特許第6522791号(P6522791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522791
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】2応力純分離の波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20190520BHJP
   F16H 55/08 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
   F16H55/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-561496(P2017-561496)
(86)(22)【出願日】2016年1月15日
(86)【国際出願番号】JP2016051190
(87)【国際公開番号】WO2017122362
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌一
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/079667(WO,A1)
【文献】 特許第5456941(JP,B1)
【文献】 特開2007−211907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28− 1/48
F16H 48/00−48/42
F16H 51/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内歯車と、この内側に同軸状に配置された可撓性の外歯車と、この内側に嵌めた波動発生器とを有し、
前記外歯車は前記波動発生器によって楕円状に撓められ、楕円状に撓められた前記外歯車の外歯は、その長軸方向の両端部分を避けた範囲において前記内歯車の内歯にかみ合っており、
前記内歯車および、楕円状に変形する前の前記外歯車は共にモジュールmの平歯車であり、
前記外歯車の歯数は、nを正の整数とすると、前記内歯車の歯数より2n枚少なく、
前記外歯の歯筋方向の所定の位置の軸直角断面における前記外歯車の楕円状のリム中立曲線における長軸位置において、その撓み前のリム中立円に対する半径方向撓み量は、κを偏位係数とすると、2κmnであり、前記外歯の歯筋方向の所定の位置に設定した軸直角断面を主断面とすると、当該主断面は偏位係数κ=1の無偏位撓みの断面であり、
前記主断面において、前記外歯車の前記内歯車に対する歯のかみ合いをラックかみ合いとみなした場合に得られる前記外歯車の歯の前記内歯車の歯に対するκ=1の移動軌跡に基づいて、前記内歯車の歯末の歯形は次式aで規定され、
(式a)
Ca1=0.25mn(π+θ−sinθ)
Ca1=0.5mn(−1+cosθ)
但し、0≦θ≦π
前記移動軌跡に基いて、前記外歯車の歯末の歯形は次式bで規定されており、
(式b)
Fa1=0.25mn[π−θ+sinθ−ε{cos(θ/2)−sin(θ/2)}]
Fa1=mn[0.5(1―cosθ)
―(ε/4){sin(θ/2)−cos(θ/2)}]
但し、0≦θ≦π
0<ε≦0.1
前記内歯車および前記外歯車のそれぞれの歯元の歯形は、相手歯車の前記歯末の歯形と干渉しない所定の歯形に設定されている波動歯車装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記内歯車の歯元の最大歯厚の歯形は次の式c
(式c)
Ca2=0.25mn(π−θ+sinθ)
Ca2=0.5mn(1−cosθ)
但し、0 ≦ θ ≦ π
で与えられており、
前記外歯車の歯元の最大歯厚の歯形は次の式d
(式d)
Fa2=0.25mn[π−θ+sinθ−ε{cos(θ/2)−sin(θ/2)}]
Fa2=mn[0.5(−1+cosθ)
―(ε/4){sin(θ/2)−cos(θ/2)}]
但し、0≦θ≦π
0<ε≦0.1
で与えられている波動歯車装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記内歯車の歯末の歯形が、その歯筋方向の各軸直角断面において、前記の式aによって規定され、
前記外歯車の歯末の歯形が、その歯筋方向の各軸直角断面において、前記の式bによって規定されている波動歯車装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記外歯車は、可撓性の円筒状胴部と、この円筒状胴部の後端から半径方向に延びているダイヤフラムとを備え、前記円筒状胴部の前端開口の側の外周面部分に、前記外歯が形成されており、
前記外歯の撓み量は、その歯筋方向に沿って、前記ダイヤフラムの側の外歯内端部から前記前端開口の側の外歯開口端部に向けて、前記ダイヤフラムからの距離に比例して変化しており、
前記主断面は、前記外歯における前記外歯開口端部と前記外歯内端部の間の歯筋方向の中央の位置であり、
前記主断面における前記外歯車の歯形は、前記の式bによって規定される歯末の歯形を含み、
前記外歯車における歯筋方向の前記主断面以外の各軸直角断面の歯形は、前記主断面の歯形に対して各軸直角断面の前記撓み量に応じた転位が施された転位歯形であり、
前記外歯車の前記主断面から前記外歯開口端部に至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、各軸直角断面における歯形が描くκ>1の前記移動軌跡の頂部が、前記主断面におけるκ=1の前記移動軌跡の頂部に接するように、前記主断面の歯形に転位を施すことによって得られたものであり、
前記外歯の前記主断面から前記外歯内端部に至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、各軸直角断面における歯形が描くκ<1の前記移動軌跡の底部が前記主断面におけるκ=1の前記移動軌跡の底部に接するように、前記主断面の歯形に転位を施すことによって得られたものである波動歯車装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記外歯車の前記主断面から前記外歯開口端部に至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、前記主断面の歯形に対して、次式で与えられる転位が施されており、
h=κcosθκ−cosθ
ここに、θκ、θは連立方程式
(1−κcosθκ)/κsinθκ − (1−cosθ)/sinθ =0
θκ − κsinθκ − θ+sinθ=0
の解である波動歯車装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記外歯車の前記主断面から前記外歯内端部に至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、前記主断面の歯形に対して、次式
h=κ−1
で与えられる転位が施されている波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動発生器によって可撓性の外歯車が楕円状に撓められて剛性の内歯車に対して部分的にかみ合う波動歯車装置に関する。さらに詳しくは、外歯車の楕円状形状の長軸両端部分において、撓みによって生じる曲げ応力と、内歯車とのかみ合いによる負荷トルクに起因する引張り応力との重畳を確実に避けて、伝達トルク容量の向上を図った波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、波動歯車装置は、剛性の内歯車と、この内側に同軸に配置された可撓性の外歯車と、この内側に嵌めた波動発生器とを有している。フラット型の波動歯車装置は、可撓性の円筒の外周面に外歯が形成された外歯車を備えている。カップ型およびシルクハット型の波動歯車装置の外歯車は、可撓性の円筒状胴部と、この円筒状胴部の後端から半径方向に延びているダイヤフラムと、円筒状胴部の前端開口側の外周面部分に形成した外歯とを備えている。典型的な波動歯車装置では、円形の外歯車が波動発生器によって楕円状に撓められ、楕円状に撓められた外歯車における長軸方向の両端部分が内歯車にかみ合う。
【0003】
波動歯車装置は、創始者C.W.Musser氏の発明(特許文献1)以来、今日まで同氏を始め、本発明者を含め多くの研究者によって本装置の各種の発明考案がなされている。その歯形に関する発明に限っても、各種のものがある。本発明者は、特許文献2において基本歯形をインボリュート歯形とすることを提案し、特許文献3、4において、内歯車と外歯車の歯のかみ合いをラックかみ合いで近似する手法を用いて広域接触を行う両歯車の歯末歯形を導く歯形設計法を提案している。
【0004】
波動歯車装置において、可撓性の外歯車は波動発生器によって真円状態から楕円状に撓められるので、その楕円状形状の長軸の両端部分には、撓みによって曲げ応力が生じる。また、楕円状に撓められた外歯車は、その長軸の両端部分において内歯車にかみ合うので、かみ合い部分を介して伝達される負荷トルクに起因する引張り応力が生じる。このため、外歯車の長軸両端部分(歯底リムの部分)には、双方の応力が重畳して大きな応力が作用する。特に、両歯車の歯数が少ない低速比の波動歯車装置の場合には、外歯車の長軸位置での撓み量が大きいので、楕円状の変形に伴って大きな曲げ応力が生じる。よって、波動歯車装置の伝達トルク容量の向上を図るためには、外歯車の長軸両端部分に生じる応力を低減することが必要である。
【0005】
従来においては、外歯車の長軸両端部分に生じる応力を低減するために、外歯車を楕円状に変形させたときの半径方向の最大撓み量(長軸位置における半径方向の撓み量)を、標準である正規撓み量2mnよりも小さな撓み量2κmn(κ<1)に設定している。ここで、nは正の整数であり、両歯車の歯数差は2n枚である。mは両歯車のモジュールである。また、κは偏位係数(あるいは、撓み係数)と呼ばれる係数であり、半径方向撓み量がκ=1の撓み量2mn(正規撓み量)の場合を無偏位撓みと呼び、2mnよりも少ない半径方向撓み量2κmn(κ<1)の場合を負偏位撓みと呼び、2mnよりも大きい半径方向の撓み量2κmn(κ>1)の場合を正偏位撓みと呼ぶ。
【0006】
外歯車を負偏位撓みに設定することにより、外歯車の長軸両端部分に生じる楕円状の変形に伴う曲げ応力を低減している。また、外歯車を負偏位撓みにすることで、外歯車の内歯車に対するかみ合い中心を長軸両端位置からずらして、負荷トルクに起因する引張り応力のピーク位置を、外歯車の長軸両端部分からずらすようにしている。このように、負偏位撓みに設定することにより、外歯車の長軸両端部分において、撓みに起因する曲げ応力を低減し、また、曲げ応力のピーク位置に引張り応力のピーク位置が重なることを回避している。負偏位撓みに設定した波動歯車装置は、例えば、特許文献5、6において本発明者によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2906143号明細書
【特許文献2】特公昭45−41171号公報
【特許文献3】特開昭63−115943号公報
【特許文献4】特開昭64−79448号公報
【特許文献5】特許第4650954号公報
【特許文献6】特許第4165810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、波動歯車装置において、その両歯車の歯たけは撓み量に関係し、半径方向の撓み量を正規撓み量(=2mn、κ=1)より小さな負偏位撓み(=2κmn、κ<1)にすると、歯たけが小さくなり、高負荷トルク時にラチェティング(歯飛び現象)が発生するおそれがある。ラチェティングを防止するためには、両歯車の歯たけをできるだけ大きくする必要がある。
【0009】
このような観点から、撓み量を小さくせずに正規撓み量のまま、楕円状に変形した外歯車の長軸両端部分に生じる曲げ応力と引張り応力との重畳を分離できることが望ましい。しかしながら、外歯車における長軸両端部分に生じる曲げ応力と引張り応力との重畳を積極的に分離する考案については本格的な検討はなされてこなかった。
【0010】
本発明の課題は、伝達トルク容量を増大させるために、外歯車の長軸両端部分に生じる曲げ応力と引張り応力との重畳を、外歯車の撓み量(歯筋方向の各位置における撓み量の平均撓み量)を正規撓み量よりも小さくすることなく、実質的に完全に回避できる波動歯車装置を提供することにある。また、本発明の課題は、外歯車の長軸両端部分に生じる曲げ応力と引張り応力との重畳を実質的に完全に回避し、かつ、歯筋に沿っての外歯車と内歯車の連続的なかみ合いを近似的に実現することにより、伝達トルク容量の更なる増大を図った波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明では、波動歯車装置の可撓性の外歯車の歯形に所要の修正を施すことによって2応力(曲げ応力と引張り応力)の実質的な完全分離を実現する。
【0012】
すなわち、本発明の波動歯車装置は、
剛性の内歯車と、この内側に同軸状に配置された可撓性の外歯車と、この内側に嵌めた波動発生器とを有し、
前記外歯車は前記波動発生器によって楕円状に撓められ、楕円状に撓められた前記外歯車の外歯は、その長軸方向の両端部分を避けた範囲において前記内歯車の内歯にかみ合っており、
前記内歯車および、楕円状に変形する前の前記外歯車は共にモジュールmの平歯車であり、
前記外歯車の歯数は、nを正の整数とすると、前記内歯車の歯数より2n枚少なく、
前記外歯の歯筋方向の所定の位置の軸直角断面における前記外歯車の楕円状のリム中立曲線における長軸位置において、その撓み前のリム中立円に対する半径方向撓み量は、κを偏位係数とすると、2κmnであり、前記外歯の歯筋方向の所定の位置に設定した軸直角断面を主断面とすると、当該主断面は偏位係数κ=1の無偏位撓みの断面であり、
前記主断面において、前記外歯車の前記内歯車に対する歯のかみ合いをラックかみ合いとみなした場合に得られる前記外歯車の歯の前記内歯車の歯に対するκ=1の移動軌跡に基づいて、前記内歯車の歯末の歯形は次式aで規定され、
(式a)
Ca1=0.25mn(π+θ−sinθ)
Ca1=0.5mn(−1+cosθ)
但し、0≦θ≦π
前記移動軌跡に基いて、前記外歯車の歯末の歯形は次式bで規定されており、
(式b)
Fa1=0.25mn[π−θ+sinθ−ε{cos(θ/2)−sin(θ/2)}]
Fa1=mn[0.5(1―cosθ)
―(ε/4){sin(θ/2)−cos(θ/2)}]
但し、0≦θ≦π
0<ε≦0.1
前記内歯車および前記外歯車のそれぞれの歯元の歯形は、相手歯車の前記歯末の歯形と干渉しない所定の歯形に設定されていることを特徴としている。
【0013】
ここで、フラット型波動歯車装置の場合には、前記内歯車の歯末の歯形が、その歯筋方向の各軸直角断面において、前記の式aによって規定され、前記外歯車の歯末の歯形が、その歯筋方向の各軸直角断面において、前記の式bによって規定される。
【0014】
カップ型波動歯車装置あるいはシルクハット型波動歯車装置の場合には、前記外歯車は、可撓性の円筒状胴部と、この円筒状胴部の後端から半径方向に延びているダイヤフラムとを備え、前記円筒状胴部の前端開口の側の外周面部分に、前記外歯が形成されており、前記外歯の撓み量は、その歯筋方向に沿って、前記ダイヤフラムの側の外歯内端部から前記前端開口の側の外歯開口端部に向けて、前記ダイヤフラムからの距離に比例して変化し、前記主断面は、一般に、前記外歯における前記外歯開口端部と前記外歯内端部の間の歯筋方向の中央の位置とされる。
【0015】
この場合、前記内歯車の歯末の歯形は前記の式aによって規定される。これに対して、前記外歯車の歯末の歯形は、前記主断面においては、前記の式bによって規定される。前記外歯車における歯筋方向の前記主断面以外の各軸直角断面の歯形は、前記主断面の歯末の歯形に対して各軸直角断面の前記撓み量に応じた転位が施された転位歯形である。具体的には、前記外歯車の前記主断面から前記外歯開口端部に至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、各軸直角断面における歯形が描くκ>1の前記移動軌跡の頂部が、前記主断面におけるκ=1の前記移動軌跡の頂部に接するように、前記主断面の歯形に転位を施すことによって得られるものである。また、前記外歯車の前記主断面から前記外歯内端部に至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、各軸直角断面における歯形が描くκ<1の前記移動軌跡の底部が前記主断面におけるκ=1の前記移動軌跡の底部に接するように、前記主断面の歯形に転位を施すことによって得られるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、波動歯車装置の外歯車における偏位係数κ=1の軸直角断面(主断面)上において、外歯車の楕円状のリム中立曲線の長軸位置に生じる、撓みによって生じる曲げ応力と、負荷トルクに起因する引張り応力との重畳を避けて、両応力を実質的に完全に分離することができる。よって、フラット型波動歯車装置において偏位係数κ<1の負偏位撓みを採用することなく、また、カップ型あるいはシルクハット型の波動歯車装置において、その歯筋方向の全体に亘って偏位係数κ<1の負偏位撓みを採用することなく、波動歯車装置の伝達トルク容量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用した波動歯車装置の一例を示す概略正面図である。
図2】カップ形状およびシルクハット形状の外歯車の撓み状況を示す説明図であり、(a)は変形前の状態を示し、(b)は楕円形に変形した外歯車の長軸を含む断面の状態を示し、(c)は楕円形に変形した外歯車の短軸を含む断面の状態を示す。
図3A】外歯車の歯筋方向の外歯内端部(κ<1)、主断面(κ=1)、および外歯開口端部(κ>1)において、外歯車の内歯車に対する歯に対するかみ合いをラックかみ合いで近似した場合に得られる外歯車の歯の内歯車の歯に対する移動軌跡を示すグラフである。
図3B】転位を施した後の外歯車の歯筋方向の外歯内端部(κ<1)、主断面(κ=1)、および外歯開口端部(κ>1)において、外歯車の内歯車に対する歯に対するかみ合いをラックかみ合いで近似した場合に得られる外歯車の歯の内歯車の歯に対する移動軌跡を示すグラフである。
図4A】内歯車の歯末の歯形を示す説明図である。
図4B】外歯車の主断面における歯末の歯形を示す説明図である。
図4C】内歯車の歯元の歯形の一例を示す説明図である。
図4D】外歯車の歯元の歯形の一例を示す説明図である。
図4E】外歯車の歯末の歯形と内歯車の歯元の歯形を示す説明図である。
図5】主断面における外歯車および内歯車の歯形を示す説明図である。
図6】外歯車の歯筋方向における主断面付近の転位量の一例を示すグラフである。
図7】転位が施された外歯車の歯筋方向の歯形輪郭を示す説明図である。
図8】外歯車の外歯開口端部における内歯車の歯に対する外歯車の歯のかみ合いを示す説明図である。
図9A】外歯車の主断面における内歯車の歯に対する外歯車の歯のかみ合いを示す説明図である。
図9B図9Aの部分拡大図である。
図10】外歯車の外歯内端部における内歯車の歯に対する外歯車の歯のかみ合いを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(波動歯車装置の構成)
図1は本発明を適用した波動歯車装置の正面図である。図2(a)〜(c)はその可撓性外歯車の開口部を楕円状に撓ませた状況を示す断面図であり、図2(a)は変形前の状態、図2(b)は変形後における楕円状曲線の長軸を含む断面、図2(c)は変形後における楕円状曲線の短軸を含む断面をそれぞれ示してある。なお、図2(a)〜(c)において実線はカップ状の可撓性外歯車のダイヤフラムおよびボスの部分を示し、破線はシルクハット状の可撓性外歯車のダイヤフラムおよびボスの部分を示す。
【0019】
これらの図に示すように、波動歯車装置1は、円環状の剛性の内歯車2と、その内側に配置された可撓性の外歯車3と、この内側にはめ込まれた楕円状輪郭の波動発生器4とを有している。内歯車2、および、変形前の外歯車3は、共に、モジュールmの平歯車である。内歯車2と外歯車3の歯数差は2n(nは正の整数)であり、波動歯車装置1の円形の外歯車3は、楕円状輪郭の波動発生器4によって楕円状に撓められている。楕円状に撓められた外歯車3の長軸Laの方向の両端部分を離れた位置で(両端部分を離れた範囲で)、外歯車3の外歯34(以下、単に、「歯34」と呼ぶ場合もある。)は内歯車2の内歯24(以下、単に「歯24」と呼ぶ場合もある。)にかみ合っている。
【0020】
波動発生器4を回転すると、両歯車2、3のかみ合い位置が周方向に移動し、両歯車2、3の歯数差に応じた相対回転が両歯車2、3の間に発生する。外歯車3は、可撓性の円筒状胴部31と、円筒状胴部31の一方の端である後端31bに連続して半径方向に広がるダイヤフラム32と、ダイヤフラム32に連続しているボス33と、円筒状胴部31の他方の端である前端開口31aの側の外周面部分に形成した外歯34とを備えている。
【0021】
楕円状輪郭の波動発生器4は、円筒状胴部31の外歯形成部分の内周面部分にはめ込まれている。波動発生器4によって、円筒状胴部31は、そのダイヤフラム側の後端31bから前端開口31aに向けて、半径方向の外側あるいは内側への撓み量が漸増している。図2(b)に示すように、楕円状曲線の長軸La(図1参照)を含む断面では、外側への撓み量が後端31bから前端開口31aへの距離に略比例して漸増する。図2(c)に示すように、楕円状曲線の短軸Lb(図1参照)を含む断面では、内側への撓み量が後端31bから前端開口31aへの距離に略比例して漸増する。前端開口31a側の外周面部分に形成されている外歯34も、その歯筋方向の外歯内端部34bから外歯開口端部34aに向けて、後端31bからの距離に略比例して撓み量が漸増している。
【0022】
外歯34の歯筋方向における任意の位置の軸直角断面において、楕円状に撓められる前の外歯34の歯底リムの厚さ方向の中央を通る円がリム中立円である。これに対して、楕円状に撓められた後の歯底リムの厚さ方向の中央を通る楕円状曲線を、リム中立曲線と呼ぶものとする。楕円状のリム中立曲線の長軸位置におけるリム中立円に対する長軸方向の撓み量wは、κ(1を含む実数)を偏位係数として、2κmnで表される。
【0023】
すなわち、外歯車3の外歯34の歯数をZ、内歯車2の内歯24の歯数をZ、波動歯車装置1の減速比をR(=Z/(Z−Z)=Z/2n)とし、外歯車3のピッチ円直径mZを減速比Rで除した値(mZ/R=2mn)を長軸方向の正規(標準)の撓み量wとする。波動歯車装置1は、一般に、その外歯車3の歯筋方向における波動発生器4のウエーブベアリングのボール中心が位置する部位、通常は外歯の歯筋方向の中央部の位置において、正規の撓み量w(=2mn)で撓むように設計される。
【0024】
偏位係数κは、外歯車3の歯幅方向の各軸直角断面における撓み量wを正規の撓み量で除した値を表す。したがって、外歯34において、正規の撓み量wが得られる位置の偏位係数はκ=1であり、これよりも少ない撓み量wの断面位置の偏位係数はκ<1となり、これよりも多い撓み量wの断面位置の偏位係数はκ>1となる。外歯34における正規の撓み量w(κ=1)が得られる歯形を無偏位歯形と呼び、正規の撓み量よりも少ない撓み量(κ<1)が得られる歯形を負偏位歯形と呼び、正規の撓み量よりも多い撓み量(κ>1)が得られる歯形を正偏位歯形と呼ぶ。本例では、外歯34の歯筋方向の中央部の軸直角断面をκ=1の主断面34cに設定している。
【0025】
図3Aは波動歯車装置1の両歯車2、3の相対運動をラックで近似した場合に得られる、内歯車2の歯24に対する外歯車3の歯34の移動軌跡を示す図である。図において、x軸はラックの併進方向、y軸はそれに直角な方向を示す。y軸の原点は移動軌跡の振幅の平均位置としてある。曲線Maは、外歯開口端部34aにおいて得られる移動軌跡であり、曲線Mbは外歯内端部34bにおいて得られる移動軌跡である。曲線Mcは、歯筋方向における外歯開口端部34aから外歯内端部34bまでの間の任意の位置、本例では歯筋方向の中央部において得られる移動軌跡である。以下、この位置の軸直角断面を主断面34cと呼ぶ。内歯車2の歯24に対する外歯車3の歯34の移動軌跡は、次式で示される。
Fa=0.5mn(θ−κsinθ)
Fa=κmncosθ
【0026】
説明を簡単にするために、モジュールm=1、n=1(歯数差2n=2)とすると、上式は次の式1で表される。
(式1)
Fa=0.5(θ−κsinθ)
Fa=κcosθ
【0027】
(主断面における歯形の形成方法)
主断面34c(偏位係数κ=1)における内歯24のラック近似による歯末の歯形について説明する。内歯24の歯末の歯形を規定するために、外歯34における主断面34cにおいて得られる移動軌跡Mcを利用する。
【0028】
まず、図3Aの主断面34cにおける移動軌跡Mcにおいて、パラメーターθが0からπまでの範囲の第1曲線ABを取る。パラメーターθ=πの位置は移動軌跡Mcの底部であるB点であり、パラメーターθ=0の位置は移動軌跡Mcの頂部であるA点である。次に、第1曲線ABを、B点を相似の中心としてλ倍(0<λ<1)に相似変換して、第1相似曲線を得る。第1相似曲線を、内歯車2の内歯24の歯末の歯形曲線として採用する。本例では、λ=0.5に設定されている。
【0029】
このようにして設定した内歯車2の歯24の歯末の歯形曲線は、次の式2で与えられる。
(式2)
Ca1=0.5{(1−λ)π+λ(θ−κsinθ)}
Ca1=κ{λ(1+cosθ)−1}
但し、0≦θ≦π
【0030】
λ=0.5、κ=1であるので、これらを式2に代入して、式2Aが得られる。図4Aには、式2Aにより与えられる内歯車2の歯末の歯形曲線24C1(第1相似曲線BC)を示してある。
<内歯車の歯末の歯形>
(式2A)
Ca1=0.25(π+θ−sinθ)
Ca1=0.5(−1+cosθ)
但し、0≦θ≦π
【0031】
次に、第1相似曲線BCにおけるB点とは反対側の端点であるC点を中心として、第1相似曲線BCを180度回転させて(1−λ)倍に相似変換した第2相似曲線を得る。この第2相似曲線は次の式3で与えられる。
(式3)
x(θ)=0.5{(1−λ)(π−θ+κsinθ)}
y(θ)=κ{(λ−1)(1−cosθ)}
但し、0≦θ≦π
【0032】
λ=0.5、κ=1であるので、これらを式2に代入して、式3Aが得られる。図4Aには、式3Aにより与えられる第2相似曲線CAを破線で示してある。
(式3A)
x(θ)=0.25(π−θ+sinθ)
y(θ)=0.5(1−cosθ)
但し、0≦θ≦π
【0033】
<外歯車の歯末の歯形>
ここで、外歯34の歯末の歯形を次の式3Bによって規定する。図4Bには式3Bで与えられる歯末の歯形曲線34C1を示してある。
【0034】
(式3B)
Fa1=0.25[π−θ+sinθ−ε{cos(θ/2)−sin(θ/2)}]
Fa1=0.5(1―cosθ)―(ε/4){sin(θ/2)−cos(θ/2)}
但し、0≦θ≦π
0<ε≦0.1
【0035】
この式3Bにおいて、εを含む修正項を導入することにより、外歯車3の楕円状のリム中立曲線の長軸Laでの内歯車2とのかみ合いを取り除くことができる。これにより、長軸Laでは、楕円状の撓みによる曲げ応力のみが実質的に存在することになる。また、伝達トルク負荷による引張り応力のピークは、長軸Laと短軸Lbの丁度中央の位置(θ=π/4)に現れ、当該引張り応力は長軸La上において実質的に生じないことになる。したがって、外歯車3の長軸両端部分に生じる曲げ応力と引張り応力との重畳を実質的に回避できる(両応力の発生領域を実質的に完全に分離できる)。
【0036】
<内歯車の歯元の歯形の一例>
両歯車2、3の歯元の歯形は、相手歯車の歯末の歯形と干渉しない任意の歯形とすればよい。例えば、内歯車2の歯元の歯形は、外歯車3の歯末の歯形が移動軌跡Mcの頂点Aから底点Bまで移動する間に、内歯車2に創成する曲線を、内歯車2の最大歯厚の歯元歯形として定めることができる。この歯元の歯形は、次の式4で与えられる。図4Cには、式4で与えられるは歯元の歯形曲線24C2を示してある。
(式4)
Ca2=0.25(π−θ+sinθ)
Ca2=0.5(1−cosθ)
但し、0≦θ≦π
【0037】
同様に、外歯車3の歯末の歯形が移動軌跡Mcの頂点Aから底点Bまで移動する間に、内歯車2の歯末の歯形が外歯車3に創成する曲線を、外歯車3の最大歯厚の歯元歯形として定めることができる。この歯元の歯形は次の式5で与えられる。図4Dには、式5で与えられる歯元の歯形曲線34C2を示してある。
(式5)
Fa2=0.25[π−θ+sinθ−ε{cos(θ/2)−sin(θ/2)}]
Fa2=0.5(−1+cosθ)―(ε/4){sin(θ/2)−cos(θ/2)}
但し、0≦θ≦π
0<ε≦0.1
【0038】
図4Eは、歯形曲線34C1によって規定される外歯車3の歯末の歯形と、歯形曲線24C2によって規定される内歯車2の歯元の歯形の部分を拡大したもので、外歯車3の歯末の歯形に施す歯形修正の様子を示したものである。
【0039】
図5は、外歯車3と内歯車2の主断面34cにおける上記の個別の歯形を合わせて規定される外歯歯形34Cおよび内歯歯形24Cを示したものである。
【0040】
(主断面以外の各軸直角断面における歯形)
ここで、フラット型波動歯車装置においては、内歯車2および外歯車3の歯筋方向の各軸直角断面の歯形は上記のように設定された主断面34cにおける歯形と同一である。
【0041】
これに対して、カップ型波動歯車装置あるいはシルクハット型波動歯車装置では、内歯車2の歯筋方向の各軸直角断面の歯形は上記のように設定された主断面34cにおける歯形と同一である。しかし、外歯車3における歯筋方向の主断面34c以外の各軸直角断面の歯形は、主断面34cの歯形に対して各軸直角断面の撓み量に応じた転位が施された転位歯形とされる。
【0042】
すなわち、外歯車3の主断面34cから外歯開口端部34aに至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、各軸直角断面において外歯34が描くκ>1の移動軌跡の頂部が、主断面34cにおけるκ=1の移動軌跡の頂部に接するように、主断面34cの外歯歯形34Cに転位を施すことによって得られる歯形である。また、外歯車3の主断面34cから外歯内端部34bに至る歯筋方向の各軸直角断面の歯形は、各軸直角断面において外歯34が描くκ<1の移動軌跡の底部が主断面34cにおけるκ=1の移動軌跡の底部に接するように、主断面34cの外歯歯形34Cに転位を施すことによって得られる歯形である。
【0043】
具体的には、外歯車3における主断面34c以外の歯筋方向の各断面の歯形形状に関しては次のように設定される。図3Bに示すように、主断面34cから外歯開口端部34aにかけて偏位係数κ>1の軸直角断面においては、外歯車3の歯34の内歯車2の歯24に対するラック近似による移動軌跡Ma1の頂部が、主断面34cにおける移動軌跡Mcに接するように、外歯車3の歯34の転位量hを次の式6で与える。
(式6)
h=λ(κ)(κ−1)
【0044】
ここで、h、λ(κ)は以下のように求まる。まず、偏位係数κが1以上の外歯車3の軸直角断面における、ラック近似による外歯車3の歯34の内歯車2の歯24に対する移動軌跡は、先に述べたように、次式で示される。
(式A)
Fa=0.5(θ―κsinθ)
Fa=κcosθ
【0045】
移動軌跡上の点に対する移動軌跡への接線の圧力角ακは次式で示される。
(式B)
tanακ=0.5(1−κcosθκ)/κsinθκ
【0046】
また、κ=1の移動軌跡上の点に対する接線の圧力角αは次式で示される。
(式C)
tanα=0.5(1−cosθ)/sinθ
【0047】
これより、両圧力角を等置して次式を得る。
(式D)
(1−κcosθκ)/κsinθκ − (1−cosθ)/sinθ =0
【0048】
次に、両接点のx座標を等置して次式を得る。
(式E)
θκ − κsinθκ − θ+sinθ=0
【0049】
ここで、式Dと式Eを連立させ、θκとθを求めれば、転位量hあるいはλ(κ)が次式で求められる。
(式F)
h=κcosθκ−cosθ
λ(κ)=h/(κ−1)
【0050】
次に、外歯車3の主断面34cから外歯内端部34bにかけて偏位係数κ<1の軸直角断面においては、同じく図3Bに示すように、外歯車3の歯34の内歯車2の歯24に対する移動軌跡Mb1の底部が、主断面34cにおける移動軌跡Mcの底部に接するように、外歯車3の歯34の転位を行う。この場合の転位の大きさhは、次式による。
h=κ−1
【0051】
図6は、外歯車3の歯筋方向の主断面付近の転位量の一例を示すグラフである。この図の横軸は外歯34の歯筋方向の中央部(主断面34c)からの距離を示し、縦軸は転位量hを示す。転位量hは、同一傾斜の転位直線L1、L2で示される。転位直線L1は主断面34cから外歯開口端部34aにかけての転位量を示し、転位直線L2は主断面34cから外歯内端部34bにかけての転位量を示す。
【0052】
また、図6には、主断面34cを頂点とし、転位直線L1、L2に接する4次曲線C1が示されている。この4次曲線C1に基づき各軸直角断面での転位量を決めると、外歯34における主断面34cを含む歯筋方向の中央部分に実質的な平坦部が形成される。これにより、転位の滑らかな変化が保証され、外歯車3の歯切り時の寸法管理も容易になる。
【0053】
図7は、内歯24と、上記のように転位を行った外歯34の歯筋方向の歯形輪郭を示す説明図である。この図においては、両歯車2、3のかみ合い状態における長軸を含む断面での状態(最深かみ合い状態)を示している。外歯34の歯筋方向の歯形輪郭は、その主断面34cを含む歯筋方向の中央部分では、上記の4次曲線C1によって規定され、この中央部分から外歯開口端部34aまでの間の部分では、転位直線L1によって規定され、中央部分から外歯内端部34bまでの間の部分は、転位直線L2によって規定されている。
【0054】
図8図9A図9B、および図10は、上記のように歯形を設定した外歯34と内歯24のかみ合いの様相をラック近似で示す説明図である。図8は、外歯34の外歯開口端部34aにおける内歯24に対する外歯34のかみ合いを示す。図9Aは外歯34の主断面34cにおける同様のかみ合いを示し、図9Bはその部分拡大図である。また、図10は、外歯34の外歯内端部34bにおける同様のかみ合いを示す。
【0055】
これらの図から分かるように、近似的ながら外歯車3の外歯開口端部34aから外歯内端部34bにかけて、主断面34cを中心として歯形の有用な接触が行われている。
【0056】
以上説明したように、本例では、波動歯車装置1の可撓性の外歯車3の歯形に所要の修正を施すことによって、外歯車3における偏位係数κ=1の軸直角断面(主断面34c)上において、両歯車のかみ合い状態を次のようにしている。すなわち、外歯車3の内歯車2に対するかみ合い位置を、外歯車3の楕円状のリム中立曲線の長軸Laの位置から離し、移動軌跡の歯たけ方向の頂部から中央にかけて両歯車が漸次かみ合いを始め、その中央において両歯車の歯形が接触し、これより移動軌跡の底部にかけて、再び両歯車がかみ合いから離れる。これにより、従来において外歯車の楕円状のリム中立曲線の長軸位置に生じる、撓みによって生じる曲げ応力と、負荷トルクに起因する引張り応力との重畳を避けることができる。
【0057】
特に、本発明によれば、2応力(曲げ応力と引張り応力)の発生位置を実質的に完全に分離できるので、フラット型波動歯車装置において偏位係数κ<1の負偏位撓みを採用することなく、また、カップ型あるいはシルクハット型の波動歯車装置において、その歯筋方向の全体に亘って偏位係数κ<1の負偏位撓みを採用することなく、波動歯車装置の伝達トルク容量を増大することができる。
【0058】
また、本発明によれば、カップ型あるいはシルクハット型の波動歯車装置において、主断面以外の位置において外歯車の歯に転位を施すことにより、歯筋に沿っての両歯車の連続的なかみ合いを実現している。これにより、波動歯車装置の伝達トルク容量を更に増大することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10