特許第6522712号(P6522712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6522712
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】プレパラート製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20190520BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20190520BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   G01N1/28 U
   G01N1/30
   G02B21/34
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-213568(P2017-213568)
(22)【出願日】2017年11月6日
【審査請求日】2018年3月27日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】515313745
【氏名又は名称】一般社団法人白亜会
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】島田 修
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5156019(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0039435(US,A1)
【文献】 特開2017−187409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28 − 1/31
G02B 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の柔軟性を有し透明な耐薬品性樹脂フィルムの間に、透明な光硬化樹脂を挟んだ積層フィルムを準備する準備工程と、
前記準備工程において準備した前記積層フィルム上に病理薄切材料を採取する採取工程と、
前記採取工程において前記病理薄切材料を採取した前記積層フィルムに光を照射する照射工程と、
前記照射工程の後に前記積層フィルム上に採取された前記病理薄切材料を染色する染色工程と、
前記染色工程の後に前記積層フィルム上の前記病理薄切材料を透明な板状部材により封入する封入工程と
を含むプレパラート製造方法。
【請求項2】
二枚の柔軟性を有し透明な耐薬品性樹脂フィルムの間に、透明な光硬化樹脂を挟んだ積層フィルムを準備する準備工程と、
前記準備工程において準備した前記積層フィルム上に病理薄切材料を採取する採取工程と、
前記採取工程において前記積層フィルム上に採取された前記病理薄切材料を染色する染色工程と、
前記染色工程の後に前記積層フィルムに光を照射する照射工程と、
前記照射工程の後に前記積層フィルム上の前記病理薄切材料を透明な板状部材により封入する封入工程と
を含むプレパラート製造方法。
【請求項3】
前記染色工程においては、前記照射工程での光照射による染色液色素の劣化を前提とした染色を行う請求項2記載のプレパラート製造方法。
【請求項4】
前記積層フィルムは、該積層フィルムが巻かれたロールから引き出されたものである請求項1〜3の何れか一項に記載のプレパラート製造方法。
【請求項5】
前記耐薬品性樹脂フィルムは、PETフィルムである請求項1〜4の何れか一項に記載のプレパラート製造方法。
【請求項6】
前記採取工程は、前記病理薄切材料を前記積層フィルム上に落下させる工程、または水槽内に落下させた前記病理薄切材料を前記積層フィルム上に拾い上げる工程を含む請求項1〜5の何れか一項に記載のプレパラート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレパラートの作製の自動化に適したプレパラート製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡観察で用いられるプレパラートは、スライドグラス上に薄切した試料を貼り付け、試料の染色を行った後に、試料をカバーグラスの下に封入したものである(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−33407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここでプレパラートの作製に用いられるスライドグラスやカバーグラスの多くはガラス製であることから、作業中に割れることがありプレパラートの作製を自動化することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、プレパラートの作製の自動化に適したプレパラート製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプレパラート製造方法は、二枚の柔軟性を有し透明な耐薬品性樹脂フィルムの間に、透明な光硬化樹脂を挟んだ積層フィルムを準備する準備工程と、前記準備工程において準備した前記積層フィルム上に病理薄切材料を採取する採取工程と、前記採取工程において前記病理薄切材料を採取した前記積層フィルムに光を照射する照射工程と、前記照射工程の後に前記積層フィルム上に採取された前記病理薄切材料を染色する染色工程と、 前記染色工程の後に前記積層フィルム上の前記病理薄切材料を透明な板状部材により封入する封入工程とを含む。
【0007】
また本発明のプレパラート製造方法は、二枚の柔軟性を有し透明な耐薬品性樹脂フィルムの間に、透明な光硬化樹脂を挟んだ積層フィルムを準備する準備工程と、前記準備工程において準備した前記積層フィルム上に病理薄切材料を採取する採取工程と、前記採取工程において前記積層フィルム上に採取された前記病理薄切材料を染色する染色工程と、前記染色工程の後に前記積層フィルムに光を照射する照射工程と、前記照射工程の後に前記積層フィルム上の前記病理薄切材料を透明な板状部材により封入する封入工程とを含む。
【0008】
また本発明のプレパラート製造方法は、前記染色工程においては、前記照射工程での光照射による染色液色素の劣化を前提とした染色を行う。
【0009】
また本発明のプレパラート製造方法は、前記積層フィルムが該積層フィルムが巻かれたロールから引き出されたものである。
【0010】
また本発明のプレパラート製造方法は、前記耐薬品性樹脂フィルムがPETフィルムである。
【0011】
また本発明のプレパラート製造方法は、前記採取工程が前記病理薄切材料を前記積層フィルム上に落下させる工程、または水槽内に落下させた前記病理薄切材料を前記積層フィルム上に拾い上げる工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレパラートの作製の自動化に適したプレパラート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係るプレパラート製造方法の工程を示す図である。
図2】実施の形態に係る病理薄切材料を積層フィルム上に採取する採取部を示す図である。
図3】実施の形態に係る積層フィルムの構成を示す図である。
図4】実施の形態に係る紫外線を照射した積層フィルムを示す図である。
図5】実施の形態に係る積層フィルム上の病理薄切材料を透明な板状部材により封入した状態を示す図である。
図6】実施の形態に係る積層フィルムをプレパラートの大きさに切断した状態を示す図である。
図7】実施の形態に係る病理薄切材料を積層フィルム上に採取する採取部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態に係るプレパラート製造方法の説明を行う。図1は実施の形態に係るプレパラート製造方法の工程を示す図である。図1に示すようにプレパラート製造方法は、二枚の柔軟性を有し透明な耐薬品性樹脂フィルムの間に、透明な紫外線硬化樹脂(光硬化樹脂)を挟んだ積層フィルムを準備する準備工程(ステップS10)と、病理薄切材料を積層フィルム上に採取する採取工程(ステップS11)と、積層フィルムに紫外線を照射する照射工程(ステップS12)と、積層フィルム上に採取された病理薄切材料を染色する染色工程(ステップS13)と、積層フィルム上の病理薄切材料を透明な板状部材により封入する封入工程(ステップS14)と、透明な板状部材により病理薄切材料が封入された積層フィルムをプレパラートの大きさに切断する切断工程(ステップS15)を有する。
【0015】
図2は、病理薄切材料を積層フィルム23上に採取する採取部2を示す図である。準備工程(ステップS10)において準備する積層フィルム23は、ロール24に巻回されたものであり、図3に示すように柔軟性を有し透明な、例えば耐キシレン、耐塩酸等の耐薬品性樹脂フィルムであるPET(polyethylene terephthalate)製フィルム23a、23bの間に透明な紫外線硬化樹脂23cを挟んだものである。また積層フィルム23の病理薄切材料22を採取する面(上面)には接着剤が塗布されている。
【0016】
採取工程(ステップS11)においては、包埋材であるパラフィンによりブロック化された生検材料ブロック20をミクロトーム21により所定の厚さに薄切した病理薄切材料22を、ロール24から引き出された積層フィルム23上に落下させ採取する。ここでミクロトーム21は、図示するA方向に往復移動することにより生検材料ブロック20を所定の厚さに薄切する。
【0017】
ロール24から引き出された積層フィルム23は、フィルムガイド25aにより積層フィルム23を帯電させる帯電装置26まで搬送され、その後フィルムガイド25bによりミクロトーム21の下部まで搬送され、帯電した積層フィルム23の上面においてミクロトーム21により薄切された病理薄切材料22を採取する。そして積層フィルム23はフィルムガイド25cによりミクロトーム21の下流に配置される固定装置27まで搬送される。ここで病理薄切材料22を加熱し積層フィルム23上に固定する。
【0018】
照射工程(ステップS12)においては、病理薄切材料22が固定された積層フィルム23に紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂23cを硬化させる。即ち図4に示すように、病理薄切材料22が固定された部分を含む積層フィルム23の領域23a(図中斜線で示す領域)に紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂23cを硬化させる。なお紫外線を照射する領域は、作製するプレパラートの大きさよりも広い領域である。これにより積層フィルム23の紫外線を照射した領域は、板状に硬化する。
【0019】
染色工程(ステップS13)においては、病理薄切材料22が固定された積層フィルム23を染色漕に収容し、加温してパラフィンを溶融させた後に、染色漕に染色系列溶液を順次供給すると共に染色漕に供給された染色系列溶液を順次回収する。ここで染色漕内に供給される染色系列溶液は、それぞれ染色の種類に応じて最適な温度に制御される。
【0020】
封入工程(ステップS14)においては、積層フィルム23上の病理薄切材料22上に封入剤を供給し透明な板状部材30、例えば矩形状のPETフィルムにより封入する。
【0021】
切断工程(ステップS15)においては、図6に示すように、透明な板状部材30により病理薄切材料22が封入された積層フィルム23をプレパラートの大きさに切断する。これによりプレパラート32の製造が終了する。
【0022】
本実施の形態によれば、プレパラートの作製中の破損を防止することができプレパラートの作製の自動化に適したプレパラートの製造方法を提供することができる。
【0023】
なお上述の実施の形態においては、積層フィルム23に紫外線を照射する照射工程(ステップS12)の後に、積層フィルム23上に採取された病理薄切材料22を染色する染色工程(ステップS13)を実施しているが、積層フィルム23上に採取された病理薄切材料22を染色する染色工程の後に、積層フィルム23に紫外線を照射する照射工程を実施してもよい。この場合には、紫外線照射による染色液色素の劣化を前提とした染色を行う必要がある。
【0024】
また上述の実施の形態においては、採取工程(ステップS11)において病理薄切材料22をロール24から引き出された積層フィルム23上に落下させ採取しているが、図7に示すように病理薄切材料22を水が入れられた水槽40内に落下させ、水槽40内に浮かんでいる病理薄切材料22をロール24から引き出された積層フィルム23により採取するようにしてもよい。この場合には積層フィルムの病理薄切材料を採取する面に塗布する接着剤及び帯電装置26は不要になる。
【0025】
また上述の実施の形態においては、光硬化樹脂として紫外線硬化樹脂を用いているが、特定の波長の可視光を照射することにより硬化する透明な可視光硬化樹脂を用いてもよい。
【符号の説明】
【0026】
2…採取部、20…生検材料ブロック、21…ミクロトーム、22…病理薄切材料、23…積層フィルム、23a,23b…PET製フィルム、23c…紫外線硬化樹脂、24…ロール
【要約】
【課題】プレパラートの作製の自動化に適したプレパラート製造方法を提供する。
【解決手段】二枚の柔軟性を有し透明な耐薬品性樹脂フィルムの間に、透明な光硬化樹脂を挟んだ積層フィルムを準備する準備工程と、病理薄切材料を前記積層フィルム上に採取する採取工程と、前記積層フィルムに光を照射する照射工程と、前記積層フィルム上に採取された前記病理薄切材料を染色する染色工程と、前記積層フィルム上の前記病理薄切材料を透明な板状部材により封入する封入工程とを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7