(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押付治具は、前記軸部材の周面に雄ネジ部が形成されており、前記移動部材においてハンドルの中心部に前記雄ネジ部に対して係合する雌ネジ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱遮蔽体取付装置。
前記押付治具は、前記ボルト穴へ取り付けられた場合の前記軸部材の延在端部に、当該軸部材を中心とする把持ハンドルが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱遮蔽体取付装置。
前記押付治具は、前記軸部材に対して延在方向に移動可能に装着され、前記移動部材および前記熱遮蔽体に当接される押付環を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱遮蔽体取付装置。
前記熱遮蔽体に貫通して設けられた嵌合穴に挿入し嵌合されると共に、前記炉心槽の外側面に設けられた取付穴に対して挿入し嵌合される位置決ピンを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の熱遮蔽体取付装置。
前記熱遮蔽体を前記炉心槽側に押し付ける工程において、前記熱遮蔽体を前記炉心槽側に押し付けた後、前記熱遮蔽体に設けられた嵌合穴、および前記炉心槽の外側面に設けられた取付穴に対して位置決ピンを挿入し嵌合させることを特徴とする請求項7または8に記載の熱遮蔽体取付方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した加圧水型原子炉は、十分な安全性や信頼性を確保するために各種の構造物などを定期的に検査し、必要に応じて必要箇所を補修したり、炉内構造物を新たに取り替えたりする。炉内構造物を新たに取り替える場合、組み立てられた炉心槽の外側面に熱遮蔽体がボルトで固定される。熱遮蔽体は、炉心槽の円筒形状に沿って円弧状の板体として構成されているため、取り付けにあたって、熱遮蔽体の取付面を炉心槽の外側面に押し付けて、炉心槽の外側面の円弧と、熱遮蔽体の取付面の円弧との当たりを取ってボルトで固定する必要がある。この熱遮蔽体の押し付け作業は、作業員の人手によるものであった。
【0005】
しかしながら、炉心のコーナ部に対向する周方向の45°の位置にそれぞれ設けられる熱遮蔽体は、1つが約700kgのものであって、これを炉心槽に押し付ける作業には複数の作業員を要することになる。また、複数の作業員を要すると押し付け作業において熱遮蔽体と炉心槽との間に手指を挟む事故が発生するおそれがある。また、熱遮蔽体の当たり付け摺り合わせ作業の当たり確認後、熱遮蔽体を取り付ける際の押し付け加減が人手による作業では異なることがあり、当たり状態が変わってしまい、傾向に違いがあれば取り付けし直さなければならない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、安全かつ容易に熱遮蔽体を炉心槽に取り付けることのできる熱遮蔽体取付装置および取付方法並びに炉心槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の熱遮蔽体取付装置は、原子炉容器内に配置される炉心槽の外側面に対して熱遮蔽体を取り付けるための熱遮蔽体取付装置であって、前記熱遮蔽体に貫通して設けられた挿入穴に挿入されると共に、前記炉心槽の外側面に設けられたボルト穴に対して前記炉心槽の外側面から外側に延在して取り付けられる棒状の軸部材と、前記軸部材に対して係合可能に設けられ前記軸部材の延在方向に沿ってスライド移動可能に設けられた移動部材と、を有する押付治具を備えることを特徴とする。
【0008】
この熱遮蔽体取付装置によれば、押付治具の移動部材を軸部材の延在方向に沿ってスライド移動させることで、炉心槽の外側面に取り付けられた軸部材が挿入されている熱遮蔽体を移動部材により炉心槽の外側面に押し付ける。このため、熱遮蔽体を炉心槽に押し付ける作業に多くの作業員を要する必要がなく1人でもよくなる。また、多くの作業員を要することがないため、当該作業員が熱遮蔽体と炉心槽との間に手指を挟む事故の発生を低減することができる。また、熱遮蔽体の当たり付け摺り合わせ作業の当たり確認後、熱遮蔽体を取り付ける際の押し付け加減が前回と同様であるため、当たり状態が大きく変わることはなく、傾向に違いがなくなり取り付けし直す事態を防ぐことができる。この結果、安全かつ容易に熱遮蔽体を炉心槽に取り付けることができる。
【0009】
また、本発明の熱遮蔽体取付装置では、前記押付治具は、前記軸部材の周面に雄ネジ部が形成されており、前記移動部材においてハンドルの中心部に前記雄ネジ部に対して係合する雌ネジ部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この熱遮蔽体取付装置によれば、ハンドルを回転操作することで、移動部材を軸部材の延在方向に沿ってスライド移動させる。この結果、容易に熱遮蔽体を炉心槽に取り付ける効果を顕著に得ることができる。
【0011】
また、本発明の熱遮蔽体取付装置では、前記押付治具は、前記ボルト穴へ取り付けられた場合の前記軸部材の延在端部に、当該軸部材を中心とする把持ハンドルが設けられていることを特徴とする。
【0012】
この熱遮蔽体取付装置によれば、把持ハンドルを回転操作することで、ボルト穴への軸部材の取り付けが容易に行える。この結果、容易に熱遮蔽体を炉心槽に取り付ける効果を顕著に得ることができる。
【0013】
また、本発明の熱遮蔽体取付装置では、前記押付治具は、前記軸部材に対して延在方向に移動可能に装着され、前記移動部材および前記熱遮蔽体に当接される押付環を有することを特徴とする。
【0014】
この熱遮蔽体取付装置によれば、押付環が移動部材と熱遮蔽体との間のスペーサとして機能するため、移動部材が熱遮蔽体に当接する事態を防ぎ、スライド移動方向以外の方向への移動部材の移動による熱遮蔽体への不要な負荷の伝達を回避することができる。
【0015】
また、本発明の熱遮蔽体取付装置では、前記熱遮蔽体側とクレーン側との間に配置され、側部に凹部が形成された吊下治具を備えることを特徴とする。
【0016】
この熱遮蔽体取付装置によれば、凹部により炉心槽の上端のフランジを避けた形態でクレーンにより熱遮蔽体が吊り下げられるため、熱遮蔽体を炉心槽の外側面に添えて吊り下げることができ、熱遮蔽体を炉心槽の外側面に取り付ける作業性を向上することができる。
【0017】
また、本発明の熱遮蔽体取付装置では、前記熱遮蔽体に貫通して設けられた嵌合穴に挿入し嵌合されると共に、前記炉心槽の外側面に設けられた取付穴に対して挿入し嵌合される位置決ピンを備えることを特徴とする。
【0018】
この熱遮蔽体取付装置によれば、熱遮蔽体の嵌合穴および炉心槽の取付穴に挿入し嵌合される位置決ピンにより、熱遮蔽体が炉心槽に位置決めして取り付けられる。この結果、押付治具により熱遮蔽体を炉心槽に押し付けた状態を位置決めすることができ、この位置決めした状態で熱遮蔽体を炉心槽に取り付けることができる。
【0019】
上述の目的を達成するために、本発明の熱遮蔽体取付方法は、原子炉容器内に配置される炉心槽の外側面に対して熱遮蔽体を取り付けるための熱遮蔽体取付方法であって、前記熱遮蔽体に設けられた挿入穴に棒状の軸部材を挿入させ、前記炉心槽の外側面に設けられたボルト穴に対して前記炉心槽の外側面から外側に延在するように前記軸部材を取り付ける工程と、前記軸部材に対して係合して設けた移動部材を前記軸部材の延在方向に沿ってスライド移動させることで前記熱遮蔽体を前記炉心槽側に押し付ける工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
この熱遮蔽体取付方法によれば、押付治具の移動部材を軸部材の延在方向に沿ってスライド移動させることで、炉心槽の外側面に取り付けられた軸部材が挿入されている熱遮蔽体を移動部材により炉心槽の外側面に押し付ける。このため、熱遮蔽体を炉心槽に押し付ける作業に多くの作業員を要する必要がなく1人でもよくなる。また、多くの作業員を要することがないため、当該作業員が熱遮蔽体と炉心槽との間に手指を挟む事故の発生を低減することができる。また、熱遮蔽体の当たり付け摺り合わせ作業の当たり確認後、熱遮蔽体を取り付ける際の押し付け加減が前回と同様であるため、当たり状態が大きく変わることはなく、傾向に違いがなくなり取り付けし直す事態を防ぐことができる。この結果、安全かつ容易に熱遮蔽体を炉心槽に取り付けることができる。
【0021】
また、本発明の熱遮蔽体取付方法では、側部に凹部が形成された吊下治具を前記熱遮蔽体側とクレーン側との間に配置して前記熱遮蔽体を吊り下げて作業を行うことを特徴とする。
【0022】
この熱遮蔽体取付方法によれば、凹部により炉心槽の上端のフランジを避けた形態でクレーンにより熱遮蔽体が吊り下げられるため、熱遮蔽体を炉心槽の外側面に添えて吊り下げることができ、熱遮蔽体を炉心槽の外側面に取り付ける作業性を向上することができる。
【0023】
また、本発明の熱遮蔽体取付方法では、前記熱遮蔽体を前記炉心槽側に押し付ける工程において、前記熱遮蔽体を前記炉心槽側に押し付けた後、前記熱遮蔽体に設けられた嵌合穴に位置決ピンを挿入し嵌合させ、前記炉心槽の外側面に設けられた取付穴に対して前記位置決ピンを挿入し嵌合させることを特徴とする。
【0024】
この熱遮蔽体取付方法によれば、熱遮蔽体の嵌合穴および炉心槽の取付穴に位置決ピンを挿入し嵌合することで、熱遮蔽体が炉心槽に位置決めして取り付けられる。この結果、押付治具により熱遮蔽体を炉心槽に押し付けた状態を位置決めすることができ、この位置決めした状態で熱遮蔽体を炉心槽に取り付けることができる。
【0025】
上述の目的を達成するために、本発明の炉心槽は、熱遮蔽体が位置決ピンにより位置決めされた状態で接続ボルトにより固定されている。
【0026】
この炉心槽によれば、熱遮蔽体が位置決ピンにより位置決めされていることから、当て付けが維持された状態で熱遮蔽体が固定された炉心槽を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、安全かつ容易に熱遮蔽体を炉心槽に取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0030】
原子力発電プラントは、図示しないが、原子炉格納容器内に配置される原子炉および蒸気発生器と、蒸気タービン発電設備とを有している。本実施形態の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0031】
原子炉は、燃料の核分裂により一次冷却水を加熱し、蒸気発生器は、この高温高圧の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換し、高圧の蒸気を生成する。蒸気タービン発電設備は、この蒸気により蒸気タービンを駆動することで発電を行う。一方、蒸気タービンを駆動した蒸気は、復水器で冷却されて復水となり、蒸気発生器に戻される。
【0032】
図1は、加圧水型原子炉の縦断面図である。上述した原子力発電プラントの加圧水型原子炉において、
図1に示すように、原子炉容器101は、圧力容器であって、その内部に燃料集合体120を含む炉内構造物が収容できるように、原子炉容器本体101aに対して原子炉容器蓋101bが複数のスタッドボルト121およびナット122により固定されている。原子炉容器本体101aは、原子炉容器蓋101bを取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡101eにより閉塞された円筒形状をなす。
【0033】
炉内構造物について、原子炉容器本体101aの入口側管台101cおよび出口側管台101dより上方に上部炉心支持板123が配置され、下方の下鏡101eの近傍に下部炉心支持板124が配置される。上部炉心支持板123および下部炉心支持板124は、円板形状で図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板123は、複数の炉心支持ロッド125を介して下方に上部炉心板126が連結されている。上部炉心板126は、図示しない多数の連通孔が形成されている。なお、上部炉心支持板123、および上部炉心支持板123に対して炉心支持ロッド125を介して上部炉心板126が連結された構造物を上部炉心構造物という。
【0034】
また、炉内構造物について、原子炉容器本体101aの内部に、その内壁面と所定の隙間をおいて円筒形状の炉心槽127が配置される。炉心槽127は、下端に下部炉心支持板124が固定される。また、炉心槽127は、その内部下方に下部炉心板128が設けられる。下部炉心板128は、円板形状で図示しない多数の連通孔が形成されており、複数の下部炉心支持柱129を介して下部炉心支持板124に支持される。なお、炉心槽127、および炉心槽127に対して設けられる下部炉心板128、並びに下部炉心支持板124を下部炉心構造物という。そして、この下部炉心構造物の炉心槽127は、上方から上部炉心構造物が挿入され、上端に上部炉心板126が連結される。下部炉心構造物の下部炉心支持板124は、原子炉容器本体101aに固定される。即ち、下部炉心構造物および上部炉心構造物は、下部炉心支持板124を介して原子炉容器本体101aに支持されることとなる。
【0035】
また、炉内構造物について、上部炉心板126と炉心槽127と下部炉心板128とにより炉心130が形成される。炉心130は、多数の燃料集合体120が炉心槽127の内部に配置され、かつ下部炉心板128上に装荷される。また、炉心130は、内部に多数の制御棒135が配置される。この多数の制御棒135は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ136となり、燃料集合体120内に挿入可能に設けられる。上部炉心支持板123は、多数の制御棒クラスタ案内管137が貫通して固定される。
【0036】
原子炉容器101を構成する原子炉容器蓋101bには、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置138が設けられる。制御棒駆動装置138は、原子炉容器蓋101bと一体をなすハウジング139内に収容される。そして、制御棒駆動装置138から下方に延出された制御棒クラスタ駆動軸140が、制御棒クラスタ案内管137内を通って燃料集合体120まで延出され、制御棒クラスタ136を把持可能に設けられる。
【0037】
また、原子炉容器101は、上述した構成により、炉心130に対して、炉心槽127の内部であって、上部炉心板126の上方域に出口側管台101dに連通する上部プレナム142が形成される一方、炉心槽127の外部であって、下部炉心支持板124の下方域に下部プレナム143が形成される。そして、原子炉容器101の内壁と炉心槽127との間に入口側管台101cおよび下部プレナム143に連通するダウンカマー部144が形成される。
【0038】
なお、原子炉容器本体101aは、下鏡101eを貫通する多数の計装管台145が設けられる。各計装管台145は、炉内側の上端部に炉内計装案内管146が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ147が連結される。各炉内計装案内管146は、上端部が下部炉心支持板124に連結される。そして、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されたシンブルチューブ148が、コンジットチューブ147から計装管台145および炉内計装案内管146を通り、下部炉心板128を貫通して燃料集合体120まで挿入可能となる。また、各炉内計装案内管146は、振動を抑制するための上下の連接板150,151が取り付けられる。連接板150,151は、支持柱152を介して下部炉心支持板124に連結される。また、連接板150,151は、ショックアブソーバ153により支持される。ショックアブソーバ153は、下鏡101eの最も底に固定される底板154と下側の連接板151との間に配置される。
【0039】
図2は、加圧水型原子炉における炉心槽の斜視図である。
【0040】
炉心槽127は、
図2に示すように、円筒形状の上部炉心槽127Aと下部炉心槽127Bとが溶接により接合して組み立てられる。上部炉心槽127Aは、その上端に上部炉心構造物の上部炉心支持板123が連結されるフランジ127Aaが形成されている。また、上部炉心槽127Aは、その内部が上部プレナム142とされ、出口側管台101dに通じる出口ノズル127Abが形成されている。一方、下部炉心槽127Bは、その下端に下部炉心支持板124が溶接により接合される。また、下部炉心槽127Bは、その外側面に熱遮蔽体161が本接続ボルト161Aにより固定される。本接続ボルト161Aは、図には明示しないが、例えば、ボルト頭部に溝が形成され、この溝にかしめて嵌合する回り止め部材がボルト頭部と共にねじ込まれ、溝と回り止め部材との相互の嵌合により回り止めされる。熱遮蔽体161は、下部炉心槽127Bの外側面を覆うように、下部炉心槽127Bの円筒形状に沿う円弧状の板体として、例えば、ステンレス鋼により形成され、下部炉心槽127Bと原子炉容器本体101aとの間に配置される。この熱遮蔽体161は、炉心槽127の内側の炉心130に配置される燃料集合体120の放射線に含まれている中性子の一部が炉心槽127の外側に漏出し原子炉容器本体101aに衝突することによる原子炉容器本体101aの劣化を防ぐものである。なお、燃料集合体120は、外形が矩形状であり炉心130において矩形状に基づいて複数配置されるため、中性子の最大の漏洩が炉心130内に配置された複数の燃料集合体120のコーナ部の近傍で生ずることから、熱遮蔽体161は、当該コーナ部に対向する周方向の45°の位置にそれぞれ設けられる。
【0041】
以下、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置および取付方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置および取付方法の説明図である。
【0042】
熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付けるには、
図3に示すように、炉心槽127を原子炉容器101の内部での配置と同様に作業フロアFに立てた状態とする。そして、作業フロアFにおいて炉心槽127の側部であって熱遮蔽体161を取り付ける位置に作業架台10を配置する。作業架台10は、作業フロアF上に載置される基台10Aに、鉛直に支持体10Bが設けられ、この支持体10Bの所望の高さ位置に足場10Cが固定される。足場10Cの高さ位置は調整することができる。また、足場10Cは、複数設けられ、それぞれの作業に適した高さで配置される。
【0043】
熱遮蔽体161は、炉心槽127に取り付けられる形態の上端にアイボルト162が取り付けられ、このアイボルト162を介してクレーン165により吊り下げられた状態で、搬送され、炉心槽127に取り付けられる。クレーン165は、例えば、水平レール165Aに沿って巻上機165Bが移動可能に設けられたもので、巻上機165Bで昇降されるフック165Cに熱遮蔽体161が吊り下げられる。
【0044】
本実施形態では、クレーン165のフック165Cと、熱遮蔽体161のアイボルト162との間に熱遮蔽体取付装置を構成する吊下治具1が配置される。吊下治具1は、上下方向に延在するもので、本体部1Aの上部および下部に固定アーム1B,1Cが一体に延在して設けられている。上部の固定アーム1Bは、クレーン165のフック165Cとチェーン166を介して連結され、下部の固定アーム1Cは、熱遮蔽体161のアイボルト162とチェーン167を介して連結される。この吊下治具1は、本体部1Aの側部に凹部1Aaが形成されている。凹部1Aaは、本体部1Aがコ字形状に屈曲されることで形成される。なお、凹部1Aaは、図には明示しないが、本体部1AがC字形状やく字形状に屈曲されることで形成されてもよい。
【0045】
このように構成された吊下治具1は、クレーン165と熱遮蔽体161との間に設けられ、熱遮蔽体161を吊り下げる際に、炉心槽127(上部炉心槽127A)のフランジ127Aaを凹部1Aaにより避けるように配置される。つまり、炉心槽127は、フランジ127Aaが設けられ、その直下の外側面に熱遮蔽体161が取り付けられるため、クレーン165で熱遮蔽体161を直接吊り下げると、チェーンがフランジ127Aaに干渉し、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に添えて吊り下げることが難しく、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に取り付ける作業性が悪い。
【0046】
この点、本実施形態では、熱遮蔽体161側とクレーン165側との間に配置され、側部に凹部1Aaが形成された吊下治具1を備えた熱遮蔽体取付装置を適用し、側部に凹部1Aaが形成された吊下治具1を熱遮蔽体161側とクレーン165側との間に配置して熱遮蔽体161を吊り下げて作業を行う熱遮蔽体取付方法を実施する。
【0047】
この熱遮蔽体取付装置および取付方法によれば、凹部1Aaにより炉心槽127のフランジ127Aaを避けた形態でクレーン165により熱遮蔽体161が吊り下げられるため、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に添えて吊り下げることができ、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に取り付ける作業性を向上することができる。
【0048】
なお、図には明示しないが、フランジ127Aaよりも下側の位置で、作業架台10に水平レールと吊上機を設けて熱遮蔽体161を吊り下げたり、作業架台10に熱遮蔽体161を支持して水平方向に移動させる移動機構を設けたりしてもよく、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に添えて吊り下げることができ、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に取り付ける作業性を向上することができる。
【0049】
図4は、本発明の実施形態に係る熱遮蔽体取付装置および取付方法により取り付けられる熱遮蔽体の斜視図である。
図5は、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置における押付治具の構成図である。
図6は、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置における仮位置決ピンの構成図である。
図7〜
図9は、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置の押付治具を用いた取付方法の説明図である。
図10は、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置の仮位置決ピンを用いた取付方法の説明図である。
図11は、本実施形態に係る熱遮蔽体取付装置の本位置決ピンを用いた取付方法の説明図である。
【0050】
熱遮蔽体161は、炉心槽127の円筒形状に沿って円弧状の板体として構成されているため、取り付けにあたって、熱遮蔽体161の取付面を炉心槽127の外側面に押し付けて、炉心槽127の外側面の円弧と、熱遮蔽体161の取付面の円弧との当たりを取ってから本接続ボルト161A(
図2参照)で固定する。ここで、熱遮蔽体161は、1つが約700kgのものであって、これを炉心槽127に押し付ける作業には複数の作業員を要することになる。
【0051】
また、熱遮蔽体161は、
図4に示すように、その両側縁に挿入穴161Bが貫通して設けられている。熱遮蔽体161は、挿入穴161Bに本接続ボルト161Aや後述する仮接続ボルト5(
図9参照)が挿入され、当該本接続ボルト161Aや仮接続ボルト5が炉心槽127のボルト穴127Baに締め付けられることで炉心槽127に固定される。また、熱遮蔽体161は、その中央部分であって挿入穴161Bの間の位置に嵌合穴161Cが貫通して設けられている。熱遮蔽体161は、嵌合穴161Cに後述する仮位置決ピン3(
図6および
図10参照)や本位置決ピン4(
図11参照)が挿入し嵌合され、当該仮位置決ピン3や本位置決ピン4が炉心槽127の取付穴127Bdに挿入し嵌合されることで炉心槽127に位置決めされる。
【0052】
本実施形態の熱遮蔽体取付装置および取付方法では、押付治具2が適用される。押付治具2は、
図5に示すように、軸部材2Aと、移動部材2Bと、押付環2Cと、を有する。
【0053】
軸部材2Aは、棒状に形成された長尺体であり、
図7〜
図9に示すように、熱遮蔽体161に貫通して設けられた挿入穴161Bに挿入される。また、軸部材2Aは、その一端にネジ部2Aaが形成され、当該ネジ部2Aaが炉心槽127の外側面に設けられたボルト穴127Baに対して締め付けられて、炉心槽127の外側面から外側に延在して取り付けられる。また、軸部材2Aは、その他端に把持ハンドル2Abが設けられている。把持ハンドル2Abは、軸部材2Aを中心として固定される円形状のもので、この把持ハンドル2Abを作業員が把持して回転操作することで、軸部材2Aのネジ部2Aaを炉心槽127のボルト穴127Baに対して締め付けることができる。なお、熱遮蔽体161に貫通して設けられた挿入穴161Bは、熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付ける本接続ボルト161Aや仮接続ボルト5が挿入されるものを兼用している。また、炉心槽127の外側面に設けられたボルト穴127Baは、本接続ボルト161Aや仮接続ボルト5が締め付けられるものを兼用している。なお、炉心槽127は、その外側面であってボルト穴127Baの開口部分にリング状の支持部材127Bbが取り付けられている。この支持部材127Bbは、熱遮蔽体161に当接することで熱遮蔽体161を位置決め支持する。
【0054】
移動部材2Bは、軸部材2Aに対して係合可能に設けられている。具体的に、移動部材2Bは、一端部を除いて軸部材2Aのほぼ全域の周面に設けられた雄ネジ部2Acに対して係合する雌ネジ部2Baが形成されて筒状に形成されている。この移動部材2Bは、円形状のハンドル2Bbの中心部に雌ネジ部2Baが形成されている。この移動部材2Bは、ハンドル2Bbを作業員が把持して回転操作することで、雄ネジ部2Acと雌ネジ部2Baとの係合により軸部材2Aの延在方向に沿ってスライド移動する。
【0055】
押付環2Cは、軸部材2Aの雄ネジ部2Acの部分に対し、軸部材2Aの延在方向に移動可能に装着されるように筒状に形成されている。この押付環2Cは、軸部材2Aの延在方向への移動により、移動部材2Bおよび熱遮蔽体161に対して当接する。
【0056】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付装置および取付方法では、位置決ピンとしての仮位置決ピン3および本位置決ピン4が適用される。仮位置決ピン3は、
図6に示すように、棒状に形成され、挿入部3Aと、把持部3Dと、を有する。
【0057】
挿入部3Aは、棒状に形成されている。この挿入部3Aは、
図10に示すように、熱遮蔽体161に貫通して設けられた嵌合穴161C、および炉心槽127の外側面に設けられた取付穴127Bdに対して挿入し嵌合される。
【0058】
把持部3Dは、挿入部3Aの端部から延在して設けられ、作業員が把持する部分である。また、把持部3Dは、延在方向に交差(直交)して貫通孔3Daが設けられている。貫通孔3Daは、棒状の工具(図示略)が挿し込まれ、挿入部3Aの各嵌合穴161Cおよび取付穴127Bdへの挿入の作業を行うためのものである。
【0059】
本位置決ピン4は、
図11に示すように、棒状に形成され、上述した仮位置決ピン3に代えて、仮位置決ピン3が挿入し嵌合される熱遮蔽体161に貫通して設けられた嵌合穴161C、および炉心槽127の外側面に設けられた取付穴127Bdに対して挿入し嵌合される。
【0060】
このような熱遮蔽体取付装置の押付治具2および位置決ピン(仮位置決ピン3および本位置決ピン4)が適用される熱遮蔽体取付方法は、以下(1)〜(12)の手順を含む。
【0061】
(1)押付治具2を熱遮蔽体161のいずれかの挿入穴161Bに挿入し、炉心槽127のボルト穴127Baに締め付ける(
図7参照)。
(2)ハンドル2Bbを回転操作し、移動部材2Bを軸部材2Aの延在方向にスライド移動させ、押付環2Cを介して熱遮蔽体161に当接させる(
図8参照)。さらに、ハンドル2Bbを回転操作し、熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に向けて押し付ける(
図9参照)。
(3)熱遮蔽体161を炉心槽127の外側面に向けて押し付けたら、熱遮蔽体161の挿入穴161Bに仮接続ボルト5を挿入し、当該仮接続ボルト5を炉心槽127のボルト穴127Baに対して手締め程度として熱遮蔽体161を仮止めする(
図9参照)。
(4)(3)とほぼ同時に、位置決ピン(仮位置決ピン3)を熱遮蔽体161の嵌合穴161Cおよび炉心槽127の取付穴127Bdに挿入し嵌合させる(
図10参照)。
(5)押付治具2を取り外し、仮接続ボルト5をトルク管理して締める。
(6)炉心槽127の外側面の円弧と、熱遮蔽体161の取付面の円弧との当たりを取る。
(7)位置決ピン(仮位置決ピン3)および仮接続ボルト5を外し、熱遮蔽体161を上記の逆手順で炉心槽127から取り外す。
(8)当たり付けの確認および調整(当たりが出るまで(1)〜(8)を繰り返す)。
(9)当て付け完了後、(1)〜(5)を行い、押付治具2を取り外し、仮接続ボルト5をトルク管理して締める。
(10)位置決ピン(仮位置決ピン3)を外し、そこに位置決ピン(本位置決ピン4)を冷やし嵌めする(
図11参照)。
(11)冷やし嵌め後、位置決ピン(本位置決ピン4)を回り止め溶接する(
図11参照)。
(12)仮接続ボルト5を取り外し、当該仮接続ボルト5に代えて本接続ボルト161Aを軸力締め付けにより本締めして取り付ける。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の熱遮蔽体取付装置は、原子炉容器101内に配置される炉心槽127の外側面に対して熱遮蔽体161を取り付けるための熱遮蔽体取付装置であって、熱遮蔽体161に貫通して設けられた挿入穴161Bに挿入されると共に、炉心槽127の外側面に設けられたボルト穴127Baに対して炉心槽127の外側面から外側に延在して取り付けられる棒状の軸部材2Aと、軸部材2Aに対して係合可能に設けられ軸部材2Aの延在方向に沿ってスライド移動可能に設けられた移動部材2Bと、を有する押付治具2を備える。
【0063】
この熱遮蔽体取付装置によれば、押付治具2の移動部材2Bを軸部材2Aの延在方向に沿ってスライド移動させることで、炉心槽127の外側面に取り付けられた軸部材2Aが挿入されている熱遮蔽体161を移動部材2Bにより炉心槽127の外側面に押し付ける。このため、熱遮蔽体161を炉心槽127に押し付ける作業に多くの作業員を要する必要がなく1人でもよくなる。また、多くの作業員を要することがないため、当該作業員が熱遮蔽体161と炉心槽127との間に手指を挟む事故の発生を低減することができる。また、熱遮蔽体161の当たり付け摺り合わせ作業の当たり確認後、熱遮蔽体161を取り付ける際の押し付け加減が前回と同様であるため、当たり状態が大きく変わることはなく、傾向に違いがなくなり取り付けし直す事態を防ぐことができる。この結果、安全かつ容易に熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付けることができる。
【0064】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付装置では、押付治具2は、軸部材2Aの周面に雄ネジ部2Acが形成されており、移動部材2Bにおいてハンドル2Bbの中心部に雄ネジ部2Acに対して係合する雌ネジ部2Baが形成されている。
【0065】
この熱遮蔽体取付装置によれば、ハンドル2Bbを回転操作することで、移動部材2Bを軸部材2Aの延在方向に沿ってスライド移動させる。この結果、容易に熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付ける効果を顕著に得ることができる。
【0066】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付装置では、押付治具2は、ボルト穴127Baへ取り付けられた場合の軸部材2Aの延在端部(他端)に、当該軸部材2Aを中心とする把持ハンドル2Abが設けられている。
【0067】
この熱遮蔽体取付装置によれば、把持ハンドル2Abを回転操作することで、ボルト穴127Baへの軸部材2Aの取り付けが容易に行える。この結果、容易に熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付ける効果を顕著に得ることができる。
【0068】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付装置では、押付治具2は、軸部材2Aに対して延在方向に移動可能に装着され、移動部材2Bおよび熱遮蔽体161に当接される押付環2Cを有する。
【0069】
この熱遮蔽体取付装置によれば、押付環2Cが移動部材2Bと熱遮蔽体161との間のスペーサとして機能するため、移動部材2Bが熱遮蔽体161に当接する事態を防ぎ、スライド移動方向以外の方向への移動部材2Bの移動による熱遮蔽体161への不要な負荷の伝達を回避することができる。
【0070】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付装置では、熱遮蔽体161に貫通して設けられた嵌合穴161Cに挿入し嵌合されると共に、炉心槽127の外側面に設けられた取付穴127Bdに対して挿入し嵌合される位置決ピンとしての仮位置決ピン3および本位置決ピン4を備える。
【0071】
この熱遮蔽体取付装置によれば、熱遮蔽体161の嵌合穴161Cおよび炉心槽127の取付穴127Bdに挿入し嵌合される位置決ピンとしての仮位置決ピン3および本位置決ピン4により、熱遮蔽体161が炉心槽127に位置決めして取り付けられる。この結果、押付治具2により熱遮蔽体161を炉心槽127に押し付けた状態を位置決めすることができ、この位置決めした状態で熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付けることができる。
【0072】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付方法は、原子炉容器101内に配置される炉心槽127の外側面に対して熱遮蔽体161を取り付けるための熱遮蔽体取付方法であって、熱遮蔽体161に設けられた挿入穴161Bに棒状の軸部材2Aを挿入させ、炉心槽127の外側面に設けられたボルト穴127Baに対して炉心槽127の外側面から外側に延在するように軸部材2Aを取り付ける工程と、軸部材2Aに対して係合して設けた移動部材2Bを軸部材2Aの延在方向に沿ってスライド移動させることで熱遮蔽体161を炉心槽127側に押し付ける工程と、を含む。
【0073】
この熱遮蔽体取付方法によれば、押付治具2の移動部材2Bを軸部材2Aの延在方向に沿ってスライド移動させることで、炉心槽127の外側面に取り付けられた軸部材2Aが挿入されている熱遮蔽体161を移動部材2Bにより炉心槽127の外側面に押し付ける。このため、熱遮蔽体161を炉心槽127に押し付ける作業に多くの作業員を要する必要がなく1人でもよくなる。また、多くの作業員を要することがないため、当該作業員が熱遮蔽体161と炉心槽127との間に手指を挟む事故の発生を低減することができる。また、熱遮蔽体161の当たり付け摺り合わせ作業の当たり確認後、熱遮蔽体161を取り付ける際の押し付け加減が前回と同様であるため、当たり状態が大きく変わることはなく、傾向に違いがなくなり取り付けし直す事態を防ぐことができる。この結果、安全かつ容易に熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付けることができる。
【0074】
また、本実施形態の熱遮蔽体取付方法では、熱遮蔽体161を炉心槽127側に押し付ける工程において、熱遮蔽体161を炉心槽127側に押し付けた後、熱遮蔽体161に設けられた嵌合穴161C、および炉心槽127の外側面に設けられた取付穴127Bdに対して位置決ピンとしての仮位置決ピン3および本位置決ピン4を挿入し嵌合させる。
【0075】
この熱遮蔽体取付方法によれば、熱遮蔽体161の嵌合穴161Cおよび炉心槽127の取付穴127Bdに対して位置決ピンとしての仮位置決ピン3および本位置決ピン4を挿入し嵌合することで、熱遮蔽体161が炉心槽127に位置決めして取り付けられる。この結果、押付治具2により熱遮蔽体161を炉心槽127に押し付けた状態を位置決めすることができ、この位置決めした状態で熱遮蔽体161を炉心槽127に取り付けることができる。
【0076】
また、本実施形態の炉心槽127は、熱遮蔽体161が位置決ピン(本位置決ピン4)により位置決めされた状態で接続ボルト(本接続ボルト161A)により固定されている。
【0077】
この炉心槽127によれば、熱遮蔽体161が位置決ピン(本位置決ピン4)により位置決めされていることから、当て付けが維持された状態で熱遮蔽体161が固定された炉心槽127を得ることができる。