【文献】
“大臣認定・無被覆耐火構造床 合成スラブの設計・施工マニュアル”,日本,合成スラブ工業会,2002年12月,p.16-31
【文献】
“スラブ付き鉄骨梁の横座屈挙動 その1 実験概要”,“日本建築学会大会学術講演梗概集”,日本,(社)日本建築学会,2007年 7月31日,p.635-636
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端部が柱に剛接合されるとともに、フランジの上部に材軸方向に沿って複数のスタッドが配列して接合され、前記フランジの上部および前記材軸方向に直交する水平方向の一方側のみに連続して床スラブが配置された鉄骨梁において、
前記スタッドの近傍に配置され前記床スラブのコンクリートのみと定着する複数の補強部材が、前記材軸方向に沿って配列され、
前記補強部材の設置範囲は、前記鉄骨梁の前記材軸方向の一方の端部から他方の端部側に向かって、少なくとも前記鉄骨梁の前記材軸方向の長さの0.1の長さ範囲であって、かつ0.4の長さ以下の範囲であり、
前記複数の補強部材は、それぞれU字状またはJ字状に折り曲げられた折り曲げ部を有する棒鋼で、前記折り曲げ部が前記フランジの上部に位置し前記折り曲げ部の内側に前記スタッドが配置されるとともに、長さ方向の両端部が前記折り曲げ部よりも前記材軸方向と直交する水平方向の一方側のみに位置し、前記長さ方向の両端部のうちの少なくともいずれか一方が前記フランジの上部よりも前記材軸方向と直交する水平方向の一方側に突出していることを特徴とする鉄骨梁。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による鉄骨梁について、
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1乃至3に示すように、第1実施形態による鉄骨梁1Aは、H形鋼で構成され、材軸方向の両端部1a,1aが柱11の角型鋼管に剛接合されている。なお、本実施形態では、柱11に通しダイアフラム13,13が設けられており、鉄骨梁1Aのフランジと柱11とは通しダイアフラム13,13を介して接合されている。本実施形態では、鉄骨梁1Aは、柱11の接合される面の幅方向の中心に接合されておらず、この幅方向の一方側に寄せて接合されている。
また、本実施形態では、鉄骨梁1Aとは別に、柱11に材軸方向(延在方向)を鉄骨梁1Aの材軸方向と直交する方向とする他の2つの鉄骨梁12,12が接合されている。これらの鉄骨梁12,12は、柱11の接合される面の幅方向の中心に接合されている。
また、本実施形態では、柱11と鉄骨梁1Aとの接合部に、火打ち材などの補強材が設けられていないものとする。
【0016】
そして、鉄骨梁1Aの上フランジ2の上面2aには、幅方向の中心に鉄骨梁1Aの材軸方向に沿って1列に配列された複数のスタッド3,3…が接合され、上フランジ2の上部および材軸方向に直交する水平方向の一方側に連続して床スラブ4が配置されていて、床スラブ4のコンクリート41と定着する補強部材5Aが、所定の設置範囲においてスタッド3の近傍に配置されている。なお、
図3では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Aを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
【0017】
スタッド3,3…は、例えば頭付スタッドで構成されていて、鉄骨梁1Aの材軸方向に隣り合うスタッド3,3の間には所定の間隔が設けられている。これらのスタッド3,3…は、床スラブ4のコンクリート41の内部に埋設されていて、床スラブ4のコンクリート41に定着され、鉄骨梁1Aと床スラブ4とを一体化している。
また、本実施形態では、スタッド3の材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、上フランジ2の軸降伏耐力の0.5%以上に設定されている。
【0018】
床スラブ4は、例えば、デッキプレート(不図示)の上部に所定の厚さに打設されたコンクリート41から構成されていてもよく、内部にはワイヤメッシュ筋などの鉄筋(不図示)が適宜配筋されている。なお、本実施形態では、鉄骨梁1Aの材軸方向に直交する水平方向の他方側には、床スラブ4が配置されておらず、鉄骨梁1Aは側梁となっている。
【0019】
図4に示すように、補強部材5Aは、異形棒鋼を全体の形状が略U字状となるように、長さ方向の略中央部で折り曲げた部材で構成されている。
図2および
図3に示すように、補強部材5Aは、異形棒鋼の略中央部の折り曲げ部51の内側に1つのスタッド3が配置され、異形棒鋼の両端部52,52側がスタッド3に対して鉄骨梁1Aの材軸方向に直交する水平方向の一方側へ離間する向きとなるように配置されている。このため、補強部材5Aの異形棒鋼の折り曲げ部51よりも端部52,52側は、その材軸方向が鉄骨梁1Aの材軸方向に直交する水平方向となっている。
【0020】
本実施形態では、補強部材5Aは、上フランジ2の上部の床スラブ4および鉄骨梁1Aの材軸方向に直交する水平方向の一方側の床スラブ4にわたって配置される形状に形成されている。なお、上フランジ2の上部の床スラブ4のみに配置される形状に形成されていてもよい。
また、本実施形態では、補強部材5Aは、折り曲げ部51がスタッド3と当接している。なお、補強部材5Aは、折り曲げ部51がスタッド3と離間していてもよい。
【0021】
このような補強部材5Aの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Aの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Aの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲としている。
なお、本実施形態では、補強部材5Aの設置範囲は、鉄骨梁1Aの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Aの材軸方向の長さ(L)の0.4の長さ(0.4L)範囲としている。
【0022】
次に、上述した第1実施形態による鉄骨梁1Aの作用・効果について説明する。
上述した第1実施形態による鉄骨梁1Aによれば、床スラブ4のコンクリート41と定着する補強部材5Aが、スタッド3の近傍に配置されていることにより、床スラブ4のスタッド3が補強されるため、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、補強部材5Aがスタッド3の近傍に配置される簡便な構成であることにより、施工性がよいとともに、補強部材5Aを任意の設置範囲に限定的に施工することもできるため、施工費を抑えることができる。
また、補強部材5Aは、U字状に折り曲げられた折り曲げ部を有する異形棒鋼であることにより、床スラブ4と確実に定着し、スタッド3を確実に補強することができる。また、スタッド3に対して容易に配置することができる。
【0023】
また、鉄骨梁1Aの材軸方向の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Aの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲では、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊が生じやすいため、少なくともこの範囲に補強部材5Aを配置することにより、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、補強部材5Aの設置範囲を鉄骨梁1Aの材軸方向の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Aの材軸方向の長さの0.4の長さ以下の範囲とすることにより、補強部材5Aの設置範囲を鉄骨梁1Aの材軸方向の長さ全体とする場合と比べて、配置する補強部材5Aの数を少なくすることができるため、施工性がよく、施工費を抑えることができる。
【0024】
また、補強部材5Aが設けられていることにより、スタッド3の材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、上フランジ2の軸降伏耐力の0.5%以上に設定すれば、圧縮力による上フランジ2の横座屈を防止することができる。なお、スタッド3の材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力を上フランジ2の軸降伏耐力の1%以上に設定することがより好ましい。
【0025】
次に、第1実施形態における鉄骨梁において、有限要素法(FEM)による弾塑性解析を行った。この有限要素法による弾塑性解析および解析結果について以下に説明する。
(解析モデル)
図5に検証を行う解析ケースの一覧を示し、
図6に解析モデルを示している。鉄骨梁1は、H形断面梁で、4節点シェル要素によって構成されている。また、床スラブ4は弾性ビーム要素41によって、スタッド3は弾塑性バネ要素(Z方向ばね)31によってそれぞれモデル化されている。
鋼材のヤング係数は、205,000N/mm
2とし、ポワソン比は、0.3とする。
床スラブ4のコンクリートのヤング係数は20,500N/mm
2とし、ポワソン比は、1/6とする。荷重条件は、鉄骨梁1の端部1a,1aにそれぞれ強制変位を漸増負荷する(鉄骨梁1の端部1a,1aを
図6に示す矢印方向に変形させる)。
【0026】
(解析結果)
図7乃至
図9に示すように、鉄骨梁1の材軸方向の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1の材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲では、補強部材の設置範囲が小さいほど荷重変形関係において最大荷重以降の荷重低下が著しく、また、上フランジの最大横たわみ量が顕著であることがわかる。
このため、第1実施形態のように、補強部材の設置範囲が、少なくとも鉄骨梁1の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1の材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲であることにより、上フランジ2の横移動を効率よく防止できることがわかる。
【0027】
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0028】
(第2実施形態)
図10に示すように、第2実施形態による鉄骨梁1Bは、上フランジ2の上部に鉄骨梁1Bの材軸方向全体にわたって上フランジ2の幅方向の中心線を挟むようにしてスタッド3,3…が2列に配列されていて、鉄骨梁1Bの材軸方向に直交する水平方向には2つのスタッド3,3が並んでいる。なお、
図10(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Bを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
【0029】
そして、第2実施形態では、第1実施形態の補強部材5Aと同様に形成された補強部材5Bが配置されている。第2実施形態では、補強部材5Bは、
折り曲げ部51の内側に、鉄骨梁1Bの材軸方向に直交する水平方向に並んだ2つのスタッド3,3が配置されるように配置されている。
また、第2実施形態では、鉄骨梁1Bは、第1実施形態と同様に側梁を構成しているが、柱11に対して柱11の幅方向の中心に接合されている。
また、第2実施形態では、スタッド3の材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力は、鉄骨梁1Bの材軸方向に直交する水平方向に並んだ2つのスタッド3,3の降伏耐力の合計としている。
また、第2実施形態においても、補強部材5Bの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Bの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Bの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲となっている。
【0030】
第2実施形態による鉄骨梁1Bによれば、スタッド3が鉄骨梁1Bの材軸方向に2列に配列されている場合でも第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0031】
(第3実施形態)
図11に示すように、第3実施形態による鉄骨梁1Cでは、補強部材5Cが異形棒鋼を全体の形状が略J字状となるように、長さ方向の一方の端部53近傍で折り曲げた部材で構成されている。そして、補強部材5Cの折り曲げ部54の内側にスタッド3が配置されている。なお、
図11(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Cを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
また、第3実施形態においても、補強部材5Cの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Cの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Cの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲となっている。
【0032】
第3実施形態による鉄骨梁1Cは、補強部材5Cがスタッド3の周辺のコンクリート41と定着することにより、第1実施形態と同様の効果を奏する。そして、第3実施形態による補強部材5Cは、第1実施形態の補強部材5Aと比べて、床スラブ4のコンクリート41と定着する表面積が少ないため、第1実施形態と比べて予想される上フランジ2の横移動が少ない場合に、適用することができ、補強部材5Cの材料の使用量を少なくすることができる。
【0033】
(第4実施形態)
図12に示すように、第4実施形態による鉄骨梁1Dでは、補強部材5Dに床スラブ4の溶接金網を利用している。溶接金網は、鉄骨梁1Dの材軸方向に延びる複数の丸棒とおよびこの材軸方向に直交する水平方向へ延びる複数の丸棒とが格子状に配置されたワイヤメッシュ筋で構成されている。
そして、補強部材5Dは、少なくとも鉄骨梁1Dの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Dの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲全体において、材軸方向に直交する水平方向の一方の端部側に形成されている複数の格子のうちの一部以上の内部にそれぞれスタッド3が配置されている。
なお、
図12(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Dを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
【0034】
第4実施形態による鉄骨梁1Dは、床スラブ4の溶接金網が床スラブ4のコンクリート41と定着する補強部材5Dとなって、スタッド3の周辺のコンクリート41と定着することにより、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、床スラブ4の溶接金網を補強部材5Dとして利用することにより、補強部材5Cに特殊な材料を用意することがないため、施工性を向上させることができるとともに施工費を抑えることができる。
【0035】
(第5実施形態)
図13に示すように、第5実施形態による鉄骨梁1Eでは、補強部材5Eに、床スラブ4の断面形状が波型のデッキプレートを利用している。第5実施形態では、デッキプレートは、その波型の凹凸が、鉄骨梁1Eの材軸方向に並ぶように配置されている。そして、デッキプレートは、少なくとも鉄骨梁1Eの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Eの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲全体において、凹凸の下側に突出している部分が上フランジ2にそれぞれ溶接されている。
図13において符号61が溶接部を示している。
なお、
図13(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Eを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
【0036】
第5実施形態による鉄骨梁1Eによれば、床スラブ4のデッキプレートが床スラブ4のコンクリート41と定着する補強部材5Eとなって、上フランジ2に接合されていることにより、上フランジ2と床スラブ4とが一体化し、床スラブ4が上フランジ2の横移動を拘束する構成となるため、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、床スラブ4のデッキプレートを補強部材5Eとして利用することにより、補強部材5Cに特殊な材料を用意することがないため、施工性を向上させることができるとともに施工費を抑えることができる。
【0037】
(第6実施形態)
図14に示すように、第6実施形態による鉄骨梁1Fでは、補強部材5Fが異形棒鋼を全体の形状が略L字状となるように、長さ方向の中間部で曲げられた異形棒鋼で構成されている。補強部材5Fは、折り曲げ部55から一方の端部側が材軸方向に直交する水平方向に延在し、折り曲げ部55から他方の端部側が鉛直方向に延在する向きに配置されている。
そして、補強部材5Fの折り曲げ部55から一方の端部側を水平部56、折り曲げ部55から他方の端部側を鉛直部57とすると、鉛直部57は鉄骨梁1Fの材軸方向に直交する水平方向の他方側(床スラブ4が配置されていない側)に配置され、水平部56は、鉄骨梁1Fの上部と鉄骨梁1Fの材軸方向に直交する水平方向の一方側(床スラブ4が配置されている側)に配置されている。
【0038】
そして、補強部材5Fの水平部56は、床スラブ4のコンクリート41に埋設されている。また、補強部材5Fの鉛直部57は、床スラブ4と連続して鉄骨梁1Fの材軸方向に直交する水平方向の他方側に打設されたコンクリート42に埋設されている。このコンクリート42は、床スラブ4のコンクリート41と連続して打設されているとともに、上フランジ2のウェブ1bよりも鉄骨梁1Fの材軸方向に直交する水平方向の他方側の下側も巻き込むように打設されている。
なお、第6実施形態においても、補強部材5Fの設置範囲は、少なくとも鉄骨梁1Fの両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、鉄骨梁1Fの材軸方向の長さ(L)の0.1の長さ(0.1L)範囲となっている。
なお、
図14(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Fを示すために、床スラブ4およびコンクリート42の図示を省略している。
【0039】
第6実施形態による鉄骨梁1Fによれば、補強部材5Fおよびコンクリート42が上フランジ2と床スラブ4とを一体化し、床スラブ4が上フランジ2の横移動を拘束する構成となるため、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、第6実施形態においても、補強部材5Fを配置し、鉄骨梁1Fの床スラブ4が配置されている側の反対側にも補強部材5Fを埋設するようにコンクリート42を打設する簡便な構成であることにより、施工性がよく、施工費を抑えることができる。また、補強部材5Fおよびコンクリート42を任意の設置範囲に限定的に施工することもできる。
【0040】
(第7実施形態)
図15に示すように、第7実施形態による鉄骨梁1Gでは、補強部材5Gが所定の長さの異形棒鋼で構成され、一方の端部が上フランジ2の上部に接合されている。
補強部材5Gは、上方から見ると、鉄骨梁1Gの延在方向に直交する方向に延在し、鉄骨梁1Gの延在方向から見ると、鉄骨梁1G側となる一方の端部側が床スラブ4側となる他方の端部側よりも低い位置となるように、中間部に一方の端部側と他方の端部側に対して傾斜した傾斜部58(
図15(b)参照)が形成されている。
補強部材5Gの異形棒鋼と上フランジ2とは、例えばフレア溶接によって接合されていたり、上フランジ2の上部に溶接されたカプラに接合されていたりしている。
図15において符号62が接合部を示している。
なお、
図15(a)では、上フランジ2、スタッド3,3…、補強部材5Gを示すために、床スラブ4の図示を省略している。
【0041】
第7実施形態による鉄骨梁1Gによれば、補強部材5Gが上フランジ2と床スラブ4とを一体化し、床スラブ4が上フランジ2の横移動を拘束する構成となるため、スタッド3の周辺における床スラブ4のコンクリート41のコーン状破壊を抑制、またはコーン状破壊が発生しても急激な荷重低下を伴わない構造とすることができる。
また、第7実施形態においても、補強部材5Gを上フランジ2に接合する簡便な構成であることにより、施工性がよく、施工費を抑えることができる。また、補強部材5Gを任意の設置範囲に限定的に施工することもできる。
【0042】
以上、本発明による鉄骨梁の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、鉄骨梁1A〜1Gは、側梁としているが、鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向に直交する方向の他方側に、上フランジ2の上部および鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向に直交する方向の一方側の床スラブ4と一体化しておらず、
図16に示すような、施工高さの異なる床スラブ7が構築される段差梁や、鉄骨梁1A〜1Gの他方側に床スラブ4が構築されない開口部が形成される開口部位の梁としてもよい。
また、上記の実施形態では、柱11と鉄骨梁1A〜1Gとの接合部に、火打ち材などの補強材が設けられていないが、設けられていてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態のような補強部材5A〜5Gに代わって、または、上記の実施形態のような補強部材5A〜5Gと併せて、鉄骨梁1A〜1Gと、鉄骨梁1A〜1Gに直交するように接合された鉄骨梁12との間に設けられた火打ち材によって、鉄骨梁1A〜1Gの上フランジ2の横移動を拘束するように構成されていてもよい。
このようにすることにより、床スラブ4の鉄骨梁1A〜1G近傍の領域に配管用の孔部などが形成されていて、上記のような補強部材5A〜5Gを配置できない場合にも、鉄骨梁1A〜1Gの上フランジ2の横移動を拘束可能であり、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
また、この場合の火打ち材は、少なくとも上フランジ2の横移動を拘束可能に構成されていればよいため、上下のフランジの横移動を拘束する火打ち材を使用する場合と比べて、施工性がよく、施工費を抑えることができる。
【0044】
また、上記の実施形態では、補強部材5A〜5C,5Gに異形棒鋼を使用しているが、床スラブ4のコンクリート41と定着可能に構成されていれば、異形棒鋼以外の丸棒や角棒などの棒鋼を使用してもよいし、長尺の鋼板などを使用してもよい。
また、上記の実施形態では、鉄骨梁1A〜1Gは、H形鋼としているが、I形鋼など他の断面形状の梁材としてもよい。
また、上記の実施形態では、柱11は角型鋼管としているが、角型鋼管以外の柱11としてもよい。例えば、柱11は、溶接ボックスコラム、円形鋼管、H形鋼、RC柱、SRC柱、CFT柱などとしてもよい。
また、鉄骨梁1A〜1Gは、
図17に示すように、ウェブに孔部1bが形成された有孔梁としてもよい。なお、
図17では、鉄骨梁1A〜1Gの端部1a側の孔部1bが形成されている部分を補強するように、ウェブの孔部1bと対応する孔部7bが形成された補強プレート7がウェブに接合されている。
また、鉄骨梁1A〜1Gは、
図18に示すように、ウェブの端部1a側に端部補剛プレート8が接合されて補剛された鉄骨梁としてもよい。なお、
図18では、端部補剛プレート8は、上下方向に延在し板面が鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向を向く第1板部8aと、第1板部8aと接合され鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向に延在し板面が上下方向を向く第2板材8bとを有している。
【0045】
また、上記の第1実施形態では、鉄骨梁1Aは柱11の幅方向の中央部とずれた位置に接合され、第2〜第7実施形態では、鉄骨梁1B〜1Gは柱11の幅方向の中央部に接合されているが、柱11に対して鉄骨梁1A〜1Gが接合される位置は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、スタッド3は、頭付きスタッドとしているが、上フランジ2の上面2aに接合されて、コンクリートと定着する部材であれば、頭付スタッド以外の部材でもよい。
また、スタッド3の配列や数、隣り合うスタッド3,3の間隔は適宜設定されてよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、補強部材5A〜5Gの設置範囲は、鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向の両方の端部1aからそれぞれ他方の端部1a側に向かって、少なくとも鉄骨梁1A〜1Gの材軸方向の長さの0.1の長さ範囲で、かつ0.4の長さ以下の範囲としているが、補強部材5A〜5Gの設置範囲は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、スタッド3の前記材軸方向の配列の1箇所当たりの降伏耐力が、上フランジ2の軸降伏耐力の0.5%以上に設定されているが、0.5パーセント未満に設定されていてもよい。