特許第6522408号(P6522408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522408
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20190520BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20190520BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20190520BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190520BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20190520BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/29
   A61K8/891
   A61K8/06
   A61Q17/04
   A61Q19/02
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-89891(P2015-89891)
(22)【出願日】2015年4月25日
(65)【公開番号】特開2016-204321(P2016-204321A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】坂 貞徳
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/042112(WO,A1)
【文献】 特表2009−518329(JP,A)
【文献】 特表平10−513188(JP,A)
【文献】 特開2014−118393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)(B)及び(C)
(A)化1で表わされるアスコルビン酸−2−リン酸塩 1重量%〜5重量%
【化1】
(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン 3重量%〜6重量%(酸化チタン純分として)
(C)ハンセン溶解度パラメーターδが17〜21MPa0.5の油剤 5重量%〜15重量%
を含有し、(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン中、シリカ被覆量が30重量%以上であり、疎水化処理剤の含有量が5重量%以上であることを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、アスコルビン酸−2−リン酸塩及び疎水化処理シリカ被覆酸化チタンを安定に含有する化粧料に関する。より詳細には、疎水化処理シリカ被覆酸化チタンを含有しながらもアスコルビン酸−2−リン酸塩の経時安定性が保たれており、紫外線防御効果と美白効果を両立している油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日光からの紫外線の刺激により、皮膚のメラニン色素の生成が促されると、しみやそばかすの原因である皮膚の色素沈着が生じる。こうした日焼けによるしみやそばかすを防止するために、美白剤を含有した化粧料が用いられてきた。美白剤としては、優れたメラニン色素生成抑制効果やメラニン色素に対する還元性を示すアスコルビン酸及びその塩並びに誘導体が多く用いられている。アスコルビン酸誘導体の代表としてはアスコルビン酸−2−リン酸塩があり、多くの化粧料に含有されている(特許文献1及び2)。
【0003】
しかしながら、アスコルビン酸−2−リン酸塩は日焼け後の美白には効果があるが、紫外線による肌への悪影響を防御する日焼け止めとしての効果はない。このため、美白効果と紫外線防御効果を併せ持つ化粧料が強く望まれていた。
【0004】
従来、化粧料に紫外線防御効果を付与するために、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機系紫外線散乱剤やケイ皮酸系等の有機系紫外線吸収剤等が汎用されてきた(非特許文献1〜3)。
【0005】
一般的に、高い紫外線防御効果を発揮するために有機系紫外線吸収剤を含有すると、べたつきなどの使用感の悪化につながるため、紫外線散乱剤が併用される。しかしながら、紫外線散乱剤である酸化チタンや酸化亜鉛の表面活性や溶出イオン等によって、アスコルビン酸−2−リン酸塩は酸化されて、褐色に変色してしまい化粧料の外観を著しく損なうとともに、美白効果が低減するという欠点を有する。したがって、アスコルビン酸−2−リン酸塩と紫外線散乱剤を併用することは技術的に困難であった。(特許文献3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−243014号公報
【特許文献2】特開平10−7524号公報
【特許文献3】特開2003−342151号公報
【特許文献4】特開2011−173819号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL,27(5),page25−30(1999)
【非特許文献2】J.SOC.COSMET.CHEM.JAPAN,VOL.31,NO.4,page373−384(1997)
【非特許文献3】FRAGRANCE JOURNAL,28(5),page26−32(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明における課題は、高い美白効果と紫外線防御効果を両立しながらも、経時的に美白剤が安定に含有されている油中水型乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる事情に鑑み、本願発明者は鋭意研究の結果、疎水化処理シリカ被覆酸化チタンとアスコルビン酸−2−リン酸塩を組み合わせて含有することにより、高い紫外線防御効果により日焼けを防ぐ効果と日焼けによるしみやそばかすを防止する効果を両立しながらも、経時安定性に優れた油中水型乳化化粧料を提供しうることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本願発明は、次の成分(A)及び(B);
(A)化1で表わされるアスコルビン酸−2−リン酸塩
【化1】
(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン
を含有し、(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン中、シリカ被覆量が30重量%以上であり、疎水化処理剤の含有量が5重量%以上であることを特徴とする油中水型乳化化粧料である。
【0011】
また、本願発明は、更に、ハンセン溶解度パラメーターδが17〜21MPa0.5の範囲にある油剤を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料である。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、疎水化処理シリカ被覆酸化チタンとアスコルビン酸−2−リン酸塩を含有し、高い紫外線防御効果と美白効果を両立するとともに、アスコルビン酸−2−リン酸塩が経時的に安定に含有されている油中水型乳化化粧料に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明で用いられる(A)化1で表わされるアスコルビン酸−2−リン酸塩は、上記化1で表される化合物であって、アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム、アスコルビン酸−2−リン酸カリウム、アスコルビン酸−2−リン酸カルシウム、アスコルビン酸−2−リン酸アンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらアスコルビン酸−2−リン酸塩の1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、水溶性の点からアスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム及び/又はアスコルビン酸−2−リン酸ナトリウムが好ましい。
【0014】
本願発明の化粧料において、(A)化1で表わされるアスコルビン酸−2−リン酸塩の含有量は特に限定されないが、化粧料中1〜5重量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜4重量%含有されるように用いると良い。含有量が1重量%未満であると十分な美白効果が得られず、5重量%を越えて含有しても美白効果の向上が望めないだけではなく、べたつきや変臭などの問題が生じることがある。
【0015】
本願発明に用いられる(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンは、酸化チタン粒子の平均一次粒子径が0.1μm以下のものを使用することが好ましい。酸化チタン粒子の粒子径が0.1μmを超えると、隠蔽力が大きく、白くなり、透明性が低い。酸化チタン粒子の平均一次粒子径の下限は、特に限定されるものではないが、通常、0.01μmである。本願発明において、酸化チタン粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定することで求められる。
【0016】
酸化チタンに被覆するシリカは、結晶性でも非結晶性でもよい。シリカ被覆方法としては特に限定されず、公知の方法にて処理することができる(特許文献5)。例えば、酸化チタン水性懸濁液にシリカゾルを添加して、シリカを酸化チタン表面に析出させる方法などが挙げられる。
【0017】
【特許文献5】特願平10−545415公報
【0018】
(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン中のシリカ含有量は、30重量%以上であることが好ましい。30重量%以上であれば、アスコルビン酸−2−リン酸塩を安定に含有した化粧料を得ることができる。
【0019】
シリカ被覆酸化チタンは、市販品を用いることもできる。例えば「マックスライトTS−01」、「マックスライトTS−04」(昭和電工株式会社製)等を挙げることができ、これらを疎水化処理して好適に用いることができる。
【0020】
疎水化処理の方法としては、特に限定されるものでなく、公知の方法にて処理することができる。例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を用いた処理;オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のシラン化合物を用いた処理;パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理;パーフルオロアルキルトリメトキシシラン等を用いたフッ素処理等が挙げられる。
【0021】
(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン中の疎水化処理剤の含有量は、5重量%以上であることが好ましい。疎水化処理剤が5重量%を下回ると疎水性が不十分になり、水相のアスコルビン酸−2−リン酸塩と直接的に相互作用してしまう結果、アスコルビン酸−2−リン酸塩の安定性が著しく低下してしまう。
【0022】
なお、(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタン中の酸化チタン量及びシリカ被覆量は、医薬部外品原料規格2006記載の「微粒子酸化チタン」及び「無水ケイ酸」の定量法に準じた。
【0023】
(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンの含有量は、特に限定されないが、酸化チタン純分として化粧料中3〜6重量%含有することが好ましく、4〜5重量%含有することがより好ましい。酸化チタン純分として含有量が3重量%未満であると十分な紫外線防御効果が得られず、また、6重量%を越えて含有するときしみ感などの使用感の悪化やアスコルビン酸−2−リン酸塩の安定性の低下が生じることがある。
【0024】
(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンは、市販品を用いることもできる。例えば、「SI−マックスライトTS−01」、「SI−マックスライトTS−04」(三好化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
また、酸化チタンの代わりに酸化亜鉛を用いてシリカ被覆処理及び疎水化処理を行った。得られた疎水化処理シリカ被覆酸化亜鉛を含有した油中水型乳化化粧料を調製し、アスコルビン酸−2−リン酸塩の安定性評価を行ったが、経時的に残存率が低下してしまった。これは、酸化亜鉛に本願発明のシリカ被覆処理及び疎水化処理を用いても、亜鉛イオンの水相中への溶出が抑えられず、亜鉛イオンがアスコルビン酸−2−リン酸塩と直接的に相互作用してしまったためだと考えられる。
【0026】
ハンセン溶解度パラメーターδは、ヒルデブランドによって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものである。分散項δdは無極性相互作用、極性項δpは双極子間力、水素結合項δhは水素結合力を示す。本願発明において、油剤のハンセン溶解度パラメーターδは、油剤の化学構造に基づいて算出することができる。具体的には、次式(1)を用いて計算することができる。
δ=(δd+δp+δh0.5・・・(1)
δ:ハンセン溶解度パラメーター
δd:分散項
δp:極性項
δh:水素結合項
式(1)中、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhは、下記のように原子団のモル引力定数(Fdi、Fpi、Ehi)に基づいて次式(2)〜(4)を用いて計算できる。モル引力定数に関しては、Krevelenらにより定められた値を用い(非特許文献5)、モル体積(Vi)に関してはFedorsにより定められた原子団の体積値を用いた(非特許文献6)。
δd=ΣFdi/ΣVi・・・・・・・・・・・(2)
δp=(ΣFpi0.5/ΣVi・・・・・・・(3)
δh=(ΣEhi/ΣVi)0.5・・・・・・・(4)
Fdi、Fpi、Ehi:モル引力定数、Vi:モル体積
【0027】
【非特許文献5】Properties of Polymers.page152−155
【非特許文献6】Polym.Eng.Sci.,VOL14[2]、page147−154(1974)
【0028】
本願発明に用いられる(C)ハンセン溶解度パラメーターδが17〜21MPa0.5の範囲にある油剤は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、ラウロイルサルコシンイソプロピル(δ=20.6、原料名:エルデュウ SL−205、味の素株式会社製)、安息香酸フェネチル(δ=19.4、原料名:X−TEND 226、Ashland INC製)、トリイソノナノイン(δ=17.1、原料名:ISODRAGOL、シムライズ株式会社製)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
(C)ハンセン溶解度パラメーターδが17〜21MPa0.5の範囲にある油剤の含有量は、特に限定されないが、5〜15重量%が好ましく、7〜12重量%がより好ましい。5重量%より少ない場合には、(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンの分散性を高める効果が期待できない場合があり、15重量%よりも多い場合には、べたつくなど使用感が悪くなる場合がある。
【0030】
本願発明の油中水型乳化化粧料は、本願発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、前記成分以外の各種成分、例えば、紫外線吸収剤、pH調整剤、油剤、保湿剤、水性成分、界面活性剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料等を各種の効果を付与するために適宜含有することができる。特に、紫外線吸収剤を組み合わせることによって、広いUV領域で高い紫外線防御効果を発揮する。特にUVA領域の紫外線吸収剤とUVB領域の紫外線吸収剤を組み合わせることによって広いUV領域で高い紫外線防御効果を発揮する。
【0031】
以下に実施例を挙げて、本願発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本願発明を何ら限定するものではない。含有量は重量%である。
【0032】
実施例に先立ち、本願発明で用いた効果試験方法について述べる。
【0033】
[加速試験による安定性]
(1)乳化粒子の経時安定性
化粧料を温度40℃、相対湿度75%の条件で3ヶ月間保存した。乳化粒子を顕微鏡にて観察し、下記の基準に従って判定した。
(評価基準)
◎:乳化粒子の粒径は初期状態と差異が認められない
○:乳化粒子の粒径が明らかに大きくなっているが乳化状態を保っている
×:結晶析出・乳化粒子が崩壊している
【0034】
(2)分散状態の経時安定性
化粧料を温度40℃、相対湿度75%の条件で3ヶ月間保存した。顕微鏡及び目視にて観察し、下記の基準に従って判定した。
(評価基準)
◎:均一に分散しており、初期状態とほとんど差異が認められない
○:凝集がやや進行しているが、目視では判別できない
×:凝集が進行し、ゲル化等が目視でも確認できる
【0035】
(3)アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム安定性の評価
化粧料を温度40℃、相対湿度75%の条件で3ヶ月間保存した。高速液体クロマトグラフィーを用いて化粧料中のアスコルビン酸−2−リン酸マグネシウムの定量分析を行い下記基準で評価した。なお、定量法は、医薬部外品原料規格2006に記載の「リン酸L−アスコルビルマグネシウム」の定量法に準じた。そして、定量したアスコルビン酸−2−リン酸マグネシウムの含有量を、保存開始時における同化合物の含有量を100%としたときの相対値(%:残存率)として評価した。
◎:アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム残存率が95%以上
○:アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム残存率が90%以上95%未満
×:アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム残存率が90%未満
【0036】
[使用感]
(1)べたつきのなさ
専門パネル20名により、各化粧料について、肌に塗布した際のべたつきのなさについて使用テストを行い、アンケートの結果から下記の基準に従って判定した。
(評価基準)
◎:20名中、15名以上がべたつかないと回答した
○:20名中、10〜14名がべたつかないと回答した
△:20名中、5〜9名がべたつかないと回答した
×:20名中、4名以下がべたつかないと回答した
【0037】
(2)きしみ感のなさ
専門パネル20名により、各化粧料について、肌に塗布した際のきしみ感のなさについて使用テストを行ない、アンケートの結果から下記の基準に従って判定した。
(評価基準)
◎:20名中、15名以上がきしまないと回答した
○:20名中、10〜14名がきしまないと回答した
△:20名中、5〜9名がきしまないと回答した
×:20名中、4名以下がきしまないと回答した
【0038】
表1及び表2に示す処方の油中水型乳化化粧料を調製し、乳化粒子の経時安定性、分散安定性、アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム安定性、使用感の評価を前記の基準に従って行った。
【0039】
表1及び表2の処方により得られた油中水型乳化化粧料は、以下に示す製造方法により調製した。
(製造方法)
油相、水相をそれぞれ均一に分散した。油相へ水相を撹拌しながら徐々に添加して、常温にてホモミキサーを5000rpmで5分間運転することで乳化した。乳化後、脱泡して表1及び表2の油中水型乳化化粧料を得た。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す結果から、(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩及び30重量%以上のシリカ被覆量であり5重量%以上の疎水化処理剤含有量である(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンを含有する化粧料(実施例1〜9)は、優れた使用感を有し、(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩安定性及び化粧料の安定性も優れていることが分かる。一方、酸化チタンのシリカ処理が30重量%に満たない場合、又は疎水化処理が5重量%に満たない化粧料(比較例1〜7)では、満足な使用感又は(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩及び/又は化粧料の安定性が得られなかった。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示す結果から、(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩及び30重量%以上のシリカ被覆量であり5重量%以上の疎水化処理剤含有量である(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンを含有する化粧料(実施例10〜18)は、優れた使用感を有し、(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩の安定性及び化粧料の安定性も優れており、本願発明効果が得られた。特に、(C)ハンセン溶解度パラメーターδが17〜21MPa0.5の油剤を含有する油中水型乳化化粧料(実施例10〜15)は、すべての評価項目において格段に優れた評価結果であった。
【0044】
なお、表1及び表2中、以下に示す成分は下記製品を用いた。
※1 SI−マックスライト TS−04 (三好化成工業株式会社製)
※2 SI−マックスライト TS−01 (三好化成工業株式会社製)
※3 STR−100W−LP (堺化学工業株式会社製)
※4 マックスライト TS−04−D (昭和電工株式会社製)
※5 マックスライト TS−043−D (昭和電工株式会社製)
※6 MT−02 (テイカ株式会社製)
※7 MT−01 (テイカ株式会社製)
※8 エルデュウ SL−205 (味の素株式会社製)
※9 マックスライト TS−04 (昭和電工株式会社製)
※10 STR−100W (堺化学工業株式会社製)
※11 セバチン酸ジエチル (日本精化株式会社製)
※12 クロダモル OSU (クローダジャパン株式会社製)
※13 EIS−V (高級アルコール工業株式会社製)
※14 NPDIN (高級アルコール工業株式会社製)
※15 Elefac I−205(Bernel Chemical Company製)
【0045】
以下に本願発明を、詳細に説明するため実施例を挙げて説明する。
【0046】
実施例19 クリーム状美白日焼け止め化粧料
含有成分 含有量(重量%)
油相
(1) ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.00
(2) メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10.00
(3) ラウロイルサルコシンイソプロピル※8 12.00
(4) デカメチルテトラシロキサン 12.00
(5) ネオペンタン酸オクチルドデシル※15 10.00
(6) ペンタオキシステアリン酸デカグリセリル 1.00
(7) ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30 0.50
(8) 5%シリコーン処理31%シリカ被覆酸化チタン※1 5.00
(9) ジステアルジモニウムヘクトライト 1.50
水相
(10) 精製水 残量
(11) 1,3−ブチレングリコール 10.00
(12) アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム 3.00
(13) クエン酸ナトリウム 3.00
(14) EDTA−4Na 0.10
(15) エタノール 4.00
(16) パラオキシ安息香酸メチル 0.20
【0047】
(調製方法)
成分(1)を成分(2)に加熱溶解後、成分(3)〜(9)を加えて均一に分散した。これに成分(10)〜(16)の混合水溶液を加え、常温にてホモミキサーを5000rpmで5分間運転することで乳化した。乳化後、脱泡して油中水型乳化化粧料を得た。
【0048】
(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩及び(B)疎水化処理シリカ被覆酸化チタンを含有した実施例19は、優れた使用感を有し、(A)アスコルビン酸−2−リン酸塩の安定性及び化粧料の安定性も優れていた。美白効果と紫外線防御効果を併せ持ち、経時的に安定性の高い油中水型乳化化粧料が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明によれば、美白効果と紫外線防御効果を両立し、かつ経時的に安定性の高い油中水型乳化化粧料を提供できる。