特許第6522689号(P6522689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6522689すぐに使える(ready to use)カテーテル・アセンブリの製造方法およびすぐに使えるカテーテル・アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522689
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】すぐに使える(ready to use)カテーテル・アセンブリの製造方法およびすぐに使えるカテーテル・アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
   A61M25/00 612
   A61M25/00 500
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-101060(P2017-101060)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-8031(P2018-8031A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】16001196.1
(32)【優先日】2016年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516045573
【氏名又は名称】テレフレックス、ライフ、サイエンシーズ、アンリミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TELEFLEX LIFE SCIENCES UNLIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】ケイティ・ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ジョン・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】モーガン・ティアニー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド スカリ−
(72)【発明者】
【氏名】アラン・フィッツジェラルド
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−506160(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129162(WO,A1)
【文献】 特開2013−256472(JP,A)
【文献】 特開2015−173233(JP,A)
【文献】 特開平08−066461(JP,A)
【文献】 特表2010−537644(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/202760(WO,A2)
【文献】 特表2007−515247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82− 2/97
A61M 25/00−29/04
A61M 35/00−36/08
A61M 37/00
A61M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すぐに使えるカテーテル・アセンブリ(1,10,14,19,23,29,31,38,42,46)の製造方法であって、以下の工程を含み
少なくともその挿入可能な長さに沿った活性化されていない親水性外表面を備えたカテーテル(3)および前記カテーテルの親水性外表面に向かって流れないような粘性を有する湿潤媒体(4,32,33)をカテーテル用パッケージ内(2)に、前記湿潤媒体が少なくとも前記カテーテルの親水性外表面に接触しないように留置することと、
前記カテーテル(3)の少なくとも挿入可能な長さに沿った前記親水性外表面(5)が、少なくとも最初は実質的に活性化されていない状態のまま、前記カテーテル(3)および前記湿潤媒体(4)を備えた前記カテーテル用パッケージ(2)を電磁放射線または粒子放射線で処理することと、
放射線処理の間、および/またはその後、前記湿潤媒体(4,32,33)を備えた前記カテーテル(3)の少なくとも挿入可能な長さに沿った前記親水性外表面(5)を活性化させることと、
を含み、
電磁放射線および/または粒子放射線を受けると前記湿潤媒体(4,33)は粘性が減少し、前記カテーテル用パッケージ(2)の内部を流れて前記カテーテル(3)の前記親水性外表面(5)に接触することが可能となり、当該接触によって前記親水性外表面(5)が活性化されることを特徴とする、すぐに使えるカテーテル・アセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記電磁放射線処理および/または粒子放射線処理が、前記カテーテル・アセンブリを殺菌するための殺菌ステップであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿潤媒体(4)の粘性が、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると、少なくとも80%減少することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記湿潤媒体(4,33)が、少なくとも1つのポリマーを含むゲルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲルが、前記放射線処理前は、7000cPを超えた、好ましくは25000cPを超えた粘性を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーが、有機炭水化物または合成炭水化物、または液体ポリマーであることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線処理に使用する放射線が、ガンマ放射線、X線、電子線、または紫外線であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線のエネルギ投与量が1〜50kGy、好ましくは15〜45kGy、より好ましくは25〜45kGyの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8に記載の方法で用いられるカテーテル・アセンブリ(1,10,11,19,23,29,31,38,42,46)であって、
カテーテル用パッケージ(2)と、
前記カテーテル用パッケージ内(2)に配置されている、少なくともその挿入可能長さに沿った活性化されていない親水性外表面(5)を備えたカテーテル(3)と、
前記カテーテル用パッケージ内(2)に少なくとも前記カテーテルの親水性外表面に接触しないよう配置されており、前記カテーテルの親水性外表面に向かって流れないような粘性を有する湿潤媒体(4,33)と、を備え、
前記湿潤媒体(4,33)は、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると粘性が低下し、前記カテーテル用パッケージ(2)の内部を流れて前記カテーテル(3)の前記親水性外表面(5)に接触することが可能となり、当該接触によって前記親水性外表面(5)が活性化されることを特徴とする、カテーテル・アセンブリ(1,10,11,19,23,29,31,38,42,46)。
【請求項10】
前記カテーテル用パッケージ(2)が、電磁放射線および/または粒子放射線での処理の前および間に、少なくともその挿入可能長さに沿った前記親水性外表面(5)と前記湿潤媒体(4,32,33)とを備えた前記カテーテル(3)を互いから分離するための開口チャネル分岐部を備えることを特徴とする、請求項9に記載のカテーテル・アセンブリ。
【請求項11】
前記カテーテル用パッケージ(2)が、前記湿潤媒体(4)が配置されている前記カテーテル用パッケージ(2)にバックテーパ(12,17)を形成する少なくとも1つの溶接シーム(11,15,16)を備えることを特徴とする、請求項10に記載のカテーテル・アセンブリ。
【請求項12】
前記親水性外表面(5)を有する前記カテーテル(3)と前記湿潤媒体(4)とを物理的バリヤによって分離することを特徴とする、請求項9に記載のカテーテル・アセンブリ。
【請求項13】
前記カテーテル用パッケージ(2)が、少なくともその挿入可能長さに沿った前記親水性外表面(5)を有する前記カテーテル(3)と前記湿潤媒体(4)との間に配置される多孔性ライニング(21)を備えることを特徴とする、請求項9または10に記載のカテーテル・アセンブリ。
【請求項14】
少なくとも前記カテーテル(3)の一部分が、スリーブ(6,26)によって包囲されていることを特徴とする、請求項9から13のいずれか一項に記載のカテーテル・アセンブリ。
【請求項15】
前記湿潤媒体が、一部が水溶液(32)であり、一部がゲル(33)であって、前記ゲル(33)は、少なくともその挿入可能長さに沿った前記親水性外表面(5)を備えた前記カテーテル(3)から前記水溶液を分離するためのプラグを形成することを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載のカテーテル・アセンブリ。
【請求項16】
放射線処理の間、および/またはその後に、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面(5)を備えたカテーテル(3)を活性化させるための、前記カテーテルの親水性外表面に向かって流れないような粘性を有しており、少なくとも前記カテーテルの親水性外表面に接触しないようにカテーテル用パッケージ(2)に配置される湿潤媒体(4,33)の使用であって、それによって、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると前記湿潤媒体(4,33)は粘性が低下し、前記カテーテル用パッケージ(2)の内部を流れて前記カテーテル(3)の前記親水性外表面(5)に接触することが可能となり、当該接触によって前記親水性外表面(5)が活性化される、湿潤媒体(4,33)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、すぐに使えるカテーテル・アセンブリの製造方法、その方法に用いられるカテーテル・アセンブリ、すぐに使えるカテーテル・アセンブリ、およびその方法における湿潤媒体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のすぐに使えるカテーテル・アセンブリは、通常、自らの膀胱を自然に空にすることができない患者による間欠的カテーテル法のために使用される。ついで、尿カテーテルを使用して、膀胱は患者自身によって一定の間隔で空にされる。尿カテーテルは、通常、容易に外傷とならずに尿道に挿入することができるように、潤滑剤を使用して摩擦を減少させる表面処理を施して設けられている。現在、潤滑表面を有する2つの主要なカテーテルのカテゴリ、すなわち、ゲル・コーティングされたカテーテルおよび親水性コーティングされたカテーテルが存在する。
【0003】
ゲル・コーティングされたカテーテルは、水性ゲルをカテーテル表面に塗布することによって、挿入するのがより容易になる。一般に、このゲルにパッケージに入ったカテーテルが供給され、システムがパッケージに入ったカテーテルを備えており、カテーテルの表面にゲルを塗布する。このゲルは、包装作業の直前か間かのどちらかでカテーテル表面に付着してもよいし、あるいは、カテーテルが患者によって挿入される時にゲルをカテーテルの表面に塗布してもよい。
【0004】
親水性コーティングされたカテーテルでは、カテーテルが、カテーテルの外表面に付着された親水性コーティングを備える。カテーテルを挿入する前に、親水性コーティングが水などの水和液と接触して膨潤することにより活性化される。その結果、このカテーテル表面は、極めて低い摩擦係数を有する。親水性コーティングされたカテーテルのためのさまざまなシステムが存在する。乾燥状態やまたは乾燥条件では、無菌で個別包装された頓用カテーテルが提供されることが知られている。患者は、パッケージを開封し、水をそのパッケージに注入し、約30秒間待機し、ついで、パッケージからカテーテルを取出し、これですぐに挿入可能である。親水性コーティングされたカテーテルの別のバージョンでは、カテーテルが、そのカテーテルを浸漬させるのに十分に遊離した(loose)液状水をすでに含むパッケージ内に設けられている。そのため、このユーザは、水を添加するか待つ必要なく、単にパッケージを開封してすぐに挿入可能なカテーテルを取出す。他の製品は、分離したパッケージのコンパートメント、または、パッケージに配置されているサッシェに、カテーテルの浸漬に必要な液体量を提供する。これらの製品では、ユーザは、分離したパッケージのコンパートメントまたはサッシェを開口しなければならず、親水性コーティングされた表面を活性化するために、チャンバを含むカテーテルに液体を注入させることができる。
【0005】
間欠的カテーテル法により尿路が感染するリスクを減少させるために、尿カテーテルならびに使用する湿潤媒体を殺菌する必要がある。医療器具の殺菌は、通常、たとえばベータ放射線やガンマ放射線などの放射線など、従来技術において周知である技術を使用して、製造時に行われる。しかし、親水性コーティングを備えた間欠的尿カテーテルなどのカテーテルの殺菌は、従来の技術を使用して不可能ではないにしても、一般には扱いにくいと考えられている。親水性コーティングを備えたカテーテルの放射線殺菌には、上記コーティングの望ましくない化学的改質が生じ、コーティングの品質が減少して摩擦係数の上昇につながる可能性があるという、よく知られている問題がある。
【0006】
したがって、湿潤液に1つ以上の緩衝液、抗酸化剤、または他の添加剤を加えて、放射線殺菌中にカテーテルのコーティングを損ねるのを防ぐことが知られている。さらに、湿潤溶液に親水性ポリマーを添加し、カテーテルの親水性コーティングをこのポリマー溶液で浸潤させて、ついで、放射線を使用して浸潤しているか活性化されている親水性コーティングされたカテーテルを消毒することもまた、知られている。
【0007】
すぐに使える尿カテーテルを作製製するさらなる方法および使用するカテーテル・アセンブリが、国際特許公開第2014/063711A1号に開示されている。この方法では、親水性コーティングを備えたカテーテルが留置されている第1のコンパートメントと、液体膨潤媒体を含む第2のコンパートメントとを含むカテーテル・アセンブリが提供されている。カテーテル・アセンブリを殺菌し、ついで、殺菌後に、カテーテルの外部コーティングを湿潤させて活性化するために、液体膨潤媒体を第1のコンパートメントに加える。その後、第2のコンパートメントをカテーテル・アセンブリから取り出す。
【発明の概要】
【0008】
本特許出願の目的は、すぐに使える尿カテーテルおよびすぐに使えるカテーテル・アセンブリを製造する代替解決策を提供することであり、ここでは、不快感を生じることなくカテーテルを患者の尿道に問題なく挿入できるように、カテーテルが、品質、特にその親水性コーティングを損失せずに、その最大保存寿命の間、保存可能である。さらに、この方法およびカテーテル・アセンブリ自体は、簡潔であり、かつ費用効果的であるべきである。
【0009】
これらの目的は、以下の工程を含む、すぐに使えるカテーテル・アセンブリの製造方法によって達成される:
少なくともその挿入可能な長さに沿った活性化されていない親水性外表面を備えたカテーテルおよび湿潤媒体をカテーテル用パッケージ内に留置することと、
少なくともカテーテルの挿入可能な長さに沿った親水性外表面が、少なくとも最初は実質的に活性化されていない状態のまま、カテーテルおよび湿潤媒体を備えたカテーテル用パッケージを電磁放射線または粒子放射線で処理することと、
放射線処理の間、および/またはその後、湿潤媒体を備えたカテーテルの少なくとも挿入可能な長さに沿った親水性外表面を活性化させること、
電磁放射線および/または粒子放射線を受けると湿潤媒体は粘性が減少する。
【0010】
カテーテルの外表面は、患者の尿道に挿入されるときに潜在的にヒト組織と接触するカテーテルの表面である。カテーテルと尿道との摩擦を低減させるために、この外表面は、少なくともその挿入可能な長さに沿って親水性であり、したがって、湿潤媒体によって活性化されると極めて滑りやすくなる。親水性外表面を得るために、カテーテルを親水性コーティングで覆ってもよく、あるいは、カテーテル軸全体を親水性材料で作成してもよい。
【0011】
「挿入可能長さ」という用語は、カテーテルが患者の尿道に挿入されるとヒト組織と接触するカテーテル軸の長さを意味する。多くの異なる解剖学的構造のため、挿入可能長さの厳密な長さを定義することは不可能である。一般的に、男性患者によって使用されるカテーテルの挿入可能長さは、約30〜40cmの範囲内にあり、女性ユーザでは約10〜20cmの範囲内にある。
【0012】
カテーテル用パッケージは、低透湿性材料から作られていてもよい。このことが意味するのは、このパッケージがある材料からできており、この材料は、カテーテル・アセンブリの保管寿命の間、カテーテル用パッケージ内の少なくとも湿潤媒体をカテーテルの親水性外表面を活性化状態に保つのに十分な量に保つ材料であることである。一般的に、カテーテル・アセンブリの保存寿命は、36ヵ月から5年までの範囲内にある。カテーテル用パッケージに使用可能な低透湿性材料の例は、アルミニウム金属箔、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、またはその混合物、ポリプロピレン、ポリエステル系ポリマー(ポリエチレンテレフタラート)からなる、シロキサン・コーティングの複合材料または複層材料である。しかし、カテーテル・アセンブリの保存寿命の間、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面を活性化状態に保つ他の方法を提供することも可能である。
【0013】
電磁放射線および/または粒子放射線での処理(放射線処理)の前では、湿潤媒体は高粘性を有する。この高粘性のために、湿潤媒体は、カテーテル用パッケージ内において、それが挿入されカテーテルに向かって流れにくい場所に留まっている。したがって、カテーテルの外表面が偶発的に湿潤するリスクや、したがって、放射線処理前に親水性材料を活性化させるリスクは、極めて低い。カテーテルおよび湿潤媒体を備えたカテーテル・アセンブリが放射線処理中にエネルギを受けると、湿潤媒体の粘性が減少する。したがって、湿潤媒体は、低粘性状態になり、カテーテルの親水性外表面と容易に接触することが可能となる。このことは、ほぼ特定の角度で、たとえば約90度または180度の角度で、カテーテル用パッケージを傾斜させるか回転することによって行うことができる。この湿潤媒体は、外部条件を変更すると粘性を減少させる任意の液体であってもよい。この種の液体の例は、粘弾性流体、ビンガム流体、擬塑性流体、ダイラタント流体またはニュートン流体である。さらに、湿潤媒体はゲルであってもよい。最初は固体であり、放射線処理中にその物質の状態が固体状態から液体状態に変化する湿潤媒体を使用することもまた、可能である。
【0014】
この方法の好ましい変形例では、電磁放射線処理および/または粒子放射線処理が、カテーテル用パッケージ内に留置されているカテーテルおよび湿潤媒体を備えたカテーテル・アセンブリを殺菌するための殺菌ステップである。この場合には、さらなる製造ステップが不要である。
【0015】
好ましくは、湿潤媒体の粘性が、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%減少する。このように、放射線処理後は、湿潤媒体の粘性を確実に充分に低くすることができるので、カテーテルの親水性外表面を容易に活性化することが可能である。
【0016】
この方法の変形例では、湿潤媒体が、少なくとも1つのポリマーを含むゲルである。この文脈では、「ゲル」という用語は、ポリマーまたはチキソトロープ剤を含むゲル、ヒドロゲル、高粘性の水溶液を指す。実験が示しているのは、この種のゲルは、放射性殺菌を受けると分解し所望の水性溶液に変質することである。この水性溶液によって、カテーテルの親水性外表面を容易に活性化することができる。
【0017】
好ましくは、ゲルが、放射線処理前は、少なくとも7000cP、好ましくは少なくとも25000cPの粘性を有する。この場合、放射線処理前の湿潤媒体の粘性は十分に高いので、湿潤媒体と少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面とを、容易に分離することができる。放射線処理中、湿潤媒体が充分に分解するので、湿潤媒体は、その流体性質によってこの表面を活性化するために、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面と用意に接触することができるようになる。
【0018】
さらなる実施形態では、ポリマーが、有機炭水化物または合成炭水化物、または液体ポリマーである。この種のゲルは、電磁放射線および/または粒子放射線を受けた後に少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面を活性化するために、放射線処理前の所望の高粘性と要求される液体特性とを併せ持つ。
【0019】
この方法のさらなる変形例では、放射線処理に使用する放射線が、ガンマ放射線、X線、電子線、または紫外線である。これは、カテーテル・アセンブリを無菌状態にし、また、放射線処理中に湿潤媒体が水溶液に変質するように、十分なエネルギが確実に湿潤媒体に供給される。
【0020】
実験が示しているのは、放射線のエネルギ投与量が1〜50kGy、好ましくは15〜45kGy、より好ましくは25〜45kGyの範囲内にある場合に最良の結果を得ることである。このようなエネルギ投与量によって、カテーテルが損傷せず、湿潤媒体が分解して水性液になる。
【0021】
さらに別の変形例では、この方法において使用されるカテーテル用パッケージが、放射線処理の前および間に、少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面と湿潤媒体とを備えたカテーテルを互いから分離するための開口チャネル分岐部を含んでいてもよい。たとえば、カテーテル用パッケージは、パッケージ内にバックテーパを形成し、その中で湿潤媒体が配置される少なくとも1つの溶接シームを備えていてもよい。ある変形例では、少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面と湿潤媒体とを備えたカテーテルを、物理的バリヤによって分離してもよい。開口チャネル分岐部および物理的バリヤによって、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面と湿潤媒体とが、親水性外表面が劣化する可能性のある放射線処理の前と間で接触しないことが確実となる。
【0022】
さらに、カテーテルがスリーブによって包囲されていてもよい。このスリーブにより、患者は、活性化された滑りやすいカテーテルを容易に把持し挿入することができる。
【0023】
この方法のさらなる変形例では、湿潤媒体が部分的にゲルであり、部分的に水溶液であってもよい。ゲルは、放射線処理の前と間にカテーテルの親水性外表面と接触しないように、水溶液をキャビティに保つプラグを形成する。放射線処理中、ゲルの粘性が低下するので、放射線処理後に、少なくともカテーテルの挿入可能な長さに沿った親水性外表面の活性化を容易に行うことができる。この場合、ほんの10%の粘度減少で十分であろう、というのは、プラグは位置をずらして水溶液を通過させるだけでよいからである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、上に述べたような方法で用いられるカテーテル・アセンブリを提供することである。このカテーテル・アセンブリは、カテーテル用パッケージと、カテーテル用パッケージ内に配置されている、少なくともその挿入可能長さに沿った活性化されていない親水性外表面を備えたカテーテルと、カテーテル用パッケージ内に配置されている湿潤媒体と、を含み、湿潤媒体は、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると粘性が低下する。したがって、このカテーテル・アセンブリによって、電磁放射線および/または粒子放射線での処理の前および少なくとも最初の間に、カテーテルの親水性外表面の少なくとも挿入可能長さと湿潤媒体とを容易にかつ安全に分離することができ、さらに、放射線処理の間、またはその後に、湿潤媒体の粘性が低下するとき、カテーテルの親水性外表面を容易に活性化することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、湿潤媒体が、放射線処理前では、少なくとも7000cP、好ましくは少なくとも25000cPの粘性を有する少なくとも部分的にゲルである。高粘性のため、放射線処理の前および少なくとも最初の間は、ゲルはカテーテル用パッケージ内で移動不可能であり、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿って親水性外表面と接触しない。
【0026】
加えて、カテーテル用パッケージが、放射線処理の前と間に、少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面を有するカテーテルと湿潤媒体とを互いに分離させるための開口チャネル分岐部を含んでいてもよい。この開口チャネル分岐部は、カテーテルを挿入するときにカテーテルの親水性外表面に損傷を与える可能性があり問題が生じる可能性のある放射線処理の前および少なくとも最初の間に、湿潤媒体と少なくともカテーテルのその挿入可能長さに沿った親水性外表面とが接触するのを避けるための、さらなる安全装置である。この開口チャネルの構造のため、放射線処理後、湿潤媒体の粘性が低下すると、カテーテルの外表面と湿潤媒体とが容易に接触可能である。
【0027】
少なくとも1つの溶接シームを備えたカテーテル用パッケージを設けることも可能であり、この溶接シームは、湿潤媒体が配置されているパッケージにバックテーパを形成する。このことは、カテーテル用パッケージに開口チャネル分岐部構造を設ける容易で経済的な方法であり、カテーテル・アセンブリの製造工程において容易に組込むことができる。このバックテーパは、放射線処理の前と間に湿潤媒体を保持する。放射線処理後、低粘性の湿潤媒体が、バックテーパからカテーテルまで容易に流出可能であり、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面を活性化する。
【0028】
少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿った親水性外表面と湿潤媒体とを極めて安全に分離することを保証するために、少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面を有するカテーテルと湿潤媒体とを物理的バリヤによって分離してもよい。この種のバリヤは、たとえば、クリップまたは別の締結具であってもよい。
【0029】
さらに別の実施形態では、カテーテル用パッケージが、少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面を有するカテーテルと湿潤媒体との間に配置される多孔性ライニングを含む。その結果、この高粘性の湿潤媒体は、放射線処理の間に多孔性ライニングによって再度保持され、放射線処理の間またはその後にそれが分解されて低粘性の水溶液になると、多孔性ライニングを通過することが可能である。この種の多孔性ライニングは、製造処理中に溶接によって得ることができ、したがって、簡単であり費用効果的である。必要に応じて、多孔性ライニングの裏のカテーテル・パッケージの部分に外圧を加えて、湿潤媒体をカテーテルのコンパートメントに押し込んでもよい。
【0030】
別の実施形態では、少なくともカテーテルの一部分が、スリーブによって包囲されている。このスリーブは、活性化されて、したがって極めて滑りやすいカテーテルを尿道に挿入する導入補助器具として使用可能である。さらに、このスリーブは、湿潤媒体がカテーテルのこれらの部分と接触しないように、使用前にカテーテルの外端部周辺に配置可能である。
【0031】
さらに、湿潤媒体は、一部が水溶液であり、一部が少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面を備えたカテーテルから水溶液を分離するためのプラグを形成するゲルであってもよい。このことは、カテーテル・アセンブリを放射線処理する前および少なくとも最初の間に、確実にカテーテルの親水性外表面と湿潤媒体とを分離した状態に保ち、カテーテル・アセンブリの使用中に問題が生じ得るカテーテルの親水性部分の劣化を避けることを保証する別の方法である。
【0032】
さらに、カテーテル・アセンブリが、好ましくはカテーテルの先端部近くに配置されるカテーテル用挿入補助器具を含んでいてもよい。この挿入補助器具は、患者が容易に把握可能な円筒状の部品であってもよい。この場合、湿潤媒体は挿入補助器具内に配置されているのが好ましい。放射線処理後、カテーテル・アセンブリを単純に180度回転し、その結果、湿潤媒体が導入補助器具から流出しカテーテル・シャフトに沿って流れて、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿って親水性外表面を活性化させる。
【0033】
本発明のさらなる目的は、活性化をする必要なく患者によって直接に使用可能な、すぐに使えるカテーテル・アセンブリを提供することであり、ここでは、カテーテルの低摩擦特性が保管中に低下しないので、カテーテルを約36ヵ月から5年に及ぶその全保管寿命中に、合併症なく尿道に導入することが保証される。このことは、カテーテル用パッケージと、カテーテル用パッケージに配置されている、少なくともその挿入可能長さに沿った親水性外表面を備えたカテーテルと、湿潤媒体であって、この湿潤媒体もまたカテーテル用パッケージ内に配置されており、親水性外表面が活性化されるようにカテーテルの親水性外表面と接触する湿潤媒体と、を含むすぐに使えるカテーテル・アセンブリによって達成され、湿潤媒体は、少なくとも1つのポリマーを含むゲルであり、1000cP以下、好ましくは100cp以下の粘性を有する。
【0034】
したがって、すぐに使えるカテーテル・アセンブリが、患者によって直接に使用可能な予め活性化されているカテーテルを含む。患者は、あまり器用でない人がたいてい実行しにくい任意の活性化ステップを行う必要はない。さらに、製造工程中に活性化されるという事実のため、活性化が適切に行われ、カテーテルはその全挿入可能長さに沿って充分に滑りやすい表面を有することが保証可能である。したがって、カテーテルの使用中に高摩擦による問題は生じない。湿潤媒体が分解して水溶液になる放射線処理を湿潤媒体に施すことによって、湿潤媒体の所望の低粘性を得る。
【0035】
本発明のさらなる目的は、親水性コーティングされたカテーテルを活性化する容易で安全な方法を提供することである。この目的は、少なくともカテーテルの挿入可能長さに沿って親水性外表面を活性化させるための湿潤媒体を使用し、それによって、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると湿潤媒体は粘性が低下することによって達成される。
【0036】
以下において、本発明を図面を用いてより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前における、カテーテル・アセンブリの第1の実施形態を示す図であり、図1bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図1aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図1cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図1aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図2図2aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第2の実施形態を示す図であり、図2bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図2aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図2cおよび図2dは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図2aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図3図3aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第3の実施形態を示す図であり、図2bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図2aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図3cおよび図3dは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図3aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図4図4aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第4の実施形態を示す図であり、図4bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図4aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図4cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図4aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図5図5aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第5の実施形態を示す図であり、図5bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図5aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図5cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図5aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図6図6aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第6の実施形態を示す図であり、図6bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図6aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図6cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図6aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図7図7aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第7の実施形態を示す図であり、図7bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図7aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図7cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図7aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図8図8aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第8の実施形態を示す図であり、図8bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図8aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図8cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図8aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図9図9aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第9の実施形態を示す図であり、図9bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化する前における、図9aのカテーテル・アセンブリを示す図であり、図9cは、カテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図9aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
図10図10aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前におけるカテーテル・アセンブリの第10の実施形態を示す図であり、図10bは、放射線処理後およびカテーテルの親水性外表面を活性化させている間の、図10aのカテーテル・アセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理(放射線処理)前における、本発明によるカテーテル・アセンブリ1を示す。このカテーテル・アセンブリ1は、カテーテル用パッケージ2と、カテーテル3と、湿潤媒体4とを含む。カテーテル3および湿潤媒体4は、カテーテル用パッケージ2内に配置されている。このカテーテル・パッケージ2は、好ましくは、たとえば両端でシール可能な無端のフィルム・チューブでできている。フィルム・チューブは、その長手方向に沿ってシームを含まない。カテーテル用パッケージは、好ましくは低透湿性材料でできている。使用可能な低透湿性材料の例は、アルミニウム金属箔、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、またはその混合物、ポリプロピレン、ポリエステル系ポリマー(ポリエチレンテレフタラート)からなる複合材料または複層材料である。
【0039】
湿潤媒体4は、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると粘性が低下する。たとえば、湿潤媒体はゲルであってもよい。本特許出願のコンテクストでは、「ゲル」という用語は、ポリマーまたはチキソトロープ剤を含むゲル、ヒドロゲル、および任意の高粘性の水溶液を指す。図1aは、放射線処理前におけるカテーテル・アセンブリ1を示す。したがって、湿潤媒体4は、ほとんど粘性流を呈していないか、全く粘性流を呈していない相対的な固体形状のままである。
【0040】
カテーテル3は、少なくともその挿入可能長さに沿って活性化されていない親水性外表面5を含む。カテーテル3および湿潤媒体4は、親水性外表面5が実質的に活性化されていない状態を維持するように、カテーテル用パッケージ2内に配置されている。この場合、湿潤媒体4は、少なくともカテーテル3の親水性外表面5と接触するようにならない。湿潤媒体が比較的固形であり、ほとんど粘性流を呈していないので、湿潤媒体は入れられた位置に留まり、カテーテル3の親水性外表面5の方向に流れない。
【0041】
カテーテル・アセンブリ1は、スリーブ6をさらに備える。スリーブ6は、カテーテル3を包囲し、カテーテル先端部7の反対側にあるカテーテル3の外端に設置されている。スリーブ6は、カテーテル3から離間して対向するその端部で、湿潤媒体4がスリーブ6に進入することができないように折畳まれている。
【0042】
図1cは、活性化状態にあるカテーテル・アセンブリ1を示す。活性化状態では、湿潤媒体4が電磁放射線および/または粒子放射線によって解離され、ここで、カテーテル3に沿って流れる低粘性溶液を形成し、それによって、少なくともカテーテル3の挿入可能長さに沿って親水性外表面5と接触するようになり、したがって、親水性外表面5を活性化させる。図1aから図1cで理解できるように、カテーテル用パッケージ2は、カテーテルの両面に2つの溶接シーム8を含む。これらの溶接シーム8がカテーテル3の先端部に向かってテーパを付けるので、湿潤媒体4をその水性状態でカテーテル3の長手方向に沿って案内する。
【0043】
図2aは、カテーテル・アセンブリ10の第2の実施形態を示す。前述の実施形態における同じ要素は、同じ参照番号を付して記載する。この実施形態および以下の実施形態において、他の実施形態との違いのみを記載する。カテーテル・アセンブリ10は、カテーテル用パッケージ2と、カテーテル用パッケージ2内に配置されているカテーテル3と、カテーテル用パッケージ2に同じく配置されている湿潤媒体4とを含む。カテーテル用パッケージ2は、カテーテル用パッケージ2のバックテーパ12を形成する溶接シーム11をさらに備える。このバックテーパ12内に、湿潤媒体4が配置されている。湿潤媒体4がなお高粘性であり、ほとんど粘性流がない比較的固形の状態であるので、湿潤媒体4はこのバックテーパ12に残る。
【0044】
図2dは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させている間の、図2aのカテーテル・アセンブリ10を示す図である。ここでは、湿潤媒体4は低粘性状態にあり、カテーテル用パッケージ2中を自由に流れることのできる水溶液である。したがって、湿潤媒体4は、溶接シーム11によって形成されるバックテーパ12を離れ、カテーテル3のまわりを流れ、少なくともカテーテル3の挿入可能長さに沿って親水性外表面5と接触し、カテーテル3の親水性外表面5を活性化させる。カテーテル用パッケージ2は、活性化カテーテル3が無菌の条件で保存することができるように、まだ完全に閉止されている。
【0045】
図3aは、カテーテル・アセンブリ14の第3の実施形態を示す。2つの前述の実施形態にて説明したように、同じ参照番号を同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ14は、カテーテル用パッケージ2と、カテーテル用パッケージ2内に配置されているカテーテル3と、カテーテル用パッケージ2に同じく配置されている湿潤媒体4とを含む。カテーテル用パッケージ2は、2つの溶接シーム15および16を含む。第1の溶接シーム15は、カテーテル用パッケージ2の長手方向に対して横方向に延び、カテーテル用パッケージ2の長手方向とほぼ45度の角度を構成する。この溶接シームは、カテーテル用パッケージの一面で始まり、カテーテル用パッケージ2の第2の側面の前で終わる。したがって、バックテーパ17がこの第1の溶接シーム15によって形成される。このバックテーパ17に、湿潤媒体4が入れられる。湿潤媒体4がその比較的固形の状態にあるので、湿潤媒体4はバックテーパ17内に残り、カテーテル3の方向に流れない。第2の溶接シーム16は、カテーテル用パッケージ2の反対側の近くに配置され、カテーテル3の長手方向に沿って延びる。この第2の溶接シーム16は、カテーテル3がカテーテル用パッケージ2の比較的狭い通路に配置されるように、カテーテル用パッケージ2の首部を形成する。
【0046】
図3dは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させている間の、図3aのカテーテル・アセンブリ14を示す図である。ここでは、湿潤媒体4は、その低粘性状態にあり、溶接シーム15によって形成されたバックテーパ17から出てカテーテル3に沿って流れる水溶液である。この第2の溶接シーム16は、カテーテル3に沿って水性湿潤媒体4を案内するのを助ける。したがって、湿潤媒体4は、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになり、親水性外表面5を活性化させる。
【0047】
図4aは、カテーテル・アセンブリ19の第4の実施態様を示す。3つの前述の実施形態にて説明したように、同じ参照番号を同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ19は、カテーテル用パッケージ2と、カテーテル用パッケージ2内に配置されているカテーテル3と、カテーテル用パッケージ2に同じく配置されている湿潤媒体4とを含む。湿潤媒体4は、その高粘性状態にあり、カテーテル用パッケージ2の底部に配置されている。
【0048】
カテーテル3は、カテーテル3の親水性外表面5が湿潤媒体4と接触しないように、カテーテル用パッケージ2の底部より上に配置されている。カテーテル用パッケージ2は、湿潤媒体4のためのコンパートメント20を形成する多孔性ライニング21を含む。この多孔性ライニング21は、カテーテル用パッケージ2の分離点を溶接することによって作られてもよい。
【0049】
図4cは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させている間の、図4aのカテーテル・アセンブリ19を示す図である。湿潤媒体4は分解され、ここではその比較的流動状態にある。湿潤媒体4が下向きの重力に追従するように、カテーテル用パッケージ2が約180度回転し、したがって、カテーテル3の長手方向に沿って流れ、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになるので、カテーテル3の親水性外表面5を活性化させる。
【0050】
カテーテル・アセンブリ23の第5の実施形態が、図5aに示されている。カテーテル・アセンブリ23は、カテーテル3および湿潤媒体4を含み、この両方は、湿潤媒体4がカテーテル3の親水性外表面5と接触しないように、カテーテル用パッケージ2内に配置されている。カテーテル・アセンブリ23は、挿入補助器具24をさらに備える。挿入補助器具は、湿潤媒体4が中に配置されるコンパートメントを形成する円筒状の本体25を有する。挿入補助器具24は、カテーテルを使用するときに尿道と接触する側面にストッパをさらに備える。挿入補助器具は、あまり器用でない患者によって容易に把握されるように形成される。この挿入補助器具24は、薄いスリーブ26に接続されている。スリーブ26は、カテーテル3の長さに沿って延びており、カテーテル3の外端で漏斗27と接続されている。
【0051】
図5cは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させている間の、カテーテル・アセンブリ23を示す図である。ここでは、湿潤媒体4の粘性は低い。湿潤媒体4がカテーテル3の長手方向に沿って下方へ流れるように、カテーテル用パッケージ2全体が回転し、したがって、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになり、カテーテル3の親水性外表面5を活性化させる。スリーブ26は、カテーテル3に沿って湿潤媒体を案内する。このようにして、カテーテル3の親水性外表面5の全領域が湿潤媒体4と接触するようになり、かつ、親水性外表面5を完全に活性化することが保証される。
【0052】
図6aは、カテーテル・アセンブリ38の第6の実施形態を示す。前述の実施形態にて説明したように、同じ参照番号を同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ38は、カテーテル用パッケージ2を含み、活性化されていない親水性外表面5を有するカテーテル3および湿潤媒体4が中に配置されている。カテーテル3の一端は、患者の尿道に挿入のためのカテーテル先端部7を備え、カテーテル3の他端は、漏斗27を備える。湿潤媒体4は、コンパートメント39内に配置されている。コンパートメント39は、カテーテル先端部7の前に配置され、キャップ40によって閉止可能である。キャップ40は、コンパートメント39に蝶番式に接続されている。漏斗27は、カテーテル3の全長さに沿って延びるスリーブ26に接続されている。カテーテル先端部7の近くで、スリーブ36がコンパートメント39に接続されている。コンパートメント39がキャップ40を介して閉止されると、カテーテル3は、スリーブ26およびキャップ40を備えたコンパートメント39によって完全に包囲される。
【0053】
図6cは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させている間の、カテーテル・アセンブリ38を示す図である。ここでは、湿潤媒体4はその低粘性状態にあり、カテーテル3に沿って容易に流れることができる。湿潤媒体4カテーテル3の親水性外表面5と接触させるために、その低粘性状態にある湿潤媒体4がコンパートメント39から流出し、カテーテル先端部7を通過してカテーテル3の表面に沿って流れるように、カテーテル用パッケージ2を約180度回転させる。スリーブ26により、湿潤媒体4はカテーテル3に沿って近接して案内され、パッケージ2全体を通って流れない。コンパートメント39のキャップ40によって、湿潤媒体4がコンパートメント39から間違った方向に出ないことが保証される。コンパートメント39は、カテーテル3が使用されるときに挿入補助器具の役割をしてもよい。
【0054】
カテーテル・アセンブリ42のさらなる実施形態が、図7aに示されている。前述の実施形態にて説明したように、同じ参照番号を同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ42はまた、活性化されていない親水性外表面5を備えたカテーテル3と、湿潤媒体4とを有するカテーテル・パッケージ2を含む。カテーテル3は、一端に漏斗43を含む。漏斗43は、キャップ44によって閉止可能であり、キャップ44は漏斗43に蝶番式に接続されている。カテーテル3の他端に、すなわち、カテーテル先端部7の近くに、挿入補助器具24が配置されている。カテーテル3全体は、薄いスリーブ26によって包囲されている。スリーブ26の一端は、漏斗43に接続されており、スリーブ26の他端は、挿入補助器具24に接続されている。湿潤媒体4は、挿入補助器具24内に配置されている。
【0055】
図7cは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させている間の、カテーテル・アセンブリ42を示す図である。カテーテル3の親水性外表面5を活性化させるために、親水性外表面5が湿潤媒体4と接触する。放射線処理中、湿潤媒体はその粘性が減少し、ここではその低粘性状態にある。カテーテル用パッケージ2は約180度回転するので、その中に配置されている湿潤媒体4を備えた挿入補助器具24がここではカテーテル3より上にある。湿潤媒体4が重力に追従し、カテーテル3の表面上を下方に流れ、したがって、親水性外表面5と接触するようになる。スリーブ26は、カテーテル3に沿って近接して湿潤媒体4を案内する。湿潤媒体4は、カテーテル3の小穴45を通ってカテーテル3の内部まで流れることが可能である。湿潤媒体4が漏斗43を越えて漏洩するのを防ぐために、キャップ44を閉止し、湿潤媒体4がカテーテル3に留まる。
【0056】
図8aから図8cは、カテーテル・アセンブリ46の第8の実施形態を示す。すべての前述の実施形態と同様に、前述の実施形態にて説明した同じ参照番号を同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ46はまた、少なくともその挿入可能長さに沿った活性化されていない親水性外表面5を有するカテーテル3と、湿潤媒体4とを含み、これらはカテーテル用パッケージ2内に配置されている。図8aに示すように、湿潤媒体4は、カテーテル3の親水性部分と接触しないように、カテーテル用パッケージ2内に入れられている。カテーテル3は、カテーテルの一端に配置されている漏斗27と、カテーテル3の他端でユーザの尿道にカテーテルを導入するためのカテーテル先端部7とを含む。カテーテル先端部7の近くに、挿入補助器具24が配置されている。薄いスリーブ26が、カテーテル3の周りに設置され、一端で漏斗27と接続され、他端で挿入補助器具24と接続されている。漏斗27がカテーテル用パッケージ2の底部近くに配置されるように、カテーテル3がカテーテル用パッケージ2内に配置されている。湿潤媒体4は、スリーブ26の内部において、漏斗27の近くのカテーテル3のコーティングされていない区画の近くに配置されている。
【0057】
図8cは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させる前の、カテーテル・アセンブリ46を示す図である。放射線処理中、湿潤媒体4は粘性が低下し、ここでは、低粘性状態にある。カテーテル用パッケージ2は、約180度回転するので、湿潤媒体4が重力に追従してカテーテル3に沿って下方に流れる。湿潤媒体4が親水性外表面5と接触して親水性外表面5を活性化させるように、スリーブ26はカテーテル3の軸に近接して湿潤媒体4を案内する。湿潤媒体4が最初は漏斗27の近くに入れられているので、カテーテル3の親水性外表面5を活性化させずに、湿潤媒体4がカテーテルの小穴45に直接流入せず、漏斗27から流出しない。
【0058】
図9aは、カテーテル・アセンブリ29の第9の実施形態を示す。前述の実施形態にて説明した同じ参照番号を、同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ29は、カテーテル用パッケージ2と、親水性外表面5を有するカテーテル3と、湿潤媒体4とを含む。湿潤媒体4は、カテーテル用パッケージの一端に設置され、カテーテル3は、カテーテル用パッケージ2の反対端に設置されている。物理的バリヤ30が、湿潤媒体4とカテーテル3との間でカテーテル用パッケージ2に固定されている。物理的バリヤ30は、たとえばクリップまたは締結具であってもよい。図9aで示すようなカテーテル・アセンブリ29の状態では、湿潤媒体4は、カテーテルの親水性外表面5と接触しない。図9bおよび図9cは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させる間の、図9のカテーテル・アセンブリ20を示す図である。物理的バリヤ30は、放射線処理中に解離され、ここではむしろ低粘性の液体状態にある湿潤媒体4が、カテーテル用パッケージ2の内部を通って自由に流れることができるように、カテーテル用パッケージ2から除去されており、したがって、カテーテル3の親水性外表面5と接触する。
【0059】
上に述べた実施形態1から9では、湿潤媒体4は、たとえば電磁放射線および/または粒子放射線を介してエネルギがシステムにもたらされるときに、粘性が不可逆に低下するゲルであってもよい。このゲルは、ついで、カテーテル用パッケージ2を通って流れる水溶液に変質し、したがって、カテーテル3の親水性外表面5を活性化させる。したがって、湿潤媒体4は、少なくともその挿入可能長さに沿ってカテーテル3の親水性外表面5を直接に活性化させる。外部効果を受けると粘性が低下する限り、粘弾性流体、ビンガム流体、擬塑性流体、ダイラタント流体、またはニュートン流体を湿潤媒体として使用することもまた、可能である。湿潤媒体は、放射線処理中、その物質の状態を固体状態から液体状態まで変化させることもまた、可能である。このコンテクストでは、固体状態は、材料が限定的な形状と体積とを有することを意味する。液体状態は、材料は、その容器の形状に一致する限定的な/一定の体積および形状を有することを意味する。
【0060】
図10aおよび図10bに示す実施形態では、湿潤媒体は、部分的にゲル33からなり、部分的に水溶液32からなる。カテーテル・アセンブリ31の第10の実施形態では、前述の実施形態にて説明した同じ参照番号を、同じ要素に使用する。カテーテル・アセンブリ31が、カテーテル用パッケージ2と、活性化されていない親水性外表面5を備えたカテーテル3と、湿潤媒体32、33とを含む。カテーテル用パッケージ2は、カテーテル用パッケージにバックテーパ35を形成する溶接シーム34を備える。溶接シーム34は、小型チャネル36を介してカテーテル用パッケージ2の残りの部分に連結されている。
【0061】
湿潤媒体は、部分的に水溶液32から、部分的にゲル系からなる。ゲル33は、チャネル36内に配置され、したがって、バックテーパ35に水溶液32を保持するプラグを形成する。したがって水溶液32がバックテーパ35から流出することができず、カテーテル3の親水性外表面5から分離される。
【0062】
図10bは、放射線処理後およびカテーテル3の親水性外表面5を活性化させる間の、図10aのカテーテル・アセンブリ31を示す。ゲル32は、水溶液32を通過させるために少なくとも部分的に解離している。水溶液32が下方へ流れ、ここでカテーテル3の親水性外表面5と接触して、親水性外表面5を活性化させる。
【0063】
以下、上に述べたすぐに使えるカテーテル・アセンブリを製造する方法を詳細に説明する。
【0064】
図1aは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理前のカテーテル・アセンブリ1を示す。湿潤媒体4は、ゲル状系であり、高粘性の比較的固体の状態にあるので、ほとんど粘性流を呈しない。しかし、すでに上で述べたように、湿潤媒体は、外部条件が変わるとその粘性を減少させる任意の液体であってもよい。この種の液体の例は、粘弾性流体、ビンガム流体、擬塑性流体、ダイラタント流体、またはニュートン流体である。湿潤媒体は、最初は、放射線処理中にその物質の状態を固体状態から液体状態に変化させる固体であってもよい。「固体状態」および「液体状態」の定義は、上で認められる。湿潤媒体4は、たとえばカルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl Cellulose)などの、溶質ポリマーを含むゲルであってもよい。他のゲル、ヒドロゲル、またはポリマーまたはチキソトロープ剤を含む高粘性の水溶液もまた、可能である。湿潤媒体4は、カテーテル用パッケージ2の一端(底部)に配置され、カテーテル3の活性化されていない親水性外表面5は、湿潤媒体4と接触しないようにカテーテル用パッケージのその端部に配置されている。この位置で、重力によって、カテーテル3と湿潤媒体4とが容易に分離する。
【0065】
図1bは、アセンブリ全体を電磁放射線および/または粒子放射線で処理する間の、カテーテル・アセンブリ1を示す。放射線処理中、カテーテル用パッケージ2は、図1aに示す同じ位置に残っている。好ましい放射線の形態は、ガンマ放射線である。しかし、他の放射線の形態、すなわちベータ放射線、X線、または紫外線放射線が可能である。放射線のレベルは、自然に存在する放射線より上にあり、十分に高いので、湿潤媒体4の粘性が低下して親水性コーティングの活性化することができる。好ましくは、電磁放射線および/または粒子放射線での処理は、カテーテル・アセンブリ全体の殺菌ステップである。湿潤媒体4は、たとえば硬質ゲル、または水溶液の溶質ポリマーを含むヒドロゲルであってもよい。
【0066】
湿潤媒体4は、電磁放射線および/または粒子放射線での処理中に粘性が減少する。図1bでは、湿潤媒体4がその液体状態で示されている。湿潤媒体4は、パッケージ2の下端部まで飛び、そこで少なくともその挿入可能長さに沿ってカテーテル3の親水性外表面5から分離したままである。
【0067】
図1cは、カテーテル3の活性化を示す。カテーテル用パッケージ2全体を約180度回転するので、最初に湿潤媒体4を含んだカテーテル用パッケージ2の底部が頂部にある。重力に追従して、湿潤媒体4が下方へ流れ、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになる。このように、カテーテル3の親水性外表面5が活性化される。溶接シーム8がカテーテル先端部7に向かってテーパを付けられており、湿潤媒体4がカテーテル3に沿って案内されるので、湿潤媒体4が親水性外表面5と密接に接触するようになり、良好な活性化が確実になる。
【0068】
図2aから図2dに示すカテーテル・アセンブリ10のための第2の実施形態による、すぐに使えるカテーテル・アセンブリを製造する方法は、基本的に上に述べた通りに機能する。図2aでは、放射線処理前のカテーテル・アセンブリ10が示されている。湿潤媒体4は、まだその比較的高粘性状態にあり、バックテーパ12内にカテーテル用パッケージ2の底部に配置されている。その活性化されていない親水性外表面5を備えたカテーテル3は、湿潤媒体4よりも上に配置され、溶接シーム11によって湿潤媒体4から分離されている。図2bは、電磁放射線および/または粒子放射線でのカテーテル・アセンブリ10の処理を示す。この工程は、好ましくは上に述べた通りのガンマ殺菌による放射性殺菌であり、かつ、湿潤媒体4は、電磁放射線および/または粒子放射線を受けると不可逆的に粘性が低下するゲルであるのが好ましい。したがって、湿潤媒体4は、放射線処理中に解離してパッケージ2の底部に沿って流れ、溶接シーム11によって案内される。
【0069】
図2cおよび図2dは、カテーテル3の親水性外表面5の活性化を示す。第1の工程では、図2cに示すように、カテーテル用パッケージ2が約90度の角度で回転する。湿潤媒体4がバックテーパ12の外に流出し、およびカテーテル用パッケージの頂部を通って溶接シーム11に追従する。第2の工程では、図2dに示すように、湿潤媒体4がここではカテーテル3の親水性外表面5と接触し、したがって、親水性外表面5を活性化させるように、カテーテル用パッケージ2が約180度の角度で回転する。
【0070】
図3aから図3dは、第3の実施形態によるカテーテル・アセンブリ14の放射線処理および活性化を示す。図3aは、放射線処理前におけるカテーテル・アセンブリ14を示す。湿潤媒体4が、カテーテル用パッケージ2の底部のバックテーパ15内に配置されており、粘性が高い。図3bでは、放射線処理が示されている。カテーテル・アセンブリ14全体は、電磁放射線、および/または粒子放射線、好ましくはガンマ放射線を受ける。好ましくは、全アセンブリがこの工程で殺菌される。放射線処理中、第1の実施形態にて説明したように、湿潤媒体4は粘性が減少し、水溶液になる。カテーテル用パッケージ2が図3aに示す位置に残るので、湿潤媒体4は、カテーテル用パッケージ2の底部に残る。
【0071】
図3cは、カテーテル3の親水性外表面5を活性化させる第1の工程を示す。カテーテル用パッケージ2が、約90度の角で回転し、湿潤媒体4は、溶接シーム15に沿ってバックテーパ17からカテーテル3の方向に流出する。ついで、カテーテル用パッケージ2が再び約90度の角度で回転し(図3dを参照)、湿潤媒体4は、溶接シーム16に沿って下方へ流れてカテーテル3と接触するようになり、したがってカテーテル3の親水性外表面5を活性化させる。
【0072】
図4aから図4cは、カテーテル・アセンブリ19の第4実施態様の放射線処理および活性化の方法を示す。図4aでは、放射線処理前のカテーテル・アセンブリ19が示されている。湿潤媒体4は、まだその高粘性状態にあり、重力を介して、親水性外表面5を備えたカテーテル3から分離されて、カテーテル用パッケージ2の底部に残っている。図4bでは、全カテーテル・アセンブリが、電磁放射線および/または粒子放射線で照射され、たとえば、放射性殺菌により殺菌される。放射線処理により、湿潤媒体4は粘性が低下し、水溶液になる。カテーテル用パッケージ2は、図4aに示す位置に残る。図4cでは、カテーテル用パッケージ2が約180度の角度で回転し、湿潤媒体4が多孔性ライニング21を通って下方に流れ、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになり、したがって、親水性外表面5を活性化させる。
【0073】
同じ方法が、本発明の第5の実施形態の図5aから図5cに示されている。本実施形態では、湿潤媒体4が挿入補助器具24内に配置されている。図5aでは、放射線処理前のカテーテル・アセンブリ23を示すが、湿潤媒体4とその活性化されていない親水性外表面5を備えたカテーテル3とが、互いに分離されている。図5bでは、このアセンブリが殺菌され湿潤媒体4が分解されて水溶液になるように、全カテーテル・アセンブリ23がガンマ放射線を受ける。その後、図5cに示すように、カテーテル用パッケージ2が約180度の角度で回転する。湿潤媒体4は、ここでは低粘性であるが、カテーテル3に沿って下方に流れ、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになり、親水性外表面5を活性化させる。
【0074】
図6aから図6cは、本発明の第6の実施形態によるカテーテル・アセンブリ38を製造する方法を示す。図6aは、放射線処理前のカテーテル・アセンブリ38を示す。湿潤媒体4は、まだその高粘性状態にあり、親水性外表面5を備えたカテーテル3の下に配置されているコンパートメント39内に留置されている。
【0075】
図6bは、放射線処理中の全カテーテル・アセンブリ38を示す。全カテーテル・アセンブリ38は、電磁放射線または粒子放射線を受け、それによって殺菌される。放射線により、湿潤媒体4はその粘性が低下し、その低粘性状態になる。カテーテル・アセンブリ38は、まだその第1の位置にあり、ここでは、湿潤媒体4を備えたコンパートメント39がカテーテル3の下に配置されている。
【0076】
図6cは、カテーテル3の親水性外表面5の活性化を示す。湿潤媒体4を備えたコンパートメント39がここではカテーテル3より上に配置されるように、全カテーテル・アセンブリ38が約180度回転する。重力に追従して、その低粘性状態にある湿潤媒体4が、カテーテル3に沿って下方へ流れる。スリーブ26が、親水性外表面5を備えたカテーテル3に沿って、湿潤媒体4を密接に案内する。それによって、カテーテル3の親水性外表面5が湿潤媒体4と接触するようになり、活性化される。コンパートメント39がヒンジキャップ40で閉止されていると、カテーテル3はスリーブ26内で完全に密封される。
【0077】
図7a、図7b、および図7cは、本発明の第7の実施形態のためのカテーテル3の親水性外表面5の活性化を示す。図7aは、放射線処理前のカテーテル・アセンブリ42を示す。カテーテル3が、カテーテル先端部7がカテーテル用パッケージ2の底部に面するように、カテーテル用パッケージ2内に配置されている。湿潤媒体4が挿入補助器具24内に配置されており、したがって、親水性外表面5を備えたカテーテル3の下に配置されている。漏斗43が湿潤媒体4の漏洩を防ぐためにキャップ44によって閉止可能である。
【0078】
図7bは、放射線処理の間と後であるがカテーテル3の親水性外表面5を活性化させる間の、カテーテル・アセンブリ42を示す。放射線処理中、放射線によってもたらされるエネルギにより、湿潤媒体4はその低粘性状態になる。湿潤媒体4がカテーテル用パッケージ2の底部近くに配置されているので、湿潤媒体4はなおその低粘性状態のままそこに残る。したがって、湿潤媒体4はカテーテル3の親水性外表面5と接触するようにはならない。カテーテル3の親水性外表面5を活性化させるために、図7cに示すように、カテーテル・アセンブリ42が約180度回転する。その低粘性状態にある湿潤媒体4は、スリーブ26によってカテーテル3に沿って下方に案内され、親水性外表面5と接触するようになり、親水性外表面5を活性化させる。漏斗43がキャップ44によって閉止されるので、湿潤媒体4は流出することができず、漏洩が防止される。
【0079】
図8a、図8b、および図8cは、本発明の第8の実施形態のための活性化の方法を示す。図8aは、放射線処理前のカテーテル用アセンブリ46を示す。スリーブ26および挿入補助器具24を備えたカテーテル3が、漏斗27が底部を面するようにカテーテル用パッケージ2内に配置されている。湿潤媒体4が、スリーブ26内部の漏斗27の近くに設置されている。湿潤媒体4が配置されている領域内でのカテーテル3の表面は、コーティングされる必要はない。電磁放射線のおよび/または粒子放射線での処理中、カテーテル用パッケージ2は、図8aに示す位置に残る。このことは、図8bに示されている。電磁放射線および/または粒子放射線の処理中、システムに受けるエネルギにより、湿潤媒体4はその粘性が減少し、その低粘性状態になる。重力の下、湿潤媒体4は漏斗27の近くに留まる。カテーテル先端部7がカテーテル用パッケージ2の頂部に配置されているので、湿潤媒体4はカテーテル3の小穴45を通って流れることができない。カテーテル3の親水性外表面5を活性化させるために、漏斗27がここでカテーテル3より上にあり、かつカテーテル先端部7が底部に面するように、全カテーテル・アセンブリ46を180度回転させる。重力に追従して、湿潤媒体4はカテーテル3に沿って下方に流れ、したがって、カテーテル3の親水性外表面5と接触して活性化させる。したがって、この配置のために、放射線処理後に、その低粘性状態にある湿潤媒体は、カテーテルの小穴45に直接に流入し、親水性外表面5を活性化させることなく漏斗27から流出することが防止される。
【0080】
図9aから図9cでは、本発明の第9の実施形態のための殺菌方法が示されている。図9aは、放射線処理前のカテーテル・アセンブリ29を示す。湿潤媒体4がまだその高粘性状態にあり、物理的バリヤ30によってカテーテル3から分離されている。図9bでは、全カテーテル・アセンブリが放射線を受けて、それによって殺菌され、湿潤媒体4が水溶液になる。ついで、物理的バリヤ30を除去し、カテーテル・パッケージ2を約180度の角度で回転させる(図6cを参照)。湿潤媒体4がカテーテル3に沿って流れ、カテーテル3の親水性外表面5と接触するようになり活性化させる。
【0081】
上に述べた通り、すべての実施形態において、電磁放射線および/または粒子放射線での放射線処理の前の湿潤媒体4、すなわちゲルの粘性は、少なくとも7000cPであり、好ましくは少なくとも25000cPである。放射線処理中、湿潤媒体4が電磁放射線および/または粒子放射線を受けると、湿潤媒体4の粘性は、少なくとも80%だけ、好ましくは少なくとも90%だけ減少する。
【0082】
湿潤媒体4のための好ましい実施形態では、電磁放射線および/または粒子放射線での処理後の湿潤媒体の粘性が、1000cP未満であり、好ましくは100cP未満である。湿潤媒体(ゲル)の粘性を、ブルックフィールド粘度計を使用して測定した。サンプルをスピンドルの下に設置し、スピンドルをサンプル内に設定点まで下降させた。
【0083】
このスピンドルは特定の速度(30rpm)で回転し、ゲルの抵抗は粘性に相関する。使用したスピンドルは、LV4、#64であった。この実験時の温度は、25℃であった。
【0084】
図10aおよび図10bでは、湿潤媒体(ゲル)が活性化の補助として使用され、放射線処理前の水溶液32用のプラグ33を形成する(図10aを参照)。放射線処理中、ゲル33は充分に粘性が減少し、少なくとも水溶液32がカテーテル3の親水性外表面5と接触するように水溶液32とともにカテーテル3の方向に下方に流れ、したがってカテーテル3を活性化させる。放射線処理前では、ゲル33の粘度は少なくとも7000cPである。本実施形態では、電磁放射線および/または粒子放射線での放射線処理による粘度減少はほぼ10%で十分である、というのは、ゲル33によって形成されたプラグは、水溶液32を通過させるために変質するだけでよいからである。前述の実施形態のために記載されているように、ゲル33の粘性は決定される。
【0085】
すぐに使えるカテーテル・アセンブリを製造する方法は、最初にゲルの形状である湿潤媒体に関してのみ記載されている。前に記載されているように、湿潤媒体は、たとえば粘弾性流体、ビンガム流体、擬塑性流体、ダイラタント流体、またはニュートン流体など、外部条件が変わるとその粘性が減少する任意の液体であってもよい。最初は固体であり、放射線処理中に物質の状態が固体状態から液体状態に変化する湿潤媒体を使用することもまた、可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 カテーテル・アセンブリ
2 カテーテル用パッケージ
3 カテーテル
4 湿潤媒体
5 親水性外表面
6 スリーブ
7 カテーテル先端部
8 溶接シーム
10 カテーテル・アセンブリ
11 溶接シーム
12 バックテーパ
14 カテーテル・アセンブリ
15 溶接シーム
16 溶接シーム
17 バックテーパ
19 カテーテル・アセンブリ
20 コンパートメント
21 多孔性ライニング
23 カテーテル・アセンブリ
24 挿入補助器具
25 円筒形本体
26 スリーブ
27 漏斗
29 カテーテル・アセンブリ
30 物理的バリヤ
31 カテーテル・アセンブリ
32 湿潤媒体の水溶液
33 湿潤媒体のゲル
34 溶接シーム
35 バックテーパ
36 チャネル
38 カテーテル・アセンブリ
39 コンパートメント
40 キャップ
42 カテーテル・アセンブリ
43 漏斗
44 キャップ
45 カテーテル小穴
46 カテーテル・アセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10