(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記第1導電領域及び前記第2導電領域の少なくとも一つに接続された第1電極又は第2電極は、透明導電物質を含む第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、パターンを有する第2電極層を含む、請求項1に記載の太陽電池。
  前記前面電界形成層は、アルミニウム酸化物層、モリブデン酸化物層、タングステン酸化物層、バナジウム酸化物層、チタニウム酸化物層及び亜鉛酸化物層の少なくとも一つを含む、請求項12に記載の太陽電池。
【発明を実施するための形態】
【0007】
  以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されず、様々な形態に変形してもよい。
 
【0008】
  図面では、本発明を明確で簡略に説明するために、説明と関係ない部分の図示を省略しており、明細書全体を通じて同一又は類似の部分には同一の参照符号を付するものとする。また、図面では、より明確な説明のために、厚さ、広さなどを拡大又は縮小して示しているが、本発明の厚さ、広さなどは図面のものに限定されない。
 
【0009】
  そして、明細書全体を通じて、ある部分が他の部分を「含む」としたとき、特別な記載がない限り、それ以外の部分を排除するという意味ではなく、それ以外の部分もさらに含むことができる。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとしたとき、他の部分の「すぐ上に」ある場合の他、更に他の部分を介在して他の部分の上にある場合をも含む。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「すぐ上に」あるとしたときは、両者の間に何らかの部分も介在しないことを意味する。
 
【0010】
  また、以下でいう「第1」,「第2」などは、お互いを区別するために使用した表現に過ぎず、本発明がそれに限定されるわけではない。
 
【0011】
  以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例に係る太陽電池について詳しく説明する。
 
【0012】
  図1は、本発明の実施例に係る太陽電池の断面図であり、
図2は、
図1に示した太陽電池の部分背面平面図である。簡略な図示のために、
図2では第1及び第2電極42,44の第2電極層422,442の図示を省略している。
 
【0013】
  図1及び
図2を参照すると、本実施例に係る太陽電池100は、半導体基板10と、半導体基板10の一面側に配置され、第1導電型を有する第1導電型領域32と、第1導電型と反対の第2導電型を有する第2導電型領域34と、第1導電型領域32に接続された第1電極42及び第2導電型領域34に接続された第2電極44を有する電極42,44とを備えている。ここで、第1導電型領域32及び第2導電型領域34のうち少なくとも一つを金属化合物層(一例として、金属酸化物層)で構成することができる。
 
【0014】
  そして、本実施例で、半導体基板10の一面上にトンネリング層20が設けられており、トンネリング層20上に第1導電型領域32及び第2導電型領域34が共に配置されている。そして、太陽電池100は、前面電界形成層30、透明導電性膜24、反射防止膜26などをさらに備えてもよい。これについてより詳しく説明する。
 
【0015】
  半導体基板10はベース領域110を有している。ベース領域110は、第1又は第2導電型ドーパントを含む結晶質半導体物質で構成することができる。一例として、ベース領域110は、第1又は第2導電型ドーパントを含む単結晶又は多結晶半導体(一例として、単結晶又は多結晶シリコン)で構成することができる。特に、ベース領域110は、n型又はp型ドーパントを含む単結晶半導体(例えば、単結晶半導体ウエハー、より具体的には、半導体シリコンウエハー)で構成することができる。このように結晶性が高くて欠陥の少ないベース領域110又は半導体基板10を基盤とすれば、優れた電気的特性が得られる。
 
【0016】
  一例として、ベース領域110がn型を有すると、ベース領域110と光電変換によってキャリアを形成する接合(一例として、トンネリング層20を挟んでいるpn接合)を形成するp型の第1導電型領域32を広く形成し、光電変換面積を増加させることができる。また、この場合には、広い面積を有する第1導電型領域32が、相対的に移動速度の遅い正孔を効果的に収集し、光電変換効率の向上に一層寄与することができる。また、ベース領域110がn型であれば、第1及び第2導電型領域32,34を構成する金属化合物層が容易に入手できる物質で構成され、金属化合物層を容易に形成することができる。第1及び第2導電型領域32,34の具体的な物質については後述する。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、ベース領域110がp型を有してもよい。
 
【0017】
  本実施例では半導体基板10をベース領域110だけで構成することができる。すなわち、従来の太陽電池では、ベース領域110と異なる導電型を有するドーピング領域、又はベース領域110と同じ導電型を有するが、ドーピング濃度が高いドーピング領域などが半導体基板10に設けられているのに対し、本実施例では、半導体基板10がベース領域110だけで構成され、別のドーピング領域を有しない。
 
【0018】
  ベース領域110のドーパントは、n型又はp型を示し得るドーパントであればいい。すなわち、ベース領域110のドーパントがn型である場合には、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を使用することができる。ベース領域110のドーパントがp型である場合には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を使用することができる。
 
【0019】
  本実施例で、半導体基板10の他面(以下、「前面」という。)はテクスチャリング(texturing)されて、ピラミッド形状などの凹凸を有することができる。半導体基板10に形成されたテクスチャリング構造は、半導体の特定の結晶面に沿って形成された外面を有する一定の形状(一例として、ピラミッド形状)を有することができる。このようなテクスチャリングによって半導体基板10の前面などに凹凸が形成され、表面粗さが増加すると、半導体基板10の前面から入射する光の反射率を下げることができる。これによって、ベース領域110及び第1導電型領域32によって形成されたpn接合まで到達する光の量を増加させ、光損失を最小化することができる。
 
【0020】
  そして、半導体基板10の背面は、鏡面研磨などによって、前面に比べて低い表面粗さを有し、相対的に滑らかで平坦な面にすることができる。本実施例のように半導体基板10の背面側に第1及び第2導電型領域32,34が併せて形成される場合には、半導体基板10の背面の特性によって太陽電池100の特性が大きく変わり得るためである。このため、半導体基板10の背面にはテクスチャリングによる凹凸を形成しないことによりパッシベーション特性を向上させ、結果として太陽電池100の特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、場合によって半導体基板10の背面にテクスチャリングによる凹凸を形成してもよい。その他にも様々な変形が可能である。
 
【0021】
  半導体基板10の背面上にはトンネリング層20が設けられている。一例として、トンネリング層20を半導体基板10の背面に接するように形成して、構造を単純化し、トンネリング効果を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0022】
  トンネリング層20は、電子及び正孔に一種のバリアー(barrier)として働き、少数キャリア(minority  carrier)の通過を防ぎ、トンネリング層20に隣接した部分で蓄積されて一定以上のエネルギーを有する多数キャリア(majority  carrier)だけがトンネリング層20を通過できるようにする。このとき、一定以上のエネルギーを有する多数キャリアは、トンネリング効果によってトンネリング層20を容易に通過することができる。また、トンネリング層20は、導電型領域32,34のドーパントが半導体基板10に拡散することを防止する拡散バリアーとしての役割を担うこともできる。このようなトンネリング層20は、多数キャリアがトンネリングし得る様々な物質を含むことができ、例えば、酸化物、窒化物、半導体、伝導性高分子などを含むことができる。例えば、トンネリング層20は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、真性非晶質シリコン、真性多結晶シリコンなどを含むことができる。特に、トンネリング層20は、シリコン酸化物を含むシリコン酸化物層で構成することができる。シリコン酸化物層は、パッシベーション特性に優れており、キャリアがトンネリングしやすい膜であるためである。このようなシリコン酸化物層は、熱酸化(thermal  oxidation)又は化学的酸化(chemical  oxidation)によって形成することができる。
 
【0023】
  トンネリング効果を十分に実現できるように、トンネリング層20の厚さは、反射防止膜26、第1又は第2導電型領域32,34に比べて薄い厚さを有することができる。一例として、トンネリング層20の厚さは5nm以下(より具体的には、2nm以下、例えば、0.1nm〜2nm、特に、0.1nm〜1.5nm)であってもよい。トンネリング層20の厚さが5nmを超えると、トンネリングが円滑に起こらず、太陽電池100が作動しないことがあり、トンネリング層20の厚さが0.1nm未満であれば、所望の品質のトンネリング層20が形成し難くなる。トンネリング層20による効果を十分に実現するには、トンネリング層20の厚さを0.5nm〜2nm、例えば、0.5nm〜1.5nmとすることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、トンネリング層20の厚さが様々な値を有してもよい。
 
【0024】
  トンネリング層20は半導体基板10の背面全体に形成されている。これによって、半導体基板10のパッシベーション特性を向上させ、パターニングなしで簡単な工程によって形成することがきる。
 
【0025】
  トンネリング層20上には、互いに同一の平面上に位置する第1及び第2導電型領域32,34が設けられている。第1及び第2導電型領域32,34はトンネリング層20に接して形成され、構造を単純化し、トンネリング効果を最大化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0026】
  本実施例で、第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、金属化合物で構成される金属化合物層であってもよい。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、金属酸化物を含む金属酸化物層であってもよい。このように第1導電型領域32及び第2導電型領域34が金属酸化物層で構成されると、製造が容易であり、化学的安定性に優れ、パッシベーション効果をより一層向上させることができる。一方、第1導電型領域32又は第2導電型領域34が硫化物などで構成されると、化学的安定性が低下しうる。
 
【0027】
  具体的には、第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、半導体基板10及びトンネリング層20とのエネルギーバンドを考慮して電子又は正孔を選択的に収集し得る金属化合物で構成される。このため、第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、半導体基板10に含まれる半導体物質、又は該当の半導体物質においてn型又はp型のドーパントとして働く物質を含まない。これを、
図3及び
図4を参照してより詳しく説明する。
 
【0028】
  図3は、本発明の実施例に係る太陽電池100において半導体基板10、トンネリング層20及び第1導電型領域32のバンドダイヤグラムを示す図である。また、
図4は、本発明の実施例に係る太陽電池100において半導体基板10、トンネリング層20及び第2導電型領域34のバンドダイヤグラムを示す図である。ここでは、半導体基板10がn型を有する場合を挙げて説明する。
 
【0029】
  本実施例で、半導体基板10がn型を有し、第1導電型領域32が正孔を選択的に収集するエミッタ領域であってもよい。正孔を選択的に収集できる第1導電型領域32の金属化合物層は、半導体基板10のフェルミレベル(fermi  level)よりも低いフェルミレベルを有し、半導体基板10の仕事関数(work  function)よりも大きい仕事関数を有することができる。例えば、半導体基板10の仕事関数が約3.7eVであり、第1導電型領域32の仕事関数が3.8eVよりも大きくてもよい。より具体的には、第1導電型領域32の仕事関数が7eV以下(一例として、3.8eV〜7eV)であってもよい。第1導電型領域32の仕事関数が7eVを超えると、正孔を選択的に収集することが困難となりうる。上述のエネルギーバンドギャップが3.8eV未満であれば、電子を除いて選択的に正孔だけを収集することが困難となりうる。
 
【0030】
  このようなフェルミレベル及び仕事関数を有する金属化合物層で構成される第1導電型領域32がトンネリング層20を挟んで半導体基板10と接合されると、
図3に示すように、半導体基板10及び第1導電型領域32のフェルミレベルが同じ値を有し得るように整列して接合される。
図3のように接合されると、半導体基板10内の価電子帯(valence  band)にある正孔は、トンネリング層20を通過すると、第1導電型領域32の価電子帯に容易に移動することができる。一方、半導体基板10内の電子はトンネリング層20を通過することができない。
 
【0031】
  一例として、上述したような第1導電型領域32に使用可能な金属化合物層としては、モリブデン酸化物で構成されるモリブデン酸化物層、タングステン酸化物(例えば、WO
3)で構成されるタングステン酸化物層、バナジウム酸化物で構成されるバナジウム酸化物層などを挙げることができる。特に、第1導電型領域32がモリブデン酸化物層又はタングステン酸化物層を含むと、正孔を選択的に収集する効果に優れる。
 
【0032】
  本実施例で半導体基板10がn型を有し、第2導電型領域34が電子を選択的に収集する電界領域(例えば、背面電界領域)であってもよい。電子を選択的に収集できる第2導電型領域34の金属化合物層は、半導体基板10のフェルミレベルよりも高いフェルミレベルを有し、半導体基板10の仕事関数よりも小さい仕事関数を有することができる。例えば、半導体基板10の仕事関数が約3.7eVであり、第2導電型領域34の仕事関数が0.1eV〜3.6eVであってもよい。より具体的には、第2導電型領域34の伝導帯(Conduction  band)と半導体基板10の伝導帯とのエネルギーバンドギャップが1eV以下(例えば、0.1eV〜1eV)であってもよい。上述したエネルギーバンドギャップが1eVを超えると、電子を選択的に収集することが困難となりうる。上述したエネルギーバンドギャップが0.1eV未満であれば、エネルギーバンドギャップが小さいため、正孔を除いて選択的に電子だけを収集することが困難となりうる。
 
【0033】
  このようなフェルミレベル及び仕事関数を有する金属化合物層で構成された第2導電型領域34がトンネリング層20を挟んで半導体基板10と接合されると、
図4に示すように、半導体基板10及び第2導電型領域34のフェルミレベルが同じ値を有し得るように整列して接合される。
図4のように接合されると、半導体基板10内の伝導帯にある電子は、トンネリング層20を通過すると、第2導電型領域34の伝導帯に容易に移動することができる。一方、半導体基板10内の正孔はトンネリング層20を通過することができない。
 
【0034】
  一例として、上述したような第2導電型領域34に使用可能な金属化合物層としては、チタン酸化物(例えば、TiO
2)で構成されるチタン酸化物層、亜鉛酸化物(例えば、ZnO)で構成される亜鉛酸化物層などを挙げることができる。特に、第2導電型領域34がチタン酸化物層を含むと、電子を選択的に収集する効果に優れる。
 
【0035】
  このように、本実施例では、正孔を選択的に収集して第1電極42に伝達する第1導電型領域32がエミッタ領域を構成する。また、電子を選択的に収集して第2電極44に伝達する第2導電型領域34が背面電界(back  surface  field)領域を構成する。
 
【0036】
  このとき、第1導電型領域32及び第2導電型領域34の厚さはそれぞれ1nm〜100nmであってもよい。第1導電型領域32及び第2導電型領域34はドーパントを含まない金属化合物層であるため、厚さが厚くなると抵抗が大きくなりうる。これを考慮して、第1導電型領域32及び第2導電型領域34の厚さを100nm以下とする。第1導電型領域32及び第2導電型領域34の厚さが1nm未満であれば、第1又は第2導電型領域32,34としての役割を十分に果たし難い。しかし、本発明が第1及び第2導電型領域32,34の厚さに限定されるわけではない。
 
【0037】
  このような第1及び第2導電型領域32,34は、様々な方法によって形成することができる。例えば、蒸着、印刷などの方法によって形成することができる。
 
【0038】
  第1導電型領域32及び第2導電型領域34はドーパントを含まず、互いの側面が接して位置しても短絡などの問題は発生しない。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。したがって、変形例として、トンネリング層20上において第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に位置して両領域が接触することを防止するバリアー領域を配置してもよい。バリアー領域は、空いた空間にしてもよく、真性半導体層、又は酸化物などの化合物が位置する構造などの様々な構造にしてもよい。このバリアー領域が
図5乃至
図8に示されている。
 
【0039】
  このように、第1及び第2導電型領域32,34が半導体物質及びこれに適用されるドーパントを含まないと、ドーパントによって発生する再結合を最小化することができる。そして、金属化合物(例えば、金属酸化物)で構成された第1及び第2導電型領域32,34がパッシベーション層としての役割を担い、パッシベーション効果を向上させることができる。また、半導体物質で構成された半導体層を蒸着する工程、ドープする工程、活性化熱処理する工程などの様々な工程を省くことができ、特に、高温工程を省くことができる。これによって、太陽電池100の生産性が向上し、半導体基板10は優れた特性を維持することができる。
 
【0040】
  上述した説明及び図面では、第1及び第2導電型領域32,34がいずれも、ドーパントを含まない金属化合物層で構成されることを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第1及び第2導電型領域32,34のいずれか一方だけが、ドーパントを含まない金属化合物層で構成されてもよい。その他様々な変形も可能である。
 
【0041】
  ここで、ベース領域110の多数キャリアと同じキャリア(すなわち、電子)を収集する第2導電型領域34の面積よりも、ベース領域110の多数キャリアと異なるキャリア(すなわち、正孔)を収集する第1導電型領域32の面積を広く形成することができる。これによって、エミッタ領域として働く第1導電型領域32を十分の面積とすることができる。そして、広く形成された第1導電型領域32によって、相対的に移動速度の遅い正孔を効果的に収集することができる。このような第1導電型領域32及び第2導電型領域34の平面構造の詳細は、
図2を参照して後述する。
 
【0042】
  半導体基板10の背面に配置される電極42,44は、第1導電型領域32に電気的及び物理的に接続される第1電極42、及び第2導電型領域34に電気的及び物理的に接続される第2電極44を有する。
 
【0043】
  このとき、第1電極42は、第1導電型領域32上に順に積層される第1電極層421及び第2電極層422を有することができる。
 
【0044】
  ここで、第1電極層421は、第1導電型領域32上に相対的に広い面積で形成(例えば、接触)することができる。このように、第1電極層421を第1導電型領域32上に広く形成すると、キャリアが第1電極層421を通って容易に第2電極層422まで到達し、水平方向における抵抗を減らすことができる。特に、本実施例では、第1導電型領域32がドープされずドーパントを含まない金属化合物層で構成されるため、抵抗が高くなりうるが、第1電極層421を設けることにより、抵抗を効果的に減らすことができる。
 
【0045】
  このように第1電極層421が第1導電型領域32上に広い面積で形成されることから、第1電極層421は、光を透過し得る物質(透光性物質)で構成することができる。すなわち、第1電極層421を透明導電性物質で構成し、光の透過を可能にするとともに、キャリアの移動を容易にさせる。こうすると、第1電極層421を第1導電型領域32上に広い面積で形成しても光の透過を遮断しない。一例として、第1電極層421は、インジウムスズ酸化物(indium  tin  oxide:ITO)、炭素ナノチューブ(carbon  nano  tube:CNT)などを含むことができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第1電極層421はその他様々な物質を含んでもよい。
 
【0046】
  第1電極層421上に第2電極層422を形成することができる。一例として、第2電極層422は第1電極層421に接して形成され、第1電極42の構造を単純化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第1電極層421と第2電極層422との間に別の層が存在するなどの様々な変形も可能である。
 
【0047】
  第1電極層421上に位置する第2電極層422は、第1電極層421に比べて優れた電気伝導度を有する物質で構成することができる。これによって、第2電極層422によるキャリア収集効率、抵抗低減などの特性をより向上させることができる。一例として、第2電極層422は、優れた電気伝導度を有する不透明な金属又は第1電極層421に比べて透明度の低い金属で構成することができる。
 
【0048】
  このように第2電極層422は不透明であるか又は透明度が低いため、光の入射を妨害することもあり、これによるシェーディング損失(shading  loss)を最小化するために一定のパターンを有することができる。このような第2電極層422は第1電極層421に比べて小さい面積を有し、これによって、第2電極層422が形成された以外の部分から光が入射するようにする。第2電極層422の平面形状の詳細については、
図2を参照して後述する。
 
【0049】
  第1電極42の第1及び第2電極層421,422は、様々な方法によって形成することができ、例えば、蒸着、スパッタリング、印刷などの方法で形成することができる。
 
【0050】
  第2電極44は、第2導電型領域34上に順に積層される第1電極層441及び第2電極層442を有することができる。第2電極44が第2導電型領域34上に配置される以外は、第2電極44の第1及び第2電極層441,442の役割、物質、形状などが第1電極42の第1及び第2電極層421,422の役割、物質、形状などと同一であり、その重複説明は省略するものとする。
 
【0051】
  図示してはいないが、半導体基板10の背面において第1及び第2導電型領域32,34上に及び/又は第1電極層421,441上に、背面パッシベーション膜、反射防止膜、反射膜などを構成する絶縁膜をさらに形成してもよい。
 
【0052】
  以下、
図1及び
図2を参照して、第1導電型領域32、第2導電型領域34、及び第1及び第2電極42,44の第2電極層422,442の平面形状の一例を詳しく説明する。
 
【0053】
  図1及び
図2を参照すると、本実施例では、第1導電型領域32と第2導電型領域34はそれぞれストライプ状に長く形成されるとともに、長さ方向と交差する方向に交互に配置されている。図示してはいないが、互いに離隔している複数の第1導電型領域32が一側縁で互いに繋がってもよく、互いに離隔している複数の第2導電型領域34が他側縁で互いに繋がってもよい。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0054】
  このとき、第1導電型領域32の面積が第2導電型領域34の面積よりも大きくてもよい。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34の面積は、それらの幅を異ならせることによって調節することができる。すなわち、第1導電型領域32の幅W1を第2導電型領域34の幅W2よりも大きくすることができる。
 
【0055】
  そして、第1電極42の第2電極層422が第1導電型領域32に対応してストライプ状に形成されており、第2電極44の第2電極層442が第2導電型領域34に対応してストライプ状に形成されている。簡略化のために図示を省略しているが、第1電極42の第1電極層421が第2電極層422よりも広い面積でストライプ状に形成され、第2電極44の第1電極層441が第2電極層442よりも広い面積でストライプ状に形成されてもよい。そして、図示してはいないが、第1電極42が一側縁で互いに繋がって形成され、第2電極44が他側縁で互いに繋がって形成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0056】
  再び
図1を参照すると、半導体基板10の前面上に前面電界形成層30が配置されている。一例として、前面電界形成層30は、半導体基板10の前面に接して形成されて、構造を単純化し、電界領域を形成する効果を最大化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0057】
  前面電界形成層30は、固定電荷を有する膜、又は上述したように電子又は正孔を選択的に収集し得る金属化合物層で構成することができる。例えば、前面電界形成層30は、固定電荷を有するアルミニウム酸化物を含むアルミニウム酸化物層であってもよい。又は、前面電界形成層30が電子又は正孔を選択的に収集できるモリブデン酸化物層、タングステン酸化物層、バナジウム酸化物層、チタン酸化物層、又は亜鉛酸化物層で構成されてもよい。又は、前面電界形成層30が上述の層を複数含む層であってもよい。
 
【0058】
  このとき、前面電界形成層30を、第1又は第2導電型領域32,34を構成する金属化合物層のいずれか一つと同じ層で形成し、製造工程を単純化することもできる。一例として、前面電界形成層30及び第2導電型領域34をチタン酸化物層で構成することができる。
 
【0059】
  このような前面電界形成層30は、外部回路又は他の太陽電池100と接続される電極42,44には接続されていない状態で固定電荷を有したり、又は電子又は正孔を選択的に収集して半導体基板10の前面付近で再結合を防止する一定の電界領域を有するのと同じ効果を示すことができる。この場合には、半導体基板10が別のドーピング領域を備えないでベース領域110だけで構成されるため、半導体基板10の欠陥を最小化することができる。
 
【0060】
  そして、前面電界形成層30は化合物(例えば、酸化物)で構成され、半導体基板10の前面を効果的にパッシベーションすることができる。
 
【0061】
  このとき、前面電界形成層30の厚さは、第1又は第2導電型領域32,34の厚さと同一又は小さくなっている。前面電界形成層30はキャリアを外部に伝達するための層でないため、相対的に小さい厚さを有してもよいためである。一例として、前面電界形成層30の厚さは1nm〜10nmであってもよい。この厚さでも前面電界形成層30による効果を十分に実現することができる。しかし、本発明が前面電界形成層30の厚さに限定されるわけではない。
 
【0062】
  他の変形例として、前面電界形成層30を形成しないで、半導体基板10の前面にベース領域110と同じ導電型のドーパントを高い濃度でドープしてドーピング領域を形成し、このドーピング領域を電界領域として使用してもよい。この電界領域は、
図7に示す実施例で前面電界形成層(又は、前面電界形成層30a)に記載されている。
 
【0063】
  半導体基板10の前面上に又は前面電界形成層30上に透明導電性膜24が配置(例えば、接触)されている。透明導電性膜24は、外部回路又は他の太陽電池100に接続されないフローティング電極である。このようなフローティング電極は、不要なイオンなどが半導体基板10の表面側に集まることを防止することができる。これによって、イオンなどによって発生する劣化現象(例えば、高温多湿な環境で太陽電池モジュールの発電効率が減少する現象(potential  induced  degradation:PID))を防止することができる。
 
【0064】
  一例として、透明導電性膜24は、インジウムスズ酸化物(indium  tin  oxide:ITO)、炭素ナノチューブ(carbon  nano  tube:CNT)などを含むことができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、透明導電性膜24はその他様々な物質を含んでもよい。
 
【0065】
  透明導電性膜24は必須の膜ではなく、透明導電性膜24を省いてもよい。
 
【0066】
  半導体基板10の前面上に又は透明導電性膜24上に反射防止膜26が配置(例えば、接触)されてもよい。
 
【0067】
  反射防止膜26は、半導体基板10の前面から入射する光の反射率を減少させる。これによって、ベース領域110と第1導電型領域32との界面に形成されたpn接合まで到達する光量を増加させることができる。その結果、太陽電池100の短絡電流(Isc)を増加させることができる。
 
【0068】
  反射防止膜26は、様々な物質で構成することができる。一例として、反射防止膜26は、シリコン窒化膜、水素を含むシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、アルミニウム酸化膜、シリコン炭化膜、MgF
2、ZnS、TiO
2及びCeO
2からなる群から選ばれるいずれか1つの単一膜又は2つ以上の膜が組み合わせられた多層膜の構造を有することができる。一例として、反射防止膜26は、シリコン窒化膜の単一層で構成されてもよく、シリコン窒化膜とシリコン炭化膜とが積層して構成されてもよい。
 
【0069】
  前面電界形成層30、透明導電性膜24、及び反射防止膜26は、実質的に半導体基板10の前面に全体的に形成することができる。ここで、「全体的に形成する」ということは、物理的に完璧に全て形成される場合だけでなく、不回避に一部を除いて形成される場合も含む。これによって、製造工程を単純化し、各層の役割を十分に発揮させることができる。
 
【0070】
  本実施例に係る太陽電池100に光が入射すると、光電変換によって電子及び正孔が生成され、生成された正孔及び電子はトンネリング層20をトンネリングしてそれぞれ第1導電型領域32及び第2導電型領域34に移動し、その後、第1及び第2電極42,44に伝達される。第1及び第2電極42,44に伝達された正孔及び電子は外部回路又は他の太陽電池100に移動し、これで、電気エネルギーが生成される。
 
【0071】
  本実施例のように半導体基板10の背面に電極42,44が形成され、半導体基板10の前面には電極が形成されない背面電極構造の太陽電池100では、半導体基板10の前面においてシェーディング損失(shading  loss)を最小化することができる。これによって、太陽電池100の効率を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。特に、本実施例では、第1及び第2導電型領域32,34のうち少なくとも一つが金属化合物層で構成されており、低い抵抗を補償するために電極42,44の第2電極層422,442を広く形成してもよい。この場合、背面電極構造を適用し、シェーディング損失による問題を防止することができる。
 
【0072】
  また、第1及び第2導電型領域32,34はトンネリング層20を挟んで半導体基板10上に形成されるため、半導体基板10とは別個の層で構成される。これによって、半導体基板10にドーパントをドープして形成したドーピング領域を導電型領域として使用する場合に比べて、再結合による損失を減らすことができる。
 
【0073】
  このとき、第1及び第2導電型領域32,34が半導体物質及びドーパントを含まないため、再結合による問題を最小化し、パッシベーション効果を向上させることができる。しかも、第1及び第2導電型領域32,34の製造工程を単純化することができる。これによって、太陽電池100の効率及び生産性を向上させることができる。
 
【0074】
  以下、
図5乃至
図12を参照して、本発明の他の実施例に係る太陽電池を詳しく説明する。上述の実施例で説明した部分と同一又は類似の部分については詳細な説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。そして、上述の実施例及びその変形例と以下の実施例及びそれらの変形例とを組み合わせてもよく、それらも本発明の範囲に含まれる。
 
【0075】
  図5は、本発明の他の実施例に係る太陽電池を示す断面図であり、
図6は、
図5に示した太陽電池の部分背面平面図である。
 
【0076】
  図5及び
図6を参照すると、本実施例に係る太陽電池100では、トンネリング層20上に設けられる第1導電型領域32及び第2導電型領域34のいずれか一方が金属化合物層を含み、いずれか他方が単一半導体物質を含むことができる。また、半導体基板10の前面上に設けられる前面電界形成層30が金属化合物層を含むことができる。
 
【0077】
  一例として、第1導電型領域32が単一半導体物質を含み、第2導電型領域34が金属化合物層を含むことができる。
 
【0078】
  第1導電型領域32は、半導体基板10と同じ半導体物質(より具体的に、単一半導体物質、例えば、シリコン)を含むことができる。これによって、第1導電型領域32が半導体基板10と類似の特性を有し、個別の半導体物質を含む場合に発生しうる特性差を最小化することができる。特に、第1導電型領域32がpn接合を構成するエミッタ領域であるため、特性差を最小化することによって太陽電池100の特性を向上させることができる。
 
【0079】
  本実施例では、第1導電型領域32が半導体基板10上(さらに明確には、トンネリング層20上)で半導体基板10と別個に形成されている。また、第1導電型領域32は、半導体基板10上に容易に形成されるように、半導体基板10と異なる結晶構造を有することができる。例えば、本実施例で第1導電型領域32は、第1導電型ドーパントがドープされた非晶質、微結晶又は多結晶半導体(例えば、非晶質、微結晶又は多結晶シリコン)層で構成することができる。特に、第1導電型領域32を第1導電型ドーパントがドープされた多結晶半導体層で構成することができる。
 
【0080】
  本実施例で第1導電型領域32を半導体基板10と別個に形成し、半導体基板10の内部にドーピング領域を形成する時に発生しうる欠陥又は開放電圧低下の問題を防止することができる。これによって、太陽電池100の開放電圧を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。例えば、第1導電型領域32を、半導体基板10の一部を構成するドーピング領域で構成してもよい。
 
【0081】
  このとき、第1導電型ドーパントがp型を有し、第1導電型領域32がp型を有することができる。第1導電型ドーパントとして、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を使用することができる。第1導電型ドーパントは、第1導電型領域32を構成する半導体層を形成する工程で半導体層に含めることができる。又は、第1導電型領域32を構成する半導体層を形成した後に、熱拡散法、イオン注入法などの様々なドーピング方法によって第1導電型ドーパントをドープすることもできる。
 
【0082】
  本実施例で、第1導電型領域32は、ベース領域110とトンネリング層20を挟んでpn接合(又は、pnトンネル接合)を形成し、光電変換によってキャリアを生成するエミッタ領域を構成する。これによって、半導体基板10(特に、ベース領域110が第2導電型(例えば、n型)を有し、第1導電型領域32は半導体基板10(特に、ベース領域110)と反対の導電型を有することができる。
 
【0083】
  また、本実施例で第2導電型領域34は、半導体基板10(又は、ベース領域110)及び第1導電型領域32と異なる半導体物質を含むことができる。前述したように、半導体基板10及び第1導電型領域32は単一半導体物質を有するが、第2導電型領域34は、2つ以上の元素を含む複合半導体物質であってもよい。一例として、第2導電型領域34が金属化合物層(例えば、金属及び酸素を含む金属酸化物層又は酸化物半導体)で構成され、半導体基板10及び第1導電型領域32に含まれた半導体物質(具体的には、単一半導体物質、例えば、シリコン)を含まない。このとき、第2導電型領域34は、半導体基板10に含まれる半導体物質、又は該半導体物質にn型又はp型ドーパントとして用いられるボロン又はリンなどを含まない。
 
【0084】
  このとき、第2導電型領域34は半導体基板10(特に、ベース領域110)と同じ導電型を有するとともに、半導体基板10よりも高いドーピング濃度を有する背面電界(back  surface  field)を形成する背面電界領域を構成することができる。このとき、第2導電型領域34がトンネリング層20上で半導体基板10と別個に形成されるため、半導体基板10上で容易に形成され得るように半導体基板10と異なる結晶構造を有することができる。
 
【0085】
  このとき、本実施例で第2導電型領域34は、前面電界形成層30のように、第2導電型を有し、非晶質構造を有し、金属及び酸素を含む酸化物半導体を含むことができる。このように第2導電型領域34及び前面電界形成層30が酸化物半導体を有すると、第1導電型領域32に含まれた半導体物質と異なる特性によって太陽電池100の特性を向上させることができる。
 
【0086】
  以下、前面電界形成層30及び第2導電型領域34を構成する酸化物半導体について詳しく説明する。
 
【0087】
  このとき、前面電界形成層30及び第2導電型領域34をそれぞれ構成する酸化物半導体は、酸素と共に、第12族又は第13族に含まれる金属を一つ又は複数含むことができる。すると、第12族又は第13族に含まれる金属と結合して残った酸素の電子などによって、前面電界形成層30及び第2導電型領域34がそれぞれn型の導電型を有することができる。そして、このような酸化物半導体を含む前面電界形成層30及び第2導電型領域34は、太陽電池100に適した、小さい光吸収係数、広いエネルギーバンドギャップ、優れた移動度などを有することができる。
 
【0088】
  特に、前面電界形成層30及び第2導電型領域32をそれぞれ構成する酸化物半導体が、インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物(すなわち、indium−gallium−zinc  oxide:IGZO)を含むことができる。
 
【0089】
  このとき、IGZO内でインジウムは(1s)
2(2s)
2(2p)
6(3s)
2(3p)
6(4s)
2(3d)
10(4p)
6(4d)
10(5s)
0の電子配置を有するIn
3+のイオン状態で存在し、電子の移動経路を形成する役割を担うことができる。インジウムの量が増加すると、キャリア濃度が高くなって伝導性が増加し、インジウムの量が減少すると、キャリア濃度が低くなって伝導性が減少する。亜鉛は、四面体配位(tetrahedral  coordination)によって非晶質構造を安定化させ、耐湿性を向上させる役割を担うことができる。ガリウムは、酸素との親和力、結合力などが大きいため、酸素と結合し、酸素によって発生しうる電気伝導度の低下を防止する役割を担うことができる。ガリウムの量が増加すると、酸素との結合確率を増やしてキャリア濃度を減らすことによって伝導性を下げることができる。ガリウムの量が減少すると、キャリア濃度が上昇し、伝導性を高めることができる。すなわち、ガリウムは、キャリア濃度を調節して伝導性を調節する役割を担うことができる。また、酸素は、優れたパッシベーション特性を有させることができる。酸素の量が減少すると、パッシベーション特性が低下し、酸素の量が増加すると、伝導性が低下しうる。
 
【0090】
  本実施例で、前面電界形成層30及び第2導電型領域34ではそれぞれ、インジウムの量がガリウムの量、亜鉛の量及び酸素の量のそれぞれよりも多くなっている。インジウムが伝導性向上に大きく寄与するためである。一例として、前面電界形成層30及び第2導電型領域34内にそれぞれ、インジウムを50at%〜90at%含めることができる。インジウムが50at%未満であれば、伝導性が小さいため、第2導電型領域34としての機能を十分に果たすことができない。インジウムが90at%を超えると、ガリウム、亜鉛などの量が少なくなるため、所望の特性を有し難い。
 
【0091】
  前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれにおいて、亜鉛の量がガリウムの量と同一か又は多くてもよく、酸素の量と同一か又は多くてもよい。特に、前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれにおいて、亜鉛の量がガリウムの量よりも多くてもよく、酸素の量よりも多くてもよい。亜鉛が構造的安定性を向上させるわけである。一例として、前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれに亜鉛が10at%〜40at%含まれてもよい。亜鉛が10at%未満であれば、亜鉛による効果が不十分でありうる。亜鉛が40at%を超えると、移動性及び伝導性の不均一度が増加しうる。
 
【0092】
  前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれにおいて、ガリウムがキャリア濃度及び伝導性を調節するように含まれてもよい。また、ガリウムによって第2導電型領域34のパッシベーション特性を向上させることもできる。一例として、ガリウムの量は1at%〜10at%とすることができる。ガリウムが1at%〜10at%含まれるとき、前面電界形成層30及び第2導電型領域34がそれぞれ所望の伝導性を有することができる。
 
【0093】
  前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれにおいて、酸素は、インジウム、亜鉛及びガリウムを除いた残りであってもよい。一例として、前面電界形成層30及び第2導電型領域34はそれぞれ酸素を1at%〜10at%含むことができる。酸素が1at%未満であれば、パッシベーション特性が低下し、酸素が10at%を超えると、伝導度が減少しうる。
 
【0094】
  しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、インジウム、亜鉛、ガリウム、酸素の量は様々な値を有することができる。
 
【0095】
  参考として、前面電界形成層30又は第2導電型領域34が、亜鉛などを除くニッケル(Ni)、銅(Cu)などの遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土金属などを含むと、半導体としての特性を示し難いか、電界の形成に不適である。
 
【0096】
  また、前面電界形成層30又は第2導電型領域34が亜鉛及びインジウムを含まないでガリウム酸化物だけで構成される場合には、太陽電池100の製造時に経る化学工程(洗浄工程、パターニング工程など)で使われる酸及びアルカリに脆弱であり、耐化学性が低下しうる。その上、伝導性が十分でないか、強い電界を形成し難いため、前面電界形成層30又は第2導電型領域34として使用するには不適である。
 
【0097】
  前面電界形成層30又は第2導電型領域34が亜鉛及びガリウムを含まないでインジウム酸化物だけで構成される場合には、構造的安定性及び耐湿性を向上させ得る亜鉛を含まないため、IGZOに比べて酸素の比率が高くなる。このため、相対的に伝導性が低くなり、前面電界形成層30又は第2導電型領域34として使用するには不適である。また、亜鉛を含まないため、移動度及び伝導性の不均一度が増加しうる。
 
【0098】
  また、第2導電型領域34がインジウム及びガリウムを含まないで亜鉛だけを含み、亜鉛酸化物(ZnO)で構成される場合には、熱に弱いため、温度安定性が低下しうる。このため、太陽電池100に適用される場合には、ホットスポット(hot  spot)現象、ダンプヒート(damp  heat)現象などが発生したり、時間による特性減少が発生することがあり、結果として太陽電池100の信頼性及び効率が低下しうる。また、電界又は伝導性が、前面電界形成層30又は第2導電型領域34として用いるには足りないこともある。また、前面電界形成層30又は第2導電型領域34が、太陽電池100の製造時に経る化学工程(洗浄工程、パターニング工程など)で使われる酸及びアルカリに脆弱であり、耐化学性が低下しうる。
 
【0099】
  このように、本実施例では、前面電界形成層30及び第2導電型領域34が酸素と共にインジウム、亜鉛及びガリウムを含み、前面電界形成層30及び第2導電型領域34に適合した様々な特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、前面電界形成層30又は第2導電型領域34がインジウム、亜鉛、ガリウムのうち少なくとも一つだけを含む態様も本発明に属し得る。
 
【0100】
  前述したように、前面電界形成層30及び第2導電型領域34を構成する酸化物半導体(特に、IGZOを含む酸化物半導体)は、第1導電型領域32を構成する半導体物質(より具体的に、単一半導体物質、例えば、4族元素)と異なる物質を有することから、第1導電型領域32と他の特性を有する。
 
【0101】
  より具体的に、前面電界形成層30又は第2導電型領域34が第1導電型領域32に比べて大きいエネルギーバンドギャップを有することができる。例えば、前面電界形成層30又は第2導電型領域34のエネルギーバンドギャップが3.0eV〜3.5eVであり、第1導電型領域32のエネルギーバンドギャップが1.1eV〜1.2eVであってもよい。本実施例において第2導電型領域34のエネルギーバンドギャップが大きい値を有し、開放電圧をさらに向上させることができる。
 
【0102】
  また、前面電界形成層30又は第2導電型領域34が第1導電型領域32に比べて小さい光吸収係数を有することができる。例えば、前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれの光吸収係数が0.1×10
3/cm
3〜5×10
3/cm
3であり、第1導電型領域32の光吸収係数が4×10
5/cm
3〜6×10
5/cm
3であってもよい。このように前面電界形成層30及び第2導電型領域34の光吸収係数が小さい値を有することにより、太陽電池100に入射する光が前面電界形成層30及び第2導電型領域34に吸収されて損失されることを減らすことができる。特に、本実施例のように、光吸収係数の小さい前面電界形成層30を光の入射が相対的に多い前面に配置し、光吸収による損失を最小化することができる。
 
【0103】
  また、前面電界形成層30及び第2導電型領域34のそれぞれを構成する酸化物半導体の電子移動度が5cm
2/Vsec〜100cm
2/Vsecであってもよい。これによって、第2導電型領域34で電子が円滑に流れて第2電極44によって収集され得る。
 
【0104】
  第2導電型領域34と第2電極44とがオーミックコンタクト(ohmic  contact)を維持することができる。そのために、第2導電型領域34の仕事関数が第2電極44の仕事関数よりも大きくてもよい。一例として、第2導電型領域34の仕事関数が4.60Ev〜4.85Evであってもよい。これによって、第2導電型領域34の電子が第2電極44まで円滑に移動することができる。
 
【0105】
  前面電界形成層30又は第2導電型領域34のキャリア濃度がそれぞれ5x10
18/cm
3〜1x10
20/cm
3であってもよい。この範囲内では第2導電型領域34が低い抵抗を有し、前面電界形成層30は強い電界を形成することができる。また、第2導電型領域34の面抵抗がそれぞれ400Ω/□(ohm/square)以下の値を有してもよい。第2導電型領域34の面抵抗が400Ω/□未満であれば、第2導電型領域34としての役割を十分に果たし難い。一例として、第2導電型領域34の面抵抗は150Ω/□〜350Ω/□であってもよい。この範囲の面抵抗を有すると、厚さを大きく増加させなくとも第2導電型領域34の特性を向上させることができる。第2導電型領域34の面抵抗は、上述したように、組成を調節することによって変化させることができる。一例として、第2導電型領域34内のインジウムの量を増加させ、ガリウムの量を減らすことによって、第2導電型領域34の抵抗を下げることができる。また、前面電界形成層30及び第2導電型領域34の形成後に行われる熱処理工程の条件によって第2導電型領域34のキャリア濃度及び面抵抗が変化しうる。一例として、熱処理工程時に酸素を使用する場合、酸素圧力を5Pa以下に維持すると、前面電界形成層30及び第2導電型領域34が上述のようなキャリア濃度、抵抗などを有することができる。また、熱処理温度が250℃〜450℃(例えば、300℃〜350℃)程度であるとき、第2導電型領域34が上述のようなキャリア濃度、抵抗などを有することができる。
 
【0106】
  また、前面電界形成層30又は第2導電型領域34の厚さが100nm〜400nmであってもよい。この範囲の厚さにおいて低い抵抗及び十分の伝導性を有することができる。一例として、前面電界形成層30の厚さが第2導電型領域34の厚さより小さくてもよい。第2導電型領域34が低い抵抗を有し、第2電極44との接続特性を向上させなければなず、第2導電型領域34は十分の厚さで形成することが好ましい。一方、前面電界形成層30は電界を形成する程度の厚さであればよく、薄い厚さとし、光吸収を最小化するためである。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0107】
  上述した前面電界形成層30又は第2導電型領域34の電子移動度、仕事関数、キャリア濃度、面抵抗、厚さは一例に過ぎない。したがって、本発明が上述した値に限定されるわけではなく、様々な値を有することができる。
 
【0108】
  上述した特性を有する酸化物半導体を含む前面電界形成層30及び第2導電型領域34は、相対的に低い温度で簡単な工程によって形成することができる。より具体的には、前面電界形成層30及び第2導電型領域34は、インジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素を含むターゲット(target)を使ってスパッタリングした後、それを250℃〜450℃(例えば、300℃〜350℃)の温度で熱処理することによって形成することができる。その他にも、坩堝中にインジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素を含むIGZOパウダーに電子ビーム(electron  beam)を照射して気化させ、IGZOを蒸着してもよく、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)によってIGZOを蒸着してもよい。その他様々な方法を利用してもよい。
 
【0109】
  上述したように、別個の物質で形成された第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に、空間又はトレンチなどで形成される分離領域36を配置してもよい。これによって、第1導電型領域32と第2導電型領域34とが分離領域36を挟んで分離される。分離領域36は、第1導電型領域32と第2導電型領域34を物理的に分離し、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間で発生しうるシャント(shunt)などの問題を防止することができる。これによって、太陽電池100の電荷密度(charge  density)を向上させることができ、一例として、太陽電池100が82%以上の電荷密度を有することができる。
 
【0110】
  分離領域36は、第1導電型領域32と第2導電型領域34とを全体的に分離するように、
図6に示したように全体的に形成されてもよく、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に部分的に形成されてもよい。後者の場合、第1導電型領域32と第2導電型領域34との境界の一部か互いに接触してもよい。分離領域36は必須のものではなく、第1導電型領域32と第2導電型領域34とが全体的に接触して形成されてもよい。その他様々な変形も可能である。
 
【0111】
  このように、本実施例では第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に、空間又はトレンチで構成された分離領域36が設けられることを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に分離領域36以外の部分が設けられてもよい。その詳細は、
図8を参照して後述する。
 
【0112】
  第1及び第2導電型領域32,34上に絶縁層40が形成されてもよい。一例として、絶縁層40は、第1及び第2導電型領域32,34の上面(図面では下面)及び側面を覆いながら形成され、分離領域36の内部にも形成されてもよい。より具体的には、絶縁層40が第1及び第2導電型領域32,34の上面及び側面、並びに第1及び第2導電型領域32,34の間に配置された分離領域36に対応する箇所においてトンネリング層20上に形成(例えば、接触)されてもよい。これによって、第1及び第2導電型領域32,34のパッシベーション特性が向上し、第1及び第2導電型領域32,34の間におけるシャントをより効果的に防止することができる。
 
【0113】
  絶縁層40は、第1導電型領域32と第1電極42との接続のための第1開口部402と、第2導電型領域34と第2電極44との接続のための第2開口部404を有する。これによって、絶縁層40は、第1導電型領域32及び第2導電型領域34が接続されてはならない電極(すなわち、第1導電型領域32の場合には第2電極44、第2導電型領域34の場合には第1電極42)と接続されることを防止することができる。また、絶縁層40は、第1及び第2導電型領域32,34及び/又はトンネリング層20をパッシベーションする効果を有することができる。
 
【0114】
  絶縁層40は、トンネリング層20に比べて厚い厚さを有することができる。これによって、絶縁特性及びパッシベーション特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。
 
【0115】
  絶縁層40は、様々な絶縁物質(例えば、酸化物、窒化物など)で構成することができる。一例として、絶縁層40は、シリコン窒化膜、水素を含むシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、Al
2O
3、MgF
2、ZnS、TiO
2及びCeO
2からなる群から選ばれるいずれか1つの単一膜又は2つ以上の膜が組み合わせられた多層膜の構造を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、絶縁層40がその他様々な物質を含んでもよいことは勿論である。
 
【0116】
  一例として、本実施例において反射防止膜26及び絶縁層40は、優れた絶縁特性、パッシベーション特性などを有し得るようにドーパントなどを含まなくてもよい。
 
【0117】
  半導体基板10の背面に配置される電極42,44は、第1導電型領域32に電気的及び物理的に接続される第1電極42と、第2導電型領域34に電気的及び物理的に接続される第2電極44とを有する。
 
【0118】
  このとき、第1電極42は、絶縁層40の第1開口部402を貫通して第1導電型領域32に接続(例えば、接触)され、金属物質で構成される第2電極層422で構成される。また、第2電極44は、絶縁層40の第2開口部404を貫通して第2導電型領域34に接続(例えば、接触)され、金属物質で形成された第2電極層442で構成される。この第1及び第2電極42,44は、様々な伝導性物質(例えば、金属物質)を含むことができる。
 
【0119】
  図6では、分離領域36が第1導電型領域32と第2導電型領域34との間においてそれらを全体的に離隔させつつ一方向に長く延びるストライプ形状を有することを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、分離領域36の形状は様々な変形が可能である。
 
【0120】
  また、本実施例で半導体基板10のベース領域110は、これと同じ導電型を有する第1及び第2導電型領域32,34のいずれか一方よりも低いドーピング濃度、高い抵抗又は低いキャリア濃度を有することができる。本実施例において第2導電型領域34が金属及び酸素を含む酸化物半導体で構成されるため、ベース領域110が第2導電型を有する場合にはベース領域110が第2導電型領域34に比べて高い抵抗及び低いキャリア濃度を有することができる。一例として、ベース領域110のキャリア濃度が0.1x10
15/cm
3〜7x10
15/cm
3であり、第2導電型領域34のキャリア濃度が5x10
18/cm
3〜1x10
20/cm
3であってもよい。その詳細については後述する。ベース領域110が第1導電型を有する場合には、ベース領域110が第1導電型領域32に比べて低いドーピング濃度、高い抵抗又は低いキャリア濃度を有することができる。
 
【0121】
  上述した実施例では、前面電界形成層30及び第2導電型領域34がそれぞれ酸化物半導体を含む例を示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、前面電界形成層30及び第2導電型領域34のいずれか一方だけが酸化物半導体を含んでもよい。
 
【0122】
  一例として、前面電界形成層30を、半導体基板10と別個の半導体層(例えば、非晶質半導体層、微結晶半導体層、又は多結晶半導体層)に第2導電型ドーパントをドープして形成してもよい。又は、前面電界形成層30を、半導体基板10に隣接して形成された層(例えば、パッシベーション膜及び/又は反射防止膜26)の固定電荷によってドープされたものと類似の役割を果たす電界領域で構成してもよい。例えば、ベース領域110がn型である場合には、パッシベーション膜又は反射防止膜26が固定負電荷を有する酸化物(例えば、アルミニウム酸化物)で構成され、ベース領域110の表面に反転領域(inversion  layer)を形成し、これを電界領域として用いることができる。この場合には、半導体基板10が別のドーピング領域を具備せずにベース領域110だけで構成され、半導体基板10の欠陥を最小化することができる。その他様々な方法によって様々な構造の前面電界形成層30を形成することもできる。他の例については
図7及び
図8を参照して詳しく説明する。
 
【0123】
  上述した実施例では、半導体基板10がn型を有し、第2導電型領域34がそれと同じn型を有して背面電界領域を形成するとき、第2導電型領域34が酸化物半導体を含む例を示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、半導体基板10がp型を有し、第1導電型領域32がn型を有してエミッタ領域を形成するとき、第1導電型領域32が酸化物半導体を含んでもよい。その他様々な変形も可能である。
 
【0124】
  図7は、本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
 
【0125】
  図7を参照すると、本実施例では、前面電界形成層(又は、電界領域)30aが、半導体基板10に第2導電型ドーパントを相対的に高いドーピング濃度でドープして形成されたドーピング領域で構成されている。すなわち、第2導電型を有する結晶質(単結晶又は多結晶)半導体を含む前面電界形成層30aが半導体基板10の一部を構成することとなる。一例として、前面電界形成層30aは、第2導電型を有する単結晶半導体基板(例えば、単結晶シリコンウエハー基板)の一部分を構成することができる。また、前面電界形成層30aのドーピング濃度はベース領域110のドーピング濃度よりも高くてなっている。
 
【0126】
  このように、本実施例ではドーピング工程によって前面電界形成層30aを形成しているため、前面電界形成層30を形成するために別の層を形成する工程を省略してもよく、製造工程の負担を軽減することができる。
 
【0127】
  これによって、本実施例では第2導電型領域34だけが酸化物半導体を含むこととなる。
 
【0128】
  図8は、本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
 
【0129】
  図8を参照すると、本実施例では、第2導電型領域34aが第2導電型を有する単一半導体物質を含み、前面電界形成層30だけが酸化物半導体を含んでいる。第2導電型領域34aは、第2導電型を有する以外は、第1導電型領域32と同一又は類似の特性を有し、その説明は省略する。また、第1導電型領域32と第2導電型領域34aとの間にバリアー領域36aが設けられている。一例として、絶縁層40が、第1及び第2導電型領域32,34aとバリアー領域36aに触して形成されている。
 
【0130】
  また、第1導電型領域32と第2導電型領域34aとの間にバリアー領域36aが設けられ、第1導電型領域32と第2導電型領域34aとを分離させている。第1導電型領域32と第2導電型領域34aとが接触し合う場合にはシャント(shunt)が発生し、太陽電池100の性能が低下しうる。そこで、本実施例では第1導電型領域32と第2導電型領域34aとの間にバリアー領域36aを配置し、不要なシャントを防止することができる。
 
【0131】
  バリアー領域36aは、第1導電型領域32と第2導電型領域34aとの間でそれらを実質的に絶縁させ得る様々な物質を含むことができる。すなわち、バリアー領域36aには、ドープされていない(すなわち、非ドープの)物質(例えば、酸化物、窒化物)などを使用することができる。又は、バリアー領域36aが真性(intrinsic)半導体を含んでもよい。このとき、第1導電型領域32及び第2導電型領域34aとバリアー領域36aは、互いに側面が接触しつつ連続して形成される同一の単一半導体物質(例えば、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン)で構成されるが、バリアー領域36aは実質的にドーパントを含まなくてもよい。例えば、単一半導体物質を含む半導体層を形成した後、半導体層の一部の領域に第1導電型ドーパントをドープして第1導電型領域32を形成し、他の領域の一部に第2導電型ドーパントをドープして第2導電型領域34aを形成すると、第1導電型領域32及び第2導電型領域34aが形成されていない領域がバリアー領域36aを構成することができる。これによれば、第1導電型領域32及び第2導電型領域34aとバリアー領域36aの製造方法を単純化することができる。
 
【0132】
  しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、バリアー領域36aを第1導電型領域32及び第2導電型領域34aと別に形成した場合には、バリアー領域36aの厚さが第1導電型領域32及び第2導電型領域34aと異なってもよい。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34aの短絡をより効果的に防ぐために、バリアー領域36aが第1導電型領域32及び第2導電型領域34aよりも厚い厚さを有することができる。又は、バリアー領域36aを形成するための原料を節減するために、バリアー領域36aの厚さを第1導電型領域32及び第2導電型領域34aの厚さよりも小さくしてもよい。その他様々な変形も可能であることは勿論である。また、バリアー領域36aの基本構成物質が、第1導電型領域32及び第2導電型領域34aのそれと異なってもよい。
 
【0133】
  また、本実施例ではバリアー領域36aが第1導電型領域32と第2導電型領域34aとの間を全体的に離隔することを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、バリアー領域36aが第1導電型領域32及び第2導電型領域34aの境界部分の一部だけを離隔するように形成されてもよい。この場合、第1導電型領域32及び第2導電型領域34aの境界の他の一部は互いに接触してもよい。また、バリアー領域36aは必須のものではなく、第1導電型領域32と第2導電型領域34aとが全体的に接して形成されてもよい。その他様々な変形も可能である。
 
【0134】
  また、本実施例では、第2導電型領域34aが酸化物半導体を含まず、第1導電型領域32aと同様に単一半導体物質(例えば、シリコン)を含み、バリアー領域36aが形成されることを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第1導電型領域32又は第2導電型領域34aが酸化物半導体を含み、バリアー領域36aを有することも可能である。又は、第2導電型領域34aが酸化物半導体を含まず、第1導電型領域32aと同様に単一半導体物質(例えば、シリコン)を含み、分離領域36が形成されてもよい。その他様々な変形も可能である。
 
【0135】
  図9は、本発明の実施例に係る太陽電池の断面図であり、
図10は、
図9に示した太陽電池の平面図である。
図10は半導体基板と電極を中心にして示している。
図9及び
図10に示す実施例において、
図5乃至
図8に示した実施例と同一又は類似の部分については詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明するものとする。
 
【0136】
  図9及び
図10を参照すると、本実施例では、第1導電型領域32が半導体基板10の一面上に設けられ、第2導電型領域34が半導体基板10の他面上に設けられている。このとき、第1導電型領域32を半導体基板10の一面上に全体的に形成し、第2導電型領域34を半導体基板10の他面上に全体的に形成することができる。また、本実施例では、
図1乃至
図8に示した実施例と違い、前面電界形成層30又は前面電界形成層30aを具備しない。
 
【0137】
  さらに具体的には、本実施例では、半導体基板10の一面(例えば、背面)上においてトンネリング層20上に第1導電型領域32が設けられている。一例として、第1導電型領域32はトンネリング層20に接して設けられてもよい。一例として、第1導電型領域32は、p型の第1導電型を有してもよい。
 
【0138】
  このとき、半導体基板10又はベース領域110が第2導電型であるn型を有することができる。すると、第1導電型領域32がトンネリング層20を挟んでベース領域110とpn接合(又は、pnトンネル接合)を形成し、光電変換によってキャリアを生成するエミッタ領域を構成する。
 
【0139】
  本実施例では、第2導電型領域34は第2導電型であるn型を有し、半導体基板10と同じ導電型を有する前面電界(front  surface  field)を形成する前面電界領域を構成することがきる。このとき、第2導電型領域34が半導体基板10上に半導体基板10と別個に形成され、半導体基板10上で容易に形成され得るように、半導体基板10と異なる結晶構造を有することができる。
 
【0140】
  このとき、第1導電型領域32を単一半導体(例えば、シリコン)層で構成し、第2導電型領域34を酸化物半導体層で構成することができる。第1導電型領域32を構成する単一半導体層及び第2導電型領域34を構成する酸化物半導体層に関する説明は、
図5乃至
図8に示した実施例における説明と同一又は類似であり、詳細な説明を省略する。
 
【0141】
  反射防止膜26が、第2電極44に対応する開口部404を除いて第2導電型領域34上で実質的に半導体基板10の前面全体に形成されている。一例として、反射防止膜26が第2導電型領域34に接して形成されてもよい。
 
【0142】
  反射防止膜40aが、第1電極42に対応する開口部402を除いて第1導電型領域32上で実質的に半導体基板10の背面全体に形成されている。一例として、反射防止膜40aが第1導電型領域32に接して形成されてもよい。
 
【0143】
  反射防止膜40aは様々な物質で構成することができる。一例として、反射防止膜40aは、シリコン窒化膜、水素を含むシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、シリコン炭化膜、アルミニウム酸化膜、MgF
2、ZnS、TiO
2及びCeO
2からなる群から選ばれるいずれか1つの単一膜又は2つ以上の膜が組み合わせられた多層膜の構造を有することができる。一例として、反射防止膜40aは、シリコン窒化膜の単一層で構成されてもよく、シリコン窒化膜とシリコン炭化膜とが積層して構成されてもよい。
 
【0144】
  しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、反射防止膜40aが様々な物質を含んでもよいことは勿論である。また、反射防止膜40aの代わりにパッシベーション膜を使用してもよく、
図5に示した実施例の絶縁層40又は反射膜などの他の膜が第1導電型領域32上に又は半導体基板10の背面側に形成されてもよい。その他にも様々な変形が可能である。
 
【0145】
  第1電極42は、第1導電型領域32上に設けられて(例えば、接触して)第1導電型領域32に電気的に接続され、金属物質を含む第2電極層422で構成されている。第2電極44は、第2導電型領域34上に設けられて(例えば、接触して)第2導電型領域34に電気的に接続され、金属物質を含む第2電極層442で構成されている。第1及び第2電極42,44は、反射防止膜40a,26に形成された開口部402,404を通って(すなわち、反射防止膜40a,26を貫通して)第1及び第2導電型領域32,34に電気的に接続されている。第1及び第2電極42,44の形状については、
図10を参照して後述する。
 
【0146】
  図10を参照して第1及び第2電極42,44(さらに正確には、第2電極層422,442)の平面形状について詳しく説明する。
 
【0147】
  図10を参照すると、第1及び第2電極42,44は、一定のピッチで互いに離隔している複数のフィンガー電極42a,44aを有している。同図では、フィンガー電極42a,44aが互いに平行であり、半導体基板10の縁に平行である例を示しているが、本発明がこれに限定されるものではない。また、第1及び第2電極42,44は、フィンガー電極42a,44aと交差する方向に設けられてフィンガー電極42a,44aを接続するバスバー電極42b,44bを有することができる。このようなバスバー電極42b,44bは、1個だけ設けられてもよく、
図10に示すように、フィンガー電極42a,44aのピッチよりも大きいピッチで複数個設けられてもよい。このとき、フィンガー電極42a,44aの幅よりもバスバー電極42b,44bの幅が大きくなっているが、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、バスバー電極42b,44bの幅がフィンガー電極42a,44aの幅と同一か又は小さくてもよい。
 
【0148】
  断面から見て、第1電極42のフィンガー電極42a及びバスバー電極42bはいずれも反射防止膜40aを貫通して形成されている。すなわち、開口部402が第1電極42のフィンガー電極42a及びバスバー電極42bの両方に対応して形成されている。また、第2電極44のフィンガー電極44a及びバスバー電極44bはいずれも反射防止膜26を貫通して形成されている。すなわち、開口部404が第2電極44のフィンガー電極44a及びバスバー電極44bの両方に対応して形成されている。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。他の例として、第1電極42のフィンガー電極42aが反射防止膜40aを貫通して形成され、バスバー電極42bが反射防止膜40a上に形成されてもよい。この場合には、開口部402がフィンガー電極42aに対応する形状に形成され、バスバー電極42bのみ位置している部分には形成されなくてもよい。また、第2電極44のフィンガー電極44aが反射防止膜26を貫通して形成され、バスバー電極44bは反射防止膜26上に形成されてもよい。この場合には、開口部404がフィンガー電極44aに対応する形状に形成され、バスバー電極44bのみ位置している部分には形成されなくてもよい。
 
【0149】
  図面では第1電極42と第2電極44とが同じ平面形状を有する例を示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第1電極42のフィンガー電極42a及びバスバー電極42bの幅、ピッチなどは、第2電極44のフィンガー電極44a及びバスバー電極44bの幅、ピッチなどと異なる値を有してもよい。また、第1電極42と第2電極44の平面形状が互いに異なってもよく、その他様々な変形が可能である。
 
【0150】
  本実施例では、半導体基板10の前面及び背面に凹凸が形成される例を示したが、本発明がこれに限定されるわけではない。したがって、半導体基板10の前面及び背面のいずれか一方にだけ凹凸が形成されてもよい。特に、半導体基板10の前面に凹凸が形成され、半導体基板10の背面が鏡面研磨されるようにし、相対的に光が多く入射する前面では光の反射を最小化し、背面では反射によって光を再利用することができる。又は、半導体基板10の前面及び背面に凹凸が形成されなくてもよい。
 
【0151】
  このように、本実施例では太陽電池100の第1及び第2電極42,44が一定のパターンを有し、太陽電池100が半導体基板10の前面及び背面から光が入射し得る両面受光型(bi−facial)構造を有する。これによって、太陽電池100で使われる光量を増加させ、太陽電池100の効率の向上に寄与することができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、第2電極44が半導体基板10の背面側で全体的に形成される構造を有してもよい。その他様々な変形も可能である。
 
【0152】
  また、本実施例では、エミッタ領域を構成する第2導電型領域34ではなく第1導電型領域32を、半導体基板10及び第2導電型領域34の半導体物質と異なる酸化物半導体で構成する。これによって、第1導電型領域32が第2導電型領域34と異なる特性を有し、表面再結合及び光損失を最小化し、高いエネルギーバンドギャップを有することができる。その結果、太陽電池100の開放電圧及び電流密度を増加させ、太陽電池100の効率を向上させることができる。
 
【0153】
  上述した実施例では、半導体基板10が第2導電型を有し、背面に設けられた第1導電型領域32がエミッタ領域を構成し、前面に設けられた第2導電型領域34が前面電界領域を構成することを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、半導体基板10が第1導電型を有し、背面に設けられた第1導電型領域32が背面電界領域を構成し、前面に設けられた第2導電型領域34がエミッタ領域を構成してもよい。その他にも様々な変形が可能である。
 
【0154】
  図11は、本発明の他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
図11に示した実施例において、
図9及び
図10に示した実施例と同一又は類似の部分については詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明するものとする。
 
【0155】
  図11を参照すると、本実施例では、半導体基板10と第2導電型領域34との間にトンネリング層22がさらに設けられている。
図9に示したトンネリング層20に関する説明を、半導体基板10と第2導電型領域34との間に設けられたトンネリング層22にそのまま適用すればよく、その説明は省略する。
 
【0156】
  本実施例では、半導体基板10と第2導電型領域34との間にトンネリング層22がさらに設けられ、パッシベーション効果を最大化するとともに、キャリアの移動を円滑にさせることができる。
 
【0157】
  図12は、本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
図12に示す実施例において、
図9及び
図10に示した実施例又は
図11に示した実施例と同一又は類似の部分については詳細な説明を省略し、異なる部分を中心に説明するものとする。
 
【0158】
  図12を参照すると、本実施例では、半導体基板10と同じ半導体物質を含む第1導電型領域32及びこれに接続される第1電極42が、半導体基板10の前面にトンネリング層20を挟んで設けられている。また、半導体基板10と異なる半導体物質(例えば、複合半導体又は酸化物半導体)を含む第2導電型領域34及びこれに接続される第2電極44が、半導体基板10の背面に形成(例えば、接触)されている。
 
【0159】
  このとき、半導体基板10がn型の第2導電型を有することができる。これによれば、エミッタ領域を構成するp型の第1導電型領域32が半導体基板10の前面に位置し、pn接合に到達する光の経路を最小化することができる。また、背面電界領域を構成するn型の第2導電型領域34が半導体基板10の背面に位置している。しかし、本発明がこれに限定されるわけではない。したがって、半導体基板10がp型の第1導電型を有し、第1導電型領域32が前面電界領域を形成し、第2導電型領域34がエミッタ領域34を構成してもよい。
 
【0160】
  上述のような特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例に限定されない。なお、各実施例で例示された特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって他の実施例に対して組合せ又は変形して実施されてもよい。したがって、このような組合せ又は変形に関する内容も本発明の範囲に含まれるものとして解釈しなければならない。