特許第6522373号(P6522373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6522373-蒸発燃料処理装置 図000002
  • 特許6522373-蒸発燃料処理装置 図000003
  • 特許6522373-蒸発燃料処理装置 図000004
  • 特許6522373-蒸発燃料処理装置 図000005
  • 特許6522373-蒸発燃料処理装置 図000006
  • 特許6522373-蒸発燃料処理装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522373
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
   F02M25/08 301S
   F02M25/08 G
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-44479(P2015-44479)
(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-164384(P2016-164384A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 勝彦
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−068609(JP,A)
【文献】 特開平06−193520(JP,A)
【文献】 特開2003−155959(JP,A)
【文献】 特開2014−181681(JP,A)
【文献】 特開平10−030508(JP,A)
【文献】 特開2007−211601(JP,A)
【文献】 特開2007−177728(JP,A)
【文献】 特開2001−342914(JP,A)
【文献】 特表2013−545933(JP,A)
【文献】 特開2012−127227(JP,A)
【文献】 特開平11−030158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、
前記キャニスタからパージ通路を通って前記エンジンの吸気管に至る気体の流れを発生させるパージポンプと、
前記パージポンプの下流側で、前記パージ通路を流れる気体流量を調節する流量制御弁と、
前記流量制御弁の上流側の圧力が大気圧を超えた場合に、その流量制御弁の上流側の圧力を低下させる減圧手段とを有し、
前記減圧手段は、前記パージポンプの回転数を低下させる制御、又は前記エンジンの吸気管の負圧を増加させる制御、又は前記流量制御弁の開度を増加させる制御のうち少なくとも一つの制御を行なえる構成であり、
前記パージポンプは、前記パージ通路に設けられており、
前記流量制御弁の上流側の圧力は、その流量制御弁とパージポンプ間の前記パージ通路に設けられた圧力センサにより検出される蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、
前記キャニスタからパージ通路を通って前記エンジンの吸気管に至る気体の流れを発生させるパージポンプと、
前記パージポンプの下流側で、前記パージ通路を流れる気体流量を調節する流量制御弁と、
前記流量制御弁の上流側の圧力が大気圧を超えた場合に、その流量制御弁の上流側の圧力を低下させる減圧手段とを有し、
前記減圧手段は、前記パージポンプの回転数を低下させる制御、又は前記エンジンの吸気管の負圧を増加させる制御、又は前記流量制御弁の開度を増加させる制御のうち少なくとも一つの制御を行なえる構成であり、
前記流量制御弁の上流側の圧力は、その流量制御弁の開度と、前記パージポンプの回転数と、前記エンジンの吸気管の負圧とに基づいて作成されたマップにより推定される蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する従来の蒸発燃料処理装置が特許文献1に記載されている。特許文献1の蒸発燃料処理装置100は、図6に示すように、蒸発燃料を吸着するキャニスタ102と、燃料タンク103内で発生した蒸発燃料をキャニスタ102に導くベーパ通路104と、キャニスタ102を大気と連通させる大気通路105と、キャニスタ102で吸着した蒸発燃料をエンジン(図示省略)の吸気管120に導くパージ通路107とを備えている。パージ通路107には、キャニスタ102からパージ通路107を通ってエンジンの吸気管120に至る気体の流れを発生させるパージポンプ110が設けられており、そのパージポンプ110の下流側に流量制御弁112が設けられている。上記構成により、前記エンジンの駆動中に、パージポンプ110を駆動させることで大気通路105から流入する空気によりキャニスタ102に吸着された蒸発燃料を強制パージしてエンジンの吸気管120に導くことができる。このとき、流量制御弁112によってパージ通路107からエンジンの吸気管120に流入する気体の流量を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−177728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した蒸発燃料処理装置では、パージ通路107に設けられたパージポンプ110を駆動させてキャニスタ102に吸着された蒸発燃料を空気により強制パージする構成である。このため、流量制御弁112より上流側のパージ通路107内の圧力が大気圧を超えることがある。パージ通路107内の圧力が大気圧を超えた状態でエンジンが停止すると、パージポンプ110が停止しても、パージ通路107と連通するキャニスタ102内の圧力が大気圧よりも高くなる。この結果、キャニスタ102内の蒸発燃料が大気通路105から大気に放散されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、パージポンプを備える蒸発燃料処理装置において、キャニスタ内の蒸発燃料が大気通路から大気中に放散されないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、前記キャニスタからパージ通路を通って前記エンジンの吸気管に至る気体の流れを発生させるパージポンプと、前記パージポンプの下流側で、前記パージ通路を流れる気体流量を調節する流量制御弁と、前記流量制御弁の上流側の圧力が大気圧を超えた場合に、その流量制御弁の上流側の圧力を低下させる減圧手段とを有し、前記減圧手段は、前記パージポンプの回転数を低下させる制御、又は前記エンジンの吸気管の負圧を増加させる制御、又は前記流量制御弁の開度を増加させる制御のうち少なくとも一つの制御を行なえる構成であり、前記パージポンプは、前記パージ通路に設けられており、前記流量制御弁の上流側の圧力は、その流量制御弁とパージポンプ間の前記パージ通路に設けられた圧力センサにより検出される。
【0007】
本発明によると、キャニスタからパージ通路を通ってエンジンの吸気管に至る気体の流れが発生している状態で、流量制御弁の上流側の圧力が大気圧を超えると、減圧手段が動作して流量制御弁の上流側の圧力が低下する。このため、エンジンが駆動している状態では、流量制御弁の上流側、即ち、パージ通路、キャニスタ、及び燃料タンク内の圧力が大気圧を超えることがない。したがって、エンジン、及びパージポンプが停止した状態でも、パージ通路やキャニスタ等の内部圧力が大気圧を超えることがない。このため、キャニスタ内の蒸発燃料が大気通路から大気中に放散されるような不具合が生じない。
ここで、パージポンプの回転数を低下させることで、そのパージポンプの吐出側圧力を低下させることができ、流量制御弁の上流側の圧力を低下させることができる。また、エンジンの吸気管の負圧を増加させることで、その吸気管と連通するパージ通路を介して流量制御弁の上流側の圧力を低下させることができる。また、流量制御弁の開度を増加させることで、エンジンの吸気管の圧力(負圧)と流量制御弁の上流側の圧力との差圧が減少し、流量制御弁の上流側の圧力を低下させることができる。
さらに、圧力センサにより流量制御弁の上流側の圧力を検出する構成のため、正確に流量制御弁の上流側の圧力を検出できる。
【0008】
請求項2の発明は、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、前記キャニスタからパージ通路を通って前記エンジンの吸気管に至る気体の流れを発生させるパージポンプと、 前記パージポンプの下流側で、前記パージ通路を流れる気体流量を調節する流量制御弁と、前記流量制御弁の上流側の圧力が大気圧を超えた場合に、その流量制御弁の上流側の圧力を低下させる減圧手段とを有し、前記減圧手段は、前記パージポンプの回転数を低下させる制御、又は前記エンジンの吸気管の負圧を増加させる制御、又は前記流量制御弁の開度を増加させる制御のうち少なくとも一つの制御を行なえる構成であり、前記流量制御弁の上流側の圧力は、その流量制御弁の開度と、前記パージポンプの回転数と、前記エンジンの吸気管の負圧とに基づいて作成されたマップにより推定される。このように、圧力センサが不要になるため、コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、パージポンプを備える蒸発燃料処理装置において、キャニスタ内の蒸発燃料が大気通路から大気中に放散されるような不具合が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置の全体構成図である。
図2】前記蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
図3】前記蒸発燃料処理装置の減圧制御を表すマップである。
図4】前記蒸発燃料処理装置の減圧制御を表すマップである。
図5】変形例に係る蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
図6】従来の蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図5に基づいて本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置20の説明を行なう。本実施形態の蒸発燃料処理装置20は、図1に示すように、車両のエンジンシステム10に設けられており、車両の燃料タンク15内で発生した蒸発燃料が外部に漏れ出ないようにするための装置である。
【0014】
<蒸発燃料処理装置20の構造概要について>
蒸発燃料処理装置20は、図1図2に示すように、キャニスタ22と、そのキャニスタ22に接続されたベーパ通路24、大気通路28、及びパージ通路26とを備えている。キャニスタ22は、燃料タンク15内で発生した蒸発燃料を吸着する装置であり、そのキャニスタ22の容器内部に吸着材としての活性炭(図示省略)が装填されている。ベーパ通路24は、燃料タンク15内の蒸発燃料をキャニスタ22に導く通路であり、そのベーパ通路24の一端部(上流側端部)が燃料タンク15内の気層部と連通されている。また、ベーパ通路24の他端部(下流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。大気通路28は、キャニスタ22を大気と連通させる通路であり、基端部側がキャニスタ22に接続されており、先端側が燃料タンク15の給油口15hの近傍位置で大気開放されている。ここで、大気通路28の途中には、エアフィルタ28aが介装されている。
【0015】
パージ通路26は、キャニスタ22で吸着した蒸発燃料をエンジン14の吸気管16に導くための通路であり、そのパージ通路26の一端部(上流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。そして、パージ通路26の他端部(下流側端部)がエンジン14の吸気管16におけるスロットルバルブ17よりも下流側通路部と連通されている。パージ通路26には、上流側から順番に、パージポンプ26p、圧力センサ26s、及び流量制御弁26vが設置されている。パージポンプ26pは、エンジン14の運転中にキャニスタ22からパージ通路26を通ってエンジン14の吸気管16に至る気体の流れを発生させるポンプであり、エンジンコントロールユニット19(以下、ECU19という)からの信号に基づいて動作する。圧力センサ26sは、流量制御弁26vの上流側でパージ通路26内の圧力を検出するセンサであり、圧力検出信号をECU19に伝送する。流量制御弁26vは、パージポンプ26pの動作時にパージ通路26を流れる気体の流量を調節する制御弁であり、ECU19からの信号に基づいて動作する。
【0016】
<蒸発燃料処理装置20の動作概要について>
車両のエンジン14の停止中は、流量制御弁26vが閉弁してパージ通路26が遮断されている。さらに、パージポンプ26pが停止している。このため、燃料タンク15内で発生した蒸発燃料がベーパ通路24によりキャニスタ22に導かれ、その蒸発燃料がキャニスタ内の吸着材に吸着されるようになる。次に、エンジン14が駆動されると、所定のパージ条件が成立する場合に、ECU19がキャニスタ22の吸着材に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。
【0017】
即ち、この制御では、パージポンプ26pが駆動されるとともに、流量制御弁26vが開弁制御される。これにより、パージポンプ26pの入口側(上流側)で生じた負圧がパージ通路26を介してキャニスタ22内に作用し、キャニスタ22内が負圧になる。これにより、キャニスタ22内に大気通路28から空気が流入するようになる。さらに、キャニスタ22内に燃料タンク15内の気体が流入して、燃料タンク15の圧抜きが行なわれる。キャニスタ22内に流入した空気等は吸着材に吸着されている蒸発燃料をパージし、その蒸発燃料と共にパージ通路26によりパージポンプ26pに導かれる。そして、蒸発燃料を含む空気等がパージポンプ26pで加圧され、流量制御弁26v、パージ通路26の下流側端部を通過してエンジン14の吸気管16に供給される。即ち、キャニスタ22の吸着材から離脱した蒸発燃料が空気と共にエンジン14の吸気管16に導かれて、エンジン14内で燃焼される。ここで、ECU19に基づいて流量制御弁26vの開度調整が行なわれることで、エンジン14に供給される混合気の空燃比が制御される。
【0018】
<蒸発燃料処理装置20の減圧制御について>
パージポンプ26pが駆動すると、蒸発燃料を含む空気がパージポンプ26pによって加圧されて、流量制御弁26v、パージ通路26を介してエンジン14の吸気管16に供給される。ここで、流量制御弁26vの下流側では、エンジン14の吸気管16内の負圧が加わるため、パージ通路26内の圧力は常に負圧となる。しかし、流量制御弁26vの上流側では、その流量制御弁26vを介してエンジン14の吸気管16内の負圧が加わったとしても、パージポンプ26pの吐出側圧力(正圧)の影響でパージ通路26内の圧力が大気圧を超えることがある。流量制御弁26vの上流側におけるパージ通路26内の圧力Pが正圧(P>0kPa)の状態でエンジン14、及びパージポンプ26pが停止すると、パージ通路26と連通するキャニスタ22内の圧力が正圧になることがある。このため、キャニスタ22内の蒸発燃料が大気通路28から外部に放散されるおそれがある。減圧制御は、これを防止するための制御であり、ECU19のメモリに格納されたプログラムに基づいて実行される。
【0019】
即ち、ECU19は、圧力センサ26sによって流量制御弁26vより上流側(パージポンプ26pの下流側)のパージ通路26の圧力を監視しており、前記パージ通路26の圧力が正圧となった場合に減圧制御を実行する。減圧制御としては、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御、流量制御弁26vの弁開度を増加させる制御、あるいはエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御が行なわれる。
【0020】
パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御では、ECU19はパージポンプ26pの駆動用モータに印加する電圧を低下させる制御を行なう。これにより、駆動用モータの回転数が低下し、パージポンプ26pの回転数Nが低下するようになる。パージポンプ26pの回転数Nが低下すると、パージポンプ26pの吐出側圧力が低下し、流量制御弁26vより上流側のパージ通路26内の圧力が低下するようになる。また、ECU19が流量制御弁26vの弁開度を増加させる制御を行なうと、流量制御弁26vの圧損が小さくなる。これにより、流量制御弁26vの上流側でエンジン14の吸気管16における負圧の影響を受け易くなる。この結果、流量制御弁26vより上流側のパージ通路26内の圧力が低下するようになる。
【0021】
また、ECU19がエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御を行なうと、その吸気管16と連通するパージ通路26内の負圧も増加する。これにより、流量制御弁26vより上流側のパージ通路26内の圧力が低下するようになる。ここで、エンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御としては、排気再循環システム(EGR)における排気ガスの循環量を減少させたり、排気ガスの循環タイミングを変えること、あるいはエンジン14の回転数を増加させることが行なわれる。
【0022】
前記減圧制御としては、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御、流量制御弁26vの弁開度を増加させる制御、あるいはエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御のいずれか一つを行なっても良いし、いずれかの制御を組み合わせて行なっても良い。また、上記した三つの制御を同時に行なっても良い。これにより、パージポンプ26pの駆動中に効率的に流量制御弁26vより上流側のパージ通路26内の圧力を低下させることができる。即ち、ECU19の減圧制御が本発明の減圧手段に相当する。
【0023】
<本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の長所>
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20によると、キャニスタ22からパージ通路26を通ってエンジン14の吸気管16に至る気体の流れが発生している状態で、流量制御弁26vの上流側の圧力が大気圧を超えると、減圧手段19が動作して流量制御弁26vの上流側の圧力が低下する。このため、エンジン14が駆動している状態では、流量制御弁26vの上流側、即ち、パージ通路26、キャニスタ22、及び燃料タンク15内の圧力が大気圧を超えることがない。したがって、エンジン14、及びパージポンプ26pが停止した状態でも、パージ通路26やキャニスタ22等の内部圧力が大気圧を超えることがない。このため、キャニスタ22内の蒸発燃料が大気通路28から大気中に放散されるような不具合が生じない。また、圧力センサ26sにより流量制御弁26vの上流側の圧力を検出する構成のため、正確に流量制御弁26vの上流側の圧力を検出できる。
【0024】
<変更例>
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図1図2に示すように、流量制御弁26vの上流側のパージ通路26に圧力センサ26sを設け、圧力センサ26sの圧力信号に基づいてECU19が減圧制御、即ち、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御、流量制御弁26vの弁開度を増加させる制御、あるいはエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御を行なう例を示した。しかし、図3図4に示すように、パージポンプ26pの回転数N、エンジン14の吸気管16の負圧(kPa)、及び流量制御弁26vの弁開度(%)の関係を表すマップを作成しておき、そのマップを利用して流量制御弁26vの上流側の圧力が正圧にならないように運転することも可能である。
【0025】
即ち、図3に示すマップは、例えば、エンジン14の吸気管16内の負圧が−5kPaで一定の場合、パージポンプ26pの回転数Nと流量制御弁26vの弁開度(%)とより推定される流量制御弁26vの上流側におけるパージ通路26の圧力P(以下、パージ通路26の圧力Pという)を表している。例えば、前記マップによると、流量制御弁26vの弁開度が22%でパージポンプ26pの回転数がN1の場合、マップからパージ通路26の圧力PはP1となり(P1>0kPa 正圧)、減圧制御が必要となる。この場合、パージポンプ26pの回転数をN1に保持した状態で、流量制御弁26vの弁開度を80%まで開くことにより、パージ通路26の圧力PがP2(P2<0kPa 負圧)まで低下することが推定される。また、流量制御弁26vの弁開度を22%に保持した状態で、パージポンプ26pの回転数をN2(N2<N1)にまで低下させることで、パージ通路26の圧力PがP3(P3<0kPa 負圧)まで低下することが推定される。
【0026】
また、図4に示すマップは、パージポンプ26pの回転数Nが一定の場合、エンジン14の吸気管16の圧力PKと流量制御弁26vの弁開度(%)とより推定されるパージ通路26の圧力Pを表している。例えば、流量制御弁26vの弁開度が88%で吸気管16の圧力PKが0kPaの場合、マップからパージ通路26の圧力PはP4となり(P4>0kPa 正圧)、減圧制御が必要となる。この場合、流量制御弁26vの弁開度を88%に保持した状態で、エンジン14の吸気管16の圧力PKを−5kPaまで低下させることで、パージ通路26の圧力PがP6(P6<0kPa 負圧)まで低下することが推定される。また、エンジン14の吸気管16の圧力PKを−5kPaまで低下させた状態では、流量制御弁26vの弁開度を40%まで絞っても、パージ通路26の圧力PはP5(P6<P5<0KPa)で負圧に保持されることが推定される。このように、図3図4等に示すマップを使用して流量制御弁26vの上流側におけるパージ通路26の圧力Pを推定できるため、圧力センサ26sを省略でき、コスト低減を図ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、図1図2に示すように、流量制御弁26vの上流側のパージ通路26に圧力センサ26sを設け、さらに圧力センサ26sの上流側のパージ通路26にパージポンプ26pを設ける例を示した。しかし、図5に示すように、流量制御弁26vの上流側のパージ通路26、及びキャニスタ22に対してさらに上流側に位置する燃料タンク15に圧力センサ26sを設け、キャニスタ22に対して上流側に位置する大気通路28にパージポンプ26pを設けるようにすることも可能である。また、本実施形態では、図1図2、及び図5に示すように、パージ通路26とベーパ通路24とをキャニスタ22を介して連通させる例を示した。しかし、図2図5の点線に示すように、パージ通路26とベーパ通路24とを直接的に接続する構成でも可能である。
【符号の説明】
【0028】
14・・・・・エンジン
15・・・・・燃料タンク
16・・・・・吸気管
19・・・・・エンジンコントロールユニット(ECU)(減圧手段)
22・・・・・キャニスタ
24・・・・・ベーパ通路
26・・・・・パージ通路
26p・・・・パージポンプ
26s・・・・圧力センサ
26v・・・・流量制御弁
28・・・・・大気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6