(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定するが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はない。例えば、紙面における上方向が鉛直方向における下方向に対応してもよい。また、紙面における上下方向が鉛直方向に直行する水平方向に対応してもよい。
【0026】
以下、図面を参照して本実施形態のSOFCモジュール(燃料電池システム)201について説明する。
SOFCモジュール201は、炭化水素系燃料ガス(例えば、メタンガスを主成分とするガス)を水素(H
2)と一酸化炭素(CO)を含む合成ガスに改質し、合成ガスと酸素イオンとを電気化学的に反応させて、水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するモジュールである。SOFCモジュール201は、反応時に酸素イオンから放出される電子によって発電する。
なお、以下の説明においては、炭化水素系燃料ガスを単に「燃料ガス」ともいう。
【0027】
図1に示すようにSOFCモジュール201は、複数のSOFCカートリッジ203と、これら複数のSOFCカートリッジ203を収納する圧力容器205とを有する。また、SOFCモジュール201は、燃料ガス供給管207と複数の燃料ガス供給枝管207aとを有する。またSOFCモジュール201は、燃料ガス排出管209と複数の燃料ガス排出枝管209aとを有する。また、SOFCモジュール201は、酸化性ガス供給管(図示略)と酸化性ガス供給枝管(図示略)とを有する。また、SOFCモジュール201は、酸化性ガス排出管(図示略)と複数の酸化性ガス排出枝管(図示略)とを有する。
【0028】
燃料ガス供給管207は、圧力容器205の外部に設けられ、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する燃料供給系(図示略)に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、燃料供給系(図示略)から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導く。
【0029】
燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数のSOFCカートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数のSOFCカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0030】
燃料ガス排出枝管209aは、複数のSOFCカートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。この燃料ガス排出枝管209aは、SOFCカートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。また、燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、一部が圧力容器205の外部に配置されている。この燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスを圧力容器205の外部の燃料ガス排出系(図示略)に導く。
【0031】
圧力容器205は、内部の圧力が0.1MPa〜約1MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用されるので、耐力性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えば、SUS304などのステンレス系材料を用いるのが好適である。
【0032】
SOFCカートリッジ203は、
図2に示す通り、複数のセルスタック101と、複数の改質チューブ102と、発電室215と、燃料ガス供給室217と、燃料ガス排出室219と、酸化性ガス供給室221と、酸化性ガス排出室223とを有する。また、SOFCカートリッジ203は、上部管板(支持体)225aと、下部管板(支持体)225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bとを有する。
【0033】
なお、本実施形態においては、SOFCカートリッジ203は、燃料ガス供給室217と燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221と酸化性ガス排出室223とが
図2のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、他の構造であっても良い。例えば、セルスタック101の内側と外側とを平行して同方向に流れる、または酸化性ガスがセルスタック101の長手方向と直交する方向へ流れるようにしても良い。
【0034】
発電室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この発電室215は、セルスタック101の燃料電池セル105が配置され、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、この発電室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度は、SOFCモジュール201の定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気となる。
【0035】
燃料ガス供給室217は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域である。また、燃料ガス供給室217は、上部ケーシング229aに備えられた燃料ガス供給部231aによって、燃料ガス供給枝管207a(図示略)と連通されている。
【0036】
また、燃料ガス供給室217には、セルスタック101の一方の端部が、セルスタック101の基体管(第1基体管)101aの内部が燃料ガス供給室217に対して開放して配置されている。この燃料ガス供給室217は、燃料ガス供給枝管207a(図示略)から燃料ガス供給部231aを介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管101aの内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させる。
【0037】
また、燃料ガス供給室217には、改質チューブ102の一方の端部が、改質チューブ102の基体管(第2基体管)102aの内部が燃料ガス供給室217に対して開放して配置されている。この燃料ガス供給室217は、燃料ガス供給枝管207a(図示略)から燃料ガス供給部231aを介して供給される燃料ガスを、複数の改質チューブ102の基体管102aの内部に略均一流量で導き、複数の改質セル102の吸熱性能を略均一化させる。
【0038】
燃料ガス排出室219は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域である。また、燃料ガス排出室219は、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出部231bによって、燃料ガス排出枝管209a(図示略)と連通されている。
【0039】
また、燃料ガス排出室219には、セルスタック101の他方の端部が、セルスタック101の基体管101aの内部が燃料ガス排出室219に対して開放して配置されている。この燃料ガス排出室219は、複数のセルスタック101の基体管101aの内部を通過して燃料ガス排出室219に供給される排燃料ガスを集約して、燃料ガス排出部231bを介して燃料ガス排出枝管209a(図示略)に導く。
【0040】
また、
図2および
図3(斜視図)に示すように、燃料ガス排出室219には、改質チューブ102の他方の端部から排出される改質された燃料ガス(以下、改質ガスという。)を集約して改質ガス排出部231cに導く改質ガス集合管210が配置されている。改質ガス集合管210は、改質チューブ102の他方の端部から排出される改質ガスを、排燃料ガスと混合させずに改質ガス排出部231cに導く。
【0041】
SOFCモジュール201の目標発電量に対応するよう、所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスが、酸化性ガス供給枝管を介して複数のSOFCカートリッジ203へ供給される。酸化性ガス供給室221は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域である。
【0042】
また、酸化性ガス供給室221は、下部ケーシング229bに備えられた酸化性ガス供給孔233aによって、酸化性ガス供給枝管(図示略)と連通されている。この酸化性ガス供給室221は、酸化性ガス供給枝管(図示略)から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導く。
【0043】
酸化性ガス排出室223は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域である。また、酸化性ガス排出室223は、上部ケーシング229aに備えられた酸化性ガス排出孔233bによって、酸化性ガス排出枝管(図示略)と連通されている。この酸化性ガス排出室223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出室223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して酸化性ガス排出枝管(図示略)に導く。
【0044】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また上部管板225aは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101および改質チューブ102の合計本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101および改質チューブ102がそれぞれ挿入されている。
【0045】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101および改質チューブ102の合計本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101および改質チューブ102がそれぞれ挿入されている。
下部管板225bが有する複数の孔は、上部管板225aが有する複数の孔と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0046】
上部管板225aは、複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102が上部管板225aと平行な平面内で所定間隔を空けて配置されるように支持する板状部材である。上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部を筒状のシール部材101bを介して支持する。また、上部管板225aは、複数の改質チューブ102の一方の端部を筒状のシール部材102bを介して支持する。
【0047】
シール部材101bおよびシール部材102bによって、燃料ガス供給室217と酸化性ガス排出室223とは、連通せずに隔離された状態が維持される。
シール部材101bを取り外すことによりセルスタック101の一方の端部が上部管板225aから取り外し可能な状態となり、シール部材102bを取り外すことにより改質チューブ102の一方の端部が上部管板225aから取り外し可能な状態となる。
【0048】
下部管板225bは、複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102が下部管板225bと平行な平面内で所定間隔を空けて配置されるように支持する板状部材である。下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部を筒状のシール部材101cを介して支持する。また、下部管板225bは、複数の改質チューブ102の他方の端部を筒状のシール部材102cを介して支持する。
【0049】
シール部材101cおよびシール部材102cによって、燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221とは、連通せずに隔離された状態が維持される。
シール部材101cを取り外すことによりセルスタック101の他方の端部が下部管板225bから取り外し可能な状態となり、シール部材102cを取り外すことにより改質チューブ102の他方の端部が下部管板225bから取り外し可能な状態となる。
【0050】
このように、上部管板225aおよび下部管板225bは、それぞれに対応する一対の孔に複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102を挿入した状態で、シール部材を介してこれらを着脱可能に支持している。
そして、後述するように、セルスタック101の基体管101aと改質チューブ102の基体管102aとは、同一形状となっている。
【0051】
そのため、セルスタック101および改質チューブ102は、上部管板225aおよび下部管板225bに形成される複数の孔のうちの所望の孔に挿入可能となっている。そのため、セルスタック101および改質チューブ102は、上部管板225aおよび下部管板225bに形成される複数の孔のうちの任意の孔にそれぞれ着脱可能となっている。
【0052】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101および改質チューブ102の合計本数に対応した複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101および改質チューブ102の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101および改質チューブ102の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを有する。
【0053】
この上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出室223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。上部管板225aはインコネル(登録商標)などの高温耐久性のある金属材料からなる。これにより、上部管板225aが、発電室215内の高温に晒されて熱変形することが防止される。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出室223に導く。
【0054】
本実施形態のSOFCカートリッジ203は、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管101aの内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板225aが座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室223に供給される。
また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒータ等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
【0055】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101および改質チューブ102の合計本数に対応した複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101および改質チューブ102の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101および改質チューブ102の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを有する。
【0056】
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給室221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225bはインコネル(登録商標)などの高温耐久性のある金属材料からなる。これにより、下部管板225bが高温に晒されて熱変形することが防止される。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給室233に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導く。
【0057】
本実施形態のSOFCカートリッジ203は、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管101aの内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225bが座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出室219に供給される。
また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒータ等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
【0058】
発電室215で発電された直流電力は、複数の燃料電池セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、SOFCカートリッジ203の集電機構(図示略)を介して集電して、各SOFCカートリッジ203の外部へと取り出される。集電機構によってSOFCカートリッジ203の外部に導出された電力は、各SOFCカートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、SOFCモジュール201の外部へと導出されて、インバータなどにより所定の交流電力へと変換されて、電力負荷へと供給される。
【0059】
次に、
図4を参照して本実施形態のセルスタック101について説明する。
図4は、
図2に示すセルスタック101の要部拡大図である。
セルスタック101は、軸X1に沿って延びる円筒形状の基体管101aと、基体管101aの外周面に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極109と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されたものである。
また、セルスタック101は、基体管101aの外周面に形成された複数の燃料電池セル105のうち、基体管101aの軸方向において最も端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を有する。
【0060】
基体管101aは、内部に燃料ガスが流通する筒状部材である。基体管101aは、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、又はY
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、又はMgAl
2O
4とされる。この基体管101aは、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管101aの内周面に供給される燃料ガスを基体管101aの細孔を介して基体管101aの外周面に形成される燃料極109に拡散させる。
【0061】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を有する。この触媒作用は、基体管101aを介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを式(1)に示すように水蒸気改質反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。
CH
4+H
2O→3H
2+CO (1)
【0062】
また、燃料極109は、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111を介して供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質111との界面付近において式(2)および式(3)に示すように電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するものである。なお、燃料電池セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
H
2+O
2− → H
2O+2e
− (2)
CO+O
2− → CO
2+2e
− (3)
【0063】
固体電解質111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するYSZが主として用いられる。この固体電解質111は、空気極で生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極に移動させるものである。
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で構成される。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成するものである。
【0064】
インターコネクタ107は、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。
このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極109とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル105同士を直列に接続するものである。
【0065】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタにより直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0066】
次に、
図5を参照して本実施形態の改質チューブ102について説明する。
図5は、
図2に示す改質チューブ102の要部拡大図である。
改質チューブ102は、軸X2に沿って延びる円筒形状の基体管102aと、基体管102aの内周面に形成された改質層102dとを有する。
改質チューブ102は、入口部102eから流入する燃料ガスを改質させて出口部102fから排出する。
【0067】
改質層102dは、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。この場合、改質層102dは、改質層102dの成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を有する。この触媒作用は、基体管102aの内部を流通する燃料ガス、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを前述した式(1)に示すように水蒸気改質反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。
このように、改質層102dは、燃料ガスとして用いられる炭化水素系ガスの改質反応を促進させる触媒作用を有するものである。この改質反応は吸熱反応であるため、改質チューブ102は周囲の温度を低下させる。
【0068】
本実施形態のSOFCカートリッジ203にセルスタック101とともに改質チューブ102を設けているのは、セルスタック101の発熱によって局所的な温度上昇が発生することを抑制するためである。改質チューブ102を局所的な温度上昇が発生する位置に配置することにより、改質チューブ102における吸熱反応によって局所的な温度上昇を抑制することができる。
【0069】
図5に示す改質チューブ102は、
図5に示す軸方向(X2方向)のいずれの領域でも改質層102dの厚さを一定とし、各領域における改質反応の促進量を一定としている。このようにすることで、軸方向(X2方向)における温度分布に偏りがない場合に、各領域における改質反応の促進量を一定とし、吸熱反応によって軸方向(X2方向)における温度分布に変化が生じないようにすることができる。
【0070】
図6は、
図2に示すSOFCカートリッジ203の平面図である。
図6は、
図2に示す上部ケーシング229aを省略した状態を示している。
図6の平面図に示す例は、上部管板225aに7×15の計105箇所に孔を形成し、最も外周側にセルスタック101を配置するとともに内周側にセルスタック101と改質チューブ102を交互に配置した例である。
【0071】
図6において、105箇所の孔に挿入されるセルスタック101および改質チューブ102のうち、中央を黒で示したものが32本の改質チューブ102であり、中央を白で示したものが73本のセルスタック101である。
セルスタック101はシール部材101bを介して上部管板225aに形成される孔に取り付けられ、改質チューブ102はシール部材102bを介して上部管板225aに形成される孔に取り付けられている。
【0072】
セルスタック101が配置される平面における最も外周側は、それよりも外周側にセルスタック101が存在しないため、局所的な温度上昇が発生しにくい。そのため、最も外周側には改質チューブ102を配置していない。
一方、内周側に配置されるセルスタック101は、隣接する位置に他のセルスタック101が配置されるため、局所的な温度上昇が発生し易い。そこで、
図6に示す例では、局所的な温度上昇が発生し易い内周側に改質チューブ102とセルスタック101を交互に配置し、局所的な温度上昇を抑制している。
【0073】
図6に示すように改質チューブ102とセルスタック101を配置することにより、局所的な温度上昇を抑制しやすい。しかしながら、
図6に示すSOFCカートリッジ203の周囲の温度分布や、
図6に示すSOFCカートリッジ203の各セルスタック101の経年変化等による発熱状態の変化により、
図6に示す配置が適切でない場合も発生する。
【0074】
例えば、
図6に示すように改質チューブ102とセルスタック101を配置した場合に、局所的な温度上昇や局所的な温度低下が発生する場合がある。この場合、局所的な温度上昇が発生する領域のセルスタック101と局所的な温度低下が発生する領域の改質チューブ102を取り替えて、温度分布の偏りを減少させるのが望ましい。
【0075】
前述したように、本実施形態のセルスタック101の基体管101aと改質チューブ102の基体管102aとは同一形状となっている。
そのため、セルスタック101の基体管101aにシール部材101b,シール部材101cを取り付けることにより、上部管板225aおよび下部管板225bに形成される任意の孔に取り付けることができる。
【0076】
同様に、改質チューブ102の基体管102aにシール部材102b,シール部材102cを取り付けることにより、上部管板225aおよび下部管板225bに形成される任意の孔に取り付けることができる。
よって、局所的な温度上昇が発生する領域のセルスタック101と局所的な温度低下が発生する領域の改質チューブ102を取り替えて、温度分布の偏りを減少させることができる。
【0077】
ここで、「同一形状」とは、基体管101aの形状と基体管102aの形状とが完全に一致することに限定されるものではない。
基体管101aの形状と基体管102aの形状とは、それぞれが上部管板225aおよび下部管板225bに形成される孔にシール部材を介して取り付けられる程度に形状が一致していればよい。
例えば、基体管101aと基体管102aのいずれか一方の外径が大きい場合、この外径が上部管板225aおよび下部管板225bに形成される孔の内径以下であり、かつ孔と基体管の外周面との間にシール部材が挿入可能な隙間が形成されていればよい。
【0078】
なお、局所的な温度分布の偏りは、
図6に示すセルスタック101および改質チューブ102が配置される平面方向だけでなく、セルスタック101の基体管101aおよび改質チューブ102の基体管102aが延びる軸方向にも生じる場合がある。
【0079】
図5に示す改質チューブ102は、
図5に示す軸方向(X2方向)のいずれの領域でも改質層102dの厚さを一定とし、各領域における改質反応の促進量を一定とするものであった。
しかしながら、改質チューブ102の基体管102aが延びる軸方向の温度分布に偏りが生じる場合、各領域における改質反応の促進量を温度分布に応じて異ならせるのが望ましい。
【0080】
図7は、改質チューブ102が配置される位置における温度分布の一例を示す図である。
図7において、縦軸は温度を示し、横軸は改質チューブ102の入口部102eの位置を原点とした軸X2方向の位置である。
【0081】
図7(a)は、改質チューブ102の入口部102eから出口部102fに向けて漸次温度が低下する温度分布を示す。
図7(b)は、改質チューブ102の入口部102eから出口部102fに向けて漸次温度が上昇する温度分布を示す。
図7(c)は、改質チューブ102の入口部102eと出口部102fの中間位置である中央部の温度が最も高くなる温度分布を示す。
【0082】
改質チューブ102が配置される位置における温度分布は、例えば、
図7(a),
図7(b),
図7(c)に実線で示すものとなるが、その他の多様な形状の温度分布となり得る。
改質チューブ102は、多様な形状の温度分布となる位置に配置された場合に、その温度分布の偏りを吸熱反応によって相殺するように内周面に配置される改質層102dを調整するのが望ましい。
改質層102dを適宜に調整することにより、
図7の各図に破線で示すように改質チューブ102が配置された位置における軸方向の温度分布を均一化することができる。
【0083】
改質チューブ102の軸方向(X2方向)の各領域における改質反応の促進量を軸方向の温度分布に応じて異ならせる変形例について
図8および
図9を用いて説明する。
図8は、軸方向の温度分布に応じて改質層102dの厚さを異ならせた変形例である。
図9は、軸方向の温度分布に応じた領域に改質層102dを配置し、その他の領域に改質層102dを配置しない変形例である。
【0084】
ここで、改質層102dは、その厚さを厚くするにしたがって炭化水素系ガスの改質反応の促進量が増加する傾向がある。これは、改質層102dの厚さが厚いほど、その領域に存在するNiが多くなるからである。Niが多く存在する領域では、Niの改質反応量が相対的に大きいため、改質層102d内に拡散する炭化水素系ガスの改質反応が促進される。そのため、改質層102dの厚さが厚いほど、吸熱反応による吸熱量が増加する。
【0085】
図8(a)に示す改質層102dは、改質チューブ102が配置される位置における温度分布が
図7(a)に示すものである場合に適している。
図7(a)に示す温度分布は、改質チューブ102の入口部102eから出口部102fに向けて漸次温度が低下するものである。
そのため、
図8(a)に示すように改質層102dの厚さを入口部102eから出口部102fに向けて漸次薄くすることにより、
図7(a)に示す温度分布が吸熱反応によって相殺される。
【0086】
図8(b)に示す改質層102dは、改質チューブ102が配置される位置における温度分布が
図7(b)に示すものである場合に適している。
図7(b)に示す温度分布は、改質チューブ102の入口部102eから出口部102fに向けて漸次温度が上昇するものである。
そのため、
図8(b)に示すように改質層102dの厚さを入口部102eから出口部102fに向けて漸次厚くすることにより、
図7(b)に示す温度分布が吸熱反応によって相殺される。
【0087】
図8(c)に示す改質層102dは、改質チューブ102が配置される位置における温度分布が
図7(c)に示すものである場合に適している。
図7(c)に示す温度分布は、改質チューブ102の入口部102eと出口部102fの中間位置である中央部の温度が最も高くなるものである。
そのため、
図8(c)に示すように改質層102dの厚さを入口部102eと出口部102fの中間位置である中央部で最も厚くすることにより、
図7(c)に示す温度分布が吸熱反応によって相殺される。
【0088】
図9(a)に示す改質層102dは、改質チューブ102が配置される位置における温度分布が
図7(a)に示すものである場合に適している。
図7(a)に示す温度分布は、改質チューブ102の入口部102eから出口部102fに向けて漸次温度が低下するものである。
そのため、
図9(a)に示すように入口部102e側の領域(第1領域)に改質層102dが形成され、それよりも低温となる中央部および出口部102f側の領域(第2領域)には改質層102dが形成されないようにしている。
これにより、
図7(a)に示す入口部102e側の温度分布が吸熱反応によって相殺される。
【0089】
図9(b)に示す改質層102dは、改質チューブ102が配置される位置における温度分布が
図7(b)に示すものである場合に適している。
図7(b)に示す温度分布は、改質チューブ102の入口部102eから出口部102fに向けて漸次温度が上昇するものである。
そのため、
図9(b)に示すように出口部102f側の領域(第1領域)に改質層102dが形成され、それよりも低温となる中央部および入口部102e側の領域(第2領域)には改質層102dが形成されないようにしている。
これにより、
図7(b)に示す出口部102f側の温度分布が吸熱反応によって相殺される。
【0090】
図9(c)に示す改質層102dは、改質チューブ102が配置される位置における温度分布が
図7(c)に示すものである場合に適している。
図7(c)に示す温度分布は、改質チューブ102の入口部102eと出口部102fの中間位置である中央部の温度が最も高くなるものである。
そのため、
図9(c)に示すように入口部102eと出口部102fの中間位置である中央部(第1領域)に改質層102dが形成され、それよりも低温となる入口部102e側および出口部102f側の領域(第2領域)には改質層102dが形成されないようにしている。
これにより、
図7(c)に示す入口部102eと出口部102fの中間位置である中央部の温度分布が吸熱反応によって相殺される。
【0091】
以上説明したように
図8および
図9に示す変形例は、改質層102dの厚さやそれを形成する領域を調整することにより、改質チューブ102の軸方向(X2方向)の各領域における改質反応の促進量を異ならせるものであったが、他の態様であってもよい。
例えば、
図5に示すように改質層102dの厚さを軸方向(X2方向)に一定としつつ、改質層102dに含まれる粒状のNiの粒径を軸方向の温度分布に応じて異ならせるようにしてもよい。
【0092】
この場合、改質チューブ102の軸方向において相対的に高温となる領域の改質層102dに含まれるNiの粒径を相対的に小さくする。これにより、相対的に高温となる領域におけるNiの比表面積を大きくし、改質反応を他の領域よりも促進させることができる。
【0093】
次に、本実施形態のSOFCモジュール201が改質チューブ102に供給される燃料ガスの温度を調整する構成について、
図10を参照して説明する。
図10に示すように、本実施形態のSOFCモジュール201は、SOFCカートリッジ203と、セルスタック101から排出される排燃料ガス(第1排ガス)の一部を改質チューブ102の基体管102aの上流側の燃料ガス供給枝管207aに循環させる循環系統240と、循環系統240に配置される循環ブロワ250および流量調整弁260とを備える。
【0094】
循環ブロワ250は、セルスタック101から排出される排燃料ガスの一部を、循環系統240を介して燃料ガス供給枝管207aまで導くように排燃料ガスを送風する装置である。
流量調整弁260は、開度を調整することによりセルスタック101から排出される排燃料ガスのうち、燃料ガス供給枝管207aへ導かれる排燃料ガスの流量を調整する装置である。
【0095】
SOFCモジュール201が備える制御部(図示略)は、改質チューブ102が配置される位置の温度を温度センサ(図示略)で検出し、目標温度よりも高い場合は流量調整弁260の開度を小さくするよう制御する。一方、制御部(図示略)は、温度センサ(図示略)が検出する温度が目標温度よりも低い場合は流量調整弁260の開度を大きくするよう制御する。
【0096】
循環系統240に導かれる排燃料ガスは、セルスタック101における発熱反応により加熱されている。そのため、循環系統240から燃料ガス供給枝管207aへ排燃料ガスを供給することで、改質チューブ102に供給される燃料ガスの温度が上昇する。
一方で、循環系統240に導かれる排燃料ガスは、セルスタック101における改質反応により燃料が消費されている。そのため、循環系統240から燃料ガス供給枝管207aへ排燃料ガスを供給することで、改質チューブ102に供給される燃料ガスにおける改質反応に寄与する成分が減少する。燃料ガスの改質反応に寄与する成分が減少することにより、改質チューブ102における改質反応による吸熱量が減少する。
【0097】
したがって、流量調整弁260の開度が小さくなると、排燃料ガスによる温度上昇よりも改質チューブ102による改質反応による吸熱量が増加する。
一方、流量調整弁260の開度が大きくなると、それに伴って改質チューブ102に供給される燃料ガスの温度が上昇するが、改質チューブ102に供給される燃料ガスの改質反応に寄与する成分が減少し、改質チューブ102における改質反応による吸熱量が減少する。
【0098】
また、循環系統240から燃料ガス供給枝管207aへ排燃料ガスを供給することにより、排燃料ガスが再びセルスタック101へ供給され、燃料電池セル105における反応に利用される。排燃料ガスが再利用できるのは、排燃料ガスに、セルスタック101から排出される炭化水素系ガス(例えば、メタン)の未反応分と、水蒸気改質反応により生成される水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)の未反応分とが含まれているからである。また、排燃料ガスに、改質チューブ102で生成される水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)が含まれているからである。
【0099】
次に、本実施形態のSOFCモジュール201が改質チューブ102に供給される燃料ガスの温度を調整する構成の変形例について、
図11を参照して説明する。
図11に示すSOFCモジュール201は、
図10に示すSOFCモジュール201の変形例であり、以下で説明する場合を除き、
図10に示す構成と同様であるものとする。
図11に示すSOFCモジュール201は、改質チューブ102の下流側に水素分離器270を設けている点が異なっている。
【0100】
水素分離器270は、改質チューブ102から排出される排燃料ガス(第2排ガス)から水素ガスを分離し、高純度の水素ガスを精製する装置である。水素分離器270として、例えば、パラジウム合金膜透過式の装置を用いることができる。
図11のSOFCモジュール201によれば、改質チューブ102における水蒸気改質反応により生成された排燃料ガスから高純度の水素を精製して、適宜に利用することができる。
【0101】
なお、
図10及び
図11に示すSOFCモジュール201は、循環系統240を介して供給される排燃料ガスをセルスタック101および改質チューブ102の双方へ供給するものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、循環系統240を介して供給される排燃料ガスの全量を改質チューブ102へ供給するようにしてもよい。
【0102】
以上説明した本実施形態のSOFCモジュール201が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態のSOFCモジュール201が備えるSOFCカートリッジ203によれば、セルスタック101の内部に供給される燃料ガスと外部に供給される酸化性ガスとが反応して電力が発生する。一方、改質チューブ102の内部に供給される炭化水素系ガスが改質チューブ102の内周面に形成された改質層102dの作用によって改質反応し、炭化水素系ガスから水素および一酸化炭素を含む合成ガスが生成される。
セルスタック101における反応は発熱反応であり、改質チューブ102における改質反応は吸熱反応である。そのため、運転時に高温となる領域に改質チューブ102を配置することにより、局所的な温度上昇を抑制することができる。
【0103】
本実施形態のSOFCカートリッジ203によれば、複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102は、上部管板225aおよび下部管板225bにより、平面内で所定間隔を空けて配置されるように着脱可能に支持されている。また、セルスタック101の基体管101aと改質チューブ102の基体管102aとは同一形状である。
上部管板225aおよび下部管板225bは、セルスタック101および改質チューブ102を任意の位置に配置して支持することができる。そのため、セルスタック101および改質チューブ102を配置する際の自由度が向上する。
【0104】
更に、相対的に高温となる領域に配置されるセルスタック101を上部管板225aおよび下部管板225bから取り外して改質チューブ102に取り替えて、その領域の局所的な温度上昇を抑制することができる。同様に、相対的に低温となる領域に配置される改質チューブ102を上部管板225aおよび下部管板225bから取り外してセルスタック101に取り替えて、その領域の局所的な温度低下を抑制することができる。
【0105】
このように、本実施形態のSOFCカートリッジ203によれば、複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102が平面内で所定間隔を空けて配置されるSOFCカートリッジ203において、複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102のそれぞれを、運転時の温度分布に応じた適切な位置に配置することができる。
【0106】
本実施形態のSOFCカートリッジ203は、改質チューブ102の軸方向の温度分布に応じて改質層102dの厚さを異ならせてもよい。
このようにすることで、軸方向における相対的に高温となる領域の改質層102dの厚さを厚くして吸熱量を大きくしつつ相対的に低温となる領域の改質層102dの厚さを薄くして吸熱量を小さくすることができる。
【0107】
本実施形態のSOFCカートリッジ203は、改質チューブ102の軸方向において相対的に高温となる領域に改質層102dが形成され、相対的に低温となる領域に改質層102dが形成されないようにしてもよい。
このようにすることで、軸方向における相対的に高温となる領域に改質層102dが形成されるようにして吸熱量を大きくしつつ相対的に低温となる領域に改質層102dが形成されないようにして吸熱量を小さくすることができる。
【0108】
本実施形態のSOFCカートリッジ203において、改質層102dは、改質反応を促進させる粒状のNiを含む層であり、軸方向の温度分布に応じてNiの粒径を異ならせてもよい。
このようにすることで、軸方向における相対的に高温となる領域の改質層102dに含まれるNiの比表面積を大きくして吸熱量を大きくしつつ相対的に低温となる領域の改質層102dに含まれるNiの比表面積を小さくして吸熱量を小さくすることができる。
【0109】
本実施形態のSOFCモジュール201は、複数のSOFCカートリッジ203と、SOFCカートリッジを収容する圧力容器205とを備える。
本実施形態のSOFCモジュール201によれば、複数のセルスタック101および複数の改質チューブ102のそれぞれを、運転時の温度分布に応じて適切な位置に配置した複数のSOFCモジュールを圧力容器205に収容したことにより、燃料電池システムの局所的な温度上昇を抑制することができる。
【0110】
本実施形態のSOFCモジュール201によれば、セルスタック101から排出される排燃料ガスは、循環系統240によって改質チューブ102の基体管102aの上流側へ循環される。排燃料ガスは、セルスタック101における発熱反応によって加熱されている。そのため、改質チューブ102の基体管102aの上流側へ排燃料ガスを循環させて炭化水素系ガスに混入させると、排燃料ガスを混入させない場合に比べて、改質チューブ102の基体管102aの内部を流通するガスの温度が上昇する。
【0111】
また、排燃料ガスは、炭化水素系ガスと比較して改質反応に寄与する成分が少ないガスである。そのため、改質チューブ102の基体管102aの上流側へ排燃料ガスを循環させて炭化水素系ガスに混入させると、排燃料ガスを混入させない場合に比べて、改質チューブ102の改質反応が抑制され、吸熱量も減少する。
【0112】
本実施形態のSOFCモジュール201によれば、流量調整弁260によって基体管102aの上流側へ循環させる排燃料ガスの流量を調整することにより、基体管102aの内部を流通するガスの温度及び成分が調整される。そのため、改質チューブ102における吸熱反応によって周囲の温度が低下しすぎて過冷却状態となるような場合には、基体管102aの上流側へ循環させる排燃料ガスの流量を増加させることにより、過冷却状態となることを防止することができる。
【0113】
本実施形態のSOFCモジュール201は、改質チューブ102から排出される排燃料ガスに含まれる水素ガスを分離する水素分離器270を備えるものであってもよい。
このようにすることで、改質チューブ102から排出される排燃料ガスに含まれる水素ガスを分離して水素ガスを精製することができる。
【0114】
本実施形態のSOFCモジュール201において、循環系統240は、排燃料ガスを基体管102aの上流側および基体管101aの上流側の双方へ循環させる。
このようにすることで、セルスタック101から排出される排燃料ガス中に残存する燃料ガスの未反応分を再びセルスタック101に供給し、燃料ガスの利用率を向上させることができる。