特許第6522669号(P6522669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6522669ケラチン表面に長期持続性皮膜を提供するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522669
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ケラチン表面に長期持続性皮膜を提供するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20190520BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20190520BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20190520BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20190520BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20190520BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20190520BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20190520BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/58
   A61K8/891
   A61K8/25
   A61Q1/10
   A61Q5/10
   A61Q1/02
   A61Q1/12
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-571688(P2016-571688)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公表番号】特表2017-521384(P2017-521384A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】US2015034223
(87)【国際公開番号】WO2015191365
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】14/299,518
(32)【優先日】2014年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100171505
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 由美
(72)【発明者】
【氏名】ステプニウスキ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】セルラノ−ゴドイ,ミラグロ
(72)【発明者】
【氏名】マロッタ,ポール
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−517270(JP,A)
【文献】 特表2013−504578(JP,A)
【文献】 特開2001−172139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/31
A61K 8/25
A61K 8/58
A61K 8/891
A61Q 1/02
A61Q 1/10
A61Q 1/12
A61Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の揮発性溶媒、少なくとも1種の架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤、並びに、ベントナイト及びヘクトライトの混合物を含む5〜12%のモンモリロナイト鉱物を含有する、ケラチン表面のための化粧用組成物であって、ヘクトライトに対するベントナイトの比率がヘクトライト1部に対してベントナイト2〜4部の範囲であり、揮発性溶媒が組成物全体の45〜90重量%含まれ、揮発性溶媒が、揮発性パラフィン系炭化水素及び揮発性シリコーンの混合物を、揮発性シリコーン1部に対して揮発性パラフィン系炭化水素2〜4部の比率で含有し、かつ架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤が組成物全体の1〜30重量%存在し、パーセンテージ及び比率は全て重量によるものである、上記組成物。
【請求項2】
揮発性パラフィン系炭化水素がイソドデカンを含み、揮発性シリコーンがトリシロキサンを含む、請求項記載の組成物。
【請求項3】
架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤がジメチコンシリレートである、請求項記載の組成物。
【請求項4】
ベントナイトが、水素化タロウアルコニウムベントナイト、クオタニウム-18ベントナイト、ベンザルコニウムベントナイト、クオタニウム-90ベントナイト、ステアルアルコニウムベントナイト、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ベントナイトがクオタニウム-18ベントナイトを含有する、請求項記載の組成物。
【請求項6】
ヘクトライトが、ジヒドロタロウベンジルモニウムヘクトライト、ジステアルジモニウムヘクトライト、クオタニウム-18ヘクトライト、ステアルアルコニウムヘクトライト、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ヘクトライトがジステアルジモニウムヘクトライトである、請求項記載の組成物。
【請求項8】
組成物全体の重量に対して
シリコーン1部に対して2〜4部のパラフィン系炭化水素の比率でパラフィン系炭化水素及びシリコーンの混合物を含む45〜90%の揮発性溶媒;
1〜30%のジメチコンシリレート;並びに
ベントナイト及びヘクトライトの混合物を含む8.5〜10.0%のモンモリロナイト鉱物であって、ヘクトライトに対するベントナイトの比率がヘクトライト1部に対して2.5〜3.5部のベントナイトの範囲である、該鉱物
を含有し、パーセンテージ及び比率は全て重量によるものである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
マスカラ、ヘアカラータッチアップ、又は傷痕若しくは皮膚の欠陥の外観をマスキングするためのタッチアップの形態の、請求項記載の組成物。
【請求項10】
動物性、植物性、又は鉱物性ワックスを含まない、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の揮発性溶媒、少なくとも1種の架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤、並びに、ベントナイト及びヘクトライトの混合物を含む8.5〜10.0%のモンモリロナイト鉱物を含有する組成物であって、ヘクトライトに対するベントナイトの比率がヘクトライト1部に対して2.5〜3.5部のベントナイトの範囲であり、揮発性溶媒が組成物全体の45〜90重量%含まれ、揮発性溶媒が、揮発性パラフィン系炭化水素及び揮発性シリコーンの混合物を、揮発性シリコーン1部に対して揮発性パラフィン系炭化水素2〜4部の比率で含有し、かつ架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤が組成物全体の1〜30重量%存在し、パーセンテージ及び比率は全て重量によるものである、該組成物をケラチン表面に適用することを含、ケラチン表面を処理して1日より長い期間着色又は保護する方法。
【請求項12】
組成物がケラチン表面上で2日間又は3日間残存する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
組成物がマスカラ、ヘアカラータッチアップ、又は傷痕若しくは皮膚の欠陥の外観をマスキングするための製品の形態である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
組成物がケラチン表面上で3日間残存する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
組成物が50-90%の揮発性溶媒及び1-30%の架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤を含有し、動物性、植物性、又は鉱物性ワックスを含まない、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、まつ毛、眉毛、又は頭髪等の毛髪に長期間持続するカラーティント(color tint)を提供するための化粧用組成物の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、数時間又は1日より長い間持続する色をケラチン表面に適用したい場合が多い。例えば、非常に明るい色の頭髪を有する個人はまつ毛及び眉毛の色も明るいことが多く、その場合、まつ毛及び眉毛の色を暗くすることで外観が改善されるであろう。他の例としては、毛染めと毛染めの間に白くなった部分を補修塗り(タッチアップ、touch up)したいと考え得る白髪のある個人であり、そのタッチアップカラーが1日より長く持続するものが挙げられる。同様に、一部の個人は、眉毛の色を濃くしたり、白髪を隠したりしたいと考えている。従って、1日よりも長く持続するケラチン繊維の着色は、多くの場合に非常に望ましい。
【0003】
1日より長く持続する、まつ毛に色を付けるラッシュティント(lash tint)が知られている。しかしながら、これらのラッシュティントの問題の一つは、所望の長期持続性(long wearing property)を提供するために使用される樹脂が極めてもろいことである。これらの樹脂が不揮発性の油で可塑化されていない場合、得られるラッシュティントはフレーキングし、またはまつ毛からバラバラに剥がれ落ちる傾向がある。更に、もろい樹脂は被覆されたまつ毛をより固くして、まつ毛の破損を促進し得る。一方、処方中に樹脂を可塑化させる成分が含まれている場合、持続性及び接着性が損なわれる。光沢もまた、長期間持続するカラーティントの重要かつ望ましい性質である。従って、1つの利益の効果を最大限とし、同時に1つ以上の他の利益にマイナスに影響することなく、所望の利益カテゴリーのそれぞれにおける組成物の利益を最大限にすることが重要である。
【0004】
従って、本発明の目的は、ケラチン表面上に長期間、好ましくは1日より長く、より好ましくは複数日にわたって残存する組成物を製剤化し、フレーキング及び低い持続性及び接着性の欠点が最小限化又は除去され、かつケラチン表面上に被覆された製品が光沢をもち続けることである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、少なくとも1種の揮発性溶媒、少なくとも1種の架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤、及び、ベントナイト及びヘクトライトの混合物を含む約5〜12、好ましくは約8.5〜10.0%のモンモリロナイト鉱物を含有する、ケラチン表面のための複数日持続性組成物であって、ヘクトライトモンモリロナイト鉱物に対するベントナイトの比率がヘクトライト1部に対して約2〜5、好ましくは約2.5〜3.5部のベントナイトの範囲である、上記組成物に関する。
【0006】
本発明はまた、少なくとも1種の揮発性溶媒、少なくとも1種の架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤、及び、ベントナイト及びヘクトライトの混合物を含む約5〜12、好ましくは約8.5〜10.0%のモンモリロナイト鉱物を含有する、ケラチン表面のための複数日持続性組成物であって、ヘクトライトモンモリロナイト鉱物に対するベントナイトの比率がヘクトライト1部に対して約2〜5、好ましくは約2.5〜3.5部のベントナイトの範囲である、上記組成物を含む組成物をトリートメント表面に適用することを含む、ケラチン表面を処理して1日より長い期間着色又は保護する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書中で言及するパーセンテージは全て、他に示さない限り、重量%である。
【0008】
「ケラチン表面」との用語は、皮膚、毛髪、又は爪を意味する。
【0009】
「ケラチン繊維」との用語は、まつ毛、眉毛、若しくは頭髪等の毛髪;又は手指の爪若しくは足指の爪等の爪を意味する。
【0010】
「複数日持続性(wear)」との用語は、組成物が、1、2、又は3日間、可能であればより長く適用されたケラチン表面上に留まることを意味する。「持続性」は、皮膜を身に着けた個人が通常のやり方(シャワー、手洗い等)で日常活動を行った場合に毎日の終わりに除かれている皮膜のパーセンテージによって最も良く示される。
【0011】
本発明の組成物は、水性又は無水であり得る。組成物が水性ベースである場合、これはエマルジョン又は分散液の形態であり得る。エマルジョン形態であれば、約0.1〜99%、好ましくは約0.5〜90%、より好ましくは約4〜80%の水、そして約0.1〜99%、好ましくは約0.5〜55%、より好ましくは約5〜70%の油が存在し得る。
【0012】
分散液の形態であれば、組成物は、約2〜99%、好ましくは約5〜95%、より好ましくは約5〜80%の水を含み、その中に、本明細書中で更に記載する量及び比率でモンモリロナイト鉱物、及びこれも本明細書中で更に記載する量で架橋型オルガノシロキサン皮膜形成剤が分散し得る。
【0013】
組成物が無水形態である場合が好ましい。用語「無水」とは、水が意図的に添加されていないことを意味するが、水は、組成物に添加される1種以上の成分中に本質的に存在する場合がある。
【0014】
別の好ましい実施形態において、組成物はワックスを実質的に含まない。これは、動物、植物、若しくは鉱物源由来の固体又は半固体ワックスを含まないことを意味する。
【0015】
本発明の組成物は、マスカラ、白髪を着色するタッチアップアプリケーション、しみ(blemish)、変色(discoloration)、傷痕(scar)、又は皮膚の欠陥の外観をマスキングするための肌への適用のための組成物、リップティント(lip tint)、タトゥー等の形態であり得る。組成物の3日間の持続性によって、個人がその通常の日常活動をする場合に、適用された組成物が1日間より長くケラチン表面上に留まることが望ましい適用にとって組成物が理想的なものとなる。
【0016】
揮発性溶媒
本組成物は揮発性溶媒を含有し、これはシリコーン、パラフィン系炭化水素、又は水の形態であり得る。
【0017】
シリコーン又はパラフィン系炭化水素のカテゴリーの揮発性溶媒は、一般的に25℃で約0.5〜5センチストークス(cst)の範囲の粘度を有し、線状シリコーン、環状シリコーン、分岐型シリコーン、パラフィン系炭化水素、又はこれらの混合物を含む。揮発性溶媒は、約0.1〜95%、好ましくは15〜90%、より好ましくは約45〜90%の範囲の量で存在し得る。
【0018】
環状シリコーンは本組成物において使用できる揮発性シリコーンの1つのタイプである。そのようなシリコーンは以下の一般式を有する。
【化1】
[式中、n=3-6、好ましくは4、5、又は6である。]
【0019】
好適なものはまた、線状揮発性シリコーンであり、例えば以下の一般式を有するものである。
(CH3)3Si-O-[Si(CH3)2-O]n-Si(CH3)3
[式中、n=0、1、2、3、4、又は5、好ましくは0、1、2、3、又は4である。]
【0020】
環状及び線状の揮発性シリコーンは、Dow Corning Corporation及びGeneral Electric等の様々な商業的供給源から入手可能である。Dow Corning社の線状揮発性シリコーンは、Dow Corning 244、245、344、及び200 fluidの商標名で販売されている。これらの流体にはヘキサメチルジシロキサン(粘度0.65cst)、オクタメチルトリシロキサン(1.0cst)、デカメチルテトラシロキサン(1.5cst)、ドデカメチルペンタシロキサン(2cst)及びこれらの混合物が含まれる(全ての粘度測定は25℃で実施されている)。
【0021】
好適な分岐型揮発性シリコーンとしては、下記の一般式を有する分岐型揮発性シリコーンであるメチルトリメチコン等のアルキルトリメチコンが挙げられる。
【化2】
メチルトリメチコンは、信越シリコーンから25℃で1.5センチストークスの粘度を有するものを商標名TMF-1.5で購入することができる。
【0022】
揮発性溶媒として好適なものはまた、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子、より好ましくは8〜16個の炭素原子を有する様々な直鎖又は分岐鎖のパラフィン系炭化水素である。好適な炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン、及び、双方が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第3,439,088号及び3,818,105号に開示されたC8-20イソパラフィンが挙げられる。
【0023】
好ましい揮発性パラフィン系炭化水素は、70-225、好ましくは160-190の分子量、及び30-320℃、好ましくは60-260℃の沸点範囲、及び25℃で約10cst未満の粘度を有する。このようなパラフィン系炭化水素は、ISOPARSの商標名でEXXONから、またPermethyl Corporationから入手可能である。好適なC12イソパラフィンは、Permethyl 99Aの商標名でPermethyl Corporationで製造されている。様々なC16イソパラフィン、例えばイソヘキサデカン(商標名Permethyl R)が市販されている。
【0024】
最も好ましいのは、揮発性溶媒成分が約50〜90%、好ましくは約55〜85%、より好ましくは約60〜80%含まれる場合である。更に好ましいのは、この揮発性溶媒成分が、揮発性パラフィン系炭化水素を揮発性シリコーンに対して約2〜4部、好ましくは2.5〜3.5、最も好ましくは2.5〜3.2部の比率で含む揮発性シリコーン及びパラフィン系炭化水素の混合物を含む場合である。
【0025】
架橋型シリコーン皮膜形成剤
本発明の方法及び組成物において使用する架橋型シリコーン皮膜形成剤は、シロキサン樹脂とジオルガノシロキサンの反応生成物を含む。好ましくは、組成物中のシリコーンコポリマーの量は、組成物全体の重量に対して約0.001〜50%、好ましくは約0.01〜40%、より好ましくは約1〜30%の範囲である。このタイプのシロキサン樹脂は混合を容易にする可塑性を示し、より少量の油性可塑剤(持続性及び接着性を低減する)を含む製剤を可能にする。
【0026】
好ましくは、シロキサン樹脂はT又はQ単位からなり、これはM単位及びD単位を有していてよく、ジオルガノシロキサンはM及びD単位からなる。
【0027】
用語「M単位」とは、1個の酸素原子に結合した1個のケイ素原子を含み、そのケイ素原子上の残りの3つの置換基は酸素以外であるシロキシ単位である一官能性単位を意味する。特に、一官能性シロキシ単位では、一官能性単位が1個以上の他の単位と重合した場合に、存在する酸素原子は2個のケイ素原子によって共有される。当業者によって使用されているシリコーン命名法では、一官能性シロキシ単位は「M」の文字で表記され、以下の一般式を有する単位を意味する:
R1R2R3-Si-O1/2
[式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立してフェニル又は1以上のヒドロキシル基で置換されていても良い、C1-30、好ましくはC1-10、より好ましくはC1-4の直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又はC1-30、好ましくはC1-10、より好ましくはC1-4のアルコキシ;フェニル;カルボン酸エステル;又は水素である。]SiO1/2の表記は、一官能性単位が1個以上の他の型の単位と重合した場合に、一官能性単位中の酸素原子がもう1個のケイ素原子に結合し、若しくは共有されることを意味する。例えば、R1、R2、及びR3がメチルである場合、得られる一官能性単位は式Iのものである:
【化3】
【0028】
この一官能性単位が1個以上の他の単位と重合した場合、酸素原子はもう1個のケイ素原子によって共有され、すなわち、一官能性単位中のケイ素原子はこの酸素原子の1/2に結合する。
【0029】
用語「二官能性シロキシ単位」は、標準的なシリコーン命名法で一般的に「D」の文字で表記される。D単位がメチル以外の置換基で置換された場合に「D」の表記が使用される場合があり、これはメチル以外の置換基を示す。本開示の目的のために、「D」単位は以下の一般式を有する:
R1R2-Si-O2/2
[式中、R1及びR2は上記で定義した通りである。]SiO2/2の表記は、この単位が1個以上の他の単位と重合した場合に二官能性単位中のケイ素原子が2個の酸素原子に結合していることを意味する。例えば、R1及びR2がメチルである場合、得られる二官能性単位は式IIのものである。
【化4】
【0030】
この二官能性単位が1個以上の他の単位と重合した場合、ケイ素原子は2個の酸素原子と結合する、すなわち酸素原子の半分を2つ共有することとなるであろう。
【0031】
用語「三官能性シロキシ単位」は、標準的なシリコーン命名法で一般的に「T」の文字で表記される。「T」単位は以下の一般式を有する:
R1SiO3/2
[式中、R1は上記で定義した通りである。]SiO3/2の表記は、この単位が1個以上の他の単位と共重合した場合にケイ素原子が3個の酸素原子に結合していることを意味する。例えば、R1がメチルである場合、得られる三官能性単位は式IIIのものである。
【化5】
【0032】
この三官能性単位が1個以上の他の単位と重合した場合、ケイ素原子は3個の酸素原子を他のケイ素原子と共有する、すなわち酸素原子の半分を3つ共有することとなるであろう。
【0033】
用語「四官能性シロキシ単位」は、標準的なシリコーン命名法で一般的に「Q」の文字で表記される。「Q」単位は以下の一般式を有する:
Si-O4/2
【0034】
SiO4/2の表記は、四官能性単位が1個以上の他の単位と重合した場合にケイ素原子が他のケイ素原子と4個の酸素原子を(すなわち半分を4つ)共有していることを意味する。SiO4/2単位は、最適には以下のように示される:
【化6】
【0035】
本組成物中で使用されるシリコーンポリマーは、当分野において周知の方法に従って製造される。一般的に、シロキサンポリマーは、シランモノマー、好ましくはクロロシランの加水分解によって得られる。クロロシランはシラノールに加水分解され、次いで縮合してシロキサンを形成する。例えば、Q単位はしばしば水性又は水性/アルコール性媒体中でテトラクロロシランを加水分解して製造され、以下の構造を形成する:
【化7】
上記のヒドロキシ置換シランを、次いでジオルガノシロキサン単位を含む他の型のシラノール置換単位、例えば以下の構造のものと縮合又は重合させる:
【化8】
[式中、R1及びR2は上記で定義した通りである。]
【0036】
加水分解及び縮合は水性又は水性/アルコール性媒体中で生じ、アルコールは好ましくはエタノール、プロパノール、又はイソプロパノール等の低級アルカノールであるため、単位は残存するヒドロキシル又はアルコキシ官能性を有し得る。好ましくは、ポリマーは水性/アルコール性媒体中での加水分解及び縮合によって製造され、それによってシラノール及びアルコキシ官能性が残存する樹脂がもたらされる。アルコールがエタノールである場合、シロキサンポリマー上に残存ヒドロキシ又はエトキシ官能性を有する樹脂が得られる。本発明の組成物において使用されるシリコーン皮膜形成ポリマーは、一般的に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「ケイ素化合物(シリコーン)(Silicon Compounds(Silicones))」、Bruce B. Hardman, Arnold Torkelson, General Electric Company, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第20巻, 第3版, 922-962頁, 1982に記載された方法に従って製造される。
【0037】
必要であれば、分子上のヒドロキシ官能基は更に反応してアルコキシ基、アルキル基、ハロゲンを形成することができ、これは1個以上のヒドロキシル等の置換基で置換されても良い。
【0038】
最も好ましいものは、参照によってその全体を本明細書に組み入れる米国特許第4,584,355号に示されたように、シロキサンコポリマーが、末端ヒドロキシル基を有するジオルガノシロキサンとヒドロキシル基を有するシロキサン樹脂とを、熱及びアンモニアの存在下で反応物質を組合せることによって反応させて得られる場合である。
【0039】
特に好ましいものは、Dow Corningによって製造され、4100、4200、4300、4400、4500又は4600のシリーズで販売されているシリコーンコポリマーである。最も好ましいものは、ジメチコンで処理されたトリメチル化シリカの化学名で呼ばれるCTFA名ジメチコンシリレートを有し、商標名DC7-4405で販売されているDow Corningシリコーンコポリマーである。
【0040】
モンモリロナイト鉱物(クレイ)
本発明に従う好ましい組成物は、クレイとも呼ばれるモンモリロナイト鉱物を含有する。本発明の組成物は、約5〜12%、より好ましくは約8.0〜10.5%、より好ましくは約8.2〜10.2%、最も好ましくは約8.5〜10.3%のクレイを含有する。より好ましいのは、クレイ全部が、ヘクトライトクレイ1部に対して約2.5〜3.5、好ましくは2.5〜3.4、最も好ましくは約2.57〜3.32部のベントナイトクレイの比率で存在する場合である。
【0041】
ベントナイトクレイはそのまま、例えばCTFA名「ベントナイト」を有するものとして存在し得る。あるいはまた、ベントナイトは、四級化又は水素化四級化形態で存在し得る。好ましいものは、ベントナイトクレイが四級化した場合、又は1個以上の脂肪酸(C12-22)鎖を有し得る第四級アンモニウム化合物と反応した場合である。四級化ベントナイトクレイの例としては、水素化タロウアルコニウムベントナイト、クオタニウム(Quaternium)-18ベントナイト、ベンザルコニウムベントナイト、クオタニウム-90ベントナイト、ステアルアルコニウムベントナイトのCTFA名を有するもの、又はこれらの混合物が挙げられる。ベントナイトクレイの推奨される範囲は、組成物の約5-15%、好ましくは約5-10%、最も好ましくは約6-10%である。
【0042】
ヘクトライトクレイはそのまま存在しても良く、その場合、それは「ヘクトライト」とのCTFA名を有する。あるいはまた、ヘクトライトクレイは四級化されていても良く、すなわち、1以上の脂肪酸(C12-22)鎖を有し得る第四級アンモニウム化合物と反応させたものであっても良い。四級化ヘクトライトクレイの例としては、水素化されていても良い、ジヒドロタロウベンジルモニウムヘクトライト、ジステアルジモニウムヘクトライト、クオタニウム-18ヘクトライト、ステアルアルコニウムヘクトライトのCTFA名を有するもの、又はこれらの混合物が挙げられる。ヘクトライトクレイの推奨される範囲は、約1.5〜3.5%、好ましくは約1.75〜3.0%、最も好ましくは約2.0〜3.0%である。
【0043】
一方又は双方のクレイは、互いにつながっていてもいなくても良い、プレートレット又はシートの形態で存在することも可能である。必要であれば、クレイはせん断され、非常に厚みの薄いナノ粒子若しくはナノプレートレット、又はシートを形成していても良い。そのような場合、ナノプレートレットは約0.5〜5ナノメートル(0.0005〜0.005ミクロン)の範囲の厚みを有する。好ましくは、ナノプレートレットの頂面の領域は約20〜2000ナノメートル(0.02〜2ミクロン)の範囲である。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態において、クレイは、揮発性又は不揮発性、好ましくは揮発性溶媒を含む分散物の形態で存在する。特に好ましい一実施形態において、クレイは四級化されたモンモリロナイト鉱物であり、より具体的には、D.C.Incorporated, Plainfield, NJによってDistinctive Gel IDの商標名で販売されている、2.5%プロピレンカーボネート、17.5 クオタニウム-90ベントナイト、及び80%イソドデカンを含む分散物の形態で購入し得るクオタニウム-90ベントナイトである。ベントナイトの形態は、プロピレンカーボネート(3.5部)/ジステアルジモニウムヘクトライト(9.5部)/イソドデカン(87部)を含む分散物の形態で存在していても良く、これはBentone Gel EUGVの商標名でElementis Specialtiesから市販品を入手できる。
【0045】
粒子状物質
本発明の組成物は、好ましくは顔料、不活性粒子、又はその混合物の形態で粒子状物質を含有する。これは、組成物が着色を意図するものである場合に特に望ましい。存在する場合、推奨される範囲は、組成物全体の重量に対して約0.01〜75%、好ましくは約0.5〜70%、より好ましくは約0.1〜65%である。組成物が顔料と粉末との混合物を含み得る場合、好適な範囲は、組成物全体の重量に対して約0.01〜75%の顔料及び0.1〜75%の粉末を含む。
【0046】
A.粉末
粒子状物質は、着色又は非着色(例えば白色)非顔料化(non-pigmented)粉末であり得る。好適な非顔料化粉末としては、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、フュームドシリカ、球状シリカ、ポリメチルメタクリレート、微粉末化テフロン、窒化ホウ素、アクリレートコポリマー、ケイ酸アルミニウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、石灰(chalk)、コーンスターチ、珪藻土、フラー土、グリセリルデンプン、ケイ酸、カオリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、三ケイ酸マグネシウム、マルトデキストリン、微結晶セルロース、コメデンプン、シリカ、タルク、マイカ、二酸化チタン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、樹脂酸亜鉛、アルミナ、アタパルジャイト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、デキストラン、カオリン、ナイロン、シリル化シリカ(silica silylate)、シルクパウダー、セリサイト、ダイズ粉、酸化スズ、水酸化チタン、リン酸三マグネシウム、クルミ殻パウダー、又はこれらの組合せが挙げられる。上記の粉末は、粉末表面を被覆して粒子をより親油性にするレシチン、アミノ酸、鉱油、シリコーン、若しくは様々な他の薬剤の単独又は組合せによって表面処理されていても良い。
【0047】
B.顔料
粒子状物質は、様々な有機及び/又は無機顔料を含み得る。有機顔料は一般的に種々の芳香族のタイプ、例えばD&C及びFD&Cブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、レッド、イエロー等と表示されるアゾ、インジゴイド、トリフェニルメタン、アントラキノン(anthroquinone)、及びキサンチン染料である。有機顔料は一般的に、レーキと呼ばれる、認定された着色添加物の不溶性金属塩からなる。無機顔料としては、酸化鉄、ウルトラマリン、クロム、水酸化クロムの着色剤、及びこれらの混合物が挙げられる。赤色、青色、黄色、褐色、黒色酸化鉄、及びこれらの混合物が好適である。
【0048】
最も好ましい実施形態において、組成物は、0.1〜10%、好ましくは約0.5〜8%、より好ましくは約1〜6%の顔料を含有する。
【0049】
組成物は、これらの成分が組成物にとっての最適の利点を損なわない限り、限定するものではないが、防腐剤、保湿剤、消泡剤等を含む様々な他の成分を含有し得る。こうした成分としては、防腐剤、モンモリロナイト鉱物のための安定化剤(例えばプロピレンカーボネート)、更なる皮膜形成剤、及び他の成分が挙げられる。
【実施例】
【0050】
本発明を、説明目的のみのために示す以下の実施例と関連づけて更に記載する。
【0051】
[実施例1]
本発明に従う組成物を以下のように製造した。
【表1】
【0052】
本組成物は、25部のヘクトライトゲル組成物(3.5部のプロピレンカーボネート、9.5部のジステアルジモニウムヘクトライト、及び87部のイソドデカンの混合物);39.90部のベントンゲル組成物(2.5部のプロピレンカーボネート、15部のクオタニウム-90ベントナイト、及び80部のイソドデカンの混合物);30部のジメチコンシリレート(40部)及びトリシロキサン(60部)の混合物;0.1部のフェノキシエタノール;及び5.0部のトリエトキシカプリリルシラン被覆された酸化鉄、を組合せ、良く混合することによって調製された。得られた組成物は、室温で約20-50PaSの粘度を有していた。
【0053】
[実施例2]
本発明の組成物及び比較処方を、以下の成分にて、全てを組合せて良く混合することによって調製し、注ぐことができる(pourable)液体を形成した。
【表2】
【0054】
[実施例3]
実施例2の処方1-12を、24時間及び1週間の時点の粘度、24時間及び1週間の50℃における安定性、硬度、曲げ力(bending force)(g)、接着力(g)、光沢及び接触角について試験した。
【0055】
硬度は、2×3インチのガラスプレート上で2milの皮膜を引く(drawing down)ことによって測定した。皮膜を一晩(24時間)乾燥させた。乾燥した皮膜上にスウォード・ロッカー(Sward Hardness Rocker)を設置した。装置を60+/-5秒間で50回の振動数に設定した。振動数×100/50を乗じることで硬度=%硬度を算出した。
【0056】
接着性は、2×3インチのガラスプレート上で2milの皮膜を引くことによって測定した。皮膜を一晩(24時間)乾燥させた。次いでガラスプレートをAdhesion計測器が接続されたTA.XT Plus Texture Analyzerの垂直壁に取り付けた。次に、レーザーブレードを用いてガラスプレートから皮膜を剥がすようにTexture Analyzerを配置し、ガラスへの皮膜の平均接着力をグラムで測定した。数値が大きい程物質に対する接着力が高い。
【0057】
光沢は、BYK opacity chart上に2milの皮膜を引き、皮膜を一晩(24時間)乾燥させることによって測定した。皮膜上にmicro-TRI-gloss計測器を置き、スイッチを入れた。光沢のデータは、表面を入射角60°で測定してデジタルディスプレイ上に出力された。入射角60°で半光沢表面を読取ると、一般に10-70光沢単位(gross unit)の範囲の読み取り値が得られるであろう。入射角60°で測定した場合に70光沢単位を超える光沢の読み取り値を有する反射率が高い表面は20°で再度測定すべきである。60°で10光沢単位未満の測定値を有するマットな表面は、85°で再度測定すべきである。数値が大きい程皮膜の光沢が大きい。
【0058】
曲げ力は、Bending Force計測器が接続されたTA.XT Plus Texture Analyzerを使用して測定した。12×1インチのVitroSkinストリップを2milの厚さの皮膜で被覆した。このストリップをループを形成させるようにAnalyzerに挿入して、ループの最大部分をプレートに向け、ストリップの両端を合わせて保持して装置に取り付けた。ループをプレートに向けて下げ、皮膜を含むVitroSkinストリップを曲げるために必要な力を記録した。皮膜を取り付けていないVitroSkinストリップを曲げるために必要な力(ベースライン)の値を測定値から差し引いた。
【0059】
粘度は、粘度計を使用して室温(25℃)で取られた表示数値で測定した。
【0060】
接触角は、2×3インチのガラスプレート上に2milに引かれた皮膜を調製することによって測定した。皮膜を一晩から24時間乾燥させた。次いでOCA装置の台上にスライドを置き、0.2〜0.4μlの水滴をシリンジから皮膜物質上に落とした。接触角を測定し、度で表した。
【0061】
実施した試験結果を以下に示す。
【表3】
【0062】
最も望ましい処方は、光沢、接着力、曲げ力、及び硬度、50℃における1週間までの安定性について良好な値を示したものであった。好ましい組成物は耐水性であることが望ましいため、接触角が大きい程疎水性が大きい。対照的に、これらのパラメーターの1つ又は2つについて優れた結果を示すが全てではない処方は、許容可能なものとみなさなかった。
【0063】
この結果から、処方3-7及び10が全ての測定カテゴリーにおいて最適な効果をもたらしたことが示される。具体的には、処方中の総クレイ濃度が約8.5〜10.3の範囲であり、ヘクトライトに対するベントナイトの比率が約2.5〜3.5の場合に、全ての効果が最適化され、1以上の個々の効果を犠牲にするものではなかった。
【表4】
【0064】
上記の結果から、総クレイ濃度の臨界及びベントナイト及びヘクトライトの比率の臨界が示される。
【0065】
[実施例4]
本発明に従う実施例1の処方を、3日間の持続性を有すると宣伝されている市販製品と比較して試験した。この市販製品の成分リストを以下に書き写す:
水、アクリレートコポリマー、グリセリルステアレート、ジステアルジモニウムヘクトライト、プロピレングリコール、ステアリン酸、カルナウバロウ、変性アルコール、トリエタノールアミン、合成ワックス、ポリビニルアルコール、レシチン、プロピレンカーボネート、トコフェロール、パンテノール、パルミチン酸アスコルビル、ダイズ油、グリセリン、ナイロン-6、キサンタンガム、メチルセルロース、シメチコン、ラウレス-12硫酸ナトリウム、オレイン酸、グリセリルオレエート、シリカ、EDTA四ナトリウム、EDTA二ナトリウム、EDTA、リン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン[+/-CI77499, CI77491, CI77492, CI77266]。
【0066】
実施例1の処方及び市販の試験製品をパネリストのまつ毛に適用した。まつ毛上に残存した組成物の量を、1、2、及び3日目(24、48、及び72時間の時点)に熟練の評価者によって測定した。結果を以下に示す。
【表5】
【0067】
上記の結果から、本発明に従う実施例1の処方が、3日間持続すると言われている市販の製品と比較して最適な持続性を提供することが実証される。