(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522862
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】多相コリオリ測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20190520BHJP
G01F 1/74 20060101ALI20190520BHJP
G01F 15/02 20060101ALI20190520BHJP
G01N 9/00 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
G01F1/84
G01F1/74
G01F15/02
G01N9/00 D
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-536393(P2018-536393)
(86)(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公表番号】特表2019-505789(P2019-505789A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】US2016013172
(87)【国際公開番号】WO2017123214
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダットン, ロバート イー.
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6300924(JP,B2)
【文献】
特許第6419296(JP,B2)
【文献】
特許第4977131(JP,B2)
【文献】
特許第4977132(JP,B2)
【文献】
特許第5497117(JP,B2)
【文献】
特許第4904339(JP,B2)
【文献】
特許第4966306(JP,B2)
【文献】
特許第5711423(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
G01F 1/74
G01F 15/02
G01N 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量計の信頼性を向上させる方法であって、流量計は、少なくとも1つの流管と、流管に取り付けられた少なくとも1つのピックオフセンサと、流管に取り付けられた少なくとも1つのドライバと、少なくとも1つのピックオフセンサおよびドライバと通信するメータ電子機器とを備え、方法は、
少なくとも1つのドライバを用いて駆動モード振動で少なくとも1つの流管を振動させるステップと、
少なくとも1つのピックオフセンサからの駆動モード振動に対する振動応答に基づくセンサ信号を受信するステップと、
少なくとも1つの流れ変数を計算するステップと、
ピックオフセンサ電圧を測定するステップと、
ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っているか否かを判定するステップと、
ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中に少なくとも1つの流れ変数を補正するステップとを含む、方法。
【請求項2】
流れ変数は、質量流量、体積流量、密度、およびウォーターカットの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウォーターカットは、メータ電子機器と通信するウォーターカット分析器によって測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
所定の電圧閾値を下回っている期間中、少なくとも1つの流れ変数を補正するステップは、平均化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
平均化は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回る直前の時点を決定し、この時点における第1の少なくとも1つの流れ変数を決定するステップと、
ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を上回って戻った時点を決定し、この時点における第2の少なくとも1つの流れ変数を決定するステップと、
第1の少なくとも1つの流れ変数および第2の少なくとも1つの流れ変数の平均を計算するステップとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ピックオフセンサ電圧を、質量流量過小読み値および密度過小読み値の少なくとも1つと相関させるステップと、
相関に基づいて過小読み値補正係数を導出するステップと、
過小読み値補正係数を少なくとも1つの流れ変数に適用するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流量計を通る流体流が、主に気体を含む多相流であるか否かを判定するステップと、
流量計を通る流体流が、主に液体を含む多相流であるか否かを判定するステップと、
流量計を通る流体流が主に気体を含む多相流である場合には、メータ電子機器の気体優勢流ルーチンを適用するステップと、
流量計を通る流体流が主に液体を含む多相流である場合には、メータ電子機器の液体優勢流ルーチンを適用するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
流量計によって質量流量およびかさ密度を測定するステップと、
測定された温度、圧力、および気体組成から気体密度を決定するステップと、
液体密度を経験的に決定するステップと、
体積気体流量、体積液体流量、および気体空隙率を、質量流量、かさ密度、気体密度、および液体密度から決定するステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Lockhart-Martinelliパラメータを決定するステップと、
気相の質量流量および液相の質量流量を決定するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
液体が水を含むか否かを判定するステップと、
ウォーターカット分析器を用いて液体密度を測定するステップと、
油の体積流量を決定するステップと、液体の体積流量を決定するステップとを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
測定信頼性を向上させるように構成された流量計(5)のためのメータ電子機器(20)であって、流量計(5)は、
少なくとも1つの流管(130、130’)と、
少なくとも1つの流管(130、130’)に取り付けられた少なくとも1つのピックオフセンサ(170L、170R)と、
流管(130、130’)に取り付けられた少なくとも1つのドライバ(180L、180R)とを備え、
メータ電子機器(20)は、
少なくとも1つのピックオフセンサ(170L、170R)および少なくとも1つのドライバ(180L、180R)と通信し、
少なくとも1つのドライバ(180L、180R)を用いて駆動モード振動で少なくとも1つの流管(130、130’)を振動させ、
少なくとも1つのピックオフセンサ(170L、170R)からの駆動モード振動に対する振動応答に基づくセンサ信号を受信し、
少なくとも1つの流れ変数を計算し、
ピックオフセンサ(170L、170R)電圧を測定し、
ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値(304)を下回っているか否かを判定し、
ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値(304)を下回っている期間中に少なくとも1つの流れ変数を補正するステップとを行うように構成されている、メータ電子機器(20)。
【請求項12】
流れ変数は、質量流量、体積流量、密度、およびウォーターカットの少なくとも1つを含む、請求項11に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項13】
ウォーターカットは、メータ電子機器と通信するウォーターカット分析器によって測定される、請求項11に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項14】
ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中、少なくとも1つの流れ変数を平均するように構成されている、請求項11に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項15】
平均は、第1の流れ変数および第2の流れ変数の計算された平均を含み、
第1の流れ変数は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値(304)を下回る直前の時点において決定されるピックオフセンサ電圧値であり、
第2の流れ変数は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値(304)を上回って戻った直後の時点において決定されるピックオフセンサ電圧値である、請求項14に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項16】
ピックオフセンサ電圧は、質量流量過小読み値および密度過小読み値の少なくとも1つと相関され、
メータ電子機器(20)は、相関に基づいて過小読み値補正係数を導出するように構成されており、過小読み値補正係数は、少なくとも1つの流れ変数に適用される、請求項11に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項17】
メータ電子機器(20)は、
流量計(5)を通る流体流が、主に気体を含む多相流であるか否かを判定し、
流量計(5)を通る流体流が、主に液体を含む多相流であるか否かを判定し、
流量計(5)を通る流体流が主に気体を含む多相流である場合には、メータ電子機器(20)の気体優勢流ルーチン(220)を適用し、
流量計(5)を通る流体流が主に液体を含む多相流である場合には、メータ電子機器(20)の液体優勢流ルーチン(222)を適用するように構成されている、請求項11に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項18】
メータ電子機器(20)は、
流量計(5)によって質量流量およびかさ密度を測定し、
測定されている温度、圧力、および気体組成から気体密度を決定し、
液体密度を経験的に決定し、
体積気体流量、体積液体流量、および気体空隙率を、質量流量、かさ密度、気体密度、および液体密度から決定するように構成されている、請求項17に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項19】
メータ電子機器(20)は、
Lockhart-Martinelliパラメータを決定し、
気相の質量流量および液相の質量流量を決定するように構成されている、請求項18に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項20】
メータ電子機器(20)は、
液体が水を含むか否かを判定し、
ウォーターカット分析器を用いて液体密度を測定し、
油の体積流量を決定し、
液体の体積流量を決定するように構成されている、請求項18又は19に記載のメータ電子機器(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量計に関し、より詳細には、多相流体流の連続的な監視ならびにより高い精度におけるその定量的および定性的測定を可能にするコリオリに基づく測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ質量流量計および振動密度計などの振動導管センサは、典型的には、流動する材料を含む振動導管の運動を検出することによって動作する。導管内の材料に関連する特性、例えば質量流量、密度などは、導管に関連付けられている運動変換器から受信した測定信号を処理することによって決定することができる。振動材料で充填されたシステムの振動モードは、一般に、収容する導管およびその中に収容された材料の組み合わさった質量、剛性、および減衰特性の影響を受ける。
【0003】
典型的なコリオリ質量流量計は、パイプラインまたは他の輸送システム内で直列に接続され、システム内の物質、例えば流体、スラリー、エマルションなどを搬送する1つまたは複数の導管(流管ともおよび呼ばれる)を含む。各導管は、例えば、単純な曲げモード、ねじれモード、径方向モードおよび複合モードを含む一組の固有振動モードを有するものとして見ることができる。典型的なコリオリ質量流量測定の応用では、材料が導管を通って流れるときに導管がある1つまたは複数の振動モードで励起され、導管の運動が導管に沿って離間した点において測定される。励起は、典型的には、ドライバ、例えば、導管を周期的に摂動させるボイスコイルタイプのアクチュエータのような電気機械装置によって与えられる。質量流量は、変換器位置での運動間の時間遅延または位相差を測定することによって決定することができる。2つ以上のこのような変換器(またはピックオフセンサ)は、典型的には、流管または流導管の振動応答を測定するために使用され、典型的には、ドライバの上流および下流の両方の位置に配置される。計装は、ピックオフセンサから信号を受信し、質量流量測定値を導出するために信号を処理する。
【0004】
流量計は、多種多様な流体流の質量流量測定を実行するために使用される。コリオリ流量計が使用される可能性があり得る1つの分野は、油井およびガス井の計量にある。そのような坑井の産出物は、油またはガスだけでなく、例えば水および/または固体のような他の成分も含む多相流を含む可能性がある。このような多相流であっても、結果として得られる計量が可能な限り正確であることが、無論非常に望ましい。
【0005】
コリオリ流量計は、単相流に対して高い精度をもたらす。しかし、コリオリ流量計を使用して空気を含む流体または同伴気体を含む流体を測定する場合、計器の精度は低下する可能性がある。これは、炭化水素流体に水が含まれている場合など、固体が同伴する流れおよび混合相流体流についても同様に当てはまる。
同伴気体は、通常、流動物質中に気泡として存在する。気泡のサイズは、存在する気体の量、流動物質の圧力、および温度に依存して変化し得る。性能の低下の程度は、どれだけの総気体が存在するかだけでなく、流れの中の個々の気泡のサイズにも関係する。気泡のサイズは測定の正確度に影響を与える可能性がある。
【0006】
関連するなお重要な誤りの原因は、流体分離に起因する。液体分離は、管の振動の結果としての液体に対する気泡の動きから生じる。液体に対する気泡の相対運動は、重力の影響下で気泡が表面に浮上するようにする力に類似した浮力によって駆動される。しかし、振動管では、重力加速度よりも振動管の加速によって気泡が大きく動く。高密度流体は軽い気泡よりも強く加速に耐えるため、気泡は管の加速と同じ方向に加速される。したがって、気泡は流管より速くかつより大きく移動し、気泡の動きにより、流体の一部は流管よりもゆっくりと移動する。これが分離問題の原理である。結果として、より低い振動振幅を有する流体は、より少ないコリオリ加速度を受け、流管に、気泡が存在しない場合よりも少ないコリオリ力を付与する。この結果、同伴気体が存在する場合、流量および密度特性が過少報告される(負の流れおよび密度の誤差)。流体に対する泡の移動量を決定するいくつかの要因があるため、流体分離の補償は困難であった。流体粘度は1つの明らかな要因である。非常に粘性のある流体では、気泡(または粒子)が流体中のある所で実質的に凍結され、わずかな流れ誤差が生じる。気泡の移動度への別の影響は気泡の大きさである。気泡に対する抗力は表面積に比例し、一方、浮力は体積に比例する。したがって、非常に小さな泡は高い抗力と浮力との比を有し、流体とともに動く傾向がある。小さな気泡は、その後、小さな誤差を引き起こす。反対に、大きな気泡は流体と共に動く傾向がなく、大きな誤差を生じる。粒子についても同様である。小さな粒子は、流体と共に移動し、小さな誤差を引き起こす傾向がある。
【0007】
流体と気体との間の密度差は、流量計の不正確さに寄与する可能性がある別の要因である。浮力は、流体と気体との間の密度の差に比例する。高圧気体は、浮力に影響を与え、分離効果を減少させるのに十分高い密度を有することができる。さらに、大きな気泡はより多くの体積を占め、流動物質の密度の真の変動につながる。気泡の圧縮性のために、気泡は気体量が変化することがあり、なお必ずしもサイズが変化するとは限らない。逆に、圧力が変化すると、それに対応して気泡の大きさが変化する可能性があり、圧力が低下するにつれて膨張し、または圧力が増加するにつれて収縮する。これはまた、流量計の固有振動数または共振振動数の変化、したがって実際の二相密度の変動を引き起こす可能性がある。
【0008】
全体として、コリオリメータが多相流の開始を経験すると、センサ管の振動が減衰され、結果として流管の振動振幅が減少する。典型的には、メータ電子機器は、振幅を回復させるために、駆動エネルギーまたはドライブゲインを増加させることによって、この減少した振幅を補償する。ただし、最大駆動エネルギーは安全性などの理由で制限されているため、上限がある。したがって、多相流がより顕著になるにつれて、相対的な測定可能な駆動振幅は減少し、ドライバがすでに100%のドライブゲインで実行しているため、これはもはや増強することができない。この時点で、メータ電子機器は、減少した振幅で管の振動を引き続き駆動する。多相流がさらにより深刻である場合には、振動の振幅は、単相流の振幅よりも最大で一桁、さらにはそれよりも大きくなる。これが起こると、コリオリ発信器はセンサ管の一次固有振動数にロックすることが難しく、密度正確度が低下し、しばしば実際の値よりも小さい測定値が得られる。管の振幅の減少は、コリオリメータの質量測定にも影響する。流管の動きが減衰するため、管に作用するコリオリの力もまた減衰し、その結果、気体-液体混合物の質量流量の過小測定が生じる。
【0009】
多相流に起因するドライブゲインの増加に関連する問題を緩和する振動型流量計が当該技術分野で必要とされている。異なるタイプの多相流を調節するために流量計の動作を調整する必要がある。本明細書の実施形態は、いつ信頼できる読み値が得られるかを判定するための流量計および関連する方法を提供する。本明細書の実施形態は、多相流のタイプを区別し、それに応じて流れを計算するための流量計および関連する方法を提供する。本明細書の実施形態は、多相流に関連する過小読み値要因を補償する流量計および関連する方法を提供する。従って、当該分野における進歩がなされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、流量計の信頼性を向上させる方法が提供される。流量計は、少なくとも1つの流管と、流管に取り付けられた少なくとも1つのピックオフセンサと、流管に取り付けられた少なくとも1つのドライバと、少なくとも1つのピックオフセンサおよびドライバと通信するメータ電子機器とを備える。この方法は、少なくとも1つのドライバを用いて駆動モード振動で少なくとも1つの流管を振動させるステップと、少なくとも1つのピックオフセンサからの駆動モード振動に対する振動応答に基づくセンサ信号を受信するステップとを含む。少なくとも1つの流れ変数が計算される。ピックオフセンサ電圧が測定され、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っているか否かが判定される。ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中、少なくとも1つの流れ変数が補正される。
【0011】
一実施形態によれば、測定信頼性を向上させるように構成された流量計のためのメータ電子機器が提供される。流量計は、少なくとも1つの流管と、流管に取り付けられた少なくとも1つのピックオフセンサと、流管に取り付けられた少なくとも1つのドライバとを備える。メータ電子機器は少なくとも1つのピックオフセンサおよび少なくとも1つのドライバと通信し、少なくとも1つのドライバを用いて駆動モード振動で少なくとも1つの流管を振動させるステップと、少なくとも1つのピックオフセンサからの駆動モード振動に対する振動応答に基づくセンサ信号を受信するステップとを行うように構成されている。メータ電子機器はまた、少なくとも1つの流れ変数を計算し、ピックオフセンサ電圧を測定し、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っているか否かを判定するように構成される。ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中、少なくとも1つの流れ変数が補正される。
【0012】
発明の態様
一態様に従って、流量計の信頼性を向上させる方法が提供される。流量計は、少なくとも1つの流管と、流管に取り付けられた少なくとも1つのピックオフセンサと、流管に取り付けられた少なくとも1つのドライバと、少なくとも1つのピックオフセンサおよびドライバと通信するメータ電子機器とを備える。この方法は、少なくとも1つのドライバを用いて駆動モード振動で少なくとも1つの流管を振動させるステップと、少なくとも1つのピックオフセンサからの駆動モード振動に対する振動応答に基づくセンサ信号を受信するステップと、少なくとも1つの流れ変数を計算するステップと、ピックオフセンサ電圧を測定するステップと、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っているか否かを判定するステップと、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中に少なくとも1つの流れ変数を補正するステップとを含む。
【0013】
好ましくは、流れ変数は、質量流量、体積流量、密度、およびウォーターカットの少なくとも1つを含む。
好ましくは、ウォーターカットは、メータ電子機器と通信するウォーターカット分析器によって測定される。
好ましくは、所定の電圧閾値を下回っている期間中、少なくとも1つの流れ変数を補正するステップを含む方法は、平均化を含む。
好ましくは、平均化は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回る直前の時点を決定し、この時点における第1の少なくとも1つの流れ変数を決定するステップと、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を上回って戻った時点を決定し、この時点における第2の少なくとも1つの流れ変数を決定するステップと、第1の少なくとも1つの流れ変数および第2の少なくとも1つの流れ変数の平均を計算するステップとを含む。
【0014】
好ましくは、この方法は、ピックオフセンサ電圧を、質量流量過小読み値および密度過小読み値の少なくとも1つと相関させるステップと、相関に基づいて過小読み値補正係数を導出するステップと、過小読み値補正係数を少なくとも1つの流れ変数に適用するステップとを含む。
好ましくは、この方法は、流量計を通る流体流が、主に気体を含む多相流であるか否かを判定するステップと、流量計を通る流体流が、主に液体を含む多相流であるか否かを判定するステップと、流量計を通る流体流が主に気体を含む多相流である場合には、メータ電子機器の気体優勢流ルーチンを適用するステップと、流量計を通る流体流が主に液体を含む多相流である場合には、メータ電子機器の液体優勢流ルーチンを適用するステップとを含む。
【0015】
好ましくは、この方法は、流量計によって質量流量およびかさ密度を測定するステップと、測定されている温度、圧力、および気体組成から気体密度を決定するステップと、液体密度を経験的に決定するステップと、体積気体流量、体積液体流量、および気体空隙率を、質量流量、かさ密度、気体密度、および液体密度から決定するステップとを含む。
好ましくは、この方法は、Lockhart-Martinelliパラメータを決定するステップと、気相の質量流量および液相の質量流量を決定するステップとを含む。
好ましくは、この方法は、液体が水を含むか否かを判定するステップと、ウォーターカット分析器を用いて液体密度を測定するステップと、油の体積流量を決定するステップと、液体の体積流量を決定するステップとを含む。
【0016】
一態様によれば、測定信頼性を向上させるように構成された流量計のためのメータ電子機器が提供される。流量計は、少なくとも1つの流管と、少なくとも1つの流管に取り付けられた少なくとも1つのピックオフセンサと、流管に取り付けられた少なくとも1つのドライバとを備え、メータ電子機器は、少なくとも1つのピックオフセンサおよび少なくとも1つのドライバと通信する。メータ電子機器は、少なくとも1つのドライバを用いて駆動モード振動で少なくとも1つの流管を振動させるステップと、少なくとも1つのピックオフセンサからの駆動モード振動に対する振動応答に基づくセンサ信号を受信するステップと、少なくとも1つの流れ変数を計算するステップと、ピックオフセンサ電圧を測定するステップと、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っているか否かを判定するステップと、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中に少なくとも1つの流れ変数を補正するステップとを行うように構成されている。
【0017】
好ましくは、流れ変数は、質量流量、体積流量、密度、およびウォーターカットの少なくとも1つを含む。
好ましくは、ウォーターカットは、メータ電子機器と通信するウォーターカット分析器によって測定される。
好ましくは、メータ電子機器は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回っている期間中、少なくとも1つの流れ変数を平均するように構成されている。
好ましくは、平均は、第1の流れ変数および第2の流れ変数の計算された平均を含み、第1の流れ変数は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を下回る直前の時点において決定されるピックオフセンサ電圧値であり、第2の流れ変数は、ピックオフセンサ電圧が所定の電圧閾値を上回って戻った直後の時点において決定されるピックオフセンサ電圧値である。
【0018】
好ましくは、ピックオフセンサ電圧は、質量流量過小読み値および密度過小読み値の少なくとも1つと相関され、メータ電子機器は、相関に基づいて過小読み値補正係数を導出するように構成されており、過小読み値補正係数は、少なくとも1つの流れ変数に適用される。
好ましくは、メータ電子機器は、流量計を通る流体流が、主に気体を含む多相流であるか否かを判定するステップと、流量計を通る流体流が、主に液体を含む多相流であるか否かを判定するステップと、流量計を通る流体流が主に気体を含む多相流である場合には、メータ電子機器の気体優勢流ルーチンを適用するステップと、流量計を通る流体流が主に液体を含む多相流である場合には、メータ電子機器の液体優勢流ルーチンを適用するステップとを行うように構成されている。
好ましくは、メータ電子機器は、流量計によって質量流量およびかさ密度を測定するステップと、測定されている温度、圧力、および気体組成から気体密度を決定するステップと、液体密度を経験的に決定するステップと、体積気体流量、体積液体流量、および気体空隙率を、質量流量、かさ密度、気体密度、および液体密度から決定するステップとを行うように構成されている。
好ましくは、メータ電子機器は、Lockhart-Martinelliパラメータを決定するステップと、気相の質量流量および液相の質量流量を決定するステップとを行うように構成されている。
好ましくは、メータ電子機器は、液体が水を含むか否かを判定するステップと、ウォーターカット分析器を用いて液体密度を測定するステップと、油の体積流量を決定するステップと、液体の体積流量を決定するステップとを行うように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】メータアセンブリおよびメータ電子機器を備える流量計を示す図である。
【
図2】一実施形態によるメータ電子機器のブロック図である。
【
図4】また別の実施形態の実施態様のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図4及び以下の説明は、当業者に本発明の最良の形態を作成および使用する方法を教示するための特定の例を示している。本発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者であれば、本発明の範囲内に入るこれらの実施例からの変形を理解するであろう。当業者であれば、以下に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて本発明の複数の変形を形成することができることを理解するであろう。その結果、本発明は、以下に説明する具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【0021】
図1は、一実施形態による振動流量計5を示す。流量計5は、センサアセンブリ10と、センサアセンブリ10に結合されたメータ電子機器20とを備える。センサアセンブリ10は、少なくともプロセス材料の質量流量および密度に応答する。メータ電子機器20は、通信リンク26を介して密度、質量流量、および温度情報、ならびに他の情報を提供するために、リード線100を介してセンサアセンブリ10に接続される。コリオリ流量計構造が記載されているが、本発明は振動管密度計としても動作可能であることが当業者には明らかである。
【0022】
センサアセンブリ10は、マニホールド150および150'と、フランジネック110および110'を有するフランジ103および103'と、平行な流管130および130'と、第1のドライバ180Lおよび第2のドライバ180Rと、第1のピックオフセンサ170Lおよび第2のピックオフセンサ170R(簡潔にするために、ドライバおよびピックオフセンサは、本明細書ではまとめて「トランスデューサ」と呼ぶことがある)とを含む。第1のドライバ180Lおよび第2のドライバ180Rは、1つまたは複数の流管130および130'上で離間されている。いくつかの実施形態では、単一のドライバのみが存在する。加えて、いくつかの実施形態では、センサアセンブリ10は、温度センサ190を含むことができる。流管130および130'は、2つの基本的に直線状の入口脚部131および131'と、流管取り付けブロック120および120'において互いに向かって収束する出口脚部134および134'を有する。流管130および130'は、その長さに沿って2つの対称位置で曲がり、それらの長さ全体にわたって本質的に平行である。ブレースバー140および140'は、各流管がその周りで振動する軸Wおよび実質的に平行な軸W'を画定するように機能する。一実施形態では、第1のドライバ180Lは第1のピックオフセンサ170Lとともに用いることができ、第2のドライバ180Rは第2のピックオフセンサ170Rとともに用いることができることに留意されたい。
【0023】
流管130および130'の側脚部131,131'、134,134'は、流管取り付けブロック120および120'に固定して取り付けられ、これらのブロックは、マニホールド150および150'に固定して取り付けられる。これは、センサアセンブリ10を通る連続的な閉鎖材料経路を提供する。
孔102および102'を有するフランジ103および103'が、入口端部104および出口端部104'を介して、測定されているプロセス材料を搬送するプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料はフランジ103内のオリフィス101を通じて流量計5の入口端部104に入り、マニホールド150を通って流管取り付けブロック120に導かれる。マニホールド150内で、材料は分割され、流管130および130'を通って送られる。流管130および130'を出ると、プロセス材料はマニホールド150'内で単一の流れに再結合され、その後、オリフィス101’を介してボルト孔102'を有するフランジ103'によってプロセスライン(図示せず)に接続されている出口端部104'に送られる。流動流体は、液体を含むことができる。流動流体は、気体を含むことができる。流動流体は、同伴気体および/または同伴固体を含む液体または同伴液体を含む気体などの多相流体を含むことができる。
【0024】
流管130および130'は、それぞれ曲げ軸W-WおよびW'-W'を中心とした実質的に同じ質量分布、慣性モーメントおよびヤング率を有するように選択され、流管取り付けブロック120および120'に適切に取付けられる。これらの曲げ軸は、ブレースバー140および140'を通過する。流管のヤング率が温度によって変化し、この変化が流量および密度の計算に影響を及ぼす限り、抵抗温度検出器(RTD)であってもよい温度センサ190が、流管130、130'に取り付けられて、流管130、130’の温度を連続的に測定する。温度センサ190にわたって見られる温度依存電圧は、メータ電子機器20によって、流管温度の任意の変化に起因する流管130および130'の弾性率の変化を補償するために使用することができる。温度センサ190は、リード線195によってメータ電子機器20に接続されている。
【0025】
流管130,130'は、典型的には、それぞれの曲げ軸WおよびW'の周りで反対方向に、かつ振動流量計5の第1の位相外曲げモードと呼ばれるモードにおいてドライバ180L、180Rによって駆動される。ドライバ180L、180Rは、流管130に取り付けられた磁石、および、近接する流管130'に取り付けられた対向コイルなど、多くの周知の構成のうちの1つを含むことができる。対向するコイルに交流電流が通されて、両方の流管130,130 'が振動させられる。適切な駆動信号が、メータ電子機器20によってドライバ180L、180Rに印加される。他のドライバ装置が考えられ、本明細書および請求項の範囲内にある。
【0026】
メータ電子機器20は、センサアセンブリ10からセンサ信号を受信し、また、ドライバ180L、180Rに流管130,130'を振動させる駆動信号を生成する。他のセンサ装置が考えられ、本明細書および請求項の範囲内にある。
メータ電子機器20は、とりわけ、流量を計算するために、ピックオフセンサ170L、170Rからの左右の速度信号を処理する。通信リンク26は、メータ電子機器20がオペレータまたは他の電子システムとインターフェースすることを可能にする入力および出力手段を提供する。
一実施形態では、流管130,130'は、図示のように実質的にU字形の流管を含む。代替的に、他の実施形態では、流量計5は、実質的に直線状の流管130,130'を備えることができる。追加の流量計形状および/または構成を使用することができ、本明細書および請求項の範囲内にある。
図1の説明は、単に流量測定装置の動作の一例として提供されており、本発明の教示を限定するものではない。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態による流量計5のメータ電子機器20を示す。メータ電子機器20は、インターフェース201および処理システム203を含むことができる。メータ電子機器20は、限定ではなく、例えば、ピックオフセンサ170L、170Rの信号などの、センサアセンブリ10からのトランスデューサ信号を受信する。メータ電子機器20は、センサアセンブリ10を流れる流動物質の流れ特性を得るために、センサ信号を処理する。例えば、メータ電子機器20は、センサ信号から、位相差、周波数、時間差(Δt)、密度、質量流量、歪み、および体積流量のうちの1つまたは複数を決定することができる。さらに、いくつかの実施形態では、他の流れ特性を決定することができる。
【0028】
インターフェース201は、
図1に示すリード線100を介してトランスデューサからセンサ信号を受信する。インターフェース201は、任意の様式のフォーマット、増幅、バッファリングなどの任意の必要な、または所望の信号調整を行うことができる。代替的に、信号調整の一部または全部を処理システム203において実行することができる。
さらに、インターフェース201は、例えば、通信リンク26などを通じて、メータ電子機器20と外部装置との間の通信を可能にすることができる。インターフェース201は、任意の様式の電子的、光学的、または無線通信が可能であり得る。
【0029】
インターフェース201は、一実施形態ではデジタイザ202を含み、センサ信号はアナログセンサ信号を含む。デジタイザ202は、アナログセンサ信号をサンプリングし、デジタル化し、デジタルセンサ信号を生成する。インターフェース/デジタイザ201/202はまた、任意の必要なデシメーションを実行することができ、必要な信号処理の量を低減し、処理時間を短縮するために、デジタルセンサ信号がデシメーションされる。
処理システム203は、メータ電子機器20の動作を行い、センサアセンブリ10からの流れ測定値を処理する。処理システム203は、1つまたは複数の処理ルーチンを実行し、それによって、1つ以上の流れ特性を生成するために流れ測定値を処理する。
処理システム203は、汎用コンピュータ、マイクロプロセッシングシステム、論理回路、または何らかの他の汎用もしくはカスタマイズされた処理装置を含むことができる。処理システム203は、複数の処理装置の間で分散させることができる。処理システム203は、記憶システム204のような任意の様式の一体型または独立した電子記憶媒体を含むことができる。
【0030】
処理システム203は、流量計5を動作させるために、記憶されたルーチンを取り出して実行するように構成されている。記憶システム204は、一般流量計ルーチン205、気体優勢流ルーチン220、液体優勢流ルーチン222、ゲインルーチン224、および補正ルーチン226を含むルーチンを記憶することができる。処理システム203は少なくとも、トランスデューサ信号の大きさ、位相差、時間差、および周波数を決定することができる。他の測定値/処理ルーチンが考えられ、本明細書および請求項の範囲内にある。記憶システム204は、測定値、受信値、作業値、および他の情報を記憶することができる。いくつかの実施形態では、記憶システムは、例えば、限定ではなく、質量流量
【数12】
210、密度(ρ)212、粘度(μ)214、温度(T)216、当技術分野で知られている他の値、およびそれらの積のいずれか1つまたは複数を記憶することができる。流量計ルーチン205は、流体および流れ測定値を生成および記憶することができる。これらの値は、実質的に瞬間的な測定値を含むことができ、または合計値もしくは累積値を含むことができ、データベースおよびルックアップテーブルを含むこともできる。例えば、流量計ルーチン205は、質量流量測定値を生成し、このような測定値を記憶システム204に記憶することができる。流量計ルーチン205は、密度測定値を生成し、それらを記憶システム204に記憶することができる。他の測定値が、当業者には理解されるように、同様に生成され、記憶システムに記憶されることが企図される。質量流量210および密度212の値は、前述したように、また当技術分野で知られているように、トランスデューサの応答から決定される。質量流量210は、実質的に瞬間的な質量流量値を含むことができ、質量流量サンプルを含むことができ、一定の時間間隔にわたる平均質量流量を含むことができ、または一定の時間間隔にわたる累積質量流量を含むことができる。時間間隔は、特定の流体条件が検出される時間のブロック、例えば液体のみの流体状態、または代替的に液体および同伴気体を含む流体状態に対応するように選択されてもよい。加えて、他の質量流定量化が考えられ、本明細書および請求項の範囲内にある。
【0031】
一実施形態では、流れは、同じ流管130、130’の入口131,131'(または出口134,134')側に対する流管130,130'の出口134,134'(または入口131,131')側の相対運動を直接的に測定することによって検知される。流体流の間、信号出力は、典型的には、流速の関数である振幅を有する(これは、流れに起因する、複雑さを増すモード形状、すなわち入口/出口相に対応する)。関連する実施形態では、メータの入口側の1つまたは複数のトランスデューサからの合成信号と、メータの出口側の1つまたは複数のトランスデューサからの合成信号がメータ電子機器に入力される。位相測定値は、入口信号および出口信号から導き出すことができる。
例えば、直接的な坑口測定のようないくつかの状況では、収集される情報が運用上および管理上の決定に不可欠であるため、坑井を連続的に測定することができることが望ましい。残念なことに、同伴気体などの複数の成分が存在すること、流量が可変であること、および高いウォーターカットが、測定値を信頼できないものにするため、このような測定は困難であることが多い。
【0032】
一実施形態では、流管130,130'の振幅は、流量計5の入口に最も近いピックオフセンサ170Lを介してセンサアセンブリ10によって測定することができる。このピックオフセンサの信号がある閾値を下回ると、質量流量の不確実性および混合物密度の不確実性は、一般に、大きすぎて信頼性のある測定値と考えることができない。信号が信頼性がないと考えられる閾値は、例えば、質量流量測定および密度測定について異なることがある。多相流は、油井やガス井などからコリオリセンサを介して生成されるため、流れを測定不能な期間、および、流れが測定可能な均質な期間がしばしばある。測定可能な期間は、典型的には、液体が優勢な流れの中の気体空隙率(GVF)が低い流れおよび湿潤気体流中の低いLockhart-Martinelli(LM)パラメータによって特徴付けられる。LMは二相流計算に使用される無次元数であり、流動流体の液体分率を表す。参照により本明細書に組み込まれる、Proposed Correlation of Data for Isothermal Two Phase Flow, Two Component Flow in Pipes Lockhart, R.W., Martinelli, R.C.; Chem. Eng. Prog., Vol. 45. 1949, pp. 39-48を参照されたい。比較的流れが均質であるこれらの期間中、質量流量および密度の誤差は、信頼性のある測定値を生成するのに許容可能なほど十分に低くすることができる。これらの期間はまた、所定の閾値を超える流管130,130'の振幅に対応することに留意されたい。
【0033】
図3を参照すると、一実施形態による、流れの不均質な期間を通じた質量流量または密度を決定する流量計5の図が示されている。x軸300は、ある時間経過にわたって採取されるデータサンプルを表し、一方で、y軸302は、ピックオフセンサ電圧またはドライブゲインの逆数を表し、ドライブゲインは、逆数小数パーセンテージである。各データサンプルは、バー303によって表される。報告された質量流量および/または密度は線306で示されている。破線304は、所定のピックオフ電圧閾値または逆ドライブゲイン閾値を示す。原点から出発して、最初の10個のデータ点が、電圧または逆ドライブゲイン閾値304を上回る電圧または逆ドライブゲインを有することは明らかである。しかし、11番目のデータ点は、11個のデータ点のうち、電圧または逆ドライブゲイン閾値304を下回った最初のデータ点を表す。これらの対応する質量流量および/または密度値のうち、電圧または逆ドライブゲイン閾値304を下回った最初の値が矢印308によって示されており、一方で、電圧または逆ドライブゲイン閾値304を上回るデータ点と対応する質量流量および/または密度値の後の最初のデータ点が、矢印310によって示される。
【0034】
一実施形態では、メータ電子機器20は、センサアセンブリ10から、例えば、質量流量、密度、温度、および管振幅信号を受信するが、これらに限定されない。質量流量および/または密度が計算される。しかしながら、一実施形態では、オペレータが入力した閾値(複数可)を下回る管振幅または逆ドライブゲインに対応する質量流量および/または密度読み値は、計算において無視される。
図3において、これは、矢印308によって示される点において開始し、矢印310によって示される点の前のデータ点までのデータ点に対応する。一実施形態では、これらの期間中の質量流量および密度の値は、オペレータが入力した設定値に置き換えることができる。別の実施形態では、これらの期間中の質量流量および密度の値は推定されてもよい。関連する実施形態では、平均質量流量および/または密度が提供される。例えば、与えられる値は、測定されるトランスデューサ振幅が所定の電圧または逆ドライブゲイン閾値304より下に落ちる直前の値(矢印308によって示される点)と、測定されるトランスデューサ振幅または逆ドライブゲインが所定の電圧閾値304を再び上回って戻った値(矢印310によって示される点)との間の平均であってもよい。これは
図3において、無視されたデータ312が置換データ314によって置換されているものとして示されている。データの平均または置換のためのこれらの方法および他の方法/計算が企図され、メータ電子機器20に記憶されてもよい。
【0035】
同伴液体を中に有する気体が優勢の状況に対応するための実施形態が提供される。一例として、油田への適用の場合、天然ガス中の同伴液体は、ほとんどが水、ほとんどが凝縮物(または原油)、または両方の混合であり得る。非混合物の事例を包含する一実施形態では、上記の、
図3に関連する解決策が適切である。このタイプの湿潤ガス流の場合、メータ電子機器20は、多相流を無視し、トランスデューサ振幅または逆ドライブゲイン読み値が低い期間について置換コリオリ値を単純に利用するように構成することができる。
一実施形態では、例えば、限定ではなく、気体分画の体積および液体分画の体積を決定するために、以下の式を利用することができる。
【数1】
式中、
【数1A】
=質量流量
【数1B】
=気体の体積流量
ρ
gas=気体の密度
【数1C】
=液体の体積流量
ρ
liquid=液体の密度
【数2】
式中、
GVF=気体空隙率
ρ
B=かさ密度
【数3】
【0036】
式(1)〜(3)を参照すると、
【数3A】
およびρ
Bは流量計5から導出される値である。ρ
gasは、温度、圧力、気体組成、および周知の米国ガス協会(AGA)の式から導き出される。ρ
liquidは経験的測定値から分かる。これは、
【数3B】
、
【数3C】
、およびGVFを未知数として残し、したがって、これらについて解かれ得る。
同伴気体を伴う液体優勢の流れを有する実施形態では、ピックオフ電圧および/またはドライブゲインとGVFとの間の数学的関係を、以前の経験的試験によって直接的に決定することが可能である。式(1)および(3)を用いることにより、
【数3D】
、
【数3E】
について、この代替方法を用いて解くことができる。
【0037】
関連する実施形態において、湿潤気体流の状況について、以下の式をさらに利用することができる。
【数4】
式中、
LM=Lockhart-Martinelliパラメータ
【数4A】
=液体の質量流量
【数4B】
=気体の質量流量
【数5】
【0038】
式(1)〜(3)と組み合わせて式(4)および(5)を利用することにより、コリオリセンサの事前試験により、LMの利用が可能になる。したがって、この既知の変数を使用して
【数5A】
および
【数5B】
を決定することができる。典型的には、ρ
gasは、温度、圧力、気体組成、およびAGA式を用いて上記のように決定される。ρ
liquidはオペレータが入力する。上述したように、
【数5C】
は流量計5から導出される質量流量である。これは、2つの未知数、すなわち
【数5D】
および
【数5E】
を有する2つの式をもたらす。一実施形態では、一般的に使用される標準体積流量は、質量速度をそれらの基本密度で除算することによって導き出すことができる。
【数5F】
及び
【数5G】
を決定するためにLM関係を利用するこのアルゴリズムは、気体優勢の混合物の場合に使用される。
【0039】
それによって、この多相測定システムは、気体優勢の流れと液体優勢の流れとの間を区別することができ、依然として、液体および気体の体積流量を決定するソリューションに正確な経験的アルゴリズムを適用することができ、密度とLockhart-Martinelli数との間、および、密度とGVFとの単純な関係が利用される。気体優勢の場合、測定されるコリオリ密度は、経験的試験によって確立される測定可能なLMの上限値に対応する一定値を下回る必要がある。この密度は、システムの流圧に依存する。
【0040】
液体優勢の流れの場合、測定されるコリオリ密度とGVFの測定可能な上限閾値との間の関係は、経験的に決定されなければならない。この密度もまた、システムの流圧に依存する。流圧におけるコリオリ密度が気体優勢および液体優勢の2つの範囲のいずれかの外側であると判定された場合、経験的解は使用できず、式(1)〜(3)を使用して、液体の体積流量および気体の体積流量について解くことができる。
液体が炭化水素と水との混合物である場合、一実施形態では、サンプリングおよび/または三相流を測定することができるウォーターカット分析器の使用によって、液体の密度を決定することができる。このとき、油流量および水流量を、以下によって定義することができる。
【数6】
【数7】
式中、
【数7A】
=油の体積流量
WC=ウォーターカット(総体積と比較した水体積比の体積分率)
【数7B】
=水の体積流量
【0041】
ウォーターカットはウォーターカット分析器によって測定することができる。一実施形態では、ウォーターカット分析器は、液体中の気泡の影響を受けず、および/または湿潤気体流のミスト相におけるウォーターカットを測定することができる。したがって、ウォーターカット分析器を用いることにより、ρ
liquid(式(2)、(4))は、以下によってより正確に決定することができる。
【数8】
式中、
ρ
oil=油の密度
ρ
H2O=水の密度
式(6)、(7)および(8)は、液相中の水および炭化水素の量を決定するのに使用される式の単なる例であり、決してこれらの特定の式に実施形態を限定するものではない。これらの式および他の式は、気体優勢流ルーチン220および液体優勢流ルーチン222において企図される。
【0042】
液体優勢の流れを有する油およびガス関連の実施形態では、典型的には、様々な比率で水と混合された液体炭化水素が存在する。したがって、ウォーターカット測定のいくつかの方法の使用は、典型的にはメータ電子機器20に中継されて、総流量のうちの液体分画の区別を容易にする。したがって、一実施形態では、ウォーターカット分析器は、通信リンク26を介して流量計と通信状態に置かれる。
多くの用途において、圧力はρ
gasがゼロであると仮定することができるほど十分に低く、この場合、式(2)は、以下に置き換えることができる。
【数9】
この場合、液体の体積流量は、以下によって決定することができる。
【数10】
したがって、気体の体積流量は、以下によって決定することができる。
【数11】
【0043】
これらの式を利用して、
【数11A】
および
【数11B】
が、式(6)および(7)によって定義される。最も一般的に使用される標準体積は、実際の体積から、実際の条件における油、水および気体の密度および/または成分の知識によって計算することができる。標準条件または基準条件における密度は、米国石油協会(API)およびAGAのアルゴリズムを用いて決定することができる。APIアルゴリズムは、実際の体積を標準体積に変換するための液体量補正係数(VCF)をもたらす。AGAアルゴリズムは、温度、圧力、および組成を用いて実際の気体体積を標準体積に変換するために利用することができる。
これらは、液相優勢の流れに使用される式の単なる例であり、決してこれらの特定の式に実施形態を限定するものではない。これらの式および他の式は、液体優勢流ルーチン222において企図される。
【0044】
すでに述べたように、二相流における質量流量および密度測定値は、通常、実際の値よりも小さい。したがって、流量計5から直接測定される上記の式中の変数は、この影響を受ける。ピックオフセンサ170Lまたはドライブゲインと、質量流量および密度過小読み値との間にある関係が存在することが発見された。一実施形態では、メータ電子機器20によるアルゴリズムは、これらの補正係数を用いてリアルタイムで質量流量および密度読み値を反復的に補正することができる。これにより、コリオリ二相測定の正確度が向上する。
【0045】
図4を参照すると、ピックオフセンサまたは逆ドライブゲインに対応する質量流量補正係数が示されている。
図3と共通の要素は同じ要素番号を共有する。x軸300は、ある時間経過にわたって採取されるデータサンプルを表し、一方で、y軸302は、ピックオフセンサ電圧または逆ドライブゲインを表す。各データサンプルは、バー303によって表される。報告された質量流量および/または密度は線306で示されている。破線は、所定のピックオフ電圧304または逆ドライブゲイン閾値を示す。参照のために、通常の単相ピックオフ電圧または逆ドライブゲインが線301によって示されている。原点から出発して、最初の10個のデータ点が、電圧または逆ドライブゲイン閾値304を上回る電圧または逆ドライブゲインを有することは明らかである。しかし、11番目のデータ点は、11個のデータ点のうち、電圧または逆ドライブゲイン閾値304を下回った最初のデータ点を表す。これらの対応する質量流量および/または密度値のうち、閾値304を下回った最初の値が矢印308によって示されており、一方で、閾値304を上回るデータ点と対応する質量流量および/または密度値の後の最初のデータ点が、矢印310によって示される。
【0046】
線306は質量流量および/または密度読み値を表し、一方、補正された質量流量および/または密度読み値は各点316によって示される。補正係数が各データ点バーの上に示され、補正係数の実施態様は線318によって示されている。したがって、相関された補正係数が、質量流量および/または密度読み値に適用され得、さらに、低ピックオフ電圧または低逆ドライブゲインパーセンテージの結果である過小報告値を補償するようにさらに調整され得る。
油井およびガス井試験における坑井性能の測定のために、例えば、分離器が、通常、液体を気体から分離するか、または油を水および気体から分離するために使用される。いずれの場合も、個々の流量計によって個々の相が個別に測定される。これらの分離器は、典型的には、効率的な分離を促進するために多数のレベル制御、安全弁、レベルセンサ、制御弁、配管、流量計、および内部装置を有する大型の重い圧力容器である。そのような分離器は、通常、法外に高価であり、それによって、坑井試験のために1つの分離器を複数の坑井によって共有しなければならない。通常24時間の試験のために、坑井を一度に1つずつ試験されることを可能にするマニホールドが通常提供される。提供される流量計5は、坑口において坑井の性能を測定することができ、したがってコスト、関連する労力、および全体的な複雑さを大幅に低減する。
【0047】
個々の現場を個別に監視することで、産出者に大きな利点がある。最も明白なことは、分離器およびそれに伴うメンテナンスが必要ないことである。もう1つの利点は、油田内のすべての坑井が同時に監視されることになり、それによって、効率的な生産および石油増進回収法(EOR)のための戦略および戦術についてリアルタイムで決定できることである。EORには、水、C0
2、天然ガス、界面活性剤、または蒸気の注入が含まれる。これは高価であり得、適切な量の媒体で適切なタイミングで適用する必要がある。油田全体にリアルタイムの生産データを持たせることで、生産および貯蔵の技術者はEORの微調整方法に関する有益な情報を得ることができる。オペレータには、問題を発生させた坑井を早期に検出できるという利点もあり、迅速に対応して問題を改善することができる。もう1つの利点は、新しい油田において、流線収集システムが、各坑井について個別の流線を試験分離器に設けるのではなく、幹線および側方設計を組み込むことができることである。これにより、パイプ、溶接、トレンチング、および必要な不動産にかかる資本コストが節約される。
【0048】
本明細書は、当業者に本発明の最良の形態を作成および使用する方法を教示するための特定の例を示している。本発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者であれば、本発明の範囲内に入るこれらの実施例からの変形を理解するであろう。
上記の実施形態の詳細な説明は、本発明の範囲内であると本発明者らが考えているすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者であれば、上述の実施形態の特定の要素は、さらなる実施形態を作成するために様々に組み合わせまたは削除されてもよく、このようなさらなる実施形態は、本発明の範囲および教示に入ることを認識するであろう。また、当業者には、本発明の範囲および教示内で追加の実施形態を作成するために、上述の実施形態を全体的または部分的に組み合わせてもよいことは明らかであろう。
したがって、本発明の特定の実施形態および実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者には理解されるように、本発明の範囲内で様々な均等な変更が可能である。本明細書で提供される教示は、上で説明され、添付の図に示されるもの以外の他の実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定される。