(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回動可能に支持される開閉体を車両開口部に向かって押動させる押動部材を取り付けた開閉操作アタッチメントと、該開閉操作アタッチメントを前記開閉体の閉操作時の所定の閉軌跡に沿って移動させる駆動制御装置とを備え、前記開閉体を車両開口部の開位置から閉位置まで繰り返し開閉を行うことにより、該繰り返し開閉に伴う車両の不具合発生を検査する車両の耐久試験装置において、前記押動部材は、保持体に支えられた転動体が前記開閉体の表面を転動しつつ該開閉体を前記車両開口部に向かって押動する転動構造を有し、
前記駆動制御装置では、前記閉位置の直前から該閉位置にかけて、前記開閉体の加速度を高めたスナップ動作を可能とする加速制御を行い、該加速制御には、前記加速度を検知して開閉操作アタッチメントへの入力荷重にフィードバックし、該加速度を所定範囲内に制限するように補正する加速度補正制御を並行実施することを特徴とする車両の耐久試験装置。
前記開閉操作アタッチメントは、前記開閉体の閉軌跡に同期しつつ、前記開位置から閉位置の直前までに対応する第一軌跡と、前記閉位置の直前から該閉位置までに対応する第二軌跡とに沿って移動すると共に、前記第一軌跡と第二軌跡とは、異なる円弧上に設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の耐久試験装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、
図1の矢印Fで示す方向を本発明に係わる車両2の耐久試験装置1の前方として、以下に述べる各部材の位置や方向などは、この前方を基準とするものである。
【0018】
まず、本発明に関わる耐久試験装置1の全体構成について、
図1、
図2により説明する。
【0019】
該耐久試験装置1は、前記車両2の開閉ドア、本実施例ではバックドア5を開閉操作する開閉操作アタッチメント3と、前記バックドア5閉操作時の全開のドア位置62aから全閉のドア位置62fまでの該バックドア5外端の軌跡(以下、「閉軌跡」とする)6に沿って前記開閉操作アタッチメント3を移動させる駆動制御装置4とを備えている。
【0020】
そして、該駆動制御装置4は、複数の連結部7a・7b・7c・7d・7eを介して複数のアーム13・14・15・16・17を組み合わせ、その先端に前記開閉操作アタッチメント3を装着するロボット本体7、前記アーム13・14・15・16・17の空圧シリンダ・空圧モータ等のアクチュエータを作動させる加圧ポンプ・真空ポンプ・給電機などの作動装置群8、該作動装置群8に作動信号を送信して前記アーム13・14・15・16・17の軸心周り回動機能を付与するロボットコントローラ9、及び該ロボットコントローラ9に各種制御信号を送受信して後述する加速制御や加速度補正制御を行うメインコントローラ10により構成される。
【0021】
このうちのロボット本体7においては、前記車両2を配置した床面12上に平面視矩形状の基台36が締結固定され、該基台36上にアームベース37が載置固定されている。
【0022】
該アームベース37上に、前記基部アーム13が縦軸心11a周りを水平回動可能に支持されて、前記連結部7aが形成される。そして、該基部アーム13上に、長四角筒状の前記第一アーム14の基端14aが横軸心11b周りを前後回動可能に支持されて、前記連結部7bが形成される。
【0023】
更に、該第一アーム14の先端14bには、先部を縮径した長円筒状の前記第二アーム15の基端15aが横軸心11c周りを前後回動可能に支持されて、前記連結部7cが形成される。そして、該第二アーム15の先端15bには、円筒状の前記第三アーム16の基端16aが、前記第二アーム15と同一軸心上の軸心11d周りを回動可能に支持されて、前記連結部7dが形成される。
【0024】
加えて、該第三アーム16の先端16bには、短円筒状の前記アタッチメントアーム17の基端17aが、横軸心11e周りを前後回動可能に支持されて、前記連結部7eが形成される。そして、該アタッチメントアーム17の先端17bに、前記開閉操作アタッチメント3が、縦軸心11f周りを水平回動可能に装着されている。
【0025】
これにより、前記アーム13・14・15・16・17を組み合わせ、その先端に前記開閉操作アタッチメント3を装着した上で、前記作動装置群8を操作することにより、前記開閉操作アタッチメント3を、6本の前記軸心11a・11b・11c・11d・11e・11f周りの回動による6軸駆動によって駆動可能としている。
【0026】
該6軸駆動用の動作信号は、前記ロボットコントローラ9から作動装置群8内のバルブ装置などに送信される。更に、該ロボットコントローラ9には、前記メインコントローラ10から、該メインコントローラ10内の記憶装置10aに記憶させた制御プログラム、耐久回数・基準加速度・補正基本値などの基本データ、及び後述するセンサから得られた測定データなどをもとに算出した開閉操作アタッチメント3の位置・姿勢信号が送信されるようにしている。
【0027】
また、前記開閉操作アタッチメント3からは、取付バー18が後方に突設され、該取付バー18は、前記アタッチメントアーム17の先端17b下面に固設された取付ブロック19内に、前方から挿嵌される。
【0028】
該取付ブロック19には、下方より固定用のネジ20が螺挿され、該ネジ20の先端が前記取付バー18の外周面に当接可能としており、該取付バー18を取付ブロック19と一体化できるようにしている。
【0029】
更に、前記ネジ20には、着脱レバー21の一端が連結されており、該着脱レバー21を把持して略水平回動することにより、前記ネジ20を取付バー18の外周面から後退させ、該取付バー18を前記取付ブロック19から脱着可能としている。
【0030】
これにより、前記開閉操作アタッチメント3をアタッチメントアーム17に容易に着脱させることができ、車種の違いや、スライドドア・ペダル・レバーなどの試験対象部位の違いなどに応じて、開閉操作アタッチメント3をより適したものに自在に交換し、耐久試験の汎用性を高めると共に、装置交換作業の省略による試験コストや試験時間全体の短縮を図ることができる。
【0031】
次に、前記開閉操作アタッチメント3の構成について、
図1乃至
図5により説明する。
【0032】
該開閉操作アタッチメント3において、前記取付バー18の前端は、取付ステー23に後方から挿嵌固定され、該取付ステー23は、後方開放の側面視U字状の固定部材46の下面に固設されている。
【0033】
そして、該固定部材46が、左右方向に延びる四角筒状のフレーム22の左右幅中央部に嵌合されると共に、該フレーム22には、第一ドア開操作機構24、左右一対の第二ドア開操作機構25、過荷重入力機構26、及び左右一対のドア閉操作機構27が組み付けられている。
【0034】
このうちの第一ドア開操作機構24においては、前記フレーム22の右端部背面に取付背板28の左半部が固設され、該取付背板28の右半部の前方には、ロードセル29を介して引っ掛け具38が装着されている。
【0035】
該引っ掛け具38は、前記ロードセル29から前方に突出する検知バー29aの先部に外嵌された円柱状の基部30と、該基部30の前端部上下から前方に突出された上下の支持板31・31と、該支持板31・31間で上下方向に軸支された支軸32と、該支軸32に水平回動可能に直線状基部が連結された平面視J字状のフィンガー部材33と、前記支持板31・31を挟持する左右の側板34・34とから構成される。
【0036】
そして、前記ロードセル29からは信号線35が延出され、該信号線35の先端は、前記メインコントローラ10に接続されると共に、前記側板34と前記フィンガー部材33の左右側面との間には、小さな隙間39が設けられている。
【0037】
このような構成において、前記駆動制御装置4により、
図1に示すように、前記開閉操作アタッチメント3を、サイドドア41に設けたアウタハンドル40の近傍に近づけた後、該アウタハンドル40に固定したリング40aに、前記引っ掛け具38のフィンガー部材33の先端を挿入して係止し、該フィンガー部材33を車両2から離間させることにより、前記サイドドア41の開操作が行えるようにしている。
【0038】
この際、前記ロードセル29から信号線35を介してメインコントローラ10に受信された荷重信号に基づいて、前記引っ掛け具38への過負荷を検知可能な構成としており、これにより、前記第一ドア開操作機構24の破損などを防止することができる。
【0039】
更に、前記隙間39を設けることで、前記フィンガー部材33を基部30に完全に固定するのではなく、前記支軸32を中心にある程度水平回動できる構成にしており、これにより、前記リング40aへの係止状況に問題が発生するなどして引っ掛け具38に過負荷がかかっても、前記フィンガー部材33の隙間39分の回動により、負荷をある程度まで軽減することができる。
【0040】
前記第二ドア開操作機構25においては、前記フレーム22の背面で取付バー18を挟んで左右に側面視L字状の取付ステー42が固設され、該取付ステー42の下板部42aには、前記作動装置群8内の真空ポンプ8aにエア配管43を介して連通される管体44が上下方向に貫設され、該管体44の下端からは、ゴムなどの弾性体から成り内部が管体44・エア配管43を通じて真空ポンプ8aに連通される蛇腹状の吸着パッド45が垂設されている。
【0041】
このような構成において、前記駆動制御装置4により、
図1に示すように、前記開閉操作アタッチメント3をバックドア5の近傍に近づけた後、該バックドア5の外表面5aに前記吸着パッド45の下部開口45aを押し付けてから真空ポンプ8aで真空引きすることにより、吸着パッド45内を低圧にしてバックドア5に吸着させる。そして、前記駆動制御装置4によって、該吸着パッド45を車両2から離間させることにより、前記バックドア5の開操作が行えるようにしている。
【0042】
前記過荷重入力機構26においては、前記固定部材46の前面から、下方開放の正面視U字状の支持ステー47が前方に突設され、該支持ステー47の上面には、ロードセル48を介して押圧具49が装着されている。
【0043】
該押圧具49は、前記ロードセル48から上方に突出する検知バー48aの先部に外嵌された円柱状の基部50と、該基部50の前端部に固設されたゴムなどの弾性体から成る押圧パッド51とから構成される。そして、前記ロードセル48からは信号線52が延出され、該信号線52の先端は、前記メインコントローラ10に接続されている。
【0044】
このような構成において、
図1に示すように、前記駆動制御装置4により、前記第二ドア開操作機構25を使ってバックドア5を全開した後、該バックドア5の内表面5bに前記押圧パッド51の上端を押し付けることにより、前記バックドア5に対して内側から開方向に過荷重を加えられるようにしている。
【0045】
この際、前記ロードセル48から信号線52を介してメインコントローラ10に受信された荷重信号に基づいて、前記バックドア5への過負荷を常時検知可能な構成としており、これにより、所定の過負荷をバックドア5にかけることができる。
【0046】
前記ドア閉操作機構27においては、前記フレーム22の前面で第二ドア開操作機構25の取付ステー42よりも外側に、取付前板53の上半部が固設され、該取付前板53の下半部の前面から、内側開放の正面視U字状の支持ステー54が前方に突設され、該支持ステー54の前端部に、本発明に係わる押動具55が装着されている。
【0047】
このような構成において、
図5に示すように、前記駆動制御装置4により、前記開閉操作アタッチメント3をバックドア5の近傍に近づけた後、該バックドア5の外表面5aに押動具55を押し付けてバックドア開口部65に向かって下方に押し下げることにより、前記バックドア5の閉操作が行えるようにしている。
【0048】
次に、前記押動具55の構造とその閉操作制御について、
図1乃至
図9により説明する。
【0049】
該押動具55は、
図2乃至
図4に示すように、ゴムなどの弾性体から成る円柱状の転動パッド58と、該転動パッド58を前後回動可能に支持する支持部59とから構成され、該支持部59は、前記支持ステー54の前端部から左右外方に突出された支軸60と、該支軸60と前記転動パッド58との間に介設した円筒状のコロ軸受け61とから成る。
【0050】
このような構造の押動具55において、例えば、
図2、
図5に示すように、前記バックドア5が、全開のドア位置62aから途中のドア位置62bを通ってドア位置62cまで下降する間に、前記支持ステー54の中心線54aと、前記転動パッド58の外周面58aとバックドア5の外表面5aとの接線86とのなす角度が、63a、63b、63cのように増加するなどして変化する場合は、前記転動パッド58がバックドア5の外表面5a上を前後に転動し、該転動パッド58の作用点66が自在に移動しながら入力負荷を分散させることができる。
【0051】
なお、本実施例では、転動体として円柱状の転動パッド58について説明したが、転動体として、ボールベアリングのように球状のものを用いてもよく、前記バックドア5の外表面5aを自在に転動可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0052】
すなわち、回動可能に支持される開閉体であるバックドア5を車両開口部であるバックドア開口部65に向かって押動させる押動部材である押動具55を取り付けた開閉操作アタッチメント3と、該開閉操作アタッチメント3を前記バックドア5の閉操作時の所定の閉軌跡6に沿って移動させる駆動制御装置4とを備え、前記バックドア5をバックドア開口部65の開位置であるドア位置62aから閉位置であるドア位置62fまで繰り返し開閉を行うことにより、該繰り返し開閉に伴う車両2の不具合発生を検査する車両2の耐久試験装置1において、前記押動具55は、保持体である支持部59に支えられた転動体である転動パッド58が前記バックドア5の表面である外表面5aを転動しつつ該バックドア5を前記バックドア開口部65に向かって押動する転動構造を有するので、バックドア5の閉軌跡6に転動パッド58の動作を同期させるだけで、該転動パッド58が前記バックドア5の外表面5a上を転動しながら押動するため、該外表面5a上を作用点66が自在に移動しながら入力荷重を分散させ、バックドア5やその周辺部材のひずみの発生を抑制することができる。これにより、入力荷重の入力方向や作用点位置の制御のための複雑で高精度な駆動制御が不要となり、特に、複数のアーム13・14・15・16・17を組み合わせて開閉操作アタッチメント3の動作をロボットであるロボット本体7で行う場合であっても、該ロボット本体7のティーチング作業を簡素化し、ティーチングコストの減少による試験コストのダウンや、動作速度上限の上昇による試験対象や条件の拡大を図ることができる。
【0053】
また、このような押動具55による閉操作制御について説明する。
【0054】
該押動具55によるバックドア5の閉操作は、
図5、
図6に示すように、運転者が、全開のドア位置62aから下降途中のドア位置62cまで、バックドア5をゆっくり押し下げる動作を模した第一閉操作域71と、前記ドア位置62cから全閉のドア位置62fまで、勢いを付けてバックドア5をバックドア開口部65に押し込む動作を模した第二閉操作域72とに分けられ、該第二閉操作域72は、更に、前半の予備動作範囲72aと後半のスナップ動作範囲72bとから構成される。
【0055】
ここで、前記バックドア5の外表面5aの平面視中央角部には、加速度センサ67が設置されている。
図1に示すように、該加速度センサ67からは信号線68が延出され、該信号線68の先端は、前記メインコントローラ10に接続されており、該メインコントローラ10に前記加速度センサ67から信号線68を介して受信された加速度信号に基づいて、前記バックドア5の加速度を検知可能としている。
【0056】
更に、前記バックドア5の左右前端部でヒンジ部73近傍には、ひずみゲージ69L・69Rが設置されている。該ひずみゲージ69L・69Rからも、それぞれ信号線70L・70Rが延出され、該信号線70L・70Rの各先端も、前記メインコントローラ10に接続されており、該メインコントローラ10に前記ひずみゲージ69L・69Rから信号線70L・70Rを介して受信されたひずみ信号に基づいて、前記バックドア5のひずみ量を検知可能としている。
【0057】
このような構成において、
図5乃至
図7に示すように、前記第一閉操作域71では、前記転動パッド58は、その支軸60の位置(以下、「パッド位置」とする)が、パッド位置74aから途中のパッド位置74bを通ってパッド位置74cまで移動するように、前記駆動制御装置4により6軸駆動される。
【0058】
すると、この転動パッド58に押し下げられたバックドア5は、加速度ゼロ、すなわち一定速度で、ドア位置62aから途中のドア位置62bを通ってドア位置62cまで下降し、その間、下降初期に発生したヒンジ部73近傍の引張ひずみは、徐々に減少していく。
【0059】
その後、前記ドア位置62cに短時間保持されてから、前記予備動作範囲72aに移行する。該予備動作範囲72aでは、前記転動パッド58が、パッド位置74cから途中のパッド位置74dを通ってパッド位置74eまで移動するように、前記駆動制御装置4により6軸駆動される。
【0060】
この間も、前記バックドア5は、一定速度でドア位置62cから途中のドア位置62dを通ってドア位置62eまで下降し、ヒンジ部73近傍の引張ひずみが徐々に減少していく。
【0061】
該ドア位置62eに達するとすぐに前記スナップ動作範囲72bに移行する。該スナップ動作範囲72bでは、前記転動パッド58が、前記横軸心11eの位置(以下、「軸心位置」とする)11e5を中心に、前記パッド位置74eからパッド位置74fまで矢印76に示す如く回動するように、前記駆動制御装置4により1軸駆動される。
【0062】
本実施例では、前記アタッチメントアーム17を、前記軸心11a・11b・11c・11d・11e・11fのうちの横軸心11eの周りのみを前後回動させることにより、該アタッチメントアーム17に装着した開閉操作アタッチメント3の前記転動パッド58の1軸駆動を可能としている。
【0063】
すると、前記予備動作範囲72aでドア位置62eまで下降してきたバックドア5は、前方への運動エネルギーを保持した状態で、前記転動パッド58により、前記バックドア開口部65に向かって最大加速度78という高い初期加速度で付勢押動される。このような加速制御により、バックドア5は、矢印77に示す如く前記ドア位置62eから全閉のドア位置62fまで高速で移動する。
【0064】
その間、ヒンジ部73近傍のひずみは、引張ひずみから圧縮ひずみに転じると同時に、最大ひずみ75に到達する。そして、該最大ひずみ75が、前記バックドア5やその取付部の部品の劣化、開閉用エアシリンダの作動特性の温度変化などの原因で過大になると、過剰に厳しい耐久試験となって試験精度が悪化する。
【0065】
そこで、このような最大ひずみ75を適正に管理するための加速度補正制御について説明する。
【0066】
図7に示すように、前記スナップ動作範囲72bにおけるひずみ量の変化は、バックドア5の加速度の変化に略対応しており、特に、最大ひずみ75は最大加速度78に対応して発生すると共に、図示せぬ調査結果から最大ひずみ75は最大加速度78と比例関係にあることが判明している。
【0067】
このことから、加速度補正制御においては、最大ひずみ75を最大加速度78に基づいて管理する。つまり、該最大加速度78を検知して開閉操作アタッチメント3への入力荷重にフィードバックし、該最大加速度78を所定範囲内に制限するように補正するのである。
【0068】
具体的には、各閉操作時の最大加速度78をサンプリングし、所定回数内のサンプリングデータから最大値・最小値を除いた残りのデータの平均値を、平均加速度79とし、該平均加速度79に基づいて入力荷重にフィードバックをかける。
【0069】
本実施例では、
図8に示すように、サンプリングの1回目から10回目、2回目から11回目、3回目から12回目、・・・、101回目から110回目というように、10回の範囲を1回ずつずらしていき、10個をサンプリング単位とし、データ内から最大値・最小値を除いた残りの8個のデータの平均値を、前記平均加速度79としている。
【0070】
これにより、最大加速度78の変動を緩やかな挙動として捉えることができ、入力荷重へのフィードバックも緩やかなものとして、急激な入力荷重の変動による試験精度の悪化を防止できるようにしている。
【0071】
このような平均加速度79に基づく加速度補正制御の制御手順について、以下に説明する。
【0072】
図1、
図8、
図9に示すように、図示せぬ電源スイッチが入り、運転モードが自動運転モードに設定されると、前記加速度センサ67からの加速度信号や、左右のひずみゲージ69L・69Rからのひずみ信号が、前記メインコントローラ10に読み込まれ、自動運転が開始される(ステップS1)。
【0073】
平均加速度を求めるためのサンプリング単位の個数である加速度補正平均回数が、所定の耐久回数を超えれば(ステップS2:YES)、加速度補正制御が開始される(ステップS3)。
【0074】
該加速度補正制御においては、基準加速度80からの平均加速度79の加速度変動幅が有効範囲内であれば(ステップS4:YES)、
図8では平均加速度79が加速度フィードバック上限値81Uと加速度フィードバック下限値81Lとの間の領域83内にあれば、再び前記加速度変動幅を算出する。
【0075】
そして、該加速度変動幅が有効範囲内になければ(ステップS4:NO)、
図8では領域83内になく、かつ、加速度変動幅が異常範囲内になければ(ステップS5:NO)、
図8では平均加速度79が加速度上限値82Uと加速度下限値82Lとの間の領域84内になければ、加速度異常と判断されて(ステップS9)、ロボット本体7を使った耐久試験であるロボットサイクルを停止する(ステップS11)。
【0076】
前記加速度変動幅が異常範囲内にあれば(ステップS5:YES)、
図8では平均加速度79が上下の領域85U・85L内にあれば、所定の補正基本値に正負の補正率を積算した値を基に、フィードバックする入力荷重を算出するための現在加速度が指示される(ステップS6)。
【0077】
そして、該補正基本値からの補正率の補正変動幅が有効範囲内になければ(ステップS7:NO)、加速度補正異常と判断されて(ステップS10)、ロボット本体7を使った耐久試験であるロボットサイクルを停止する(ステップS11)。
【0078】
前記補正変動幅が有効範囲内にあれば(ステップS7:YES)、次回のロボットサイクル時における加速度指示内容を有効化した後(ステップS8)、ステップS4に戻って再び加速度補正制御が開始される。
【0079】
以上のような制御により、バックドア5の最大加速度78の平均加速度79が、加速度上限値82Uと加速度フィードバック上限値81Uとの間の領域85U、または加速度下限値82Lと加速度フィードバック下限値81Lとの間の領域85Lに達すると、次回から、補正基本値を基準に所定の補正率有効範囲内に制限するように、入力荷重にフィードバックされるのである。
【0080】
すなわち、前記駆動制御装置4では、前記閉位置であるドア位置62fの直前であるドア位置62cから該ドア位置62fにかけて、前記開閉体であるバックドア5の加速度を高めたスナップ動作を可能とする加速制御を行い、該加速制御には、前記加速度を検知して開閉操作アタッチメント3への入力荷重にフィードバックし、該加速度を所定範囲内に制限するように補正する加速度補正制御を並行実施するので、加速制御で、運転者によるバックドア5の閉操作に近い操作を再現することができ、試験精度の一層の向上を図ることができる。更に、このスナップ動作の際に、バックドア5やその取付部の部品の劣化や、開閉用エアシリンダの作動特性の温度変化などが原因となって、バックドア5から車両開口部であるバックドア開口部65に作用する衝撃力が過大となるのを、確実に防止することができ、試験精度の更なる向上を図ることができる。
【0081】
更に、前記加速制御には、前記開閉操作アタッチメント3を単一の軸心である横軸心11eの周りに回動させ、該開閉操作アタッチメント3に取り付けた前記押動部材である押動具55により、前記開閉体であるバックドア5を車両開口部であるバックドア開口部65に向かって付勢押動させる1軸駆動範囲であるスナップ動作範囲72bを設けるので、複数軸心11a・11b・11c・11d・11e・11fで複数方向に回動する開閉操作アタッチメント3を使ってバックドア5をバックドア開口部65に向かって押動する多軸駆動の場合に比べ、押動具55を安定して駆動制御することができ、これにより、バックドア5をバックドア開口部65に向かって高速・高精度で押動し、試験速度・試験精度の向上を図ることができる。更には、軸駆動に要する動力が小さくて済み、ランニングコストの低下も図ることができる。
【0082】
また、前記開閉操作アタッチメント3の軌跡制御について説明する。
【0083】
図1、
図5、
図6に示すように、該開閉操作アタッチメント3は、前記バックドア5の閉軌跡6に同期するようにして移動する。更に、該開閉操作アタッチメント3は、前記アタッチメントアーム17を介して第三アーム16の横軸心11eに前後回動可能に支持され、該横軸心11eの軌跡と略同じ軌跡上を移動するようにしている。
【0084】
そして、このような横軸心11eは、前記第一閉操作域71で、前記バックドア5が全開のドア位置62aからドア位置62bを通ってドア位置62cまで下降するのに対応して、軸心位置11e1から軸心位置11e2を通って軸心位置11e3まで、第一軌跡91に沿って移動する。
【0085】
更に、該横軸心11eは、前記第二閉操作域72で、前記バックドア5がドア位置62cからドア位置62d、ドア位置62eを通って全閉のドア位置62fまで下降するのに対応して、軸心位置11e3から軸心位置11e4を通ってスナップ動作を行う軸心位置11e5まで、第二軌跡92に沿って移動するようにしている。
【0086】
そして、前記軌跡91・92は、いずれも3点で規定可能な円弧上にあって、しかも該円弧は、異なる円弧として形成されている。
【0087】
すなわち、前記開閉操作アタッチメント3は、前記開閉体であるバックドア5の閉軌跡6に同期しつつ、前記開位置であるドア位置62aから閉位置であるドア位置62fの直前のドア位置62cまでに対応する第一軌跡91と、前記ドア位置62cからドア位置62fまでに対応する第二軌跡92とに沿って移動すると共に、前記第一軌跡91と第二軌跡92とは、異なる円弧上に設けるので、第一軌跡91、第二軌跡92が各3点で規定可能となり、開閉操作アタッチメント3の軌跡を単一の複雑な曲線から構成する場合に比べ、簡単な駆動制御を行うことができ、これにより、開閉操作アタッチメント3の動作をロボットであるロボット本体7で行う場合に、更なる、ティーチングコストの減少による試験コストのダウンや、動作速度上限の増加による試験対象や条件の拡大を図ることができる。