(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[部品実装装置の説明]
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係るダイピックアップ装置は、例えばダイボンダ、ダイシングされたダイをテープに収容するテーピング装置、或いは前記ダイを基板に実装する部品実装装置などの各種装置に適用することができる。ここでは、当該ダイピックアップ装置が、部品実装装置に適用される例について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るダイピックアップ装置Dが適用された部品実装装置100の全体構成を示す、上面視の平面図である。
図2は、部品実装装置100における、ダイピックアップ装置Dのメカ構成部分を主に示す分解斜視図である。部品実装装置100は、ダイシングされたウェハWからダイ(以下、ベアチップCという)を取り出してプリント基板20上に実装すると共に、テープフィーダ31により供給されるチップ部品をプリント基板20上に実装することが可能な、複合型の部品実装装置である。
【0013】
部品実装装置100は、基台1、コンベア2、2つのチップ部品供給部3、実装部4、ウェハ保持テーブル5、突上げ部6(
図2にのみ示されている)、取出部7、部品認識カメラ8(撮像装置)、固定カメラ9、ウェハ収納部10及び制御部12を含んでいる。
【0014】
コンベア2は、所定の実装作業位置にプリント基板20を搬入し、実装作業後にプリント基板20を前記作業位置から搬出する。コンベア2は、プリント基板20を搬送するX方向に延びるコンベア本体と、このコンベア本体上でプリント基板20を持ち上げて位置決めする図示しない位置決め機構とを含む。コンベア2は、X2方向側からX1方向側に向かってプリント基板20をほぼ水平姿勢でX方向に搬送し、所定の実装作業位置(
図1に示す2つのプリント基板20の位置)にプリント基板20を位置決め固定する。
【0015】
2つのチップ部品供給部3は、それぞれ、部品実装装置100の手前側(Y1方向側)の両端に設けられている。チップ部品供給部3は、トランジスタ、抵抗、コンデンサなどのチップ部品を供給する。チップ部品供給部3には、前記チップ部品を所定間隔で保持するキャリアテープを有する複数のテープフィーダ31が装備されている。各テープフィーダ31は、前記キャリアテープを間欠的に送り出し、所定の部品供給位置に前記チップ部品を送り出す。
【0016】
実装部4は、ベアチップC又はチップ部品をプリント基板20上に実装する。実装部4は、2つのヘッドユニット(第1ヘッドユニット41及び第2ヘッドユニット42)と、これらの支持部材(第1支持部材43及び第2支持部材44)とを含む。第1、第2ヘッドユニット41、42は、各々図略のXY移動機構により、コンベア2の上方(Z2方向)位置において水平方向(XY方向)に移動することが可能とされている。第1ヘッドユニット41は、基台1上のうち主に上流側(X2方向側)の領域を可動領域とし、第2ヘッドユニット42は、主に下流側(X1方向側)の領域を可動領域としている。
【0017】
図2には、第1ヘッドユニット41が示されている。第1ヘッドユニット41は、X方向に沿って配置された2つの部品実装用ヘッド411、412と、1つの基板認識カメラ45とを有している。第2ヘッドユニット42も同様である。部品実装用ヘッド411、412は、負圧発生機(図示せず)により発生された負圧によって、テープフィーダ31から供給されるチップ部品、又は後述の取出部7から供給されるベアチップCを、その先端部で吸着して保持することが可能である。実装部4は、部品実装用ヘッド411、412の先端部に前記チップ部品又はベアチップCを吸着させ、これらをプリント基板20上に実装させる。
【0018】
基板認識カメラ45は、プリント基板20を撮像するカメラである。第1ヘッドユニット41によるプリント基板20への部品の実装に先立って、基板認識カメラ45によるプリント基板20の撮影画像に基づいて、当該プリント基板20に付されたフィデューシャルマーク(fiducial mark)が認識される。これによりプリント基板20の位置ずれが認識され、部品実装時に位置ずれ補正がされる。
【0019】
ウェハ収納部10は、ダイシングされた複数枚のウェハWを収容するもので、部品実装装置100の手前側(Y1方向側)の中央部に配置されている。ウェハWは、略円環状のホルダ11に保持されている。ウェハ収納部10は、ウェハWを保持するホルダ11を上下複数段に収容するラックと、このラックを昇降駆動する駆動手段とを含む。ウェハ収納部10に収容されている各ウェハWは、ベアチップCがフィルム状のウェハシート上に貼り着けられた状態にあり、このウェハシートを介してホルダ11で保持されている。ウェハ収納部10は、前記ラックの昇降によって、所望のウェハWをウェハ保持テーブル5に対して出し入れ可能な所定の出し入れ高さ位置に配置させる。
【0020】
ウェハ保持テーブル5は、ウェハ収納部10から引き出されたウェハWを支持する。部品実装装置100は、ウェハWをウェハ収納部10から引き出してウェハ保持テーブル5に搭載し、逆に、ウェハWをウェハ保持テーブル5からウェハ収納部10に戻す動作を行う出し入れ機構(図示せず)を備える。ウェハ保持テーブル5は、中央部に円形状の開口部を有しており、この開口部とホルダ11bの開口部とウェハ保持テーブル5の開口部とが重なるように、ホルダ11を保持する。
【0021】
ウェハ保持テーブル5は、部品取出作業位置とウェハ受取位置との間で、基台1上をY方向に移動可能である。具体的には、ウェハ保持テーブル5は、基台1上にY方向に延びるように設けられた一対の固定レール51に移動可能に支持されており、所定の駆動手段によって固定レール51に沿って移動される。駆動手段は、固定レール51と平行に延びかつウェハ保持テーブル5のナット部分に螺合挿入されるボールねじ軸52と、ボールねじ軸52を回転駆動するための駆動モータ53とを含んでいる。ウェハ保持テーブル5は、コンベア2の下方位置を通って、所定の部品取出作業位置とウェハ収納部10近傍のウェハ受取位置との間を移動する。
【0022】
突上げ部6は、部品取出作業位置に配置されたウェハ保持テーブル5上のウェハWのベアチップ群のうち、取り出し対象となるベアチップCをその下側から突上げることにより、当該ベアチップCをウェハシートから剥離させながら持ち上げる。突上げ部6は、突上げヘッド61と、固定レール62とを含む。突上げヘッド61は、突上げピンを内蔵する第1突上げロッド611及び第2突上げロッド612を有する。第1、第2突上げロッド611、612は、負圧発生機(図示せず)によりその先端部に発生された負圧によって、ベアチップCを吸着する。これにより、突上げ時における、ベアチップCの位置ずれが抑制される。
【0023】
固定レール62は、基台1上に固定され、突上げヘッド61をX方向に移動可能に支持している。突上げ部6は、突上げヘッド61を固定レール62に沿って移動させる駆動機構を備える。この駆動機構は、駆動源として突上げヘッド駆動モータ63(
図3参照)を含む。突上げヘッド61をX方向に移動可能に構成することにより、Y方向にのみ移動可能なウェハ保持テーブル5上に支持されているウェハWに対し、突上げヘッド61が任意のベアチップCを突上げることが可能となっている。
【0024】
取出部7(ヘッド)は、突上げ部6により突上げられたベアチップCを吸着(ダイをピックアップ)して、第1ヘッドユニット41又は第2ヘッドユニット42に受け渡す。取出部7は、所定の駆動手段により部品取出作業位置の上方(Z2方向)位置において水平方向(XY方向)に移動される。取出部7は、4つのウェハヘッド7a〜7dと、フレーム部材7eと、2つのブラケット部材7fと、2つのウェハヘッド回動モータ7hと、ウェハヘッド昇降モータ7i(
図3参照)とを含んでいる。
【0025】
ウェハヘッド7a〜7dは、X軸回りに回転が可能で、かつ上下方向(Z方向)への移動が可能である。ウェハヘッド7a〜7dは、図略の負圧発生機によりその先端部に発生された負圧によって、ベアチップCを吸着する。ウェハヘッド7a〜7dは、所定の受け渡し位置において、部品実装用ヘッド411、412にベアチップCを受け渡す。ウェハヘッド7a、7bはX2方向側のブラケット部材7fによって、ウェハヘッド7c、7dは、X1方向側のブラケット部材7fによって、各々X軸回りに回転可能に支持されている。
【0026】
ウェハヘッド回動モータ7hは、ウェハヘッド7aと7c、及び、ウェハヘッド7bと7dの上下(Z方向)の位置が入れ替わるように、これらを回転駆動させるモータである。これは、ウェハヘッド7a〜7dに吸着されたベアチップCを反転(フリップ)させるためである。2つのブラケット部材7fは、フレーム部材7eにそれぞれ昇降可能に支持されている。ウェハヘッド昇降モータ7iは、ブラケット部材7fをフレーム部材7eに対して昇降させる駆動源であり、これによりウェハヘッド7a〜7dは昇降する。
【0027】
取出部7の駆動手段は、
図1に示すように、一対の固定レール71と、フレーム部材72と、一対のボールねじ軸73と、一対のフレーム駆動モータ74とを含んでいる。一対の固定レール71は、基台1上に固定され、X方向に所定間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びている。フレーム部材72は、両端がそれぞれ固定レール71上に移動可能に支持され、X方向に延びている。一対のボールねじ軸73は、固定レール71に近接する位置にY方向に延びるように配置され、フレーム部材72の両端のナット部材(図示せず)にそれぞれ螺合挿入されている。一対のフレーム駆動モータ74は、ボールねじ軸73を回転駆動する。
【0028】
フレーム部材72には、取出部7及び部品認識カメラ8が搭載されている。一対のフレーム駆動モータ74の作動により、フレーム部材72が固定レール71に沿って移動し、このフレーム部材72の移動に伴い取出部7及び部品認識カメラ8が一体的にY方向に移動する。フレーム部材72のX1側端部には、取出部7をフレーム部材72に沿ってX方向に移動させるための駆動モータ75と、部品認識カメラ8をフレーム部材72に沿ってX方向に移動させるための駆動モータ76とが配置されている。
【0029】
部品認識カメラ8は、ウェハWからのベアチップCのピックアップに先立ち、ウェハ保持テーブル5に載置されたウェハW(ベアチップC)の画像を撮影する。撮影された画像データは、制御部12に出力される。本実施形態では、部品認識カメラ8により撮影されたウェハWの画像に基づいて、当該ウェハWの形状的特徴部が抽出される。
【0030】
固定カメラ9は、基台1上であって第1、第2ヘッドユニット41、42のそれぞれの可動領域内に配置される、部品認識用のカメラである。固定カメラ9は、第1、第2ヘッドユニット41、42の部品実装用ヘッド411、412により吸着されている部品を下側(Z1方向側)から撮像して、その画像信号を制御部12に出力する。
【0031】
制御部12は、部品実装装置100の各部の動作を統括的に制御する。
図3は、部品実装装置100の制御系を示すブロック図である。制御部12には、駆動モータ53、突上げヘッド駆動モータ63、フレーム駆動モータ74、駆動モータ75、駆動モータ76、ウェハヘッド回動モータ7h、ウェハヘッド昇降モータ7i、部品認識カメラ8、固定カメラ9および基板認識カメラ45がそれぞれ電気的に接続されている。また、制御部12には、図略の入力装置が電気的に接続されており、ユーザによる各種情報がこの入力装置の操作に基づき入力される。さらに、制御部12に対して、各駆動モータに内蔵されるエンコーダ(図示せず)等の位置検出手段からの出力信号が入力される。
【0032】
制御部12は、軸制御部13、画像処理部14、I/O処理部15、通信制御部16、記憶部17及び主演算部18を備える。軸制御部13は、各駆動モータを駆動するドライバであり、主演算部18からの指示に従って各駆動モータを動作させる。画像処理部14は、各カメラ(部品認識カメラ8、固定カメラ9、基板認識カメラ45)から入力される画像データに対し各種の画像処理を施す。I/O処理部15は、部品実装装置100が備える各種センサ(図示せず)からの信号の入力、及び各種制御信号の出力を制御する。通信制御部16は、外部装置との通信を制御する。記憶部17は、実装プログラムなどの各種プログラムや各種データを記憶する。主演算部18は、制御部12を統括的に制御するとともに、各種の演算処理を実行する。主演算部18の機能構成については、
図8に基づき後述する。
【0033】
制御部12は、各駆動モータなどを、予め定められたプログラムに基づいて制御することにより、コンベア2、ウェハ保持テーブル5、突上げ部6、取出部7、第1、第2ヘッドユニット41、42の動作を制御する。これにより、取出部7(ウェハヘッド7a〜7d)によるベアチップCの吸着位置調整が行われる。また、ウェハ収納部10に対するウェハWの出し入れ、ウェハWからのベアチップCのピックアップ、及び、第1、第2ヘッドユニット41、42による部品の実装などの一連の動作の制御が、制御部12によって行われる。
【0034】
[ウェハマップ及びその不具合について]
記憶部17に記憶される各種データの一つとして、ウェハマップがある。
図4(A)は、典型的なウェハWの上面視の平面図、
図4(B)は、そのウェハWについてのウェハマップWMの一例を示す図である。
図4(A)に示すように、ウェハWにはダイシングによって独立化された複数のベアチップCが存在する。ベアチップCは、ウェハシート上においてXY方向にマトリクス配列された状態にある。これらベアチップCの各々は、XY座標系に基づくアドレスによって位置が管理される。
【0035】
ウェハマップWMは、ウェハWに備えられている各ベアチップCについて、所定の基準に基づき良品であるか不良品であるかの評価が記述されたファイルである。評価値は、ベアチップCのアドレスに各々対応付けて記述されている。
図4(B)において、「1」は良品のベアチップC、「2」は、不良品ではないがグレードの低いベアチップC、「3」は不良品のベアチップCであることを示している。なお、「n」は、当該アドレスにベアチップCが存在しないことを示している。制御部12は、取出部7によりウェハWからベアチップCをピックアップさせる際、ウェハマップWMを参照してピックアップのシーケンスを設定し、良品のベアチップCのみを順次ピックアップさせる。
【0036】
ここで重要となるのが、ウェハ保持テーブル5に現に載置されたウェハW(ベアチップC)の位置と、ウェハマップWMとの位置合わせである。ここで言う位置合わせとは、各々のベアチップCのウェハW上のアドレスとウェハマップWM上のアドレスとの、XY座標の位置合わせである。両座標が一致していないと、例えば「3」評価の不良品のベアチップCがピックアップされたり、「1」評価のベアチップCのみのピックアップを意図しているのに、「2」評価のベアチップCをピックアップしたりする不具合が発生する。上記の位置合わせのため、ウェハWに予め付与されたリファレンスマーク(リファレンス位置を示すマーク)が用いられることがある。
【0037】
図5は、リファレンスマークRmの一例を示す図である。
図5において、上側の図はウェハWの全体図であり、当該ウェハWに付記された枠部Aの拡大図が下側の図である。ウェハWに備えられているベアチップCのうち、特定の座標に位置しているベアチップ(任意のダイ)が基準ベアチップCsとして予め定められる。リファレンスマークRmは、この基準ベアチップCsに対してレーザーマーキング等の手段で付与される印字マークである。基準ベアチップCsは、ウェハWの作製時にパターン形成がなされない、ミラーダイとされる場合もある。ミラーダイにおいては、そのミラー面自体がリファレンスマークRmとなる。いずれに場合も、基準ベアチップCsは、当該ウェハWの撮影画像において他のベアチップCと識別可能な状態とされる。
【0038】
既述の通り、部品認識カメラ8は、ベアチップCのピックアップに先立ち、ウェハW(ベアチップC)の画像を撮影する。前記撮影により取得された画像データが画像処理部14で画像処理されることで、リファレンスマークRmがウェハWの撮影画像上で識別される。基準ベアチップCsのアドレスは既知であるので、これをウェハマップWMに当て嵌めることで、現にウェハ保持テーブル5に載置されたウェハW上のベアチップCのアドレスと、ウェハマップWMとの位置合わせを図ることができる。そして、制御部12は、リファレンスマークRmを基準として、ピックアップシーケンスにおける吸着初点のベアチップCの位置を認識し、取出部7に順次吸引動作を実行させる。
【0039】
しかしながら、リファレンスマークRmに異常が発生することがある。
図6(A)及び
図6(B)は、リファレンスマークRmの不具合の例を示す図である。
図6(A)は、基準ベアチップCsの「浮き」の不具合を示している。基準ベアチップCsを含むベアチップCはウェハシートに接着されているが、何らかの原因で基準ベアチップCsがウェハシートから浮き上がってしまう場合がある。この場合、基準ベアチップCsにリファレンスマークRmが正常に印字されていても、ウェハWの撮影画像上で識別されるリファレンスマークRmの位置は、基準ベアチップCsの真の位置からズレのある位置で認識されてしまう。
【0040】
図6(B)は、リファレンスマークRmの「印字ズレ」の不具合を示している。これは、リファレンスマークRmが基準ベアチップCsの中心に印字されていない場合である。この不具合は、ミラーダイの場合には生じないが、リファレンスマークRmをウェハWに事後的に印字するケースでは、レーザーマーキングのターゲットズレ等の原因で発生し得る。この場合においても、ウェハWの撮影画像上で識別されるリファレンスマークRmの位置は、基準ベアチップCsの真の位置からズレのある位置で認識されてしまう。
【0041】
上述の「浮き」や「印字ズレ」の程度が大きい場合、つまり基準ベアチップCsの真の位置と画像上のリファレンスマークRmの位置のズレが大きい場合、ウェハマップWMとウェハWのベアチップCとの位置合わせが正確に行えず、制御部12は吸着初点のベアチップCの位置を誤認識することが起こり得る。例えば、前記ズレが、ベアチップCの配列ピッチの1/2以上となっている場合、基準ベアチップCsの隣のベアチップCを、ウェハマップWM上においては基準ベアチップCsと認識する事象が生じ得る。この事象はマップズレと呼ばれ、マップズレが生じるとウェハマップWMに沿ったベアチップCのピックアップ作業を行うことができない。
【0042】
[第1実施形態]
上記の不具合の解消のため、本実施形態では、ベアチップCのピックアップ作業に先立って、ウェハWが固有に備える形状的特徴部を抽出する。そして、この形状的特徴部から導出される基準位置と、リファレンスマークRmとの位置関係から、リファレンスマークRmの位置異常を検出する。位置異常が検出された場合には、マップズレが生じた状態でのピックアップを防止するために、例えばアラームを発報させる。
【0043】
前記形状的特徴部としては、ウェハWが備える形状に由来する固有の形状であれば、特に制限はない。第1実施形態では、前記形状的特徴部として、ウェハWの結晶軸方向を示す表示形状を利用する例を示す。このような表示形状としては、ノッチ又はオリエンテーションフラットがある。これらは、ウェハWの結晶軸方向を示すものとして如何なるウェハWにも付設されている、形状が明確に現れる部分である。
【0044】
図7(A)は、ノッチNが付設されたウェハWLの平面図である。ノッチNは、ウェハWLの周縁に開口を有し、ウェハWLの径方向中心に向けて切り込まれたV字型、又はU字型の形状を備える切り欠き部分である。ノッチNは、主にウェハサイズが8〜12インチ程度の大口径のウェハWLに適用される、結晶軸方向の表示形状である。
図7(B)は、オリエンテーションフラットOFが付設されたウェハWSの平面図である。オリエンテーションフラットOFは、ウェハWSの円弧周縁の一部が切除され、直線部Waが形成された部分である。オリエンテーションフラットOFは、主に2〜6インチの小口径のウェハWSに適用される、結晶軸方向の表示形状である。
【0045】
図8は、第1実施形態の処理を実現するための主演算部18の機能ブロック図である。主演算部18は、所定のプログラムが実行されることで、ピックアップ制御部181、回転補正部182(補正部)、抽出制御部183、異常検知部184及び異常報知部185を機能的に具備するように動作する。
【0046】
ピックアップ制御部181は、取出部7によるベアチップCのピックアップ動作を制御する。具体的には、ピックアップ制御部181は、ウェハ保持テーブル5に現に載置されたウェハWの識別番号に関連付けて記憶部17に格納されているウェハマップWMを読み出し、ベアチップCのピックアップシーケンスを設定し、取出部7にピックアップ動作を実行させる。ピックアップ制御部181は、リファレンスマークRmが付与された基準ベアチップCsを基準として、取出部7に最初にピックアップさせるベアチップCを決定する。
【0047】
回転補正部182は、ウェハ保持テーブル5に搭載されたウェハWの回転方向のアライン処理を行う。回転補正部182は、部品認識カメラ8が撮像するウェハ保持テーブル5上のウェハWの撮影画像に基づき、例えばウェハWのダイシングラインを抽出し、所定の基準線に対する前記ダイシングラインのズレを示す回転角を求める。回転補正部182は、前記ズレが存在している場合には、そのズレに対応した回転角補正データを生成する処理を行う。
【0048】
抽出制御部183は、部品認識カメラ8によるウェハWの撮影画像を、画像処理部14が画像処理した画像データを取得する。抽出制御部183は、取得した画像データに基づいて、リファレンスマークRmとウェハWの形状的特徴部とを抽出する。第1実施形態では形状的特徴部はノッチN又はオリエンテーションフラットOFであり、これらの部位が例えばエッジ抽出処理によって画像上で特定される。さらに、抽出制御部183は、形状的特徴部に基づいて基準位置Pを導出する。
【0049】
異常検知部184は、ウェハWの画像から特定される基準位置Pの座標と、リファレンスマークRmの座標とを取得し、両者の実測位置関係を求める。また、異常検知部184は、記憶部17が予め記憶している基準位置Pの座標とリファレンスマークRmの座標とを読み出し、両者の位置関係である設定位置関係を取得する。基準位置P及びリファレンスマークRmは、ウェハWの既知の位置に定められるため、これらの座標を設定値として予め記憶部17に記憶させておくことができる。そして、異常検知部184は、前記実測位置関と、前記設定位置関係とを比較することにより、リファレンスマークRmが所定の位置に印字されているか否か、すなわちリファレンスマークRmの位置異常が存在するか否かを検出する処理を行う。
【0050】
異常報知部185は、異常検知部184がリファレンスマークRmの位置異常を検出したときに、部品実装装置100が備えるモニター(図略)に位置異常が発生している旨の警報メッセージを表示させる。警報メッセージは、例えば前記位置異常の程度が、ベアチップCの配列ピッチの1/2以上である場合に発報される設定とすることができる。これにより、ユーザに是正処理を促し、マップズレが生じ得る状態での部品実装装置100の運転を継続させないようにすることができる。警報メッセージを認識したユーザは、例えば、入力装置を用いて初回に吸着されるベアチップCのアドレスをティーチングする入力を行い、当該ウェハWからのベアチップCのピックアップを開始させる。
【0051】
図9は、ノッチNを有するウェハWLを示し、リファレンスマークRmの位置異常検知の第1実施形態を説明するための図である。
図9において、ウェハWLの全体図の下側には、リファレンスマークRmを含む枠部A1の拡大図、右側にはノッチNが形成されている枠部A2の拡大図を各々示している。
図5に基づいて上述した通り、ウェハWに備えられているベアチップCのうち、特定の座標に位置している基準ベアチップCsに、リファレンスマークRmが付されている。ノッチNは、ウェハWLの周縁の一部を除去するように形成されたU字型の切り欠きである。
【0052】
このようなウェハWLがウェハ収納部10からウェハ保持テーブル5に搬入されると、制御部12は部品認識カメラ8に当該ウェハWLの平面画像を撮影させる。当該撮影で取得された画像データは、制御部12の画像処理部14へ入力される。画像処理部14は、前記画像データに対して、例えば画像上のエッジを検出する処理を行い、ウェハWLの外形形状及びウェハWL上に表れている模様を抽出する。
【0053】
続いて抽出制御部183は、抽出されたウェハWLの外形形状データに対し、例えばノッチNに相当するテンプレートを適用する処理を行い、ウェハWLの形状的特徴部であるノッチNを抽出する。さらに、ノッチNの形状に基づき、基準位置Pが導出される。具体的には、抽出制御部183は、ウェハWLの外形形状データをXY座標系に組み入れ、ノッチNを区画している切り欠きの、互いに対向する2つの開口縁N1、N2の座標を求める。そして、開口縁N1、N2の中間点が基準位置Pとして導出される。この基準位置Pの座標を(X0、Y0)とする。
【0054】
また、抽出制御部183は、抽出されたウェハWLの模様データに対し、例えばリファレンスマークRmの形状(
図9では縦長の楕円)に相当するテンプレートを適用する処理を行い、リファレンスマークRmを抽出する。さらに、抽出制御部183は、楕円のリファレンスマークRmの中心を求める処理を行う。このリファレンスマークRmの中心座標を(X1、Y1)とする。
【0055】
図10には、基準位置PとリファレンスマークRmとの位置関係が示されている。また、
図10には、基準位置Pの座標(X0、Y0)からリファレンスマークRmの中心座標(X1、Y1)に向かう方向ベクトルV11が示されている。さらに、
図10には、初回吸着ベアチップC1が示されている。初回吸着ベアチップC1は、ウェハマップWMにおいて、最初に吸着される指定が与えられているベアチップである。初回吸着ベアチップC1の中心座標は(X2、Y2)とする。初回吸着ベアチップC1の位置は、リファレンスマークRmを基準として認識される。
図10には、リファレンスマークRmの中心座標(X1、Y1)から初回吸着ベアチップC1の中心座標(X2、Y2)に向かう方向ベクトルV2も示されている。初回吸着ベアチップC1の座標が認識できれば、当該初回吸着ベアチップC1と他のベアチップCの相対的な位置関係は既知であるので、ピックアップ制御部181は、取出部7に以降のベアチップCのピックアップ動作を正確に実行させることができる。
【0056】
その後、異常検知部184は、抽出制御部183が求めた基準位置Pの座標(X0、Y0)と、リファレンスマークRmの中心座標(X1、Y1)とを取得し、両者の実測位置関係である方向ベクトルV11を求める。そして、異常検知部184は、方向ベクトルV11と、記憶部17に記憶されている基準位置PとリファレンスマークRmとの位置関係から得られる方向ベクトル(設定位置関係)とを比較する。この比較処理により、リファレンスマークRmが所定の位置に印字されているか否かが判定される。異常検知部184は、両方向ベクトルが一致乃至は略一致していれば、リファレンスマークRmの位置異常が存在しないと判定する。この場合、リファレンスマークRmの中心座標(X1、Y1)を起点として、方向ベクトルV2の指す位置に存在するベアチップCが初回吸着ベアチップC1と認識され、ピックアップ作業が開始される。
【0057】
一方、両方向ベクトルが、ベアチップCの配列ピッチに換算して、当該ピッチの1/2以上のズレが存在していれば、異常検知部184は、リファレンスマークRmの位置異常が存在すると判定する。この場合、画像上で特定されたリファレンスマークRmを起点とする方向ベクトルV2の指す位置には、初回吸着ベアチップC1ではなく、その周辺のベアチップCが存在している可能性が高くなる。よって、異常検知部184は、ピックアップ作業を開始させず、異常報知部185にリファレンスマークRmの位置異常を報知させるものである。
【0058】
図11は、第1実施形態の変形例を説明するための図である。
図11に示すウェハは、オリエンテーションフラットOFを有するウェハWSである。ウェハWSは、その円弧周縁の一部が切り欠かれてなる直線部Waを有している。当該ウェハWSにおいて、把握し易い形状的特徴部は、直線部Waの両端と、ウェハWSの円弧周縁とが交差する角部P11及びP12である。
【0059】
このようなウェハWSの場合、抽出制御部183は、先ず当該ウェハWSの画像データに基づいて角部P11及びP12の位置を特定し、その座標を求める。次いで、抽出制御部183は、一方の角部P11と他方の角部P12との中間点、つまり直線部Waの中間点を基準位置Pとして導出する。さらに、抽出制御部183は、リファレンスマークRmを抽出すると共に、その中心の座標を求める。
【0060】
以降の処理は、上記と同様である。すなわち、異常検知部184が基準位置PとリファレンスマークRmの中心座標との実測位置関係である方向ベクトルV12を求める。
図11には、その方向ベクトルV12が示されている。そして、異常検知部184は、この方向ベクトルV12と、記憶部17に記憶されている基準位置PからリファレンスマークRmへの方向ベクトルとを比較し、リファレンスマークRmが所定の位置に印字されているか否かを判定する。リファレンスマークRmの位置異常が存在しない場合、リファレンスマークRmの中心座標を起点として、方向ベクトルV2の指す位置に存在するベアチップCが初回吸着ベアチップC1と認識され、ピックアップ作業が開始される。なお、本変形例において、ウェハWSの回転補正(
図15に基づき後述する)が行われていれば、角部P11又はP12の位置自体を基準位置Pとしても良い。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態では、ノッチNやオリエンテーションフラットOFに依存せずに、基準位置Pを設定する例を示す。
図12は、リファレンスマークRmの位置異常検知の第2実施形態を説明するための図である。
図12に示すように、一般にウェハWは円形の形状を有する。第2実施形態では、ウェハの周縁の円弧形状自体を、形状的特徴部と扱う。このためウェハWは、ノッチN、オリエンテーションフラットOF、或いは他の結晶軸方向を示す他の表示部を有するいずれのウェハであっても良い。
【0062】
部品認識カメラ8によりウェハWの平面画像データが取得されると、画像処理部14は、エッジ検出処理を行ってウェハWの外形形状及びウェハWL上に表れている模様を抽出する。続いて抽出制御部183は、抽出されたウェハWの外形形状データに基づいて、ウェハWの外周縁の円弧頂点を求める。
図12には、X方向及びY方向の4つの円弧頂点P21、P22、P23、P24が示されている。
【0063】
第2実施形態では、基準位置Pは、ウェハWの円弧形状から導出されるウェハの中心位置とされる。すなわち、抽出制御部183は、4つの円弧頂点P21、P22、P23、P24の座標から、円形のウェハWの中心位置の座標を求める。この中心位置が、基準位置Pとされる。なお、求める円弧頂点は、3つとしても良い。また、抽出制御部183は、リファレンスマークRmを抽出すると共に、その中心の座標を求める。
【0064】
以降の処理は、第1実施形態と同様である。すなわち、異常検知部184が基準位置PとリファレンスマークRmの中心座標との実測位置関係である方向ベクトルV13を求める。
図11には、その方向ベクトルV13が示されている。そして、異常検知部184は、この方向ベクトルV13と、記憶部17に記憶されている基準位置PからリファレンスマークRmへの方向ベクトルとを比較し、リファレンスマークRmが所定の位置に印字されているか否かを判定する。リファレンスマークRmの位置異常が存在しない場合、リファレンスマークRmの中心座標を起点として、方向ベクトルV2の指す位置に存在するベアチップCが初回吸着ベアチップC1と認識され、ピックアップ作業が開始される。リファレンスマークRmの位置異常が存在する場合は、異常報知部185がリファレンスマークRmの位置異常を報知する。
【0065】
図13は、第2実施形態の変形例を説明するための図である。第2実施形態において、ウェハWSの回転補正が行われていれば、ウェハWの中心位置を求める処理を省くことができる。
図13には3つの円弧頂点P31、P32、P33が示されている。ウェハWSの回転補正が行なわれると、円弧頂点P31、P32、P33の位置をXY座標系の所定位置に配置することができる。従って、円弧頂点P31、P32、P33のいずれか一つの座標から、リファレンスマークRmに向かう方向ベクトルを、実測位置関係として求めれば足りる。
【0066】
図13では、円弧頂点P33が基準位置Pと扱われ、この基準位置PとリファレンスマークRmの中心座標との実測位置関係である方向ベクトルV14が求められている例を示している。異常検知部184は、この方向ベクトルV14と、記憶部17に記憶されている円弧頂点P33からリファレンスマークRmへの方向ベクトルとを比較し、リファレンスマークRmが所定の位置に印字されているか否かを判定するものである。以上の第2実施形態によれば、ノッチNやオリエンテーションフラットOF等に依存せずに、基準位置を設定することができる。
【0067】
[部品実装のフロー]
続いて、
図14のフローチャートに基づいて、部品実装装置100の動作を説明する。図略の入力装置から制御部12に部品実装開始の指示が与えられると、制御部12はウェハWの搬入作業を実行させる(ステップS1)。具体的には制御部12は、軸制御部13を制御して駆動モータ53を動作させ、ウェハ保持テーブル5をウェハ収納部10の近傍のウェハ受け取り位置へ移動させる。ウェハ収納部10の所定のウェハWがウェハ保持テーブル5に載置されると、制御部12は、そのウェハ保持テーブル5を部品取出作業位置へ向けて移動させる。
【0068】
ウェハWが部品取出作業位置へ向かう際、或いは該位置へ到着後、制御部12は、部品認識カメラ8にウェハ保持テーブル5上のウェハWの画像を撮影させる(ステップS2)。ウェハWの画像データは、画像処理部14に取り込まれ、所定の画像処理が施される。通常、ウェハWがウェハ保持テーブル5に載置された状態では、部品実装装置100のXY座標と、ウェハWのXY方向(ダイシングライン)とは一致していない。つまり、部品実装装置100のX軸に対して、ウェハWのX方向は回転角θだけ回転した状態にある。従って制御部12は、この回転ズレを解消するために、ウェハWの撮影画像に基づいて回転角θの補正処理を実行する(ステップS3)。
【0069】
図15は、回転角補正処理を説明するための図である。制御部12の回転補正部182は、画像処理部14による処理後のウェハWの画像データに基づき、予め定められた複数のキャリブレーションチップCAを検出する。複数のキャリブレーションチップCAは、一つのダイシングライン上に沿って所定のピッチL1を置いて、所定のキャリブレーション距離L2の範囲内に並ぶベアチップである。従って、複数のキャリブレーションチップCAを画像上で認識することで、ダイシングラインの方向を認識することができる。
【0070】
回転補正部182は、認識されたダイシングラインの、部品実装装置100のX軸に対する傾きを求め、回転角θを取得する。回転補正部182は、この回転角θを回転角補正データに置換し、これを記憶部17に記憶させる。このような回転補正部182の処理により、基準位置Pが所定位置に存在するように校正される。なお、ウェハ保持テーブル5を回転角θだけ実際に回転させて、回転ズレを現実的に解消させても良い。なお、ウェハWの画像データからキャリブレーションチップCAを抽出するのではなく、ダイシングラインを直接検出することで前記回転角θを検出するようにしても良い。或いは、予め定義されている2点のユニークなベアチップCを認識することで、前記回転角θを検出しても良い。
【0071】
続いて、制御部12の抽出制御部183は、上述の第1実施形態又は第2実施形態で説明した、ウェハWの形状的特徴を抽出する処理を行う(ステップS4)。さらに、抽出制御部183は、得られた形状的特徴に基づいて基準位置Pを求め、当該基準位置Pの座標を導出する(ステップS5)。また、抽出制御部183は、リファレンスマークRmの画像上における位置も認識し、当該リファレンスマークRmの座標も特定する(ステップS6)。ステップS5及びS6で取得された基準位置Pの座標及びリファレンスマークRmの座標は、実測位置関係の位置データとして、異常検知部184に与えられる。
【0072】
その後、異常検知部184は、記憶部17に格納されている基準位置Pの座標とリファレンスマークRmの座標とを読み出し、両者の位置関係である設定位置関係を取得する。そして、異常検知部184は、この設定位置関係と、先に与えられた前記実測位置関係とを比較する処理を行う(ステップS7)。
【0073】
ステップS7の比較結果に基づいて、異常検知部184は、リファレンスマークRmが所定の位置に印字されているか否か、すなわちリファレンスマークRmの位置異常が存在するか否かを判定する(ステップS8)。リファレンスマークRmの位置異常が検出された場合、例えば前記実測位置関係のリファレンスマークRmの座標が、前記設定位置関係のリファレンスマークRmの座標に比較して、ベアチップCの配列ピッチの1/2以上のズレが存在している場合(ステップS8でYES)、異常報知部185が位置異常の発生を報知する(ステップS9)。
【0074】
一方、リファレンスマークRmの位置異常が検出されなかった場合(ステップS8でNO)、引き続きベアチップCのプリント基板20への実装動作が実行される。すなわち、ピックアップ制御部181が記憶部17からウェハマップWMを読み出してピックアップシーケンスを設定し(ステップS10)、取出部7にベアチップCのピックアップ動作を実行させる(ステップS11)。具体的には、ピックアップ制御部181は、軸制御部13を制御して突上げヘッド駆動モータ63を動作させ、突上げヘッド61に指定されたベアチップCの突上げを実行させる。そして、ウェハヘッド昇降モータ7i等を動作させて、取出部7(ウェハヘッド7a〜7d)に、突上げ部6により突上げられたベアチップCを吸着させる動作、及び、ウェハヘッド回動モータ7hを動作させて、ウェハヘッド7a〜7dに吸着されたベアチップCをフリップさせる動作が実行される。
【0075】
その後、ウェハヘッド7a〜7dから、所定の受け渡し位置において、部品実装用ヘッド411、412にベアチップCが吸着される。そして、部品実装用ヘッド411、412に吸着された状態で、実装部4が図略のフラックス供給装置の上方に移動され、ベアチップCのバンプ形成面にフラックスが塗布される(ステップS12)。次いで、実装部4が固定カメラ9の上空を通過するように移動され、ベアチップCのバンプ形成面が撮影され、当該バンプ形成面の不良判定や吸着位置ズレの認識が行われる(ステップS13)。この撮影の後、実装部4がコンベア2に保持されたプリント基板20の上空に移動され、吸着されているベアチップCがプリント基板20の所定位置に実装される(ステップS14)。
【0076】
以上説明した本実施形態に係る部品実装装置100(ダイピックアップ装置D)によれば、リファレンスマークRmの位置ズレが生じたとしても、正確に初回吸着ベアチップC1(ダイ)の位置を特定することができる。従って、リファレンスマークRmの位置ズレの発生の有無に拘わらず、ウェハマップWMに沿ったピックアップシーケンスにて、ウェハWからベアチップCを正確に取り出すことができる部品実装装置100を提供することができる。
【0077】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0078】
本発明の一局面に係るダイピックアップ装置は、複数のダイにダイシングされたウェハであって、任意のダイにリファレンス位置を示すマークが付与されたウェハの画像を撮影する撮像装置と、前記ウェハ上の既知の基準位置と、前記ウェハの前記マークとの位置関係である設定位置関係を予め記憶する記憶部と、撮影された前記ウェハの画像を画像処理して、前記マークと前記ウェハの形状的特徴部とを抽出し、前記形状的特徴部に基づいて前記基準位置を導出する抽出処理部と、前記ウェハの画像から特定される前記基準位置と前記マークとの実測位置関係と、前記記憶部が記憶する前記設定位置関係とを比較することにより、前記マークの位置異常を検出する異常検知部と、を備える。
【0079】
このダイピックアップ装置によれば、抽出処理部によりウェハの形状的特徴部が抽出される。形状的特徴部は、ウェハが備える形状に由来する固有の形状であり、いかなるウェハも備えている。当然に、その形状的特徴部から導出される基準位置は、予め把握することができ、しかも不変である。従って、リファレンス位置を示すマークが付与されるべき位置と前記基準位置との設定位置関係を、予め記憶部に記憶させておくことにより、ウェハ上において前記マークが存在すべき設定位置が特定される。それゆえ、ウェハの画像から特定される前記マークの実測位置関係と前記設定位置関係とを比較することで、前記マークの位置異常を検出することができる。
【0080】
上記のダイピックアップ装置において、前記形状的特徴部は、前記ウェハの結晶軸方向を示すノッチであることが望ましい。或いは、前記形状的特徴部は、前記ウェハの結晶軸方向を示すオリエンテーションフラットであることが望ましい。
【0081】
前記ノッチ又は前記オリエンテーションフラットは、ウェハの結晶軸方向を示すものとして如何なるウェハにも付設されている、形状が明確に現れる部分である。従って、これらを前記形状的特徴部として扱うことが望ましい。基準位置は、例えば、ノッチの形状から導出される当該ノッチの中心位置、又はオリエンテーションフラットの直線部の両端位置から導出される前記直線部の中心位置とすることができる。
【0082】
上記のダイピックアップ装置において、前記ウェハが円形の形状を有し、前記形状的特徴部は、前記ウェハの周縁の円弧形状であることが望ましい。この場合、前記基準位置は、前記円弧形状から導出される前記ウェハの中心位置とすることができる。
【0083】
ウェハの周縁の円弧形状は、例えば円弧の頂点を特定することによって形状的特徴部たり得る。また、円弧を認識し当該円弧上の複数点を特定することで、円形のウェハの中心を特定することができる。従って、上記ダイピックアップ装置によれば、ノッチやオリエンテーションフラット等に依存せずに、前記基準位置を設定することができる。
【0084】
上記のダイピックアップ装置において、前記ウェハが搭載される保持テーブルと、前記保持テーブルに搭載された前記ウェハの、所定の基準線に対するズレを示す回転角を求め、前記ズレが存在している場合に回転角補正データを生成する処理を行う補正部と、をさらに備え、前記補正部の処理により、前記基準位置が校正されることが望ましい。
【0085】
一般に、前記保持テーブルにウェハが搭載される際、厳格な位置決めを伴って前記搭載が行われるわけではない。このため、保持テーブルに搭載されたウェハの撮影画像上において、形状的特徴部の座標は、規定の座標とは異なった状態であることが殆どである。従って、前記回転角補正データを用いて前記基準位置の校正を行って形状的特徴部を規定の座標位置に整合させることで、その後のマークの位置異常を検出する処理を的確に行わせることができる。
【0086】
上記のダイピックアップ装置において、前記ダイをピックアップするヘッドと、前記ヘッドの動作を制御するピックアップ制御部と、をさらに備え、前記記憶部には、前記ウェハが備えるダイの各々の評価を示すウェハマップがさらに記憶され、前記ピックアップ制御部は、前記マークが付与されたダイを基準として、前記ヘッドに最初にピックアップさせるダイを決定することが望ましい。
【0087】
このダイピックアップ装置によれば、ヘッドに、ウェハマップに従った正確なダイのピックアップを実行させることができる。
【0088】
以上説明した通り、本発明によれば、リファレンスマークの位置ズレが生じたとしても、正確にダイの位置を特定することができる。従って、ターゲットとするダイを正確に取り出すことができるダイピックアップ装置を提供することができる。