特許第6522807号(P6522807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6522807ベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522807
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20190520BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190520BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190520BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C07D498/04 116
   C07D498/04CSP
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61K31/553
【請求項の数】21
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2017-567339(P2017-567339)
(86)(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公表番号】特表2018-519304(P2018-519304A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016065496
(87)【国際公開番号】WO2017001658
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2018年2月22日
(31)【優先権主張番号】62/188,018
(32)【優先日】2015年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/205,127
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブローン, マリー−ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ハナン, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】スタベン, スティーヴン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】エリオット, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ヒールド, ロバート アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マクレオウド, カラム
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−505917(JP,A)
【文献】 特表2013−505920(JP,A)
【文献】 特表2015−508096(JP,A)
【文献】 特表2010−512338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:

から選択される化合物、並びにその立体異性体、互変異性体及び薬学的に許容される塩[上式中:
は、-CH、-CHCH、-CH(CH、-CHF、-CHF、及び-CFから選択され;
Xは、
{上式中、波線は結合部位を示す}から選択され、
は、H、C-Cアルキル、シクロプロピル、及びシクロブチルから選択され、F、-OCH又は-OHで置換されていてもよい]。
【請求項2】
式Ia:
Ia
の、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式Ib:
Ib
の、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が-CHF及び-CHFから選択される、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
が-CHである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
以下から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物:
(S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド;
(S)−1−(2−((R)−4−メチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド;
(S)−1−(2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド;
(S)−2−((2−((R)−4−エチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド;
(S)−2−((2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド;
(S)−1−(2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド;
(S)−2−((2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド;
(S)−1−(2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド;及び
(S)−2−((2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される担体、滑剤、希釈剤又は賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体、滑剤、希釈剤又は賦形剤が二酸化ケイ素、粉末セルロース、微結晶性セルロース、ステアリン酸金属塩、アルミノケイ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、コーンスターチ、炭酸マグネシウム、アスベストフリータルク、ステアロウェットC、スターチ、スターチ1500、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体、滑剤、希釈剤又は賦形剤と請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を組み合わせることを含む、薬学的組成物を製造するための方法。
【請求項10】
求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の治療的有効量を含、がんを治療するための医薬であって、がんが乳がん及び非小細胞肺がんから選択される、医薬
【請求項11】
5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、コビメチニブ、イパタセルチブ、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、GDC−0810、デキサメタゾン、パルボシクリブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、トラスツズマブ、及びレトロゾールから選択される追加の治療剤がさらに投与される、請求項10に記載の医薬
【請求項12】
がんが乳がんである、請求項10又は11に記載の医薬
【請求項13】
乳がんがエストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんである、請求項12に記載の医薬
【請求項14】
乳がんサブタイプがベーサル(Basal)型又はルミナル(Luminal)型である、請求項12に記載の医薬
【請求項15】
がんが、E542K、E545K、Q546R、H1047L、及びH1047Rから選択されるPIK3CA変異体を発現する、請求項12に記載の医薬
【請求項16】
がんがPTEN変異体を発現する、請求項12に記載の医薬
【請求項17】
がんがHER2陽性である、請求項12に記載の医薬
【請求項18】
患者がHER2陰性、ER(エストロゲン受容体)陰性、及びPR(プロゲステロン受容体)陰性である、請求項12に記載の医薬
【請求項19】
a) 請求項7に記載の薬学的組成物;及び
b) 乳がんの治療的処置における使用のための指示書
を含む、乳がんの治療的処置のためのキット。
【請求項20】
がんが乳がん及び非小細胞肺がんから選択される、患者におけるがんを治療するための医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
がんが乳がん及び非小細胞肺がんから選択される、患者におけるがんを治療するための使用のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
37 CFR 1.53(b)に基づいて出願された本非仮特許出願は、参照により全体が本明細書に援用される2015年7月2日出願の米国仮出願第62/188018号及び2015年8月14日出願の同第62/205127号の米国特許法119条(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、がんなどの過剰増殖性障害に対する活性を有するベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物に関する。本発明はまた、哺乳動物細胞のin vitro、in situ及びin vivoでの診断若しくは治療のための、又は関連する病的状態のための化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)/Aktシグナル伝達経路のアップレギュレーションは、殆どのがんにおいて共通する特徴である(Yuan and Cantley (2008) Oncogene 27:5497-510)。本経路における遺伝子偏差は、多くのヒトのがんにおいて検出されており(Osaka et al(2004)Apoptosis 9:667-76)、主に細胞の増殖、遊走及び生存を刺激するように作用する。経路の活性化は、p110α(アルファ)PI3KアイソフォームをコードするPIK3CA遺伝子の点突然変異又は増幅を活性化した後に起こる(Hennessy et al (2005) Nat. Rev. Drug Discov. 4 (988-1004)。PI3Kと反対の機能を有するホスファターゼである腫瘍抑制因子PTEN,内での遺伝子欠失又は機能喪失突然変異も、PI3K経路のシグナル伝達を増加させる(Zhang and Yu (2010) Clin. Cancer Res. 16 (4325-30)。これらの異常は、Akt及びmTORなどのキナーゼを介した下流のシグナル伝達の増加をもたらし、PI3K経路の活性の増加は、がん治療に対する耐性の特徴として提案されている(Opel et al (2007) Cancer Res. 67:735-45; Razis et al (2011) Breast Cancer Res. Treat. 128 (447-56)。
【0004】
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)は、リンパ腫の重要な生存及び増殖シグナルに対する主要なシグナル伝達ノードであり、ホスファターゼPTENの活性に反する。ホスホイノシチド3−依存性キナーゼ(PI3K)シグナル伝達経路は、ホルモン受容体陽性乳がん(HR+BC)において最も調節不全の経路である。PI3K経路はまた、攻撃性リンパ腫においても調節不全である(Abubaker (2007) Leukemia 21:2368-2370)。DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)がんの8パーセントは、PI3CA(ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ触媒サブユニットアルファ)ミスセンス突然変異を有し、37%は免疫組織化学検査でPTEN陰性である。
【0005】
ホスファチジルイノシトールは、細胞膜に見出されるいくつかのリン脂質の1つであり、細胞内シグナル伝達に関与する。3’−リン酸化ホスホイノシチドを介する細胞シグナル伝達は、種々の細胞過程、例えば悪性形質転換、増殖因子シグナル伝達、炎症及び免疫に関与している(Rameh et al (1999) J. Biol Chem. 274 (8347-8350)。これらのリン酸化シグナル伝達産物の生成に関与する酵素であるホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−キナーゼ又はPI3Kとも呼ばれる)は、ウイルス性癌タンパク質、並びにイノシトール環の3’−ヒドロキシルにおいてホスファチジルイノシトール(PI)及びそのリン酸化誘導体をリン酸化する増殖因子受容体チロシンキナーゼと関連する活性として当初同定された(Panayotou et al (1992) Trends Cell Biol 2:358-60)。ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環の3−ヒドロキシル残基において脂質をリン酸化する脂質キナーゼである(Whitman et al (1988) Nature, 332:664)。PI3−キナーゼによって生成される3−リン酸化リン脂質(PIP3)は、例えばAkt及びPDK1(ホスホイノシチド依存性キナーゼ−1)のように、キナーゼに脂質結合ドメイン(プレクストリン相同(PH)領域を含む)を補充するセカンドメッセンジャーとして作用する(Vivanco et al (2002) Nature Rev. Cancer 2:489; Phillips et al (1998) Cancer 83:41)。
【0006】
PI3キナーゼファミリーは、構造的相同性によって細分類された少なくとも15種の異なる酵素を含み、配列相同性及び酵素触媒作用によって形成される産物に基づいて3つのクラスに分けられる。クラスIのPI3キナーゼは、2つのサブユニット:110kdの触媒サブユニット及び85kdの調節サブユニットからなる。調節サブユニットはSH2ドメインを含有し、チロシンキナーゼ活性を有する増殖因子受容体又は癌遺伝子産物によってリン酸化されたチロシン残基に結合し、それによってその脂質基質をリン酸化するp110触媒サブユニットのPI3K活性を誘導する。クラスIのPI3キナーゼは、サイトカイン、インテグリン、増殖因子及び免疫受容体の下流の重要なシグナル伝達事象に関与しており、これは、この経路の制御が重要な治療効果、例えば細胞増殖及び発癌の調節などをもたらし得ることを示している。クラスIのPI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール−4−リン酸、及びホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(PIP2)をリン酸化し、ホスファチジルイノシトール−3−リン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸、及びホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸をそれぞれ生成させることができる。クラスIIのPI3Kは、PI及びホスファチジルイノシトール−4−リン酸をリン酸化する。クラスIIIのPI3Kは、PIのみをリン酸化することができる。がんにおける鍵となるPI3キナーゼアイソフォームは、p110αにおける再発性の発がん性突然変異によって示されるクラスIのPI3キナーゼ、p110αである(Samuels et al (2004) Science 304:554;米国特許第5824492号;米国特許第5846824号;米国特許第6274327号)。他のアイソフォームは、がんにおいて重要であり得、心臓血管系及び免疫炎症性疾患にも関与しており(Workman P (2004) Biochem Soc Trans 32:393-396; Patel等(2004) Proc. Am. Assoc. of Cancer Res. (Abstract LB-247) 95th Annual Meeting, March 27-31, Orlando, Florida, USA; Ahmadi K and Waterfield MD (2004) 「Phosphoinositide 3-Kinase: Function and Mechanisms」 Encyclopedia of Biological Chemistry (Lennarz W J, Lane M D編) Elsevier/Academic Press)、p110α(アルファ)の発がん性突然変異は、結腸、乳房、脳、肝臓、卵巣、胃、肺及び頭頸部の固形腫瘍においても有意な頻度で見出されている。ホルモン受容体陽性(HR+)乳がん腫瘍の約35−40%は、PIK3CA変異を有する。PTEN異常は、神経膠芽腫、メラノーマ、前立腺、子宮内膜、卵巣、乳房、肺、頭頸部、肝細胞及び甲状腺のがんにおいて見出される。
【0007】
PI3キナーゼ(PI3K)は、p85及びp110サブユニットからなるヘテロ二量体である(Otsu et al (1991) Cell 65:91-104; Hiles et al (1992) Cell 70:419-29)。各々異なる110kDaの触媒サブユニット及び調節サブユニットからなるPI3Kα(アルファ)、β(ベータ)、δ(デルタ)及びγ(ガンマ)と称される、4つの異なるクラスIのPI3Kが同定されている。触媒サブユニットの3つ、すなわちp110アルファ、p110ベータ及びp110デルタは各々、同じ調節サブユニットp85と相互作用する一方、p110ガンマは、異なる調節サブユニットp101と相互作用する。ヒト細胞及び組織におけるこれらのPI3Kの各々の発現パターンは、別々である。PI3Kアルファ、ベータ及びデルタサブタイプの各々において、p85サブユニットがそのSH2ドメインと標的タンパク質中のリン酸化チロシン残基(適切な配列構成中に存在する)との相互作用によって原形質膜にPI3キナーゼを局在化するように作用する(Rameh et al (1995) Cell, 83:821-30; Volinia et al (1992) Oncogene, 7:789-93)。
【0008】
PI3キナーゼ/Akt/PTEN経路はがん薬開発のための魅力的な標的である。なぜなら、そのような薬剤は、細胞増殖を阻害すること、がん細胞の生存性及び化学療法抵抗性を付与する間質細胞からのシグナルを抑制すること、アポトーシスの抑制を逆転させてがん細胞の細胞傷害性剤に対する本来備わっている抵抗性を克服することが予期されるであろうからである。PI3Kは、PI3Kのp110触媒サブユニットにおける突然変異の活性化、腫瘍抑制因子PTENの消失のみならず、受容体チロシンキナーゼシグナル伝達を介して、又はAKTにおける稀な活性化突然変異を介して活性化される。
【0009】
2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパンアミドと称されるタセリシブ(GDC−0032、Roche RG7604、CAS登録番号1282512−48−4、Genentech Inc.)は、強力なPI3K活性を有し(国際公開第2011/036280号;米国特許第8242104号;米国特許第8343955号)、局所進行性又は転移性固形腫瘍を有する患者において研究が進められている。タセリシブ(GDC−0032)は、アルファサブユニットに対して、ベータに比べて31倍選択性が高いPI3K触媒サブユニットのベータアイソフォームスペアリング阻害剤(sparing inhibitor)である。タセリシブは、野生型PI3Kαよりも変異型PI3Kαアイソフォームに対してより高い選択性を示す(Olivero AG et al, AACR 2013. Abstract DDT02-01)。タセリシブは現在、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性転移性乳がん(mBC)及び非小細胞肺がん(NSCLC)を有する患者のための治療法として開発されている。単剤タセリシブを用いた第Ia相試験では、登録患者34名中6名において部分応答(PR)が観察された。PIK3CA変異体腫瘍を有する患者において、全6応答が観察され(Juric D. et al. AACR 2013)、これは、タセリシブで治療された患者からのPIK3CA変異状態を決定する必要があることを示している。
【0010】
PI3K阻害剤を用いた最近の臨床データは、PI3Kデルタ活性が胃腸性毒性の原因であることを示唆している(Akinleye等の「Phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K) inhibitors as cancer therapeutics」 Journal of Hematology & Oncology 2013, 6:88-104;C. Saura等の「Phase Ib Study of the PI3K Inhibitor Taselisib (GDC-0032) in Combination with Letrozole in Patients with Hormone Receptor-Positive Advanced Breast Cancer」 San Antonio Breast Cancer Symposium - December 12, 2014, PD5-2;Lopez等の「Taselisib, a selective inhibitor of PIK3CA, is highly effective on PIK3CA-mutated and HER2/neu amplified uterine serous carcinoma in vitro and in vivo」 Gynecologic Oncology(2014))。
【0011】
イデラリシブ(GS−1101、CAL−101、ZYDELIG(登録商標)、Gilead Sciences Inc.、CAS登録番号870281−82−6、5−フルオロ−3−フェニル−2−[(1S)−1−(7H−プリン−6−イルアミノ)プロピル]−4(3H)−キナゾリノン)は、選択的PI3Kδ(デルタ)阻害剤であり、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療用に承認されている(米国特許第6800620号;米国特許第6949535号;米国特許第8138195号;米国特許第8492389号;米国特許第8637533号;米国特許第8865730号;米国特許第8980901号;再発行特許(RE)第44599号;同第44638号)。下痢及び大腸炎は、イデラリシブ治療後に報告された最も一般的な有害事象に含まれる(Brown等の「Idelalisib, an inhibitor of phosphatidylinositol 3-kinase p110d, for relapsed/refractory chronic lymphocytic leukemia」(2014) Blood 123(22):3390-3397; Zydelig(登録商標) Prescribing Information 2014; Zydelig(登録商標) REMS Fact Sheet)。イデレラリシブによる治療後に観察される有意なGI毒性は、PI3Kδ (デルタ)の阻害が胃腸毒性の原因であるという仮説と一致する。
【0012】
がんを治療するのに有用な、PI3Kαのさらなる調節剤、特に、非変異型PI3Kα発現細胞よりも変異型PI3Kα発現腫瘍に対して選択的であるPI3Kαの阻害剤が必要とされている。PI3Kβ、PI3Kδ及びPI3KγアイソフォームよりもPI3Kαアイソフォームを選択的に阻害するこのような薬剤が特に必要とされており、これは、治療ウインドウの拡大をもたらすことが期待できる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は概して、PI3Kα(アルファ)アイソフォームの変異型を調節することにおいて選択活性を有するベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物であって、式Iの構造:

を有する化合物、並びにその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び薬学的に許容される塩に関する。様々な置換基が本明細書において定義される。
【0014】
本発明の別の態様は、式(I)のベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物と薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤とを含む薬学的組成物である。
【0015】
本発明の別の態様は、がんを有する患者のがんを治療する方法であって、前記患者に治療有効量の式(I)のベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物iを投与することを含む方法である。
【0016】
本発明の別の態様は、乳がんの治療的処置のためのキットであって、
a) 式Iのベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物;及び
b) 乳がんの治療的処置における使用のための指示書
を含むキットである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A-B】A)タセリシブ(GDC−0032)及びB)化合物106を用いたPI3Kα(アルファ)のX線共結晶構造を示す。
図2A-B】A)化合物102及びB)化合物103での処置後のマウスにおけるKPL4腫瘍増殖の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の特定の実施態様に関する言及がここで詳細になされる。その実施態様の例は、添付の構造及び式において示される。本発明は、列挙された実施態様と併せて記載されるが、本発明をそれらの実施態様に限定することは意図されない。むしろ、本発明は、すべての代替形、改変形、等価物を網羅することが意図され、これらは特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に包含され得る。当業者は、本明細書に記載の方法及び物質と類似又は等価である多くの方法及び物質を認識するであろうし、それらは本発明の実施に使用可能であろう。本発明は、記載されている方法及び物質に決して限定されない。一又は複数の引用文献、特許及び類似物質が、限定されないが、本願の用語の定義、用法、説明されている技術などと相違又は矛盾がある場合、本願が優先される。特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法及び物質と類似又は等価である方法及び物質を本発明の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び物質を以下に記載する。本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により援用される。本出願に使用される命名法は、別段の記載がない限り、IUPACの体系的命名法に基づいている。
【0019】
定義:
置換基の数を示す場合、「1以上の」という用語は、1つの置換基から可能な限りの数の置換までの範囲、すなわち置換基による水素1個の置換からすべての水素の置換までをいう。「置換基」という用語は、親分子上の水素原子を置き換える原子又は原子群を意味する。「置換されている(substituted)」という用語は、特定の基が1以上の置換基を有することを言う。任意の基が複数の置換基を有することができ、かつ、種々の可能な置換基が提供される場合、置換基は独立に選択され、同じである必要はない。「無置換の(unsubstituted)」という用語は、特定の基が置換基を有しないことを意味する。「任意選択的に置換され(optionally substituted)」という用語は、特定の基が無置換であるか、又は可能な置換基の群から独立に選択される1以上の置換基で置換されていることを意味する。置換基の数を示す場合、「1以上の」という用語は、1つの置換基から可能な限りの数の置換まで、すなわち置換基による水素1個の置換からすべての水素の置換までを意味する。
【0020】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1から12個の炭素原子(C-C12)の飽和直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を指し、アルキル基は独立に、以下に記載の1以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい。別の実施態様では、アルキル基は、1から8個の炭素原子(C-C)又は1から6個の炭素原子(C-C)である。アルキル基の例には、限定されないが、メチル(Me、−CH)、エチル(Et、−CHCH)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−1−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、2−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CH、1−ヘプチル、1−オクチル等が含まれる。
【0021】
用語「炭素環(carbocycle)」、「カルボシクリル(carbocyclyl)」、「環状炭素(carbocyclic ring)」、及び「シクロアルキル」は、単環式環として3から12個の炭素原子(C-C12)を、二環式環としては7から12個の炭素原子を有する一価非芳香族の飽和又は部分不飽和環を指す。7から12の原子を有する二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系として構成することができ、9又は10の環原子を有する二環式炭素環は、ビシクロ[5,6]若しくは[6,6]系、又は架橋系、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン及びビシクロ[3.2.2]ノナンとして構成することができる。スピロカルボシクリル部分も、この定義の範囲内に含まれる。スピロカルボシクリル部分の例には、[2.2]ペンタニル、[2.3]ヘキサニル、及び[2.4]ヘプタニルが含まれる。単環式炭素環の例には、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘクス−1−エニル、1−シクロヘクス−2−エニル、1−シクロヘクス−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等が含まれる。カルボシクリル基は独立に、本明細書に記載の1以上の置換基で任意選択的に置換されている。
【0022】
「アリール」とは、親芳香族環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される、6−20個の炭素原子(C-C20)からなる一価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基の中には、代表的な構造で「Ar」と表されているものもある。アリールには、飽和環、部分的に不飽和の環又は芳香族環状炭素に融合している芳香族環を含む二環式ラジカルが含まれる。典型的なアリール基には、限定されないが、ベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル等から誘導されるラジカルが含まれる。アリール基は独立に、本明細書に記載の1以上の置換基で任意選択的に置換されている。
【0023】
用語「ヘテロ環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」及び「複素環(heterocyclic ring)」は、本明細書では互換的に使用され、飽和又は部分的に不飽和の(すなわち環内に1以上の二重及び/又は三重結合を有する)3から約20個の環原子からなる炭素環式ラジカルであって、少なくとも1つの環原子が、窒素、酸素、リン及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCである炭素環式ラジカルを指し、ここで1以上の環原子は独立に、後述の1以上の置換基で任意選択的に置換されている。ヘテロ環は、3〜7環員(2〜6個の炭素原子とN、O、P及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子)を有する単環、又は7〜10環員(4〜9個の炭素原子とN、O、P及びSから選択される1〜6個のヘテロ原子)を有する二環、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系であってよい。ヘテロ環については、Paquette, Leo A.; 「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」 (W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に1、3、4、6、7及び9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs」(John Wiley & Sons, New York, 1950から現在)、特に13、14、16、19及び28巻;並びにJ. Am. Chem. Soc. (1960) 82:5566に記載がある。「ヘテロシクリル」はまた、ヘテロ環ラジカル(heterocycle radical)が飽和環、部分的に不飽和の環又は芳香族環状炭素若しくは複素環に縮合しているラジカルも含む。複素環の例には、限定されないが、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピペラジニル、ピペラジン−4−イル−2−オン、ピペラジン−4−イル−3−オン、ピロリジン−1−イル、チオモルホリン−4−イル、S−ジオキソチオモルホリン−4−イル、アゾカン−1−イル、アゼチジン−1−イル、オクタヒドロピリド[1,2−a]ピラジン−2−イル、[1,4]ジアゼパン−1−イル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキサニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリルキノリジニル、及びN−ピリジル尿素が含まれる。スピロヘテロシクリル部分も、この定義の範囲内に含まれる。スピロヘテロシクリル部分の例には、アザスピロ[2.5]オクタニル及びアザスピロ[2.4]ヘプタニルが含まれる。2個の環原子がオキソ(=O)部分で置換されている複素環基の例は、ピリミジノニル及び1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。本明細書のヘテロシクリル基は独立に、本明細書に記載の1以上の置換基で任意選択的に置換されている。
【0024】
用語「ヘテロアリール」は、5員、6員又は7員環の一価の芳香族ラジカルを指し、窒素、酸素及び硫黄から独立に選択される1以上のヘテロ原子を含有する、5から20個の原子の縮合環系(そのうちの少なくとも一つが芳香族)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば2−ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば4−ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。ヘテロアリール基は独立に、本明細書に記載の1以上の置換基で任意選択的に置換されている。
【0025】
「治療」及び「処置」という用語は、治療的処置であって、その目的が関節炎又はがんの発症又は広がりなどの望ましくない生理学的変化又は障害を緩徐化(軽減)することであるものを指す。本発明の目的上、有益な又は所望の臨床結果には、検出可能であるか否かにかかわらず、症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾患の安定状態(すなわち悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は緩徐化、病態の改善又は緩和、及び(部分又は完全)寛解が含まれるがこれらに限定されない。「治療」とは、治療を受けない場合の予想生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味し得る。治療を必要とする者には、状態又は障害を有する者が含まれる。
【0026】
「治療的に有効な量(治療的有効量)」という表現は、本明細書に記載の(i)特定の疾患、状態又は障害を治療する、(ii)特定の疾患、状態又は障害の1以上の症状を軽減、改善又は排除するか、又は(iii)特定の疾患状態又は障害の1以上の症状の発症を予防するか又は遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。がんの場合、治療的有効量の薬物は、がん細胞数を減少させ;腫瘍の大きさを縮小させ;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又はがんに関連する1以上の症状をある程度緩和することができる。該薬物は、増殖を防ぎ、及び/又は既存のがん細胞を死滅させることができる範囲で、細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であり得る。がん治療の場合、例えば疾患無増悪期間(TTP)を評価することにより、及び/又は奏効率(RR)を決定することにより、有効性を測定することができる。
【0027】
「がん」という用語は、制御されない細胞増殖により典型的に特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態をいう。「腫瘍」とは、1以上の癌細胞を含む。がんの例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ性腫瘍が含まれる。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮細胞がん(例えば上皮性扁平上皮細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃(gastric又はstomach)がん、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓(kidney又はrenal)がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌、肛門癌、陰茎癌及び頭頸部がんが含まれる。
【0028】
「血液悪性腫瘍(「Hematological malignancies」)」(英国のスペルでは「Haematological」malignancies)は、血液、骨髄及びリンパ節に影響を与えるタイプのがんである。上記の3つは免疫システムを介して密接に結びついているため、3つのうちの1つに影響を及ぼす疾患は、残りの2つにも影響することが多い。すなわち、リンパ腫はリンパ節の疾患であるが、しばしば骨髄に広がり、血液に影響を及ぼす。血液悪性腫瘍は、悪性新生物(「がん」)であり、通常は血液学及び/又は腫瘍学の専門家によって治療される。「血液腫瘍科」が、内科の一つの下位専門領域である拠点もあれば、別々の部門とみなされるところもある(外科医及び放射線腫瘍医もいる)。すべての血液疾患が悪性(「癌性」)であるわけではなく、この他の血液状態も、血液病専門医によって管理され得る。血液悪性腫瘍は、2つの主要な血液細胞系統のいずれか、すなわち骨髄細胞株及びリンパ系細胞株から誘導され得る。骨髄細胞株は通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及び肥満細胞を産生し、リンパ系細胞株は、B、T、NK及び形質細胞を産生する。急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性疾患は骨髄由来であるが、リンパ腫、リンパ球性白血病及び骨髄腫は、リンパ系由来である。白血病には、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄白血病(CML)、急性単球性白血病(AMOL)及びリンパ球性リンパ腫(SLL)が含まれる。リンパ腫には、ホジキンリンパ腫(4つのサブタイプすべて)及び非ホジキンリンパ腫(NHL、全サブタイプ)が含まれる。
【0029】
「化学療法剤」は、作用機序にかかわらず、がんの治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤のクラスには、アルキル化剤、代謝拮抗物質、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、及びキナーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。化学療法剤には、「標的療法」及び従来の化学療法で使用される化合物が含まれる。化学療法剤の例には、イブルチニブ(イムブルビカTM、APCI−32765、Pharmacyclics Inc./Janssen Biotech Inc.;CAS登録番号936563−96−1、米国特許第7514444号)、イデラリシブ (以前のCAL−101、GS1101、GS−1101、Gilead Sciences Inc.;CAS登録番号1146702−54−6)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS登録番号51−21−8)、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS番号391210−10−9、Pfizer)、シスプラチン(プラチノール(登録商標)、(SP−4−2)−ジアミンジクロロ白金(II)、シス−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663−27−1)、カルボプラチン(CAS番号41575−94−4)、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、ニュージャージー州プリンストンのBristol−Myers Squibb Oncology)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech)、テモゾロミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタザビシクロf[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミド、CAS番号85622−93−1、テモダール(TEMODAR(登録商標))、テモダール(TEMODAL(登録商標))、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン、ノルバデックス(登録商標)、イスツバル(ISTUBAL)(登録商標)、バロデックス(VALODEX)(登録商標)及びドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、CAS番号23214−92−8)、Akti−1/2、HPPD及びラパマイシンが含まれる。
【0030】
化学療法剤には、BTK、Bcl−2及びJAK阻害剤等のB細胞受容体標的の阻害剤が含まれる。
【0031】
化学療法剤のさらなる例には、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標)、MillenniumPharm.)、スーテント(スニチニブ(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシル酸塩(グリベック(登録商標)、Novartis)、XL−518(Mek阻害剤、Exelixis、国際公開第2007/044515号)、ARRY−886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、ラパミューン(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、 ロナファルニブ (サラサールTM、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ (ネクサバール(登録商標)、BAY43−9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ (イレッサ(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(カンプトサール(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、ティピファニブ(ザーネストラTM、Johnson & Johnfson)、アブラキサンTM(Cremophorフリー)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(イリノイ州ショウンバーグのAmerican Pharmaceutical Partners)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、テムシロリムス(トーリセル(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(テルシタ(登録商標)、Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド、(シトキサン(登録商標)、ネオサール(登録商標));ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)等のアジリジリン; アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロールメラミン(trimetylomelamine)等のエチレンイミン及びメチルメラミン(metylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン及びビセレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクレアスタチン(pancratistatin);サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン等のニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、カリケアマイシンガンマ1I、カリケアマイシンオメガI1(Angew Chem. Intl. Ed. Engl. (1994) 33:183-186);ジネマイシン(dynemicin)、ジネマイシンA;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、ネモルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸アナログ;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補給剤;アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(オレゴン州ユージーンのJHS Natural Products);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2トキシン、ベルカリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナアナログ;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(ナベルビン(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(登録商標)、Roche);イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;並びに上記のいずれのものの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体が含まれる。
【0032】
「化学療法剤」の定義には、次のものも含まれる。(I)例えばタモキシフェン(ノルバデックス(登録商標);タモキシフェンクエン酸塩を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びフェアストン(登録商標)(トレミフェンクエン酸塩)を含めた、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)並びに選択的エストロゲン受容体調節剤(SERD)(例えばフルベストラント(フェソロデックス(登録商標)、Astra Zeneca)といった、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤;(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害する、アロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、アロマシン(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、フェマーラ(登録商標)(レトロゾール;Novartis)及びアリミデックス(登録商標)(アナストロゾ−ル;AstraZeneca);(iii)抗アンドロゲン薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤、例えばコビメチニブ(国際公開第2007/044515号)などのMEK阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤、例えばタセリシブ(GDC−0032、Genentech Inc.);(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子(PKC−アルファ、Raf及びH−Ras等)の発現を阻害するもの、例えばオブリメルセン(GENASENSE(登録商標)、Genta Inc.);(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤;(viii)遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばアロベクチン(登録商標)、ロイベクチン(登録商標)及びVAXID(登録商標);プロロイキン(登録商標)rIL−2;トポイソメラーゼ1阻害剤、例えばラルトテカン(登録商標);アバレリックス(登録商標)rmRH;(ix)抗血管新生剤、例えばベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech);並びに上記のいずれのものの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体。
【0033】
「化学療法剤」の定義にはまた、アレムツズマブ(キャンパス)、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(アービタックス(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(リツキサン(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(PERJETATM2C4、Genentech)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech)、トラスツズマブ エムタンシン(KADCYLA(登録商標)、Genentech Inc.)及びトシツモマブ(ベキサール、Corixia)等の治療用抗体も含まれる。
【0034】
「代謝産物」は、特定の化合物またはその塩の体内での代謝によって生じる産物である。化合物の代謝産物は、当技術分野で知られている慣用技術を用いて同定することができ、その活性は、本明細書に記載されるような試験を用いて決定される。このような産物は例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断等から生じ得る。したがって、本発明は、本発明の式Iの化合物をその代謝産物を生じるのに十分な時間にわたって哺乳動物と接触させることを含む方法によって製造される化合物を含む、本発明の化合物の代謝産物を含む。
【0035】
「添付文書」という用語は、治療製品の商品パッケージに通例含まれる、効能、用法、用量、投与、禁忌、及び/又は当該治療製品の使用に関する警告についての情報を含む説明書をいうのに使用される。
【0036】
用語「キラル」は、その鏡像パートナーに重ね合わせることができないという特性を有する分子を指し、一方、用語「アキラル」は、その鏡像パートナーに重ね合わせることができる分子を指す。
【0037】
用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、原子又は基の空間配置の点で異なる化合物を指す。
【0038】
「ジアステレオマー」とは、2つ以上のキラル中心を持つ立体異性体であって、その分子が互いに鏡像関係にない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的性質、例えば融点、沸点、分光特性及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、例えば電気泳動法及びクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順の下で分離することができる。
【0039】
「エナンチオマー」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。
【0040】
本明細書で使用する立体化学的定義及び慣例は、一般に、S. P. Parker, 編., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York; 及び Eliel, E. and Wilen, S., 「Stereochemistry of Organic Compounds」, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994に従う。本発明の化合物は、不斉中心又はキラル中心を含むことができ、したがって異なる立体異性型で存在する。限定されないが、ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体、並びにこれらの混合物(例えばラセミ混合物)を含め、本発明の化合物のすべての立体異性型が本発明の一部を形成することが意図される。多くの有機化合物は、光学的に活性な形態で存在する、すなわち、それらは平面偏光面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を記載する際、接頭語D及びL、又はR及びSを使用して、キラル中心の周りの分子の絶対配置を表す。接頭語d及びl、又は(+)及び(−)は、面偏光された光の、その化合物による回転の符号を表すために使用され、(−)又は1はその化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdの接頭語が付いた化合物は、右旋性である。所与の化学構造の場合、これらの立体異性体は、互いの鏡像であること以外は同一である。特定の立体異性体は、エナンチオマーとも称され、このような異性体の混合物は、しばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と称され、化学反応又はプロセスにおいて立体選択又は立体特異性がなかった場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、光学活性がない、2つのエナンチオマー種の等モル混合物をいう。エナンチオマーは、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)などのキラル分離法によってラセミ混合物から分離することができる。分離されたエナンチオマーにおけるキラル中心での立体配置の割り当ては暫定的で、X線結晶構造解析データのような立体化学での決定が待たれるが、説明のために表1の構造に示す。
【0041】
「互変異性体」又は「互変異性型」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られている)は、ケト−エノール及びイミン−エナミン異性化のようなプロトンの移動による相互変換を含む。原子価互変異性体は、結合電子の一部の再編成による相互変換を含む。
【0042】
「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない塩をいう。薬学的に許容される塩は、酸及び塩基付加塩の双方を含む。「薬学的に許容される」という表現は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分及び/又はそれで治療されている哺乳動物と化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを表す。
【0043】
用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸、並びに有機酸の脂肪族、環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族(aryl−aliphatic)、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスから選択される有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アンスラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸(embonic acid)、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシレート」、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びサリチル酸で形成された塩で、薬学的に許容されるものを指す。
【0044】
「薬学的に許容される塩基付加塩」という用語は、有機又は無機塩基で形成される塩で、薬学的に許容されるものを指す。許容される無機塩基の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩及びアルミニウム塩が含まれる。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩は、第1級、第2級及び第3級アミン、天然の置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン類(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン及びポリアミン樹脂類等)の塩を含む。
【0045】
「溶媒和物」とは、1以上の溶媒分子と本発明の化合物との会合体又は複合体をいう。溶媒和物を形成する溶媒の例には、限定されないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、及びエタノールアミンが含まれる。
【0046】
用語「EC50」は、「半数効果濃度」であり、特定のin vivoでの効果の最大値の50%を得るために必要とされる、特定の化合物の血漿濃度を意味する。
【0047】
用語「Ki」は阻害定数であり、受容体に対する特定の阻害剤の絶対結合親和性を示す。それは、競合結合アッセイを用いて測定され、競合するリガンド(例えば放射性リガンド)が存在しない場合に特定の阻害剤が受容体の50%を占めるであろう濃度に等しい。Ki値は、対数的にpKi値(−log Ki)に変換することができ、ここで、値が高ければ高いほど、指数関数的により大きな効力を示す。
【0048】
用語「IC50」は半数阻害濃度であり、in vitroで生物学的過程の50%阻害を得るために必要とされる特定の化合物の濃度を意味する。IC50値は、pIC50値(−log IC50)に対数的に変換することができ、ここで、値が高ければ高いほど、指数関数的により大きな効力を示す。IC50値は絶対値ではなく、例えば使用濃度などの実験条件に依存するが、Cheng−Prusoff方程式を用いて絶対阻害定数(Ki)に変換することができる(Biochem. Pharmacol. (1973) 22:3099)。例えばIC70、IC90等、他のパーセント阻害パラメーターを算出することができる。
【0049】
用語「本発明の化合物」及び「式Iの化合物」とは、式Iの化合物、本明細書に記載の特定の化合物、並びにその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物、薬学的に許容される塩及びプロドラッグを含む。
【0050】
式Iの化合物を含む、本明細書に示される式又は構造式のいずれもまた、水和物、溶媒和物、及びそのような化合物の多形体、並びにそれらの混合物を表すことが意図される。
【0051】
式Iの化合物を含む、本明細書に示される式又は構造式のいずれもまた、化合物の同位体標識形態のみならず、非標識形態を表すことが意図される。同位体標識化合物は、選択された原子質量又は質量数を有する原子によって1個以上の原子が置換されていることを除いて、本明細書に示される式によって表される構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、限定されないが、例えば2H(重水素、D)、3H(三重水素)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Cl及び125Iなど、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が含まれる。同位体標識された本発明の種々の化合物は、例えば3H、13C及び14C等の放射性同位体が組み込まれているものである。このような同位体標識化合物は、代謝研究、反応速度論研究、検出又は画像化技術、例えば薬物又は基質の組織分布アッセイを含む陽電子放出形断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)において、又は患者の放射線治療において有用であり得る。重水素で標識又は置換された本発明の治療化合物は、分布、代謝、及び排泄(ADME)に関して改善されたDMPK(薬物代謝及び薬物動態)を有し得る。重水素のような比較的重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から生じるある種の治療上の利点、例えばin vivo半減期の延長又は必要投与量の低減をもたらし得る。18F標識化合物は、PET又はSPECT研究に有用であり得る。本発明の同位体標識化合物及びそのプロドラッグは一般に、容易に入手可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりにすることによって後述のスキーム又は実施例及び調製例に開示されている手順を実施することにより調製することができる。さらに、比較的重い同位体、特に重水素(つまり2H又はD)での置換は、より高い代謝安定性から生じるある種の治療上の利点、例えばin vivo半減期の延長又は必要投与量の低減又は治療指数の改善等をもたらし得る。この文脈での重水素は、式(I)の化合物の置換基とみなされる。そのような比較的重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義することができる。本発明の化合物では、特定の同位体と具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すものとする。特に明記しない限り、ある位置が「H」又は「水素」と具体的に指定されている場合、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素を有すると解される。したがって、本発明の化合物では、重水素(D)と具体的に指定された任意の原子は、重水素を表すものとする。
【0052】
ベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物
本発明は、がんの治療において有用な、式Iのベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物であって、以下の構造

から選択される化合物、並びにその立体異性体、幾何異性体、互変異性体及び薬学的に許容される塩[上式中:
は、-CH、-CHCH、-CH(CH、-CHF、-CHF、及び-CFから選択され;
Xは、
から選択され、波線は結合部位を示し;
は、H、C-Cアルキル、シクロプロピル、及びシクロブチルから選択され、F、-OCH又は-OHで置換されていてもよい。
【0053】
式Iのベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物は、以下の式Iaを含む。
Ia
【0054】
式Iaの化合物の例示的な実施態様は、Rが-CHであり、Rが-CHF及び-CHFから選択されるものを含む。
【0055】
式Iのベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物は、以下の式Ibを含む。
Ib
【0056】
式Ibの化合物の例示的な実施態様は、Rが-CHF及び-CHFから選択されるものを含む。
【0057】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、表1の化合物を含む。
【0058】
本発明の式Iの化合物は、不斉中心又はキラル中心を含むことができ、したがって異なる立体異性型で存在する。限定されないが、ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体、並びにこれらの混合物(例えばラセミ混合物)を含め、本発明の式Iの化合物のすべての立体異性形態が本発明の一部を形成することが意図される。場合によっては、立体化学が決定されていないか、又は一時的に割り当てられている。
【0059】
さらに、本発明は、シス−トランス(幾何異性体)及び配座異性体を含む、すべてのジアステレオマーを包含する。例えば、式Iの化合物が二重結合又は縮合環を組み込んでいる場合、シス型及びトランス型、並びにそれらの混合物が、本発明の範囲内に包含される。
【0060】
本明細書に示す構造では、具体的なキラル原子が指定されていない場合、すべての立体異性体が本発明の化合物として考慮され、含まれる。立体化学が、特定の構造を表す実線のくさび形又は点線によって特定される場合、その立体異性体はそのように特定され、定義される。
【0061】
本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒による溶媒和形態のみならず非溶媒和形態で存在してもよく、本発明は溶媒和形態と非溶媒和形態の双方を包含することが意図される。
【0062】
本発明の化合物はまた、様々な互変異性型で存在することもでき、そのような型はすべて本発明の範囲内に包含される。「互変異性体」又は「互変異性型」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られている)は、ケト−エノール及びイミン−エナミン異性化のようなプロトンの移動による相互変換を含む。原子価互変異性体は、結合電子の一部の再編成による相互変換を含む。
【0063】
生物学的評価
式Iの化合物の酵素活性(又は他の生物学的活性)の阻害剤としての相対的効力は、各化合物が所定の程度まで活性を阻害する濃度を測定し、その結果を比較することにより確定させることが可能である。典型的には、好ましい決定は、生化学アッセイにおいて活性の50%を阻害する濃度、すなわち50%阻害濃度又は「IC50」である。IC50値の決定は、当技術分野で一般的な手法を用いて達成可能である。一般に、IC50は、試験濃度範囲の阻害剤の存在下で、所与の酵素の活性を測定することにより決定することができる。その後、使用した阻害剤濃度に対して、酵素活性の実験的に得られた値をプロットする。(任意の阻害剤の非存在下での活性と比較して)50%酵素活性を示す阻害剤の濃度をIC50値とする。同様に、他の阻害濃度も、活性の適切な決定により定義することが可能である。例えば、いくつかの状況では、90%阻害濃度すなわちIC90などを確立することが望ましい場合がある。
【0064】
表1の例示的な式Iの化合物を、本発明の方法に従って作製し、特徴付けし、種々のアイソフォーム及び変異体へのPI3Kの結合について試験した。また、それらの化合物は、以下の構造、対応する名称(ChemBioDraw、バージョン12.0.2、マサチューセッツ州ケンブリッジのCambridgeSoft Corp.)及び生物学的活性を有する。複数の名称が式Iの化合物又は中間体と関連する場合、化学構造が化合物を定義するものとする。
表1
【0065】
タセリシブ
タセリシブ、GDC−0032、及びRoche RG7604として知られているこの化合物(CAS登録番号1282512−48−4、Genentech Inc.)は、2−(4−(2−(1−イソプロピル−3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾル−5−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−2−メチルプロパンアミドというIUPAC名及び以下の構造:
タセリシブ
を有し、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び薬学的に許容される塩を含む。
【0066】
タセリシブは、国際公開第2011/036280号、米国特許第8242104号及び同第8343955号に記載されているように調製し、特徴付けすることができる。
【0067】
ピクチリシブ
ピクチリシブ、GDC−0941、Roche RG−7321、及びピクトレリシブとして知られているこの化合物(CAS登録番号957054−30−7、Genentech Inc.,)は、PI3Kアイソフォームの強力な多標的クラスI(パン)阻害剤である。GDC−0941は現在、進行固形腫瘍の治療の第2相臨床試験中である。GDC−0941は、4−(2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−((4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル)メチル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)モルホリンと呼ばれ(米国特許第7781433号;米国特許第7750002号;Folkes et al (2008) Jour. of Med. Chem. 51(18):5522-5532)、以下の構造:
ピクチリシブ
を有し、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び薬学的に許容される塩を含む。
【0068】
PI3Kアイソフォームの生化学的阻害
本発明の化合物の、PI3Kβ、PI3Kδ及びPI3Kγに対する選択性を有するPI3Kαの阻害剤として作用する能力は、実施例901の方法を用いて決定された。表2A及び2Bはまた、米国特許第8242104号の実施例901の方法を用いて決定されたFP Kiデータを含む。
【0069】
表2Aは、表1の式Iの化合物による4つのPI3Kアイソフォームの生化学的阻害を示す。さらに、臨床的に試験された2種のPI3K化合物、タセリシブとピクチリシブが、比較物として含まれる。本発明の代表的な化合物は、PI3Kαに対する強力な活性を示し、タセリシブ(GDC−0032)及びピクチリシブ(GDC−0941)と比較した場合、他のアイソフォームPI3Kβ、PI3Kδ及びPI3Kγに対して有意に高い選択性を示す。特に、表2Aの右から2番目の欄の選択性比率は、式Iの各化合物101−109が、タゼリシブ又はピクチリシブよりもはるかに高いPI3Kアルファ対デルタ選択性比率を有することを示している。実際、タセリシブ及びピペリシブのいずれも、PI3Kアルファに対するよりもPI3Kデルタに対してより強い活性を有する。すなわち、それらの選択性比率は1未満である。式Iの化合物101−109の選択性比率は、15倍〜52倍の範囲である。
【0070】
表2Bは、米国特許第8242104号の特定の比較化合物及び米国特許第8263633号からのジメチルオキサゾリジン−2−オン基を有する化合物(化合物356、第149欄)による、2種のPI3Kアイソフォーム、アルファ及びデルタの生化学的阻害並びにPI3Kアルファ対デルタ選択性比率を示す。表2Bに示される比較化合物は、米国特許第8242104号及び米国特許第8263633号にそれぞれ記載されている広範囲な属からの例である。米国特許第8242104号も米国特許第8263633号も、本発明の式Iの化合物の範囲内の化合物を開示していない。米国特許第8242104号の表2Bに記載された代表的な比較例は、PI3Kα対PI3Kδの選択性比率>1を示しているが、観察された選択性比率は最大26倍である。したがって、式Iの化合物101−109は、米国特許第8242104号の選択例(select examples)と同様の選択性比率を達成する。
【0071】
タセリシブ(国際公開第2011/036280号;米国特許第8242104号;米国特許第8343955号)及び、米国特許第8242104号の他の代表的な実施例など、臨床試験における既存のPI3K阻害剤は、PI3Kδ(デルタ)アイソフォームに対して有意な活性を示す。PI3Kδ(デルタ)に対するこの選択性の欠如は、臨床で観察されるタセリシブのGI毒性と一致する。PI3Kδに対する活性を同時に欠いている米国特許第8242104号の代表的な実施例の好ましい特徴を含む、PI3Kα(アルファ)の阻害剤への必要性が存在する。本発明は、この活性及び選択性プロファイルを満たす化合物を提供する。
【0072】
PI3Kアルファ選択性の予想外の特性は、臨床PI3K阻害剤候補において観察される胃腸毒性を除去するのに有利である。PI3K阻害剤を用いた最近の臨床データは、PI3Kデルタ活性が胃腸毒性の原因であることを示唆している(Akinleye et al, 「Phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K) inhibitors as cancer therapeutics」Journal of Hematology & Oncology 2013, 6:88-104)。表2の臨床試験におけるPI3K阻害剤を参照のこと。
【0073】
式Iの化合物101−109は、PI3Kδ(デルタ)阻害よりもPI3Kα(アルファ)阻害に対して有意に高い選択性を有するため、臨床試験されたタセリシブ及びピクチリシブと比較して、PI3Kδ(デルタ)阻害によって引き起こされる毒性よりもPI3Kα(アルファ)阻害によって引き起こされる臨床活性間でより大きな差を得ることが予期される。したがって、本発明の式Iの化合物は、PI3Kβ、PI3Kδ又はPI3Kγの正常な機能のより大きな阻害を示す薬剤よりも低い毒性プロファイルを有する治療剤として有用であり得る。
【0074】
表2A 式Iの化合物、並びに比較化合物タセリシブ及びピクチリシブによるPI3Kアイソフォームの生化学的阻害
表2B 比較化合物によるPI3Kアイソフォームの生化学的阻害
【0075】
化合物とPI3Kとの相互作用
式Iの化合物によるPI3Kα選択性の合理的根拠は、特定の結合相互作用に存在し得る。
【0076】
PI3Kαと特異的に相互作用する本発明の化合物の能力は、実施例902の方法を用い、PI3Kαと代表的な化合物とのX線共結晶構造を解明することによって決定される。他のアイソフォームよりもPI3Kαアイソフォームに対して選択性を有するPI3K阻害剤の最適化構造設計には、結合部位におけるアイソフォーム特異的残基と相互作用する原子及び官能基の正確な位置決め及び配置が含まれ得る。特に、5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン環系の2位における置換は、PI3Kαに対する化合物の特異的活性に重要な影響を及ぼすことがわかる。式Iの化合物のオキサゾリジノン環は、トリアゾール環と比較して、タンパク質と複数の改善された相互作用を行うことができる。
【0077】
図1Aは、PI3Kα(アルファ)活性部位に結合したタセリシブのX線構造を示す。トリアゾール環のN4原子は、Tyr836の側鎖(距離4.04A)又はSer774(距離2.74A及び2.82A、リガンド‐残基間の相補的な極性なし)のいずれかと直接相互作用することができない。図1Bは、PI3Kα活性部位に結合した化合物106のX線構造を示し、オキサゾリジノン環が、トリアゾール環と比較して、タンパク質との複数の改善された相互作用を行うことができることを示している。カルボニル官能基は、Tyr836側鎖(2.71A)に近く、良好な極性相互作用を行うことができる。オキサゾリジノン置換基のフッ素原子は、Ser774のヒドロキシル基と密着(2.24A)しており、極性相互作用又は非古典的水素結合、すなわち炭素−フッ素結合の分極によって可能となる好ましい相互作用と一致する(Bohm et. al, Fluorine in Medicinal Chemistry, (2004) ChemBioChem, 5:637-643; Zhou et. al, 「Fluorine Bonding - How Does it Work In Protein-Ligand Interactions」, (2009) J. Chem. Inf. Model., 49:2344-2355)。
【0078】
本発明のすべての化合物は、オキサゾリジノン環を含み、PI3KαのTyr836と改善された相互作用を行うことができる。本発明のいくつかの例はまた、オキサゾリジノン環上にフッ素化置換基を含み、PI3KαのSer774と改善された相互作用を行うことができる。これらの結合相互作用のいずれも、米国特許第8242104号の例よりも本発明の例で観察されるPI3Kαに対する選択性の向上に寄与し得る。残基Ser774及びTyr836はPI3Kαアイソフォームに特有ではなく、PI3Kδは同じ位置にこれらの同じ残基を含み、オキサゾリジノン阻害剤の改善されたアイソフォーム選択性は、これらの結晶構造では予測されない。異なるアイソフォーム間の同じ残基同一性の配置及び配向における微妙な相違は、二次及び三次タンパク質構造の微妙な変化に起因し得る。双方のタンパク質アイソフォームのX線結晶構造にもかかわらず、これらの相違を予測し解釈することは困難である。オキサゾリジノン阻害剤の改善された分子相互作用及び増強されたアイソフォーム選択性の驚くべき予想外の特性は、表1に例示される化合物の全範囲にわたって保たれる。
【0079】
オキサゾリジノンは、オキサゾリジノンがカルボニルを有し、より極性であり、芳香族性を有しないという点で、トリアゾールと構造的に区別される。トリアゾールは、カルボニル基を有さず、極性がより低く、芳香族性を有する。
【0080】
オキサゾリジノン環は、sp3特性の向上及び芳香族環数の減少の点で、トリアゾール環と比較してさらなる利点を提供する。芳香環の数の増加が無差別結合の危険性の増加と相関することは、文献において一般に認められている。対照的に、sp3炭素の割合(sp3炭素数/全炭素数)の増加は、物理化学的特性の向上及び無差別結合の減少と相関し、オフターゲット毒性のリスクを低減する。これらの概念については、Lovering等の「Escape From Flatland」, (2009) J. Med. Chem., 52:6752-6756及びRitchie and Macdonald, 「Physicochemical Descriptors of Aromatic Character and Their Use in Drug Discovery」, (2014) J. Med. Chem57:7206-7215といった参考文献に記載されている。本発明のすべての実施例に含まれるオキサゾリジノンは、米国特許第8242104号の典型例などのトリアゾール芳香族環を飽和複素環で置換すると、オフターゲット毒性のリスクが有利に低下する。米国特許第8242104号の例示化合物の全体は、この位置に芳香族環を有する化合物、すなわち芳香環を置換するカルボキサミド官能基の4つの例で占められることが圧倒的に多く、飽和環式又は複素環系の例はない。芳香族と飽和ヘテロ環の著しく異なる結合相互作用及び立体的条件のために、これらは一般的に交換可能ではない。5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン環の2位に飽和複素環系の例はなく、米国特許第8242104号は、PI3Kαに対する活性を保持しながら芳香族環を飽和ヘテロ環で置換するための方法に関する教示は何一つ提供していない。
【0081】
したがって、本発明の化合物は、5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピンの9位及び2位の双方に最適化された置換基及び官能基を含む。これらの最適化化合物は、改善された分子相互作用及び、PI3Kδに対する活性の低下を伴うPI3Kαに対する選択的活性の増加に関して、これまでに知られていない重要な利益を提供する。本発明の化合物は、タセリシブ(GDC−0032)などの関連薬剤と比較して、拡大された治療ウインドウを有する治療剤として有用であり得る。
【0082】
変異型PI3Kα(アルファ)の選択的阻害
実施例903の方法に記載のように、PI3Kα野生型(親)、ヘリカルドメイン変異体E545K、及びキナーゼドメイン変異体H1047RといったSW48同質遺伝子細胞株におけるPI3K経路の阻害を測定することにより、本発明の化合物が変異型PI3Kαを含む細胞に対して優先的に作用する能力を決定した。
【0083】
統計解析:EC50値は、別段の記載がない限り、最低4つの独立した実験の幾何平均を表す。統計はすべて、KaleidaGraph Software(バージョン4.1.3)を用いて行った。変異型細胞及び野生型細胞に対する活性を比較するために、等分散の不対データを用いてスチューデントt検定を行った。P<0.05は有意であると考えられる。
【0084】
表3Aは、表1の式Iの化合物によるSW48同質遺伝子細胞におけるP−PRAS40の阻害を示す。これらの化合物はすべて、野生型PI3Kα細胞に対するよりも変異型PI3Kα細胞に対して高い活性を示し、2倍超の選択性比率及び0.05を上回るp値を有する。本発明の化合物は、SW48変異型PI3Kα細胞においてタセリシブと類似の活性を示し、野生型PI3Kα細胞における活性に対してタセリシブと同等又はそれ以上の選択性を有する(表3B参照)。
【0085】
表3Bは、米国特許第8242104号の特定の比較化合物、米国特許第88263633号からのジメチルオキサゾリジン−2−オン基を有する化合物(化合物356、第149欄)、及びピクチリシブによるSW48同質遺伝子細胞におけるP−PRAS40の阻害を示す。表3Bに示される比較化合物は、米国特許第8242104号及び米国特許第8263633号にそれぞれ記載されている広範囲な属からの例である。米国特許第8242104号も米国特許第8263633号も、本発明の式Iの化合物の範囲内の化合物を開示していない。これらの比較化合物は、野生型PI3Kα細胞に対するよりも変異型PI3Kα細胞に対して有意に高い活性を有しない例を含む(1つ又は双方の試験変異体に対してp>0.05の比較化合物ピクチリシブ375、436、469及び486を参照)。これらの化合物は、野生型PI3Kα細胞に対するよりも変異型PI3Kα細胞に対して活性が有意に増加している比較化合物と非常に構造的に類似している(1つ又は双方の試験変異体に対してp<0.05の比較化合物469、540、544及び356を参照)。比較化合物内に、変異型PI3Kα細胞内の選択的阻害を誘導する共通の構造要素は存在しない。さらに広く見れば、米国特許第8242104号又は米国特許第8263633号には、野生型PI3Kα細胞に対するのと比較して変異型PI3Kαに対して同等又はそれ以上の活性を得るための、式Iの化合物の構造要素の選択を行うための教示はない。この予想外の特性は、表1に例示される化合物の全範囲にわたって保たれる。
【0086】
表3A 式Iの化合物によるSW48同質遺伝子細胞におけるP−PRAS40の阻害
表3B 比較化合物によるSW48同質遺伝子におけるP−PRAS40の阻害
【0087】
PI3K変異腫瘍細胞における抗増殖活性
実施例904の方法を用いて、HCC1954及びKPL4細胞(PI3Kα変異型H1047R)、並びにMCF7細胞(PI3Kα変異型E545K)における抗増殖性EC50を測定することにより、PI3K変異腫瘍細胞の生存率を低下させる本発明の化合物の能力を決定した。表4は、本発明の式Iの化合物102、103及び105が、比較化合物タセリシブ(米国特許第8242104号の化合物196)、ピクチリシブ及び化合物436(米国特許第8242104号)と同レベルの効力で、HCC1954、KPL4及びMCF7細胞における増殖を阻害することを示す。
表4 変異型PI3K−アルファ腫瘍細胞における抗増殖活性
【0088】
腫瘍異種移植モデルにおけるIN VIVO有効性
In vivo腫瘍異種移植モデルにおける腫瘍増殖を阻害する本発明の化合物の能力を、実施例905に記載の方法を用い、KPL4乳がん細胞株(PI3Kα突然変異体H1047R)を使用して決定した。図2A及び2Bは、式Iの化合物102及び103がそれぞれ、毎日のPO(経口)投与を用いて用量依存的にin vivoでKPL4腫瘍の増殖を強く阻害することができることを示している。化合物102及び103の投与はすべて、処置に関連する体重減少が観察されず、良好な耐容性を示した。
【0089】
式(I)の化合物の投与
本発明の化合物は、治療すべき状態に適切な任意の経路で投与され得る。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、髄腔内、及び硬膜外)、経皮、経直腸、経鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内、及び鼻腔内が含まれる。局所免疫抑制治療の場合、該化合物は、移植前に移植片を灌流又は他の方法で阻害剤と接触させることを含む病巣内投与で投与することができる。好ましい経路は、例えばレシピエントの状態によって変化し得ることが理解されよう。経口投与される場合、該化合物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に丸薬、カプセル剤、錠剤等として製剤化され得る。非経口投与される場合、該化合物は、以下に詳述するように、薬学的に許容される非経口ビヒクルと共に、単位投薬注射可能形態で製剤化され得る。
【0090】
ヒト患者を治療するための式Iの化合物の用量は、約1mg〜約1000mgの範囲であり得る。該化合物の典型的な用量は、約10mg〜約300mgである。用量は、特定の化合物の吸収、分布、代謝、及び排泄を含む薬物動態及び薬力学的特性に応じて、1日1回(QID)、1日2回(BID)又それ以上の回数投与されてもよい。さらに、毒性因子が投薬量及び投与レジメンに影響を及ぼし得る。丸薬、カプセル剤又は錠剤は、経口的に投与される場合、毎日又はそれより少ない頻度で指定された期間にわたり服用され得る。レジメンは、複数の治療サイクルにわたって繰り返されてもよい。
【0091】
式Iの化合物による治療の方法
本発明の式Iの化合物は、がんなどの、PI3Kに関連する異常な細胞の増殖、機能又は行動に起因する疾患又は障害に罹患しているヒト又は動物の患者を治療するために有用であり、したがって、上に記載の本発明の化合物の投与を含む方法によって治療され得る。がんに罹患しているヒト又は動物の患者はまた、上で定義した本発明の化合物のそれらへの投与を含む方法によって治療され得る。それにより、患者の状態を改善又は回復させることができる。
【0092】
本発明の方法は、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、睾丸、尿生殖路、食道、喉頭、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃、皮膚、角化棘細胞腫、肺、類表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、セミノーマ、メラノーマ、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁通路、腎臓癌、膵性、骨髄性疾患、リンパ腫、ヘアリー細胞、口腔、鼻咽頭、咽頭、唇、舌、口、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ホジキン、白血病、気管支、甲状腺、肝臓及び肝内胆管、肝細胞、胃、神経膠腫/神経膠芽腫、子宮内膜、メラノーマ、腎臓及び腎盂、膀胱、子宮体部、子宮頸部、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄球性白血病、口腔及び咽頭、非ホジキンリンパ腫、メラノーマ、及び絨毛結腸腺腫から選択されるがんを治療すること含む。
【0093】
発現分析、免疫組織化学分析及び細胞株プロファイリングに基づけば、結腸、乳房、子宮頸部、胃、肺の悪性腫瘍及び多発性骨髄腫は、PI3K調節剤又は阻害剤に応答する可能性が最も高い。
【0094】
本発明は、乳がん及び非小細胞肺がんから選択される患者のがんを治療するための上記の化合物の使用に関する。
【0095】
本発明は、乳がん及び非小細胞肺がんから選択される患者のがんを治療するための医薬の製造のための、上記の化合物の使用に関する。
【0096】
本発明は、乳がん及び非小細胞肺がんから選択される患者のがんを治療するための使用のための上記の化合物に関する。
【0097】
上に記載の発明。
【0098】
薬学的製剤
本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳動物の治療的処置のために使用するために、通常、薬学的組成物として標準的な薬務に従って製剤化される。本発明のこの態様によれば、薬学的に許容される希釈剤又は担体と共に本発明の化合物を含有する薬学的組成物が提供される。
【0099】
典型的な製剤は、本発明の化合物と担体、希釈剤又は賦形剤とを混合することによって調製される。適切な担体、希釈剤及び賦形剤は、当業者に周知であり、例えば炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水等の材料が含まれる。使用される特定の担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段及び目的に依存するであろう。溶媒は、哺乳動物に投与することが安全であると当業者によって認められた(GRAS)溶媒に基づいて通常選択される。一般に、安全な溶媒は、水などの非毒性の水性溶媒及び水に可溶性又は混和性である他の非毒性溶媒である。適切な水性溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えばPEG400、PEG300)等及びそれらの混合物を含む。製剤はまた、薬物(すなわち本発明の化合物又はその薬学的組成物)を見栄え良く提供するための、又は薬学的製品(すなわち医薬)の製造を補助するための1以上の緩衝剤、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁化剤、保存料、酸化防止剤、不透明化剤、滑剤、加工助剤、着色料、甘味料、香料、香味料及びその他既知の添加剤も含み得る。
【0100】
製剤は、通常の溶解及び混合手法を用いて調製することができる。例えば、バルク原体(すなわち本発明の化合物)又は該化合物の安定化形態(例えばシクロデキストリン誘導体又はその他の既知の複合体形成剤との複合体)を、1以上の上記賦形剤の存在下で適切な溶媒に溶解する。本発明の化合物は通常、容易に制御できる用量の薬物を提供するために医薬剤形に製剤化され、患者が処方されたレジメンを遵守することを可能にしている。
【0101】
適用のための薬学的組成物(又は製剤)は、薬物の投与のために使用される方法に応じた様々な方法で包装することができる。一般に、流通用の物品は、適切な形態で中に薬学的製剤を配置した容器を含む。適切な容器は、当業者には周知であり、瓶(プラスチック及びガラス)、小袋、アンプル、ビニール袋、金属シリンダー等の材料を含む。容器は、パッケージの内容物への不用意な接触を防ぐために、不正開封防止の構成部品(assemblage)を含んでもよい。加えて、容器には、容器の内容物を記したラベルを配してもよい。ラベルはまた、適切な注意書きを含んでもよい。
【0102】
本発明の化合物の薬学的製剤は、種々の投与経路及び投与タイプに対応できるように調製することができる。例えば、所望の純度を有する式Iの化合物は、凍結乾燥製剤、破砕紛体又は水溶液の形態の薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤又は安定剤と任意選択的に混合することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences (1980) 第16版, Osol, A. 編)。製剤化は、常温で、適切なpHで、及び所望の純度で、生理学的に許容される担体(すなわち用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性の担体)と混合することにより行われる。製剤のpHは主に、化合物の具体的な用途及び濃度に左右されるが、約3〜約8の範囲である。pH5の酢酸緩衝液中での製剤化が、適切な実施態様である。
【0103】
化合物は通常、固体組成物、凍結乾燥製剤又は水溶液として保存可能である。
【0104】
本発明の薬学的組成物は、製剤化され、医学行動規範(good medical practice)と一致した様式、すなわち投与の量、濃度、スケジュール、コース、ビヒクル及び経路で、投薬及び投与されることとする。この文脈において考慮すべき因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師にとって既知の他の因子が挙げられる。投与される化合物の「治療的有効量」は、このような考慮事項によって決まることとし、過剰増殖性障害を寛解させ又は治療するために必要な最小量である。
【0105】
一般命題として、非経口的に投与される阻害剤の1回あたりの初期薬学的有効量は約0.01〜100mg/kg、つまり1日当たり約0.1から20mg/患者の体重kgの範囲とし、用いられる化合物の典型的な初期範囲は約0.3から約15mg/kg/日とする。
【0106】
許容される希釈剤、担体、賦形剤及び安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖類、二糖類及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、活性医薬成分は、コロイド状薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中で、又はマクロエマルション中で、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製したマイクロカプセル、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入されてもよい。これらの技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版, Osol, A. 編 (1980)に開示されている。
【0107】
式Iの化合物の徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、式Iの化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0108】
製剤には、本明細書に詳述される投与経路に適したものが含まれる。製剤は、好都合には、単位剤形で提供され、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。技術及び製剤は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co., Easton, PA)に見出される。このような方法は、活性成分を、1以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。製剤は一般に、活性成分を、液体の担体若しくは微細化固体担体又はそれら双方と均一かつ緊密に会合させ、次いで必要に応じて製品を成形することにより調製される。
【0109】
経口投与に適した式Iの化合物の製剤は、各々が所定量の式Iの化合物を含有する丸薬、カプセル剤、カシェ剤又は錠剤のような別個の単位として調製されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表面活性剤又は分散剤と任意選択的に混合された流動性形態(粉末又は顆粒など)の活性成分を適切な機械で圧縮することにより、調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の活性成分の混合物を適切な機械で成形することにより、製造することができる。この錠剤は、その錠剤からの活性成分の徐放又は制御放出をもたらすように、任意選択的にコーティングされるか又は刻み目を入れられ、任意選択的に製剤化される。錠剤、トローチ、ロゼンジ剤、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、乳剤、硬カプセル剤又は軟カプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤、シロップ剤又はエリキシル剤は、経口使用のために調製することができる。経口使用が意図される式Iの化合物の製剤は、薬学的組成物の製造のための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、口触りのよい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤を含む1以上の薬剤を含有することができる。錠剤の製造に適した薬学的に許容される非毒性の賦形剤を含む混合剤中に活性成分を含有する錠剤は、許容可能である。このような賦形剤は、例えば炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;トウモロコシデンプン又はアルギン酸などの造粒剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン又はアカシア等の結合剤;及びステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク等の潤滑剤であってもよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は胃腸管内での崩壊及び吸着を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続作用を提供するために、マイクロカプセル化を含む既知の技術によりコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートなどの時間遅延物質を、単独で又はワックス剤と共に用いてもよい。
【0110】
眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の治療のために、本発明の製剤は、例えば0.075から20% w/wの量の活性成分を含有する局所軟膏剤又はクリーム剤として適用することができる。活性成分は、軟膏剤に配合する場合、パラフィン系又は水混和性軟膏基剤のいずれかと共に用いることができる。別法では、活性成分を、水中油型クリーム基剤と共にクリーム剤に配合することができる。所望であれば、クリーム基剤の水性相は、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)等の多価アルコール、すなわち2以上のヒドロキシル基を有するアルコール、及びそれらの混合物を含んでもよい。局所製剤は、望ましくは、活性成分の皮膚又は他の患部への吸収又は浸透を高める化合物を含むことができる。このような皮膚浸透促進剤の例には、ジメチルスルホキシド及び関連するアナログが含まれる。本発明の乳剤の油性相は、既知の方法で既知の成分から構成することができる。この相は乳化剤のみを含んでもよいが、望ましくは少なくとも1種の乳化剤と、脂肪若しくは油の混合物又は脂肪と油双方の混合物とを含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として働く親油性乳化剤と共に含まれる。また、油と脂肪の双方を含むことが好ましい。まとめると、乳化剤は、安定剤と共に又はそれなしで、いわゆる乳化ワックスを形成し、このワックスは、油及び脂肪と共にクリーム製剤の油分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を形成する。本発明の製剤における使用に適した乳化剤及び乳化安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0111】
式Iの化合物の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。このような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムなどの懸濁化剤、並びに天然リン脂質(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)等の分散剤又は湿潤剤が含まれる。水性懸濁液はまた、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はp−ヒドロキシ安息香酸プロピルなどの1種以上の防腐剤、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、及びスクロース又はサッカリンなどの1種以上の甘味剤を含有していてもよい。
【0112】
式Iの化合物の薬学的組成物は、滅菌注射用水性又は油質懸濁液などの滅菌注射用製剤の形態であってもよい。この懸濁液は、上述した好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用い、従来技術に従って製剤化することができる。また、滅菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液など、非経口投与可能な無毒の希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよく、又は凍結乾燥粉末として調製されてもよい。使用されうる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液及び等張食塩水がある。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒として慣習的に用いられ得る。このため、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含め、任意の無刺激不揮発性油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の調製において同様に使用することができる。
【0113】
単一剤形を作るために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与方法に応じて変化する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した徐放性製剤は、組成物全体の約5から約95%(重量:重量)の範囲で変化し得る適切で都合のよい量の担体材料と配合された、およそ1から1000mgの活性物質を含有し得る。薬学的組成物は、容易に測定可能な投与量を提供するように調製することができる。例えば、静脈内注入用の水溶液は、約30mL/時の速度で適切な容積の注入を行うことができるように、溶液1ミリリットル当たり約3から500μgの活性成分を含有することができる。
【0114】
非経口投与に適した製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び対象レシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁剤を含む。
【0115】
眼への局所投与に適した製剤には、適切な担体、特に活性成分に対する水性溶媒に活性成分が溶解又は懸濁している点眼剤も含まれる。好ましくは、活性成分は、このような製剤中に約0.5から20% w/w、例えば約0.5から10% w/w、例えば約1.5% w/wの濃度で存在する。
【0116】
口内局所投与に適した製剤には、風味付けした基剤(通常スクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ剤;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む香錠;並びに好適な液体担体中に活性成分を含む洗口液が含まれる。
【0117】
直腸投与用の製剤は、例えばカカオ脂又はサリチレートを含む好適な基剤を用いた坐薬として提供されてもよい。
【0118】
肺内投与又は鼻内投与に適した製剤は、例えば0.1から500ミクロンの範囲の粒径(0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等のミクロン単位で0.1から500ミクロンの範囲の粒径を含む)を有し、これは、鼻腔を介した急速吸入によって、又は口腔を介した吸入によって投与され、肺胞嚢に達する。適切な製剤には、活性成分の水性又は油性溶液が含まれる。エアロゾル又は乾燥粉末投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製してもよく、後述の障害の治療又は予防において従来使用されている従来の化合物などの他の治療剤と共に送達してもよい。
【0119】
膣投与に適した製剤は、適切であることが当該技術分野において知られている担体を活性成分に加えて含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤又はスプレー剤として提供されてもよい。
【0120】
この製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルに入れてもよく、注射用の滅菌液体担体(例えば水)を使用直前に加えるだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時注射液及び懸濁剤は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好ましい単位用量製剤は、本明細書に上述の日用量若しくは単位日副用量(unit daily sub-dose)又はその適切な画分の活性成分を含有するものである。
【0121】
本発明は、少なくとも1の上記の活性成分を、それに対する獣医学用担体と共に含む獣医学的組成物をさらに提供する。獣医学用担体は、この組成物を投与する目的に有用な物質であり、他の点では不活性であるか、又は獣医学分野において許容され、かつ、活性成分と相溶性の固体、液体又は気体物質であり得る。このような獣医学的組成物は、非経口、経口で、又はその他の任意の所望の経路によって投与することができる。
【0122】
併用療法
式Iの化合物は、単独で用いても、又は炎症若しくは過剰増殖性障害(例えばがん)などの、本明細書に記載の疾患若しくは障害の治療のための追加の治療剤と組み合わせて用いてもよい。特定の実施態様において、式Iの化合物は、抗炎症性若しくは抗過剰増殖特性を有するか又は炎症、免疫応答障害若しくは過剰増殖性障害(例えばがん)を治療するために有用な第2の治療用化合物と共に、組み合わせ医薬製剤又は併用療法の投与レジメンに組み込まれる。追加の治療剤は、Bcl−2阻害剤、JAK阻害剤、抗炎症剤、免疫調節剤、化学療法剤、アポトーシス促進剤、神経栄養因子、心血管疾患治療剤、肝疾患治療剤、抗ウイルス剤、血液障害治療剤、糖尿病治療剤、及び免疫不全障害治療剤であり得る。第2の治療剤は、NSAID抗炎症剤であってもよい。第2の治療剤は、化学療法剤であってもよい。組み合わせ医薬製剤又は投与レジメンの第2の化合物は、互いに悪影響を与えないように式Iの化合物を補完する活性を好ましくは有する。このような化合物は、意図した目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。一実施態様では、本発明の組成物は、式Iの化合物あるいはその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグを含み、NSAIDなどの治療剤と組み合わされる。
【0123】
併用療法は、同時又は逐次レジメンとして投与され得る。逐次的に投与される場合、その組み合わせは、2回以上の投与で投与され得る。併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する共投与及びいずれかの順序での連続投与が含まれ、好ましくは双方の(又はすべての)活性剤がその生物学的活性を同時に発揮する期間がある。
【0124】
上記共投与剤の適切な投与量は、現在使用されているものであり、新たに同定される薬剤及び他の治療剤又は治療との複合作用(相乗作用)により減じられる可能性がある。
【0125】
併用療法は、「相乗作用」をもたらし、「相乗的」であること、すなわち活性成分を一緒に使用した際に達成される効果が化合物を別々に使用することにより得られる効果の和を上回ることを証明することができる。相乗効果は、活性成分が(1)組み合わされた単位用量製剤中に共配合され、同時に投与又は送達される場合;(2)別個の製剤として交互に又は並行して送達される場合;又は(3)他の何らかのレジメンで送達される場合に、得られる。交互療法で送達される場合、相乗効果は、例えば別個のシリンジでの異なる注射、別個の丸薬若しくはカプセル剤又は別個の注入によって化合物が逐次的に投与又は送達される際に、得られる。一般に、交互療法の際は、各活性成分の有効投与量が逐次的に、すなわち連続して投与されるが、併用療法では、2種以上の活性成分の有効投与量が併せて投与される。
【0126】
治療の特定の実施態様では、式Iの化合物あるいはその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグは、他の治療剤、ホルモン剤又は抗体薬剤(例えば本明細書に記載されてもの)、並びに外科療法及び放射線療法と組み合わせてもよい。したがって、本発明による併用療法は、式Iの少なくとも1の化合物あるいはその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグの投与と、少なくとも1の他のがん治療方法の使用とを含む。式Iの化合物及び他の薬学的に活性な治療剤の量及び投与の相対的タイミングは、所望の併用治療効果が得られるように選択される。
【0127】
式Iの化合物と組み合わせて使用される追加の治療剤には、5−FU、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、コビメチニブ、イパタセルチブ、パクリタキセル、タモキシフェン、フルベストラント、GDC−0810、デキサメタゾン、パルボシクリブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン、トラスツズマブ、及びレトロゾールが含まれる。
【0128】
式1の化合物の代謝物
本明細書に記載の式Iのin vivo代謝産物も、本発明の範囲内に含まれる。このような産物は例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断等から生じ得る。したがって、本発明は、本発明の化合物をその代謝産物を生じるのに十分な時間にわたって哺乳動物と接触させることを含む方法によって生じる化合物を含めた、式Iの化合物の代謝産物を含む。
【0129】
代謝産物は典型的には、本発明の化合物の放射標識(例えば14C又はH)同位体を調製し、それをラット、マウス、モルモット、サル等の動物に又はヒトに検出可能な用量(例えば約0.5mg/kg超)で非経口投与し、代謝が起こるのに十分な時間(典型的には約30秒から30時間)放置して尿、血液又はその他の生物学的試料からその変換産物を単離することによって、同定される。これらの産物は、標識されているため、容易に単離される(他のものは、代謝産物中に残存しているエピトープに結合することができる抗体を使用することによって単離される)。代謝産物の構造は、従来の方法、例えばMS、LC/MS又はNMR分析によって決定される。一般に、代謝産物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方法で行われる。代謝産物は、他にin vivoで見出されない限り、本発明の化合物の治療的投与のための診断アッセイにおいて有用である。
【0130】
製造品
本発明の別の実施態様において、上記の疾患及び障害の治療に有用な材料を含有する製品又は「キット」が提供される。一実施態様では、キットは、式Iの化合物あるいはその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝産物又は薬学的に許容される塩又はプロドラッグを収容する容器を備える。キットは、容器に貼られているか又は付属するラベル又は添付文書をさらに備えていてもよい。「添付文書」という用語は、治療製品の商品パッケージに通例含まれる、効能、用法、用量、投与、禁忌、及び/又は当該治療製品の使用に関する警告についての情報を含む説明書をいうのに使用される。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパッグ等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されていてよい。容器は、病態を治療するのに有効な式Iの化合物又はその製剤を収容することができ、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針で穿刺可能な、ストッパーを有する静脈内溶液のバッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1の活性剤が、式Iの化合物である。ラベル又は添付文書は、組成物ががんなどの選択した状態を治療するために使用されることを表示する。さらに、ラベル又は添付文書は、治療される患者が過剰増殖性障害、神経変性、心臓肥大、疼痛、片頭痛又は神経外傷性疾患若しくは事象等の障害を有する患者であることを表示してもよい。一実施態様において、ラベル又は添付文書は、異常な細胞増殖に起因する障害を治療するのに式Iの化合物を含む組成物を使用することができることを表示する。ラベル又は添付文書はまた、組成物が他の障害を治療するのに使用することができることを表示してもよい。代替的に、又は追加的に、製造品は、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を収容する第2の容器をさらに備えていてもよい。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針及びシリンジ等、商業的観点及び使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに備えていてもよい。
【0131】
キットは、式Iの化合物及び(存在する場合には)第2の薬学的製剤の投与のための指示書をさらに備えていてもよい。例えば、キットは、式Iの化合物及び第2の薬学的製剤を含む第1の組成物を備える場合、第1及び第2の薬学的組成物を必要とする患者に同時、逐次又は個別投与するための指示書をさらに備えていてもよい。
【0132】
別の実施態様において、キットは、式Iの化合物の固体経口形態(錠剤又はカプセル剤など)の送達に適している。好ましくは、このようなキットは、複数の単位用量を含む。このようなキットには、その使用目的に従って割り当てられた投与量を記したカードを含めることができる。このようなキットの例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業において周知であり、薬学的単位剤形を包装するために広く使用されている。必要であれば、記憶の助けとなるものを、例えば数字、文字若しくは他のマークの形式で、又は該用量が投与され得る治療スケジュールにおける日にちを指定するカレンダー挿入物で提供することができる。
【0133】
一実施態様によれば、キットは、(a)式Iの化合物を中に収容する第1の容器;及び任意選択的に(b)第2の薬学的製剤を中に収容する第2の容器を備えていてもよく、ここで第2の薬学的製剤は、抗過剰増殖活性を有する第2の化合物を含む。代替的に又は追加的に、キットは、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液を収容する第3の容器をさらに備えていてもよい。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針及びシリンジ等、商業的観点及び使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに備えていてもよい。
【0134】
キットが式Iの組成物及び第2の治療剤を含む特定の他の実施態様において、キットは、例えば別々の瓶又は別々のホイル小包といった個々の組成物を収容するための容器を備えることができるが、個々の組成物は、分かれていない一つの容器の中に収容されていてもよい。一般的に、キットは、個々の成分の投与のための指示書を含む。キット形態は、個々の成分を異なる投与形態(例えば経口と非経口)で投与することが好ましい場合、異なる投与間隔で投与する場合、又は処方医師が組み合わせの個々の成分の用量設定を望む場合に、特に有利である。
【0135】
式Iの化合物の調製
式Iの化合物は、特に本明細書に含まれる説明に照らして、化学の技術分野で周知の過程及びComprehensive Heterocyclic Chemistry II, Editors Katritzky and Rees, Elsevier, 1997, 例えば第3巻; Liebigs Annalen der Chemie, (9):1910-16, (1985); Helvetica Chimica Acta, 41:1052-60, (1958); Arzneimittel-Forschung, 40(12):1328-31, (1990)(それぞれ出典明示により援用される)に記載されている他のヘテロ環のための過程と類似の過程を含む合成経路によって、合成することができる。出発物質は一般に、Aldrich Chemicals(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などの商業的供給源から入手可能であるか、又は当業者に周知の方法を使用して容易に調製される (例えば、Louis F. Fieser and Mary Fieser, Reagents for Organic Synthesis, v. 1-23, Wiley, N.Y. (1967-2006 ed.), 又はBeilsteins Handbuch der organischen Chemie, 4, Aufl. ed. Springer-Verlag, Berlin(補遺版含む)(Beilsteinオンラインデータベースを介しても入手可能)に概要が記載された方法により調製される)。
【0136】
式Iの化合物、並びに必要な試薬及び中間体を合成するのに有用な合成化学変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野で周知であり、例えばR. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T. W. Greene and P. G .M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)及びその後続版に記載されているものを含む。
【0137】
実施例は、式Iの化合物を調製するための例示的な方法を提供する。当業者であれば、他の合成経路を用いて式Iの化合物を合成することができるであろう。特定の出発材料及び試薬がスキーム及び実施例に示され、説明されているが、種々の誘導体及び/又は反応条件を得るために、他の出発材料及び試薬で容易に代用することができる。加えて、記載した方法によって調製される例示的な化合物の多くは、当業者に周知の従来の化学を用いつつ、本開示に照らしてさらに修飾することができる。
【0138】
式Iの化合物を調製する際、中間体の遠隔官能基(例えば第1級又は第2級アミン)の保護が必要なことがある。そのような保護の必要性は、遠隔官能基の性質及び調製方法の条件に応じて異なってくる。適切なアミノ保護基には、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)及び9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。そのような保護の必要性は、当業者によって容易に決定される。保護基及びそれらの使用の一般的な説明については、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照されたい。
【0139】
式Iの化合物を調製する方法では、反応生成物を互いから及び/又は出発物質から分離することが有利であり得る。各工程又は一連の工程の所望の生成物は、当該技術分野で一般的な技術によって、分離及び/又は所望の程度の均質性にまで精製される。典型的には、このような分離は、多相抽出、溶媒若しくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華又はクロマトグラフィーを含む。クロマトグラフィーは、例えば逆相及び順相;サイズ排除;イオン交換;高、中、低圧液体クロマトグラフィー法並びに装置;小規模分析;擬似移動床(SMB)及び分取薄層又は厚層クロマトグラフィー、並びに小規模薄層及びフラッシュクロマトグラフィー等、あらゆる方法が含まれる。
【0140】
別の種類の分離方法は、所望の生成物、未反応の出発物質、反応副生成物等に結合するか又はそれらを他の方法で分離可能にするように選択された試薬で混合物を処理することを含む。そのような試薬には、活性炭、モレキュラーシーブ、イオン交換媒体等の吸着剤又は吸収剤が含まれる。あるいは、試薬は、塩基性物質の場合には酸、酸性物質の場合には塩基、抗体などの結合試薬、結合タンパク質、クラウンエーテルなどの選択的キレート剤、液/液イオン抽出試薬(LIX)等であり得る。適切な分離方法の選択は、関係する物質の性質、例えば蒸留及び昇華における沸点及び分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の有無、多相抽出における酸性及び塩基性媒体中の物質の安定性等によって決まる。
【0141】
ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィー及び/又は分別再結晶などの当業者に周知の方法によって、それらの物理的化学的相違に基づいて、個々のジアステレオマーに分離することができる。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコール又はモッシャー酸塩化物などのキラル助剤)との反応によってエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換すること、ジアステレオマーを分離すること、及び個々のジアステレオ異性体を変換(例えば加水分解)して対応する純粋なエナンチオマーに変換することによって、分離することができる。また、本発明の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば置換ビアリール)であってもよく、本発明の一部とみなされる。エナンチオマーはまた、キラルHPLCカラムの使用によって分離することができる。
【0142】
その立体異性体を実質的に含まない単一の立体異性体、例えばエナンチオマーは、光学活性な分割剤を使用するジアステレオマーの形成などの方法を用いるラセミ混合物の分割により得ることができる(Eliel, E. and Wilen, S. 「Stereochemistry of Organic Compounds,」 John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994; Lochmuller, C. H., (1975) J. Chromatogr., 113(3):283-302)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物によるイオン性ジアステレオマー塩の形成及び分別再結晶又は他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬によるジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離、及び純粋な立体異性体への変換、(3)キラル条件下での実質的に純粋な又は濃縮された立体異性体の直接的分離を含む、任意の適切な方法により分離及び単離することができる。「Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology」, Irving W. Wainer編., Marcel Dekker, Inc., New York (1993)を参照のこと。
【0143】
方法(1)の下では、ジアステレオマー塩は、エナンチオマー的に純粋なキラル塩基、例えばブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等を、例えばカルボン酸やスルホン酸などの酸性官能基を有する不斉化合物と反応させることにより形成され得る。ジアステレオマー塩は、分別再結晶又はイオンクロマトグラフィーによって分離させることができる。アミノ化合物の光学異性体を分離する場合、キラルカルボン酸又はスルホン酸、例えばカンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸又は乳酸の添加は、ジアステレオマー塩の形成をもたらし得る。
【0144】
あるいは、方法(2)により、分割すべき基質をキラル化合物の1つのエナンチオマーと反応させて、ジアステレオマー対を形成する(E. and Wilen, S. 「Stereochemistry of Organic Compounds」, John Wiley & Sons, Inc., 1994, p. 322)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をエナンチオマー的に純粋なキラル誘導体化試薬、例えばメンチル誘導体と反応させ、続いてジアステレオマーを分離し、加水分解して純粋又は濃縮エナンチオマーを生成することによって形成され得る。光学純度の決定方法は、ラセミ混合物のキラルエステル、例えばメンチルエステル(塩基の存在下での(−)クロロギ酸メンチル等)、又はMosherエステルであるa−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセテート(Jacob III.Chem., (1982) 47:4165)を作製すること、及び2のアトロプ異性エナンチオマー又はジアステレオマーの存在に関してH NMRスペクトルを分析することを含む。アトロプ異性化合物の安定なジアステレオマーは、アトロプ異性ナフチル−イソキノリンの分離方法(国際公開第96/15111号)に従い、順相及び逆相クロマトグラフィーによって分離及び単離することができる。方法(3)により、2のエナンチオマーのラセミ混合物を、キラル固定相を用いるクロマトグラフィーによって分離することができる(「Chiral Liquid Chromatography」(1989) W. J. Lough, Ed., Chapman and Hall, New York; Okamoto, J. Chromatogr., (1990) 513:375-378)。濃縮又は精製されたエナンチオマーは、不斉炭素原子を有する他のキラル分子を識別するのに使用される方法、例えば旋光性及び円偏光二色性などによって識別することができる。
【0145】
本発明の化合物は、一般スキーム1〜3に示すように調製した。
スキーム1
a)MgCl、トリエチルアミン、パラホルムアルデヒド、アセトニトリル、熱;b)オキサルデヒド、水酸化アンモニウム、熱;c)炭酸セシウム、1,2−ジブロモエタン、DMF、熱;d)N−ヨードスクシンイミド、DMF、熱;e)i.EtMgBr、THF、−20℃、ii.塩化アンモニウム水溶液
【0146】
スキーム1に示すように、4−ブロモ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 2は、市販の3−ブロモフェノールをホルミル化することによって得ることができる。オキサルデヒドで2を加熱すると、3が得られる。オキサゼピン環は、1,2−ジブロモエタンで3を加熱することによって形成することもできる。ビスヨウ素化(bis iodination)は、N−ヨードスクシンイミドとの反応によって誘導され、3−ヨード基は、低温でのエチルマグネシウムブロミドを用いる処理により、選択的に除去され、6が得られる。
【0147】
スキーム2
f)4−置換オキサゾリジン−2−オン、Cu(OAc)、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、炭酸カリウム、ジオキサン、熱;g)L−プロリン、CuI、KPO、DMSO、熱;h)塩化アンモニウム、トリエチルアミン、HATU(1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート)
【0148】
スキーム2に示すように、6を銅触媒を用いて適切に置換されたオキサゾリジン−2−オンにカップリングさせて7を得ることができる。ブロモ中間体7は、銅触媒下で適切に置換されたアミノ酸にカップリングされ、続いて塩化アンモニウムとのHATU媒介アミドカップリングによって化合物8が得られ得る。
【0149】
スキーム3
i)4,4,5,5−テトラメチル−2−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボラン、KOAc、Pd(dppf)Cl、ジオキサン、熱;j)H、水、0°C;k)(2R)−2−ヒドロキシプロパン酸メチル、トリフェニルホスフィン、DEAD、ジオキサン;l)N−ヨードスクシンイミド、DMF、熱;m)EtMgBr、THF、−40°C;n)4−置換オキサゾリジン−2−オン、CuI、トランス−N,N−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン、炭酸カリウム、ジオキサン、熱;o)アンモニア、メタノール
【0150】
スキーム3に示されるように、4は、4,4,5,5−テトラメチル−2−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボランとのパラジウム触媒カップリングを介して、ボロン酸ピナコールエステル9に変換することができる。過酸化水素での酸化は、フェノール10を生じる。(2R)−2−ヒドロキシプロパン酸メチルと10との光延反応により、11が得られる。N−ヨードスクシンイミドによる11のビスヨード化、続いてエチルマグネシウムブロミドでの3−ヨード基の選択的除去により、モノヨード12が得られる。中間体12を銅触媒を用いて適切に置換されたオキサゾリジン−2−オンにカップリングさせて、13を得ることができる。アンモニアと及びメタノールと共に加熱することにより、13のメチルエステルを第1級アミド14に変換することができる。
【実施例】
【0151】
略称
DMSO ジメチルスルホキシド
ESI エレクトロスプレーイオン化
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
min 分
N 正常
NMR 核磁気共鳴
保持時間
【0152】
LCMS 方法A:実験は、PDA UV検出器を備えたWaters Acquity UPLCシステムに連結されたWaters Micromass ZQ2000四重極質量分析計で実施した。分光計は、正及び負のイオンモードで作動するエレクトロスプレー源を有する。このシステムは、40℃に維持されるAcquity BEH C18 1.7μm 100x2.1mmカラム又は40℃及び0.4mL/分の流速に維持されるAcquity BEH Shield RP18 1.7μm 100x2.1mmカラムを使用する。初期溶媒系は、最初の0.4分間は0.1%ギ酸含有水(溶媒A)95%及び0.1%ギ酸含有アセトニトリル(溶媒B)5%であり、次の5.6分にわたり、5%までの溶媒A及び95%の溶媒Bの勾配が続いた。これを0.8分間維持した後、次の0.2分の間に溶媒A95%及び溶媒B5%に戻した。総実行時間は8分であった。
【0153】
LCMS 方法B:実験は、ESIをイオン化源として使用するAgilent MSD質量分析計と組み合わせたAgilent 1100 HPLCで実施した。LC分離は、0.4mL/分の流速を有するPhenomenex XB−C18、1.7mm、50×2.1mmカラムを使用した。溶媒Aは、0.1%ギ酸を含む水であり、溶媒Bは、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルである。勾配は、7分間にわたる2−98%の溶媒Bからなり(consisted with)、1.5分間平衡化した後に、97%のBを1.5分間保持した。LCカラム温度は、40℃であった。UV吸光度を220nm及び254nmで収集し、質量スペクトルフルスキャンをすべての実験に適用した。
【0154】
実施例101 (S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド101
【0155】
工程1: 4−ブロモ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド
窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20Lの四口丸底フラスコに、3−ブロモフェノール(1300g、7.51mol)、ジクロロマグネシウム(1078g、11.3mol)、トリエチルアミン(3034g、30.0mol)及びアセトニトリル(7.8L)を入れた。この混合物を40℃で30分間撹拌した。この混合物にパラホルムアルデヒド(676g、22.6mol)を80℃で加えた。得られた溶液を76℃で6時間撹拌した。この反応を5回繰り返した。合わせた反応混合物を12Lの塩化水素水溶液(4N)の添加によりクエンチした。溶液のpH値を濃塩化水素水溶液(12N)で5に調整した。得られた溶液を1x20Lの酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を減圧中でエバポレートした。残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離:石油エーテル中15%酢酸エチル)で精製し、粗生成物を得た。これを2.4Lのtert−ブチルメチルエーテル:ヘキサン(1:4)で洗浄した。得られた固体を濾過により回収し、7.0kg(78%)の表題化合物を黄色固体として得た。
【0156】
工程2: 5−ブロモ−2−(1H−イミダゾール−2−イル)フェノール
20Lの四口丸底フラスコに、4−ブロモ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド(700g、3.50mol)のメタノール(7.0L)及びオキサルデヒド(oxaldehyde)(40%)(2540g、17.5mol)の溶液を入れ、続いて、温度を40℃未満に維持しつつ、アンモニア水(25−28%、3500g)を撹拌しながら4時間にわたり滴下した。得られた溶液を30−35℃で15時間撹拌した。この反応を9回繰り返した。温度を45℃未満に保ちながら、合わせた9回分の反応混合物を減圧中でエバポレートした。残留物を100Lの酢酸エチルで30分間撹拌しながら希釈した。固形物を濾過して取り除き、得られた溶液を水で希釈した。水性相を35Lの酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を減圧下でエバポレートし、残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:石油エーテル中5−75%酢酸エチル)で精製し、2.4kg(29%)の表題化合物を黄色固体として得た。
【0157】
工程3: 9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン
20Lの四口丸底フラスコに5−ブロモ−2−(1H−イミダゾール−2−イル)フェノール(1.4kg、5.86mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(14L)及び炭酸セシウム(7.2kg、22.1mol)に溶解した溶液を入れた。この混合物を20分間撹拌した。この反応混合物に1,2−ジブロモエタン(4.1kg、21.8mol)を加えた。得られた溶液を85−90℃で4−12時間撹拌し、15℃まで冷まし、濾過した。その濾過ケーキを3.0Lの酢酸エチルで洗浄した。濾液を14Lの酢酸エチルで希釈した。合わせた有機抽出物をブライン(4×14L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートし、1.1kg(71%)の表題化合物を淡黄色固体として得た。LCMS (ESI): [M+H]+ =265; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.32 (d, J = 8.4, 1H), 7.35-7.24 (m, 3H), 7.06 (s, 1H), 4.47-4.42 (m, 4H).
【0158】
工程4: 9−ブロモ−2,3−ジヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン
20Lの四口丸底フラスコに、9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(2.5kg、9.43mol)とN,N−ジメチルホルムアミド(12.5L)を入れ、続いてN−ヨードスクシンイミド(6.0kg、26.7mol)を撹拌しながら数回に分けて添加した。得られた溶液を60℃で12時間撹拌し、水/氷浴で15℃に冷却し、12.5Lの水/氷で希釈し、濾過した。濾過した固形物を石油エーテルから再結晶化させ、4.0kg(82%)の表題化合物を黄色固体として得た。
【0159】
工程5: 9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン
窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した20Lの四口丸底フラスコに、9−ブロモ−2,3−ジヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(800g、1.55mol)とテドロヒドロフラン(2.4L)を入れ、続いてエチルマグネシウムブロミド(エーテルに溶解した1N溶液、1.7L)を撹拌しながら−20℃で3.5時間かけて滴下した。その反応混合物を氷/塩浴を用いて−15℃に保ちながら3時間撹拌した。得られた混合物を3.0Lの飽和塩化アンモニウム水溶液の添加によりクエンチし、酢酸エチル(2×8.0L)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(2x10L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物を酢酸エチル:石油エーテル(1:5)8.0Lで粉砕し、濾過し、石油エーテルで洗浄して表題化合物501g(83%)を褐色固体として得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 391; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.22 (d, J = 8.7, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.30-7.25 (m, 2H), 4.45-4.41 (m, 4H).
【0160】
工程6: (R)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オン及び(R)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オン
9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(500mg、1.28mmol)、(R)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オン(231mg、1.79mmol)、ヨウ化第1銅(48.7mg、0.256mmol)、トランス−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン(91μL、0.575mmol)及び炭酸カリウム(246mg、1.79mmol)の混合物をジオキサン(1.25mL)に懸濁させ、反応混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。得られた混合物を100℃で24時間加熱した。反応を停止させ、室温に冷ました。得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、0.965g(〜42%)の表題化合物(9−Br:9−I生成物の〜1:2混合物)を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 391/393/439.
【0161】
工程7: (R)−3−(9−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オン
(R)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オンと(R)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オン(440mg、1.0mmol)、ヨウ化第1銅(19.0mg、0.1mmol)、(L)−乳酸(318μL、3.0mmol)及び炭酸セシウム(1.95g、6.0mmol)の混合物をジメチルスルホキシド(2.0mL)/水(2.0mL)に懸濁させた。得られた混合物を120℃で24時間加熱した。反応を停止させ、室温に冷ました。1N塩酸(6.0mL)の添加により反応を中和した。反応物を酢酸エチルとブラインとに分配した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、334mg(51%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 330.
【0162】
工程8: (S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
(R)−3−(9−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−イソプロピルオキサゾリジン−2−オン(334mg、1.01mmol)をTHF(5.0mL)中に溶媒和させた。(2R)−2−ヒドロキシプロパン酸メチル(145μL、1.52mmol)及びトリフェニルホスフィン(399mg、1.52mmol)を加え、反応物を室温で攪拌した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(299μl、1.52mmol)を加え、反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応物を減圧中でエバポレートし、粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、421mg(定量的)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 416.
【0163】
工程9: (S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸
(S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(421mg、1.00mmol)及び水酸化リチウム一水和物(128mg、3.00mmol)をTHF/水(4.0mL/2.0mL)中に溶媒和させ、反応物を室温で撹拌した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後1N塩酸(3.0mL)で中和し、減圧中でトルエンと共沸させた。得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:酢酸エチル中、2Nのアンモニアのメタノール溶液0−40%)で精製し、260mg(64%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 402.
【0164】
工程10: (S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド
(S)−2−((2−((R)−4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸(260mg、0.647mmol)、塩化アンモニウム(69.3mg、1.29mmol)及び1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(369mg、0.97)をN,N−ジメチルホルムアミド(5.0mL)中に溶媒和させた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(332μL、1.94mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。得られた混合物を減圧中でエバポレートし、残留物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶媒勾配:酢酸エチル中0−10%メタノール)で精製した。生成物を逆相C18カートリッジ(溶媒勾配:水中0−95%アセトニトリル、0.1%水酸化アンモニウム緩衝液)でさらに精製し、凍結乾燥させて128mg(43%)の101を得た。LCMS (ESI): RT(min) = 3.38, [M+H]+ = 401, method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.12 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.23 (s, 2H), 6.68 (dd, J = 8.8, 2.6 Hz, 1H), 6.46 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 4.60 (q, J = 6.6 Hz, 1H), 4.49 - 4.45 (m, 1H), 4.41 - 4.33 (m, 5H), 4.30 - 4.27 (dd, J = 8.9, 3.9 Hz, 1H), 2.49 - 2.47 (m, 1H), 1.40 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.87 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 0.74 (d, J = 7.0 Hz, 3H).
【0165】
実施例102 (S)−1−(2−((R)−4−メチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド 102
【0166】
工程1: (R)−4−メチルオキサゾリジン−2−オン
0℃のD−アラニノールのトルエン溶液(8.65g、0.12mmol)とKOH水溶液(124mL、12.5%水溶液、0.28mmol)との混合物に、内部温度が<5℃に保たれるような速度でホスゲン(72.7mL、トルエン中20%、0.14mmol)を加えた。その反応混合物を0℃でさらに40分間撹拌し、その後蒸発乾固させた。粗残留物を工業用変性アルコール(industrial methylate spirit)で抽出し、スラリーを濾過し、濾液を減圧中でエバポレートした。得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中40−100%酢酸エチル)で精製し、10.4g(90%)の表題化合物を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.00 (br s, 1H), 4.50 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 4.07 - 3.97 (m, 1H), 3.95 (dd, J = 7.8, 6.2 Hz, 1H), 1.30 (d, J = 6.1 Hz, 3H).
【0167】
工程2: (R)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−メチルオキサゾリジン−2−オン及び(R)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−メチルオキサゾリジン−2−オン
9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(30.0g、76.7mmol)、(R)−4−メチルオキサゾリジン−2−オン(7.70g、76.7mmol)、ヨウ化第1銅(1.61g、8.40mmol)、トランス−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン(2.7mL、16.9mmol)と炭酸カリウム(14.9g、107mmol)の混合物を1,4−ジオキサン(200mL)に懸濁させ、反応混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。得られた混合物を100℃で16時間加熱した。その反応混合物をアンモニア水溶液(〜16%)で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、13.4g(〜42%)の表題化合物(9−Br:9−I生成物の〜2:1混合物)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.28 (d, J = 7.6 Hz, 0.33H), 8.11 (d, J = 6.9 Hz, 0.66H), 7.42 - 7.38 (m, 1H), 7.28 - 7.24 (m, 1.33H), 7.23 - 7.18 (m, 0.66H), 4.77 - 4.68 (m, 1H), 4.58 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 4.49 - 4.39 (m, 2H), 4.37 - 4.30 (m, 2H), 4.08 (dd, J = 8.4, 4.5 Hz, 1H), 1.57 - 1.50 (m, 3H).
【0168】
工程3: (R)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−メチルオキサゾリジン−2−オン
(R)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−メチルオキサゾリジン−2−オンと(R)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−メチルオキサゾリジン−2−オンとの混合物80mgをキラルSFCで分離し、35.0mgの表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 412.0; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.04 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.35 (s, 1H), 4.64 - 4.54 (m, 2H), 4.47 - 4.41 (m, 4H), 4.09 - 4.06 (m, 1H), 1.41 (d, J = 6.0 Hz, 3H).
【0169】
工程4: (2−((R)−4−メチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−L−プロリン
ジメチルスルホキシド(4.0mL)に(R)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−メチルオキサゾリジン−2−オン(414mg、1.01mmol)、L−プロリン(579mg、5.03mmol)、ヨウ化第1銅(81mg、0.42mmol)及び三塩基性リン酸カリウム(128mg、6.03mmol)を入れた混合物を80℃で18時間加熱した。粗反応混合物をISOLUTE(登録商標)SCX−2カートリッジ(溶媒勾配:ジクロロメタン中、2Nのアンモニアのメタノール溶液0−30%)で精製し、その後シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーで精製し、262mg(65%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 399.
【0170】
工程5: (S)−1−(2−((R)−4−メチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド
(2−((R)−4−メチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−L−プロリン(262mg、0.66mmol)、塩化アンモニウム(70mg、1.31mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.34mL、1.97mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(3.0mL)溶液に、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(374mg、0.98mmol)を加え、反応混合物を室温で6時間撹拌した。得られた混合物を減圧中でエバポレートし、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:酢酸エチル中0−10%メタノール)で精製し、その後逆相HPLCでさらに精製し、凍結乾燥させて110mg(42%)の102を白色固体として得た。LCMS (ESI): RT (min) = 2.60 [M+H]+ = 398.0, Method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.03 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.37 (br s, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.02 (br s, 1H), 6.28 (dd, J = 8.9, 2.4 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.58 - 4.47 (m, 2H), 4.38 - 4.25 (m, 4H), 4.05 - 3.96 (m, 1H), 3.92 - 3.87 (m, 1H), 3.56 - 3.47 (m, 1H), 3.24 - 3.16 (m, 1H), 2.21 - 2.10 (m, 1H), 2.00 - 1.86 (m, 3H), 1.37 (d, J = 5.9 Hz, 3H).
【0171】
実施例103 (S)−1−(2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド 103
工程1: (R)−2−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ−1−フェニルエタン−1−アミン
(R)−2−アミノ−2−フェニルエタノール(50g、0.36mol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(9.0g、73.6mmol)とトリエチルアミン(102mL、0.73mmol)を加えた。反応混合物を氷浴で冷却し、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(54.8g、0.36mol)のジクロロメタン(300mL)溶液を、内部温度を<10℃に保ちながらゆっくりと添加した。反応混合物を常温に温め、一晩撹拌した。得られた混合物を水、ブラインで2回で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗油状物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中5−50%酢酸エチル)で精製し、65.0g(71%)の表題化合物を無色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.38 - 7.23 (m, 5H), 4.07 (dd, J = 8.4, 3.9 Hz, 1H), 3.72 (dd, J = 9.7, 3.9 Hz, 1H), 3.51 (dd, J = 9.5, 8.5 Hz, 1H), 1.72 (br s, 2H), 0.90 (s, 9H), 0.02 (s, 6H).
【0172】
工程2: (R)−2−((2−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−1−フェニルエチル)イミン)−3,3,3−トリフルオロプロパン酸エチル
トルエン(2.0L)に(R)−2−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−1−フェニルエタン−1−アミン(63.5g、253mmol)、3,3,3−トリフルオロ−2−オキソプロピオン酸エチルエステル(48.5g、285mmol)及びp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(6.76g、36.9mmol)が入った混合物をディーン・スターク還流装置の条件下で16時間加熱した。反応混合物を、常温に冷却し、減圧中でエバポレートした。得られた残留物にジエチルエーテル(3.75L)を添加し、未溶解固体を濾過により除去した。結果として得られたエーテル溶液は、精製せずに次の工程でそのまま使用した。
【0173】
工程3: (S)−3,3,3−トリフルオロ−2−(((R)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)アミノ)プロパン−1−オール
(R)−2−((2−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−1−フェニルエチルl)イミノ)−3,3,3−トリフルオロプロパン酸エチルのジエチルエーテル溶液(0℃)(上記工程2からの粗生成物、253mmolとみなす)に、水素化アルミニウムリチウム(755mL、1.0Nテトラヒドロフラン溶液、755mmol)を、温度を<8℃に保ちながらゆっくり加えた。反応混合物を周常温に温め、16時間撹拌し、温度を<10℃に保ちながら水(31mL)、次いでNaOH(31mL、15%水溶液)、続いて水(93mL)を滴下してクエンチした。得られた沈殿物をCelite(登録商標)での濾過により除去し、濾液をシリカゲルパッドに通した。濾液を減圧中でエバポレートし、得られた粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中10−80%酢酸エチル)で精製し、28g(45%)の表題化合物(最初に溶出する異性体)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.39 - 7.30 (m, 5H), 4.15 (dd, J = 9.0, 4.1 Hz, 1H), 3.75 (dd, J = 10.7, 4.0 Hz, 1H), 3.68 - 3.54 (m, 3H), 3.14 - 3.06 (m, 1H), 2.43 (br s, 1H), 2.22 (br s, 1H), 2.04 (br s, 1H).
【0174】
工程4: (S)−2−アミノ−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−オール塩酸塩
(S)−3,3,3−トリフルオロ−2−(((R)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)アミノ)プロパン−1−オール(28.0g、112mmol)のエタノール溶液(300mL)に、HCl(118mL、メタノール中1.25N)及びHCl(28.4mL、ジオキサン中4N)、続いて水酸化パラジウム炭素(3.86g、20重量%)を加え、反応混合物を水素雰囲気下で6.5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧中でエバポレートした。残留物をジエチルエーテルで粉砕して、17.1g(92%)の表題化合物を白色固体として得た。[α]D -9° (c = 2.0, ethanol); 1H NMR (400 MHz, MeOD-d4) δ 4.19 - 4.11 (m, 1H), 3.96 (dd, J = 12.3, 4.3 Hz, 1H), 3.89 (dd, J = 12.1, 5.9 Hz, 1H).
【0175】
工程5: (S)−4−トリフルオロメチルオキサゾリジン−2−オン
トルエン(85mL)に(S)−2−アミノ−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−オール塩酸塩(12.6g、76.1mmol)及びKOH(12.5%水溶液、175mL、0.39mol)が入った強撹拌混合物(13℃)に、温度を10℃に保ちながらホスゲン(78mL、トルエン中20%溶液、0.157mmol)を滴下した。反応混合物をさらに15分間、10℃で撹拌し、減圧中でエバポレートした。残留固体を高温の工業用変性アルコールで抽出し、Celite(登録商標)パッドで濾過し、濾液を減圧下でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中30−100%酢酸エチル)で精製し、8.87g(75%)の表題化合物を白色固体として得た。[α]D +18° (c = 1.0, methanol); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.01 (br s, 1H), 4.58 (t, J = 9.4 Hz, 1H), 4.51 (dd, J = 9.7, 3.9 Hz, 1H), 4.35 - 4.27 (m, 1H).
【0176】
工程6: (S)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−2−オン及び(S)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−2−オン
9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(24.6g、62.9mmol)、(S)−4−トリフルオロメチルオキサゾリジン−2−オン(8.87g、57.2mmol)、ヨウ化第1銅(2.2g、11.4mmol)、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(3.6mL、22.9mmol)及び炭酸カリウム(15.8g、114mmol)をジオキサン(200mL)に懸濁させ、超音波処理下、アルゴンで脱気した。その反応混合物を100℃で16時間加熱した。得られた混合物をアンモニア水溶液(〜16%)で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、8.11g(〜31%)の表題化合物(9−Iと9−Br生成物の7:3混合物)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.22 (d, J = 8.6 Hz, 0.3H), 8.04 (d, J = 8.6 Hz, 0.7H), 7.49 - 7.44 (m, 0.7H), 7.42 - 7.41 (m, 1.7H), 7.34 - 7.31 (m, 0.3H), 7.27 - 7.26 (m, 0.3H), 5.55 - 5.47 (m, 1H), 4.76 - 4.71 (m, 1H), 4.66 - 4.63 (m, 1H), 4.50 - 4.41 (m, 4H).
【0177】
工程7: (2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−L−プロリン
ジメチルスルホキシド(7.0mL)に(S)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−2−オンと(S)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−2−オン(960mg、9−I:9−Brが7:3の混合物、〜2.19mmol)、L−プロリン(630mg、5.48mmol)、ヨウ化第1銅(84mg、0.44mmol)、及び三塩基性リン酸カリウム(1.86g、8.88mmol)を入れた混合物を100℃で18時間加熱した。冷めた反応混合物を撹拌ジクロロメタン(140mL)に加え、得られた懸濁液をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:ジクロロメタン中2NのNH/MeOH 0−35%)で精製し、262mg(65%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 453.
【0178】
工程8: (S)−1−(2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド
DMF(5.0mL)中に(2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−L−プロリン(582mg、1.29mmol)、塩化アンモニウム(138mg、2.57mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.0mL、5.80mmol)を入れた氷冷混合物に、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(1.22g、3.21mmol)を10分かけて少しずつ加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌し、その後酢酸エチルと希重炭酸水素ナトリウム水溶液とに分配した。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機抽出物を水、次いでブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下でエパポレートさせた。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:ジクロロメタン中0−10%メタノール)で精製し、シリカゲル上でさらに精製し(溶媒勾配:酢酸エチル中0−80%酢酸メチル)し、最後にアセトニトリルから再結晶化し、245mg(42%)の103を黄褐色の固体として得た。LCMS (ESI): RT (min) = 3.34 [M+H]+ = 452.2, Method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.06 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.40 (br s, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.05 (br s, 1H,), 6.32 (dd, J = 8.9, 2.4 Hz, 1H), 6.03 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.50 - 5.42 (m, 1H), 4.73 (t, J = 9.3 Hz, 1H), 4.62 (dd, J = 10.1, 2.4 Hz, 1H), 4.40 - 4.34 (m, 4H), 3.96 - 3.93 (m, 1H), 3.58 - 3.53 (m, 1H), 3.27 - 3.20 (m, 1H), 2.29 - 2.15 (m, 1H), 2.03 - 1.91 (m, 3H).
【0179】
実施例104 (S)−2−((2−((R)−4−エチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド 104
工程1: (R)−4−エチル−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−オキサゾリジン−2−オン及び(R)−4−エチル−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オン
9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(1.5g、3.84mmol)、(R)−4−エチルオキサゾリジン−2−オン(618mg、5.37mmol)、ヨウ化第1銅(146mg、0.767mmol)、トランス−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン(272μL、1.73mmol)と炭酸カリウム(742mg、5.37mmol)の混合物をジオキサン(4.5mL)に懸濁させ、反応混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。得られた混合物を100℃で24時間加熱した。反応を停止させ、室温に冷ました。得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)でそのまま精製し、680mg(42%)の表題化合物(9−Br:9−I生成物の〜1:2混合物)を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 378/380/426.
【0180】
工程2: (R)−4−エチル−3−(9−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オン
(R)−4−エチル−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オンと(R)−4−エチル−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オン(680mg、1.6mmol)、ヨウ化第1銅(30.5mg、0.16mmol)、(L)−乳酸(421μL、4.80mmol)及び炭酸セシウム(3.12g、6.01mmol)の混合物をジメチルスルホキシド(3.0mL)/水(3.0mL)に懸濁させ、反応混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。得られた混合物を120℃で24時間加熱した。反応混合物を停止させ、室温に冷まし、1N塩酸(6.0mL)の添加により中和し、その後酢酸エチルとブラインとに分配した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、196mg(39%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 316.
【0181】
工程3: (S)−2−((2−((R)−4−エチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
(R)−4−エチル−3−(9−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オン(196mg、0.623mmol)をTHF(5.0mL)中に溶媒和させた。(2R)−2−ヒドロキシプロパン酸メチル(89μL、0.934mmol)及びトリフェニルホスフィン(245mg、0.934mmol)を加え、反応物を室温で攪拌した。その後アゾジカルボン酸ジイソプロピル(183μl、0.934mmol)を加え、反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応物を減圧中でエバポレートし、得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、214mg(86%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 402.
【0182】
工程4: (S)−2−((2−((R)−4−エチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド
(S)−2−((2−((R)−4−エチル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(214mg、0.534mmol)をメタノール(20mL、140mmol)中7Nアンモニアの中に溶媒和させた。その反応混合物を室温で3時間撹拌した。得られた混合物を減圧中でエバポレートし、逆相C18クロマトグラフィー(溶媒勾配:水中0−95%アセトニトリル、0.1%水酸化アンモニウム緩衝液)で精製し、凍結乾燥させて163mg(79%)の104を得た。LCMS (ESI): RT(min) = 3.12, [M+H]+ = 387, method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.13 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.21 (s, 2H), 6.68 (dd, J = 8.8, 2.6 Hz, 1H), 6.46 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 4.61 (q, J = 6.6 Hz, 1H), 4.52 - 4.46 (m, 2H), 4.40 - 4.32 (m, 4H), 4.20 - 4.15 (m, 1H), 1.85 - 1.76 (m, 2H), 1.40 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.80 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
【0183】
実施例105 (S)−2−(2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド 105
工程1: 9−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン
窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した3Lの4つ口丸底フラスコに、ジオキサン(1.5L)、9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(150g、566mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボラン(217g、855mmol)、酢酸カリウム(165g、1.68mol、2.97当量)、及びPd(dppf)Cl(42g、57.4mmol)を入れた。得られた溶液を90℃で一晩撹拌した。得られた固体を濾過し、濾液を減圧中でエバポレートした。得られた粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶出剤:石油エーテル中25%酢酸エチル)で精製し、154g(87%)の表題化合物を明黄色の油状物として得た。
【0184】
工程2: 5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−オール
5Lの4つ口丸底フラスコに、ジクロロメタン(1.0L)と9−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(100g、320mmol)を入れ、続いて30%過酸化水素水溶液(700mL、8.82mol)を0℃で撹拌しながら滴下した。反応混合物を室温で一晩攪拌した。得られた混合物を、過酸化水素が残らなくなるまでNaSO水溶液で洗浄した。得られた溶液を酢酸エチルで抽出し(4×5L)、有機抽出物を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートし、表題化合物216g(粗製、溶媒を含有)を得、これをさらに精製することなく次の工程に進んだ。
【0185】
工程3: (S)−2−((5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した5Lの4つ口丸底フラスコに、ジオキサン(3.0L)、5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−オール(136g、673mmol)、メチル(2R)−2−ヒドロキシプロパン酸メチル(91g、874mmol)、トリフェニルホスフィン(265g、1.01mol)を入れた。これに続いて、アゾジカルボン酸ジエチル(176g、1.01mol)を10℃で1時間かけて添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を減圧中でエバポレートし、得られた粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶出剤:石油エーテル中50%酢酸エチル)で精製し、170g(88%)の表題化合物を明黄色の油固体として得た。
【0186】
工程4: (S)−2−((2,3−ジヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した5Lの4つ口丸底フラスコに、N,N−ジメチルホルムアミド(3.0L)、(S)−2−((5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(335g、1.16mol)、及びN−ヨードスクシンイミド(262g、1.16mol)を入れた。反応混合物を50℃で3時間撹拌した。その後、得られた溶液を5Lの水/氷の添加によりクエンチした。固体を濾過で回収し、5Lの酢酸エチルで抽出し、減圧下でエバポレートした。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶出剤:石油エーテル中15%酢酸エチル)で精製し、200g(32%)の表題化合物を黄色の固体として得た。
【0187】
工程5: (S)−2−((2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
窒素の不活性雰囲気でパージし、維持した10Lの4つ口丸底フラスコに、テトラヒドロフラン(5L)及び(S)−2−((2,3−ジヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(296g、548mol)を入れた。これに続いて、−50℃でエチルマグネシウムブロミド(384mL、テトラヒドロフラン中2N)を添加した。反応混合物を−40℃で4時間撹拌した。その後、得られた溶液を1Lの飽和塩化アンモニウム水溶液の添加によりクエンチし、酢酸エチルで抽出した(2×3L)。合わせた有機抽出物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:石油エーテル中25−40%酢酸エチル)で精製し、131g(58%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 415; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.43 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 7.00 (s, 1H), 6.67 - 6.63 (m, 1H), 6.49 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 4.81-4.42 (m, 1H), 4.41 - 4.39 (m, 2H), 4.39 - 4.30 (m, 2H), 3.76 (s, 3H), 1.63 (d, J = 3.45 Hz, 3H).
【0188】
工程6: (S)−2−((2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
ジオキサン(20mL)に(S)−2−((2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(1.33g、3.20mmol)、(S)−4−トリフルオロメチルオキサゾリジン−2−オン(500mg、3.20mmol)、ヨウ化第1銅(240mg、1.30mmol)、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(200mg、1.30mmol)、及び炭酸カリウム(880mg、640mmol)を入れた混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気し、反応混合物を100℃で6時間加熱した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、890mg(63%)の表題化合物を白色固体として得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 442.
【0189】
工程7: (S)−2−((2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド
メチル (S)−2−((2−((S)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)オキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパノエート (S)−メチル 2−((2−((S)−4−(トリフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパノエート(890mg、2.01mmol)の溶液の入ったアンモニア溶液(10mL、メタノール中7N、70mmol)を室温で18時間撹拌した。反応混合物を減圧下でエバポレートし、得られた固体をジクロロメタンから再結晶し、減圧中で乾燥させ、562mg(65%)の105を白色固体として得た。LCMS (ESI): RT (min) = 3.41, [M+H]+ = 427, Method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.19 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 6.73 (dd, J = 9.0, 2.5 Hz, 1H), 6.51 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 5.53 - 5.44 (m, 1H), 4.74 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 4.69 - 4.61 (m, 2H), 4.48 - 4.38 (m, 4H), 1.43 (d, J = 6.6 Hz, 3H).
【0190】
実施例106 (S)−1−(2−((R)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド 106
工程1: (R)−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルバルデヒド
過ヨウ素酸ナトリウム(57.0g、270mmol)を熱水(115mL)に溶解し、シリカ(200g、60A 220−440メッシュ、粒径35−75μm)を添加した。流動性粉末が得られるまで、この混合物を激しく撹拌した。これを1,2:5,6−ビス−O−(1−メチルエチリデン)−D−マンニトール(50g、190mmol)のジクロロメタン(1.0L)溶液に加え、反応物を室温で1時間攪拌した。得られた混合物をNaSOのパッドで濾過し、固形物をジクロロメタンで十分に洗浄した。合わせた有機抽出物を減圧中でエバポレートし、37.2g(75%)の表題化合物を無色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.73 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 4.38 (ddd, J = 7.4, 4.7, 1.9 Hz, 1H), 4.18 (dd, J = 8.8, 7.4 Hz, 1H), 4.10 (dd, J = 8.8, 4.7 Hz, 1H), 1.49 (s, 3H), 1.43 (s, 3H).
【0191】
工程2: (R)−4−ジフルオロメチル−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン
水浴中で冷却した(R)−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルバルデヒド(7.08g,54mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液に、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(8.4mL、62.6mmol)を滴下し、その反応混合物を室温で3時間撹拌した。得られた混合物を、急速に撹拌している氷冷飽和重炭酸ナトリウム水溶液に滴下した。その混合物をジクロロメタンでさらに抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートして6.58g(79%)の粗表題化合物を橙色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.69 (td, J = 55.8, 4.9 Hz, 1H), 4.27 - 4.17 (m, 1H), 4.16 - 4.03 (m, 2H), 1.46 (s, 3H), 1.38 (s, 3H).
【0192】
工程3: (R)−3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1,1−ジフルオロプロパン−2−オール
HCl含有ジオキサン(4N、10.8mL、43.2mmol)を、(R)−4−ジフルオロメチル−2,2−ジメチル[1,3]ジオキソラン(6.58g、43.2mmol)のメタノール(40mL)溶液に添加し、その反応混合物を室温で30分間撹拌した。得られた混合物を減圧中でエバポレートし、アセトニトリルと共沸させた。残留物をN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(6.53g、43.2mmol)、トリエチルアミン(9.0mL、64.9mmol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(触媒)を加えた。その反応混合物を室温で1時間撹拌した。得られた混合物を水で洗浄し、その後ジクロロメタン(30mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。得られた粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−30%酢酸エチル)で精製し、3.43g(35%)の表題化合物を黄色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.66 (td, J = 56.4, 4.6 Hz, 1H), 3.76 - 3.60 (m, 2H), 2.46 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 0.81 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0193】
工程4: ((S)−2−アジド−3,3−ジフルオロプロポキシ)−tert−ブチルジメチルシラン
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.9mL、17.4mmol)を(R)−3−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1,1−ジフルオロプロパン−2−オール(3.43g、15.1mmol)とピリジン(2.0mL、24.2mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液に−20℃で滴下し、その反応混合物を−20℃で20分間、その後0℃で1時間撹拌した。得られた混合物を0.5NのHCl水溶液で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧中でエバポレートした。粗残留物をN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、アジ化ナトリウム(2.96g、45.5mmol)を加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートして4.50gの粗表題化合物を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.74 (td, J = 55.4, 4.4 Hz, 1H), 3.81 - 3.71 (m, 2H), 3.58 - 3.47 (m, 1H), 0.81 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0194】
工程5: (S)−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシメチル)−2,2−ジフルオロエチルアミン
水酸化パラジウム炭素(200mg、20%)を、((R)−2−アジド−3,3−ジフルオロプロポキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(4.50g、粗製、〜15.1mmolと仮定)を酢酸エチル(20mL)とメタノール(2.0mL)に溶解した溶液に加え、反応物を水素バルーン下で16時間撹拌した。反応物を濾過し、新鮮な水酸化パラジウム炭素(400mg、20%)を加え、反応混合物を水素バルーン下で16時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧中でエバポレートし、3.08g(90%)の粗表題生成物を無色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.66 (td, J = 57.0, 4.7 Hz, 1H), 3.71 - 3.57 (m, 2H), 3.00 - 2.89 (m, 1H), 1.42 (br s, 2H), 0.82 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0195】
工程6: (S)−4−ジフルオロメチルオキサゾリジン−2−オン
HCl含有ジオキサン(4N、5.0mL、20mmol)を、(R)−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシメチル)−2,2−ジフルオロエチルアミン(Org. Lett., Vol. 9, No. 1, 2007, 41-44) (2.30g、10.3mmol)のメタノール(5.0mL)溶液に加え、反応混合物を室温で2時間攪拌した。その混合物を減圧中でエバポレートし、得られた油状物をジエチルエーテルで粉砕して固体を得、これを減圧中で乾燥させた。固体をトルエン(20mL)とKOH(2.50g、水20mLに44.6mmol)の混合物に0℃で溶解した。ホスゲン(16.3mL、トルエン中20%)を滴下し、冷却浴を除去し、反応混合物を1時間撹拌した。混合物を減圧中でエバポレートし、得られた残留物を高温工業用メタノールで抽出し、固体を濾過により回収した。濾液を減圧中でエバポレートし、得られた粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、830mg(68%)の表題化合物をオフホワイトの固体として得た。[α]D = +10.1 (c = 2.37, CHCl3).1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.96 (br s, 1H), 5.78 (td, J = 55.3, 4.8 Hz, 1H), 4.54 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 4.42 (dd, J = 9.6, 4.4 Hz, 1H), 4.17 - 4.06 (m, 1H).
【0196】
工程7: (S)−4−(ジフルオロエチル)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d] [1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オン
ジオキサン(10mL)に9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(741mg、1.90mmol)、(S)−4−ジフルオロメチルオキサゾリジン−2−オン(260mg、1.90mmol)、ヨウ化第1銅(72mg、0.38mmol)、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(120μL、0.76mmol)、及び炭酸カリウム(524mg、3.79mmol)が入った混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。その反応混合物を100℃で16時間加熱した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、438mg(50%)の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 448; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.03 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.44 - 7.39 (m, 2H), 7.29 (s, 1H), 6.64 (t, J = 56.8 Hz, 1H), 4.86 (ddd, J = 24.0, 9.2, 4.0 Hz, 1H), 4.73 (dd, J = 9.3, 4.0 Hz, 1H), 4.53 (t, J = 9.3 Hz, 1H), 4.46 - 4.41 (m, 2H), 4.38 - 4.32 (m, 2H).
【0197】
工程8: (2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−L−プロリン
ジメチルスルホキシド(2.0mL)に(S)−4−(ジフルオロメチル)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)オキサゾリジン−2−オン(218mg、0.49mmol)、L−プロリン(112mg、vmmol)、ヨウ化第1銅(19mg、0.10mmol)及び三塩基性リン酸カリウム(207mg、0.98mmol)を入れた混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。その反応混合物を100℃で16時間加熱した。得られた混合物をジクロロメタン(30mL)で希釈し、その後シリカゲルフラッシュカートリッジ(10g)に直接装填し、溶離し(溶媒勾配:ジクロロメタン中、2NのNH/メタノール5−30%)、粗製の表題化合物を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 435.
【0198】
工程9: (S)−1−(2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド
1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェートHATU(259mg、0.68mmol)を、(S)−1−(2(2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)−L−プロリン(粗製、〜0.49mmol)、塩化アンモニウム(52mg、0.97mmol)及びトリエチルアミン(136μL、0.97mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(2.0mL)溶液に少しずつ加え、反応混合物を室温で15分間撹拌した。得られた混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:ジクロロメタン中、2NのNH/メタノール0−10%)で精製し、82mg(39%)の106をオフホワイトの固体として得た。LCMS (ESI): RT (min) = 3.31, [M+H]+ = 434, Method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.05 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.36 (br s, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.01 (br s, 1H), 6.68 (t, J = 55.9 Hz, 1H), 6.28 (dd, J = 8.9, 2.4 Hz, 1H), 6.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.97 - 4.86 (m, 1H), 4.60 - 4.49 (m, 2H), 4.39 - 4.28 (m, 4H), 3.94 - 3.88 (m, 1H), 3.56 - 3.48 (m, 1H), 3.25 - 3.16 (m, 1H), 2.22 - 2.11 (m, 1H), 2.01 - 1.86 (m, 3H).
【0199】
実施例107 (S)−2−((2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド 107
工程1: (S)−2−((2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
ジオキサン(8.0mL)に(S)−2−((2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(414mg、1.00mmol)、(S)−4−ジフルオロメチルオキサゾリジン−2−オン(143mg、1.05mmol)、ヨウ化第1銅(38mg、0.20mmol)、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(60mg、0.40mmol)、及び炭酸カリウム(280mg、2.00mmol)を入れた混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気し、反応混合物を100℃で6時間加熱した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−60%酢酸エチル)で精製し、386mg(91%)の表題化合物を白色固体として得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 424.
【0200】
工程2: (S)−2−((2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド
(S)−2−((2−((S)−4−(ジフルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(386mg、0.91mmol)の溶液の入ったアンモニア溶液(10mL、メタノール中7N、70mmol)を室温で18時間撹拌した。反応混合物を減圧中でエバポレートし、得られた白色固体をジクロロメタンで粉砕し、減圧中で乾燥させ、325mg(87%)の107を白色固体として得た。LCMS (ESI): RT (min) = 3.32, [M+H]+ = 409, Method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.22 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.18 (s, 1H), 7.57 (br s, 1H), 7.30 - 7.25 (m, 2H), 6.88 - 6.58 (m, 2H), 5.04 - 4.92 (m, 1H), 4.68 - 4.53 (m, 3H), 4.45 - 4.37 (m, 4H), 1.44 (d, J = 6.3 Hz, 3H).
【0201】
実施例108 (S)−1−(2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド 108
工程1: (R)−1−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−3−フルオロプロパン−2−オール
tert−ブチルジメチルシリルクロリド(1.60g、10.63mmolを、(R)−3−フルオロプロパン−1,2−ジオール(1.00g、10.6mmol)、トリエチルアミン(1.93mL、13.8mmol)と触媒4−(ジメチルアミノ)ピリジンのジクロロメタン溶液に0℃で加え、反応混合物を室温まで温め、室温で16時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。得られた粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−40%酢酸エチル)で精製し、1.80g(81%)の表題化合物を無色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.45 - 4.36 (m, 1H), 4.34 - 4.25 (m, 1H), 3.87 - 3.73 (m, 1H), 3.66 - 3.56 (m, 2H), 2.30 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 0.82 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0202】
工程2: (S)−2−アジド−3−フルオロプロポキシ)−tert−ブチルジメチルシラン
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.67mL、9.93mmol)を(R)−1−(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−3−フルオロプロパン−2−オール(1.80g、8.60mmol)とピリジン(1.2mL、13.8mmol)のジクロロメタン溶液に−20℃で滴下し、その反応混合物を−20℃で20分間、その後0℃で30時間撹拌した。反応混合物を0.5NのHCl水溶液で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。残留物をN,N−ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解し、アジ化ナトリウム(1.68g、25.9mmol)を加えた。その反応混合物を室温で2時間撹拌した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートして粗表題化合物を得、これを精製せず次工程で用いた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.58 - 4.26 (m, 2H), 3.75 - 3.63 (m, 2H), 3.62 - 3.46 (m, 1H), 0.80 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0203】
工程3: (S)−1−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−3−フルオロプロパン−2−アミン
水酸化パラジウム(400mg、炭素上20%)を、((S)−2−アジド−3−フルオロプロポキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(粗製、8.60mmolと仮定)を酢酸エチル(15mL)とメタノール(5.0mL)に溶解した溶液に加え、反応混合物を水素バルーン下で16時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、新鮮な水酸化パラジウム(400mg、炭素上20%)を加え、反応物を水素バルーン下で16時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧中でエバポレートし、表題化合物を生成物:出発物質の〜2:1混合物として得、これを精製せずに次工程で用いた。
【0204】
工程4: (S)−4−フルオロメチルオキサゾリジン−2−オン
HCl含有ジオキサン(4N、2.0mL、8.00mmol)を(S)−1−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−3−フルオロプロパン−2−アミン(粗製、8.60mmolと仮定)のメタノール(3.0mL)溶液に添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を減圧中でエバポレートした。得られた残留物をトルエン(20mL)とKOH(2.89g、51.6mmol、水12.5%)の混合物に0℃で溶解した。この混合物にホスゲン(13.6mL、トルエン中20%)を滴下し、冷却浴を取り除き、得られた混合物を1時間撹拌した。この反応混合物を減圧中でエバポレートし、得られた残留物を熱い工業用変性アルコールで抽出した。濾液を減圧中でエバポレートし、得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中50−100%酢酸エチル)で精製し、450mg(44%、3工程)の表題化合物をオフホワイトの固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.69 (br s, 1H), 4.59 - 4.42 (m, 2H), 4.42 - 4.32 (m, 1H), 4.25 - 4.08 (m, 2H).
【0205】
工程5: (S)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(フルオロメチル)オキサゾリジン−2−オン及び(S)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(フルオロメチル)オキサゾリジン−2−オン
9−ブロモ−2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン(722mg、1.85mmol)、(S)−4−フルオロメチルオキサゾリジン−2−オン(220mg、1.85mmol)、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン(131mg、0.55mmol)、Cu(OAc).HO(74mg、0.37mmol)、炭酸カリウム(510mg、3.70mmol)及びジオキサン(6.0ml)の混合物を管に密封し、その混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。その反応混合物を100℃で72時間加熱した。得られた反応混合物を15%アンモニア水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。得られた粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−100%酢酸エチル)で精製し、390mg(53%)の表題化合物(9−Brと9−I生成物の約2:1混合物)を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 382/384/430; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.22 (d, J = 9.3 Hz, 0.7H), 8.05 (d, J = 8.8 Hz, 0.3H), 7.43 - 7.37 (m, 0.6H), 7.29 (s, 1.2H), 7.23 - 7.18 (m, 1.2H), 5.03 - 4.66 (m, 3H), 4.60 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 4.54 (dd, J = 8.6, 4.3 Hz, 1H), 4.47 - 4.43 (m, 2H), 4.37 - 4.33 (m, 2H).
【0206】
工程6: (S)−1−(2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド
ジメチルスルホキシド(2.0mL)に(S)−3−(9−ブロモ−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(フルオロメチル)オキサゾリジン−2−オンと(S)−3−(9−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−2−イル)−4−(フルオロメチル)オキサゾリジン−2−オン(270mg、2:1混合、〜0.71mmol)、L−プロリン(163mg、1.41mmol)、ヨウ化第1銅(27mg、0.14mmol)、及び三塩基性リン酸カリウム(300mg、1.41mmol)を入れた混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気した。その反応混合物を100°Cで2時間加熱した。得られた混合物を室温に冷却し、ジメチルスルホキシド(1.0mL)で希釈した。塩化アンモニウム(227mg、4.20mmol)、トリエチルアミン(0.98mL、7.10mmol)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(1.61g、4.20mmol)を加え、その反応混合物を室温で30分間撹拌した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:DCM中0−10%メタノール)で精製し、150mg(51%)の108を得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 416; 1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 8.02 d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.36 (br s, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.01 (br s, 1H), 6.28 (dd, J = 7.7, 2.5 Hz, 1H), 6.00 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 4.97 (ddd, J = 48.5, 10.0, 2.8 Hz, 1H), 4.78 - 4.53 (m, 3H), 4.40 - 4.27 (m, 5H), 3.94 - 3.88 (m, 1H), 3.56 - 3.48 (m, 1H), 3.25 - 3.16 (m, 1H), 2.22 - 2.11 (m, 1H), 1.99 - 1.87 (m, 3H).
【0207】
実施例109 (S)−2−((2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド 109
工程1: (S)−2−((2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル
ジオキサン(8.0mL)に(S)−2−((2−ヨード−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(414mg、1.00mmol)、(S)−4−フルオロメチルオキサゾリジン−2−オン(123mg、1.05mmol)、ヨウ化第1銅(38mg、0.20mmol)、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(60mg、0.40mmol)、及び炭酸カリウム(280mg、2.00mmol)を入れた混合物を超音波処理下、アルゴンで脱気し、反応混合物を100℃で18時間加熱した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧中でエバポレートした。粗残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶媒勾配:シクロヘキサン中0−80%酢酸エチル)で精製し、305mg(75%)の表題化合物を白色固体として得た。LCMS (ESI): [M+H]+ = 406.
【0208】
工程2: (S)−2−((2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパンアミド
(S)−2−((2−((S)−4−(フルオロメチル)−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−5,6−ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2−d][1,4]オキサゼピン−9−イル)オキシ)プロパン酸メチル(300mg、0.74mmol)の溶液の入ったアンモニア溶液(10mL、メタノール中7N、70.0mmol)を室温で18時間撹拌した。得られた白色固体を濾過し、減圧中でエバポレートし、190mg(66%)の109を白色固体として得た。LCMS (ESI): RT (min) = 2.91, [M+H]+ = 391, Method = A; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.17 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.54 (br s, 1H), 7.27 (s, 1H), 7.25 (br s, 1H), 6.71 (dd, J = 9.0, 2.5 Hz, 1H), 6.50 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 5.00 (ddd, J = 48.4, 9.8, 2.6 Hz, 1H), 4.83 - 4.57 (m, 4H), 4.45 - 4.37 (m, 5H), 1.43 (d, J = 6.6 Hz, 3H).
【0209】
実施例901 PI3K結合アッセイ
PI3K結合アッセイは、小分子PI3K阻害剤の生化学的効力を決定するためのものである。PI3K脂質キナーゼ反応は、PIP2:3PS脂質基質(Promega#V1792)及びATPの存在下で実施される。キナーゼ反応の終了後、脂質基質のリン酸化によるATPからADPへの代謝を、Promega ADP−GloTM(Promega#V1792)アッセイを用いて検出する。表5のように、各PI3Kアイソフォームについて以下の条件を用いて反応が行われる。
表5
【0210】
反応時間の120分後、キナーゼ反応を終了させる。反応後に残ったATPはすべて枯渇し、ADPのみが残る。その後、Kinase Detection Reagentを添加してADPをATPに変換し、これを連結したルシフェリン/ルシフェラーゼ反応に使用した。発光出力を測定し、キナーゼ活性と相関させる。
【0211】
反応はすべて、室温で行われる。各PI3Kアイソフォームについて、酵素/脂質基質溶液の(1:1)混合物3μlを、50nlLの試験化合物、又は未処理コントロールについてのみDMSOを含む384ウェル白色アッセイプレート(Perkin Elmer#6007299)に添加する。ATP/MgClを2μL添加することによって、反応を開始させる。キナーゼ反応緩衝液は、50mMのHEPES、50mMのNaCl、3mMのMgCl、0.01%BSA、1%DMSOを含有し、酵素及び基質濃度は、上の表に示した通りである。10μLのADP−Glo試薬の添加によって、反応を停止させる。プレートは、発光モードを使用してPerkin Elmer Envisionシステムで読み取る。各試験化合物について、10ポイント用量応答曲線を作成する。各化合物のKi値は、Morrison方程式を用いて決定する。
【0212】
結合アッセイ:最初の偏光実験は、Analyst HT 96−384(カリフォルニア州サニーベールのMolecular Devices Corp)で実施した。蛍光偏光親和性測定のための試料は、偏光緩衝液(10mMのトリス(pH7.5)、50mMのNaCl、4mMのMgCl、0.05%Chaps及び1mMのDTT)中最終濃度20μg/mLで開始するp110アルファPI3K(バージニア州シャーロッツビルのUpstate Cell Signaling Solutions)の1:3の段階希釈物を最終濃度10mMのPIP(ユタ州ソルトレークシティのEchelon−Inc.)に添加することによって調製した。室温で30分間のインキュベーション時間の後、GRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(ユタ州ソルトレークシティのEchelon−Inc.)の添加によって反応を停止させた。それぞれ100nM、5nMの最終濃度。384ウェルブラック低容量Proxiplates(登録商標)(マサチューセッツ州ウェルズリーのPerkinElmer)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)用の標準カットオフフィルターで読み取る。蛍光偏光値をタンパク質濃度の関数としてプロットした。EC50値は、KaleidaGraph(登録商標)ソフトウェア(ペンシルベニア州レディングのSynergy software)を使用し、4パラメーター方程式にデータを当てはめることによって得られた。本実験はまた、阻害剤を用いたその後の競合実験に用いる適切なタンパク質濃度を確立する。
【0213】
阻害剤のIC50値は、PIP(最終濃度10mM)と組み合わせた0.04mg/mLのp110アルファPI3K(最終濃度)を、偏光緩衝液中最終濃度25mMのATP(マサチューセッツ州ダンバーズのCell Signaling Technology, Inc.)におけるアンタゴニストの1:3段階希釈物を含有するウェルに添加することにより求めた。室温で30分間のインキュベーション時間の後、GRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(ユタ州ソルトレークシティのEchelon−Inc.)の添加によって反応を停止させた。それぞれ100nM、5nMの最終濃度。384ウェルブラック低容量Proxiplates(登録商標)(マサチューセッツ州ウェルズリーのPerkinElmer)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)用の標準カットオフフィルターで読み取る。蛍光偏光値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Assay Explorerソフトウェア(カリフォルニア州サンラモンのMDL)で4パラメーター方程式にデータを当てはめることによって、IC50を得た。
【0214】
別法として、PI3Kの阻害を、精製組換え酵素及びATPを1μM(マイクロモル)の濃度で用いる放射測定アッセイで決定した。化合物を100%DMSOで段階希釈した。キナーゼ反応物を室温で1時間インキュベートし、PBSの添加により反応を終了させた。IC50値は、S字用量応答カーブフィッティング(可変勾配)を使用して決定した。
【0215】
実施例902 p110α(アルファ)を用いた共結晶構造解析
Chen等及びNacht等(Chen, P., Y. L. Deng, S. Bergqvist, M. D. Falk, W. Liu, S. Timofeevski及びA. Brooun 「Engineering of an isolated p110alpha subunit of PI3Kalpha permits crystallization and provides a platform for structure-based drug design」, (2014) Protein Sci 23(10): 1332-1340; Nacht, M., L. Qiao, M. P. Sheets, T. St Martin, M. Labenski, H. Mazdiyasni, R. Karp, Z. Zhu, P. Chaturvedi, D. Bhavsar, D. Niu, W. Westlin, R. C. Petter, A. P. Medikonda及びJ. Singh 「Discovery of a potent and isoform-selective targeted covalent inhibitor of the lipid kinase PI3Kalpha」, J. Med. Chem. 56(3): 712-721)に従い、N末端切断型p110α(アルファ)を生成した。
【0216】
標準プロトコールを適用し、化合物の存在下で結晶を製造した。回収した結晶は、回折データ収集のために液体窒素への浸漬によって保存し、単色X線を生成するシンクロトロンビームラインに装着した。標準的なプロトコールを用いて、回折データを収集、縮小、及びマージした。結晶構造解析の単位格子及び空間群は、以前に報告されたものと同型であった(Nacht, 2013; Chen, 2014)。化合物を電子密度マップに配置し、標準的なプロトコールを用いて、2.36〜2.56Aの解像限界まで結晶構造解析の精密化を行った。
【0217】
実施例903 変異型PI3Kα(アルファ)の選択的阻害
PI3Kα野生型(親)、ヘリカルドメイン変異型E545K、及びキナーゼドメイン変異型H1047RといったSW48同質遺伝子細胞株におけるPI3K経路の阻害を測定することにより、本発明の化合物が変異型PI3Kα(アルファ)を含む細胞に対して優先的に作用する能力を決定した。下記のアッセイは、小分子PI3Kα阻害剤の細胞効力及び変異体選択性(mutant selectivity)を決定するためのものである。このアッセイは、PI3Kα WT、PI3Kα変異型E545K/+(Horizon Discovery 103−001)又はPI3Kα変異型H1047R/+(HorizonDiscovery103−005)を発現する同質遺伝子細胞株を利用する。各細胞株におけるPI3KαによるpPRAS40阻害の効力は、化合物処理の24時間後に測定される。PI3Kα阻害剤の変異体選択性は、WT対E545K細胞株及びWT対H1047R細胞株におけるEC50効力比によって決定される。
【0218】
細胞培養:細胞株は、RPMI1640(Genentechで調製)、10%FBS(Gibco 16140−071)、2mMのL−グルタミン(Genentechで調製)及び10mMのHEPES(pH7.2)(Genentechで調製)を含有する細胞培養培地中5%CO、37℃の細胞培養インキュベーター内に維持する。細胞を0.25%トリプシン−EDTA(Gibco 25200)を用い、1:8の比で72時間ごとに分割する。
【0219】
アッセイ手順: 細胞を採取し、384ウェル組織培養処理アッセイプレート(Greiner カタログ#781091)に播種し、37℃、5%COで一晩インキュベートする3種の細胞株(WT、E545K、H1047R)を同時に播種し、アッセイする。翌日、試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)で段階希釈し、細胞に添加する(最終DMSO濃度0.5%)。その後、細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートする。24時間後、細胞を溶解し、Meso−ScaleカスタムpPRAS40 384w Assay Kit(Meso Scale Discovery、カタログ番号L21CA−1)を用いてpRAS40レベルを測定する。細胞溶解物を、リン酸化PRAS40に対する抗体で予めコーティングしたアッセイプレートに加える。試料中のリン酸化PRAS40を、捕捉抗体に4℃で一晩結合させる。検出抗体(電気化学発光SULFO−TAGで標識した抗トータルPRAS40)を結合した溶解物に添加し、室温で1時間インキュベートする。平板電極に電圧が印加されると電極表面に結合された標識が発光するように、MSD Read Bufferを加える。MSD Sector Instrumentは、光の強度を測定し、試料中のリン酸化PRAS40(phosphor−PRAS40)の量を定量的に測定する。試験化合物の濃度を変化させることによるPRAS40リン酸化のパーセント阻害を、未処理コントロールと比較して算出する。 EC50値は、4パラメーターロジスティック非線形回帰用量応答モデルを使用して算出する。
【0220】
統計解析:EC50値は、最低4つの独立した実験の幾何平均を表す。統計はすべて、KaleidaGraph Software(バージョン4.1.3)を用いて行った。変異型細胞及び野生型細胞に対する活性を比較するために、等分散の不対データを用いてスチューデントt検定を行った。P<0.05は有意であると考えられる。
【0221】
実施例904: In Vitro細胞生存率アッセイ
細胞を384ウェルプレートに16時間播種した(1ウェルあたり1,500個)。2日目に、9段階1:3化合物希釈物を96ウェルプレート中でDMSOで作製した。その後、Rapidplateロボット(Zymark Corp.)を使用して、化合物を増殖培地にさらに希釈した。その後、384ウェル細胞プレート内の4連ウェルに希釈した化合物を加え、37℃、5%COでインキュベートした。4日後、Cell Titer−Glo(Promega)を製造者の指示に従って用いて発光により生存細胞の相対数を測定し、Wallac Multilabel Reader(Perkin−Elmer)で読み取った。EC50値は、Prism 6.0ソフトウェア(GraphPad)を用いて算出した。
【0222】
実施例905 In Vivoマウス腫瘍異種移植の有効性
マウス:メスの重症複合免疫不全マウス(SCID(登録商標)、C.B−17/Charles River Hollister)は、10から11週齢であり、試験の第0日に15.8〜25.09グラムのBW範囲を有する。これらの動物には、自由摂取水(逆浸透、1ppmCl)、並びに18.0%の粗タンパク質、5.0%の粗脂肪及び5.0%の粗繊維からなるNIH 31 Modified and Irradiated Lab Diet(登録商標)が与えられる。マウスは、21〜22℃(70〜72°F)及び湿度40〜60%の12時間光周期で、静止型マイクロアイソレーター内の放射線照射したALPHA−Dri(登録商標)bed−o’cobs(登録商標)Laboratory Animal Beddingに収容される。ジェネンテックは、拘束、管理、外科手術、飼料及び体液調節、並びに獣医医療に関する実験動物の管理と使用に関するガイドライン(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)の推奨事項に明確に従っている。ジェネンテックにおける実験動物の管理と使用プログラムは、国際実験動物管理公認協会(AAALAC)により認定されており、このことは、実験動物の管理と使用の一般に受け入れられている基準のコンプライアンスを確かなものにしている。
【0223】
腫瘍移植:異種移植は、がん細胞で開始される。KPL4乳がん細胞を、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、100単位/mLペニシリン、100μg/mL硫酸ストレプトマイシン及び25μg/mLゲンタマイシンを補充したRPMI 1640培地で培養した。この細胞を指数関数的増殖中に収集し、1マウスあたり3x10の濃度でMatrigel:HBSSに再懸濁させる。これらの細胞を指数関数的増殖中に収集し、1マウスあたり3x10の濃度でMatrigel:HBSSに再懸濁させる。腫瘍移植の14日後(試験の0日目とされる)に、マウスは10の群に分けられ、各群は、試験13−3399C(化合物102)については128〜235mm、試験13−3399 D(化合物103)については130〜273mmの範囲の個々の腫瘍体積を有する10匹のマウスからなる。試験13−3399 Cの群平均腫瘍体積は171〜180mmであり、試験13−3399 Dの群平均腫瘍体積は200〜214mmであった。体積は以下の式を用いて算出される。
腫瘍体積(mm)=(wl)/2(式中、w=腫瘍の幅(mm)、l=腫瘍の長さ(mm))
腫瘍重量は、1mgが腫瘍体積の1mmと等しいと仮定して、推定することができる。
【0224】
治療剤:薬物用量は、脱イオン水中の0.5%メチルセルロース:0.2%Tween80(「ビヒクル」)中で調製され、4℃で保存される。化合物102を、ナノ懸濁物としてMCT中で毎週製剤化し、4℃で保存した。化合物103を、MCT中で毎週調製し、4℃で保存した。すべての投与量は、体重22グラムあたり0.1mL(4mL/kg)の量で、示されたmg/kg用量を送達するように処方される。
【0225】
治療:すべての投与量は、個々の動物の体重に合せて調整され、示された経路で提供される。
【0226】
エンドポイント:腫瘍体積を、Ultra Cal IVキャリパー(モデル54 10 111;Fred V.Fowler Company)を使用して、次式:腫瘍体積(mm)=(長さx幅)x0.5の通りに2次元(長さ及び幅)で測定し、Excel バージョン11.2(Microsoft Corporation)を使用して分析する。線形混合効果(LME)モデリングアプローチを使用し、同じ動物の腫瘍体積の反復測定を経時的に分析する(Pinheiro, J. et al (2009); Tan, N. et al (2011) Clin. Cancer Res. 17(6):1394-1404)。このアプローチは、反復測定と、試験終了前の動物の任意の処置非関連死に起因する中程度のドロップアウトの双方を扱う。三次回帰スプラインを使用して、非線形プロファイルを各用量レベルでのlog2腫瘍体積の時間経過に当てはめる。次に、これらの非線形プロファイルを混合モデル内の用量に関連付ける。ビヒクルコントロールに対するパーセンテージとしての腫瘍増殖阻害(%TGI)を、次式:%TGI=100×(1?AUC用量/AUCビヒクル)を使用し、ビヒクルに対する1日当たりのそれぞれの用量群について、近似曲線下面積(AUC)のパーセンテージとして算出する。この式を使用すると、100%のTGI値は腫瘍停滞を示し、>1%であるが<100%のTGI値は腫瘍増殖遅延を示し、>100%のTGI値は腫瘍退縮を示す。動物の部分反応(PR)を、出発腫瘍体積の>50%であるが<100%の腫瘍退縮として定義した。完全反応(CR)を、試験中の任意の日の100%腫瘍退縮(すなわち測定不能な腫瘍)として定義する。
【0227】
毒性:試験期間中、Adventurer Pro AV812スケール(Ohaus Corporation)を用いて週に2回動物の体重を測定する。重量変化率は次のように算出する:体重変化(%)=[(重量新規日?重量0日目)/重量0日目]×100。任意の有害な処置関連の副作用の明白な徴候についてマウスを頻繁に観察し、毒性の臨床徴候を観察時に記録する。許容可能な毒性を、試験中における群平均体重(BW)の20%未満の減少及び処置動物10匹中で1匹以下の処置関連(TR)死として定義する。より高い毒性を生じる任意の投薬レジメンは、最大耐量(MTD)を超えると考えられる。
【0228】
前述の発明は理解を明確にするために例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての特許及び科学文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に包含される。
図1A-B】
図2A-B】