型]
親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N
+R
5R
6R
7・Cl
−」、「−N
+R
5R
6R
7・Br
−」、「−N
+R
5R
6R
7・I
−」、「−N
+R
5R
6R
7・CH
3SO
3−」、「−N
+R
5R
6R
7・NO
3−」、「(−N
+R
5R
6R
7)
2CO
32−」又は「(−N
+R
5R
6R
7)
2SO
42−」(R
5〜R
7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
【0049】
[両性型]
親水性賦与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N
+R
8R
9(CH
2)
nCO
2−」、スルホベタイン型の「−N
+R
8R
9(CH
2)
nSO
3−」又はアミンオキシド型の「−N
+R
8R
9O
−」(nは1〜5の整数、R
8、R
9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
【0050】
なお、本実施形態における油水分離体14を構成する親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した含窒素フッ素系化合物の構造の具体例においては、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基として、式(1)及び式(2)中に示すRf
1及びRf
2が対称である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、非対称であってもよい。
【0051】
「環状の含窒素フッ素系化合物」
上記式(3)又は上記式(4)に示す、環状の含窒素フッ素系化合物では、Rf
4、Rf
5およびRf
6からなる含窒素ペルフルオロアルキレン基、さらにはZが、撥油性賦与基を構成する。
また、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性賦与基であるRf
4〜Rf
6及びZ中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
【0052】
なお、上記式(4)中、Rは、分子鎖中において撥油性賦与基と親水性賦与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、直鎖状又は分岐状の、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0053】
具体的には、例えば、連結基Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であってもよいし、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。
【0054】
また、連結基Rは、分子鎖中に、二元共重合体又は三元共重合体以上のポリマーを有していてもよい。
【0055】
また、上記式(3)又は上記式(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
以下、親水性賦与基Xを場合分けして、親水撥油剤の構造を説明する。
【0056】
[アニオン型]
親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO
2M
1」、「−SO
3M
1」、「−OSO
2M
1」、「−OP(OH)O
2M
1」、「−OPO
3M
12」又は「=O
2PO
2M
1」(M
1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R
1R
2R
3R
4N
+;R
1〜R
4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
【0057】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
【0058】
また、第4級アンモニウム塩(R
1R
2R
3R
4N
+)としては、R
1〜R
4が水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。より具体的には、R
1R
2R
3R
4が全て同じ化合物としては、例えば、(CH
3)
4N
+、(C
2H
5)
4N
+、(C
3H
7)
4N
+、(C
4H
9)
4N
+、(C
5H
11)
4N
+、(C
6H
13)
4N
+、(C
7H
15)
4N
+、(C
8H
17)
4N
+、(C
9H
19)
4N
+、(C
10H
21)
4N
+等が挙げられる。また、R
1R
2R
3が全てメチル基の場合としては、例えば、R
4が(C
2H
5)、(C
6H
13)、(C
8H
17)、(C
9H
19)、(C
10H
21)、(C
12H
25)、(C
14H
29)、(C
16H
33)、(C
18H
37)等の化合物が挙げられる。さらに、R
1R
2が全てメチル基の場合としては、例えば、R
3R
4が全て(C
8H
17)、(C
10H
21)、(C
12H
25)、(C
14H
29)、(C
16H
33)、(C
18H
37)等の化合物が挙げられる。更にまた、R
1がメチル基の場合としては、例えば、R
2R
3R
4が全て(C
4H
9)、(C
8H
17)等の化合物が挙げられる。
【0059】
なお、本実施形態のように、土のう10が長期間使用される場合には、特に袋体11が油に対する耐久性や吸水撥油効果の持続性を有することが望まれる。こうした観点から、本実施形態の油水分離体14を構成する親水撥油剤は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、本実施形態の油水分離体14を構成する親水撥油剤は、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記M
1が、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
【0060】
[カチオン型]
親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N
+R
5R
6R
7・Cl
−」、「−N
+R
5R
6R
7・Br
−」、「−N
+R
5R
6R
7・I
−」、「−N
+R
5R
6R
7・CH
3SO
3−」、「−N
+R
5R
6R
7・NO
3−」、「(−N
+R
5R
6R
7)
2CO
32−」又は「(−N
+R
5R
6R
7)
2SO
42−」(R
5〜R
7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
【0061】
[両性型]
親水性賦与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N
+R
8R
9(CH
2)
nCO
2−」、スルホベタイン型の「−N
+R
8R
9(CH
2)
nSO
3−」又はアミンオキシド型の「−N
+R
8R
9O
−」(nは1〜5の整数、R
8、R
9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
【0062】
なお、本実施形態の土のう10を構成する油水分離体14に用いる親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した含窒素フッ素系化合物の構造の具体例においては、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基として、式(3)及び式(4)中に示すRf
4及びRf
5がZを挟んで対称である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、非対称であってもよい。
【0063】
なお、油水分離体14には、更にフッ素樹脂粒子を含有させることも好ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE, CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられる。
これらフッ素樹脂粒子を油水分離体14に含有させることによって、油水分離体14の撥油性を長期間維持することができる。
【0064】
(結合剤)
本実施形態における油水分離体14は、袋体11に上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)が単独または結合剤と複合化されたものである。換言すると、袋体11に油水分離体14を構成する上記フッ素系化合物(親水撥油剤)が存在するものである。また、本実施形態の土のう10において、分離対象である液体によって上記フッ素系化合物が流失しないために、袋体11に当該フッ素系化合物が油水分離体14として固着されている。
【0065】
具体的には、本実施形態の土のう10は、袋体11の表面の一部又は全部が、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)を含む塗膜(塗布膜)、あるいは上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物と結合剤とを含む塗膜(塗布膜)によって被覆されていてもよい。
【0066】
塗膜(塗布膜)は、上述したフッ素系化合物(親水撥油剤)のみからなる場合と、結合剤を含む場合とがある。結合剤を含む場合は、親水撥油剤と結合剤との質量組成比は、10対90から99.9対0.1の範囲であることが好ましい。ここで、親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、十分な親水撥油性が得られないために好ましくない。袋体11との密着性や塗布膜の耐久性を加味すると、10対90から90対10が特に好ましい。
【0067】
結合剤としては、具体的には、例えば、有機結合剤(樹脂)や無機結合剤(無機ガラス)が挙げられる。有機結合剤(樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等があり、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂や熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0068】
油水分離体14がもつ親水撥油性の特性を最大限に発揮させるためには、結合剤を用いることが望ましい。結合剤としては、親水性ポリマーを用いることが好ましい。また、親水性ポリマーとしては、ヒドロキシル基を含有しているものが好ましい。
【0069】
親水性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロースなどの多糖およびその誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。親水性ポリマーは、架橋剤により架橋してもよい。このような架橋により、塗膜の耐久性が向上する。
【0070】
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、紫外線架橋型化合物、脱離基含有化合物、カルボン酸化合物、ウレア化合物などが挙げられる。
【0071】
無機結合剤(無機ガラス)としては、具体的には、例えば、化学式[R
14Si(OR
15)
3]で示されるトリアルコキシシラン、化学式[Si(OR
16)
4](R
14〜R
16はそれぞれ独立した炭素数1〜6までのアルキル基)で示されるテトラアルコキシシラン等のシラン化合物や、水ガラス等が挙げられる。これらの中でも、水ガラスは、耐久性の向上効果が高いために好ましい。
【0072】
(袋体)
本実施形態の土のう10を構成する袋体11において、分離された水を通過させる液体の流路17は、袋体11に形成されている。具体的には、袋体11の流路17は、袋体11を構成する繊維における繊維どうしの空間や、袋体11を構成する多孔質体の空孔が水分の流路17となる。
【0073】
袋体11は、その周縁部が糸などの紐状体を用いた縫製、耐油性の接着剤による接着、あるいは熱融着などによって閉じられていることが好ましい。紐状体は、撥油性を有する材質であること、または撥油処理された材質であることが好ましい。また、この結合箇所は撥油性の部材で目張りされていることが好ましい。
【0074】
袋体11の材質としては、分離対象である液体の流路17を形成可能な繊維や多孔質体であれば特に限定されるものではなく、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。更には有機物と無機物との複合物であってもよい。したがって、本実施形態の土のう10における袋体11の態様としては、繊維状や多孔質の有機物、あるいは繊維状や多孔質の無機物が挙げられる。
ポリプロピレン多孔質体(例えば不織布)やフッ素樹脂多孔質体などの、油を通すが水を弾く部材を親水撥油処理することにより、水を通過させることが可能になるため、油を堰き止める用途に使用できる。特に、耐薬品性に優れるフッ素樹脂の多孔質膜についても、親水処理することにより水は通過させて油は弾くため、油拡散防止用途に、使用が可能になる。
【0075】
ここで、袋体11として利用可能な有機物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、セルロース製のろ紙、ろ布(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド等)、不織布フィルタ(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド等)、繊維フィルタ(樹脂、ガラス、セラミックス、金属)などのシート体を袋状にしたものが挙げられる。
【0076】
これら袋体11において、流路17の幅(すなわち、繊維の平均間隔や多孔質の空洞の平均幅)は、例えば、0.1〜150μmであることが好ましく、0.5〜75μmであることがより好ましく、1〜50μmであることがさらに好ましい。ここで、流路17の幅が0.1μm未満であると、水(水分)の透過抵抗が大きくなり、透過に時間が必要となる場合があるために好ましくない。一方、流路17の幅が150μmを超えると、油(油分)が通過し始めるために好ましくない。これに対して、流路17の幅が上記範囲内であると、油の透過が起こらず、実用上適した範囲の通水速度となるために好ましい。なお、袋体11に形成された流路17は、必ずしも油分を全く通過させない構成に限定されるものではなく、水分を主体的に通過させ、油分も一定割合で通過可能な幅のものも含む。
【0077】
油水分離体14は、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)を上述した袋体11に担持させる。
フッ素系化合物を多孔質体などの袋体11に担持させる方法としては、上記フッ素系化合物(親水撥油剤)の溶解液または分散液に、担持させる袋体11を浸漬、あるいは前記溶解液または分散液を担持させる袋体11にスプレーコートし、乾燥により溶媒を除去する手法などが適用可能である。担持する割合としては、親水撥油剤と担持する多孔質体との質量組成比を1対99から50対50の範囲から選択するのが、親水撥油性の特性面で好ましい。
【0078】
また、本実施形態の土のう10における袋体11としては、上述した有機物(樹脂)と上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)のうち、一種又は二種以上とを含む樹脂組成物によって、繊維状に形成された袋体11とした態様であってもよい。すなわち、上述した親水撥油剤は、各種樹脂に親水撥油性の機能を付与するための添加剤として用いられている。
【0079】
樹脂組成物において、親水撥油剤と樹脂との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲であることが好ましい。親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、親水撥油機能を十分に発揮することができないために好ましくない。一方、親水撥油剤の質量組成比が99.9を超えると、樹脂物性を損ない、成形性を維持することが難しいために好ましくない。
【0080】
樹脂組成物は、親水撥油剤と樹脂とのほかに、流動性改善剤、界面活性剤、難燃剤、導電付与剤、防カビ剤等の親水撥油以外の機能を付与するために添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
【0081】
また、本実施形態の土のう10における袋体11としては、上述した有機物(樹脂)と上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)のうち、一種又は二種以上とを含む樹脂組成物によって、繊維状に形成された態様であってもよい。すなわち、上述した親水撥油剤は、各種樹脂に親水撥油性の機能を付与するための添加剤として用いられている。
【0082】
樹脂組成物において、親水撥油剤と樹脂との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲であることが好ましい。親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、親水撥油機能を十分に発揮することができないために好ましくない。一方、親水撥油剤の質量組成比が99.9を超えると、樹脂物性を損ない、成形性を維持することが難しいために好ましくない。
【0083】
樹脂組成物は、親水撥油剤と樹脂とのほかに、流動性改善剤、界面活性剤、難燃剤、導電付与剤、防カビ剤等の親水撥油以外の機能を付与するために添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
【0084】
(重し)
本実施形態の土のう10を構成する重し12は、通常用いられる土砂等の他、吸水性高分子や無機系吸水材を用いることができる。水よりも比重が大きい物質を好適に用いることができる。水よりも比重が大きい物質を用いることで地面や床等に配置した場合、土のうを安定して設置させることが可能となる。また、異なる種類の材料を組み合わせて重しとして用いてもよい。例えば、砂と吸水性高分子とを重しとして用いてもよい。
水よりも比重が大きい物質としては密度1.2以上、特に密度が2以上の物質が好ましい。具体的には、マンガン砂(密度2.5〜2.7g/cm
3)、ガーネット(密度3.8〜4.1g/cm
3)、酸化第二鉄分(密度5.2g/cm
3)などが挙げられる。
吸水性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸の架橋タイプ、ポリスルホン酸塩、無水マレイン酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、澱粉やセルロースなどのような多糖類が使用できる。特に、吸水性の面から架橋ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。吸水性高分子の好ましい具体例としては、「アクアリックCA」(商品名:株式会社日本触媒製)、耐塩性を持つ「アクアリックCS」(商品名:株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
無機系吸水材としては、シリカゲル、モレキュラーシーブスなどを挙げることができる。
【0085】
重し12の形状には特に制限はない。例えば、球形や角形を成す粒状や、繊維状であってもよく、直径が50〜1500μm程度、より好ましくは100〜850μm程度であればよい。
吸水材は、吸水した状態において、全体の比重が1.0以上となるようなものを用いることが好ましい。これによって、例えば比重が1以下の油中に土のう10を配置した際に、土のう10が油面に浮上することを防止できる。
【0086】
<第二実施形態>
図3(a)、第二実施形態における土のうの概略構成を示す正面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示した土のうの断面図である。 本実施形態の土のう20は、親水撥油性を有する油水分離体を備えた袋体11と、該袋体内に充填された重し12と、袋体の一の端部11cから延び、親水撥油性を有する油水分離体を備えた排水ネット21と、転倒を防止するために排水ネット21に取り付けられた支持棒23と備えている。また、排水ネット21の少なくとも外表面には、袋体11と同様に、油水分離体14が形成されている。
【0087】
排水ネット21は、少なくとも水分が通過可能な流路を備えた材料からなるものであり、袋体11と同様な材料を用いることができる。
本実施形態の排水ネット21はその端部21cが、袋体11の地面もしくは床面の反対側の端部11cに取り付けられた構成である。排水ネット21は、袋体11と同じ材料からなってもよいし、異なる材料からなってもよい。本実施形態の排水ネット21は、排水ネットと袋体とは別体のものであるが、排水ネットと袋体とが一体の構成であってもよい。
排水ネット21の袋体11への取り付けは、糸などの紐状体を用いた縫製、耐油性の接着剤による接着、あるいは熱融着などによって行うことができる。排水ネット21の袋体11の結合箇所は、撥油性の部材で目張りされていることが好ましい。
【0088】
排水ネット21には、袋体11と同様に、
図2に示すような、例えば、水分が通過可能な流路17が形成されている。こうした流路は、排水ネット21を構成するシート状の繊維質基材や高分子多孔質基材の空孔(細孔、空洞、連通孔)からなる。流路は、袋状の排水ネット21の外表面と内面との間を連通し、水分を通過させる。排水ネット21の反対側に達した水分は、そのまま抜けていくことができる。
【0089】
排水ネット21の少なくとも外表面の表面(表層)には、袋体11と同様に、
図2に示すような、油水分離体14が形成されている。
油水分離体14は、撥油性
賦与基および親水性
賦与基を有するフッ素系化合物を含む材料から構成されており、この点も袋体11と同様であるから、ここではその説明を省略する。
【0090】
本実施形態の排水ネット21には、袋体から排水ネットへ向かう方向すなわち、地面または床面から上方に向かって配置するように剛性部材が組み込まれている。剛性部材は一つでも複数でも用いることができる。
この剛性部材を備えることにより、排水ネットを展開したままの状態に保つことができる。
【0091】
剛性部材は例えば、排水ネットの両端を筒状にして、使用の際に筒の中に棒状の剛性部材を差し込み、未使用時には、棒状の剛性部材を抜き取る構成としてもよい。この構成は、排水ネットを折り畳んだり、土のうに排水ネットを巻き付けたりすることができて、コンパクトになるために収納性に優れる。
この剛性部材は例えば、金属や樹脂からなるものを用いることができる。
【0092】
排水ネット21は、その側端部21aに、他の土のうの袋体及び排水ネットのそれぞれの側端部同士を連結するための連結部22を備えることができる。
連結部22を備える構成とすることにより、他の土のうとを間隙をなくして連結することが可能となり、油の漏出防止に有効である。複数連結した土のうを、漏洩箇所の周囲を取り囲むように敷設することにより、簡易の防油堤として油の拡散防止に使用することができる。
【0093】
本実施形態の土のう20では、袋体11もその側端部11dに連結部13を備えており、この連結部13は、排水ネット21の連結部22から連続して形成されている。
袋体11が連結部13を備える構成は例えば、袋体を構成するシート材をその側端部だけ折り曲げて重ね、その重ねた部分を接合することにより連結部を備える領域を設けることができる。
【0094】
連結部22及び連結部13としては、ファスナーまたは面ファスナーを用いることができる。ファスナー式の接合方法とすることにより、排水ネット付き親水撥油土のう同士の連結と分離が容易に行える。面ファスナーとしては例えば、マジックテープ(登録商標:株式会社クラレ製)を挙げることできる。
排水ネット21の両端21a、21aの一方の側にオス、もう一方の側にメスのファスナーまたは面ファスナーを取り付けることにより、連結する土のう同士でオス・メス一対での締結が可能となる。
【0095】
連結部22及び連結部13(例えば、ファスナーまたは面ファスナー)の部材は、撥油性を有する材質であること、または撥油処理された材質であることが好ましい。
【0096】
また、面ファスナーは、簡便性に優れた締結具であり、連結が容易で、敷設時間が短縮できるため、好ましい。また、面ファスナーを用いる場合には、連結される土のうの親水撥油性を有する排水ネット及び袋体の側端部同士が二重に重なっているため、油遮蔽効果が高い。
【0097】
本実施形態の土のう20は、転倒を防止するために排水ネット21に取り付けられた支持棒23をさらに備える。
支持棒23を、地面(または床面)Fの袋体11から離れた位置に一端を設置することで、排水ネットの展開や排水ネットを支える機能が向上する。
本実施形態の支持棒23は丸棒状のものであるが、支持棒23の形状に特に制限はない。
【0098】
支持棒23を、蝶番やネジ止めなどにより剛性体と稼働可能なままで結合してもよい。この構成により、排水ネットの展開や排水ネットを支える機能を保ちつつ、収納時のコンパクト性も併せ持つことができる。
支持棒は一つでもよいし、複数備えてもよい。例えば、排水ネットの両脇に支持棒を備えることにより、さらに設置安定性の向上を図ることができる。
【0099】
(油拡散防止方法)
本発明の油拡散防止方法は、上述した土のうを複数連結して地面または床面に敷設し、油を堰き止めて油の拡散を防止するものである。
【実施例】
【0100】
(合成例1)
「2−[3−[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノプロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド120gを、ジメチルアミノプロピルアミン39gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO
3水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して粗生成物として、(C
4F
9)
2NCF
2CF(CF
3)CONHC
3H
6N(CH
3)
2を64g得た(収率47%)。
【0101】
次いで、得られた(C
4F
9)
2NCF
2CF(CF
3)CONHC
3H
6N(CH
3)
2を8g、エタノール中で撹拌下モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させ、ろ過、濃縮後、ジメチルベタイン体を9g得た(収率99%)。
【0102】
本発明の土のうの効果を検証した。
(実験例1)
ポリプロピレン不織布(目付:20g/m
2、厚さ:0.24mm、平均気孔径:21μm、最大気孔径37μm)を70cm×50cmの長方形に切り取り、親水撥油剤として合成例1にて合成した含窒素フッ素系化合物0.5質量%、ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製 エスレックBL−1)0.5質量%、アエロジル300(日本アエロジル株式会社製)0.5質量%、エタノール98.5質量%に調製した液(表面被覆材)に浸漬処理し、自然乾燥した(乾燥後の増量:0.061g)。
【0103】
内寸法60cm×40cmの木製枠を横にして樹脂製バット上に据え付け、上記親水撥油処理したシートを、中心部の弛みが5cmになるようにして、木枠に固定した。
次に、容量比6対1の水とn−ヘキサデカンの混合液5Lをよくかき混ぜながら、室温・常圧下、約10秒間で親水撥油処理したシート上に注ぎ、シートを混合液で満たした。水がシートを通過し始めてから80秒間で全量の水が排出され、シート上にはn−ヘキサデカンが残った。通過した水を目視観察したところ、n−ヘキサデカン由来の油膜は認められなかった。
【0104】
(比較実験例1)
親水撥油処理をしていない実施例1のポリプロピレン不織布を、実施例1同様にして容量比6対1の水とn−ヘキサデカンの混合液を注いだところ、n−ヘキサデカンは不織布を通過した。
【0105】
実験例1と比較実験例1から、土のうの袋体及び排水ネットのいずれにも使用可能なポリプロピレン不織布を親水撥油処理することにより、油を堰き止め、油の拡散を防止するための土のうの袋体及び排水ネットの材料として、使用できることが確認できた。