(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
数値である内部値を生成する内部値生成手段と、通信を行う通信手段とをそれぞれ備えている複数の装置が、通信によって内部値を送受信することにより内部値を一致させているシステムにおいて、前記システムに新たに追加される前記装置が、前記システムに含まれている装置との間で初めて通信を開始する方法であって、
前記新たに追加される装置に、
前記システムに含まれている装置と初めて通信を開始したときから、前記内部値生成手段が生成した内部値を、前記システムに含まれている装置に送信せず、前記システムに含まれている装置から送信された内部値の受信のみを行う第1の工程と、
前記内部値生成手段が生成した内部値と、前記第1の工程で受信した内部値とに基づく演算結果を用いて、内部値を生成する第2の工程と、
前記生成した内部値が、前記受信した内部値に初めて一致したか否かを判別する第3の工程と、
を行わせ、
前記第3の工程で初めて一致したと判別された以降は、その後一致していないときも含めて、前記生成した内部値を、前記システムに含まれている装置に送信する第4の工程をさらに行わせる、
ことを特徴とする方法。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光などの自然エネルギーを利用する分散形電源の研究が進んでいる。一般的に、分散形電源は、発電した電力を電力系統に逆潮流するために、電力系統に連系している。この場合、分散形電源は、電力系統の系統電圧の位相を自分の内部位相として用いて、出力電流を制御して電力調整を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、災害などにより電力系統が長期で停電になる場合や、離島などで電力系統がない場合、分散形電源は電力系統に連系せず、自立運転を行う必要がある。この場合、分散形電源は、電力系統の系統電圧から位相を検出することができないので、内部位相を自ら発振させ、これを用いて出力電圧制御を行う。
【0004】
図6は、自立運転を行う従来の分散形電源A’を説明するための図である。
【0005】
分散形電源A’は、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2によって交流電力に変換して、負荷Lに出力する。制御回路3’は、インバータ回路2を制御するものであり、分散形電源A’に設けられた各センサが検出した信号に基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。制御回路3’は、内部位相生成部31’、指令信号生成部32、PWM信号生成部33、および、通信部34を備えている。内部位相生成部31’は、内部位相θを生成して、指令信号生成部32に出力する。指令信号生成部32は、内部位相θを用いて指令信号を生成して、PWM信号生成部33に出力する。PWM信号生成部33は、指令信号生成部32より入力される指令信号に基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。
【0006】
図6に示すように、複数の分散形電源A’が並列接続された電力システムの場合、各分散形電源A’の内部位相θを同期させる必要がある。このため、各分散形電源A’を集中監視するための監視装置Cが、各分散形電源A’の内部位相θを同期させる機能を有する。すなわち、各分散形電源A’の内部位相生成部31’が生成した内部位相θを、通信部34が監視装置Cに送信する。監視装置Cは、受信した各分散形電源A’の内部位相θの例えば相加平均値(算術平均値)を算出して、目標内部位相θ
*として各分散形電源A’に送信する。内部位相生成部31’は、内部位相θが目標内部位相θ
*になるように制御する。あるいは、1つの分散形電源A’(マスタ)が監視装置Cの代わりとなり、他の分散形電源A’(スレイブ)に目標内部位相θ
*を出力する。
【0007】
しかし、これらの方法で内部位相θを同期させる場合、システムが大がかりになるし、分散形電源A’の増減に柔軟に対応しにくく、故障に脆弱であるという問題点があった。これらの問題点を解消する方法として、発明者らは、特願2013‐154536に記載の発明を開発した。当該発明は、電力システムに含まれる各分散形電源が、内部位相を少なくとも1つの他の分散形電源に送受信して、生成した内部位相と受信した内部位相とに基づく演算結果を用いて内部位相を生成するものである。この処理が各分散形電源それぞれで行われることにより、各分散形電源の内部位相は同じ値に収束する。したがって、上記問題点を解消しつつ、各分散形電源の内部位相を同期することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る装置が分散形電源のインバータ装置である場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1は、第1実施形態に係る分散形電源を説明するための図である。
図2は、第1実施形態に係る分散形電源が複数並列接続された電力システムを示す図である。
【0025】
図1に示すように、分散形電源Aは、直流電源1、インバータ回路2、および、制御回路3を備えている。分散形電源Aは、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2によって交流電力に変換して出力する。なお、図示しないが、インバータ回路2の出力側には、交流電圧を昇圧(または降圧)するための変圧器が設けられている。インバータ回路2および制御回路3をまとめたものがインバータ装置4であり、いわゆるパワーコンディショナと呼ばれるものである。
【0026】
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0027】
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。インバータ回路2は、図示しないPWM制御インバータとフィルタとを備えている。PWM制御インバータは、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、制御回路3から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタは、スイッチングによる高周波成分を除去する。なお、インバータ回路2は、これに限られない。例えば、PWM制御インバータは、単相インバータであってもよいし、マルチレベルインバータであってもよい。また、PWM制御に限定されず、フェーズシフト制御など他の方式を用いるものであってもよい。
【0028】
制御回路3は、インバータ回路2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路3は、分散形電源Aに設けられた各センサが検出したインバータ回路2の入力電圧、出力電圧、出力電流などに基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。制御回路3は、内部位相生成部31、指令信号生成部32、PWM信号生成部33、通信部34、および、送信制御部35を備えている。
【0029】
内部位相生成部31は、指令信号を生成するために用いられる内部位相θ
iを生成するものである。内部位相生成部31の詳細については、後述する。
【0030】
指令信号生成部32は、出力電圧制御を行うための指令信号を生成するものである。指令信号生成部32は、インバータ回路2の出力電圧を検出した三相の電圧信号に、いわゆる三相/二相変換処理(αβ変換処理)および回転座標変換処理(dq変換処理)を行い、d軸成分とq軸成分の信号に変換する。三相/二相変換処理とは、三相の交流信号をそれと等価な二相の交流信号に変換する処理であり、三相の交流信号を静止した直交座標系(以下、「静止座標系」という。)における直交するα軸とβ軸の成分にそれぞれ分解して各軸の成分を足し合わせることで、α軸成分の交流信号とβ軸成分の交流信号に変換するものである。また、回転座標変換処理とは、静止座標系の二相(α軸成分とβ軸成分)の信号を回転座標系の二相(d軸成分とq軸成分)の信号に変換する処理である。回転座標系は、直交するd軸とq軸とを有し、所定の角速度で回転する直交座標系である。回転座標変換処理は、内部位相生成部31より入力される内部位相θ
iに基づいて行われる。
【0031】
指令信号生成部32は、電圧信号のd軸成分とq軸成分から直流成分だけを抽出し、それぞれ別に制御処理を行って、2つの補償信号に静止座標変換処理(逆dq変換処理)および二相/三相変換処理(逆αβ変換処理)を行って3つの補償信号に変換する。静止座標変換処理は回転座標変換処理の逆の処理を行い、二相/三相変換処理は三相/二相変換処理の逆の処理を行う。静止座標変換処理は、内部位相生成部31より入力される内部位相θ
iに基づいて行われる。指令信号生成部32は、内部位相生成部31より入力される内部位相θ
iに基づいて生成された正弦波信号と、3つの補償信号とから3つの指令信号を生成して、PWM信号生成部33に出力する。
【0032】
指令信号生成部32は、インバータ回路2の入力電圧の制御を行うが、これらの説明は省略する。なお、本実施形態では、分散形電源Aが三相のシステムである場合について説明したが、単相のシステムであってもよい。単相のシステムの場合、指令信号生成部32は、インバータ回路2の出力電圧を検出した単相の電圧信号に対して制御を行えばよい。
【0033】
PWM信号生成部33は、PWM信号を生成するものである。PWM信号生成部33は、キャリア信号と指令信号生成部32より入力される指令信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。例えば、指令信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、指令信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、PWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ回路2に出力される。なお、PWM信号生成部33は、三角波比較法によりPWM信号を生成する場合に限定されず、例えば、ヒステリシス方式でPWM信号を生成するようにしてもよい。
【0034】
通信部34は、他の分散形電源Aとの間で通信を行うものである。通信部34は、内部位相生成部31が生成した内部位相θ
iを入力され、他の分散形電源Aの通信部34に送信する。また、通信部34は、他の分散形電源Aの通信部34から受信した内部位相θ
jを、内部位相生成部31に出力する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0035】
図2に示すように、分散形電源Aは電力システムにおいて、他の分散形電源Aと並列接続されている。
図2においては、5つの分散形電源A(A1〜A5)と、4つの負荷Lとが接続されている状態を示している。なお、実際の電力システムにおいては、より多くの分散形電源Aおよび負荷Lが接続されているが、説明の簡略化のために極端に少ないケースを示している。
【0036】
図2に示す実線矢印は、相互通信を行っていることを示している。分散形電源A1は分散形電源A2とのみ相互通信を行っており、分散形電源A2は分散形電源A1および分散形電源A3とのみ相互通信を行っている。また、分散形電源A3は分散形電源A2および分散形電源A4とのみ相互通信を行っており、分散形電源A4は分散形電源A3および分散形電源A5とのみ相互通信を行っており、分散形電源A5は分散形電源A4とのみ相互通信を行っている。このように、分散形電源Aの通信部34は、電力システムに接続している分散形電源Aのうち、少なくとも1つの分散形電源A(例えば、近隣に位置するものや、通信が確立されたもの)の通信部34と通信を行っており、電力システムに接続している任意の2つの分散形電源Aに対して通信経路が存在している状態(以下ではこの状態を「連結状態」と言う。)であればよく、電力システムに接続しているすべての分散形電源Aの通信部34と通信を行う必要はない。
【0037】
例えば、分散形電源Aが分散形電源A2の場合、通信部34は、内部位相生成部31が生成した内部位相θ
2を分散形電源A1およびA3の通信部34に送信し、分散形電源A1の通信部34から内部位相θ
1を受信し、分散形電源A3の通信部34から内部位相θ
3を受信する。
【0038】
送信制御部35は、通信部34の送信機能を制御するものである。送信制御部35は、分散形電源Aが電力システムに追加された当初は、通信部34に送信禁止信号を出力する。送信禁止信号を入力されている間、通信部34は、内部位相θ
iを他の分散形電源Aの通信部34に送信しない。つまり、通信部34は相互通信を行わず、受信のみの片側通信を行う。送信制御部35は、内部位相生成部31より入力される演算結果u
i(後述)が「0」である状態が所定時間継続した場合に、内部位相θ
iが他の分散形電源Aの内部位相θ
iと一致したと判断し、送信禁止信号の出力を停止する。本実施形態では、演算結果u
iが過渡的に「0」になった場合を排除するために、「0」である状態が所定時間継続することを一致の条件としているが、これに限られず、演算結果u
iが「0」になることを一致の条件としてもよい。通信部34は、送信禁止信号の入力が停止すると、内部位相θ
iの送信を開始する。つまり、通信部34は相互通信を行うようになる。
【0039】
図3は、送信制御部35が行う、通信部34の送信機能を制御する処理(以下では、「送信制御処理」とする)を説明するためのフローチャートである。当該送信制御処理は、分散形電源Aが電力システムに追加されて、他の分散形電源Aと通信を開始するときに、実行が開始される。
【0040】
まず、送信禁止信号が通信部34に出力される(S1)。送信禁止信号は、例えばハイレベル信号であり、停止されるまで出力され続ける。次に、タイマtが「0」に初期化され(S2)、内部位相生成部31より入力される演算結果u
iが取得される(S3)。タイマtは、演算結果u
iが「0」である状態を計時するための変数である。
【0041】
次に、演算結果u
iが「0」であるか否かが判別される(S4)。演算結果u
iが「0」でない場合(S4:NO)、ステップS2に戻る。一方、演算結果u
iが「0」である場合(S4:YES)、タイマtが所定時間t
0を経過したか否かが判別される(S5)。タイマtが所定時間t
0未満の場合(S5:NO)、ステップS3に戻る。一方、タイマtが所定時間t
0以上である場合(S5:YES)、送信禁止信号が停止され(S6)、送信制御処理は終了する。なお、送信制御部35が行う送信制御処理は、上述したものに限定されない。
【0042】
次に、内部位相生成部31の詳細について説明する。
【0043】
内部位相生成部31は、生成した内部位相θ
iと、通信部34より入力される、他の分散形電源Aの内部位相θ
jとを用いて、内部位相θ
iを生成する。内部位相θ
iと内部位相θ
jとが異なっていても、内部位相生成部31での演算処理が繰り返されることで、内部位相θ
iと内部位相θ
jとが共通の内部位相に収束する。
図1に示すように、内部位相生成部31は、演算部311、乗算器312、加算器313および積分器314を備えている。
【0044】
演算部311は、下記(1)式に基づく演算を行う。すなわち、演算部311は、通信部34から入力される各内部位相θ
jから、内部位相生成部31が生成した内部位相θ
iをそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算した演算結果u
iを乗算器312に出力する。また、演算部311は、演算結果u
iを送信制御部35にも出力する。
【数1】
【0045】
例えば、分散形電源Aが分散形電源A2の場合(
図2参照)、演算部311は、下記(2)式の演算を行い、演算結果u
2を出力する。
【数2】
【0046】
乗算器312は、演算部311から入力される演算結果u
iに所定の係数εを乗算して加算器313に出力する。係数εは、0<ε<1/d
maxを満たす値であり、あらかじめ設定されている。d
maxは、通信部34が通信を行う他の分散形電源Aの数であるd
iのうち、電力システムに接続しているすべての分散形電源Aの中で最大のものである。つまり、電力システムに接続している分散形電源Aのなかで、一番多くの他の分散形電源Aと通信を行っているものの通信部34に入力される内部位相θ
jの数である。なお、係数εは、修正角周波数ω
iが大きく(小さく)なりすぎて、内部位相θ
iの変動が大きくなりすぎることを抑制するために、演算結果u
iに乗算されるものである。したがって、内部位相生成部31での処理が連続時間処理の場合は、乗算器312を設ける必要はない。
【0047】
加算器313は、乗算器312からの入力を所定の角周波数ω
0に加算して、修正角周波数ω
iとして積分器314に出力する。積分器314は、加算器313から入力される修正角周波数ω
iを積分することで内部位相θ
iを生成して出力する。積分器314は、前回生成した内部位相θ
iに修正角周波数ω
iを加算することで内部位相θ
iを生成する。また、積分器314は、内部位相θ
iを(−π<θ
i≦π)の範囲の値として出力する。なお、内部位相θ
iの範囲の設定の仕方はこれに限定されず、例えば、(0≦θ
i<2π)としてもよい。内部位相θ
iは、指令信号生成部32、通信部34および演算部311に出力される。
【0048】
本実施形態では、制御回路3をディジタル回路として実現した場合について説明したが、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0049】
本実施形態において、内部位相生成部31は、生成した内部位相θ
iと、通信部34より入力される、他の分散形電源Aの内部位相θ
jとを用いて、内部位相θ
iを生成する。内部位相θ
iが各内部位相θ
jの相加平均値より大きい場合、演算部311が出力する演算結果u
iは負の値になる。そうすると、修正角周波数ω
iは所定の角周波数ω
0より小さくなり、内部位相θ
iの変化量は小さくなる。一方、内部位相θ
iが各内部位相θ
jの相加平均値より小さい場合、演算部311が出力する演算結果u
iは正の値になる。そうすると、修正角周波数ω
iは所定の角周波数ω
0より大きくなり、内部位相θ
iの変化量は大きくなる。つまり、内部位相θ
iは各内部位相θ
jの相加平均値に近づいていく。この処理が各分散形電源Aそれぞれで行われることにより、各分散形電源Aの内部位相θ
iは同じ値に収束する。内部位相θ
iは時間とともに変化するものであり、角周波数ω
0に応じて変化する成分と、初期位相のずれを補償するように変化する成分とを合成したものと考えることができる。後者が同じ値θαに収束することで、各分散形電源Aの内部位相θ
iも同じ値に収束する。後者が同じ値θαに収束することは、数学的にも証明されている(非特許文献1,2参照)。また、収束値θαが、下記(3)式に示すように、各分散形電源Aの内部位相θ
iの初期値の相加平均値になることも証明されている。nは電力システムに接続されている分散形電源Aの数であり、下記(3)式は、分散形電源A1〜Anの内部位相θ
1〜θ
nの初期値をすべて加算してnで除算した相加平均値を算出することを示している。
【数3】
【0050】
なお、本実施形態においては、内部位相生成部31での処理の周期Tが1秒である場合について説明している。周期Tが例えば0.1秒の場合、加算器313で乗算器312からの入力を加算されるのは、角周波数ω
0を1/10にした(0.1を掛けた)値になる。つまり、ω
0に代えてTω
0が入力される。
【0051】
以下に、
図2に示す電力システムにおいて、内部位相θ
iが収束することを確認したシミュレーションについて説明する。
【0052】
分散形電源A1〜A5の内部位相θ
1〜θ
5の初期値を、それぞれ、θ
1=π/2,θ
2=0,θ
3=π,θ
4=3π/2,θ
5=−π/4としてシミュレーションを行った。
図4は、当該シミュレーションの結果を示すものであり、それぞれ分散形電源A1〜A5の内部位相θ
1〜θ
5のうちの角周波数ω
0に応じて変化する成分を除いたものの時間応答を示している。同図(a)は、内部位相θ
iの同期を行わなかった場合(すなわち、
図1に示す演算部311、通信部34および送信制御部35がない構成の場合)のものであり、同図(b)は、内部位相θ
iの同期を行った場合(すなわち、
図1に示す構成の場合)のものである。同図(a)においては、初期値から変化していない。一方、同図(b)においては、初期値の相加平均値である「11π/20」に収束している。
【0053】
次に、分散形電源Aが電力システムに追加されるときの、送信制御部35の作用について説明する。
【0054】
分散形電源Aが新たに電力システムに追加されて、通信部34が他の分散形電源Aの通信部34と通信を行う場合、通信部34が初めから相互通信を行うと、電力システムに含まれていた分散形電源Aの内部位相θ
iの同期が乱されるという問題が生じる。例えば、
図2に示す電力システムにおいて、分散形電源A6が新たに電力システムに追加されて、通信部34が分散形電源A5の通信部34と通信を行う場合、いきなり相互通信を開始すると、分散形電源A5の内部位相θ
5が同期した位相から変化してしまう。位相の変化は内部位相θ
1〜θ
4にも波及して、各内部位相θ
iが同期した位相から変化してしまう。各分散電源A1〜A6の内部位相生成部31での処理が繰り返されることによって、再度、同じ位相に収束することになるが、分散形電源A6が分散形電源A5と相互通信を開始したときに、分散形電源A1〜A5の内部位相θ
iが一致しない状態が発生する。
【0055】
送信制御部35は、分散形電源Aが電力システムに追加された当初は、通信部34が内部位相θ
iを他の分散形電源Aの通信部34に送信すること禁止する。これにより、通信部34は、受信のみの片側通信を行うことになる。
図2に示す電力システムにおいて、分散形電源A6が新たに電力システムに追加されて、分散形電源A6の通信部34が分散形電源A5の通信部34と通信を行う場合、まずは、
図5(a)に示すように、分散形電源A5から分散形電源A6に送信のみを行う片側通信の状態になる。この状態では、分散形電源A5の内部位相θ
5が分散形電源A6に送信されるだけで、分散形電源A5は分散形電源A6の内部位相θ
6を受信しないので、内部位相θ
5は内部位相θ
6によって変化しない。一方、分散形電源A6の内部位相θ
6は、分散形電源A5から受信した内部位相θ
5によって変化して、内部位相θ
5に一致する。
【0056】
内部位相θ
6が内部位相θ
5に一致すると、分散形電源A5の内部位相生成部31で演算される演算結果u
6が「0」になる。送信制御部35は、演算結果u
6が「0」である状態が所定時間t
0継続した場合、内部位相θ
6が他の分散形電源Aの内部位相θ
iと一致したと判断し、通信部34が内部位相θ
6を分散形電源A5の通信部34に送信することを許可する。これにより、通信部34は、分散形電源A5と相互通信を行うことになる(
図5(b)参照)。
【0057】
本実施形態によると、送信制御部35は、分散形電源Aが電力システムに追加されて通信部34が通信を開始してから、内部位相生成部31が生成する内部位相θ
iが他の分散形電源Aの内部位相θ
iに一致するまで、通信部34が受信のみの片側通信を行うようにする。これにより、分散形電源Aと通信を行う他の分散形電源Aの内部位相θ
iが影響を受けることなく、分散形電源Aの内部位相θ
iを他の分散形電源Aの内部位相θ
iに一致させることができる。したがって、分散形電源Aの通信部34が通信を開始しても、他の分散形電源Aの内部位相θ
iの同期を乱すことがない。
【0058】
なお、上記第1実施形態においては、分散形電源Aの内部位相θ
iの初期位相のずれを補償するように変化する成分を、各分散形電源Aの内部位相θ
iの初期値の相加平均値に収束させる場合について説明したが、これに限られない。演算部311に設定する演算式によって、収束値θαは変わってくる。
【0059】
例えば、演算部311に設定する演算式を下記(4)式とした場合、収束値θαは下記(5)式に示すような値になる。d
iは、通信部34が通信を行う他の分散形電源Aの数、すなわち、通信部34に入力される内部位相θ
jの数である。つまり、収束値θαは、通信相手の数による重み付けを行った、各分散形電源Aの内部位相θ
iの初期値の加重平均値である。
【数4】
【0060】
また、演算部311に設定する演算式を下記(6)式とした場合、収束値θαは下記(7)式に示すように、各分散形電源Aの内部位相θ
iの初期値の相乗平均値(幾何平均値)になる。
【数5】
【0061】
また、演算部311に設定する演算式を下記(8)式とした場合、収束値θαは下記(9)式に示すように、各分散形電源Aの内部位相θ
iの初期値の調和平均値になる。
【数6】
【0062】
また、演算部311に設定する演算式を下記(10)式とした場合、収束値θαは下記(11)式に示すように、各分散形電源Aの内部位相θ
iの初期値のP次平均値になる。
【数7】
【0063】
なお、上記第1実施形態においては、分散形電源A(インバータ装置4)の内部位相を一致させる場合について説明したが、これに限られない。本発明は、その他の位相を一致させる場合や、所定の内部値を一致させる場合にも、適用することができる。また、本発明は、分散形電源A(インバータ装置4)以外の装置(例えば、計測装置など)にも適用することができる。つまり、本発明は、複数の装置が通信によって内部値を送受信することにより内部値を一致させる場合に、適用することができる。
【0064】
本発明に係る通信機能を備えた装置、インバータ装置、および、これらの装置が他の装置と通信を開始する方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る通信機能を備えた装置、インバータ装置、および、これらの装置が他の装置と通信を開始する方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。