(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522387
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ハイドロゲル含有化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20190520BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20190520BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20190520BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/02
A61K8/14
A61Q19/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-67361(P2015-67361)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185933(P2016-185933A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514310958
【氏名又は名称】株式会社キレートジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100171505
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 由美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美次
【審査官】
田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−224012(JP,A)
【文献】
特表2010−501197(JP,A)
【文献】
特表2009−510168(JP,A)
【文献】
特開2012−236808(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/155487(WO,A1)
【文献】
特表2011−526623(JP,A)
【文献】
特開2009−249370(JP,A)
【文献】
特開2008−133195(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0037723(KR,A)
【文献】
特表平06−505913(JP,A)
【文献】
特表2003−508127(JP,A)
【文献】
特開平02−111799(JP,A)
【文献】
特開2009−191004(JP,A)
【文献】
パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン株式会社,フレグランス ジャーナル,1987年,No.82,pp93-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−A61K 8/99
A61K 9/00−A61K 9/72
A61Q 1/00−A61Q 90/00
A61K 47/00−A61K 47/69
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚美容成分を担持させたハイドロゲルがリポソーム中に封入されている皮膚化粧料であって、該皮膚美容成分が上皮細胞増殖因子EGFであり、該ハイドロゲルが架橋ゼラチンで構成されている、上記皮膚化粧料。
【請求項2】
上記リポソームがPEG鎖を含む合成脂質で構成されている、請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
使用前に水で溶解する凍結乾燥形態である、請求項1又は2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
溶解するための水に更なる有効成分が含まれる、請求項3記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
更なる有効成分がヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、ビタミン、プラセンタエキス、セラミド、アルブチン、レチノール、エラスチン、エラグ酸、ハイドロキノン、トラネキサム酸、コウジ酸、及びピロロキノリンキノン(PQQ)からなる群から選択される、請求項4記載の皮膚化粧料。
【請求項6】
請求項3記載の凍結乾燥形態の皮膚化粧料と、これを溶解するための水とを別個の容器に入れて提供する、皮膚化粧料用時調製用キット。
【請求項7】
溶解するための水がヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、ビタミン、プラセンタエキス、セラミド、アルブチン、レチノール、エラスチン、エラグ酸、ハイドロキノン、トラネキサム酸、コウジ酸、及びピロロキノリンキノン(PQQ)からなる群から選択される更なる有効成分が溶解した水溶液である、請求項6記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚への浸透性が高く、有効成分の安定性が高く、かつ効果が持続する皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品及び化粧品の分野において、有効成分の徐放性の制御は関心のある技術であり、徐放性を達成するために種々の技術が開発されてきた。
【0003】
その中で、ゼラチンゲル、DNAゲル、キトサンゲル等で構成されるハイドロゲルの再生医療における利用が提案されている(特許文献1及び2)。化粧分野に関連するハイドロゲルの応用例としては、細胞成長因子タンパク質を徐放可能に含浸した育毛用ハイドロゲルが提案されている(特許文献3)。この育毛用ハイドロゲルは、主として皮下に埋入するか、又は皮下もしくは血管に注入するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/085653
【特許文献2】国際公開第2008/016163
【特許文献3】特開2003-81866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、皮膚美容成分の徐放を目的として、ハイドロゲルの皮膚化粧料への応用を検討した。しかしながら、ハイドロゲルをそのまま化粧品に配合して徐放性を高めたとしても、皮膚への浸透性は満足できるレベルには達しなかった。また、細胞成長因子等の成分の水性媒体中での経時的安定性は低く、長期安定性が要求される化粧品において商品として満足できるものを得ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題に鑑み、有効成分の安定性が持続し、皮膚への浸透性が高く、かつ徐放効果が期待される従来にない化粧品の開発を種々検討した。その結果、ハイドロゲルを有効成分と共にリポソーム中に封入することで皮膚への浸透性が相乗的に高まること、かつ、これを凍結乾燥することで、経時的安定性も飛躍的に上昇するという予想外の効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は以下の(1)〜(10)を提供する。
(1)皮膚美容成分を担持させたハイドロゲル、及びリポソーム構成脂質を含む、皮膚化粧料。
(2)皮膚美容成分を担持させたハイドロゲルがリポソーム中に封入されている、上記(1)記載の皮膚化粧料。
(3)ハイドロゲルが架橋ゼラチンで構成される、上記(1)又は(2)記載の皮膚化粧料。
(4)皮膚美容成分が成長因子を含む、上記(1)〜(3)のいずれか記載の皮膚化粧料。
(5)リポソーム構成脂質がPEG鎖を含む合成脂質である、上記(1)〜(4)のいずれか記載の皮膚化粧料。
(6)使用前に水で溶解する凍結乾燥形態である、上記(1)〜(5)のいずれか記載の皮膚化粧料。
(7)溶解するための水に更なる有効成分が含まれる、上記(6)記載の皮膚化粧料。
(8)更なる有効成分がヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、ビタミン、プラセンタエキス、セラミド、アルブチン、レチノール、エラスチン、エラグ酸、ハイドロキノン、トラネキサム酸、コウジ酸、及びピロロキノリンキノン(PQQ)からなる群から選択される、上記(7)記載の皮膚化粧料。
(9)上記(6)記載の凍結乾燥形態の皮膚化粧料と、これを溶解するための水とを別個の容器に入れて提供する、皮膚化粧料用時調製用キット。
(10)溶解するための水がヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、ビタミン、プラセンタエキス、セラミド、アルブチン、レチノール、エラスチン、エラグ酸、ハイドロキノン、トラネキサム酸、コウジ酸、及びピロロキノリンキノン(PQQ)からなる群から選択される更なる有効成分が溶解した水溶液である、上記(9)記載のキット。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来は安定性が低いために化粧品に配合することが不可能であった成分を配合することが可能となると共に、その皮膚への浸透性、徐放性を達成することで、効果が高く、消費者にとって価値の高い化粧品を提供することができる。
【0009】
更に、凍結乾燥技術を利用することで、消費者が水や水溶液を用いて美容液形態とするまで無水の状態が保たれ、常温で保管しても防腐剤を添加する必要がなく、消費者にとってより好ましい化粧品の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】凍結乾燥処理を行った場合と行わない場合での成長因子安定性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、皮膚への浸透性が高く、有効成分の安定性が高く、かつ効果が持続する皮膚化粧料を提供する。本発明の化粧料は、水性化粧料、あるいは水中油型化粧料とすることができる。一実施形態では、本発明の化粧料は、水又は水溶液の添加によって再溶解・再分散することが可能な、凍結乾燥形態の化粧料である。
【0012】
具体的には、本発明の皮膚化粧料は、皮膚美容成分を担持させたハイドロゲル、及びリポソーム構成脂質を含む。
【0013】
本発明において、「皮膚美容成分」とは、化粧品分野において使用されているものであればいずれでもよく、特に限定されるものではないが、例えば各種成長因子、ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタエキス、hASCsE(ヒト脂肪細胞順化培養液エキス)等の動物由来成分、ビタミン、植物エキス等の植物由来成分、各種ペプチド等が挙げられる。成長因子としては、上皮細胞増殖因子(Epidermal Growth Factor, EGF)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor, FGF)、ケラチノサイト増殖因子(Keratinocyte Growth Factor, KGF)等を挙げることができる。本発明の皮膚化粧料に配合される皮膚美容成分は、特に限定するものではないが、本発明の効果が発揮できるという点で、化粧料への配合が望まれているが水中での安定性が低いためにこれまで配合が困難であった成分、例えば成長因子を含むのが好ましい。
【0014】
「ハイドロゲル」とは、水を含み、網目構造(架橋構造)を有する高分子化合物の総称であり、構成高分子とその中に含まれる水が構成成分である。
【0015】
ハイドロゲルは、多量の水を吸収して保持できるように、親水性高分子が架橋構造によって三次元ネットワークを形成しており、その架橋構造の種類によって化学架橋ゲルと物理架橋ゲルとに大別される。当業者には知られているように、化学架橋ゲルを構成する親水性モノマーとしてはアクリル酸、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等が、架橋剤モノマーとしてはN,N'-メチレンビスアクリルアミドやエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられ、これらを適宜重合させることでハイドロゲルを合成することができる。また、直鎖状高分子を架橋することでハイドロゲルを合成することも可能であり、例えばポリビニルアルコールやセルロース誘導体などの高分子を2官能性架橋剤と反応させることができる。一方、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の合成高分子、あるいはアルギン酸、ペクチン、ヒアルロン酸、ゼラチン等の天然高分子を特定の条件下で物理的に架橋させることも知られている。
【0016】
中でも、医療用ハイドロゲルとして、ゼラチン又はゼラチン誘導体を架橋させて得られるゼラチンハイドロゲルが、再生医療におけるドラッグデリバリーシステムとして好適に使用できることが知られている(国際公開第2006/085653及び国際公開第2008/016163)。本発明においては、これらの種々のゼラチンハイドロゲルを好適に使用することができる。
【0017】
ハイドロゲルは、市販のものを利用することもでき、例えばゼラチンハイドロゲルとしては、メドジェル PI5、メドジェル PI9、メドジェルSP PI5、メドジェル SP PI9、メドジェル E50(和光純薬工業株式会社製)等を好適に使用可能である。本発明における皮膚化粧料に使用する場合、ハイドロゲルは、分子量30,000以下のものを使用することが好ましい。ハイドロゲルは、凍結乾燥前、及び使用時には水溶液の形態であり、使用時の化粧料中におけるその濃度は概ね0.1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%の範囲とすることが好ましい。
【0018】
皮膚美容成分の1種以上は、ハイドロゲルに担持させる。上記市販品ではハイドロゲルは乾燥状態で入手することができるため、これに皮膚美容成分を含有する水溶液を徐々に添加してしみこませると、皮膚美容成分がゼラチンの網目構造の中に安定的に保持される。また、水を含むハイドロゲル本来の形態であっても、皮膚美容成分を含有する水溶液と混合することで、ハイドロゲル中への皮膚美容成分の保持が達成される。ハイドロゲル中に担持される皮膚美容成分の量は、特に限定するものではないが、ハイドロゲルの量が乾燥重量で皮膚美容成分に対して10〜500倍量の範囲となるようにすることが好適である。皮膚美容成分をこのようにハイドロゲルに担持させることで、皮膚美容成分の徐放化を達成することができる。
【0019】
本発明者等はまた、皮膚美容成分の浸透性及び徐放性の向上のために、リポソームの利用を検討した。すなわち、本発明において、皮膚美容成分を担持させたハイドロゲルは、リポソーム中に封入された形態とすることが好ましい。
【0020】
「リポソーム」は、本来、生体膜構成成分であるリン脂質から形成される脂質二重膜の人工的閉鎖小胞であり、1965年にBangham等によって初めて報告されたものである。リン脂質分子は親水性基と疎水性基からなる両親媒性脂質であり、疎水性部分を内側に、親水性部分を外側に向けて分子が並んだ1以上の脂質二重層からなるベシクルを形成する。このような性質を利用して、リポソームは、水溶性物質を内包し、かつ脂溶性物質を疎水性部分に含むことができるカプセルとして利用できることが知られ、化粧品においても利用されている。リポソームは、製造方法によって単層のリポソーム及び多層のリポソームを得ることができ、天然のリン脂質では40nm〜1000nmの広い範囲の直径のものが得られる。
【0021】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚美容成分を担持させたハイドロゲルをリポソーム中に封入することで、皮膚美容成分の皮膚への浸透性を顕著に向上させることができたものである。本発明の皮膚化粧料で使用できるリポソームは、天然又は合成のリン脂質から構成されるものであって、例えば卵黄、大豆、穀類等に由来するリン脂質、これら天然のリン脂質に対して水素添加処理を行ったリン脂質等を適宜利用することができる。リポソームを構成するリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸等が知られている。また、コレステロール等のステロール、糖脂質等の成分をリポソームの安定性を向上させる目的等のために含めることもできる。
【0022】
しかしながら、天然のリン脂質を用いる通常のリポソームでは製造工程が複雑でコストがかかること、リポソームの凝集及び融合等が生じて経時的安定性が十分ではないこと等、一定の品質の製品を大量に供給する上での障壁があることが理解されている。
【0023】
この点を克服するために提案されているのが、例えばポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する合成脂質を用いたリポソームである。この合成脂質は、より具体的には、ジアシルグリセロールのOH基にPEGが結合したPEG化ジアシルグリセロールが好適に使用可能であり、例えばPEG-12グリセリルジオレエート(PEG-12 GDO)、PEG-12グリセリルジミリステート(PEG-12 GDM)、PEG-12グリセリルジステアレート(PEG-12 GDS)、PEG-23グリセリルジパルミテート(PEG-23 GDP)、PEG-23グリセリルジステアレート(PEG-23 GDS)等を挙げることができる。これらの脂質は、いずれも融点において自発的にリポソームを形成することができ、天然のリン脂質を用いた場合のような複雑な工程を必要としない。これらの中でもPEG-12 GDO、PEG-12 GDM、及びPEG-23 GDPの使用がより好適であり、PEG-12 GDO及びPEG-12 GDMの使用が更により好適である。PEG-12 GDO及びPEG-12 GDMは室温においても自発的にリポソームを形成することができるため、凍結乾燥状態から使用者が再構成する本発明の態様において特に適している。しかしながら、当業者であれば、例えば構成脂質の親水基及び疎水基のバランス、例えばリポソームの形成のしやすさの尺度となり得るパッキングパラメーター等を考慮して、上記の脂質を、単独で、又は他の脂質と組み合わせてリポソーム構成脂質として利用することができる。
【0024】
上記の構造を有する脂質は、合成しても良く、また市販品として、例えば日油株式会社等から入手することができる。
【0025】
PEG化ジアシルグリセロールを用いる場合、リポソームの形成は、単にPEG化ジアシルグリセロールと水又は水溶液とを混合し、場合によって構成脂質の融点(転移温度)まで加温する簡便な工程で、達成することができる。この場合にハイドロゲルを共存させることで、ハイドロゲルが内包されたリポソームが形成する。本発明において、ハイドロゲルとリポソーム構成脂質との配合割合は、ハイドロゲルの濃度並びに粒径にもよるが、乾燥重量を基準として、20:80〜80:20の範囲とすることが好ましい。
【0026】
再構成した水性化粧料におけるリポソームの粒径は、75〜150nmの範囲内で比較的安定していることが確認されている。ハイドロゲルのリポソームへの封入率は、添加する水又は水溶液の量によっても変動し得るが、例えば20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上とすることが好ましい。
【0027】
上記のようにして、皮膚美容成分を担持させたハイドロゲルをリポソームに封入することによって、皮膚美容成分の皮膚への浸透性を高め、かつ徐放性を発揮することができる。
【0028】
本発明の皮膚化粧料はまた、使用時まで凍結乾燥形態として供給することができる。
【0029】
凍結乾燥(フリーズドライ)は、食品・医薬品・化粧品分野で利用されている技術であり、特に限定するものではないが、美容液などの化粧品では、食品や医薬品のように単一の成分ではなく、複数の成分が配合されており、また、復元前の美観も優れたものとする必要から、凍結乾燥条件は慎重に決定することが必要である。
【0030】
凍結効率や水に戻した場合の復元性の最適化のためには、凍結乾燥は、例えば大きな氷の結晶を形成させないために、約-85℃〜-30℃、好ましくは-85℃〜-50℃の範囲の温度で、好ましくは3〜20 Pa、より好ましくは3〜5 Paの真空条件で行うことが好ましい。
【0031】
凍結乾燥状態の製品は常温で保存することができ、水溶液中での安定性が低い成分を長期間保存するのに適している。
【0032】
そして、凍結乾燥状態から、水又は水溶液を添加することで、容易に使用可能な水性化粧料とすることができる。従って、このステップは、凍結乾燥状態で本発明の皮膚化粧料を消費者に提供し、製品を購入した消費者自身が都合に合わせて再溶解(再構成)するものとすることができる。水に再溶解させた後は、好ましくは冷所、例えば冷蔵庫等で保存し、10日〜2週間程で使い切ることが好ましく、これらは製品に添付する使用説明書に記載される。
【0033】
溶解するための水は、消費者自身が溶解することを考慮して、水道水、浄水器でろ過した水を使用することができる。また、溶解するための水に更なる有効成分が含まれる水溶液とすることもできる。この場合、凍結乾燥形態のハイドロゲル含有化粧料と、これを溶解するための水とを別個の容器に入れ、皮膚化粧料の用時調製用キットとして提供することもできる。
【0034】
更なる有効成分としては、化粧料に通常配合され、水中で安定な成分であればいずれでも良く、例えばヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、ビタミン、プラセンタエキス、セラミド、アルブチン、レチノール、エラスチン、エラグ酸、ハイドロキノン、トラネキサム酸、コウジ酸、ピロロキノリンキノン(PQQ)からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらは凍結乾燥したハイドロゲル中に配合できるものであり得る。
【0035】
本発明の化粧料は、化粧水、乳液、クリーム等の形態とすることが可能であるが、特に好ましくは使用者が使用直前に水に再溶解させて使用する美容液の形態である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
EGFの皮膚透過性評価
各被験物質を、以下の最終濃度となるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した。
(1)EGF(rh-OLIGOPEPTIDE-1)(2μg/mL)
(2)EGF(2μg/mL)+架橋型ゼラチン(10%)
(3)EGF(2μg/mL)+ナノソーム用カプセル化剤(PEG-12 GDM)(2%)
(4)EGF(2μg/mL)+架橋型ゼラチン(10%)+ナノソーム用カプセル化剤(2%)
【0038】
ヒト人工皮膚モデル(TESTSKIN TMLSE-003/LSE-high, Lot:435900, TOYOBO)の真皮側に採取用透過液としてPBSを1.2mLずつ付属のアッセイトレイに入れ、皮膚モデル組織をセットした後、表皮側に被験物質を0.1mLずつ添加した。2時間後にアッセイトレイ内の透過液全量を採取し、ELISAキット(EGF Human ELISA Kit, R&D Systems, Cat.#: DEG00)によるEGFの定量試験に供した。操作はキット付属の説明書に従った。
【0039】
予め作成した検量線に基づいて、各処理群における透過液で検出されたEGF量を算出し、透過率を算出した。表1に、処理群(1)における透過率を1とした場合の処理群の透過倍率を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
人工皮膚へのEGFの透過率は、ゼラチンハイドロゲルを添加しただけでもEGFのみの場合の約30倍に上昇した。ナノソームを形成させた場合には約125倍にまで上昇した。ゼラチンハイドロゲルと混合し、更にナノソームカプセル化した場合には浸透率が約421倍に上昇した。
【0042】
上記の結果から明らかなように、EGFをゼラチンハイドロゲルに担持させ、更にナノソームと併用した場合、ハイドロゲルまたはナノソームを単独で使用した場合と比較して、予想外の相乗効果が達成され、皮膚への浸透性の向上が確認された。
【0043】
[実施例2]
凍結乾燥による安定化効果の確認
凍結乾燥処理により、EGF(rh-OLIGOPEPTIDE-1)及びFGF(rh-OLIGOPEPTIDE-11)の経時的安定性が向上することを確認した。実施例1と同様、EGFおよびFGFをそれぞれリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に100mg/mLの濃度で調製し、凍結乾燥を行うか、または凍結乾燥をせずに水溶液の状態で常温で保存し、残存量を測定した。残存活性はHela細胞のMTS法(Cell Titer96(登録商標) Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(プロメガ社)を使用)により評価した。結果を
図1に示す。
【0044】
その結果、凍結乾燥を行わない場合、調製翌日から残存量が減少し、EGFは溶解後1日で78.3%、FGFは7.4%に減少し、7日後にはEGFは75%、FGFは2.3%にまで減少した。これに対して凍結乾燥状態で保存したサンプル(EGF又はFGFを含有)では、EGF、FGF共に7日経過後も残存量に変化はなく、非常に高い安定化効果を有することが確認された。