特許第6522986号(P6522986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522986
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】排気熱回収器
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20190520BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20190520BHJP
【FI】
   F01N5/02 B
   F01N5/02 G
   F01N5/02 K
   F01N13/08 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-37804(P2015-37804)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160778(P2016-160778A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 史朗
(72)【発明者】
【氏名】鱒渕 宏章
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−137040(JP,A)
【文献】 特開2008−138584(JP,A)
【文献】 特開2008−157211(JP,A)
【文献】 特開2009−209906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00− 1/24、
5/00− 5/04、
13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動モードに応じて熱交換をする排気の流量が変えられる排気熱回収器であって、
排気が導入される分流部と、
前記分流部から導かれる排気が熱交換をする熱交換部と、
前記分流部から導かれる排気が前記熱交換部を迂回して流れるバイパス部と、
前記分流部を通過する排気の流れ方向を前記熱交換部又は前記バイパス部に向けるバルブと、
前記熱交換部と前記バイパス部とを隔てる境界部と、
前記熱交換部又は前記バイパス部を通過した排気を導く集合部と、を備え、
前記バルブは、
作動モードに応じて回転するバルブ軸と、
前記バルブ軸から排気の流れ方向について上流側に延びる上流側バルブ板部と、
前記バルブ軸から排気の流れ方向について下流側に延びる下流側バルブ板部と、を有し、
前記境界部は、
前記下流側バルブ板部を挟んで対向する第1シート部及び第2シート部と、
前記熱交換部の外壁を形成する熱交換部境界壁と、
前記バイパス部の外壁を形成するバイパス部境界壁と、を備え、
前記第1シート部は、前記分流部に臨む前記熱交換部境界壁の端部に形成され、
前記第2シート部は、前記分流部に臨む前記バイパス部境界壁の端部に形成されることを特徴とする排気熱回収器。
【請求項2】
請求項1に記載の排気熱回収器であって、
前記第1シート部は、前記バルブが排気の流れ方向を前記熱交換部に向ける作動モードにおいて前記下流側バルブ板部を当接させ、
前記第2シート部は、前記バルブが排気の流れ方向を前記バイパス部に向ける作動モードにおいて前記下流側バルブ板部を当接させることを特徴とする排気熱回収器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排気熱回収器であって、
前記境界部は、前記熱交換部境界壁と前記バイパス部境界壁との間に介装される断熱体をさらに備えることを特徴とする排気熱回収器。
【請求項4】
請求項3に記載の排気熱回収器であって、
前記境界部は、
前記熱交換部境界壁と前記バイパス部境界壁との間に形成される空気層と、
前記空気層を外部と遮断するように覆うケースと、をさらに備えることを特徴とする排気熱回収器。
【請求項5】
請求項3に記載の排気熱回収器であって、
前記境界部は、前記熱交換部境界壁と前記バイパス部境界壁との間に形成される空気層をさらに備え、前記空気層が外部に連通することを特徴とする排気熱回収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動モードに応じて熱交換をする排気の流量が変えられる排気熱回収器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感温式バルブの作動によって、排気の流れ方向を熱回収室側に向ける作動モードと、排気の流れ方向を迂回路側に向ける作動モードと、に切り換えられる排熱回収器(排気熱回収器)が開示されている。
【0003】
感温式バルブは、温度に応じて作動するサーモワックス部と、サーモワックス部によって回転駆動される回転軸と、回転軸に結合された板状の流路切替ダンパと、を備える。
【0004】
熱回収室と迂回路との間には仕切り壁が設けられ、仕切り壁の近傍に感温式バルブの回転軸が配置される。
【0005】
排気の流れ方向を熱回収室側に向ける作動モードでは、感温式バルブの流路切替ダンパが迂回路の入口を閉じる位置にあり、排気が感温式バルブ及び仕切り壁によって熱回収室へと導かれる。一方、排気の流れ方向を迂回路側に向ける作動モードでは、流路切替ダンパが回動して熱回収室の入口を閉じる位置に切り換えられることで、排気が感温式バルブ及び仕切り壁によって迂回路へと導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−229847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の排熱回収器にあっては、仕切り壁の近傍に感温式バルブの回転軸が配置されるため、感温式バルブの回転軸の外周と仕切り壁の上流端の間に間隙がある。このため、上記各作動モードにおいて排気の一部が間隙を通って感温式バルブの背後へと流れる内部洩れが生じるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、排気がバルブの背後へと流れる内部洩れが抑えられる排気熱回収器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、作動モードに応じて熱交換をする排気の流量が変えられる排気熱回収器であって、排気が導入される分流部と、分流部から導かれる排気が熱交換をする熱交換部と、分流部から導かれる排気が熱交換部を迂回して流れるバイパス部と、分流部を通過する排気の流れ方向を熱交換部又はバイパス部に向けるバルブと、熱交換部とバイパス部とを隔てる境界部と、熱交換部又はバイパス部を通過した排気を導く集合部と、を備え、バルブは、作動モードに応じて回転するバルブ軸と、バルブ軸から排気の流れ方向について上流側に延びる上流側バルブ板部と、バルブ軸から排気の流れ方向について下流側に延びる下流側バルブ板部と、を有し、境界部は、下流側バルブ板部を挟んで対向する第1シート部及び第2シート部と、熱交換部の外壁を形成する熱交換部境界壁と、バイパス部の外壁を形成するバイパス部境界壁と、を備え、第1シート部は、分流部に臨む熱交換部境界壁の端部に形成され、第2シート部は、分流部に臨むバイパス部境界壁の端部に形成されることを特徴とする排気熱回収器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、バルブが回動することにより排気の流れ方向が熱交換部又はバイパス部に向かうように切り換えられる。このときに、バルブ軸を中心に回動する下流側バルブ板部が第1シート部又は第2シート部に対峙することにより、バルブと境界部との間に生じる隙間が小さく抑えられ、排気がバルブの背後へと流れる内部洩れが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る排気熱回収器を示す斜視図である。
図2】排気熱回収器の分解斜視図である。
図3図1のIII−III線に沿う排気熱回収器の断面図である。
図4】排気熱回収器の作動モードが切り換えられた状態を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る排気熱回収器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1に示す排気熱回収器1は、車両に搭載されるエンジン(図示省略)の暖機運転時などに、排気(流体)の熱によって媒体を加熱するものである。
【0014】
媒体は、エンジンを循環する冷却液が用いられる。暖機運転時に、排気の熱によって媒体が加熱されることにより、起動後のエンジンやオイルクーラ、又は他の機器などが暖められる。例えば、媒体が空調装置(図示省略)を循環し、車両の暖房が行われるようにしてもよい。
【0015】
排気熱回収器1は、排気が導入される分流部4と、分流部4から導かれる排気が媒体と熱交換をする熱交換部2と、分流部4から導かれる排気が熱交換部2を迂回して流れるバイパス部3と、熱交換部2又はバイパス部3を通過した排気を導く集合部5と、を備える。
【0016】
エンジンから排出される排気は、図1に矢印Aで示すように分流部4に流入し、分流部4を介して熱交換部2又はバイパス部3を通過した後に、矢印Bで示すように集合部5から流出する。図中のOは、排気熱回収器1の中心線である。
【0017】
図2に示すように、熱交換部2は、扁平な筒状をした複数のチューブ32と、各チューブ32を収容する箱状をしたシェル36と、を備える。
【0018】
図3に示すように、チューブ32の内部には、中心線O方向に延びる熱交換流路31が形成される。各チューブ32は、中心線Oに直交する方向に並び、それぞれの一端が熱交換部2の入口33(上流端)に並んで開口し、それぞれの他端が熱交換部2の出口34(下流端)に並んで開口している。排気は、各チューブ32内の熱交換流路31を通って中心線O方向に流れる。
【0019】
シェル36の内部には、媒体(冷却液)が流れる媒体流路35が形成される。シェル36の外側には、管状の媒体導入部16及び媒体排出部17が突出している。媒体導入部16及び媒体排出部17には、それぞれ媒体を導く配管(図示省略)が接続される。
【0020】
エンジンから冷却通路(図示省略)を通じて導かれる媒体は、図1に矢印Cで示すように媒体導入部16を通って媒体流路35に流入し、媒体流路35にて各チューブ32のまわりを流れる過程で排気との間で熱交換をする。媒体流路35にて温度が高くなった媒体は、矢印Dで示すように媒体排出部17から流出し、冷却通路を通じてエンジンへと導かれる。
【0021】
シェル36は、略矩形の断面形状をした箱状に形成される。シェル36は、中心線O方向に平板状に延びる4つの外壁部を有する。4つの外壁部のうちでバイパス部3に対向して延びる部位が、後述するように境界部45の熱交換部境界壁36aを構成する。
【0022】
バイパス部3は、バイパス流路39を形成する筒状のバイパス管30を備える。バイパス管30は、中心線O方向に延び、排気の流れ方向に対して熱交換部2のチューブ32と並列に配置される。
【0023】
バイパス部3(バイパス管30)の入口37(上流端)は、熱交換部2(シェル36)の入口33に対して中心線Oと直交する左右方向に並んで開口する。同様に、バイパス部3の出口38(下流端)は、熱交換部2の出口34に対して中心線Oと直交する左右方向に並んで開口する。排気は、バイパス流路39を通って中心線O方向に流れる。
【0024】
バイパス管30は、D字形の断面形状を有する筒状に形成される。勿論、バイパス管30は、他の断面形状、例えば三角形などの形状を成しても良い。バイパス管30は、シェル36の熱交換部境界壁36aに対向して延びる平板状のバイパス部境界壁30bと、バイパス部境界壁30bの両側から直交して延びる対の側壁部30aと、各側壁部30aから湾曲して延びる湾曲壁部30cと、を有する。
【0025】
分流部4は、排気を導入する分流路29を形成する分流管6(入口側ディフューザ)と、分流管6の内部に収容されるバルブ70と、を備える。バルブ70が分流管6内で回動することにより、分流部4を通過する排気の流れ方向が熱交換部2又はバイパス部3に向けられる。分流部4では、バルブ70が分流管6内で回動する角度に応じて、熱交換部2とバイパス部3とに分流する排気の流量割合が変えられる。
【0026】
図2に示すように、テーパ筒状の分流管6は、半筒状の上側分流管部6aと、半筒状の下側分流管部6bと、が互いに接合されることによって形成される。分流路29は、その流路面積が排気の流れ方向について次第に大きくなるように形成される。
【0027】
分流管6の入口24(上流端)は、フランジ8を介してエンジンから延びる排気管(図示省略)に接続される。エンジンから排出される排気は、矢印Aで示すように、排気管から分流管6内に流入する。
【0028】
分流管6の出口26(下流端)には、熱交換部2の入口33とバイパス部3の入口37とが並んで接続される。
【0029】
バルブ70は、分流管6に回転自在に支持されるバルブ軸75と、バルブ軸75に結合されるバルブ板71と、を有する。
【0030】
バルブ板71は、複数のネジ(図示省略)を介してバルブ軸75に結合される。なお、これに限らず、バルブ板71は、バルブ軸75と一体に形成される構成としてもよい。
【0031】
バルブ軸75は、分流管6の孔12に挿入されることにより、分流管6に回転自在に支持される。バルブ軸75は、中心線Oと直交する上下方向に延びるように配置される。
【0032】
バルブ軸75には、モータなどのアクチュエータ(図示省略)が連結される。アクチュエータは、コントローラ(図示省略)からの指令に応じてバルブ軸75を回転駆動する。バルブ70の回動位置は、図3に示すように排気を熱交換部2へ導く熱交換位置と、図4に示すように排気をバイパス部3へ導くバイパス位置と、の間で任意に切り換えられる。
【0033】
なお、アクチュエータは、上述した構成に限らず、媒体の温度に応じて作動する感温材を用いるものであってもよい。
【0034】
図3図4に示すように、集合部5は、排気を導く合流路60を形成するテーパ筒状の集合管23(出口側ディフューザ)を備える。図2に示すように、集合管23は、半筒状の上側集合管部23aと、半筒状の下側集合管部23bと、が互いに接合されることによって形成される。合流路60は、その流路面積が排気の流れ方向について次第に減少するように形成される。
【0035】
集合管23の入口52(上流端)には、熱交換部2の出口34とバイパス部3の出口38とが左右方向に並んで接続される。
【0036】
集合管23の出口51(下流端)は、フランジ25を介して排気管(図示省略)に接続される。集合管23を通って導かれる排気は、矢印Bで示すように排気管に流出し、排気管を通って外部へと排出される。
【0037】
排気熱回収器1は、熱交換部2とバイパス部3とを隔てる境界部45を備える。境界部45は、熱交換部境界壁36a、バイパス部境界壁30b、上流側断熱体41、及び下流側断熱体42を備える。
【0038】
バイパス部3のバイパス部境界壁30bと熱交換部2の熱交換部境界壁36aとは、互いに対向し、かつ中心線Oと平行に延びる平面状に形成される。
【0039】
上流側断熱体41、下流側断熱体42は、熱交換部境界壁36aとバイパス部境界壁30bとの間に間隔を設ける隔離部として設けられる。
【0040】
上流側断熱体41、下流側断熱体42は、熱交換部境界壁36a及びバイパス部境界壁30bより熱伝導率が低い断熱材によって形成される。断熱材は、例えば、多孔質素材を金属層で包囲し、内部を真空にしたものが用いられる。
【0041】
なお、上述した構成に限らず、熱交換部境界壁36aとバイパス部境界壁30bとの間に間隔を設ける隔離部として、熱交換部境界壁36a及びバイパス部境界壁30bと同等の熱伝導率を有する部材が設けられる構成としてしてもよい。
【0042】
熱交換部境界壁36a、バイパス部境界壁30b、上流側断熱体41、及び下流側断熱体42の間には、空気層9が形成される。上流側断熱体41、下流側断熱体42、及び空気層9は、バイパス部3と熱交換部2との間で熱伝達を抑制する断熱層を構成する。
【0043】
排気熱回収器1は、空気層9を覆うケース15を備える。空気層9は、ケース15によって覆われることにより、外部から遮断された空間として形成される。
【0044】
半筒状のケース15は、熱交換部2及び境界部45の外形に沿った断面形状をしており、バイパス部3を挟むように延びる両端部18を有する。ケース15の両端部18は、バイパス管30の側壁部30aに接合される。
【0045】
バルブ70は、バルブ軸75が境界部45の端部から排気の流れ方向について上流側に所定の距離を持つように配置される。
【0046】
バルブ板71は、バルブ軸75に結合される結合部74と、結合部74から上流側に延びる上流側バルブ板部72と、結合部74から下流側に延びる下流側バルブ板部73と、を有する。上流側バルブ板部72の先端は、分流管6の内壁に沿って湾曲するように形成される。下流側バルブ板部73の先端は、バルブ軸75と平行に延びる直線状に形成される。
【0047】
境界部45の端部には、バルブ軸75を中心に回動する下流側バルブ板部73を挟んで対向する第1シート部46及び第2シート部47が設けられる。
【0048】
第1シート部46は、分流路29に臨む熱交換部境界壁36aの端部に形成される。第1シート部46は、バルブ軸75と平行に延び、下流側バルブ板部73の先端を当接させるように配置される。
【0049】
第2シート部47は、分流路29に臨むバイパス部境界壁30bの端部に形成される。第2シート部47は、バルブ軸75と平行に延び、下流側バルブ板部73の先端を当接させるように配置される。
【0050】
境界部45の端部には、分流路29に臨むバルブ収容凹部48が設けられる。バルブ収容凹部48には、回動する下流側バルブ板部73を収容される。
【0051】
バルブ収容凹部48は、第1シート部46を含む熱交換部境界壁36aと、第2シート部47を含むバイパス部境界壁30bと、上流側断熱体41の端面と、によって形成される。
【0052】
上流側断熱体41の端面は、バルブ収容凹部48の底壁部を形成する。上流側断熱体41は、第1シート部46及び第2シート部47に対してバルブ軸75から離れる方向(図3において右方向)にオフセットされる。これにより、バルブ70が回動する作動時に、下流側バルブ板部73が上流側断熱体41に干渉しないようになっている。
【0053】
次に、排気熱回収器1の作用について説明する。
【0054】
エンジンから排出された排気は、バルブ70が回動することにより熱交換部2又はバイパス部3に流通する。
【0055】
エンジンの冷間時にて、排気熱回収器1が排気によって媒体を暖める熱回収作動モードでは、コントローラからの指令に応じてアクチュエータがバルブ70を図3に示す回動位置(熱交換位置)に保持する。これにより、分流路29に対してバイパス流路39が閉じられる一方、熱交換流路31が開かれる。排気は、図3に矢印E、F、Gで示すように分流路29、熱交換流路31、合流路60を通過するように導かれ、熱交換部2にて媒体と熱交換を行う。こうして、排気熱回収器1では媒体が排気の熱を吸収することで、媒体の温度が上昇する。
【0056】
上記熱回収作動モードでは、図3に示すようにバルブ70が分流管6内で傾斜し、上流側バルブ板部72の先端が分流管6の内壁に当接するとともに、下流側バルブ板部73の先端が境界部45の第1シート部46に当接する。これにより、バルブ70と分流管6の内壁又は境界部45との間に生じる隙間が小さく抑えられる。このため、排気の一部がバルブ70と境界部45の間を通ってバイパス流路39へと流れる内部洩れが抑えられる。この結果、排気熱回収器1では熱交換部2にて媒体が吸収する排気の熱量を高められ、エンジンなどの暖機が促される。
【0057】
エンジンの暖機が進み、排気熱回収器1が排気を熱交換部2に流通させる必要がなくなる場合には、非回収作動モードに切り換えられる。非回収作動モードでは、コントローラからの指令に応じてアクチュエータがバルブ70を回動させて図4に示す回動位置(バイパス位置)に切り換える。これにより、バルブ70によって分流路29に対して熱交換流路31が閉じられる一方、バイパス流路39が開かれる。排気は、図4に矢印I、J、Kで示すように分流路29、バイパス流路39、合流路60を通過するように導かれる。こうして、排気が熱交換部2を迂回することにより、排気によって媒体が加熱されることが抑えられる。
【0058】
上記非回収作動モードでは、図4に示すようにバルブ70が分流管6内で傾斜し、上流側バルブ板部72の先端が分流管6の内壁に当接するとともに、下流側バルブ板部73の先端が境界部45の第2シート部47に当接する。これにより、バルブ70と分流管6の内壁又は境界部45との間に生じる隙間が小さく抑えられる。このため、排気の一部がバルブ70と境界部45の間を通って熱交換流路31へと流れる内部洩れが抑えられる。この結果、排気熱回収器1では排気によって媒体が加熱されることが十分に抑えられ、媒体によって暖機後のエンジンなどが加熱されることが防止される。
【0059】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0060】
本実施形態によれば、バルブ70はバルブ軸75から下流側に延びる下流側バルブ板部73を有し、境界部45は回動する下流側バルブ板部73を挟むように対向する第1シート部46及び第2シート部47を有する排気熱回収器1が提供される。
【0061】
上記構成に基づき、バルブ70がバルブ軸75を中心に回動するのに伴って、下流側バルブ板部73が第1シート部46又は第2シート部47に対峙することにより、バルブ70と境界部45の間に生じる隙間が小さく抑えられる。これにより、排気がバルブ70と境界部45の間を通ってバルブ70の背後へと流れる内部洩れが抑えられる。この結果、排気熱回収器1では、バルブ70の作動に応じて熱交換部2とバイパス部3とに分流する排気の流量割合が的確に変えられ、媒体の温度調整が精度よく行われる。
【0062】
また、本実施形態によれば、バルブ70が排気の流れ方向を熱交換部2に向ける作動モードにおいて下流側バルブ板部73が第1シート部46に当接し、バルブ70が排気の流れ方向をバイパス部3に向ける作動モードにおいて下流側バルブ板部73が第2シート部47に当接する排気熱回収器1が提供される。
【0063】
上記構成に基づき、作動モードに応じてバルブ軸75を中心に回動する下流側バルブ板部73が第1シート部46又は第2シート部47に当接する状態に切り換えられる。これにより、バルブ70と境界部45の間に生じる隙間が小さく抑えられ、排気の内部洩れが十分に抑えられる。
【0064】
なお、排気熱回収器1は、上述した構成に限らず、作動モードに応じて第1シート部46又は第2シート部47が予め設定された小さい隙間を持って下流側バルブ板部73を対峙させることにより、排気の内部洩れが十分に抑えられる構成としてもよい。
【0065】
また、本実施形態によれば、第1シート部46が熱交換部2の外壁を構成する熱交換部境界壁36aに形成され、第2シート部47がバイパス部3の外壁を構成するバイパス部境界壁30bに形成される排気熱回収器1が提供される。
【0066】
上記構成に基づき、第1シート部46、第2シート部47を形成するのに、熱交換部2、バイパス部3と別の部材を設ける必要がなく、排気熱回収器1の構造が複雑化することが抑えられる。
【0067】
また、本実施形態によれば、境界部45は、熱交換部境界壁36aとバイパス部境界壁30bとの間に介装され、両者間を断熱する上流側断熱体41を有する排気熱回収器1が提供される。
【0068】
上記構成に基づき、熱交換部境界壁36aとバイパス部境界壁30bとの間に介装される上流側断熱体41によって、熱交換部2とバイパス部3との間が断熱される。熱回収作動モードでは、上流側断熱体41によって熱交換部2の熱交換効率を高められ、エンジンなどの暖機が促される。一方、非回収作動モードでは、バイパス部3から熱交換部2への熱伝達が上流側断熱体41によって抑えられる。これにより、排気によって媒体が加熱されることが十分に抑えられ、暖機後のエンジンなどが加熱されることが防止される。
【0069】
また、本実施形態によれば、上流側断熱体41と熱交換部境界壁36aとバイパス部境界壁30bとの間に下流側バルブ板部73を収容するバルブ収容凹部48が形成される排気熱回収器1が提供される。
【0070】
上記構成に基づき、下流側バルブ板部73がバルブ収容凹部48で回動することにより、下流側バルブ板部73が上流側断熱体41などに干渉することが防止される。
【0071】
また、本実施形態によれば、境界部45は、上流側断熱体41と熱交換部境界壁36aとバイパス部境界壁30bとの間に形成される空気層9と、空気層9を外部と遮断するように覆うケース15と、を有する排気熱回収器1が提供される。
【0072】
上記構成に基づき、ケース15と熱交換部2とバイパス部3との間に外部に対して密閉された空気層9が形成されるため、バルブ70が排気の流れ方向を熱交換部2に向ける作動モードにおいて、熱交換部2から外部への放熱が抑えられ、熱交換部2における排気と媒体との温度が熱交換効率を高められる。
【0073】
<第2実施形態>
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態の排気熱回収器1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
上記第1実施形態に係る排気熱回収器1は、境界部45の空気層9を外部と遮断するように覆うケース15を備える。これに対して、第2実施形態に係る排気熱回収器100は、ケース15を備えず、境界部145の空気層109が外部と連通するように構成される。
【0075】
空気層109は、熱交換部境界壁36a、バイパス部境界壁30b、上流側断熱体41、及び下流側断熱体42の間に形成される。
【0076】
本実施形態によれば、熱交換部2とバイパス部3との間に外部に通じる空気層109が形成され、空気層109には外気が取り込まれる。これにより、非回収作動モードでは、バイパス部3から空気層109の外気への放熱が促されるとともに、バイパス部3から熱交換部2への熱伝達が空気層109によって抑えられる。これにより、排気によって媒体が加熱されることが十分に抑えられ、暖機後のエンジンなどが加熱されることが防止される。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
本発明は、車両に搭載される排気熱回収器として好適であるが、車両以外に使用される熱交換器にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1、100 排気熱回収器
2 熱交換部
3 バイパス部
4 分流部
5 集合部
9、109 空気層
15 ケース
30b バイパス部境界壁
36a 熱交換部境界壁
41 上流側断熱体
45、145 境界部
46 第1シート部
47 第2シート部
48 バルブ収容凹部
70 バルブ
72 上流側バルブ板部
73 下流側バルブ板部
75 バルブ軸
図1
図2
図3
図4
図5