【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施例に係る制御パラメータ最適化システムの構成を示すブロック図である。
図1において、制御パラメータ最適化システム100は、目的関数設定部1と、制御パラメータ最適化部2と、プラントモデル3と、制御パラメータ設定部4と、物理パラメータ設定部5と、設計パラメータ設定部6とを備えている。
【0012】
目的関数設定部1は、オペレータによって入力された目的関数を制御パラメータ最適化部2に設定する。ここでいう目的関数とは、プラント運転制御における改善項目(起動時間、負荷変化率、機器の寿命消費量、燃料コスト、発電効率等)であり、プラントのプロセス量の関数で定義される。なお、目的関数設定部1に入力される目的関数は、1つでも複数でもよい。また、目的関数設定部1に目的関数を入力する方法としては、制御パラメータ最適化システム100内の記憶装置に予め目的関数のリストを記憶しておき、このリストの中から最適化したい目的関数をオペレータに選択させる方法を用いてもよい。
【0013】
制御パラメータ最適化部2は、プラントの制御パラメータのうち、目的関数の最適化に用いる制御パラメータ(以下適宜「最適化制御パラメータ」という。)を選定する最適化制御パラメータ選定部7と、最適化制御パラメータ選定部7によって選定された最適化制御パラメータの値を調整する最適化制御パラメータ調整部8とを備えている。
【0014】
最適化制御パラメータ選定部7は、まず、オペレータによって手動入力され、又は外部システムから自動入力された制御ロジック情報に基づき、目的関数と関連を有する制御パラメータ(以下適宜「関連制御パラメータ」という。)を抽出する。続いて、関連制御パラメータの中から目的関数に対して高い感度を有するものを最適化制御パラメータとして選定し、最適化制御パラメータ調整部8に出力する。ここで、目的関数に対する関連制御パラメータの感度は、プラントモデル3を用いた感度解析よって得られる。
【0015】
以下、最適化制御パラメータ選定部7による関連制御パラメータの抽出手順の一例を
図2を用いて説明する。
図2は、最適化制御パラメータ選定部7に入力される制御ロジック情報の一例を示す図である。
図2において、制御ロジック情報20は、信号線を介して階層的に接続された複数の制御ロジック21〜24で構成されている。なお、制御ロジック21の上位側、又は制御ロジック23,24の下位側にも制御ロジックが接続されている場合もあるが、説明の簡略化のため、それらの図示は省略している。
【0016】
〜抽出手順1〜
最適化制御パラメータ選定部7は、まず、目的関数設定部1によって設定された目的関数(本例では、目的関数A1とする。)に対応する信号を制御ロジック21〜24の中から検出する。制御信号の検出方法としては、目的関数の名称の文字列と一致又は近似する文字列の名称が付された制御信号を制御ロジック中から検索する方法などがある。本例では、制御ロジック21において、目的関数A1の文字列“A1”と一致する文字列の名称が付された信号A1が検出される。ここで、目的関数に対応する信号の検出結果を外部モニター等に表示し、検索結果の適否をオペレータに確認させる、あるいは、複数の信号が検出された場合はその中から適切なものを選択させるなど、対話的に目的関数に対応する信号を検出するように構成してもよい。
【0017】
〜抽出手順2〜
続いて、目的関数に対応する信号A1が出力される制御ロジック21を参照し、信号A1に接続する制御パラメータPA1を関連制御パラメータとして抽出すると共に、信号A1に接続する信号B3を検出する。
【0018】
〜抽出手順3〜
続いて、信号B3が出力される制御ロジック22を参照し、信号B3に接続する制御パラメータPB2,PB3を関連制御パラメータとして抽出すると共に、信号B3に接続する信号C2,D1を検出する。
【0019】
〜抽出手順4〜
続いて、信号C2が出力される制御ロジック23を参照し、信号C2に接続する制御パラメータPC1,PC2を関連制御パラメータとして抽出する。また、信号D1を出力する制御ロジック24を参照し、信号D1に接続する制御パラメータPD1,PD2を関連制御パラメータとして抽出する。
【0020】
〜以下省略〜
このように、目的関数に対応する信号A1に接続する制御パラメータを制御ロジック21〜24の下位側に遡って検出することにより、目的関数A1と関連を有する制御パラメータ(関連制御パラメータ)を抽出することができる。ここで、目的関数と過去に抽出した関連制御パラメータとの対応情報を制御パラメータ最適化システム100内の記憶装置に記憶しておき、同じ目的関数が設定された場合に、この対応情報から関連制御パラメータを抽出するように構成してもよい。これにより、同じ目的関数が設定された場合に、上記の抽出手順を省略することができ、関連制御パラメータの抽出に要する時間を短縮することができる。
【0021】
最適化制御パラメータ選定部7は、上記の抽出手順に従って抽出した関連制御パラメータの中から、目的関数に対して高い感度を有する1つ又は複数の関連制御パラメータを最適化制御パラメータとして選定する。関連制御パラメータの目的関数に対する感度は、例えば、関連制御パラメータの変化量に対する目的関数の変化量の比で定義され、関連制御パラメータごとに値を変化させてプラントモデル3に入力し、プラントモデル3に目的関数を計算させることにより得られる。ここで、最適化制御パラメータとして選定された関連制御パラメータを外部モニター等に表示し、オペレータに確認させる、あるいは、感度の高い順に複数の関連制御パラメータを表示し、その中から最適化制御パラメータを選択させるなど、対話的に最適化制御パラメータを選定するように構成してもよい。
【0022】
最適化制御パラメータ調整部8は、目的関数設定部1によって設定された目的関数が最適化されるように、最適化制御パラメータ選定部7によって選定された最適化制御パラメータの値を調整し、調整後の最適化制御パラメータを最適化制御パラメータ設定部201に出力すると共に、最適化された目的関数(最適解)を外部出力インターフェース14に出力する。以下、最適化制御パラメータ選定部7による最適化制御パラメータの値の調整手順の一例を説明する。
【0023】
〜調整手順1〜
最適化制御パラメータ調整部8は、まず、最適化制御パラメータ選定部7によって選定された最適化制御パラメータに所定の値を設定し、プラントモデル3に入力する。プラントモデル3は、最適化制御パラメータ調整部8から入力された最適化制御パラメータの値に基づいて目的関数を計算し、制御モデル9に出力する。
【0024】
〜調整手順2〜
最適化制御パラメータ調整部8は、プラントモデル3から出力された目的関数の計算値と予め定められた目標値との差が小さくなるように、最適化制御パラメータ値を調整する。
【0025】
最適化制御パラメータ調整部8は、以上の調整手順を1回又は複数回繰り返して実行することにより、最適化制御パラメータの値を調整する。ここで、最適化制御パラメータの値の調整には、多目的進化的アルゴリズムや逐次2次計画法などの既存の最適化アルゴリズムを適用することができる。
【0026】
なお、制御対象プラントの制御盤において、制御パラメータが一定値でなく、例えばプラントのプロセス量の関数で定義される場合は、予め設定された数点のプロセス量ごとに上述した調整手順を実行して最適化制御パラメータの値を求め、これらの値を補完する関数を最適化制御パラメータとしてもよい。
【0027】
制御パラメータ設定部4は、オペレータによって手動入力され、又は外部システムから自動入力されたプラントの制御パラメータ情報から、プラントモデル3内の制御モデル9(後述)を構築するために必要な制御パラメータを抽出し、制御モデル9に設定する。ここでいう制御パラメータ情報とは、プラントの被制御量に対する制御設定値や制御ゲインの項目、値、上限値又は下限値など、制御盤が記憶している制御パラメータに関する情報である。なお、変形例として、制御パラメータ設定部4には、制御パラメータ情報に代えて、プラントの制御ロジック情報を入力してもよい。この場合、制御パラメータ設定部4は、入力された制御ロジック情報から信号線、状態シンボル、数値等の情報をパターン認識し、制御ロジック中で数値を与えられている項目、つまり制御パラメータとその値、すなわち制御パラメータ情報を抽出する必要がある。
【0028】
物理パラメータ設定部5は、オペレータによって手動入力され、又は外部システムから自動入力されたプラント特性情報から、プラントモデル3内の物理モデル10(後述)を構築するために必要な物理パラメータを抽出し、物理モデル10に設定する。ここでいうプラント特性情報とは、ガスタービンやボイラ等の熱源負荷に応じて発生する蒸気の温度、流量、圧力などのプラント固有の熱平衡についての情報である。なお、変形例として、物理パラメータ設定部5には、プラント特性情報に代えて、プラントの運転データ(計測項目とその値など)を入力してもよい。この場合、物理パラメータ設定部5は、入力された運転データ(例えば熱源負荷に対応する蒸気の温度、流量、圧力など)を参照し、物理モデル10を構築するために必要な物理パラメータの値を抽出する必要がある。
【0029】
設計パラメータ設定部6は、オペレータによって手動入力され、又は外部システムから自動入力されたプラント設計情報から、プラントモデル3内の物理モデル10を構築するために必要な設計パラメータを抽出し、プラントモデル3内の物理モデル10(後述)に設定する。ここでいうプラント設計情報とは、プラントの機器容積、配管長など、プラント固有の設計情報である。
【0030】
ここで、制御パラメータ設定部4、物理パラメータ設定部5又は設計パラメータ設定部6によって抽出された各パラメータの名称が、プラントモデル3に登録されている各パラメータの名称と一致しない場合は、名称が類似するパラメータ同士を対応付けて外部モニター等に表示し、オペレータがその対応の適否を確認できるように構成してもよい。
【0031】
プラントモデル3は、制御対象プラントの制御装置の動作を模擬する制御モデル9と、制御対象プラントの被制御装置の動作を模擬する物理モデルとを備えている。
【0032】
制御モデル9は、プラントのプロセス量を制御指令値に変換するテーブル関数、プロセス量と予め設定された閾値との大小関係に応じてパルス信号を生成する関数、又はこれらの組み合わせによって構築され、物理モデル10から入力されたプラントのプロセス量の計算値に基づいて制御指令値を計算し、物理モデル10に出力する。また、制御モデル9は、物理モデル10から入力されたプラントのプロセス量に基づいて目的関数を計算し、最適化制御パラメータ選定部7と最適化制御パラメータ調整部8とに出力する。
【0033】
ここで、プラントモデル3は、複数の異なるプラント制御方式のそれぞれに対応した複数の制御モデル9を制御モデルライブラリとして備え、制御対象プラントの制御方式に応じて制御モデル9を選択してもよい。これにより、制御パラメータ最適化システム100を異なる制御方式のプラントにも適用することが可能となる。
【0034】
物理モデル10は、制御モデル9から入力された制御指令値に基づいてプラントのプロセス量を計算し、制御モデル9に出力する。具体的には、入力された制御指令値から燃料及び蒸気の流量並びに各流量に対応する弁開度を決定し、各流量下でのガス及び蒸気の物質収支及び熱収支から、それぞれの温度・圧力・流量を計算する。
【0035】
ここで、プラントモデル3は、複数の異なるプラント機器構成又はプラント型式のそれぞれに対応した複数の物理モデル10を物理モデルライブラリとして備え、制御対象プラントの機器構成又は型式に対応した物理モデル10を選択してもよい。これにより、制御パラメータ最適化システム100を異なる機器構成又は型式のプラントにも適用することが可能となる。
【0036】
図3は、本実施例に係る制御パラメータ最適化システム100を適用した運転制御最適化装置の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御パラメータ最適化システム100を適用した運転制御最適化装置101を発電プラント300に接続することにより、発電プラント300の運転制御において、オペレータによって指定された目的関数を最適化することができる。
【0037】
発電プラント300は、燃料を燃焼させて電力を生成する発電設備301と、発電設備301を制御する制御装置302と、制御ロジックデータベース303と、時系列信号データベース304と、設計情報データベース305とを備えている。
【0038】
発電設備301は、制御装置302から入力された制御指令値に基づいて制御される。発電設備301は、各所に計測装置を備えており、これら計測装置によって計測されたプロセス量は、制御装置302と時系列信号データベース304とに出力される。
【0039】
制御装置302は、制御ロジックデータベース303に記憶されている制御プログラムに従い、発電設備301から入力されたプロセス量に基づいて制御指令値を計算し、発電設備301に出力する。
【0040】
制御ロジックデータベース303は、発電設備301の制御に用いる各種制御ロジックと、これら制御ロジックに基づいて生成された制御装置302の制御プログラムとを記憶している。時系列信号データベース304は、発電設備301から入力された各種プロセス量を記憶する。設計情報データベース305は、発電プラント300の設計情報を記憶している。
【0041】
運転制御最適化装置101は、制御パラメータ最適化システム100と、データ入出力部200と、外部入力インターフェース13と、外部出力インターフェース14とを備えている。
【0042】
データ入出力部200は、発電プラント300と制御パラメータ最適化システム100との間でデータの入出力を行う部分であり、最適化制御パラメータ設定部201と、制御パラメータ情報抽出部202と、プラント特性情報抽出部203と、プラント設計情報抽出部204と、制御ロジック情報抽出部205とを備えている。制御パラメータ情報抽出部202は、発電プラント300内の制御ロジックデータベース303から制御ロジック情報を抽出し、制御パラメータ設定部4に出力する。プラント特性情報抽出部203は、発電プラント300内の時系列信号データベース304からプラント特性情報を抽出し、物理パラメータ設定部5に出力する。プラント設計情報抽出部204は、発電プラント300内の設計情報データベース305からプラント設計情報を抽出し、設計パラメータ設定部6に出力する。制御ロジック情報抽出部205は、発電プラント300内の制御ロジックデータベース303から制御ロジック情報を抽出し、最適化制御パラメータ選定部7に出力する。なお、最適化制御パラメータ設定部201の機能については後述する。
【0043】
制御パラメータ最適化システム100は、制御パラメータ情報抽出部202、プラント特性情報抽出部203、プラント設計情報抽出部204及び制御ロジック情報抽出部205から入力された各情報に基づいて、目的関数の最適化結果(最適解及びそれに対応する最適化制御パラメータ)を計算し、最適化制御パラメータ設定部201と外部出力インターフェース14とに出力する。
【0044】
外部入力インターフェース13は、外部入力装置11から入力された目的関数を、制御パラメータ最適化システム100の目的関数設定部1に出力する。これにより、オペレータは、外部入力装置11の操作を介して、最適化したい目的関数を指定することができる。
【0045】
外部出力インターフェース14は、制御パラメータ最適化システム100の制御パラメータ最適化部2から出力された目的関数の最適化結果を外部出力装置12に出力する。ここで、外部出力装置12は、PCモニターなどの画面表示機能を有する装置によって構成されている。これにより、オペレータは、外部出力装置12を介して目的関数の最適化結果を確認することができる。
【0046】
以下、制御パラメータ最適化システム100をプラント起動時の運転制御に適用した場合の目的関数の最適解について説明する。
図4(a)は、目的関数として起動時間及び寿命消費量が設定された場合の最適解の表示例を示す図である。発電プラントにおいては、一般的に起動時間と寿命消費量とはトレードオフの関係にあり、例えば公知の多目的遺伝的アルゴリズムを最適化制御パラメータ調整部8における最適化手法として適用した場合、最適化前の目的関数T0に対し、起動時間及び寿命時間がトータルで改善するような複数の最適解T1〜T7が計算される。また、
図4(a)のように、最適解T1〜T7と共に最適化前の目的関数T0を表示することにより、オペレータは、最適化による目的関数の改善効果を確認することができる。
【0047】
一方、
図4(b)は、目的関数として起動時間、寿命消費量及び燃料コストが設定された場合の最適解の表示例を示す図である。なお、4つ以上の目的関数が設定された場合は、3つ以下の目的関数ごとに分けて表示してもよい。例えば4つの目的関数が設定された場合は、3つの目的関数と残り1つの目的関数とに分けて、あるいは、2つの目的関数と残り2つの目的関数とに分けて表示する。
【0048】
なお、
図4(a)に示すように、目的関数の最適化結果として複数の最適解T1〜T7が計算された場合は、各最適解の運転特性を外部出力装置12の画面上で確認できるように構成してもよい。この場合の構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、目的関数として起動時間及び寿命消費量が設定された場合の最適解のその他の表示例を示す図である。
図5において、外部出力装置12の表示画面121には、目的関数の最適解を表示する最適解表示部122と、プラントのプロセス量をリスト表示するリスト表示部123と、プロセス量の時系列データを表示する時系列データ表示部124とが表示される。オペレータが、外部入力装置11の操作を介して、最適解表示部122に表示された複数の最適解T1〜T7のいずれかを選択し、リスト表示部123に表示されたプロセス量の1つ又は複数にチェックを入れると、最適解表示部122において選択された最適解に対応するプロセス量のうち、リスト表示部123においてチェックされたものの時系列データが時系列データ表示部124に表示される。これにより、オペレータは、複数の最適解T1〜T7のそれぞれについて運転特性を確認することができる。
【0049】
図3に戻り、データ入出力部200の最適化制御パラメータ設定部201は、制御パラメータ最適化システム100から出力された最適化結果(複数の最適解及びそれぞれに対応する最適化制御パラメータ)のうち、オペレータによる外部入力装置11の操作を介して選択された最適解に対応する最適化制御パラメータを発電プラント300の制御ロジックデータベース303に設定する。一方、複数の最適解のいずれもオペレータによって選択されなかった場合は、いずれの最適化制御パラメータも制御ロジックデータベース303に設定しない。これにより、制御パラメータ最適化システム100によって計算された複数の最適解のうち、所望の運転特性を実現できる運転解を発電プラント300の実制御に反映されることが可能となる。
【0050】
本実施例に係る制御パラメータ最適化システム100によれば、発電プラント300の制御ロジックデータベース303に記憶されている制御パラメータの値を調整して目的関数の最適化を行うため、既設の発電プラント300に適用する際に制御盤や機器類を改造する必要がなく、かつ、目的関数設定部1によって最適化したい目的関数を設定することができるため、オペレータからの様々な運転要求に応じて発電プラント300の運転制御を最適化することが可能となる。
【0051】
さらに、最適化制御パラメータ選定部7が、発電プラント300の制御ロジック情報20から目的関数と関連を有する制御パラメータ(関連制御パラメータ)を抽出し、その中から目的関数に対して高い感度を有する制御パラメータ(最適化制御パラメータ)を選定することにより、オペレータが自身の経験に基づいて制御パラメータの選定した場合よりも効率的に目的関数を最適化することが可能となる。また、プラントモデル3を用いて値を調整する制御パラメータが最適化制御パラメータに限定されるため、プラントモデル3の計算量を最小限に抑えることができる。
【0052】
さらに、制御パラメータ設定部4が、発電プラント300から抽出された制御パラメータを制御モデル9に設定し、物理パラメータ設定部5及び設計パラメータ設定部6が、発電プラント300から抽出された物理パラメータ及び設計パラメータをそれぞれ物理モデル10に設定することにより、発電プラント300の動作を忠実に模擬するプラントモデル3が構築されるため、最適化制御パラメータ選定部7における選定精度、及び最適化制御パラメータ調整部8における調整精度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施例に係る運転制御最適化装置101によれば、データ入出力部200が、発電プラント300と制御パラメータ最適化システム100との間のデータの入出力を行うことにより、オペレータによる入出力操作が不要となるため、オペレータの作業量を低減することができる。
【0054】
さらに、外部出力装置12及び外部入力装置11を介して、オペレータは、制御パラメータ最適化システム100によって計算された複数の最適解のそれぞれについて動的特性を確認できるため、所望の動的特性を実現できる最適解を発電プラント300の実制御に反映させることが可能となる。
【実施例2】
【0055】
図6は、第2の実施例に係る運転制御最適化装置の構成を示すブロック図である。
図6において、本実施例に係る運転制御最適化装置101Aは、プラント運転制限値計算部15と最適解選択部16とを更に備えている点で第1の実施例に係る運転制御最適化装置101(
図3参照)と異なる。
【0056】
プラント運転制限値計算部15は、プラント特性情報抽出部203によって抽出されたプラント特性情報とプラント設計情報抽出部204によって抽出されたプラント設計情報とに基づいてプラント運転制限値を計算し、最適解選択部16に出力する。ここでいうプラント運転制限値とは、プラントのプロセス量(構成機器の寿命消費量や温度、圧力、負荷変化率など)の制限値(上限値又は下限値)である。
【0057】
プラント運転制限値計算部15によるプラント運転制限値の計算手順の一例として、蒸気タービンロータの起動1回あたりの寿命消費量(以下単に「寿命消費量」という。)の制限値をプラント運転制限値とした場合の計算手順を説明する。プラント運転制限値計算部15は、まず、公知の疲労寿命評価法を用いて、プラント特性情報に含まれる蒸気タービンロータに生じる熱応力とプラント設計情報に含まれるロータ材質とから蒸気タービンロータの寿命消費量を計算する。続いて、蒸気タービンロータの総寿命量から過去の運転サイクルにおける寿命消費量の総和を減算することにより残寿命量を計算し、この残寿命量を残りの計画起動回数で除算することにより寿命消費量を計算する。
【0058】
最適解選択部16は、制御パラメータ最適化部2から入力された複数の最適解のうち、プラント運転制限値計算部15から入力されたプラント運転制限値を満たす最適解を選定し、その最適解に対応する最適化制御パラメータを最適化制御パラメータ設定部201に出力する。
【0059】
最適解選択部16の機能の詳細について、
図7を用いて説明する。
図7は、目的関数として起動時間及び寿命消費量が設定され、プラント運転制限値として寿命消費量の上限値が設定された場合における、複数の最適解とプラント運転制限値との関係の一例を示す図である。最適解選択部16は、複数の最適解T1〜T7のうち、プラント運転制限値Lを満たす最適解T3〜T7のいずれか1つを選定する。
図7では、プラント運転制限値Lを満たす最適解T3〜T7のうち、プラント運転制限値Lに最も近い最適解T3を選定した例を示しているが、その他にも種々の選定方法が考えられる。例えば、プラント運転制限値Lを満たす最適解T3〜T7のうち、起動時間及び寿命消費量の加重平均が最小となる最適解を選定してもよい。
【0060】
本実施例に係る運転制御最適化装置101Aによれば、第1の実施例と同様の効果が得られることに加えて、制御パラメータ最適化部2によって計算された複数の最適解のうち、プラント運転制限値計算部15によって計算されたプラント運転制限値を満たす最適解を最適解選択部16が選択することにより、オペレータによる選択操作が不要となるため、オペレータの作業量を低減することができる。
【0061】
(その他)
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、第1の実施例に係る運転制御最適化装置101(
図3参照)及び第2の実施例に係る運転制御最適化装置101A(
図6参照)は、それぞれデータ入出力部200を備え、発電プラント300から制御パラメータ最適化システム100への必要なデータの入力を自動で行う構成としたが、本発明はこれに限定されず、オペレータが手動で行ってもよい。
【0062】
また、最適化制御パラメータ選定部7、制御モデル9及び物理モデル10への入力情報を制御パラメータ最適化システム100内の記憶装置に記憶しておき、制御パラメータ最適化システム100を他の同型かつ同規模のプラントに適用した際に、最適化制御パラメータ選定部7、制御モデル9又は物理モデル10への入力情報の一部に欠損があった場合は、当該記憶装置に蓄積されている過去の入力情報から当該欠損部分のデータを補うように構成してもよい。
【0063】
また、各実施例では、制御パラメータ最適化システム100をプラント起動時の運転制御に適用した場合、すなわちプラント停止中(起動前)に制御パラメータを最適化する場合の例を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばプラント運転中に制御パラメータを逐次最適化することも可能である。